JP2017169367A - 電池装置、残量推定装置および残量推定方法 - Google Patents

電池装置、残量推定装置および残量推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の二次電池を備える電池モジュールの残量を正確に推定する電池装置、残量推定装置および残量推定方法を提供する。
【解決手段】直列接続された複数の二次電池(セル21A,21B,21C)を含む電池モジュール20と、複数の二次電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部(電圧センサ18)と、電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定し、当該特定した二次電池の電圧に基づいて電池モジュールの残量を推定する推定部10と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、電池モジュールの残量を正確に推定する電池装置、残量推定装置および残量推定方法に関する。
自動車等の車両には、リチャージャブル・バッテリ(二次電池)が搭載されることが多い。このような二次電池は、例えばエンジン等から伝達される機械的運動エネルギーをオルタネーターで変換して得られる電気エネルギーを蓄積(充電)し、車両を駆動するためのモータへ電気エネルギーを供給(放電)する。
ここで、複数の二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)のセルを直列に接続した電池モジュールが車両に搭載されることがある。このような電池モジュールで充放電が繰り返されると一部のセルが劣化し、各セルの充電率(充電量)に差が生じることがある。そのため、最も劣化したセルを正確に把握して、そのセルの特性に合わせて放電を行うことが、電池モジュールの利用効率の向上につながる。
例えば、特許文献1の技術は、各セルの電圧を測定して、最も電圧の低いセルが最も劣化しているため最も早く完全放電すると判断する。そして、特許文献1の技術は、そのセルの電圧に基づいて電池モジュールの残量を推定する。
特開平10−23674号公報
ここで、常時放電する電池モジュールでは最も電圧の低いセルが最も早く完全放電する。しかし、車両に搭載される電池モジュールでは回生時に充電が行われる。そのため、最も早く完全放電するセルが常に最も低い電圧となるとは限らない。なぜならば、最も劣化したセルは内部抵抗が大きいため、放電時には電圧が低下しやすいが、充電時には電圧が上昇しやすいからである。つまり、最も早く完全放電するセルが、回生時の充電等により他のセルよりも電圧が高くなる状態も存在し得る。このような場合、特許文献1記載の技術では、最も早く完全放電するセル(最も劣化したセル)を正確に選択できず、電池モジュールにまだ残量があると推定し過放電を生じるおそれがあった。したがって、車両に使用される場合も含めて、複数の二次電池を備える電池モジュールの残量をより正確に推定できる技術が求められている。
前記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、複数の二次電池を備える電池モジュールの残量を正確に推定する電池装置、残量推定装置および残量推定方法を提供することにある。
前記課題を解決するために第1の観点に係る電池装置は、直列接続された複数の二次電池を含む電池モジュールと、前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、前記電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定し、当該特定した二次電池の電圧に基づいて前記電池モジュールの残量を推定する推定部と、を備える。
また、第2の観点に係る電池装置は、第1の観点の電池装置において、前記推定部が、前記電池モジュールの非充電時に、前記電圧計測部によって計測された電圧のピークホールド処理を実行し、前記ピークホールド処理で最小値を示す二次電池を前記電圧の変動が最も大きい二次電池として特定する。
また、第3の観点に係る電池装置は、第2の観点の電池装置において、前記推定部が、前記ピークホールド処理の前に、前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を均等化する。
また、第4の観点に係る電池装置は、第1の観点の電池装置において、前記推定部が、前記電池モジュールの充電時に、前記電圧計測部によって計測された電圧が上限値となった二次電池を前記電圧の変動が最も大きい二次電池として特定する。
また、第5の観点に係る電池装置は、第4の観点の電池装置において、記憶部を備え、前記推定部が、前記特定された二次電池の電圧と前記電池モジュールの残量とを関連付けた残量推定情報を前記記憶部に記憶させ、前記残量推定情報が前記記憶部に記憶されている場合に、前記残量推定情報を用いて前記電池モジュールの残量を推定する。
また、第6の観点に係る電池装置は、第5の観点の電池装置において、前記推定部が、前記電池モジュールの充電が開始された後で停止した場合に、前記残量推定情報を用いて前記電池モジュールの残量を推定する。
また、第7の観点に係る電池装置は、第5または第6の観点の電池装置において、前記推定部が、前記電池モジュールの放電が開始された場合に、前記残量推定情報を用いて前記電池モジュールの残量を推定する。
また、第8の観点に係る残量推定装置は、直列接続された複数の二次電池を含む電池モジュールと接続される残量推定装置であって、前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、前記電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定し、当該特定した二次電池の電圧に基づいて前記電池モジュールの残量を推定する推定部と、を備える。
また、第9の観点に係る残量推定方法は、直列接続された複数の二次電池を含む電池モジュールと接続される残量推定装置が実行する残量推定方法であって、前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測ステップと、前記電圧計測ステップにおいて計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定する特定ステップと、前記特定ステップにおいて特定した二次電池の電圧に基づいて前記電池モジュールの残量を推定するステップと、を含む。
第1の観点に係る電池装置によれば、推定部は電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定し、特定された二次電池の電圧に基づいて電池モジュールの残量を推定する。最も劣化した二次電池は内部抵抗が大きいため、電池モジュールの放電時には電圧が低くなりやすいが、電池モジュールの充電時および回生時には電圧が高くなりやすい。つまり、最も劣化した二次電池は電圧の変動が最も大きい。本観点に係る電池装置は、電圧の変動の大きさの観点から最も劣化した二次電池を特定するので、電池モジュールの残量を正確に推定することができる。
また、第2の観点に係る電池装置によれば、電池モジュールの非充電時に電圧のピークホールド処理で最小値を示す二次電池、すなわち放電時の電圧の変動(低下)が最も大きい二次電池を特定する。本観点に係る電池装置は、ピークホールド処理を行うことで回生時の電圧上昇の影響を受けることなく、最も劣化した二次電池を正確にかつ短時間で特定することができる。
また、第3の観点に係る電池装置によれば、ピークホールド処理の前に、前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を均等化する。本観点に係る電池装置は、最も劣化した二次電池を一層正確に特定することができる。
また、第4の観点に係る電池装置によれば、電池モジュールの充電時に電圧が上限値となった二次電池、すなわち放電時の電圧の変動(上昇)が最も大きい二次電池を特定する。本観点に係る電池装置は、電池モジュールの充電時に電圧と上限値とを比較することで、最も劣化した二次電池を正確に特定することができる。
また、第5の観点に係る電池装置によれば、特定された二次電池(最も劣化した二次電池)の電圧と電池モジュールの残量とを関連付けた残量推定情報を記憶部に記憶して、その後は残量推定情報を用いて電池モジュールの残量を推定する。本観点に係る電池装置は、電池モジュールの残量を効率的に推定することができる。
また、第6の観点に係る電池装置によれば、電池モジュールの充電が開始された後で停止した場合に、電池モジュールの残量を推定する。本観点に係る電池装置は、電池モジュールの残量を効率的に推定することができる。
また、第7の観点に係る電池装置によれば、電池モジュールの放電が開始された場合に、電池モジュールの残量を推定する。本観点に係る電池装置は、電池モジュールの残量を効率的に推定することができる。
また、第8の観点に係る残量推定装置によれば、推定部は電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定し、特定された二次電池の電圧に基づいて電池モジュールの残量を推定する。本観点に係る電池装置は、電圧の変動の大きさの観点から最も劣化した二次電池を特定するので、電池モジュールの残量を正確に推定することができる。
また、第9の観点に係る残量推定方法によれば、電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定するステップと、特定された二次電池の電圧に基づいて電池モジュールの残量を推定するステップとを含む。本観点に係る電池装置は、電圧の変動の大きさの観点から最も劣化した二次電池を特定するので、電池モジュールの残量を正確に推定することができる。
実施形態に係る電池装置を示すブロック図である。 複数の二次電池の電圧の時間変化を例示する図である。 ピークホールド処理を説明するための図である。 電圧の均等化を行っていない複数の二次電池の電圧の時間変化を例示する図である。 図5(A)は充電時の電流の時間変化を例示する図である。図5(B)は充電時の複数の二次電池の電圧の時間変化を例示する図である。 実施形態の残量推定方法の処理を示す図である。 実施形態の残量推定方法の第1の処理を示す図である。 実施形態の残量推定方法の第2の処理を示す図である。 実施形態の残量推定方法の第3の処理を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(全体構成)
まず、本実施形態に係る電池装置1の全体構成を、図1を参照しながら説明する。電池装置1は、電池モジュール20と、残量推定装置2とを備える。
電池モジュール20は、直列接続されたセル21A,21B,21Cを備える。セル21A,21B,21Cはリチウムイオン二次電池である。本実施形態において、電池モジュール20は自動車等の車両に搭載されている。電池モジュール20を充電器によって充電する場合には、車両のシステムによってスイッチ100が図1のa側に接続される。車両の走行時には、車両のシステムによってスイッチ100が図1のb側に接続される。さらに、車両が走行中であって、減速時、制動時ならば車両のシステムによってスイッチ101が図1のc側に接続される。このとき、電池モジュール20は、車両の機械的運動エネルギーを発電機(オルタネーター)で変換して得られる電気エネルギーを充電する。また、車両が走行中であって、減速時でも制動時でもない(例えば加速時等)ならば車両のシステムによってスイッチ101が図1のd側に接続される。このとき、電池モジュール20は放電して電気負荷(例えば車両の駆動モータ等)へ電気エネルギーを供給する。なお、本実施形態において、電池モジュール20は3つのセル21A,21B,21Cを備えるが複数であれば特に限定されない。また、セル21A,21B,21Cは二次電池であれば特にリチウムイオン電池に限定されず、他の種類の電池(例えばリチウムポリマー電池等)であってもよい。
本明細書においては、車両のシステムによってスイッチ100が図1のa側に接続されて電池モジュール20が充電されている場合を「充電時」という。また、車両のシステムによってスイッチ100が図1のb側に接続され、かつスイッチ101が図1のc側に接続されて電池モジュール20が充電されている場合を「回生時」という。また、車両のシステムによってスイッチ100が図1のb側に接続され、かつスイッチ101が図1のd側に接続されて電池モジュール20が放電している場合を「放電時」という。そして、「回生時」と「放電時」とをあわせて「非充電時」という。
残量推定装置2は、推定部10と、表示部12と、記憶部16と、電圧センサ18と、セルバランス回路30と、を備える。残量推定装置2は、電池モジュール20と接続されてセル21A,21B,21Cのいずれかの電圧に基づいて電池モジュール20の残量を推定する装置である。
セルバランス回路30は、抵抗31A,31B,31Cと、スイッチ32A,32B,32Cと、を備える。セルバランス回路30は、抵抗31A,31B,31Cとスイッチ32A,32B,32Cとが交互に直列接続された構成を有する。そして、抵抗31Aとスイッチ32Aとはセル21Aに並列に接続される。同様に、抵抗31Bとスイッチ32Bとはセル21Bに並列に接続され、抵抗31Cとスイッチ32Cとはセル21Cに並列に接続される。スイッチ32A,32B,32Cは個別に推定部10によってオン(電気的な接続状態)またはオフ(電気的な切断状態)に設定される。例えばスイッチ32Aがオンになるとセル21Aの電力が抵抗31Aによって熱に変換されるので、セル21Aの充電率を調整する(下げる)ことができる。同様に、スイッチ32B,32Cがそれぞれオンになることで、セル21B,21Cのそれぞれの充電率(および充電率と対応づけられる電圧)を調整することができる。つまり、本実施形態に係る電池装置1において、推定部10がセルバランス回路30のスイッチ32A,32B,32Cのオンとオフとを切り替えることにより、効率的にセル21A,21B,21Cの電圧を均等化することができる。
電圧センサ18は、セル21A,21B,21Cのそれぞれの電圧を計測する。電圧センサ18は、本発明の電圧計測部に対応する。電圧センサ18が計測したセル21A,21B,21Cの電圧は推定部10に出力される。セル21A,21B,21Cの電圧の情報は推定部10によって記憶部16に記憶されてもよい。ここで、セル21A,21B,21Cの充電率は電圧と対応づけられるため、公知の手法でセル21A,21B,21Cの電圧から充電率を推定可能である。そして、算出された充電率から電池モジュール20の残量を算出できるから、電圧センサ18が計測したセル21A,21B,21Cの電圧から電池モジュール20の残量を推定できる。
表示部12は、推定部10が推定した電池モジュール20の残量を受け取って表示する。表示部12は例えば小型の液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイまたは無機ELディスプレイ等の表示デバイスであってもよい。表示部12は、電池装置1の筐体部分の一部に設けられていてもよいし、配線等によって電池装置1から離れて車両の室内に設けられてもよい。表示部12において、電池モジュール20の残量は例えば80%等といった数値で示されてもよいし、充電インジケーターの点灯、表示色の変化等で示されてもよい。
記憶部16は、推定部10が電池モジュール20の残量を推定する一連の処理で用いる情報(例えばセル21A,21B,21Cの電圧、後述する残量推定情報等)を記憶する。記憶部16は例えば各種のメモリやハードディスク等であってもよい。記憶部16に記憶された情報は、推定部10によって読み出されたり、更新されたりする。また、推定部10がプログラムを読み込むことによって残量推定装置2が電池モジュール20の残量を推定する処理(以下、残量推定処理ともいう)を実行する場合には、記憶部16はプログラムの格納場所であってもよい。
推定部10は、残量推定装置2を制御して残量推定処理を実行する。推定部10は、例えば特定のプログラムを読み込むことにより特定の機能を実現するCPUである。推定部10は、電池モジュール20のセル21A,21B,21Cのうちで電圧の変動が最も大きいものを特定する。そして、特定されたセル(例えば、セル21B)の電圧に基づいて電池モジュール20の残量を推定する。残量推定処理の詳細については後述する。
(残量推定方法の概要)
以下に、本実施形態に係る電池装置1の残量推定装置2が実行する残量推定処理(すなわち、残量推定方法)の概要について説明する。残量推定処理のうち、まず非充電時(放電時および回生時)の処理について説明し、その後に充電時の処理について説明する。
図2は、車両の走行時のセル21Aおよびセル21Bの電圧の時間変化を例示する図である。セル21Cの電圧の時間変化はセル21Aとほぼ同じであるため図示および以下の説明を省略する。図2の破線Caはセル21Aの電圧の時間変化を示し、実線Cbはセル21Bの電圧の時間変化を示す。電圧の測定を開始した時刻t0においては、セル21Aおよびセル21Bの電圧はともにV0で同じである。時刻t0から時刻t1までの期間T1では車両が減速して、セル21Aおよびセル21Bは発電機(オルタネーター)によって充電される。つまり、期間T1は回生時である。また、時刻t1から時刻t2までの期間T2では車両が加速して、セル21Aおよびセル21Bは放電する。その後、時刻t2から時刻t3までの期間T3でセル21Aおよびセル21Bは充電されて、時刻t3から時刻t4までの期間T4でセル21Aおよびセル21Bは放電する。このように、車両の走行時のセル21Aおよびセル21Bは充電と放電が繰り返される。
図2において、セル21Aの電圧の時間変化を示す破線Caよりも、セル21Bの電圧の時間変化を示す実線Cbの方が、電圧の変動が大きい。ここで、電圧の変動は、ある期間における最も低い電圧と最も高い電圧との差をいう。例えば、期間T1において充電の条件は同じであるが、時刻t1におけるセル21Aの電圧V1aよりもセル21Bの電圧V1bの方が高い。また例えば、期間T2において放電の条件は同じであるが、時刻t2におけるセル21Aの電圧V2aよりもセル21Bの電圧V2bの方が低い。期間T1においても期間T2においても、セル21Bはセル21Aより電圧の変動が大きい。劣化した二次電池のセルは内部抵抗が大きいため、放電時には電圧が低下しやすいが、回生時には電圧が上昇しやすい。そのため、セル21Bはセル21Aよりも劣化が進んでいる。
ここで、上記のように、特許文献1の技術は最も電圧の低いセルが最も劣化していると判断する。しかし、セル21Aおよびセル21Bが発電機(オルタネーター)によって充電される期間T1では、セル21Aよりも劣化が進んでいるセル21Bの方がより高い電圧を示す。そのため、特許文献1の技術は、回生時に実行すると、劣化の少ないセルを誤って最も劣化したセルであると特定し得る。つまり、特許文献1の技術は、誤った残量推定処理をする可能性があった。
(非充電時の処理の概要)
図3は、本実施形態に係る電池装置1の非充電時の残量推定処理のために実行されるピークホールド処理を説明する図である。図3の破線Ca(セル21Aの電圧の時間変化)および実線Cb(セル21Bの電圧の時間変化)は図2と同じである。一般にピークホールド処理は最も大きい値、または最も小さい値を一定にホールド(保持)する処理をいう。本実施形態に係る電池装置1では、最も低い電圧(以下、最低電圧という)についてピークホールド処理を実行して、最も劣化したセルを特定する。
推定部10は、電圧センサ18から計測したセル21Aおよび21Bの電圧を受け取る。推定部10は、セル21Aおよび21Bについて、それまでの最低電圧をホールドしておき、電圧センサ18から最低電圧よりも低い電圧を受け取った場合に最低電圧を更新する。ピークホールド処理を開始する時刻t0で、セル21A,21Bの最低電圧はV0である。セル21Aおよび21Bの電圧がV0以上である時刻tpまで、推定部10は最低電圧をV0にホールドする。その後、放電によってセル21Aおよび21Bの電圧がV0未満になると、推定部10は最低電圧を更新する。そして、時刻tq以降に充電によってセル21Aおよび21Bの電圧が上昇すると、推定部10は時刻tqにおけるセル21Aおよび21Bの電圧をそれぞれホールドする。推定部10のピークホールド処理の結果、セル21Aの最低電圧は破線Paのように変化し、セル21Bの最低電圧は実線Pbのように変化する。このとき、セル21Bの最低電圧は、常にセル21Aの最低電圧以下である。つまり、推定部10はピークホールド処理によって、回生時の電圧の上昇に影響されることなく最も劣化したセルを特定することが可能である。図3の例では時刻t0から時刻trまでの期間Trでピークホールド処理が実行されて、推定部10は時刻trでの最低電圧を比較して最も劣化したセルを特定する。セル21Aの時刻trでの最低電圧はVraである。一方、セル21Bの時刻trでの最低電圧はVrbであり、Vraよりも低い。図3の例では、推定部10はセル21Bを最も劣化したセルと特定する。ここで、上記のように、ピークホールド処理において、最も劣化しているセルの最低電圧が他のセルの最低電圧を上回ることはない。そのため、期間Trを設けることなく、比較するセルの最低電圧に差が生じた時点(図3の例では時刻tpより後)で推定部10は最も劣化しているセルを特定することができる。つまり、本実施形態に係る電池装置1は、電池モジュール20の非充電時にピークホールド処理を行うことで、最も劣化したセルを正確にかつ短時間で特定することが可能である。
ここで、図4は電圧の均等化を行っていないセル21Aおよびセル21Bの電圧の時間変化を例示する図である。図4の破線Ca(セル21Aの電圧の時間変化)および実線Cb(セル21Bの電圧の時間変化)は図2および図3と同じである。セルの電圧の均等化は、電池モジュール20を構成する各セルの充電率を調整して、充電率と対応づけられる電圧を均等化することである。図4の例では、時刻t0においてセル21Aの電圧はV0aであるのに対し、セル21Bの電圧はV0bである。つまり、セル21Aの電圧とセル21Bの電圧とは均等化されていない。そのため、例えば時刻tsにおいて、セル21Aの最低電圧(Vsa)は、セル21Bの最低電圧(Vsb)よりも低い。そのため、図4の例では、推定部10がピークホールド処理をしても誤ってセル21Aが最も劣化したセルと特定されてしまう。
誤った特定を回避するため、推定部10はピークホールド処理の前に、複数の二次電池(図4の例ではセル21Aおよび21B)のそれぞれの電圧を均等化するセルバランス処理を実行してもよい。セルバランス処理を実行すれば、ピークホールド処理を開始する時刻t0で、図2のように電圧を均等化することができる。セルバランス処理は推定部10がセルバランス回路30のスイッチ32A,32Bを制御することで実行できる。詳細に述べると、まず推定部10は電圧センサ18が計測したセル21Aおよびセル21Bの電圧を受け取る。推定部10は受け取った電圧を比較して、低い方の電圧に揃えるように、高い方の電圧を有するセルに接続されたスイッチ(スイッチ32Aまたはスイッチ32B)をオンにして放電させる。そして、セル21Aおよびセル21Bの電圧が均等になったらスイッチをオフにする。このように、推定部10がピークホールド処理の前にセルバランス処理を実行することで、最も劣化したセルを一層正確に特定することができる。
(充電時の処理の概要)
次に、本実施形態に係る電池装置1の充電時の残量推定処理のために実行される処理について説明する。図5(A)は充電時の電流の時間変化を例示する図である。充電時の電流は充電器(図1参照)から供給される。また、図5(B)は充電時の複数の二次電池(この例ではセル21Aおよびセル21B)の電圧の時間変化を例示する図である。図5(A)と図5(B)の時間軸は同じである。
図5(A)および図5(B)に示されるように、時刻txに充電が開始され、時刻tyまでは電流Icを供給する定電流充電(CC充電)が実行される。電圧が上限値Vmaxに近づいた時刻tyからは定電圧充電(CV充電)が実行される。そして、いずれかの二次電池(図5(B)の例ではセル21B)の電圧が上限値Vmaxとなった時刻tzで充電は終了する。ここで、上限値Vmaxはセル1つ当たりの上限電圧(100%の充電率に対応する電圧)を示す。また、図2〜図4と同様に、破線Caはセル21Aの電圧の時間変化を示し、実線Cbはセル21Bの電圧の時間変化を示す。
劣化した二次電池のセルは内部抵抗が大きいため、充電時においても電圧の変動が大きい。したがって、充電時には、最も劣化したセルの電圧が最も速く上限値に達する。例えば図5(B)の例では、より劣化したセル21Bがセル21Aよりも速くに上限値Vmaxに達している。このことにより、電池モジュール20の充電時においては、各セルの電圧と上限値Vmaxとを比較することで、最も劣化した二次電池を正確に特定することができる。
そして、セル21Bの電圧が上限値Vmaxとなった時点で電池モジュール20の充電は完了し、電池モジュール20の残量は100%になったと認識される。言い換えると、電池モジュール20の残量は最も劣化したセルの電圧と対応する。したがって、充電時における最も劣化したセルの電圧と電池モジュール20の残量とを関連付けた残量推定情報を記憶部16に記憶することにより、その後は残量推定情報を用いて電池モジュールの残量を効率的に推定することが可能である。図5(B)の例では、推定部10は、まずセル21Bの電圧の上限値Vmaxと残量の100%とを関連付ける。推定部10は、例えば公知の手法でセル21Bの電圧(上限値Vmax以外)から充電率を推定して、残量が100%のときの電池モジュール20の充電率と比較することで残量推定情報を生成可能である。ここで、残量推定情報は最も劣化したセル(本発明の特定されたセル)の情報も含む。
(残量推定処理の流れ)
以下に、本実施形態に係る電池装置1の残量推定装置2が実行する残量推定処理を図6〜図9のフローチャートを参照しながら説明する。なお、電池装置1は図1の構成であって、電池モジュール20は3つの3つのセル21A,21B,21Cを備える。
まず、図6は全体的な残量推定方法の処理を示す図である。まず、推定部10は電池モジュール20が充電中であるか否かを判定する。本実施形態において、推定部10は車両のシステムによってスイッチ100が図1のa側とb側のどちらに接続されているかの情報を取得して電池モジュール20の動作を知ることができる。推定部10は、電池モジュール20が充電中でないと判定すると(ステップS1のNo)、ステップS5の「第3の処理」に進む。第3の処理は非充電時の残量推定処理である。推定部10は、電池モジュール20が充電中であると判定すると(ステップS1のYes)、残量推定情報が記憶部16に記憶されているか否かを判定する。推定部10は、残量推定情報が記憶されていると判定すると(ステップS2のYes)、ステップS4の「第2の処理」に進む。第2の処理は充電時の残量推定処理である。推定部10は、残量推定情報が記憶されていないと判定すると(ステップS2のNo)、ステップS3の「第1の処理」に進む。
(第1の処理)
図7は第1の処理を示す図である。第1の処理は充電時に実行される、残量推定処理のための最も劣化したセルの特定および残量推定情報の記憶といった処理を含む。第1の処理は、例えば電池モジュール20が車両に搭載されて初めて充電されるときに実行されてもよいし、後述するように第3の処理で最も劣化したセルが変化したと判断された場合に実行されてもよい。
推定部10は、電圧センサ18が計測したセル21A,21B,21Cの電圧を取得する(ステップS11)。そして、推定部10は、電圧が上限値となったセルがあればステップS13の処理に進み(ステップS12のYes)、電圧が上限値となったセルがなければステップS11に戻る(ステップS12のNo)。
推定部10は上限値となったセルを電圧の変動が最も大きいセル(最も劣化したセル)として特定する(ステップS13)。以下においては、推定部10はセル21Bが最も劣化したセルであると特定したとして説明する。
推定部10は、特定されたセル21Bの残量推定情報を生成して記憶部16に記憶して(ステップS14)、第1の処理を終了する。残量推定情報は、セル21Bの電圧と電池モジュール20の残量とを対応させたテーブル形式で記憶されてもよい。
(第2の処理)
図8は、電池モジュールの充電時の残量推定処理である第2の処理を示す図である。第2の処理は、充電中に電池モジュール20の残量を推定する処理である。
推定部10は、充電器による電池モジュール20の充電が停止したか否かを判定する。充電の停止は、充電の完了による停止だけでなく、例えばユーザによる中断、車両のシステムによる停止等も含む。推定部10は、電池モジュール20の充電が停止したと判定した場合、ステップS21の処理に進む(ステップS20のYes)。推定部10は、電池モジュール20の充電が停止していない場合、つまり充電が継続中の場合には停止するまで待機する(ステップS20のNo)。
推定部10は、記憶部16に記憶された残量推定情報を取得する(ステップS21)。第2の処理の説明においても、先の例と同じく最も劣化したセルがセル21Bであって、残量推定情報はセル21Bの電圧と電池モジュール20の残量とを対応させた情報であるとして説明する。
推定部10は、残量推定情報に係るセル21B、すなわち最も劣化したセル21Bの電圧を電圧センサ18から取得する(ステップS22)。そして、推定部10は、残量推定情報を用いて電池モジュール20の残量を推定して(ステップS23)、第2の処理を終了する。このとき、推定された電池モジュール20の残量は表示部12に出力されてもよい。表示部12に電池モジュール20の残量が表示されることで、ユーザは充電の状況を把握することができる。
以上のように、推定部10は第2の処理によって、電池モジュールの充電中に残量推定情報を用いた効率的な残量の推定が可能である。また、第2の処理は、電池モジュールの充電が停止した場合に実行されるので、充電による電圧変動の影響を受けない正確な残量の推定が可能である。
(第3の処理)
図9は、電池モジュールの非充電時の残量推定処理である第3の処理を示す図である。第3の処理は、回生時または放電時の電池モジュール20の残量を推定する処理である。
推定部10は、セル21A,21B,21Cの電圧を均等化する(ステップS30)。このセルバランス処理によって、ピークホールド処理の開始時のセル21A,21B,21Cの電圧が同じになる。
推定部10は、電圧センサ18が計測したセル21A,21B,21Cの電圧を取得する(ステップS31)。そして、推定部10はセル21A,21B,21Cの最低電圧についてピークホールド処理を実行する(ステップS32)。ピークホールド処理によって、回生時の電圧上昇に影響されずに、最も劣化したセルを正確にかつ短時間で特定することができる。
推定部10は、ピークホールド処理の結果から最小値(各セルの最低電圧のうちの最も小さい値)を示すセルを電圧の変動が最も大きいセルとして特定する(ステップS33)。そして、推定部10は、電池モジュールの非充電時のピークホールド処理の結果から特定されたセルと、残量推定情報に係るセル21Bが一致するか否かを判定する(ステップS34)。
ここで、最も劣化したセルは内部抵抗が大きく電圧の変動の大きいことから、通常、ピークホールド処理の結果からもセル21Bが特定される。しかし、残量推定情報が記憶部16に記憶されてから長時間経過するような場合に、経年劣化によって最も劣化したセルがセル21Bから変化する可能性がある。このような理由により不一致が生じた場合には(ステップS34のNo)、推定部10は、記憶部16に記憶された残量推定情報を削除する(ステップS38)。残量推定情報の削除によって、次の充電時に第1の処理が実行されるように促す。次の充電時に第1の処理が実行されれば、経年劣化によって最も劣化したセルについての残量推定情報が生成される。ステップS38が実行されると第3の処理は終了する。つまり、推定部10は、ステップS38を実行した場合に、電池モジュール20の残量を推定せずに処理を終了(異常終了)する。このとき、推定部10は、ピークホールド処理の結果から特定されたセルと残量推定情報に係るセルとの不一致が生じたことを示す警告を表示部12に表示させてもよい。
一方、推定部10がピークホールド処理の結果からセル21Bを最も劣化したセルであると特定した場合には、残量推定情報に係るセル21Bと一致するのでステップS35の処理に進む(ステップS34のYes)。この場合、推定部10は、以下に述べるように残量推定情報を用いて電池モジュール20の残量を効率的に推定する。
推定部10は、記憶部16に記憶された残量推定情報を取得する(ステップS35)。そして、推定部10は、残量推定情報に係るセル21Bの電圧を電圧センサ18から取得する(ステップS36)。そして、推定部10は、残量推定情報を用いて電池モジュール20の残量を推定して(ステップS37)、第3の処理を終了する。このとき、推定された電池モジュール20の残量は表示部12に出力されてもよい。表示部12に電池モジュール20の残量が表示されることで、ユーザは電池モジュール20の使用状況を把握することができる。ここで、第3の処理の残量の推定は電池モジュール20の放電が開始された場合に実行され、例えば回生時には実行されない。このことにより、車両の走行中の適切なタイミングで電池モジュール20の残量の推定が実行される。
以上のように、本実施形態に係る電池装置1によれば、電圧の変動の大きさの観点から最も劣化したセルを特定するので、充電と放電とが繰り返される場合でも、電池モジュール20の残量を正確に推定することができる。また、本実施形態に係る電池装置1は、最も劣化したセルを正確に特定できるため過放電を回避できる。
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段及びステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段及びステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
例えば電池装置1は、表示部12が省略された構成であってもよい。このとき、推定部10が推定した電池モジュール20の残量の情報は例えば車両のシステムに出力されて、車両のシステムによってインストルメントパネルに電池モジュール20の残量が表示されてもよい。
また、推定部10は、第3の処理においてピークホールド処理の結果から特定されたセルと残量推定情報に係るセルとの不一致が生じた場合に、残量推定情報を用いることなく、電池モジュール20の残量を別の公知の手法で推定してもよい。つまり、推定部10は、第3の処理のステップS38(記憶部16に記憶された残量推定情報を削除する処理)に代えて、公知の手法によって電池モジュール20の残量を推定する処理を行ってもよい。このとき、推定部10は、ステップS33で最小値を示したセル(電圧の変動が最も大きいセル)の電圧を用いて残量を推定してもよい。また、推定部10は、第1の処理と第3の処理とで最も劣化したセルについて不一致が生じたことを示す警告を表示部12に表示させてもよい。
また、例えば第1の処理、第2の処理、第3の処理のうちの一部だけが実行されてもよい。例えば、第1の処理で残量推定情報が記憶された後に、第2の処理または第3の処理だけが実行されてもよい。また、第3の処理は第1の処理と関連することなく実行されてもよい。このとき、推定部10は第3の処理で残量推定情報を使用しない。つまり、推定部10は、第3の処理でステップS34,ステップS35およびステップS38を実行せず、ステップS33に続いてステップS36を実行する。そして、推定部10は、ステップS37において、残量推定情報を用いる手法に代えて別の公知の手法で電池モジュール20の残量を推定する。
また、第3の処理の残量の推定は、電池モジュール20の放電が開始された場合ではなく、定期的(例えば5分毎等)に実行されてもよい。
1 電池装置
2 残量推定装置
10 推定部
12 表示部
16 記憶部
18 電圧センサ
20 電池モジュール
21A,21B,21C セル
30 セルバランス回路
31A,31B,31C 抵抗
32A,32B,32C,100,101 スイッチ

Claims (9)

  1. 直列接続された複数の二次電池を含む電池モジュールと、
    前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
    前記電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定し、当該特定した二次電池の電圧に基づいて前記電池モジュールの残量を推定する推定部と、を備える電池装置。
  2. 前記推定部は、
    前記電池モジュールの非充電時に、前記電圧計測部によって計測された電圧のピークホールド処理を実行し、前記ピークホールド処理で最小値を示す二次電池を前記電圧の変動が最も大きい二次電池として特定する、請求項1に記載の電池装置。
  3. 前記推定部は、
    前記ピークホールド処理の前に、前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を均等化する、請求項2に記載の電池装置。
  4. 前記推定部は、
    前記電池モジュールの充電時に、前記電圧計測部によって計測された電圧が上限値となった二次電池を前記電圧の変動が最も大きい二次電池として特定する、請求項1に記載の電池装置。
  5. 記憶部を備え、
    前記推定部は、
    前記特定された二次電池の電圧と前記電池モジュールの残量とを関連付けた残量推定情報を前記記憶部に記憶させ、
    前記残量推定情報が前記記憶部に記憶されている場合に、前記残量推定情報を用いて前記電池モジュールの残量を推定する、請求項4に記載の電池装置。
  6. 前記推定部は、
    前記電池モジュールの充電が開始された後で停止した場合に、前記残量推定情報を用いて前記電池モジュールの残量を推定する、請求項5に記載の電池装置。
  7. 前記推定部は、
    前記電池モジュールの放電が開始された場合に、前記残量推定情報を用いて前記電池モジュールの残量を推定する、請求項5または6に記載の電池装置。
  8. 直列接続された複数の二次電池を含む電池モジュールと接続される残量推定装置であって、
    前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
    前記電圧計測部によって計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定し、当該特定した二次電池の電圧に基づいて前記電池モジュールの残量を推定する推定部と、を備える残量推定装置。
  9. 直列接続された複数の二次電池を含む電池モジュールと接続される残量推定装置が実行する残量推定方法であって、
    前記複数の二次電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測ステップと、
    前記電圧計測ステップにおいて計測された電圧の変動が最も大きい二次電池を特定する特定ステップと、
    前記特定ステップにおいて特定した二次電池の電圧に基づいて前記電池モジュールの残量を推定するステップと、を含む残量推定方法。
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