JP2017159875A - スマートサイクル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】従来の自転車の駆動メカニズムの内、クランクを取り除く。そして、ギヤ板(大歯車)の半径を、従来のギヤ板の半径の2倍、またはそれ以上に拡長し、拡大されたギヤ板の円周帯の1点にペダルを取りつけて、そのペダルに「力のモーメント」(トルク)を与える構造にする。つぎに、ギヤ板の構造を、偏心回転をする構造に変える。このように、ギヤ板の構造を変えることによって、駆動メカニズムの原節に働く輪軸の作用を排除でき、かつ、従節に働く輪軸の作用に反する作用を小さくすることができる。そして最終的に、前記の構造を有するギヤ板を自転車の駆動メカニズムに装着し、これを自転車の左右両サイドに設置して、両サイド駆動の自転車にその構造を変える。
【選択図】図4−3
Description
図1を示す。
図1は、従来の自転車の駆動メカニズムを模擬的に示した図である。
この図に記載の駆動メカニズムは、その機能上、三つの部分に分けることができる。
その1は、クランク、ハンガーシャフト、及びギヤ板(大歯車)によって構成される部分(以下、原節という)、であり、その2は、後輪とスプロケット(小歯車)とハブによって構成されている部分(以下、従節という)であり、その3は、チェーンによる動力の伝動(以下、チェーン伝動とういう)である。
原節における駆動メカニズム及び従節における駆動メカニズムは、力学における「輪軸」の構造・作用と同一である。
原節の内、クランクは、輪軸における大輪に相当し、シャフトは輪軸における軸に相当し、ギヤ板(大歯車)は輪軸における小輪に相当する。
従節の内、小歯車(スプロケット)は、機能上、輪軸における大輪に相当し、後輪は輪軸における小輪に相当し、後輪の軸は輪軸における軸に相当する。
図6‐1及び図6‐2は、輪軸の構造・作用を示す図である。
図6‐1の(A)における符号1は、大輪であり、符号2は小輪であり、符号3は軸である。
小輪に綱を結びつけ、この綱の先端に物体をしばりつけて、大輪の綱を人間の力で下方に引っ張ると、小輪の綱は巻き上げられて、物体は上方に上がっていく。この場合、大輪の半径と小輪の半径の差が大きい程、その物体は小さな力で巻き上げることができる。
図6‐1の(B)は、図6‐1(A)の輪軸を、小輪から大輪に向かって正面から見た場合の図であり、符号Fは人間の力であり、符号Wは物体の重量である。
図6‐2を示す。
図6‐2の(A)及び図6‐2の(B)は、図6‐1の(A)及び図6‐1の(B)に示した輪軸の作用を、てこの作用に置き換えた図である。
図6‐2の(A)(B)において、符号Oはてこにおける支点であり、符号Aはてこにおける力点であり、符号Bはてこにおける力の作用点である。符号Rは大輪の半径であり、てこにおける支点と力点間の距離(長さ)に相当し、符号rは小輪の半径であり、てこにおける支点と作用点間の距離(長さ)であり、符号Fは力であり、符号Wは物体の重量である。
図6‐2の(B)において、WとFが平衡である場合は、てこは動かない。これを、力学においては「つり合う」という。輪軸においても同様に、WとFがつり合っていれば、輪軸は動かない。この状態をつぎの式1で表す。
F×R=W×r 式1
式1から
が成り立つ。
輪軸において、この式2は、大輪に加える力Fは、小輪に吊るされた物体の重量Wよりも、常に小さいことを示している。
計算例を示す。
小輪に吊るした物体の重量が80kgであり、小輪の半径が10cm、大輪の半径が40cmであると仮定し、これにつり合う力Fを求めると、
式2から
になる。(以下、計算例1という)。つまり、小輪における80kg(W)は、大輪における20kg(F)とつり合う。
つぎに、輪軸によって物体が移動する距離を求めてみることにする。
輪軸においては、大輪が1回転すると小輪も1回転する。従って、大輪1回転につき小輪が巻き取る綱の長さは、小輪の円周長によって決まる。前記の計算例1において、大輪の半径が40cm、小輪の半径は10cmであるので、これについて、物体Wが巻きあげられる距離(長さ)を求めると、
小輪の円周は
20cm(10cm×2)×3.14(円周率)=62.8cm、(以下、計算例2という)
になる。従って、小輪1回転当り、物体Wが巻き上げられる距離(綱の長さ)は、62.8cmの距離(綱の長さ)である。
図2は、クランク・シャフト・ギヤ板から構成されるチェーンホイールの構造を示す写真である。
チェーンホイールの構造は、クランク及びギヤ板はシャフトに固定されて一体化されている。従って、クランクは輪軸における大輪に相当し、ギヤ板は輪軸における小輪に相当し、シャフトは輪軸における軸に相当し、そしてチェーンは輪軸における綱に相当する。
輪軸においては、小輪に綱を結び、この綱の片方の先端に物体が吊るされており、大輪を回転せしめることによって物体(W)が引き上げられる。
従来の自転車において、クランクの長さが17cm、ギヤ板の半径が、8.5cmであり、自転車の全荷重が80kg(自転車15kg、人体65kg)であると仮定し、クランクを回してこの物体を引き上げるためには、何ニュートンの力(F)をペダルに与えなければならないかを、計算で求めると、
前記式2から
になる。(以下、計算例3という)。つまり、40kg以上の力をペダルに与えなければならない。
輪軸の作用・効果においては、あくまでも、大輪の半径Rが小輪の半径rよりも大きいことが絶対的条件である。
ところが、後輪のメカニズムは、大輪に綱を結び、この綱の先端に物体Wを吊るして、これを、小輪に力Fを与えて回転させることによって引き上げようとするに等しい。
従来の自転車における駆動メカニズムは、小歯車(スプロケット)にチェーンが巻かれており、このチェーンが大歯車(ギヤ板)に巻きとられることによって小歯車が回転する仕組みである。小歯車が1回転すれば、自転車の後輪も1回転する。そして、自転車の後輪には、自転車及び人体の全荷重がかかっている。その上、走行時は、路面抵抗(摩擦力)及び加速力の問題がこれに加わる。
ところが、自転車の後輪における駆動メカニズムは、大歯車から小歯車に、チェーンによって伝動されてきた力(動力)によって、小歯車が大きな負荷がかかっている後輪を回している、というメカニズムである。後輪の半径は小歯車の半径よりもはるかに大きい。こんなことは、輪軸の作用・効果に反する。
上述したように、従来の自転車の駆動メカニズムには、越えられない壁と制約がある。
本発明は、従来の自転車の駆動メカニズムの原節に働く輪軸の作用を排除し、これに替るメカニズムを開発・提供しようとするものである。
自転車をこぐというのは、かなりきつい力仕事である。力仕事というのは、それが何であれ、決して楽しいものではない。
より速く、より軽く、そして、より小さな力で楽に走行できる自転車を開発・提供すること、これこそが、本発明の課題であり、目的である。
図5を示す。
力学においては、右端の回転中心点を支点、力を加える点を作用点、支点から作用点までの長さを「うでの長さ」という。
図5において、OBの長さが10cm、OAの長さが20cmであるとき、作用点Aを押す場合と作用点Bを押す場合とでは、これに要する力は、作用点Bでは作用点Aを押す力の2倍を要する。逆に言えば、作用点Aを押す力は、作用点Bを押す力の2分の1である。
力のモーメントは、つぎの式3で表す。
力のモーメント(M)=力(F)×うでの長さ(L)、 式3
この式は、力が一定であれば、「うでの長さ」が長い程、力のモーメントは大きくなることを示している。
従来の自転車におけるクランクを取り除くことによって、ギヤ板の半径を大きくすることができる。本発明において、ギヤ板の半径が大きくなる、ということは、力のモーメントにおける腕の長さが大きくなることである。
腕の長さが大きくなるということは、前記式3から、力のモーメントが大きくなることである。
うでの長さが大きくなる、ということは、前記式3に照らし、その効果は極めて大きい。単にギヤ板に加える力のモーメントが大きくなるばかりではない。自転車後輪の小歯車(スプロケット)の半径を大きくすることができる。
自転車後輪のスプロケットの半径を従来のスプロケットの2倍に拡大したとなれば、その効果は極めて大きい。
従来の自転車の小歯車(スプロケット)は、その機能上、輪軸における大輪に相当し、後輪は輪軸における小輪に相当し、ハブを貫通する軸は、輪軸における軸に相当する。
輪軸のメカニズムは、小輪に綱を結び、この綱の先端に物体(W)を吊るして、これを大輪に力(F)を与えて回転させることによって、物体を引き上げる構造である。従って、小さな力で重い物体を引き上げることができる。
ところが、現在の自転車の駆動メカニズムにおける従節のメカニズムは、大輪に綱を結び、この綱の先端に物体(W)を吊るして、これを小輪に力(F)を与えて回転させることによって、物体を引き上げようとするに等しい。こんなことは輪軸の作用・効果に反する。
本発明は、自転車の後輪における小輪(スプロケット)の半径を、大歯車の半径を拡大するに比例して、2倍以上に拡大できるので、その効果は極めて大きい。
計算例を示す。
従来の自転車の構造において、小歯車(スプロケット)の半径が7cm、後輪の半径が32cm(現在、市中を走っている自転車の大部分は、タイヤの直径が70cmであるが、これは空気をパンパンに入れた状態の直径である。自転車には、自転車自体の重量と人体の重量がかかるので、路面を走行するときは、タイヤは横に拡がる。従って、後輪の半径は短くなる)、後輪に80kgの荷重がかかっていると仮定し、この後輪を回転させるためには、どれだけの力を小歯車に与えなければならないかを求めると、
前記式2から
になる。
これに対して、本発明においては、小歯車の半径を従来の2倍に拡大するから、その半径は14cmになる。その効果を計算で求めると、
になる。(以下、計算例5という)。
183kg(F)は366kg(F)の2分の1である。すなわち、後輪の半径が一定であれば、小歯車(スプロケット)の半径が大きい程、後輪の回転に要する力は小さくなる。
力のモーメント=力×うでの長さ、 (前記式3)
であるから、従来のギヤ板の半径が8.5cmであるとすれば、本発明のギヤ板では、8.5cmの2倍の17cmが、力のモーメントにおける「うでの長さ」になる。
従来の自転車のペダルに加える力(F)が40kg(F)であり、これを本発明のペダルに加えるとすれば、40kg×2=80kgの力(F)がペダルに働く。(図5参照)。
(本発明では、偏心回転ギヤ板を使うので、偏心回転の中心点から円中心点までの距離が2cmであるとすると、力のモーメントにおける「うでの長さ」は19mm(17cm+2cm)になる。従って、本発明において、ペダルに働く力は80kg(F)を上回る。
図4−3は、左右両方のギヤ板をシャフトに固定する段において、左右両方のギヤ板の「うでの長さ」が、ギヤ板が回転するとき、交互に働くようにシャフトに固定したものである。
ギヤ板の回転において、ギヤ板の中心点を通る垂直線を境にして、ギヤ板の円周は2つの半周に分れる。1つの半周が、自転車の進行方向の前方にあるときは、チェーンを牽引する力として有効に働くが、そのとき、もう一方の半周は、自転車の進行方向の後方にあるので、チェーンを牽引する力として有効に働かない。
本発明に係わる偏心回転ギヤ板においては、ギヤ板の円中心点を通る垂直線を境にして、偏心回転中心点から円周に至るまでの距離が短い半周と長い半周に分かれている。従って、この場合、距離の短い方の半周が、自転車の進行方向に対して前の位置に来たときは、チェーンは弛緩する。チェーンが弛緩するということは、チェーンを牽引する力が働いてないということである。
図4−3に示すギヤ板の回転において、左サイドのギヤ板のチェーンが緊張状態にあるときは右サイドのギア板のチェーンは弛緩し、右サイドのチェーンが緊張状態にあるときは、左サイドのチェーンは弛緩する。偏心ギヤ板の回転においては、これを繰り返す。
本発明においては、左右両サイドのギア板はシャフトに固定されていても、左右両方のギヤ板に働く力は、断ち切られており、同時に連動することはない。従って、輪軸の作用が働く余地はない。
本発明における駆動メカニズムは、従来の自転車における駆動メカニズムに比べて、2分の1または2分の1以下の力で駆動する。
平面状態にある道路に直線を画き、この直線上に自転車の前輪及び後輪を一直線に並べて、自転車の姿勢が垂直状態にあるように保って、後方から押して手を放すと、その自転車は必ず右サイドに倒れる。
自転車の乗り手が意識しようがしまいが、実際の走行においては、自転車自体の姿勢は、常に、若干、左傾した状態で走行している。
本発明においては、自転車の両サイドに、同重量の駆動メカニズムを搭載するので、自転車の左右の重量はバランスしている。長時間長距離を走行するには、自転車の左右の重量がバランスしていることが、極めて重要である。
(1)ギヤ板の強度の問題
本発明においては、従来の自転車におけるクランクを取り払い、その替りに、ギヤ板の半径を拡大し、その拡大したギヤ板の円周帯にペダルを取りつける。従って、従来のギヤ板を使うことはできない。ギヤ板は、新調しなければならない。
この場合、ギヤ板の材質に注意しなければならない。なるべく軽量で強度の高い材質を使うことが要求される。
(2)偏心回転ギヤ板をつくる場合の注意点。
偏心回転中心点と円中心点とペダルを取りつける位置が、円の直径の同一線上に並べることが絶対的条件である。
(3)補強材とその構造の問題。
本発明においては、ギヤ板の半径が従来のギヤ板の2倍、若しくは2倍以上になるので、アルミ合金などの軽量材を使用するときは、補強材を使って、強度を補強しなければならない。
この場合、ギヤ板の円周には、ギヤ板の歯が並んでいるので、歯車の機能を阻害しない構造の補強材の構造が必要である。ペダルは、補強材の上に重ねて設置する。但し、ギヤ板の材質・強度が充分であるときは、補強材を使う必要はない。
(4)円中心点と偏心中心点との距離の問題
拡大されたギヤ板における円中心点と偏心中心点との距離は、自転車の種類・用途によって異なるが、ロードレーサー、スポルティーフ等の高速走行を要求する車種においては、20mm〜25mm範囲の距離(間隔)が望ましく、実用車やシティサイクルのように、通勤、通学、日常生活の用途に使う車種では、10mm〜15mm範囲の距離が望ましい。
(5)ボトムブラケット及びハブの構造の問題
本発明においては、自転車の左右両サイドに駆動メカニズムを設置する。これに伴なって、従来のリヤハブの構造を変えなければならない。
図3を示す。
図3は、多段変連機を装着するときの、従来のリアハブの構造を示す写真である。
図3において、符号1はスポークを取りつけるフランジであり、符号2は多段スプロケット(小歯車)をはめ込んで固定するスプロケットホールダー(フリーハブボディともいう)である。
本発明においては、自転車の左右両サイドに駆動メカニズムを設置するので、リヤハブの左サイドにも、スプロケットを固定・保持するスプロケットホールダーを設けなければならない。従って、従来のリヤハブの構造を変える必要がある。但し、シングルギヤ(単段ギヤ)においては、リヤハブの構造を変える必要はない。
自転車の駆動メカニズムの原節に属するボトムブラケットは、自転車の左サイドのクランクを取り除いた場所にギヤ板を取りつけることができる。従って、従来のボトムブラケットの構造を変える必要はない。
図1は、従来の自転車の駆動メカニズムを模擬的に示した図である。
この図に記載の駆動メカニズムは、その機能上、三つの部分に分けることができる。
その1は、クランク、ハンガーシャフト、及びギヤ板(大歯車)によって構成される部分(以下、原節という)、であり、その2は、後輪とスプロケット(小歯車)とハブによって構成されている部分(以下、従節という)であり、その3は、チェーンによる動力の伝動(以下、チェーン伝動という)である。
原節における駆動メカニズム及び従節における駆動メカニズムは、力学における「輪軸」の構造・作用と同一である。
原節の内、クランクは、輪軸における大輪に相当し、シャフトは輪軸における軸に相当し、ギヤ板(大歯車)は輪軸における小輪に相当する。
従節の内、小歯車(スプロケット)は、機能上、輪軸における大輪に相当し、後輪は輪軸における小輪に相当し、後輪の軸は輪軸における軸に相当する。
図6−1及び図6−2は、輪軸の構造・作用を示す図である。
図6−1の(A)における符号1は、大輪であり、符号2は小輪であり、符号3は軸である。
小輪に綱を結びつけ、この綱の先端に物体をしばりつけて、大輪の綱を人間の力で下方に引っ張ると、小輪の綱は巻き上げられて、物体は上方に上がっていく。この場合、大輪の半径と小輪の半径の差が大きい程、その物体は小さな力で巻き上げることができる。
図6−1の(B)は、図6−1(A)の輪軸を、小輪から大輪に向かって正面から見た場合の図であり、符号Fは人間の力であり、符号Wは物体の重量である。
図6−2を示す。
図6−2の(A)及び図6−2の(B)は、図6−1の(A)及び図6−1の(B)に示した輪軸の作用を、てこの作用に置き換えた図である。
図6−2の(A)(B)において、符号Oはてこにおける支点であり、符号Aはてこにおける力点であり、符号Bはてこにおける力の作用点である。符号Rは大輪の半径であり、てこにおける支点と力点間の距離(長さ)に相当し、符号rは小輪の半径であり、てこにおける支点と作用点間の距離(長さ)であり、符号Fは力であり、符号Wは物体の重量である。
図6−2の(B)において、WとFが平衡である場合は、てこは動かない。これを、力学においては「つり合う」という。輪軸においても同様に、WとFがつり合っていれば、輪軸は動かない。この状態をつぎの式1で表す。
が成り立つ。
輪軸において、この式2は、大輪に加える力Fは、小輪に吊るされた物体の重量Wよりも、常に小さいことを示している。
計算例を示す。
小輪に吊るした物体の重量が80kgであり、小輪の半径が10cm、大輪の半径が40cmであると仮定し、これにつり合う力Fを求めると、
式2から
になる。(以下、計算例1という)。つまり、小輪における80kg(W)は、大輪における20kg(F)とつり合う。
つぎに、輪軸によって物体が移動する距離を求めてみることにする。
輪軸においては、大輪が1回転すると小輪も1回転する。従って、大輪1回転につき小輪が巻き取る綱の長さは、小輪の円周長によって決まる。前記の計算例1において、大輪の半径が40cm、小輪の半径は10cmであるので、これについて、物体Wが巻きあげられる距離(長さ)を求めると、
小輪の円周は
20cm(10cm×2)×3.14(円周率)=62.8cm、(以下、計算例2という)
になる。従って、小輪1回転当り、物体Wが巻き上げられる距離(綱の長さ)は、62.8cmの距離(綱の長さ)である。
図2は、クランク・シャフト・ギヤ板から構成されるチェーンホイールの構造を示す写真である。
チェーンホイールの構造は、クランク及びギヤ板はシャフトに固定されて一体化されている。従って、クランクは輪軸における大輪に相当し、ギヤ板は輪軸における小輪に相当し、シャフトは輪軸における軸に相当し、そしてチェーンは輪軸における綱に相当する。
輪軸においては、小輪に綱を結び、この綱の片方の先端に物体が吊るされており、大輪を回転せしめることによって物体(W)が引き上げられる。
従来の自転車において、クランクの長さが17cm、ギヤ板の半径が、8.5cmであり、自転車の全荷重が80kg(自転車15kg、人体65kg)であると仮定し、クランクを回してこの物体を引き上げるためには、何ニュートンの力(F)をペダルに与えなければならないかを、計算で求めると、
前記式2から
になる。(以下、計算例3という)。つまり、40kg以上の力をペダルに与えなければならない。
輪軸の作用・効果においては、あくまでも、大輪の半径Rが小輪の半径rよりも大きいことが絶対的条件である。
ところが、後輪のメカニズムは、大輪に綱を結び、この綱の先端に物体Wを吊るして、これを、小輪に力Fを与えて回転させることによって引き上げようとするに等しい。
従来の自転車における駆動メカニズムは、小歯車(スプロケット)にチェーンが巻かれており、このチェーンが大歯車(ギヤ板)に巻きとられることによって小歯車が回転する仕組みである。小歯車が1回転すれば、自転車の後輪も1回転する。そして、自転車の後輪には、自転車及び人体の全荷重がかかっている。その上、走行時は、路面抵抗(摩擦力)及び加速力の問題がこれに加わる。
ところが、自転車の後輪における駆動メカニズムは、大歯車から小歯車に、チェーンによって伝動されてきた力(動力)によって、小歯車が大きな負荷がかかっている後輪を回している、というメカニズムである。後輪の半径は小歯車の半径よりもはるかに大きい。こんなことは、輪軸の作用・効果に反する。
上述したように、従来の自転車の駆動メカニズムには、越えられない壁と制約がある。
本発明は、従来の自転車の駆動メカニズムの原節に働く輪軸の作用を排除し、これに替るメカニズムを開発・提供しようとするものである。
自転車をこぐというのは、かなりきつい力仕事である。力仕事というのは、それが何であれ、決して楽しいものではない。
より速く、より軽く、そして、より小さな力で楽に走行できる自転車を開発・提供すること、これこそが、本発明の課題であり、目的である。
図5を示す。
力学においては、右端の回転中心点(O)を支点、力を加える点(A)(B)を作用点、支点から作用点までの長さを「うでの長さ」という。
図5において、OBの長さが10cm、OAの長さが20cmであるとき、作用点Aを押す場合と作用点Bを押す場合とでは、これに要する力は、作用点Bでは作用点Aを押す力の2倍を要する。逆に言えば、作用点Aを押す力は、作用点Bを押す力の2分の1である。
力のモーメントは、つぎの式4で表す。
力のモーメント(M)=力(F)×うでの長さ(L)、 式4
この式は、力が一定であれば、「うでの長さ」が長い程、力のモーメントは大きくなることを示している。
従来の自転車におけるクランクを取り除くことによって、ギヤ板の半径を大きくすることができる。本発明において、ギヤ板の半径が大きくなる、ということは、力のモーメントにおける腕の長さが大きくなることである。
腕の長さが大きくなるということは、前記式4から、力のモーメントが大きくなることである。
うでの長さが大きくなる、ということは、前記式4に照らし、その効果は極めて大きい。単にギヤ板に加える力のモーメントが大きくなるばかりではない。自転車後輪の小歯車(スプロケット)の半径を大きくすることができる。
自転車後輪のスプロケットの半径を、従来のスプロケットの半径の2倍または2倍以上に拡大したとなれば、その効果は極めて大きい。
従来の自転車の小歯車(スプロケット)は、その機能上、輪軸における大輪に相当し、後輪は輪軸における小輪に相当し、ハブを貫通する軸は、輪軸における軸に相当する。
輪軸のメカニズムは、小輪に綱を結び、この綱の先端に物体(W)を吊るして、これを大輪に力(F)を与えて回転させることによって、物体を引き上げる構造である。従って、小さな力で重い物体を引き上げることができる。
ところが、現在の自転車の駆動メカニズムにおける従節のメカニズムは、大輪に綱を結び、この綱の先端に物体(W)を吊るして、これを小輪に力(F)を与えて回転させることによって、物体を引き上げようとするに等しい。こんなことは輪軸の作用・効果に反する。
本発明は、自転車の後輪における小輪(スプロケット)の半径を、大歯車の半径を拡大するに比例して拡大できるので、その効果は極めて大きい。
計算例を示す。
従来の自転車の構造において、小歯車(スプロケット)の半径が7cm、後輪の半径が32cm(現在、市中を走っている自転車の大部分は、タイヤの直径が60〜70cmであるが、これは空気をパンパンに入れた状態の直径である。自転車には、自転車自体の重量と人体の重量がかかるので、路面を走行するときは、タイヤは横に拡がる。従って、後輪の半径は短くなる)、後輪に80kgの荷重がかかっていると仮定し、この後輪を回転させるためには、どれだけの力を小歯車に与えなければならないかを求めると、
前記式2から
下、計算例4という)。
これに対して、本発明において、小歯車の半径を従来の2倍に拡大した場合、その半径は14cmになる。その効果を計算で求めると、
になる。(以下、計算例5という)。
183kg(F)は366kg(F)の2分の1である。すなわち、後輪の半径が一定であれば、小歯車(スプロケット)の半径が大きい程、後輪の回転に要する力は小さくなる。
従来の自転車において、後輪の円周にかかる負荷が80kg、タイヤの半径が32cm、 小歯車(リヤスプロケット)の半径が4cm、である場合、小歯車の円周において、これ につり合う力(F)を求めると、
前記式2から
になる。(以下、計算例6、という)。
これに対し、本発明においては、
前記式2から
という)。
640kg対256kgは、倍率にすると2.5倍の差である。この差はいかにも大きい 。すなわち、本発明のスマートサイクルは、前記の従来の自転車に比べると、1/2以下 の力で走行することができる。
(付記:自転車後輪におけるタイヤと地面との接地は、集中荷重接地であり、後輪にかか る全荷重は、タイヤの接地点(又は接地面積)に集中する。
球体の物体を、水平面の路上においてころがすと、よくころがる。自転車の走行運動は、 道路の路面をころがることによって移動する運動である。物体を持ち上げて移動する運動 とは異なる。物体を持ち上げて移動する運動では、重力の抵抗を受ける。ところが、路面 をころがる(又は回転する)ことによって移動する運動では、地面に加えられる自転車の 全荷重は、作用と反作用というニュートン力学の第三法則が働く。すなわち、地面を押し つける荷重は(作用)、地面によって押し返される(反作用)。
ことばを変えていえば、自転車の走行運動においては、自転車にかかる全荷重は、地面に よって支えられている。従って、自転車後輪の接地点における負荷が、仮に300kgで あるとしても、300kg(F)の力を必要としない)。
図4−3は、左右両方のギヤ板をシャフトに固定する段において、左右両方のギヤ板の「うでの長さ」が、ギヤ板が回転するとき、交互に働くようにシャフトに固定したものである。
ギヤ板の回転において、ギヤ板の中心点を通る垂直線を境にして、ギヤ板の円周は2つの半周に分れる。1つの半周が、自転車の進行方向の前方にあるときは、チェーンを牽引する力として有効に働くが、そのとき、もう一方の半周は、自転車の進行方向の後方にあるので、チェーンを牽引する力として有効に働かない。
本発明に係わる偏心回転ギヤ板においては、ギヤ板の回転中心点を通る垂直線を境にして、偏心回転中心点から円周に至るまでの距離が短い半周と長い半周に分かれている。従って、この場合、距離の短い方の半周が、自転車の進行方向に対して前の位置に来たときは、チェーンは弛緩する。チェーンが弛緩するということは、チェーンを牽引する力が働いてないということである。
図4−3に示すギヤ板の回転において、左サイドのギヤ板のチェーンが緊張状態にあるときは右サイドのギア板のチェーンは弛緩し、右サイドのチェーンが緊張状態にあるときは、左サイドのチェーンは弛緩する。偏心ギヤ板の回転においては、これを繰り返す。
本発明においては、左右両サイドのギア板はシャフトに固定されていても、左右両方のギヤ板に働く力は、断ち切られており、同時に連動することはない。従って、輪軸の作用が働く余地はない。
本発明における駆動メカニズムは、従来の自転車における駆動メカニズムに比べて、2分の1または2分の1以下の力で駆動する。
水平・平面状態にある道路に直線を画き、この直線上に自転車の前輪及び後輪を一直線に並べて、自転車の姿勢が垂直状態にあるように保って、後方から押して手を放すと、その自転車は必ず右サイドに倒れる。
自転車の乗り手が意識しようがしまいが、実際の走行においては、自転車自体の姿勢は、常に、若干、左傾した状態で走行している。
本発明においては、自転車の両サイドに、同重量の駆動メカニズムを搭載するので、自転車の左右の重量はバランスしている。長時間長距雕を走行するには、自転車の左右の重量がバランスしていることが、極めて重要である。
(1)ギヤ板の強度の問題
本発明においては、従来の自転車におけるクランクを取り払い、その替りに、ギヤ板の半径を拡大し、その拡大したギヤ板の円周帯にペダルを取りつける。従って、従来のギヤ板を使うことはできない。ギヤ板は、新調しなければならない。
この場合、ギヤ板の材質に注意しなければならない。なるべく軽量で強度の高い材質を使うことが要求される。
(2)偏心回転ギヤ板をつくる場合の注意点。
偏心回転中心点と円中心点とペダルを取りつける位置が、円の直径の同一線上に並べることが絶対的条件である。
(3)補強材とその構造の問題。
本発明においては、ギヤ板の半径が従来のギヤ板の2倍、若しくは2倍以上になるので、アルミ合金などの軽量材を使用するときは、補強材を使って、強度を補強しなければならない。
この場合、ギヤ板の円周には、ギヤ板の歯が並んでいるので、歯車の機能を阻害しない構造の補強材の構造が必要である。ペダルは、補強材の上に重ねて設置する。但し、ギヤ板の材質・強度が充分であるときは、補強材を使う必要はない。
(4)円中心点と偏心中心点との距離の問題
拡大されたギヤ板における円中心点と偏心中心点との距離は、自転車の種類・用途によって異なるが、ロードレーサー、スポルティーフ等の高速走行を要求する車種においては、20mm〜25mm範囲の距離(間隔)が望ましく、実用車やシティサイクルのように、通勤、通学、日常生活の用途に使う車種では、10mm〜15mm範囲の距離が望ましい。
(5)ボトムブラケット及びハブの構造の問題
本発明においては、自転車の左右両サイドに駆動メカニズムを設置する。これに伴なって、従来のリヤハブの構造を変えなければならない。
図3を示す。
図3は、多段変速機を装着するときの、従来のリアハブの構造を示す写真である。
図3において、符号1はスポークを取りつけるフランジであり、符号2は多段スプロケット(小歯車)をはめ込んで固定するスプロケットホールダー(フリーハブボディともいう)である。
本発明においては、自転車の左右両サイドに駆動メカニズムを設置するので、リヤハブの左サイドにも、スプロケットを固定・保持するスプロケットホールダーを設けなければならない。従って、従来のリヤハブの構造を変える必要がある。但し、シングルギヤ(単段ギヤ)においては、リヤハブの構造を変える必要はない。
自転車の駆動メカニズムの原節に属するボトムブラケットは、自転車の左サイドのクランクを取り除いた場所にギヤ板を取りつけることができる。従って、従来のボトムブラケットの構造を変える必要はない。
Claims (5)
- 従来の自転車の駆動メカニズムにおけるクランクを取り除き、ギヤ板(大歯車、ギヤリングともいう)の円周に力のモーメントを与えることを特徴とする構造のスマートサイクル。
- 前項1に記載のギヤ板の構造において、ギヤ板の円中心点から外れた位置に回転中心を有することを特徴とする偏心回転ギヤ板の構造。
- 前項2に記載の偏心回転ギヤ板の構造において、ギヤ板の半径を大きくし、その円周帯にペダルを直に取り付けることを特徴とする偏心回転ギヤ板の構造。
- 前項3に記載の偏心回転ギヤ板の構造において、円中心点、偏心回転中心点及びペダルを取り付ける位置が円の直径の直線上にあること、及び、偏心回転中心点とペダルの位置が円中心点を中にして左右に配置されることを特徴とする偏心回転ギヤ板の構造。
- 前項2、前項3、及び前項4に記載の構造を有する偏心回転ギヤ板を装着してなる駆動メカニズムを、自転車の左右両サイドに設置してなることを特徴とする構造の請求項1に記載のスマートサイクル。
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