以下、本発明に係る医療用チューブの製造方法の実施形態について、図1〜図20を参照して説明する。ここでは、本発明に係る医療用チューブの製造方法の一例として、気管チューブに用いられる医療用チューブとしてのチューブ本体の製造方法について説明する。なお、各図において共通の部材、部位には、同一の符号を付している。
<気管チューブ>
初めに、本発明に係る医療用チューブの製造方法を用いて製造される気管チューブについて説明する。図1は、本発明の一実施形態としての医療用チューブの製造方法を用いて製造される気管チューブ1を気管内に留置した状態を示す図である。図2は、気管チューブ1における医療用チューブとしてのチューブ本体2を単体で示す斜視図である。図3は図2に示すチューブ本体2の拡大断面図であり、チューブ本体2の内面に形成された微細凹凸構造100を示す。図4は、気管チューブ1を基端側から見た図である。図1に示すように、気管チューブ1は、チューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面上に取り付けられた収縮及び拡張可能なカフ3と、チューブ本体2の一方の端部に装着されたフランジ部材4とを備える。
図2に示すように、チューブ本体2は、先端5を含む先端部8と、チューブ本体2の内周面の中心軸線O1の延在方向(以下、単に「中心軸線方向A」と記載する。)において先端部8の基端6側で連続し、外周面上にカフ3が取り付けられるカフ装着部9と、このカフ装着部9の基端6側で連続する湾曲部10と、この湾曲部10の基端6側で連続し、基端6を含む基端部11と、を備える。
チューブ本体2は、中心軸線方向Aにおいて先端5から基端6まで貫通する中空部7を区画している。また、チューブ本体2は、壁内に形成され、基端面に区画された基端開口から中心軸線方向Aに延在する第1〜第3ルーメン12〜14を備える。中空部7により、気管チューブ1が外方から気管内に挿入されて留置されている状態において、気道を確保することができる。第1ルーメン12は、第1基端開口12aからカフ3よりも基端6側に設けられた吸引口まで延在しており、気管内に留置されている状態のカフ3よりも気管上流側(顎側)に貯留する痰、唾液、誤嚥物、血液などの異物Xを吸引して除去するために用いられる。第2ルーメン13は、第2基端開口13aからカフ3よりも先端5側に設けられた吸引口まで延在しており、気管内に留置されているカフ3よりも気管下流側(気管分岐部側)で、先端部8近傍に貯留する痰等の異物Xを吸引して除去するために用いられる。第3ルーメン14は、第3基端開口14aからカフ3の位置に設けられた連通口14bまで延在しており、カフ3を収縮及び拡張させるために用いられる。なお、壁内に区画された小径の第1〜第3ルーメン12〜14についても中空部であるが、説明の便宜上、気道を確保するための大径の中空部7と区別するため、ここでは「ルーメン」と記載する。
図3に示すように、医療用チューブとしてのチューブ本体2の内周面には、内面全体に微細凹凸構造100が形成されている。微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸が形成された表面を有する。微細凹凸構造100領域は痰の付着を抑制する性質(以下、「撥痰性」と記載する。)を有する。チューブ本体2の内周面に微細凹凸構造100を形成する方法の詳細は後述する。微細凹凸構造100は、チューブ本体2の内周面の全面に亘って形成してもよく、また、内周面の一部のみに形成してもよい。
また、微細凹凸構造100の表面にはフッ素コート層300が形成されている。フッ素コート層300はフッ素樹脂を主成分とするものであれば特に限定されない。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等を用いることができる。
チューブ本体2の構成材料としては、例えば、シリコーン、軟質ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂を用いることができる。その中でも、成形が容易であるという点で、軟質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂を用いることが好ましい。
カフ3は、気管チューブ1を気管内の所定の位置で留置させるために用いられる。具体的に、カフ3は、第3ルーメン14を通じて流体が供給されると拡張し、流体が吸引されると収縮する。カフ3が拡張した状態において、カフ3の外面は気管内壁と密着する。カフ3の外面と気管内壁との摩擦力等によって、カフ3が気管内周面に挟持される。このようにして、気管内でのカフ3の位置が固定され、気管チューブ1を気管内の所定の位置で留置させることができる。
フランジ部材4は、図1に示すようにチューブ本体2の基端部11(図2参照)に装着されており、チューブ本体2を体外から気管内に挿入して気管チューブ1を留置した際に、皮膚に当接することで、先端部8を気管内の適切な位置に固定する。図1及び図4に示すように、フランジ部材4は、チューブ本体2の基端部11が内挿され、チューブ本体2と嵌合することでチューブ本体2に対して装着される円筒状の筒部17と、この筒部17の外壁から径方向外側に向かって突出し、気管チューブ1を留置した状態で皮膚に当接する板状のフランジ部18と、を備える。なお、図4では、説明の便宜上、チューブ本体2の第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14の位置を二点鎖線により示している。
図4に示すように、筒部17には、フランジ部18よりも基端側の位置に、上述した第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14それぞれと連通する連通孔17a、17b、17cが区画されている。筒部17内にチューブ本体2の基端部11が嵌合することにより装着されている状態において、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14は、対応する連通孔17a、17b、17cを介して、気管チューブ1の外方と連通しており、この連通孔17a、17b、17cそれぞれに、チューブ本体2とは別の医療用チューブが接続されている。
具体的に、第1ルーメン12は、筒部17に形成された対応する連通孔17aを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17aに一端が嵌合した医療用チューブとしての吸引用チューブ19aの他端にシリンジまたは吸引ポンプ等を接続して吸引を行えば、体外から第1ルーメン12を通じて痰等の異物Xを吸引することができる。また、第2ルーメン13についても、第1ルーメン12と同様であり、医療用チューブとしての吸引用チューブ19b、筒部17に形成された対応する連通孔17b及び第2ルーメン13を通じて異物Xを吸引することができる。
更に、第3ルーメン14は、筒部17に形成された対応する連通孔17cを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17cに一端が嵌合した医療用チューブとしてのカフ用チューブ19cの他端にシリンジ等を接続すれば、体外にあるシリンジ等の操作により、カフ3の環状空間への流体の供給や吸引を行うことができ、それによりカフ3の拡張及び収縮を操作することができる。
なお、フランジ部材4の筒部17は、チューブ本体2の基端部11と同心円状に装着されており、チューブ本体2の周方向Bにおける第1ルーメン12の位置、第2ルーメン13の位置、及び第3ルーメン14の位置は、筒部17の対応する連通孔17a、17b、及び17cの周方向Bの位置の近傍とされている。そのため、各連通孔17a、17b、17cを短くすることができ、筒部17の連通孔17a、17b、及び17cの構成が複雑化することが抑制される。また、図4に示すように、吸引用チューブ19a及び19b、並びにカフ用チューブ19cは、図4の平面視において、各連通孔17a、17b、17cからフランジ部18の突設されている方向に延在するように接続され、先端部8側には延在していない。このように接続することにより、気管チューブ1が気管内に留置された状態において、吸引用チューブ19a及び19b、並びにカフ用チューブ19cが、患者の顎や首元にぶつかることが抑制され、気管チューブ1が留置される患者の不快感を軽減することができる。
フランジ部材4の構成材料としては、例えば、チューブ本体2と同様の材料で形成することができる。
<チューブ本体2の製造方法>
次に、医療用チューブとしてのチューブ本体2の製造方法を説明する。図5に、医療用チューブとしてのチューブ本体2の中心軸線方向A(図2参照)に垂直な方向の断面図を示す。なお、図5は、チューブ本体2の中心軸線方向Aにおいて、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14が全て存在する位置での断面図である。本製造方法は、図5に示すように、内層30と、外層40とを備える医療用チューブとしてのチューブ本体2の製造方法である。内層30は、図3に示すような微細凹凸構造100が形成された内周面31を有している。内層30は、一層又は複数の層により構成される。外層40は内層30より径方向外側に設けられる。外層40は、内層30と同様に、一層又は複数の層により構成される。本実施形態の外層40は、内層30の径方向外側に積層される最も内側の層41(以下、「内側層41」と記載する。)を含む複数の層により構成されている。外層40は内層30よりも厚い。なお、図5では、内側層41と、この内側層41の径方向外側に位置する別の一層又は別の複数の層と、の間の境界を破線により示している。また、図5に示すように、本実施形態では、内層30を一層(単層)として説明する。
内層30の内周面31に形成される微細凹凸構造100の凹凸パターンの例を示す。図6は、内周面31の展開図の一部を拡大したものであり、図の横方向がチューブ本体2の中心軸線方向Aを示し、縦方向がチューブ本体2の周方向Bを示す。上述のように、微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸構造である。凹凸構造はいくつかの凹凸パターンを取り得る。例えば、図6(a)に示すように、チューブ本体2の中心軸線方向Aに延在する凸リブ101と凹溝102とが、周方向Bにおいて交互に配置された構造(以下、単に「ラインアンドスペース構造」と記載する。)とすることができる。また、例えば、図6(b)に示すように、円錐台形状の突起103が所定の配列で配置された構造(以下、単に「ピラー構造」と記載する。)とすることができる。なお、ラインアンドスペース構造は、周方向Bに延在する凸リブ101と凹溝102とが、中心軸線方向Aにおいて交互に配置される構造であってもよい。但し、ラインアンドスペース構造を有する面上の痰などの異物X(図1参照)は、凸リブ101及び凹溝102の延在方向に移動し易いため、異物Xがチューブ本体2内に留まることがないように、凸リブ101及び凹溝102を中心軸線方向Aに延在する図6(a)に示す構成とすることが好ましい。また、ピラー構造を構成する突起103の形状は、円錐台形状に限定されるものではなく、円錐形状、円柱形状、三角錐形状又はその他の多角錐形状、角柱形状等とすることもできる。
なお、上述したように、微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸構造であり、この条件の下、隣接する、ラインアンドスペース構造における凸リブ101又はピラー構造における突起103(以下、凸リブ101及び突起103を単に「凸部」と記載する。)の中心間の距離は、10μm〜100μmとすることが好ましく、10μm〜50μmとすることがより好ましい。100μmより大きいと、痰が凸部間に入り込み易くなり、撥痰性の効果が小さくなる。また、10μm未満の場合には、痰と凸部との接触面積が大きくなり、撥痰性の効果が小さくなる。
また、微細凹凸構造100のサイズが上記条件の下では、各凸部の頂面105(図3参照)の最大幅は、0.01μm〜50μmとすることが好ましく、1μm〜50μmとすることがより好ましく、1μm〜30μmとすることが更により好ましく、1μm〜20μmとすることが特に好ましい。50μmより大きいと、痰との接触面積が大きくなり、撥痰性の効果が小さくなる。また、0.01μm未満の場合には、凸部の成形が難しく、形状安定性が低下するおそれがある。なお、微細凹凸構造100がラインアンドスペース構造の場合、各凸部の頂面105(図3参照)の最大幅とは、凸リブ101の延在方向と直交する方向の頂面105の最大長さとなる。
更に、微細凹凸構造100のサイズが上記条件の下、微細凹凸構造100の凸部の最大高さを数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズとする。
図7は、医療用チューブとしてのチューブ本体2の形成フローを示している。本製造方法は、上述の内層30を形成する、微細凹凸構造100を有する構造体21(後に参照する図9等参照)を、外層40のうち内層30に積層される層を少なくとも形成する外側チューブ22(後に参照する図9等参照)に、微細凹凸構造100が内周面に露出するように挿入する工程(P1)と、構造体21が外側チューブ22に挿入された状態において構造体21と外側チューブ22とを一体化する工程(P2)とを含む。なお、外層40が一層により構成される場合、外側チューブ22は外層40全体を形成する。また、外層40が複数の層により構成される場合、外側チューブ22は内層30に積層される層、すなわち、外層40のうちチューブ本体2の径方向の最も内側の層41(内側層41)を少なくとも形成する(図5参照)。以下、構造体21の形成方法及び上記各工程について詳細を説明する。
図8に構造体21の例を示す。図8(a)は、構造体21としての螺旋状シート部材210を示す図である。螺旋状シート部材210は、周方向に巻回されながら軸方向に延在する部材である。螺旋状シート部材は、少なくとも内面211に微細凹凸構造100を有する。螺旋状シート部材210は、後述する方法で得られるシート部材32を、後述する方法で成形することで得られる。また、螺旋状シート部材210は、後述する方法で得られるチューブ部材35を、外周面を螺旋状に切断することによっても得られる。
構造体21は、複数の構造要素から構成されていてもよい。図8(b)は、構造要素としての筒状部材220を示す図である。筒状部材220は、少なくとも内面221に微細凹凸構造100を有する。筒状部材220は、後述する方法で得られるチューブ部材35を、中心軸線方向に垂直な方向で切断して得られる。
図8(c)は、構造要素としての短冊状シート部材230を示す図である。短冊状シート部材は、少なくとも表面231に微細凹凸構造100を有する。短冊状シート部材230は、後述する方法で得られるシート部材32を、長手方向に沿って細く切断することで得られる。また、後述する方法で得られるチューブ部材35を、軸方向に沿って細く切断することによっても得られる。
上記各構造体21を成形するために用いるシート部材32の加工方法及びチューブ部材35の成形方法をそれぞれ説明する。
[シート部材の加工方法]
シート部材32は、シート状の部材のいずれか一方の表面に微細凹凸構造100(図3等参照)を形成し、形成された微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層300を形成することで得られる。シート部材32は所定の厚みを有する。シート部材32の厚みは好ましくは0.1mm〜1.0mmであり、より好ましくは0.15mm〜0.5mmである。シート部材32の構成材料としては、例えば軟質ポリ塩化ビニルなど、上述したチューブ本体2の構成材料を用いることができる。
図9は金型50による微細凹凸構造100の転写を示す。微細凹凸構造100は予め微細凹凸パターン52が形成された金型50による転写により形成することができる。具体的に、図9(a)に示すように、シート部材32のいずれか一方の表面33に、金型50を押し当てる(図9(a)の矢印51参照)。金型50のうちシート部材32に押し当てられる側の表面には、微細凹凸パターン52が形成されている。この微細凹凸パターン52は、シート部材32に形成される、所望の凹凸パターンを有する微細凹凸構造100と凹凸の向きが逆向きのものである。図9(b)に示すように、金型50をシート部材32に押し当てた状態(図9(b)の矢印53参照)で、加熱する。このようにすることで、金型50の微細凹凸パターン52がシート部材32の表面33に転写され、図9(c)に示すように、微細凹凸パターン52と凹凸の向きが逆向きの微細凹凸構造100がシート部材32の表面33に形成される。
次に、シート部材32の表面33に形成された微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施し、フッ素コート層300を形成する。具体的に説明する。まず、上述した、表面33に微細凹凸構造100が形成されたシート部材32を用意する。次に、微細凹凸構造100表面に、上述したフッ素樹脂を含むフッ素コーティング剤を塗着する。フッ素コーティング剤を塗着する方法としては、例えば、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒中にシート部材32を浸漬するディップコーティング法、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒を表面33に滴下して微細凹凸構造100が形成されている領域全域に拡げる方法、スプレーで表面33に吹き付ける方法、又は、箆部材を用いて表面33に塗る方法等が挙げられる。次に、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒が塗着された状態でシート部材32を乾燥させる。溶媒が除去されフッ素コーティング剤の皮膜が形成される。次に、フッ素コーティング剤を硬化し、表面33との結合を形成する。フッ素コーティング剤を硬化する態様の一例として、例えば、シート部材32をオーブン(不図示)に投入し、オーブン内で所定時間、所定の温度で加熱して硬化することができる。設定温度は、好ましくは、約70〜100度、より好ましくは80度とし、加熱時間は好ましくは約30〜90分とする。このようにして、微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層300を形成する。
微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施すことにより、シート部材32の表面33の撥水性、撥油性、耐摩擦性を向上させることができると共に、表面33に形成された微細凹凸構造100の強度を向上させることができる。そのため、後述する、シート部材32を用いて構造体21を成形する際、シート部材32を用いてチューブ部材35を成形する際、シート部材32が構造体21に成形されたものを外側チューブ22に挿入する際、及び/又は構造体21と外側チューブ22とを一体化する際等に、微細凹凸構造100を損傷しにくくすることができる。なお、シート部材32の表面33に形成された微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施す例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、シート部材32を用いて構造体21を成形した後や、シート部材32を用いてチューブ部材35を成形した後や、構造体21と外側チューブ22とを一体化した後などに実施してもよい。また、上記のフッ素コーティングは、後述する、構造体21及び外側チューブ22を湾曲させる工程の後に行ってもよい。
ここで、上述のように微細凹凸構造100が表面33に形成されたシート部材32を用いて、螺旋状シート部材210を成形する方法について説明する。図10は、螺旋状シート部材210の成形を説明する図である。まず、図10(a)に示すように、シート部材32を所望の形状に切断して切断シート部材32’とする。次に、図10(b)に示すように、切断シート部材32’を周方向に巻回しながら軸方向に延在するように曲げて、螺旋状に成形する。最後に、図10(c)に示すように、両端を軸方向に垂直な面で切断し、螺旋状シート部材210が得られる。
[チューブ部材の形成方法1]
シート部材32を用いてチューブ部材35を成形する方法について説明する。図11は、チューブ部材35の形状の成形を説明する図である。具体的に、微細凹凸構造100(図9参照)が形成された表面33が内面になるようにシート部材32を円筒状に曲げる。シート部材32を曲げる際は、図11(a)、(b)に示すように、シート部材32の端部34のうち表面33の短辺を含む端部34c、34dが円形状になるように曲げる(図11(a)の矢印54参照)。好ましくは、シート部材32を円筒状に曲げる際、図11(c)に示すように、例えば円柱形状の円筒成形冶具55を用い、円筒成形冶具55の外面にシート部材32を巻き付け、円筒成形冶具55の外面の形状に沿って円筒状に曲げる。なお、円筒成形冶具55の具体例には、中実又は中空の金属棒や樹脂棒が挙げられる。この他に、円筒成形冶具55の具体例として、自己拡張型の網状筒部材や渦巻き状や螺旋状のバネ部材等の弾性部材、空気圧や水圧等で拡張するバルーン、等の拡張体が挙げられる。
次に、円筒状に曲げられたシート部材32の両端部34a及び34bを接合する。具体的に、図11(b)及び(c)に示すように、シート部材32のうち、表面33の長辺を含む、互いに対向する端部34a、34bを突き合わせる。そして、図11(d)に示すように、両端部34a及び34bに熱56を加えて両端部34a及び34bを溶融させ溶着する。熱源にはレーザー光、電気、高周波、超音波、その他公知の技術を用いることができる。なお、熱源は、例えば、円筒状のシート部材32の外部に配置され、両端部34a及び34bは外部から加熱される。このようにして、図12に示すように、チューブ部材35が形成される。
なお、溶着は、上述した円筒成形冶具55が挿入された状態で行ってもよい。この場合、円筒成形冶具55の一部又は全部を熱伝導性のよい素材とし、円筒成形冶具55を外部から発熱又は加熱することにより、円筒成形冶具55を介して、円筒成形冶具55に巻き付けられているシート部材32の端部34a、34bを加熱し、溶着するという方法でもよい。なお、熱伝導性のよい素材としては例えばアルミニウムや銅などの金属を用いることができる。また、円筒成形冶具55が挿入されているか否かに問わず、突き合わせた両端部34a及び34bがずれないように、円筒状に成形されたシート部材32の外周面を保持部材57で固定した状態で、シート部材32の端部34a、34bを融着してもよい。保持部材57としては、例えば、図11(e)に示す断面がC形状のものを使用することができる。断面がC形状の保持部材57の隙間部分に、シート部材32の端部34a、34bを位置させることにより、外部又は内部から、シート部材32の端部34a、34bに熱56を加えて溶着することができる。また、上述した円筒成形冶具55に代えて、別の部材をシート部材32の内側に挿入し、この部材を外部から発熱又は加熱することにより、シート部材32の端部34a及び34bを加熱し、溶着するようにしてもよい。
好ましくは、チューブ部材35を、チューブ部材35の外径と外側チューブ22の内径とが略等しくなるように成形する。上述したように、シート部材32の端部34a、34b同士を突き合わせ溶着する場合には、シート部材32の表面33の短辺の長さを、外側チューブ22の内周と略等しい長さとすればよい。但し、シート部材32から円筒状のチューブ部材35を成形する方法は、シート部材32の端部34a、34b同士を突き合わせ溶着する方法に限られるものではなく、例えば、シート部材32の表面33の短辺の長さを、外側チューブ22の内周よりも長くし、シート部材32の両端部34a及び34bを二重に重ねて接合するようにしてもよい。なお、後述するように、チューブ部材35と外側チューブ22とを一体化する際は、外側チューブ22を熱により縮径させる方法もあるため、チューブ部材35の外径を、外側チューブ22の内径よりも小さくすることも可能である。
[チューブ部材の形成方法2]
円筒部材60を用いて形成するチューブ部材35の形成フローを説明する。まず、円筒状の円筒部材の外面に微細凹凸構造100(図3等参照)を形成する。次に、微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層300を形成する。そして、円筒部材の内面と、微細凹凸構造100が形成された外面とを裏返すことにより、チューブ部材35を形成する。以下、詳細を説明する。
図13は、円筒部材60を用いてチューブ部材35を形成する方法を説明する図である。まず、射出成形により、円筒部材60の外面62に微細凹凸構造100を形成する。射出成形とは、軟化する温度に加熱した成形材料を、射出圧 (通常、10〜3000kgf/c程度) を加えて金型内の空洞に押込むことで充填し、成形材料を固化させることにより成形する技術のことである。
具体的には、図13(a)に示すように、内部金型70aと外部金型70bとの間に形成された空洞72に成形材料を充填することにより円筒部材60を成型する。外部金型70bの内面71には、上述の微細凹凸パターン52(図9参照)が形成されている。また、外部金型70bは割型となっており、第1外部金型70b1と第2外部金型70b2とで構成されている。内部金型70aと外部金型70bとの間の空洞72に充填された成形材料が固化した後、外部金型70bを割り、次いで、内部金型70aを引き抜くことにより、外面62に微細凹凸構造100を有する円筒部材60を作成することができる。
円筒部材60の外径は、外側チューブ22の内径と同じであるか、又は外側チューブ22の内径よりも小さくする。また、円筒部材60の肉厚は、好ましくは0.1mm〜1.0mmであり、より好ましくは0.15mm〜0.5mmがよい。円筒部材60の構成材料としては、例えば軟質ポリ塩化ビニルなど、上述したチューブ本体2の構成材料を用いることができる。
次に、微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施しフッ素コート層300を形成する。具体的には、上述したように、微細凹凸構造100が形成された円筒部材60の外面62にフッ素コーティング剤が含まれる溶媒を塗着し、円筒部材60を乾燥させて溶媒を除去した後、円筒部材60をオーブン(不図示)に投入して、オーブン内で円筒部材60を加熱することによりコーティング剤を硬化させて、フッ素コート層300を形成する。
微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施すことにより、後述する、チューブ部材35を用いて構造体21を成形する際、チューブ部材35が構造体21に成形されたものを外側チューブ22に挿入する際、及び/又は構造体21と外側チューブ22とを一体化する際等に、微細凹凸構造100を損傷しにくくすることができる。なお、上述のフッ素コーティングは、チューブ部材35を用いて構造体21を成形した後や、チューブ部材35が構造体21に成形されたものを外側チューブ22に挿入した後や、構造体21と外側チューブ22とを一体化した後に行ってもよい。また、上述のフッ素コーティングは、後述する、構造体21及び外側チューブ22を湾曲させる工程の後に行ってもよい。
次に、図13(b)に示すように、射出成形した円筒部材60の内面63と外面62とを裏返す(図13(b)矢印64参照)。内面63と外面62とを裏返すことで、内面に微細凹凸構造100が形成されたチューブ部材35を形成することができる。なお、ここでは円筒部材60の内面63と外面62とを裏返す前に、フッ素コーティングを施しているが、裏返した後にフッ素コーティングする方法であってもよい。
また、薄肉(例えば0.1mm〜1.0mm)で可撓性を有するチューブ部材35を形成する場合には、直接、すなわち、裏返す作業を要さずに、内面に微細凹凸構造100を有するチューブ部材35を形成することもできる。図14は、内面に微細凹凸構造100を有するチューブ部材35を直接成形することが可能な金型の断面図である。図13(a)に示す金型と異なり、微細凹凸パターン52(図9参照)は内部金型70aの外面に形成されている。また、内部金型70aの表面には噴出孔76が区画され、噴出孔76を通じて空気、窒素等の気体や、水等の液体が噴出される。
内部金型70aと外部金型70bとの間の空洞72に充填された成形材料が固化した後、外部金型70bを割り、外部金型70bを取り外す。外部金型70bを取り外した後に、圧縮された気体や液体等の流動体を噴出孔76から噴出させ、流動体の圧力でチューブ部材35を拡径させて、内部金型70aを引き抜く。このようにすることで、チューブ部材35の内面を、内部金型70aの外面の微細凹凸パターン52で損傷させることなく、換言すれば、形成された微細凹凸構造100のパターンを保ちつつ、チューブ部材35から内部金型70aを引き抜くことができ、内面に微細凹凸構造100を有するチューブ部材35を作成することができる。
以上の方法により、シート部材32及びチューブ部材35を得ることができる。上述した螺旋状シート部材210は、図9及び図10を参照して説明したシート部材32から得ることができるが、この方法に限らず、図11〜図14を参照して説明したチューブ部材35を、螺旋状に切断することによっても得ることができる。また、上述した筒状部材220は、図11〜図14を参照して説明したチューブ部材35を、中心軸線方向に垂直な方向で切断することにより得ることができる。更に、短冊状シート部材230は、図9及び図10を参照して説明したシート部材32を長手方向に沿って細く切断することで得ることができるが、この方法に限らず、図11〜図14を参照して説明したチューブ部材35を、軸方向に沿って細く切断することによっても得ることができる。
<構造体21を外側チューブ22に挿入する工程(P1)>
次に、上述した構造体21を外側チューブ22に挿入する工程(P1)について説明する。図15は、構造体21を外側チューブ22に挿入する例を示す図である。図15(a)〜(c)に示すように、構造体21を外側チューブ22の一端から他端に向かって、外側チューブ22の内部に挿入していく。外側チューブ22内で、構造体21を外側チューブ22に対して相対的に移動し、外側チューブ22内の所定の位置まで移動させる。なお、本実施形態の外側チューブ22は、後述するように、外部からの加熱により軟化する性質、すなわち、熱可塑性を有する素材により構成されている。
具体的には、図15(a)に示すように、構造体21としての螺旋状シート部材210は、外側チューブ22内の内周面に沿って、外側チューブ22内に挿入される。また、図15(b)に示すように、構造体21としての複数の筒状部材220は、外側チューブ22の内周面に沿って、軸方向に順次挿入されて配置される。また、図15(c)に示すように、構造体21としての複数の短冊状シート部材230は、外側チューブ22内に挿入され、外側チューブ22の内周面に沿って、周方向に順次配置される。
好ましくは、構造体21を縮径して、外側チューブ22に挿入する。図16は縮径された構造体21としての螺旋状シート部材210の例を示す。図16(a)に示すように、螺旋状シート部材210を軸方向に伸長させる。例えば、両端を、軸方向において互いに反対方向に引っ張ることで、螺旋状シート部材210に軸方向に隙間を生じさせ、伸長させることができる(図16(a)の矢印80参照)。螺旋状シート部材210を伸長させることによって、螺旋状シート部材210を縮径することができる。
あるいは、図16(b)に示すように、螺旋状シート部材210を周方向に捻じる。例えば、両端を、周方向において互いに反対方向に回転させることで、螺旋状シート部材210を周方向に捻じることができる(図16(b)の矢印81参照)。螺旋状シート部材210を周方向に捻じることにより、螺旋状シート部材210を縮径することができる。
あるいは、図16(c)に示すように、軸方向に垂直な方向における断面の形状が凹型形状になるように螺旋状シート部材210を変形させる。例えば、螺旋状シート部材210の外面のうち、周方向の所定の範囲にある領域を軸方向長さに亘って径方向内側に押圧することによって(図16(c)の矢印82参照)、軸方向に垂直な方向における断面の形状が凹型形状になるように螺旋状シート部材210を変形させることができる。このようにして、軸方向に垂直な方向における断面の断面積を変形前よりも小さくし、縮径させることができる。
このように、螺旋状シート部材210を縮径させることで、螺旋状シート部材210を外側チューブ22に挿入しやすくすることができる。螺旋状シート部材210は、軸方向に隙間を生じることができるため、図16(a)に示したように軸方向に伸長させることが、特に容易に行うことができる。
また、図17は縮径された構造体21としての複数の筒状部材220のうちの1つの例を示す。図17(a)に示すように、筒状部材220を軸方向に伸長させる。例えば、両端を、軸方向において互いに反対方向に引っ張ることで、筒状部材220を伸長させることができる(図17(a)の矢印80参照)。筒状部材220を伸長させることによって、筒状部材220を縮径することができる。
あるいは、図17(b)に示すように、筒状部材220を周方向に捻じる。例えば、両端を、周方向において互いに反対方向に回転させることで、筒状部材220を周方向に捻じることができる(図17(b)の矢印81参照)。筒状部材220を周方向に捻じることにより、筒状部材220を縮径することができる。
あるいは、図17(c)に示すように、軸方向に垂直な方向における断面の形状が凹型形状になるように筒状部材220を変形させる。例えば、筒状部材220の外面のうち、周方向の所定の範囲にある領域を軸方向長さに亘って径方向内側に押圧することによって(図17(c)の矢印82参照)、軸方向に垂直な方向における断面の形状が凹型形状になるように筒状部材220を変形させることができる。このようにして、軸方向に垂直な方向における断面の断面積を変形前よりも小さくし、縮径させることができる。
このように、筒状部材220を縮径させることで、筒状部材220を外側チューブ22に挿入しやすくすることができる。筒状部材220は、軸方向に短いため、図17(c)に示したように断面の形状を凹形状となるように変形させることが、特に容易に行うことができる。
なお、短冊状シート部材230は、図15(c)に示したように、その外径が外側チューブ22の内径よりも十分に小さいため、縮径させる必要がない。
好ましくは、芯棒治具83を用いて構造体21を外側チューブ22に挿入する。図18は芯棒治具83を構造体21としての螺旋状シート部材210に用いた場合の使用例を示す。芯棒治具83は、例えば、円柱状の中実の金属棒とすることができる。芯棒治具83の直径は螺旋状シート部材210の内径と同程度か僅かに小さい。図18(a)に示すように、芯棒治具83を螺旋状シート部材210に挿入する。そして、芯棒治具83が螺旋状シート部材210に挿入された状態で、芯棒治具83及び螺旋状シート部材210を外側チューブ22に挿入する。より具体的に、芯棒治具83及び螺旋状シート部材210を外側チューブ22の一端から他端に向かって外側チューブ22内に挿入していき、螺旋状シート部材210が外側チューブ22の所定の位置に達するまで外側チューブ22に対して螺旋状シート部材210を移動させる。このようにすることで、芯棒治具83を使用せずに螺旋状シート部材210を単体で挿入するときよりも容易に螺旋状シート部材210を外側チューブ22に挿入することができる。
また、より好ましくは、螺旋状シート部材210の一方の端部を固定治具としての芯棒治具83に固定する。図18(b)、(c)に示すように、芯棒治具83の一方の端部には、螺旋状シート部材210を芯棒治具83に固定可能なキャップ部材84が設けられている。キャップ部材84は、内部に、芯棒治具83の直径よりもわずかに小さい又は同程度の直径を有する円柱形状の穴85を区画している。そのため、キャップ部材84の穴85内に芯棒治具83の一端を嵌合させると、穴85を区画する内面が、芯棒治具83の外面と密着した状態となる。図18(b)及び(c)に示すように、螺旋状シート部材210を芯棒治具83の外面と穴85を区画する内面とで挟持することで、螺旋状シート部材210を芯棒治具83に固定することができる。なお、キャップ部材84の穴85内に芯棒治具83の一端が嵌合した状態において、キャップ部材84の外径は、螺旋状シート部材210の外径よりも小さい又は螺旋状シート部材210の外径と略等しい。本実施形態では、図18(b)及び(c)に示すように、キャップ部材84の穴85内に嵌合する芯棒治具83の一端を、先端側に向かって縮径するテーパ形状とすることで、これを実現している。
螺旋状シート部材210が芯棒治具83に固定されている場合、芯棒治具83と外側チューブ22との相対移動のみによって、螺旋状シート部材210を外側チューブ22に対して移動することができ、螺旋状シート部材210が芯棒治具83に固定されていない場合よりもスムーズに螺旋状シート部材210を外側チューブ22に挿入することができる。なお、キャップ部材84の構成は、螺旋状シート部材210を芯棒治具83に固定可能な構成であれば図18(b)、(c)に示す構成に限られるものではない。例えば、図18(b)、(c)に示すキャップ部材84は、螺旋状シート部材210の挿入方向の先端側で芯棒治具83に取り付けられ、螺旋状シート部材210及び芯棒治具83と共に外側チューブ22内に挿入されるものであるが、螺旋状シート部材210の挿入方向の後端側で芯棒治具83に取り付けられ、外側チューブ22内に挿入されないキャップ部材としてもよい。なお、キャップ部材84が外側チューブ22内に挿入せずに用いられる場合、キャップ部材84は螺旋状シート部材210の外径よりも大きい外径を有するものであってもよい。
なお、図18では、構造体21として螺旋状シート部材210を用いた例を示したが、他の構造体21を用いることもできる。構造体21として複数の筒状部材220を用いる場合には、例えば筒状部材220を1つずつ固定して、繰り返し挿入することができる。また、構造体21として複数の短冊状シート部材230を用いる場合には、例えば複数の短冊状シート部材230をまとめて固定して、一度に複数の短冊状シート部材230を挿入することができる。
また、芯棒治具83に代えて、固定治具として固定部材110を用いて構造体21を縮径させた状態で固定することもできる。図19は固定部材110を用いて構造体21としての螺旋状シート部材210を縮径させた状態で固定する例を示す。固定部材110は、棒状の本体部111と、本体部111の両端に設けられ、螺旋状シート部材210を本体部111と共に挟持することにより螺旋状シート部材210の本体部111に対する位置を固定するフック部112とを備える。本体部111は、例えば、円柱状の中実の金属棒とすることができる。螺旋状シート部材210に固定部材110の本体部111を挿入し、例えば上述の方法(図16参照)で螺旋状シート部材210を縮径し、その状態で、螺旋状シート部材210を固定部材110に固定する。具体的には、図19(a)に示すように、螺旋状シート部材210を伸長させた状態で螺旋状シート部材210の両端をフック部112で挟み込むことにより、螺旋状シート部材210を本体部111に対して固定することができる。また、図19(b)に示すように、螺旋状シート部材210を捻じった状態で螺旋状シート部材210の両端をフック部112で挟み込むことにより、螺旋状シート部材210を本体部111に対して固定することができる。このように、固定部材110によれば、螺旋状シート部材210を縮径させた状態で形状を維持することができる。そのため、固定部材110を使用しない場合と比較して、螺旋状シート部材210を固定部材110と共に外側チューブ22に容易に挿入することができる。
なお、上述の例では芯棒治具83及び固定部材110の本体部111は中実の金属棒としたが、これに限定されるものではなく、例えば、中空の金属棒や樹脂棒とすることも可能である。この他に、自己拡張型の網状筒部材や渦巻き状や螺旋状のバネ部材等の弾性部材、空気圧や水圧等で拡張するバルーン、等の拡張体としてもよい。
また、図19では、構造体21として螺旋状シート部材210を用いた例を示したが、他の構造体21を用いる場合も同様である。構造体21として複数の筒状部材220を用いる場合には、例えば筒状部材220を1つずつ固定して、繰り返し挿入することができる。なお、構造体21として複数の短冊状シート部材230を用いる場合には、縮径が必要ないため、本方法を用いる必要がない。また、図18では構造体21としての螺旋状シート部材210を縮径していない状態で芯棒治具83に固定するキャップ部材84を示したが、構造体21を縮径した状態で、キャップ部材84を用いて芯棒治具83に固定してもよい。かかる場合には、芯棒治具83の両端にキャップ部材84を取り付ければよい。換言すれば、図19に示す固定部材110に代えて、芯棒治具83とキャップ部材84とにより固定部材を構成してもよい。
<構造体21と外側チューブ22とを一体化する工程(P2)>
次に、構造体21と外側チューブ22とを一体化する工程(P2)について説明する。構造体21が外側チューブ22に挿入された状態において、これらを外部から加熱する。加熱装置としては、例えば、ヒーター、超音波発生装置、高周波発生装置を使用することができる。加熱する態様の一例として、例えば、構造体21が挿入された外側チューブ22をオーブン(不図示)に投入し、オーブン内で加熱することができる。設定温度は、好ましくは、100〜180度、より好ましくは150度とする。上述のように外側チューブ22の素材は熱可塑性を有し、外部からの加熱により収縮する性質を有する。従って、外部から加熱することにより、外側チューブ22が縮径して、外側チューブ22の内面が構造体21の外面に密着する。このようにして、外側チューブ22が構造体21の外面上に固定されることにより、構造体21と外側チューブ22とが一体化される。更に、外側チューブ22の内面及び構造体21の外面を溶融させて溶着することにより、外側チューブ22と構造体21とをより強固に一体化させてもよい。
好ましくは、形状維持治具を外側チューブ22及び構造体21の内側に位置させた状態で、構造体21と外側チューブ22とを一体化する。形状維持治具としては、例えば、上述した芯棒治具83を利用することができる。形状維持治具としての芯棒治具83を外側チューブ22及び構造体21の内側に挿入したままの状態で、構造体21と芯棒治具83と外側チューブ22とをオーブンに投入して加熱する。加熱の際に、外側チューブ22及び構造体21の内側に芯棒治具83が位置することにより、外側チューブ22が縮径する際に、構造体21の形状や配置が崩れないようにすることができる。そのため、外側チューブ22と構造体21とをより強固に一体化することができると共に、製造されるチューブ本体2(図2参照)の断面形状をより均一化することができる。なお、ここでは、工程(P1)で構造体21を外側チューブ22に挿入する際に利用した芯棒治具83を形状維持治具として、本工程(P2)でもそのまま利用しているが、芯棒治具83に代えて別の芯棒治具やその他の治具などを形状維持治具として新たに挿入するようにしてもよい。
上述の例では、外部からの加熱による一体化を説明したが、これに限定されるものではなく、溶剤や接着剤を使用して構造体21の外面と外側チューブ22の内面とを一体化する方法でもよい。接着剤は、瞬間接着剤やUV硬化型のものを使用できる。なお、構造体21及び外側チューブ22と同等の柔軟性を持つものであることが好ましい。
以上のようにして、構造体21と外側チューブ22とが一体化され、チューブ材を形成することができ、このチューブ材に各種加工を施すことにより、医療用チューブとしてのチューブ本体2を形成することができる。なお、加熱の際に芯棒治具83等の形状維持治具を使用した場合は、構造体21と外側チューブ22とが一体化された後、芯棒治具83等の形状維持治具を構造体21から抜去してチューブ材を形成し、医療用チューブとしてのチューブ本体2を形成する。また、形成されたチューブの両端をカット処理することにより、チューブ本体2を形成するようにしてもよい。
好ましくは、芯棒治具83の少なくとも一部が湾曲しており、芯棒治具83に沿って構造体21及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させるようにする。このようにすれば、チューブ本体2の湾曲部10(図2参照)を形成することができる。なお、少なくとも一部が湾曲した芯棒治具83を構造体21に挿入した状態で、構造体21及び外側チューブ22をオーブン内で加熱した後、冷却する。このようにすることで、湾曲した形状が維持されたチューブ本体2を作成することができる。なお、本工程(P2)において外側チューブ22と構造体21とを一体化した後に、少なくとも一部が湾曲した湾曲棒部材を挿入し、湾曲棒部材に沿って外側チューブ22及び構造体21を湾曲させ、加熱及び冷却を行ってもよい。
また、芯棒治具83を使用せずに、構造体21及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させる方法でもよい。具体的には、構造体21が外側チューブ22に挿入された状態において、外側チューブ22の外部から力を加えることによって構造体21及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させる。このようにして、チューブ本体2の湾曲部10(図2参照)を形成してもよい。外側チューブ22の外部から力を加える方法としては、例えば、構造体21及び外側チューブ22の少なくとも一部を湾曲させた所望の姿勢で維持可能な受け面を有する金型を使用することができる。また、このような金型の使用に加えて、外側チューブ22及び構造体21の内側に、直線状であって、外力を加えることにより変形可能な芯棒部材を挿入するようにしてもよい。つまり、外側チューブ22及び構造体21の内側に直線状の芯棒部材を挿入し、挿入後にこの芯棒部材を湾曲させ、次いで、金型を使用してその湾曲した状態を外部から固定することにより、少なくとも一部に湾曲部を有するチューブ本体を形成してもよい。なお、湾曲可能な芯棒部材としては、柔軟性を有するシリコーン樹脂や形状記憶合金などから形成すればよい。上述した芯棒治具83を、このような変形可能な芯棒部材で構成してもよい。
最後に、上述した内周面31に微細凹凸構造100を有するチューブ本体2の壁内に、複数のルーメンを成形する方法の一例を説明する。図20に示すように、外側チューブ22の内壁42に3つの溝43a、43b、43cを区画する。3つの溝43a、43b、43cは外側チューブ22の軸方向に、外側チューブ22の一端から他端まで延在する。この外側チューブ22に構造体21を挿入し、構造体21と外側チューブ22とを一体化する。構造体21と外側チューブ22とが一体化されると、3つの溝43a、43b、43cを区画する外側チューブ22の内壁42と構造体21の外面とで、一端から他端まで貫通する第1〜第3ルーメン12〜14の原形となる3つの中空部を形成することができる。このような方法により、第1〜第3ルーメン12〜14を形成してもよい。
本発明に係る医療用チューブの製造方法は、上述した実施形態で説明した具体的な方法に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことが可能である。例えば、上述した実施形態では、医療用チューブとしてのチューブ本体2の製造方法について説明したが、本発明に係るチューブの製造方法は、気管チューブのチューブ本体に限らず、他の用途や目的で使用される医療用チューブの製造方法としても適用可能である。
本発明に係る製造方法により製造可能な医療用チューブとしては、例えば、(1)胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用チューブなどの経口もしくは経鼻的に消化器官内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(2)酸素カテーテル、気管内チューブ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(3)尿道カテーテル、導尿カテーテル、尿道バルーンカテーテルのカテーテルやバルーンなどの尿道ないし尿管内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(4)吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(5)輸液チューブ、IVH(intravenous hyperalimentationの略)カテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーターあるいはイントロデューサーなどの血管内に間接的あるいは直接的に挿入ないし留置されるカテーテル類;(6)人工気管、人工気管支などの医療用人工管;(7)体外循環治療用の医療器具(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)の回路類、などが挙げられる。
本発明に係る製造方法により製造される各種医療用チューブによれば、広範囲の生物学的物質又は医療用液体が内面に付着することを抑制することができる。なお、「生物学的物質」としては、例えば、全血、血漿、血清、汗、便、尿、唾液、涙、膣液、前立腺液、歯肉滲出液、羊水、眼液、脳脊髄液、精液、痰、腹水、膿、鼻咽頭液、創傷浸出液、房水、硝子体液、胆汁、耳垢、内リンパ、外リンパ、胃液、粘液、腹液、胸水、皮脂、嘔吐物、これらの組み合わせからなる群、などが挙げられる。また、「医療用液体」としては、例えば、輸液剤、栄養剤、造影剤、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などで使用される塞栓剤、などが挙げられる。