JP2017157470A - 電極触媒評価装置及び電極触媒評価方法 - Google Patents

電極触媒評価装置及び電極触媒評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】膜電極接合体(MEA)の電極に含まれる触媒のアイオノマ被覆率を正確に測定することが可能な電極触媒評価装置及び電極触媒評価方法を提供すること。
【解決手段】カソードに含まれる触媒の表面にCOを吸着させた後、カソードをプロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たし、この状態でサイクリックボルタモグラム(A)を測定する。次に、カソードに含まれる触媒の表面にCOを吸着させた後、カソードを非プロトン伝導性溶媒で満たし、この状態で、サイクリックボルタモグラム(B)を測定する。得られたサイクリックボルタモグラム(A)及びサイクリックボルタモグラム(B)から、触媒に対するアイオノマ被覆率を算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電極触媒評価装置及び電極触媒評価方法に関し、さらに詳しくは、膜電極接合体(MEA)の電極に含まれる触媒のアイオノマ被覆率を正確に測定することが可能な電極触媒評価装置、及びこれを用いた電極触媒評価方法に関する。
固体高分子型燃料電池の電極に用いるアイオノマは、Pt等からなる触媒へのプロトンパスとしての役割を担っている。しかし、カソードにおいて、アイオノマは、触媒表面への酸素供給の障害となる。また、アイオノマ内のスルホン酸基が触媒を被毒し、酸素還元活性を低下させるという問題がある。この問題の解決方法の1つとして、触媒に対するアイオノマ被覆率を下げ、酸素供給性を改善するとともに、スルホン酸基による被毒を抑制することが考えられる。
アイオノマ被覆率を下げるアイデアとして、細孔内へ触媒粒子は入るが、アイオノマは入らないことが期待できるメソ孔を有する触媒担体を用いる方法が提案されている。実際にメソ孔を有するカーボン担体を用いた場合、高い面積活性を示すことがわかっている。しかし、その原因が、ねらい通り触媒に対するアイオノマ被覆率が下がったことにあるかどうか確認されていない。
触媒層に対するアイオノマ被覆率の評価手法として、不活性なフッ素系溶媒で触媒層を満たした状態の電気二重層(アイオノマで被覆されたPtの有効表面積に対応)と、水で満たした状態のそれ(Ptの全表面積に対応)との比から、アイオノマ被覆率を評価する手法が報告されている(特許文献1、非特許文献1)。この手法は、カソードをフッ素系溶媒で満たした場合、アイオノマで被覆されていない領域、及び、アイオノマで被覆されていてもアイオノマが連続して繋がっていない領域には、プロトンが伝導できないため、その領域にあるPtは電気化学的に不活性になる、という原理に基づいている。しかし、この手法では、カーボンとPtとの合計の被覆率は求められるが、それがPtの被覆率に等しいとは限らない。そのため、よりPtに特化した被覆率の評価手法が必要である。
一方、Ptに対するアイオノマ被覆率の評価方法として、アイオノマ被覆領域のPtの二重層容量と、全領域のPtの二重層容量とを評価し、それらの比をPtに対するアイオノマ被覆率とする方法が報告されている(非特許文献2)。この方法では、COでPtを被覆した状態と被覆していない状態とのそれぞれについて、高湿と低湿とで二重層容量を測定し、アイオノマ被覆領域のPtの二重層容量と、全領域の二重層容量とを求める。COでPtを被覆していない状態と、被覆している状態との二重層容量の差から、Ptのみの二重層容量が求められる。また、高湿と低湿との二重層容量から、全領域とアイオノマ被覆領域との二重層容量を求められる。
しかし、この方法の問題点は、アイオノマ被覆領域の単位面積あたりの二重層容量と、非被覆領域のそれとを等しいとしている点である。アイオノマ被覆領域のイオン濃度は、測定時に水で覆われている非被覆領域のそれより高く、両者で単位面積あたりの二重層容量に違いがあると考えられる。そのため、従来の方法では、アイオノマ被覆率を高い精度で求めることはできない。
特開2011−171119号公報
K. Ikeda et al., ESC trans., 33(1), 1189(2010) H. Iden et al., J. Electroanal. Chem., 693, 34(2013)
本発明が解決しようとする課題は、膜電極接合体(MEA)の電極に含まれる触媒のアイオノマ被覆率を正確に測定することが可能な電極触媒評価装置、及びこれを用いた電極触媒評価方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る電極触媒評価装置は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記電極触媒評価装置は、
膜電極接合体を保持するMEA保持部と、
前記膜電極接合体のアノード流路にアノードガスを供給するアノードガス供給手段と、
前記膜電極接合体のカソード流路にカソードガスを供給するカソードガス供給手段と、
前記カソード流路に溶媒又はその蒸気を供給する溶媒供給手段と、
前記膜電極接合体のサイクリックボルタモグラムを測定するCV測定手段と
を備えている。
(2)前記アノードガス供給手段は、前記アノードガスとして、燃料ガス又は不活性ガス(A)を切り替えて供給するアノードガス切替手段を備えている。
(3)前記カソードガス供給手段は、前記カソードガスとして、COを含むガス又は不活性ガス(B)を切り替えて供給するカソードガス切替手段を備えている。
(4)前記溶媒供給手段は、前記溶媒又はその蒸気として、プロトン伝導性溶媒若しくはその蒸気、又は非プロトン伝導性溶媒を切り替えて供給する溶媒切替手段を備えている。
また、本発明に係る電極触媒評価方法は、本発明に係る電極触媒評価装置を用いて、
(a)前記カソード流路に前記COを含むガスを供給し、カソードに含まれる触媒の表面にCOを吸着させる第1CO吸着工程と、
(b)前記カソード流路に前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気を供給し、前記カソードを前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たす第1溶媒充填工程と、
(c)前記カソードが前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たされた状態で、前記アノード流路に前記燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(A)を測定する第1CV工程と、
(d)前記カソードを乾燥させる乾燥工程と、
(e)前記カソード流路に前記COを含むガスを供給し、前記カソードに含まれる前記触媒の表面にCOを吸着させる第2CO吸着工程と、
(f)前記カソードに前記非プロトン伝導性媒を供給し、前記カソードを前記非プロトン伝導性溶媒で満たす第2溶媒充填工程と、
(g)前記カソードが前記非プロトン伝導性溶媒で満たされた状態で、前記アノード流路に前記燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(B)を測定する第2CV工程と、
(h)前記サイクリックボルタモグラム(A)及び前記サイクリックボルタモグラム(B)から、前記触媒に対するアイオノマ被覆率を算出する算出工程と
を備えていることを要旨とする。
COは、Ptなどの触媒金属原子に1対1の割合で吸着し、1個あたり2電子でCO2に酸化される。そのため、カソードの触媒表面にCOを吸着させ、カソードをプロトン伝導性溶媒で満たした状態でサイクリックボルタモグラム(A)の測定(CO ストリッピングボルタンメトリー)を行うと、全領域における触媒金属原子の表面原子数を正確に測定することができる。
一方、カソードの触媒表面にCOを吸着させ、カソードを非プロトン伝導性溶媒で満たした状態でサイクリックボルタモグラム(B)の測定を行うと、アイオノマで被覆されている領域における触媒金属原子の表面原子数を正確に測定することができる。
触媒に対するアイオノマ被覆率は、全領域における触媒金属原子の表面原子数に対するアイオノマで被覆されている領域における触媒金属原子の表面原子数の比として求めることができる。
本発明の一実施の形態に係る電極触媒評価装置の模式図である。 COストリッピングボルタンメトリーを用いてPtの電気化学有効表面積(ECA)を求める方法を説明するための模式図である。 カソード流路を水で満たした場合のCOストリッピングボルタモグラム(COSV)及びCOストリッピング後のサイクリックボルタモグラム(CV)である。 カソード流路をフッ素系溶媒で満たした場合のCOストリッピングボルタモグラム(COSV)及びCOストリッピング後のサイクリックボルタモグラム(CV)である。
カソード流路を水又はフッ素系溶媒で満たした場合の電気化学有効表面積(ECA)である。 MEA(1)のプレピーク、メインピーク、及び1.0V保持中に由来する電気化学有効表面積(ECA)である。 MEA(2)のプレピーク、メインピーク、及び1.0V保持中に由来する電気化学有効表面積(ECA)である。
Ptに対するアイオノマ被覆率(全ECAを用いた場合)である。 Ptに対するアイオノマ被覆率(メインピークに由来するECAを用いた場合)である。 Ptに対するアイオノマ被覆率(メインピークと1.0V保持中との和に由来するECAを用いた場合)である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 電極触媒評価装置]
図1に、本発明の一実施の形態に係る電極触媒評価装置の模式図を示す。図1において、電極触媒評価装置10は、
膜電極接合体(MEA)(図示せず)を保持するMEA保持部20と、
MEAのアノード流路にアノードガスを供給するアノードガス供給手段40と、
MEAのカソード流路にカソードガスを供給するカソードガス供給手段60と、
カソード流路に溶媒又はその蒸気を供給する溶媒供給手段80と、
MEAのサイクリックボルタモグラムを測定するCV測定手段(図示せず)と
を備えている。
なお、図1(A)は、MEA保持部20のアノード側の模式図である。また、図1(B)は、MEA保持部20のカソード側の模式図である。
[1.1. MEA保持部]
MEAは、一般に、電解質膜の両面に電極(触媒層、拡散層)が接合されたものからなる。MEAの両面には、さらにガス流路(アノード流路、カソード流路)を備えた集電体(セパレータ)が配置される。触媒層は、触媒又は触媒を担持した担体と、アイオノマとの複合体からなる。触媒の表面の全部又は一部は、アイオノマで覆われている。
MEA保持部20は、このようなMEA(図示せず)を保持するためのものである。MEA保持部20の内部構造は、MEAを確実に保持でき、かつ、ガス及び溶媒の供給が可能な限りにおいて、特に限定されない。
図1(A)に示す例において、MEAのアノード流路(図示せず)の入口側は、MEA保持部20のアノード側エンドプレート20aに設けられたガス供給口22に接続されている。ガス供給口22は、さらにアノードガス供給手段40に接続されている。
MEAのアノード流路の出口側は、アノード側エンドプレート20aに設けられたガス排出口24に接続されている。ガス排出口24は、さらに排気ダクト26に接続されている。
同様に、図1(B)に示す例において、MEAのカソード流路(図示せず)の入口側は、MEA保持部20のカソード側エンドプレート20bに設けられたガス供給口28に接続されている。ガス供給口28は、さらに切替バルブ30を介して、カソードガス供給手段60及び溶媒供給手段80に接続されている。切替バルブ30は、カソードガス又は溶媒のいずれか一方をカソード流路に供給するためのものである。
MEAのカソード流路の出口側は、カソード側エンドプレート20bに設けられたガス排出口32に接続されている。ガス排出口32は、さらに切替バルブ34を介して、排気ダクト36及び廃液タンク38に接続されている。切替バルブ34は、カソード流路から排出されるガス又は溶媒を、それぞれ、排気ダクト36又は廃液タンク38に排出するためのものである。
[1.2. アノードガス供給手段]
アノードガス供給手段40は、MEAのアノード流路にアノードガスを供給するためのものである。アノードガス供給手段40は、アノードガスとして、燃料ガス又は不活性ガス(A)を切り替えて供給するアノードガス切替手段を備えている。アノードガス供給手段40の構造は、上述した機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。
燃料ガス及び不活性ガス(A)の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
燃料ガスとしては、例えば、H2ガス、H2とN2の混合ガス、H2とArの混合ガスなどがある。
不活性ガス(A)としては、例えば、N2ガス、Arガス、Heガスなどがある。
図1(A)に示す例において、第1ボンベ42には、燃料ガス(例えば、純H2ガス)が充填されている。第2ボンベ44には、不活性ガス(A)(例えば、純N2ガス)が充填されている。第1ボンベ42及び第2ボンベ44は、それぞれ、切替バルブ46に接続されている。切替バルブ46は、燃料ガス又は不活性ガス(A)のいずれか一方をガス供給口22に供給するためのもの(アノードガス切替手段)である。
なお、例えば、第1ボンベ42に純H2ガスを充填し、第2ボンベ44に純N2ガスを充填する場合において、燃料ガスとしてH2とN2の混合ガスを用いる時には、切替バルブ46を介して、純H2ガスと純N2ガスとを所定の比率でガス供給口22に供給する。
切替バルブ46とガス供給口22との間には、さらに切替バルブ48が設けられている。切替バルブ48の一方の出口はガス供給口22に接続され、他方の出口は加湿器50に接続されている。さらに、加湿器50の出口は、ガス供給口22に接続されている。切替バルブ48は、燃料ガス又は不活性ガス(A)を加湿する必要がある場合に、燃料ガス又は不活性ガス(A)を加湿器50に導入するためのものである。
[1.3. カソードガス供給手段]
カソードガス供給手段60は、MEAのカソード流路にカソードガスを供給するためのものである。カソードガス供給手段60は、カソードガスとして、COを含むガス又は不活性ガス(B)を切り替えて供給するカソードガス切替手段を備えている。カソードガス切替手段は、カソードガスとして、COを含むガス、不活性ガス(B)、及び酸化剤ガスのいずれかを切り替えて供給するものでも良い。カソードガス供給手段60の構造は、上述した機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。
COを含むガス、不活性ガス(B)及び酸化剤ガスの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
COを含むガスとしては、例えば、COガス、COとN2の混合ガス、COとArの混合ガス、COとHeの混合ガスなどがある。
不活性ガス(B)としては、例えば、N2ガス、Arガス、Heガスなどがある。
酸化剤ガスとしては、例えば、O2ガス、空気などがある。
図1(B)に示す例において、第3ボンベ62には、COを含むガス(例えば、純COガス)が充填されている。第4ボンベ64には、不活性ガス(B)(例えば、純N2ガス)が充填されている。第3ボンベ62及び第4ボンベ64は、それぞれ、切替バルブ66に接続されている。切替バルブ66は、COガス又は不活性ガス(B)のいずれか一方をガス供給口28に供給するためのもの(カソードガス切替手段)である。
なお、例えば、第3ボンベ62に純COガスを充填し、第4ボンベ64に純N2ガスを充填する場合において、COを含むガスとしてCOとN2の混合ガスを用いる時には、切替バルブ66を介して、純COガスと純N2ガスとを所定の比率でガス供給口28に供給する。
切替バルブ66と切替バルブ30との間には、さらに切替バルブ68が設けられている。切替バルブ68の一方の出口は切替バルブ30に接続され、他方の出口は加湿器70に接続されている。さらに、加湿器70の出口は、切替バルブ30に接続されている。切替バルブ68は、COガス又は不活性ガス(B)を加湿する必要がある場合に、COガス又は不活性ガス(B)を加湿器70に導入するためのものである。
なお、図示はしないが、カソード流路に酸化剤ガスを流す必要がある場合(すなわち、後述する慣らし運転を行う必要がある場合)には、切替バルブ66には、さらに酸化剤ガス供給源が接続される。
[1.4. 溶媒供給手段]
溶媒供給手段80は、カソード流路に溶媒又はその蒸気を供給するためのものである。溶媒供給手段80は、溶媒又はその蒸気として、プロトン伝導性溶媒若しくはその蒸気、又は非プロトン伝導性溶媒を切り替えて供給する溶媒切替手段を備えている。溶媒供給手段80の構造は、上述した機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
溶媒供給手段80は、液体状態の溶媒をカソード流路に供給するものでも良く、あるいは、溶媒の蒸気(溶媒の蒸気とキャリアガスとの混合蒸気を含む。以下、同じ。)をカソード流路に供給するものでも良い。
液体状態の溶媒をカソード流路に供給する場合、溶存酸素を取り除くために、予め溶媒を不活性ガス(B)で飽和させるのが好ましい。
拡散層及び触媒層は、細孔径が小さく、かつ、撥水性も高い。そのため、特に、プロトン伝導性溶媒の場合、液体状態の溶媒を触媒表面に供給するのが難しい場合がある。このような場合には、プロトン伝導性溶媒の蒸気をカソード流路に供給するのが好ましい。カソード流路にプロトン伝導性溶媒の蒸気が供給されると、カソード流路から拡散層を通って、触媒表面にプロトン伝導性溶媒の蒸気を供給することが可能となる。
プロトン伝導性溶媒及び非プロトン伝導性溶媒の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
プロトン伝導性溶媒としては、例えば、水、過塩素酸、硫酸などがある。
非プロトン伝導性溶媒としては、例えば、フッ素系溶媒、ベンゼン、トルエンなどがある。
これらの中でも、プロトン伝導性溶媒は、水が好ましい。また、非プロトン伝導性溶媒は、フッ素系溶媒が好ましい。水は安価であり、フッ素系溶媒はPtに対して不溶性であるので、溶媒として特に好適である。
図1(B)に示す例において、第1タンク82には、非プロトン伝導性溶媒(例えば、フッ素系溶媒)が充填されている。第2タンク84には、プロトン伝導性溶媒(例えば、水)が充填されている。第1タンク82及びタンク84は、それぞれ、切替バルブ86に接続されている。切替バルブ86は、非プロトン伝導性溶媒又はプロトン伝導性溶媒のいずれか一方をガス供給口28に供給するためのもの(溶媒切替手段)である。切替バルブ86の出口側は、さらに切替バルブ30に接続されている。
第5ボンベ88には、不活性ガス(C)(例えば、N2ガス)が充填されている。第5ボンベ88は、切替バルブ90を介して、第1タンク82及び第2タンク84に接続されている。第5ボンベ88は、第1タンク82内の非プロトン伝導性溶媒、又は第2タンク84内のプロトン伝導性溶媒に不活性ガス(C)を供給(バブリング)することにより、溶媒中の溶存酸素を取り除くために用いられる。
不活性ガス(C)の種類は、CV測定に支障がない限りにおいて、特に限定されない。
不活性ガス(C)としては、例えば、N2ガス、Arガス、Heガスなどがある。
[1.5. CV供給手段]
CV測定手段(図示せず)は、MEAのサイクリックボルタモグラム(CV)を測定するためのものである。CVは、カソード流路及びアノード流路に、それぞれ、所定の組成のガスを流しながら、電極電圧を直線的に掃引し、応答電流を測定する手法である。CV測定手段は、このようなCVを測定可能なものであれば良く、特に限定されない。通常、CV測定手段は、ポテンショスタット、関数発生器などにより構成される。
[2. 電極触媒評価方法]
本発明に係る電極触媒評価方法は、本発明に係る電極触媒評価装置を用いて、
(a)前記カソード流路に前記COを含むガスを供給し、カソードに含まれる触媒の表面にCOを吸着させる第1CO吸着工程と、
(b)前記カソード流路に前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気を供給し、前記カソードを前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たす第1溶媒充填工程と、
(c)前記カソードが前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たされた状態で、前記アノード流路に前記燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(A)を測定する第1CV工程と、
(d)前記カソードを乾燥させる乾燥工程と、
(e)前記カソード流路に前記COを含むガスを供給し、前記カソードに含まれる前記触媒の表面にCOを吸着させる第2CO吸着工程と、
(f)前記カソード流路に前記非プロトン伝導性媒を供給し、前記カソードを前記非プロトン伝導性溶媒で満たす第2溶媒充填工程と、
(g)前記カソードが前記非プロトン伝導性溶媒で満たされた状態で、前記アノード流路に前記燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(B)を測定する第2CV工程と、
(h)前記サイクリックボルタモグラム(A)及び前記サイクリックボルタモグラム(B)から、前記触媒に対するアイオノマ被覆率を算出する算出工程と
を備えている。
プロトン伝導性溶媒共存下におけるCV測定(工程(a)〜(c))と、非プロトン伝導性溶媒共存下におけるCV測定(工程(e)〜((g))の順序は、特に問わない。
すなわち、先に非プロトン伝導性溶媒共存下におけるCV測定(工程(e)〜(g))を行い、次いで工程(d)(乾燥工程)を行い、さらにプロトン伝導性溶媒共存下におけるCV測定(工程(a)〜(c))を行っても良い。
[2.1. プロトン伝導性溶媒共存下におけるCV測定]
[2.1.1. 第1CO吸着工程]
まず、カソード流路にCOを含むガスを供給し、カソードに含まれる触媒の表面にCOを吸着させる(第1CO吸着工程)。
[A. 評価対象:触媒]
本発明に係る方法は、COを吸着する元素(例えば、貴金属元素)を含むあらゆる触媒に対して適用することができる。本発明が適用可能な触媒としては、例えば、Pt触媒、Pd触媒、Ru触媒、Rh触媒、Ir触媒などがある。
[B. COを含むガス]
COを含むガスは、COのみからなるガスでも良く、あるいは、COガスと不活性ガス(B)との混合ガスでも良い。混合ガス中のCOガス濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な濃度を選択することができる。
図1に示す電極触媒評価装置10の場合、CO濃度を調整する方法としては、
(a)予め第3ボンベ62に所定のCO濃度を持つガスを充填する方法、
(b)第3ボンベ62から供給される純COガスの流量と、第4ボンベ64から供給される不活性ガス(B)の流量を制御することにより、ガス中のCO濃度を制御する方法
などがある。
[C. 吸着条件]
アイオノマ被覆率を正確に測定するためには、触媒の表面にCOを1層だけ吸着させる必要がある。具体的には、COを含むガスをカソード流路に供給し、触媒表面にCOを十分に吸着させる。次いで、不活性ガス(B)でカソード流路をパージし、余分なCOを除去する。
COを含むガスの供給時間は、触媒表面にCOが十分に吸着する時間であればよい。CO吸着を確実に行うためには、供給時間は、20分以上が好ましい。一方、供給時間を必要以上に長くしても実益がない。従って、供給時間は、30分以下が好ましい。
また、不活性ガス(B)によるパージ時間は、余分なCOが十分に除去される時間であれば良い。CO除去を確実に行うためには、パージ時間は、1分以上が好ましい。一方、パージ時間を必要以上に長くしても実益がない。従って、パージ時間は、5分以下が好ましい。
[2.1.2. 第1溶媒充填工程]
次に、カソード流路にプロトン伝導性溶媒又はその蒸気を供給し、カソードをプロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たす(第1溶媒充填工程)。
上述したように、プロトン伝導性溶媒は、液体状態でカソード流路に供給しても良く、あるいは、溶媒の蒸気又は混合蒸気の状態でカソード流路に供給しても良い。
ここで、「カソードがプロトン伝導性溶媒の蒸気で満たされている」とは、カソード流路内(並びに、拡散層の細孔内及び触媒層の細孔内)におけるプロトン伝導性溶媒の蒸気圧が飽和蒸気圧の80%以上であること(高加湿条件)をいう。
また、「カソードがプロトン伝導性溶媒で満たされている」とは、触媒表面がプロトン伝導性溶媒で完全に濡れていること又は触媒表面が高加湿条件にあることをいい、必ずしもカソード流路、拡散層内の細孔、及び触媒層内の細孔がプロトン伝導性溶媒で閉塞していることを意味しない。
[2.1.3. 第1CV工程]
次に、カソードがプロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たされた状態で、アノード流路に燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(A)を測定する(第1CV工程)。
CVを測定する際の燃料ガスの組成は、CVの測定精度に影響を与える。一般に、燃料ガス中の水素濃度が低すぎると、特に高加湿条件において、参照極として電位を制御できない場合がある。従って、燃料ガス中の水素濃度は、6%以上が好ましい。水素濃度は、さらに好ましくは、8%以上である。
一方、水素濃度が高すぎると、クロスオーバー水素の影響で測定の精度が低くなる。従って、燃料ガス中の水素濃度は、14%以下が好ましい。水素濃度は、さらに好ましくは、12%以下である。
触媒表面にCOを吸着させた状態で1サイクル目の電圧掃引を行うと、触媒表面のCOが酸化脱離する際の電流値が得られる(COストリッピングボルタンメトリー)。次いで、2サイクル目の電圧掃引を行うと、触媒表面にCOが吸着していない状態での電流値が得られる(サイクリックボルタンメトリー)。両者の差から、触媒表面に吸着したCOの酸化脱離に要する電気量を求めることができる。
後述するように、カソードの触媒表面においてCOの酸化脱離反応が起こると、反応生成物としてプロトンが発生する。この反応を継続させるためには、生成したプロトンを触媒表面から除去する必要がある。カソード流路がプロトン伝導性溶媒で満たされている場合、生成したプロトンは、アイオノマだけでなく、プロトン伝導性溶媒を介して除去される。そのため、この時の電気量は、カソード側にある触媒の全表面積にほぼ対応した値となる。
[2.2. 乾燥]
プロトン伝導性溶媒共存下におけるCV測定が終了した後、カソードを乾燥させる(乾燥工程)。
乾燥方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。例えば、図1に示す電極触媒評価装置10の場合、第2ボンベ44を用いてアノード流路に不活性ガス(A)を供給し、かつ、第4ボンベ64を用いてカソード流路に不活性ガス(B)を供給することにより、カソードを乾燥させることができる。この時、MEAを適切な温度まで加熱すると、乾燥を促進させることができる。
[2.3. 非プロトン伝導性溶媒共存下におけるCV測定]
[2.3.1. 第2CO吸着工程]
次に、カソード流路にCOを含むガスを供給し、カソードに含まれる触媒の表面にCOを吸着させる(第2CO吸着工程)。第2CO吸着工程は、第1CO吸着工程と同様であるので説明を省略する。
[2.3.2. 第2溶媒充填工程]
次に、カソード流路に非プロトン伝導性媒を供給し、カソードを非プロトン伝導性溶媒で満たす(第2溶媒充填工程)。
ここで、「カソードが非プロトン伝導性溶媒で満たされている」とは、触媒表面が非プロトン伝導性溶媒で完全に濡れていることをいい、カソード流路、拡散層内の細孔、及び触媒層内の細孔が非プロトン伝導性溶媒で閉塞していることを意味しない。
第2溶媒充填工程に関するその他の点については、第1溶媒充填工程と同様であるので説明を省略する。
[2.3.3. 第2CV工程]
次に、カソードが非プロトン伝導性溶媒で満たされた状態で、アノード流路に燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(B)を測定する(第2CV工程)。
カソードが非プロトン伝導性溶媒で満たされている場合、触媒表面において生成したプロトンは、アイオノマのみを介して除去される。すなわち、アイオノマで被覆されていない触媒表面においては、COの酸化脱離反応はほとんど進行しない。そのため、この時の電気量は、アイオノマで被覆された触媒の表面積にほぼ対応した値となる。第2CV工程のその他の点については、第1CV工程と同様であるので説明を省略する。
[2.4. アイオノマ被覆率の算出]
次に、サイクリックボルタモグラム(A)及びサイクリックボルタモグラム(B)から、触媒に対するアイオノマ被覆率を算出する(算出工程)。
例えば、Ptの電気化学有効表面積(Electrochemical Active Surface Area: ECA)は、次の式(1)から求めることができる。
ECA[cm2・cm-2]=QCO oxi./(QCO/Pt×Selectrode) ・・・(1)
但し、
CO oxi.は、COの酸化脱離の電気量[C]、
CO/Ptは、Pt表面積あたりのCO吸着容量(420×10-6[Ccm-2]、多結晶Pt1原子あたりにCO1分子が吸着すると仮定)、
electrodeは、電極面積[cm2]。
また、アイオノマで被覆されている触媒の割合(R)は、次の式(2)から求めることができる。
R[%]=ECA(n)×100/ECA(p) ・・・(2)
但し、
ECA(n)は、カソード流路を非プロトン伝導性溶媒で満たした時のECA、
ECA(p)は、カソード流路をプロトン伝導性溶媒で満たした時のECA。
[2.5. 慣らし運転]
製造直後のMEAは、電解質膜の含水率不足、触媒表面への不純物吸着などにより、性能が不安定になっていることがある。このような場合には、前記(a)〜(h)の各工程を行う前に、慣らし運転を行うのが好ましい(慣らし運転工程)。慣らし運転は、具合的には、MEAに対して非発電電圧掃引及び発電電圧掃引することにより行う。慣らし運転の条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
ここで、「非発電電圧掃引」とは、カソード流路に不活性ガス(B)を供給しながら、CV測定を行うことをいう。
また、「発電電圧掃引」とは、カソード流路に酸化剤ガスを供給し、かつ、アノード流路に燃料ガスを供給しながら、CV測定を行うことをいう。
[3. 作用]
図2に、COストリッピングボルタンメトリーを用いてPtの電気化学有効表面積(ECA)を求める方法の模式図を示す。COは、Ptなどの触媒金属原子に1対1の割合で吸着し、1個あたり2電子でCO2に酸化される(図2の左図参照)。
そのため、カソードの触媒表面にCOを吸着させ、カソードをプロトン伝導性溶媒で満たした状態で1サイクル目のCV測定を行うと、COの酸化脱離反応が生じ、図2の右図の実線(COストリップ)のような曲線が得られる。次いで、2サイクル目のCV測定を行うと、図2の右図の破線(CV)のような曲線が得られる。
実線と破線の間のハッチング領域は、COの酸化脱離の電気量に相当し、この電気量はECAに比例する(式(1)参照)。また、このようにして得られたECAは、全領域における触媒金属原子の表面原子数に対応している。
一方、カソードの触媒表面にCOを吸着させ、カソードを非プロトン伝導性溶媒で満たした状態でサイクリックボルタモグラムの測定を行うと、アイオノマで被覆されている領域における触媒金属原子の表面原子数を正確に測定することができる。
触媒に対するアイオノマ被覆率は、全領域における触媒金属原子の表面原子数に対するアイオノマで被覆されている領域における触媒金属原子の表面原子数の比として求めることができる(式(2)参照)。
アイオノマ被覆率を測定する方法として、水素の吸着脱離の電気量を用いる方法が提案されている(特許文献1)。しかし、水素の吸着脱離の電気量を用いた場合、カソードをプロトン伝導性溶媒で満たした時の電気量が過小評価される可能性がある。特許文献1の方法では、カソードの細孔内に水を満たす必要がある。しかし、表面エネルギーの高い水を細孔内に満たすためには、特許文献1に記載されているように水圧で押し込む方法やアノード側とカソード側とで温度差を付ける方法など、煩雑な操作が必要になる。加えて、完全に水が満たされているか確認ができないため、不完全な場合、水素脱離の電気量が過小に評価される。その結果、アイオノマ被覆率が過大評価される。
これに対し、COの酸化脱離の電気量を用いると、カソードをプロトン伝導性溶媒で満たした時の電気量が過小評価されることはない。そのため、アイオノマ被覆率をより正確に求めることができる。
[1. Ptに対するアイオノマ被覆率の評価]
[1.1. 試料及び試薬]
アイオノマ被覆率に違いがある試料として、カソード触媒の担体が中実カーボンで構成されるMEA(1)と、多孔質カーボンとで構成されるMEA(2)の2種類を用いた。
表1に、MEAの詳細を示す。多孔質カーボンは細孔内にアイオノマが入りにくいため、細孔内に担持されたPtは、アイオノマに被覆されていない割合が大きく、平均として、中実カーボンよりアイオノマ被覆率が低くなると考えた。それぞれ、同じ仕様のMEAの試料について、2個ずつ(n1、n2)評価した。
Figure 2017157470
[1.2. 評価装置]
図1に示す電極触媒評価装置を用いて評価を行った。
[1.3. 評価手順]
以下の手順でPtに対するアイオノマ被覆率を評価した。
(1)慣らし運転
(2)カソード流路を水で満たした状態でのCOストリッピングボルタンメトリー(以下、「COSV」ともいう)
(3)乾燥
(4)カソード流路をフッ素系溶媒で満たした状態でのCOSV
以下、各操作の詳細を記す。
[1.3.1. 慣らし運転]
非発電電圧掃引と発電電圧掃引とでMEAの慣らし運転を行った。条件を以下に示す。
<セル温度・加湿条件>
セル温度:60℃ バブラ温度:58℃(両極、相対湿度:90%)
<非発電電圧掃引: サイクリックボルタンメトリー>
サイクリックボルタモグラム(CV)を25サイクル測定した。
カソードガス:N2 アノードガス:10%H2、N2バランス
背圧:大気圧(両極)
掃引範囲:115〜1200mV 掃引速度:50mV/s
<発電電圧掃引: サイクリックボルタンメトリー>
サイクリックボルタモグラム(CV)を20サイクル測定した。
カソードガス:Air アノードガス:H2
背圧:大気圧(両極)
掃引範囲:0〜1000mV 掃引速度:10mV/s
[1.3.2. カソード流路を水で満たした状態でのCOSV]
慣らし運転後、セル温度を30℃に設定し、ファンを用いてセルを冷却した。また、加湿器と配管のヒータはOFFにした。この間、アノード流路に10%H2の湿潤ガス(N2バランス)、カソード流路にN2の湿潤ガス(露点30℃以上)を流した。その後、COSVを行った。詳細は、以下の通りである。
セル温度が30℃になってから、カソードガスをN2の湿潤ガスから5%COの湿潤ガス(N2バランス)に変えて20分間流し、Pt表面にCOを吸着させた。5%COの湿潤ガスをN2の湿潤ガスに変えて2分間流し、未吸着のCOを除去した。
次に、30分以上N2バブリングした水をカソード流路に注入した。すなわち、切替バルブ30及び34を切り替え、溶媒供給手段80をガス供給口28に、廃液タンク38をガス排出口32にそれぞれ接続した。次いで、第2タンク84からカソード流路に水を注入した。この操作で、セルのカソード流路の入り口から出口の間が水で満たされる。拡散層が撥水性のため、触媒層内には水は浸透しないが、過加湿状態となっているため、すべてのPtにプロトンが届く状態となっていると思われる。
注入後、開回路電圧(OCV)が100〜150mVに上昇したが(注入前は約50mV)、しばらくすると、10mV以下に低下した。OCVが安定した後、以下の条件でCOSVを測定した。
セル温度:30℃ アノード加湿器温度:30℃以上
カソード:N2で飽和した水 アノード:10%H2、N2バランス
電圧制御:OCV→0→1000mV(2分間保持)→0→1000mV(2分間保持)→OCV
掃引速度:20mV/s
COSVを測定後、カソード流路に満たした水を廃液タンク38へ排出した。すなわち、アノードガスを10%H2の湿潤ガスからN2の湿潤ガスに変えた後、切替バルブ66、68、30を用いて、カソード流路にN2の湿潤ガスを供給した。N2ガスによって、カソード流路に満たされた水が廃液タンク38に排出された。
[1.3.3. 乾燥処理]
カソード側触媒層内の水を除去するため、セル温度90℃で両極にN2の乾燥ガスを流し、一晩放置した。
[1.3.4. カソード流路をフッ素系溶媒で満たした状態でのCOSV]
乾燥処理後、セルの温度を30℃に設定し、ファンを用いてセルを冷却した。その後、COSVを行った。詳細は、以下の通りである。
アノード流路に10%H2の乾燥ガスを流し、OCVが100mV以下になるまで待った。その後、カソードガスをN2の乾燥ガスから5%COの乾燥ガス(N2バランス)に変えて20分間流し、Pt表面にCOを吸着させた。5%COの乾燥ガスをN2の乾燥ガスに変えて2分間流し、未吸着のCOを除去した。
次に30分以上N2バブリングしたフッ素系溶媒をカソード流路に注入し、約2分間放置した。この操作で、セルのカソード流路の入り口から出口の間がフッ素系溶媒で満たされる。フッ素系溶媒は疎水性のため、撥水性の拡散層と親和性が高く、カソード流路を通って触媒層内に浸透し、触媒層内のすべての空孔がフッ素系溶媒で満たされた状態になると考えられる。
その後、アノードガスを10%H2の湿潤ガスに変え、OCVとセル抵抗とが安定するまで待った。両者が安定した後、以下の条件でCOSVを測定した。
セル温度:30℃ アノード加湿器温度:30℃
カソード:N2で飽和したフッ素系溶媒 アノード:10%H2の湿潤ガス
電圧制御:OCV→−50mV→1000mV(2分間保持)→−50mV→1000mV(2分間保持)→OCV
掃引速度:20mV/s
COSV測定後、アノードガスをN2の乾燥ガスに変えた。その後、カソード流路に満たしたフッ素系溶媒を排出した。
[2. 結果及び考察]
[2.1. カソード流路を水又はフッ素系溶媒で満たした場合のCOSV]
図3に、カソード流路を水で満たした場合のCOSV及びCOストリッピング後のCVを示す。図4に、カソード流路をフッ素系溶媒で満たした場合のCOSV及びCOストリッピング後のCVを示す。これらの図から、カソード流路を水で満たした場合とフッ素系溶媒で満たした場合とでCOSVに以下の相違が見られる。
(1)カソード流路を水で満たした場合、0.4〜0.6V付近の小さいピーク(以下、プレピークと記す)と0.7〜0.8V付近の大きいピーク(以下、メインピークと記す)との2本のCO酸化電流のピークが見られる。他方、フッ素系溶媒の場合、0.8V付近に1本のピークしか見られない。
(2)カソード流路を水で満たした場合、0.9V以下でCO酸化の電流がほとんど流れなくなる.他方、フッ素系溶媒の場合、上限電位の1.0VでもCO酸化の電流が流れている(1.0Vで2分間保持する間にCO酸化の電流が流れなくなった)。
ここで、水で満たした場合とフッ素系溶媒で満たした場合とで上記の相違が見られる理由について考える。Pt上でCO酸化反応が生じるためには、以下に示すようにPtに水が供給されることと、反応で生じるプロトンが伝導することが必要である。
Pt−CO + H2O →Pt + CO2 + 2H+ + 2e-
カソード流路をフッ素系溶媒で満たした場合、両者が阻害される可能性がある。以下、それぞれについて考える。
水の供給に関して、フッ素系溶媒で満たした場合、反応に利用できる水はアイオノマ中の水だけとなり、この量が少ない場合、水の供給が反応を律速する可能性がある。これを確認するため、アイオノマ中の水分子の総数を求め、Pt1原子あたり水分子が何個あるかを見積もる。Pt1原子当たりの水分の個数は、以下のようにして算出した。
電極中のアイオノマ量とEW量とから、アイオノマ中の酸基の総数を求め、それに100%RHにおける酸基あたりの水和数として14を乗じた値をアイオノマ中の水分子の総数とした。これをアイオノマ被覆領域のPtの表面原子数で除すことで、Pt1原子あたりの水分子の個数を求めた。アイオノマ被覆領域のPtの表面原子数は、フッ素系溶媒で満たした場合のCO酸化の電気量をファラデー定数の2倍(CO酸化反応は2電子反応のため)で除すことで求めた。
表2にその結果を示す。この結果から、水分子はPt1原子あたり13〜21個で、1個以上あることから、水の供給が反応を律速することはないと考える。
Figure 2017157470
次にプロトン伝導について考える。フッ素系溶媒で満たした場合でも、カソードのアイオノマの含水率は100%RHのアノードのそれと同じと考えられ、高い含水率になっていると推測される。そのため、アイオノマ被覆領域のプロトン伝導が反応を律速するようなことはないと考えられる。他方、アイオノマ非被覆領域の大半のPtにはプロトンが伝導しないと考えられるが、アイオノマの近くにいる一部のPtへは、アイオノマからしみでた水と担体表面のカルボン酸などとで、プロトンが伝導する可能性がある。フッ素系溶媒で満たした場合、このようなPtへのプロトン伝導性が低下する可能性がある。フッ素系溶媒で満たした場合に見られる、1.0V保持中の酸化電流は、このようなPt上でのCO酸化による可能性が考えられる。
[2.2. カソード流路を水又はフッ素系溶媒で満たした場合のECA]
図5に、カソード流路を水で満たした場合と、フッ素系溶媒で満たした場合の電気化学有効表面積(ECA)を示す。図6及び図7に、それぞれ、MEA(1)及びMEA(2)のプレピーク、メインピーク、及び1.0V保持中に由来する電気化学有効表面積(ECA)を示す。
なお、図5のECAは、プレピーク、メインピーク、及び1V保持中のすべてを合計した値に基づく。一方、図6、7のECAは、これらを分離して計算した値に基づく。また、図6、7には、参考として、電池作動時と同様に両極に湿潤ガスを流して測定したECA(温湿度:60℃、90%RH)を示す。図5〜図7より、以下のことがわかる。
(1)MEA(1)とMEA(2)の両方で、カソード流路をフッ素系溶媒で満たした場合の方が、水で満たした場合よりECAが小さいことがわかる。いずれのカソードも、アイオノマで被覆されていないPtが存在することを示唆していると考えられる。
(2)水で満たした場合のメインピークに由来するECAと、電池作動時と同様に両極に湿潤ガスを流して測定したECAとは同程度である。このことから、プレピークに由来するECAは、水で満たした場合のみ現れるもの(詳細不明)で、実際の運転時には使われていない表面積である可能性が高い。
[2.3. Ptに対するアイオノマ被覆率]
前節で示した考えより、Ptに対するアイオノマ被覆率を式(2)で求める。ここで、ECAは、全ECA、メインピークに由来するECA、及び、メインピークと1.0V保持中との和のECAの3通りを用いた。
図8に、Ptに対するアイオノマ被覆率(全ECAを用いた場合)を示す。図9に、Ptに対するアイオノマ被覆率(メインピークに由来するECAを用いた場合)を示す。図10に、Ptに対するアイオノマ被覆率(メインピークと1.0V保持中との和に由来するECAを用いた場合)を示す。図8〜10より、以下のことがわかる。
(1)多孔質担体のMEA(2)のPtに対するアイオノマ被覆率の方が中実担体のMEA(1)の値より低い。
(2)メインピークと1.0V保持中との和のECAを用いた場合、他の場合より、Ptに対する被覆率が高い。[2.1.]項で考察したように、1.0V保持中に由来するECAがアイオノマ非被覆領域のPtに由来すると考えると、被覆率を過大評価していることになる。
(3)細孔内にアイオノマが入りにくいと考えられる多孔質担体のPtに対するアイオノマ被覆率の方が中実担体のそれより低いことから、開発した手法で得られた結果は定性的に妥当である。
(4)正確なアイオノマ被覆率を求めるためには、メインピークに由来するECA(図9)を用いるのが好ましい。
[3. まとめ]
Ptに対するアイオノマ被覆率の評価手法を開発した。開発した手法で、中実担体に担持されたカソード触媒と多孔質担体に担持されたカソード触媒のアイオノマ被覆率を評価した。その結果、細孔内にアイオノマが入りにくいと考えられる多孔質担体のPtに対するアイオノマ被覆率の方が中実担体のそれより低く、定性的に妥当な結果が得られた。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る電極触媒評価装置は、燃料電池用電極触媒(特に、カソード側の電極触媒)の評価に用いることができる。
10 電極触媒評価装置
20 MEA保持部
40 アノードガス供給手段
60 カソードガス供給手段
80 溶媒供給手段

Claims (7)

  1. 以下の構成を備えた電極触媒評価装置。
    (1)前記電極触媒評価装置は、
    膜電極接合体を保持するMEA保持部と、
    前記膜電極接合体のアノード流路にアノードガスを供給するアノードガス供給手段と、
    前記膜電極接合体のカソード流路にカソードガスを供給するカソードガス供給手段と、
    前記カソード流路に溶媒又はその蒸気を供給する溶媒供給手段と、
    前記膜電極接合体のサイクリックボルタモグラムを測定するCV測定手段と
    を備えている。
    (2)前記アノードガス供給手段は、前記アノードガスとして、燃料ガス又は不活性ガス(A)を切り替えて供給するアノードガス切替手段を備えている。
    (3)前記カソードガス供給手段は、前記カソードガスとして、COを含むガス又は不活性ガス(B)を切り替えて供給するカソードガス切替手段を備えている。
    (4)前記溶媒供給手段は、前記溶媒又はその蒸気として、プロトン伝導性溶媒若しくはその蒸気、又は非プロトン伝導性溶媒を切り替えて供給する溶媒切替手段を備えている。
  2. 前記カソードガス切替手段は、前記カソードガスとして、前記COを含むガス、前記不活性ガス(B)、又は酸化剤ガスのいずれかを切り替えて供給するものからなる請求項1に記載の電極触媒評価装置。
  3. 前記溶媒供給手段は、前記プロトン伝導性溶媒の蒸気を前記カソード流路に供給するものからなる請求項1又は2に記載の電極触媒評価装置。
  4. 前記プロトン伝導性溶媒は、水であり、
    前記非プロトン伝導性溶媒は、フッ素系溶媒である
    請求項1から3までのいずれか1項に記載の電極触媒評価装置。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の電極触媒評価装置を用いて、
    (a)前記カソード流路に前記COを含むガスを供給し、カソードに含まれる触媒の表面にCOを吸着させる第1CO吸着工程と、
    (b)前記カソード流路に前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気を供給し、前記カソードを前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たす第1溶媒充填工程と、
    (c)前記カソードが前記プロトン伝導性溶媒又はその蒸気で満たされた状態で、前記アノード流路に前記燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(A)を測定する第1CV工程と、
    (d)前記カソードを乾燥させる乾燥工程と、
    (e)前記カソード流路に前記COを含むガスを供給し、前記カソードに含まれる前記触媒の表面にCOを吸着させる第2CO吸着工程と、
    (f)前記カソード流路に前記非プロトン伝導性媒を供給し、前記カソードを前記非プロトン伝導性溶媒で満たす第2溶媒充填工程と、
    (g)前記カソードが前記非プロトン伝導性溶媒で満たされた状態で、前記アノード流路に前記燃料ガスを供給し、サイクリックボルタモグラム(B)を測定する第2CV工程と、
    (h)前記サイクリックボルタモグラム(A)及び前記サイクリックボルタモグラム(B)から、前記触媒に対するアイオノマ被覆率を算出する算出工程と
    を備えた電極触媒評価方法。
  6. 先に(e)前記第2CO吸着工程、(f)前記第2溶媒充填工程、及び(g)前記第2CV工程を行い、
    次いで、(d)前記乾燥工程を行い、
    さらに、(a)前記第1CO吸着工程、(b)前記第1溶媒充填工程、及び(c)前記第1CV工程を行う
    請求項5に記載の電極触媒評価方法。
  7. 前記(a)〜(h)の各工程を行う前に、前記膜電極接合体の慣らし運転を行う慣らし運転工程をさらに備えた請求項5又は6に記載の電極触媒評価方法。
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