JP2017160513A - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の銅合金板材は、Niを3.5〜25mass%およびSnを0.1〜9.5mass%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、圧延集合組織を有する電気電子機器用銅合金板材であって、前記圧延集合組織は、EBSDによる集合組織解析から得られた、α−fiber(φ1=0°〜45°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲、β−fiber(φ2=45°〜90°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
(1)Niを3.5〜25mass%およびSnを0.1〜9.5mass%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、圧延集合組織を有する電気電子機器用銅合金板材であって、前記圧延集合組織は、EBSDによる集合組織解析から得られた、α−fiber(φ1=0°〜45°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲、β−fiber(φ2=45°〜90°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲であることを特徴とする銅合金板材。
本発明に従う銅合金板材は、Niを3.5〜25mass%およびSnを0.1〜9.5mass%含有し、さらに必要に応じて、Si、Mn、P、Zn、Fe、Pb、MgおよびCrから選択される少なくとも1成分を含有し、前記少なくとも1成分のうち、Siを含有する場合のSi含有量が0.01〜1.0mass%であり、Si以外の残りの成分を含有する場合の前記残りの成分の含有量が、合計で0.05〜1.5mass%であり、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、圧延集合組織を有する電気電子機器用銅合金板材であって、前記圧延集合組織は、EBSDによる集合組織解析から得られた、α−fiber(φ1=0°〜45°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲、β−fiber(φ2=45°〜90°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲である。
本発明の銅合金板材の成分組成とその作用について示す。
(必須添加成分)
本発明の銅合金板材は、Niを3.5〜25mass%およびSnを0.1〜9.5mass%含有している。NiおよびSnの含有量を上記の範囲内とすることにより、NiおよびSnの母相への固溶と析出の状態、および圧延加工による加工組織の形成により、圧延集合組織が変化し、α−fiberとβ−fiberが混合した集合組織が得られ、高いヤング率が得られる。また、NiとSnの含有量を上記範囲内にするとともに、中間焼鈍、低温焼鈍、溶体化熱処理および最終焼鈍(時効熱処理)の熱処理条件および冷間圧延条件を適正に制御することによって、時効後に強固なスピノーダル変調構造を発達させ、強度、伸びおよび導電率のいずれの特性とも高いレベルでバランスよく満足させることができる。Niを3.5〜25.0mass%およびSnを0.1〜9.5mass%含有し、好ましくはNiを3.7〜22.0mass%およびSnを0.2〜9.0mass%を含有する。NiおよびSnのうち、少なくとも1成分の含有量が上記範囲よりも多すぎると、導電率が低くなり、少なすぎると上記の効果が十分に得られないからである。
本発明の銅合金板材は、NiおよびSnの必須の添加成分に加えて、さらに、任意添加元素として、Si、Mn、P、Zn、Fe、Pb、MgおよびCrから選択される少なくとも1成分を含有し、前記少なくとも1成分のうち、Siを含有する場合のSi含有量が0.01〜1.0mass%、好ましくは0.01〜0.95mass%であり、Si以外の残りの成分を含有する場合の前記残りの成分の含有量が、合計で0.05〜1.5mass%、好ましくは0.1〜1.0mass%である。Siを上記範囲内で含有させることによって、NiとSiの化合物を析出させて、銅合金板材の強度と耐応力緩和特性を向上させることができる。また、Si以外の残りの成分から選択される少なくとも1成分を合計含有量にして上記範囲内で含有させることにより、導電率を低下させることなく、RDとTDのヤング率の双方を、ともに異方性を極力小さくしつつ、より一層高めることができる。
本発明の銅合金板材は、圧延集合組織を有し、この圧延集合組織は、EBSDによる集合組織解析から得られた、α−fiber(φ1=0°〜45°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下、好ましくは3.0以上30.0以下であり、β−fiber(φ2=45°〜90°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下、好ましくは3.0以上30.0以下である。ここで、「方位密度」とは、結晶粒方位分布関数(ODF:crystal orientation distribution function)とも表され、集合組織の結晶方位の存在比率および分散状態を定量的に解析する際に用いる。方位密度は、EBSDおよびX線回折測定結果により、(100)正極点図、(110)正極点図、(111)正極点図などの3種類以上の正極点図の測定データを基にして、級数展開法による結晶方位分布解析法により算出される。
本発明における上記圧延集合組織の解析にはEBSD法を用いた。EBSD法とは、Electron BackScatter Diffractionの略で、走査電子顕微鏡(SEM)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折を利用した結晶方位解析技術のことである。本発明におけるEBSD測定では、結晶粒を200個以上含む、800μm×1600μmの試料面積に対し、0.1μmステップでスキャンし、測定した。前記測定面積およびスキャンステップは、試料の結晶粒の大きさに応じて決定すればよい。測定後の結晶粒の解析には、TSL社製の解析ソフトOIM Analysis(商品名)を用いた。EBSDによる結晶粒の解析において得られる情報は、電子線が試料に侵入する数10nmの深さまでの情報を含んでいる。また、板厚方向の測定箇所は、試料表面から板厚tの1/8倍〜1/2倍の位置付近とすることが好ましい。
本発明の銅合金板材は、圧延時における、圧延方向と平行な方向をRD、板幅方向をTDとし、前記RDのヤング率をERD、前記TDのヤング率をETDとするとき、前記ERDおよび前記ETDがいずれも120GPa以上であり、かつ前記ERDの前記ETDに対する比(ERD/ETD)が0.85以上であることが好ましい。RDのヤング率ERDおよびTDのヤング率ETDが少なくとも1方が120GPa未満であるか、あるいは、前記ERDの前記ETDに対する比ERD/ETDが0.85未満であると、銅合金板材から所定形状のサンプル(例えば端子材料)を採取する方向によっては、バネ特性等の要求特性を満足することができなくなるおそれがあるからである。
次に、本発明の銅合金板材の製造方法の一例を以下で説明する。
本発明の銅合金板材の製造方法は、上記合金組成を有する銅合金素材を溶解・鋳造(工程1)して得た鋳塊(被圧延材)に対して均質化熱処理を行う均質化熱処理工程(工程2)と、均質化熱処理工程後に前記被圧延材に対して熱間圧延を行う熱間圧延工程(工程3)と、熱間圧延工程後に冷却を行う冷却工程(工程4)と、冷却工程後に、前記被圧延材の両面の面削を行う面削工程(工程5)と、面削工程後に、合計加工率が75%以上の冷間圧延を行う第1冷間圧延工程(工程6)と、第1冷間圧延工程後に、昇温速度が0.1〜100.0℃/秒、到達温度が100〜350℃、保持時間が10秒〜5時間および冷却速度が0.1〜100.0℃/秒の条件で熱処理を施す中間焼鈍工程(工程7)と、中間焼鈍工程後に、到達温度が50〜250℃および保持時間が1分〜2時間の条件で熱処理を行なう低温焼鈍工程(工程8)と、さらなる冷間圧延を行う第2冷間圧延工程(工程9)と、その後、昇温速度が1〜150℃/秒、到達温度が600〜1000℃、保持時間が1〜120秒および冷却速度が10〜200℃/秒の条件で熱処理を行なう溶体化熱処理工程(工程10)と、仕上げ圧延工程(工程11)と、最終焼鈍工程(工程12)と、酸洗および研磨を行なう表面酸化膜除去工程(工程13)とを順次行なう。このようにして、本発明の銅合金板材を作製する。
[圧延加工率]={([圧延前の断面積]−[圧延後の断面積])/[圧延前の断面積]}×100(%)
本発明の実施例1〜実施例9および比較例1〜比較例8は、表1に示す成分組成となるように、それぞれNiおよびSn、ならびに必要に応じて添加する任意添加成分を含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金素材を高周波溶解炉により溶解し、これを鋳造(工程1)して鋳塊を得た。鋳塊に対して、保持温度800〜1100℃、保持時間10分から20時間の均質化熱処理(工程2)を行い、その後、合計加工率10〜90%の熱間圧延(工程3)を行った後、水冷による急冷(工程4)を行う。この後、表面の酸化膜の除去のため、圧延材の表裏の両面をそれぞれ1.0mm程度の面削(工程5)を行う。その後、表2に示す合計加工率で第1冷間圧延(工程6)を行った後、表2に示す昇温速度、到達温度、保持時間および冷却速度で中間焼鈍(工程7)を行い、その後、表2に示す到達温度および保持時間で低温焼鈍(工程8)を行い、さらに、合計圧延加工率が5〜45%の第2冷間圧延(工程9)を行う。次に、表2に示す昇温速度、到達温度、保持時間および冷却速度で溶体化熱処理(工程10)を行ない、さらに、仕上げ圧延(工程11)および最終焼鈍(工程12)を行った後に、板材表面の酸化膜除去を目的に、酸洗・研磨(工程13)を行なう。なお、比較例5は中間焼鈍工程(工程7)を行っていない。このようにして、本発明の銅合金板材(供試材)を作製した。各実施例および各比較例での製造条件と、得られた供試材の特性を表2に示す。
EBSD法により、測定面積が128×104μm2(800μm×1600μm)、スキャンステップは0.1μmの条件で測定を行った。スキャンステップは微細な結晶粒を測定するため、0.1μmステップで行った。解析では、128×104μm2のEBSD測定結果から、解析にてODF(方位分布関数)およびα−fiber、β−fiberを確認した。電子線は走査電子顕微鏡のWフィラメントからの熱電子を発生源とした。なお、測定時のプローブ径は、約0.015μmである。EBSD法の測定装置には、(株)TSLソリューションズ製 OIM5.0(商品名)を用いた。なお、測定箇所は、板材の平面を機械研磨、電解研磨にて処理し、平面部を上記の測定範囲で測定した。また、α−fiberおよびβ−fiberのそれぞれの方位密度の平均値は、板材の板厚方向で5箇所以上測定し、それらの測定値を平均して算出した。
試験片は、各供試材から、圧延方向と平行な方向RDと、板幅方向TD(圧延方向RDに対して直交する方向)に、それぞれ、幅20mm、長さ200mmの短冊状試験片を採取し、試験片の長さ方向に引張試験機により応力を付与し、歪と応力の比例定数を求めた。降伏するときの歪量の80%の歪量を最大変位量とし、その変位量までを10分割した変位を与え、その10点での測定値から歪と応力の比例定数をヤング率として求めた。
各供試材の導電率は、20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により計測した比抵抗の数値から算出した。なお、端子間距離は100mmとした。板材の導電率が8%IACS以上である場合を良好、8%IACS未満の場合を不良と判断する。
Claims (4)
- Niを3.5〜25mass%およびSnを0.1〜9.5mass%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、圧延集合組織を有する電気電子機器用銅合金板材であって、
前記圧延集合組織は、EBSDによる集合組織解析から得られた、α−fiber(φ1=0°〜45°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲、β−fiber(φ2=45°〜90°)の方位密度の平均値が、2.5以上30.0以下の範囲であることを特徴とする銅合金板材。 - Niを3.5〜25mass%およびSnを0.1〜9.5mass%含有し、さらにSi、Mn、P、Zn、Fe、Pb、MgおよびCrから選択される少なくとも1成分を含有し、前記少なくとも1成分のうち、Siを含有する場合のSi含有量が0.01〜1.0mass%であり、Si以外の残りの成分を含有する場合の前記残りの成分の含有量が、合計で0.05〜1.5mass%であり、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、圧延集合組織を有する電気電子機器用銅合金板材であって、
前記圧延集合組織は、EBSDによる集合組織解析から得られた、α−fiber(φ1=0°〜45°)の方位密度の平均値が、3.0以上30.0以下の範囲、β−fiber(φ2=45°〜90°)の方位密度の平均値が、3.0以上30.0以下の範囲であることを特徴とする銅合金板材。 - 圧延時における、圧延方向と平行な方向をRD、板幅方向をTDとし、前記RDのヤング率をERD、前記TDのヤング率をETDとするとき、
前記ERDおよび前記ETDがいずれも120GPa以上であり、かつ前記ERDの前記ETDに対する比(ERD/ETD)が0.85以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の銅合金板材。 - 請求項1、2または3に記載の電気電子機器用銅合金板材の製造方法であって、
前記合金組成を有する銅合金を鋳造して得られた被圧延材に対して均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
該均質化熱処理工程後に、前記被圧延材に対して熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
該熱間圧延工程後に冷却を行う冷却工程と、
該冷却工程後に、前記被圧延材の両面の面削を行う面削工程と、
該面削工程後に、合計加工率が75%以上の冷間圧延を行う第1冷間圧延工程と、
該第1冷間圧延工程後に、昇温速度が0.1〜100.0℃/秒、到達温度が100〜350℃、保持時間が10秒〜5時間および冷却速度が0.1〜100.0℃/秒の条件で熱処理を施す中間焼鈍工程と、
該中間焼鈍工程後に、到達温度が50〜250℃および保持時間が1分〜2時間の条件で熱処理を行なう低温焼鈍工程と、
さらなる冷間圧延を行う第2冷間圧延工程と、
その後、昇温速度が1〜150℃/秒、到達温度が600〜1000℃、保持時間が1〜120秒および冷却速度が10〜200℃/秒の条件で熱処理を行なう溶体化熱処理工程と、
仕上げ圧延工程と、
最終焼鈍工程と、
酸洗および研磨を行なう表面酸化膜除去工程と
を順次行なうことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
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