JP2017160328A - ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物及びハロゲンフリー難燃絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハロゲンを含有せず、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性を有する絶縁被覆の材料となるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物及び前記組成物からなる絶縁層を有するハロゲンフリーの難燃絶縁電線を提供する。
【解決手段】密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンを30〜50質量部、ポリフェニレンエーテル系樹脂を20〜40質量部及びスチレン系エラストマーを10〜30質量部含有する100質量部の樹脂成分、並びに前記樹脂成分100質量部に対し、10〜50質量部のホスフィン酸金属塩、1〜10質量部の多官能性モノマー、1〜10質量部の非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル及び0.5〜5質量部の金属不活性化剤を含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物、及び前記組成物からなる絶縁層を有するハロゲンフリーの難燃絶縁電線。
【選択図】 なし
【解決手段】密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンを30〜50質量部、ポリフェニレンエーテル系樹脂を20〜40質量部及びスチレン系エラストマーを10〜30質量部含有する100質量部の樹脂成分、並びに前記樹脂成分100質量部に対し、10〜50質量部のホスフィン酸金属塩、1〜10質量部の多官能性モノマー、1〜10質量部の非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル及び0.5〜5質量部の金属不活性化剤を含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物、及び前記組成物からなる絶縁層を有するハロゲンフリーの難燃絶縁電線。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ハロゲンフリーであって、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせ、特に両立が困難と考えられていた優れた耐摩耗性と低温屈曲特性を共に有する絶縁被覆の形成材料となるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物、及び、優れた耐摩耗性と低温屈曲特性を両立し、自動車や鉄道車両用のハーネス等として好適に用いられるハロゲンフリー難燃絶縁電線に関する。
自動車や鉄道車両用のハーネス等の絶縁電線は、寒冷から高温に及ぶ温度変化や振動、風雨、機器の発熱や出火等に晒されることもある。そこで、その絶縁被覆には、機械的強度、絶縁抵抗、耐熱水(安定)性、難燃性、耐加熱変形性、耐摩耗性等について、所定の基準を充たすことが望まれている。また、近年は、環境問題を防ぐため、ポリ塩化ビニル(PVC)やハロゲン系難燃剤を使用しないいわゆるハロゲンフリーの絶縁材料が望まれている。特に鉄道車両用では、火災時に乗客が避難しやすいように燃焼時の発煙が少ないハロゲンフリー絶縁材料の使用が規格で規定されている場合が多い。
ハロゲンフリーの絶縁材料としては、ポリオレフィン樹脂等の絶縁性樹脂に水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒素系難燃剤等のハロゲンフリー系難燃剤を添加したものが知られている。しかし、前記のハロゲンフリー系難燃剤は、難燃性を満たすためには、ハロゲン系難燃剤と比べて多量に添加する必要があり、絶縁被覆の柔軟性の低下、初期及び耐熱老化後の引張伸びの低下等の問題を生じやすい。
難燃性及び機械的強度、絶縁抵抗、耐加熱変形性に優れるハロゲンフリー樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂、多官能性モノマー、有機リン系難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物も知られている。例えば、特許文献1には、炭素−炭素不飽和結合を有する樹脂又はカルボニル基を有する樹脂を5質量%以上含有する熱可塑性樹脂、多官能性モノマー及び特定種類の有機リン系難燃剤を含有し、多官能性モノマー及び有機リン系難燃剤の含有量が所定の範囲内にある難燃性樹脂組成物が開示されている。しかし、このハロゲンフリー難燃性樹脂組成物では、鉄道車両用の信号線についてのEN50306−2規格で要求される「絶縁性能の耐熱水(安定)性に関するDC stability試験」(以下、「DC stability試験」とする)に合格することは困難であり、近年の要請を充分満たすものではなかった。
特許文献2には、メルトフローレート(MFR)が0.60以下の高密度ポリエチレン40〜65質量部中に、ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜30質量部及びスチレン系エラストマー10〜30質量部を微分散してなる樹脂成分、及びホスフィン酸金属塩、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル及び多官能性モノマーを所定量含有する樹脂組成物の架橋体からなる外層、並びに架橋ポリエチレンからなる内層から構成される絶縁被覆を有するハロゲンフリー難燃絶縁電線が開示されている。このハロゲンフリー難燃絶縁電線は、DC stability試験に合格する高い耐熱水性を有し、絶縁抵抗、難燃性、耐摩耗性、耐加熱変形性を高い次元でバランスする。
しかし、特許文献2に記載のハロゲンフリー難燃絶縁電線等の従来の絶縁電線の絶縁材料においては、耐摩耗性(電線同士や電線と筐体等の間の擦れに起因する摩耗に対する耐性)を高める材料設計を行うと、可撓性、特に低温での可撓性が低下し、繰り返し屈曲させた時に絶縁に亀裂を生じやすくなる問題がある。すなわち、優れた耐摩耗性と、低温でも屈曲による亀裂を生じにくい性質である優れた低温屈曲特性とを両立させることは困難であった。耐摩耗性を高めるためには機械的強度や弾性率の高い材料を用いる必要があるが、そのような材料は低温での弾性率も高く伸びが小さく、低温において疲労破壊を生じやすいためと考えられる。
本発明は、ハロゲンを含有しないハロゲンフリー難燃性樹脂組成物であって、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性を有する絶縁被覆を形成する材料となるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、又、前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物により形成された絶縁被覆を有し、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性等を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性を有するハロゲンフリー難燃絶縁電線を提供することを課題とする。
特に、寒冷地で振動が大きい個所に配線して使用する場合を想定して優れた低温屈曲特性をさらに有する絶縁被覆を形成できるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物や、配線時に鋭利なエッジ部に当たっても裂け難い優れたカットスルー特性をさらに有するハロゲンフリー難燃絶縁電線を提供することも課題とする。
本発明の第1の態様は、
密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンを30質量部以上50質量部以下、ポリフェニレンエーテル系樹脂を20質量部以上40質量部以下、及びスチレン系エラストマーを10質量部以上30質量部以下含有する100質量部の樹脂成分、並びに
前記樹脂成分の100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下のホスフィン酸金属塩、1質量部以上10質量部以下の多官能性モノマー、1質量部以上10質量部以下の非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、及び0.5質量部以上5質量部以下の金属不活性化剤を含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物である。
密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンを30質量部以上50質量部以下、ポリフェニレンエーテル系樹脂を20質量部以上40質量部以下、及びスチレン系エラストマーを10質量部以上30質量部以下含有する100質量部の樹脂成分、並びに
前記樹脂成分の100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下のホスフィン酸金属塩、1質量部以上10質量部以下の多官能性モノマー、1質量部以上10質量部以下の非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、及び0.5質量部以上5質量部以下の金属不活性化剤を含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物である。
本発明の第2の態様は、前記第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物であって、さらに、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を、100質量部の前記樹脂成分中に、5質量部以上20質量部以下含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物である。
本発明の第3の態様は、導体及び前記導体を被覆する絶縁被覆を有する絶縁電線であって、前記絶縁被覆が、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなるハロゲンフリー難燃絶縁電線である。
本発明の第4の態様は、導体及び前記導体を被覆する絶縁被覆を有する絶縁電線であって、前記絶縁被覆が、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなる外層、及び曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下でありかつ体積固有抵抗が1015Ω・cm以上の樹脂からなる内層を有し、前記内層の厚みが、0.02mm以上で前記内層と外層のトータル厚みの50%以下であるハロゲンフリー難燃絶縁電線である。
第1の態様により、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性を有する絶縁被覆を形成できるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が提供される。
第2の態様により、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性と優れた低温屈曲特性を共に有する絶縁被覆を形成できるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が提供される。
第3の態様により、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性を有する絶縁被覆を有するハロゲンフリー難燃絶縁電線が提供される。
第4の態様により、優れた耐摩耗性を有するとともに、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水特性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせ、特に、DC stability試験に合格する高い耐熱水特性を有し、さらに配線時に鋭利なエッジ部に当たっても裂け難い優れたカットスルー特性を有するハロゲンフリー難燃絶縁電線が提供される。
次に、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の範囲はこの形態に限定されるものではなく本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、高密度ポリエチレン中に、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系エラストマーを微分散している樹脂に、ホスフィン酸金属塩、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、金属不活性化剤や多官能性モノマーを所定の組成範囲で含有させてなる樹脂組成物により形成された絶縁被覆が、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性が得られることを見出し、さらに、前記樹脂成分中に、所定の組成範囲で無水マレイン酸変性したエチレン−α−オレフィン系共重合体を微分散させると、前記の優れた性質を損なうことなく、優れた低温屈曲特性も得られることを見出し、第1の態様、第2の態様及び第3の態様の発明を完成した。
本発明者は、さらに、第3の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線において、絶縁被覆を2層(又は多層)構造とし、外層側を、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体により形成し、内層側を、曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下、体積固有抵抗が1015Ω・cm以上の樹脂により形成すれば、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性及びカットスルー特性(ダイナミックカットスルー特性)等を高い次元でバランスし、優れた耐摩耗性を有するとともに、DC stability試験に合格する高い耐熱水性を有するハロゲンフリーの難燃絶縁電線が得られることを見出し、第4の態様の発明を完成した。
[第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物]
本発明の第1の態様は、
密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンを30質量部以上50質量部以下、ポリフェニレンエーテル系樹脂を20質量部以上40質量部以下、及びスチレン系エラストマーを10質量部以上30質量部以下含有する100質量部の樹脂成分、並びに
前記樹脂成分の100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下のホスフィン酸金属塩、1質量部以上10質量部以下の多官能性モノマー、1質量部以上10質量部以下の非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、及び0.5質量部以上5質量部以下の金属不活性化剤を含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物である。
本発明の第1の態様は、
密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンを30質量部以上50質量部以下、ポリフェニレンエーテル系樹脂を20質量部以上40質量部以下、及びスチレン系エラストマーを10質量部以上30質量部以下含有する100質量部の樹脂成分、並びに
前記樹脂成分の100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下のホスフィン酸金属塩、1質量部以上10質量部以下の多官能性モノマー、1質量部以上10質量部以下の非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、及び0.5質量部以上5質量部以下の金属不活性化剤を含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物である。
このハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を用いることにより、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性を有する絶縁電線の絶縁被覆を形成することができる。
(1)樹脂成分
このハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を構成する樹脂成分は、高密度ポリエチレン中に、硬質材料であるポリフェニレンエーテル系樹脂及び柔軟成分であるスチレン系エラストマーを微分散してなるポリマーアロイである。
このハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を構成する樹脂成分は、高密度ポリエチレン中に、硬質材料であるポリフェニレンエーテル系樹脂及び柔軟成分であるスチレン系エラストマーを微分散してなるポリマーアロイである。
(1−1)高密度ポリエチレン
この態様に用いられる高密度ポリエチレンは、密度0.95g/cm3以上のポリエチレンである。密度0.95g/cm3以上のポリエチレンを用いることにより耐摩耗性が良好なものとなる。密度0.95g/cm3以下のポリエチレンを用いたときは規格を満たす耐摩耗性は得られにくい。この高密度ポリエチレンには、ホモポリエチレン及びポリエチレンコポリマーのいずれもが含まれる。
この態様に用いられる高密度ポリエチレンは、密度0.95g/cm3以上のポリエチレンである。密度0.95g/cm3以上のポリエチレンを用いることにより耐摩耗性が良好なものとなる。密度0.95g/cm3以下のポリエチレンを用いたときは規格を満たす耐摩耗性は得られにくい。この高密度ポリエチレンには、ホモポリエチレン及びポリエチレンコポリマーのいずれもが含まれる。
高密度ポリエチレンは、そのMFRが小さいほど機械的強度が高くなり耐摩耗性が良好となる。具体的には、MFR0.60以下のものを選択することにより耐摩耗性が向上するので好ましい。なおMFRとは、樹脂の流動性を示す値であり、JISK 7210に従って、230℃×2.16kgfで測定した値であり、単位はg/10minである。高密度ポリエチレンのMFRは、より好ましくは0.15以上、0.30以下である。
(1−2)ポリフェニレンエーテル系樹脂
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、2,6−キシレノールを酸化重合させて得られるポリフェニレンエーテル樹脂単体からなるものを挙げることができる。又、ポリフェニレンエーテルにポリスチレンを溶融ブレンドした変性ポリフェニレンエーテル樹脂も使用できる。この変性ポリフェニレンエーテル樹脂を使用すると、高密度ポリエチレン及びスチレン系エラストマー等との溶融混合時の作業性が向上し、又絶縁被覆形成のための押出加工性が向上するので好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、さらに、無水マレイン酸等のカルボン酸を導入したものを適宜ブレンドしたものも使用できる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、2,6−キシレノールを酸化重合させて得られるポリフェニレンエーテル樹脂単体からなるものを挙げることができる。又、ポリフェニレンエーテルにポリスチレンを溶融ブレンドした変性ポリフェニレンエーテル樹脂も使用できる。この変性ポリフェニレンエーテル樹脂を使用すると、高密度ポリエチレン及びスチレン系エラストマー等との溶融混合時の作業性が向上し、又絶縁被覆形成のための押出加工性が向上するので好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、さらに、無水マレイン酸等のカルボン酸を導入したものを適宜ブレンドしたものも使用できる。
(1−3)スチレン系エラストマー
スチレン系エラストマーとしては、スチレン・エチレンブチレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられ、これらの水素添加ポリマーや部分水素添加ポリマー等も挙げることができる。また無水マレイン酸等のカルボン酸を導入したものを適宜ブレンドして使用することもできる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン・エチレンブチレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられ、これらの水素添加ポリマーや部分水素添加ポリマー等も挙げることができる。また無水マレイン酸等のカルボン酸を導入したものを適宜ブレンドして使用することもできる。
前記のスチレン系エラストマーの中でも、スチレン・エチレンブチレン・スチレンのブロック共重合体(SEBS)を使用すると、押出加工性、引張破断伸び、柔軟性が向上するので好ましい。そこで、第1の態様の中の好ましい態様として、前記スチレン系エラストマーが、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体であるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が提供される。
前記の好ましいスチレン系エラストマーの中でも、スチレン含量が、エラストマーの100質量部に対して25質量部以上55質量部以下であるものがより好ましい。スチレン含量が25質量部未満であると引張強度が低下し、55質量部より多いと硬くなりすぎ低温性が悪化する傾向がある。そこで、第1の態様の中のさらに好ましい態様として、前記スチレン系エラストマーのスチレン含量が、エラストマーの100質量部に対して、25質量部以上55質量部以下であるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が提供される。
(1−4)微分散
この樹脂成分は、高密度ポリエチレン中に、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びスチレン系エラストマーを微分散してなるポリマーアロイである。微分酸しているとは、サブミクロンサイズで均一に分散している状態をいう。サブミクロンサイズで均一分散を得る方法としては、高剪断型二軸混練押出機で混合する方法が好ましい。
この樹脂成分は、高密度ポリエチレン中に、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びスチレン系エラストマーを微分散してなるポリマーアロイである。微分酸しているとは、サブミクロンサイズで均一に分散している状態をいう。サブミクロンサイズで均一分散を得る方法としては、高剪断型二軸混練押出機で混合する方法が好ましい。
(1−5)樹脂成分の組成
樹脂成分全体を100質量部としたとき、高密度ポリエチレンの含有量は30質量部以上50質量部以下であり、スチレン系エラストマーの含有量は10質量部以上30質量部以下であり、ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は20質量部以上40質量部以下である。高密度ポリエチレンの含有量が30質量部よりも少ない場合は、高密度ポリエチレン中にポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系エラストマーを微分散させポリマーアロイとすることが困難となり耐摩耗性が低下する。一方高密度ポリエチレンの含有量が50質量部を超えると低温屈曲特性が低下する。
樹脂成分全体を100質量部としたとき、高密度ポリエチレンの含有量は30質量部以上50質量部以下であり、スチレン系エラストマーの含有量は10質量部以上30質量部以下であり、ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は20質量部以上40質量部以下である。高密度ポリエチレンの含有量が30質量部よりも少ない場合は、高密度ポリエチレン中にポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系エラストマーを微分散させポリマーアロイとすることが困難となり耐摩耗性が低下する。一方高密度ポリエチレンの含有量が50質量部を超えると低温屈曲特性が低下する。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は耐熱性が高く、硬い材料であり、又難燃性の高い樹脂である。一方スチレン系エラストマーは樹脂組成物に柔軟性を付与する。そのため、スチレン系エラストマーの含有量が10質量部よりも少ないときは柔軟性、低温屈曲特性が低下し、一方30質量部を超えると耐摩耗性が低下する。ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が40質量部を超えると柔軟性、低温屈曲特性が低下し、20質量部未満であると耐熱性、耐摩耗性、難燃性が低下する。
(2)ホスフィン酸金属塩
第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、前記の樹脂成分に加えて、ホスフィン酸金属塩及び多官能性モノマーを含有する。ホスフィン酸金属塩は、下記式(1)で表される化合物である。
第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、前記の樹脂成分に加えて、ホスフィン酸金属塩及び多官能性モノマーを含有する。ホスフィン酸金属塩は、下記式(1)で表される化合物である。
上記式中R1、R2は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数12以下のアリール基であり、Mは、カルシウム、アルミニウム又は亜鉛であり、Mがアルミニウムの場合はm=3、カルシウム又は亜鉛の場合はm=2である。ホスフィン酸金属塩としては、例えば、クラリアント社製のEXOLIT OP1230、EXOLIT OP1240、EXOLIT OP930、EXOLIT OP935等の有機ホスフィン酸のアルミニウム塩、またはEXOLIT OP1312等の有機ホスフィン酸のアルミニウム塩とポリリン酸メラミンのブレンド物を使用できる。
ホスフィン酸金属塩の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10質量部以上50質量部以下である。ホスフィン酸金属塩の含有量が10質量部未満の場合は、絶縁層の難燃性が不十分となる。一方、50質量部を超える場合は低温屈曲特性が低下する。
(3)多官能性モノマー
多官能性モノマーは、樹脂成分を電離放射線照射により架橋するときの架橋助剤として作用するものである。多官能性モノマーとしてはトリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の分子内に複数の炭素−炭素二重結合を持つものが好ましく使用できる。また多官能性モノマーは常温で液体であることが好ましい。中でもトリメチロールプロパンメタクリレートは樹脂成分への相溶性が高く好ましい。
多官能性モノマーは、樹脂成分を電離放射線照射により架橋するときの架橋助剤として作用するものである。多官能性モノマーとしてはトリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の分子内に複数の炭素−炭素二重結合を持つものが好ましく使用できる。また多官能性モノマーは常温で液体であることが好ましい。中でもトリメチロールプロパンメタクリレートは樹脂成分への相溶性が高く好ましい。
多官能性モノマーの含有量は、樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。1質量部より少ない場合は架橋効率が悪く、耐摩耗性や耐加熱変形性が低下する。一方10質量部を超えると低温屈曲特性が低下する。
(4)非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル
非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステルは、本来は難燃剤であるが本発明ではポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶して微分散を向上させる効果を持つと考えられる。非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステルとしては、大八化学工業社製のCR−733S、CR−741、PX−200等が挙げられる。非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステルの含有量は、樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。1質量部より少ない場合には耐摩耗性が悪化し、10質量部より多い場合には低温性が悪化する。
非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステルは、本来は難燃剤であるが本発明ではポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶して微分散を向上させる効果を持つと考えられる。非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステルとしては、大八化学工業社製のCR−733S、CR−741、PX−200等が挙げられる。非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステルの含有量は、樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。1質量部より少ない場合には耐摩耗性が悪化し、10質量部より多い場合には低温性が悪化する。
(5)金属不活性化剤
金属不活性化剤はポリフェニレンエーテル系樹脂の重合触媒の銅化合物の残渣を不活性化して、ポリフェニレンエーテル系樹脂の成型加工中の熱劣化を抑制し、耐摩耗性、耐熱老化性を高める効果があると考えられる。金属不活性化剤としては、アデカ社製アデカスタブCDA−1、アデカ社製アデカスタブCDA−6、BASF社製イルガノックスMD1024、アディバント社製ナウガードXL−1、クラリアント社製ホスタノックスOSP1等が挙げられる。金属不活性化剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下である。0.5質量部より少ない場合には耐摩耗性が悪化し、5質量部より多い場合には低温性が悪化する。
金属不活性化剤はポリフェニレンエーテル系樹脂の重合触媒の銅化合物の残渣を不活性化して、ポリフェニレンエーテル系樹脂の成型加工中の熱劣化を抑制し、耐摩耗性、耐熱老化性を高める効果があると考えられる。金属不活性化剤としては、アデカ社製アデカスタブCDA−1、アデカ社製アデカスタブCDA−6、BASF社製イルガノックスMD1024、アディバント社製ナウガードXL−1、クラリアント社製ホスタノックスOSP1等が挙げられる。金属不活性化剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下である。0.5質量部より少ない場合には耐摩耗性が悪化し、5質量部より多い場合には低温性が悪化する。
(6)他の成分
第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、前記の必須成分以外に、発明の趣旨を損ねない範囲で任意の他の成分を、適宜含有することができる。他の成分としては、酸化防止剤、有機系及び無機系の着色顔料、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪酸アミド等の滑剤、及び、金属水酸化物、赤リン、メラミンシアヌレート等の難燃剤等を挙げることができる。これらの他の成分は、単独で又は2種以上を併用して含有させてもよい。
第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、前記の必須成分以外に、発明の趣旨を損ねない範囲で任意の他の成分を、適宜含有することができる。他の成分としては、酸化防止剤、有機系及び無機系の着色顔料、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪酸アミド等の滑剤、及び、金属水酸化物、赤リン、メラミンシアヌレート等の難燃剤等を挙げることができる。これらの他の成分は、単独で又は2種以上を併用して含有させてもよい。
(7)樹脂組成物の作製
第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、前記の樹脂成分、ホスフィン酸金属塩、多官能性モノマー、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、金属不活性化剤及び必要に応じて含有される他の成分を、単軸混練押出機、二軸混練押出機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等の既知の溶融混合機を用いて混合することにより作製することができる。
第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、前記の樹脂成分、ホスフィン酸金属塩、多官能性モノマー、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、金属不活性化剤及び必要に応じて含有される他の成分を、単軸混練押出機、二軸混練押出機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等の既知の溶融混合機を用いて混合することにより作製することができる。
[第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物]
本発明の第2の態様は、
前記第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物であって、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を、100質量部の前記樹脂成分中に、5質量部以上20質量部以下含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物である。
本発明の第2の態様は、
前記第1の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物であって、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を、100質量部の前記樹脂成分中に、5質量部以上20質量部以下含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物である。
本発明者は、前記第1の態様の樹脂成分に、無水マレイン酸変性したエチレン−α−オレフィン系共重合体をさらに含有させ微分散することにより、耐摩耗性を低下させることなく優れた低温屈曲特性が得られることを見出した。無水マレイン酸変性したエチレン−α−オレフィン系共重合体がホスフィン酸金属塩と馴染み、組成物の混合状態が良好になるため、耐摩耗性等を低下させることなく、優れた低温屈曲特性が得られると考えられる。
第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を構成する樹脂成分は、前記第1の態様を構成する樹脂成分が、さらに無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を、樹脂成分の100質量部中に5質量部以上20質量部以下含有するものであり、高密度ポリエチレン中に、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系エラストマー及び無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を微分散してなるポリマーアロイである。
第2の態様により、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性と優れた低温屈曲特性を共に有する絶縁被覆を形成できるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が提供される。
第2の態様で使用される無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン系共重合体とは、無水マレイン酸をエチレンαオレフィン共重合体にグラフトさせたものであり、無水マレイン酸とエチレンαオレフィン共重合体に過酸化物を添加して二軸押出機等で混練して得ることができる。ここで用いられるαオレフィンとしては、ブテン、プロピレン、オクテン等を挙げることができる。
無水マレイン酸変性したエチレン−α−オレフィン系共重合体は、DSC法による融点が60℃以下であるものが好ましい。DSC法による融点が60℃を超えるものを用いた場合は、耐寒性が低下する場合がある。
無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体の含有量が、樹脂成分全体を100質量部としたとき5質量部未満の場合は、低温屈曲特性が低下し、優れた耐摩耗性と優れた低温屈曲特性の両立が困難になる。一方、20質量部を超える場合は、耐摩耗性や引張強さ等の機械的強度が低下し、規格を満たすような耐摩耗性や引張強さは得られない。
第2の態様で使用される高密度ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びスチレン系エラストマーは、前記第1の態様に用いられるものと同様なものが用いられる。又、ホスフィン酸金属塩、多官能性モノマー、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、金属不活性化剤及び必要に応じて含有される他の成分も、前記第1の態様に用いられるものと同様なものが用いられ、樹脂組成物の作製も前記第1の態様と同様にして行うことができる。
[第3の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線]
第3の態様は、導体及び前記導体を被覆する絶縁被覆を有する絶縁電線であって、前記絶縁被覆が、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなるハロゲンフリー難燃絶縁電線である。
第3の態様は、導体及び前記導体を被覆する絶縁被覆を有する絶縁電線であって、前記絶縁被覆が、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなるハロゲンフリー難燃絶縁電線である。
第3の態様により、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせるとともに、優れた耐摩耗性する絶縁被覆を有するハロゲンフリー難燃絶縁電線が提供される。さらに、第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を用いて絶縁被覆を形成した場合は、優れた低温屈曲特性が得られ、優れた耐摩耗性と優れた低温屈曲特性を共に有するハロゲンフリー難燃絶縁電線となる。
(1)導体
第3の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線を構成する導体としては、導電性に優れる銅、アルミ等の線を挙げることができる。導体は単線であっても良いし、複数の素線の撚り線であっても良い。
第3の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線を構成する導体としては、導電性に優れる銅、アルミ等の線を挙げることができる。導体は単線であっても良いし、複数の素線の撚り線であっても良い。
(2)絶縁被覆
絶縁被覆は、前記導体の外周に、前記第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を被覆した後、樹脂成分を架橋する方法により形成することができる。ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の被覆は、溶融押出機など既知の押出成型機を用いて行うことができる。第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなる絶縁被覆の他に、発明の趣旨を損ねない範囲で、他の絶縁層が設けられていてもよい。
絶縁被覆は、前記導体の外周に、前記第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を被覆した後、樹脂成分を架橋する方法により形成することができる。ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の被覆は、溶融押出機など既知の押出成型機を用いて行うことができる。第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなる絶縁被覆の他に、発明の趣旨を損ねない範囲で、他の絶縁層が設けられていてもよい。
導体線上に前記第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を被覆した後、樹脂成分の架橋が行われる。樹脂成分を架橋することにより、絶縁被覆の耐熱性や機械的強度が向上する。架橋の方法としては、電離放射線の照射による方法を挙げることができる。電離放射線としては、γ線、X線、紫外線等の電磁波、α線等の粒子線を挙げることができるが、制御の容易さ、線源利用の簡便さや電離放射線の透過厚み、架橋処理の速度などの観点から、電子線が好ましい。
絶縁被覆の厚みは、導体径に応じて適宜選択することができるが、この態様の絶縁被覆は耐摩耗性に優れるため、厚みが0.25mm以下であっても要求特性を満たすことができる。絶縁被覆の厚みを0.25mm以下とすると狭い部分での配線が可能となり取扱いが容易になる。一方、薄すぎる場合は、絶縁性、難燃性等が不十分になる場合があるので、厚みは0.1mm以上が好ましい。
[第4の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線]
本発明の第4の態様は、導体及び前記導体を被覆する絶縁被覆を有する絶縁電線であって、前記絶縁被覆が、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなる外層、及び、曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下でありかつ体積固有抵抗が1015Ω・cm以上の樹脂からなる内層を有し、前記内層の厚みが、0.02mm以上で前記内層と外層のトータル厚みの50%以下であるハロゲンフリー難燃絶縁電線である。
曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下でありかつ体積固有抵抗が1015Ω・cm以上の樹脂としては、この物性を満たす樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリエーテルサルホン樹脂(PES)、ポリフェニレンサルフェート樹脂(PPS)を挙げることができる。
第4の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線は、優れた耐摩耗性を有するとともに、絶縁抵抗、難燃性、耐熱水特性、耐加熱変形性を高い次元でバランスさせ、特に、DC stability試験に合格する高い耐熱水特性を有し、さらに配線時に鋭利なエッジ部に当たっても裂け難い優れたカットスルー特性を有する。
(1)導体
第4の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線を構成する導体としては、前記第3の態様を構成する導体と同様なものを使用することができる。
第4の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線を構成する導体としては、前記第3の態様を構成する導体と同様なものを使用することができる。
(2)絶縁被覆
第4の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線を構成する絶縁被覆は、絶縁被覆の表面側にある外層と、導体に接する側にある内層との少なくとも2層を有する多層構造である(必要な場合は、発明の趣旨が損なわれない範囲で、さらに他の層が設けられていてもよい)。この絶縁被覆においては、主に外層がその難燃性に寄与し、一方内層が耐熱水性やカットスルー特性の向上に寄与している。すなわち、曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下、体積固有抵抗が1015Ω・cm以上の樹脂からなる内層を設けることにより、高い耐熱水性とダイナミックカットスルー特性が得られる。
第4の態様のハロゲンフリー難燃絶縁電線を構成する絶縁被覆は、絶縁被覆の表面側にある外層と、導体に接する側にある内層との少なくとも2層を有する多層構造である(必要な場合は、発明の趣旨が損なわれない範囲で、さらに他の層が設けられていてもよい)。この絶縁被覆においては、主に外層がその難燃性に寄与し、一方内層が耐熱水性やカットスルー特性の向上に寄与している。すなわち、曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下、体積固有抵抗が1015Ω・cm以上の樹脂からなる内層を設けることにより、高い耐熱水性とダイナミックカットスルー特性が得られる。
(2−1)内層
内層を形成する樹脂は、曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下であって、体積固有抵抗1015Ω・cm以上の樹脂である。この樹脂としては、例えば、JPE社製ノバテックHD HB530(曲げ弾性率1.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)、住友化学社製スミカエクセル4100Gまたは4800G(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1015Ω・cm)等のPES樹脂、帝人社製ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)(曲げ弾性率1.9GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)、ポリプラスチックス社製ジュラネックス600FP(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)等のPBT樹脂、出光興産社製タフロンA1900(曲げ弾性率2.3GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)等のポリカーボネート樹脂(PC)を挙げることができる。これらの樹脂には、前記の多官能性モノマー等の架橋助剤を加えてもよい。さらに、酸化防止剤、老化防止剤、加工安定剤、着色剤等の添加剤を適宜加えてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上を併用して添加してもよい。
内層を形成する樹脂は、曲げ弾性率が1.5GPa以上3GPa以下であって、体積固有抵抗1015Ω・cm以上の樹脂である。この樹脂としては、例えば、JPE社製ノバテックHD HB530(曲げ弾性率1.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)、住友化学社製スミカエクセル4100Gまたは4800G(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1015Ω・cm)等のPES樹脂、帝人社製ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)(曲げ弾性率1.9GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)、ポリプラスチックス社製ジュラネックス600FP(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)等のPBT樹脂、出光興産社製タフロンA1900(曲げ弾性率2.3GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm)等のポリカーボネート樹脂(PC)を挙げることができる。これらの樹脂には、前記の多官能性モノマー等の架橋助剤を加えてもよい。さらに、酸化防止剤、老化防止剤、加工安定剤、着色剤等の添加剤を適宜加えてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上を併用して添加してもよい。
内層の厚みは、0.02mm以上であり、かつ前記内層と外層のトータル厚みの50%以下である。なお、前記内層と外層のトータル厚みとは、内層の厚み及び外層の厚みの合計を意味する。内層の厚みが0.02mm未満の場合は、耐熱水性が低下し、DC stability試験に合格しない場合も生じやすくなる。内層の厚みが絶縁被覆のトータル厚みの50%を超える場合は、内層には難燃剤を添加していないため燃焼試験が不十分となる。
(2−2)外層
外層は、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を、内層の外周に被覆して、樹脂成分を架橋する方法により形成することができる。外層の厚みは、0.05mm以上が好ましく、より好ましくは0.1mm以上である。外層の厚みが0.05mm未満の場合は、難燃性が不十分となる。
外層は、第1の態様又は第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を、内層の外周に被覆して、樹脂成分を架橋する方法により形成することができる。外層の厚みは、0.05mm以上が好ましく、より好ましくは0.1mm以上である。外層の厚みが0.05mm未満の場合は、難燃性が不十分となる。
(2−3)内層と外層の形成
外層、内層のいずれの場合も、樹脂組成物や樹脂の被覆は、溶融押出機など既知の押出成型機を用いて行うことができる。
外層、内層のいずれの場合も、樹脂組成物や樹脂の被覆は、溶融押出機など既知の押出成型機を用いて行うことができる。
導体上に内層の樹脂(組成物)を被覆し電離放射線の照射等により樹脂の架橋を行った後、外層の樹脂組成物を被覆してもよい。内層の樹脂(組成物)を被覆した後その上に外層の樹脂組成物を被覆し、その後、電離放射線を照射して樹脂を架橋してもよい。2層押出成型機を用いて、導体線上に内層と外層の樹脂(組成物)を同時に被覆し、その後電離放射線を照射して樹脂を架橋してもよい。外層と内層の樹脂に同時に電離放射線を照射する方法が、効率が良く好ましい。
(2−4)絶縁被覆の厚み
内層、外層等の合計の絶縁被覆の厚みは、導体径に応じて適宜選択することができるが、外層は耐摩耗性に優れるため、絶縁被覆の厚みが0.25mm以下であっても要求特性を満たすことができる。絶縁被覆の厚みを0.25mm以下とすると狭い部分での配線が可能となり取扱いが容易になる。
内層、外層等の合計の絶縁被覆の厚みは、導体径に応じて適宜選択することができるが、外層は耐摩耗性に優れるため、絶縁被覆の厚みが0.25mm以下であっても要求特性を満たすことができる。絶縁被覆の厚みを0.25mm以下とすると狭い部分での配線が可能となり取扱いが容易になる。
先ず、実験例(実施例、比較例)で用いた各材料を以下に示す。
[ポリエチレン(PE)]
・ニポロンハード6300(MFR=0.25、密度0.962g/cm3、東ソー社製、表中では「PE1」と示す。)
・ニポロンハード7300A(MFR=0.05、密度0.952g/cm3、東ソー社製、表中では「PE2」と示す。)
・ニポロンハード8500(MFR=0.35、密度0.949g/cm3、東ソー社製、表中では「PE3」と示す。)
[ポリエチレン(PE)]
・ニポロンハード6300(MFR=0.25、密度0.962g/cm3、東ソー社製、表中では「PE1」と示す。)
・ニポロンハード7300A(MFR=0.05、密度0.952g/cm3、東ソー社製、表中では「PE2」と示す。)
・ニポロンハード8500(MFR=0.35、密度0.949g/cm3、東ソー社製、表中では「PE3」と示す。)
[ポリフェニレンエーテル系樹脂]
・ザイロン(登録商標)X9102(旭化成社製変性PPE、表中では「変性PPE」と示す。)
[スチレン系エラストマー]
・SEBS:タフテック(登録商標)H1041(スチレン含量30質量%、旭化成社製、表中では「SEBS」と示す。)
・SEBC:ダイナロン(登録商標)4600P(スチレン含量20質量%、JSR社製、表中では「SEBC」と示す。)
・SEPS:セプトン2007(登録商標)(スチレン含量30質量%、クラレ社製、表中では「SEPS」と示す。)
・SEEPS:セプトン4033(登録商標)(スチレン含量30質量%、クラレ社製、表中では「SEEPS」と示す。)
・ザイロン(登録商標)X9102(旭化成社製変性PPE、表中では「変性PPE」と示す。)
[スチレン系エラストマー]
・SEBS:タフテック(登録商標)H1041(スチレン含量30質量%、旭化成社製、表中では「SEBS」と示す。)
・SEBC:ダイナロン(登録商標)4600P(スチレン含量20質量%、JSR社製、表中では「SEBC」と示す。)
・SEPS:セプトン2007(登録商標)(スチレン含量30質量%、クラレ社製、表中では「SEPS」と示す。)
・SEEPS:セプトン4033(登録商標)(スチレン含量30質量%、クラレ社製、表中では「SEEPS」と示す。)
[無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体]
・タフマーMH5020(三井化学社製):融点50℃以下
・タフマーMH5020(三井化学社製):融点50℃以下
[他の材料]
・ホスフィン酸金属塩:EXOLIT OP930(クラリアント社製)
・非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル:CR741(大八化学工業社製)
・TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート):モノサイザーTD1500(DIC社製)
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010(BASF社製)
・イオウ系酸化防止剤:イルガノックスPS802(BASF社製)
・金属不活性化剤:イルガノックスMD1024(BASF社製)
・ポリエチレン樹脂:ノバテックHD HB530(曲げ弾性率1.6GPa、体積固有抵抗1017Ω・cm、日本ポリエチレン社製、表中では「PE4」と示す。)
・ポリエチレン樹脂:ノバテックHD HB420R(曲げ弾性率1.3GPa、体積固有抵抗1017Ω・cm、日本ポリエチレン社製、表中では「PE5」と示す。)
・PES樹脂:スミカエクセル4800G(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1015Ω・cm、住友化学社製)
・ポリブチレンナフタレート樹脂:PBN(曲げ弾性率1.9GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm、帝人社製、表中では「PBN樹脂」と示す。)
・PBT樹脂:ジュラネックス600FP(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm、ポリプラスチックス社製)
・PPS樹脂:FZ−2100(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm、DIC社製)
・ホスフィン酸金属塩:EXOLIT OP930(クラリアント社製)
・非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル:CR741(大八化学工業社製)
・TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート):モノサイザーTD1500(DIC社製)
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010(BASF社製)
・イオウ系酸化防止剤:イルガノックスPS802(BASF社製)
・金属不活性化剤:イルガノックスMD1024(BASF社製)
・ポリエチレン樹脂:ノバテックHD HB530(曲げ弾性率1.6GPa、体積固有抵抗1017Ω・cm、日本ポリエチレン社製、表中では「PE4」と示す。)
・ポリエチレン樹脂:ノバテックHD HB420R(曲げ弾性率1.3GPa、体積固有抵抗1017Ω・cm、日本ポリエチレン社製、表中では「PE5」と示す。)
・PES樹脂:スミカエクセル4800G(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1015Ω・cm、住友化学社製)
・ポリブチレンナフタレート樹脂:PBN(曲げ弾性率1.9GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm、帝人社製、表中では「PBN樹脂」と示す。)
・PBT樹脂:ジュラネックス600FP(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm、ポリプラスチックス社製)
・PPS樹脂:FZ−2100(曲げ弾性率2.6GPa、体積固有抵抗1016Ω・cm、DIC社製)
実験例1〜22
( 樹脂組成物ペレットの作成)
表1〜5に示す配合処方で外層、内層用の各成分を混合した。二軸混合機(45mmφ、L/D=42)を使用し、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混合し、ストランド状に溶融押出し、次いで、溶融ストランドを冷却切断してペレットを作製した。
( 樹脂組成物ペレットの作成)
表1〜5に示す配合処方で外層、内層用の各成分を混合した。二軸混合機(45mmφ、L/D=42)を使用し、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混合し、ストランド状に溶融押出し、次いで、溶融ストランドを冷却切断してペレットを作製した。
(絶縁電線の作製)
単軸押出機(30mmφ、L/D=24)を用いて、断面積0.35mm2の導体(0.16mmφの軟銅線19本撚り)上に、内層用樹脂を、表1〜5に示す肉厚になるように押出被覆して内層を形成した。冷却後、同じ単軸押出機を用いて内層上に、外層用樹脂を、表1〜5に示す肉厚になるように押出被覆して外層を形成した。冷却後、加速電圧2MeVの電子線を120kGy照射して樹脂の架橋を行い絶縁電線を作成した。得られた絶縁電線について、下記に示す方法で、通電試験、難燃性の測定、ホットセット試験、耐摩耗性の測定及び低温屈曲特性の測定を行った。その結果を、表1〜5に示す。
単軸押出機(30mmφ、L/D=24)を用いて、断面積0.35mm2の導体(0.16mmφの軟銅線19本撚り)上に、内層用樹脂を、表1〜5に示す肉厚になるように押出被覆して内層を形成した。冷却後、同じ単軸押出機を用いて内層上に、外層用樹脂を、表1〜5に示す肉厚になるように押出被覆して外層を形成した。冷却後、加速電圧2MeVの電子線を120kGy照射して樹脂の架橋を行い絶縁電線を作成した。得られた絶縁電線について、下記に示す方法で、通電試験、難燃性の測定、ホットセット試験、耐摩耗性の測定及び低温屈曲特性の測定を行った。その結果を、表1〜5に示す。
(通電試験)[耐熱水性の評価]
1)ISO6722に基づくhot water resistance試験(表中では「耐熱水試験」と示す。)
3回以上巻回した25mの絶縁電線を、85℃の1%食塩水中に浸漬し、食塩水中に浸漬した電極と当該絶縁電線間に48Vの直流電圧を印加して7日間通電する。7日間の通電を5回行い、計35日間の通電後の絶縁抵抗が109Ω・mm以上の場合を合格とする。
1)ISO6722に基づくhot water resistance試験(表中では「耐熱水試験」と示す。)
3回以上巻回した25mの絶縁電線を、85℃の1%食塩水中に浸漬し、食塩水中に浸漬した電極と当該絶縁電線間に48Vの直流電圧を印加して7日間通電する。7日間の通電を5回行い、計35日間の通電後の絶縁抵抗が109Ω・mm以上の場合を合格とする。
2)EN50306−2に基づくDC stability試験(表中では「DC stability試験」と示す。)
絶縁電線を、85℃の3%食塩水中に浸漬し、当該絶縁電線と食塩水中に浸漬した電極間に300Vの直流電圧を印加して10日間通電する。10日間の通電後、2kVの交流を1分間通電できる耐圧を有する場合を合格とする。直流電圧の印加は、絶縁電線側を正極にした場合と、食塩水中に浸漬した電極を正極にした場合の両方の向きで実施する。
絶縁電線を、85℃の3%食塩水中に浸漬し、当該絶縁電線と食塩水中に浸漬した電極間に300Vの直流電圧を印加して10日間通電する。10日間の通電後、2kVの交流を1分間通電できる耐圧を有する場合を合格とする。直流電圧の印加は、絶縁電線側を正極にした場合と、食塩水中に浸漬した電極を正極にした場合の両方の向きで実施する。
(難燃性の測定)
1)ISO6722に基づく45度傾斜燃焼試験(表中では「45度傾斜燃焼試験」と示す。)
絶縁電線を45°に傾斜させ、ブンゼンバーナーによる内炎部に15秒間接炎させた後、炎が消えるまでの時間(秒)を測定した。70秒以内に炎が自然と消えた場合は合格、70秒を超えた場合は不合格とした。
1)ISO6722に基づく45度傾斜燃焼試験(表中では「45度傾斜燃焼試験」と示す。)
絶縁電線を45°に傾斜させ、ブンゼンバーナーによる内炎部に15秒間接炎させた後、炎が消えるまでの時間(秒)を測定した。70秒以内に炎が自然と消えた場合は合格、70秒を超えた場合は不合格とした。
2)IEC垂直一条燃焼試験(表中では「垂直一条燃焼試験」と示す。)
絶縁電線を支持材(上部支持材)により垂直に保持し、ブンゼンバーナーによる内炎部を45°の角度で、所定の時間(JIS C 3665−1に示す時間。絶縁電線の外径により変動する。)接炎させた後、バーナーを取り除き、炎を消し、試料の燃焼の程度を調べる。上部支持材の下端と炭化の開始点の距離が50mm以上のときを合格とする。ただし、燃焼が上部支持材の下端から540mmより下方に広がったときは不合格とする。
絶縁電線を支持材(上部支持材)により垂直に保持し、ブンゼンバーナーによる内炎部を45°の角度で、所定の時間(JIS C 3665−1に示す時間。絶縁電線の外径により変動する。)接炎させた後、バーナーを取り除き、炎を消し、試料の燃焼の程度を調べる。上部支持材の下端と炭化の開始点の距離が50mm以上のときを合格とする。ただし、燃焼が上部支持材の下端から540mmより下方に広がったときは不合格とする。
(ホットセット試験)[耐加熱変形性の評価]
JIS C 3660−2−1:2003のホットセット試験に準じて測定した。具体的には、以下に示す手順にて行った。
JIS C 3660−2−1:2003のホットセット試験に準じて測定した。具体的には、以下に示す手順にて行った。
絶縁電線から導体を引抜き絶縁被覆のチューブを作製する。作製されたチューブを200±3℃のオーブン中に吊り下げるとともに、チューブの下端に20N/cm2の荷重となるように重りを吊り下げ、15分保持する。15分保持後チューブの長さを測定し、荷重開始前のチューブ長さに対する荷重によるチューブの伸びの比(荷重負荷時伸び)を求める。その後オーブン内で荷重を取り除いた後、オーブンより取出して冷却し、荷重開始前のチューブ長さに対する冷却後のチューブの伸びの比(荷重除去時伸び)を求める。荷重負荷時伸びが100%以下の場合及び荷重除去時伸び25%以下の場合が規格を満たすとされる。
(耐摩耗性の測定)
EN50305−2002:5.2 Abrasion resistanceに基づいて行った。具体的には、直径0.45mmのバネ鋼線のブレードを使用し、ブレードを絶縁電線に荷重7N(20℃)で押し付けて20mm移動させる操作を1分間に60サイクルで繰り返す。絶縁層の摩耗によりブレードが導体に接するまでの摩耗回数が150回以上のものを合格とした。
EN50305−2002:5.2 Abrasion resistanceに基づいて行った。具体的には、直径0.45mmのバネ鋼線のブレードを使用し、ブレードを絶縁電線に荷重7N(20℃)で押し付けて20mm移動させる操作を1分間に60サイクルで繰り返す。絶縁層の摩耗によりブレードが導体に接するまでの摩耗回数が150回以上のものを合格とした。
(低温屈曲特性の測定)
・低温巻付試験
絶縁電線を、−40℃で4時間保管した後、絶縁電線の自己径の4倍の径の棒の周囲に10回巻き付けた。巻き付け後、目視により亀裂が観察されない場合を合格とし、亀裂が観察された場合を不合格とする。
・低温屈曲試験
絶縁電線をセットした屈曲試験機を−15℃の低温槽に入れ、−15℃で4時間保管した後、−15℃に保ったままR=20mmの2本のマンドレルで電線を挟み、ケーブルの下端に荷重1kgfの錘を吊るし、マンドレル外周に電線が沿うように180度折曲げで往復運動させ、速度30回/分、回数3千回で絶縁の破れ、導体の断線がないことを合格とした。
・低温巻付試験
絶縁電線を、−40℃で4時間保管した後、絶縁電線の自己径の4倍の径の棒の周囲に10回巻き付けた。巻き付け後、目視により亀裂が観察されない場合を合格とし、亀裂が観察された場合を不合格とする。
・低温屈曲試験
絶縁電線をセットした屈曲試験機を−15℃の低温槽に入れ、−15℃で4時間保管した後、−15℃に保ったままR=20mmの2本のマンドレルで電線を挟み、ケーブルの下端に荷重1kgfの錘を吊るし、マンドレル外周に電線が沿うように180度折曲げで往復運動させ、速度30回/分、回数3千回で絶縁の破れ、導体の断線がないことを合格とした。
・ダイナミックカットスルー試験
EN50306−2及びEN50305で定められた方法で行う。具体的には、先端に0.45mmφのスチールワイヤーを装着した0.45mm厚の板を、引張試験機を圧縮モードで、電線に対して直角に押し込む。圧縮速度1N/秒、試験室温度20±2℃で、1試料につき4回試験を行う。試料は試験ごとに25mm以上移動し、その際時計回りに90°回転させる。電線の導体とスチールワイヤーは電気的に接続し、絶縁が破れた際に導通して絶縁の破断を感知できるようにしておく。4つの試験結果の平均値が70N以上の場合を合格とする。
EN50306−2及びEN50305で定められた方法で行う。具体的には、先端に0.45mmφのスチールワイヤーを装着した0.45mm厚の板を、引張試験機を圧縮モードで、電線に対して直角に押し込む。圧縮速度1N/秒、試験室温度20±2℃で、1試料につき4回試験を行う。試料は試験ごとに25mm以上移動し、その際時計回りに90°回転させる。電線の導体とスチールワイヤーは電気的に接続し、絶縁が破れた際に導通して絶縁の破断を感知できるようにしておく。4つの試験結果の平均値が70N以上の場合を合格とする。
表に示す結果より、第4の態様の構成要件を満足し、第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物(無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を含有)を用いて作製された実験例1〜13のハロゲンフリー難燃絶縁電線は、優れた(前記試験で150回以上の)耐摩耗性、及び、前記低温巻付試験と低温屈曲試験に合格する優れた低温屈曲特性を共に有することが示されている。さらに、難燃性も合格し、耐加熱変形性(ホットセット試験)も規格を満たしており、DC stability試験に合格する高い耐熱水特性、ダイナミックカットスルー試験に合格する優れたカットスルー特性も有することも示されている。
第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物(無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を含有)を用いて作製されてはいるが、内層を有しない実験例18では、優れた耐摩耗性、低温屈曲特性を共に有し、難燃性、耐加熱変形性は規格を満たすものであるが、DC stability試験に合格する高い耐熱水特性は得られていない。従って、DC stability試験に合格する高い耐熱水特性を得るためには、内層を設ける必要があることを示されている。又、カットスルー特性も不十分である。
更に、曲げ弾性率が1.5GPa未満の樹脂により内層を形成した実験例14でも、ダイナミックカットスルー試験に合格する優れたカットスルー特性は得られていない。これらの結果より、ダイナミックカットスルー試験に合格する優れたカットスルー特性を得るためには、曲げ弾性率が1.5GPa以上の樹脂により形成された内層を設ける必要があることが示されている。
一方、密度が0.949g/cm3のポリエチレン樹脂を用いている実験例15、密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンの含有量が、100質量部の樹脂成分中に30質量部未満である実験例16では、前記試験で150回以上の優れた耐摩耗性やダイナミックカットスルー試験に合格する優れたカットスルー特性は得られていない。この結果より、良好な耐摩耗性、カットスルー特性を得るためには、密度0.95g/cm3以上のポリエチレンを、100質量部の樹脂成分中に30質量部以上含有させる必要があることが示されている。
又、密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンの含有量が、100質量部の樹脂成分中に50質量部を超える実験例17では、低温屈曲特性が不良であり、優れた低温屈曲特性を得るためには、高密度ポリエチレンの含有量が、100質量部の樹脂成分中の50質量部以下とするべきことが示されている。
スチレン系エラストマー(ポリスチレン−エチレン・スチレンランダム共重合体)の含有量が、100質量部の樹脂成分中に10質量部未満である実験例19では、第2の態様のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物(無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を含有)を用いて作製されてはいるが、低温屈曲特性が不良である。一方、30質量部を超える実験例20では、前記試験で150回以上の優れた耐摩耗性は得られていない。この結果より、良好な耐摩耗性と良好な低温屈曲特性を両立させるためには、スチレン系エラストマーの含有量は、100質量部の樹脂成分中に10質量部以上、30質量部以下とするべきことが示されている。
無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体の含有量が、100質量部の樹脂成分中に5質量部未満である実験例21では、低温屈曲特性が不良である。一方、20質量部を超える実験例22では、前記試験で150回以上の優れた耐摩耗性は得られていない(又、カットスルー特性も不十分である)。この結果より、良好な耐摩耗性と良好な低温屈曲特性を両立させるためには、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体の含有量は、100質量部の樹脂成分中に5質量部以上、20質量部以下とするべきと言える。
ホスフィン酸金属塩の含有量が、100質量部の樹脂成分に対して10質量部未満である実験例23では、難燃性が不十分である。一方、40質量部を超える実験例24では、規格を充分充たす良好な低温屈曲特性は得られていない。この結果より、ホスフィン酸金属塩の含有量は、100質量部の樹脂成分に対して10質量部以上、40質量部以下とするべきことが示されている。
多官能性モノマーを含有しない(100質量部の樹脂成分に対して1質量部未満)である実験例25では、前記試験で150回以上の優れた耐摩耗性は得られていない。又、耐加熱変形性も不十分である。一方、多官能性モノマーの含有量が、100質量部の樹脂成分に対して10質量部を超える実験例26では、規格を充分充たす良好な低温屈曲特性は得られていない(又、カットスルー特性も不十分である)。この結果より、多官能性モノマーの含有量は、100質量部の樹脂成分に対して1質量部以上、10質量部以下とするべきと言える。
Claims (6)
- 密度0.95g/cm3以上の高密度ポリエチレンを30質量部以上50質量部以下、ポリフェニレンエーテル系樹脂を20質量部以上40質量部以下、及びスチレン系エラストマーを10質量部以上30質量部以下含有する100質量部の樹脂成分、並びに
前記樹脂成分の100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下のホスフィン酸金属塩、1質量部以上10質量部以下の多官能性モノマー、1質量部以上10質量部以下の非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、及び0.5質量部以上5質量部以下の金属不活性化剤を含有するハロゲンフリー難燃性樹脂組成物。 - 前記スチレン系エラストマーが、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体である請求項1に記載のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物。
- 前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量が、前記スチレン系エラストマー100質量部に対し、25質量部以上55質量部以下である請求項1または請求項2に記載のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物。
- 無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を、100質量部の樹脂成分中に、5質量部以上20質量部以下を含有する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物。
- 導体と、前記導体を被覆する絶縁層を備える絶縁電線であって、前記絶縁層が、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなるハロゲンフリー難燃絶縁電線。
- 導体と、前記導体を被覆する内層と、前記内層を被覆する外層を備える絶縁電線であって、前記外層が、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなり、前記内層は、曲げ弾性率が1.5GPa以上、3GPa以下であって体積固有抵抗が1015Ω・cm以上の樹脂からなり、前記内層の厚みが、0.02mm以上で、前記内層と外層のトータル厚みの50%以下であるハロゲンフリー難燃絶縁電線。
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WO2019026689A1 (ja) * | 2017-08-03 | 2019-02-07 | 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 | 樹脂組成物、成形品および電線 |
WO2021220884A1 (ja) * | 2020-04-28 | 2021-11-04 | Eneos株式会社 | ポリマー組成物 |
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- 2016-03-09 JP JP2016045814A patent/JP2017160328A/ja active Pending
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CN115427499A (zh) * | 2020-04-28 | 2022-12-02 | 引能仕株式会社 | 聚合物组合物 |
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