最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る電波センサは、対象エリアにおける物体の位置を定期的または不定期に測定可能な測定部と、過去に推定した前記物体の位置に基づいて今回の前記物体の位置を推定する推定部と、前記測定部によって測定された前記物体の位置と前記推定部によって推定された前記物体の位置との位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数以上である場合、前記物体が検知対象物であると判定する検知部とを備える。
このような構成により、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、対象エリアにおける対象物をより正しく検知することができる。また、このように、対象エリアにおける物体の位置を繰り返し測定し、たとえば推定位置の近傍に測定位置が存在する頻度が高い場合、物体が検知対象物であると判定する構成により、推定位置の近傍に測定位置が存在しないことがあっても、物体が検知対象物でないとすぐに判定してしまうことを防ぐことができる。これにより、電波センサが受信する検知対象物からの電波の強度が弱かったり、また、電波センサと検知対象物との間において自動車が通過したりするために、検知対象物の位置を測定することが困難なときがあっても、検知対象物を安定して検知することができる。
(2)好ましくは、前記検知部は、前記位置関係が前記第1の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数より小さい場合、または前記物体が検知対象物であると判定した後、前記位置関係が第2の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数より小さい場合、前記物体が検知対象物でないと判定する。
このように、物体が検知対象物であると判定した後、たとえば推定位置の近傍に測定位置が存在しないことがあっても、物体が検知対象物でないとすぐに判定せずに、推定位置の近傍に測定位置が存在する頻度が低い場合、物体が検知対象物でないと判定する構成により、物体が検知対象物であるにも関わらず当該物体が検知対象物でないと誤って判定する可能性を低減することができる。また、たとえば、推定位置の近傍に測定位置が存在することがあっても、物体が検知対象物であるとすぐに判定せずに、推定位置の近傍に測定位置が存在する頻度が低い場合、物体が検知対象物でないと判定する構成により、物体が検知対象物でないにも関わらず当該物体が検知対象物であると誤って判定する可能性を低減することができる。
(3)好ましくは、前記推定部は、前記物体の位置、速さおよび移動方向を変数として用いる時系列フィルタを用いて前記物体の位置を推定し、前記変数の初期値は、前記測定部によって測定された前記物体の位置に応じた値である。
このように、物体の位置に応じた初期値を変数として用いる時系列フィルタを用いる構成により、物体の位置をより正しく推定することができる。
(4)好ましくは、前記電波センサは、さらに、FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を前記対象エリアへ送信可能な送信部と、電波を受信する受信部とを備え、前記測定部は、前記受信部によって受信された電波に基づいて、前記FM−CW方式を用いて前記物体の位置を測定可能であり、前記検知部は、前記測定部によって前記FM−CW方式を用いて新たな前記物体が測定されてから前記新たな物体が検知対象物であると判定するまでの間において、前記測定部による前記2周波CW方式を用いた前記物体に関する測定結果に基づいて、前記物体が検知対象物であるか否かを判定する。
このような構成により、FM−CW方式を用いて新たな物体が測定されてから当該物体が検知対象物であると判定するまでの未判定期間を、2周波CW方式を用いた判定で補うことができるので、判定漏れのない検知を実現することができる。
(5)本発明の実施の形態に係る電波センサは、FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアへ送信可能な送信部と、電波を受信する受信部と、前記受信部によって受信された電波に基づいて、前記対象エリアにおける物体の位置を定期的または不定期に測定可能な測定部と、前記対象エリアにおいて、停止した物体である停止物が前記測定部によって前記FM−CW方式を用いて測定された場合、前記測定部による前記2周波CW方式を用いた、前記停止物と異なる前記対象エリアにおける物体である移動物に関する測定結果に基づいて、前記移動物が検知対象物であるか否かを判定する検知部とを備える。
このような構成により、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、対象エリアにおける対象物をより正しく検知することができる。また、このように、停止車両および電柱といった停止物を検知可能である一方で、停止物が対象エリアに存在することで、停止物の近傍に検知対象物の検知困難領域が発生し、検知困難領域における物体を検知することが困難なFM−CW方式により停止物が測定された場合に、停止物を検知することが困難である一方で、停止物の近傍において移動している移動物を検知することが可能な2周波CW方式を用いて、移動物が検知対象物であるか否かを判定する構成により、これらの方式の弱点を互いに補完することができるので、たとえば、車両が停止物として停止線を越えた位置に存在することで、車両の近傍に検知困難領域が発生した場合においても、検知困難領域において移動する物体について、歩行者であるか否かを正しく判定することができる。
(6)本発明の実施の形態に係る検知プログラムは、電波センサにおいて用いられる検知プログラムであって、コンピュータを、対象エリアにおける物体の位置を定期的または不定期に測定可能な測定部と、過去に推定した前記物体の位置に基づいて今回の前記物体の位置を推定する推定部と、前記測定部によって測定された前記物体の位置と前記推定部によって推定された前記物体の位置との位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数以上である場合、前記物体が検知対象物であると判定する検知部と、として機能させるためのプログラムである。
このような構成により、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、対象エリアにおける対象物をより正しく検知することができる。また、このように、対象エリアにおける物体の位置を繰り返し測定し、たとえば推定位置の近傍に測定位置が存在する頻度が高い場合、物体が検知対象物であると判定する構成により、推定位置の近傍に測定位置が存在しないことがあっても、物体が検知対象物でないとすぐに判定してしまうことを防ぐことができる。これにより、電波センサが受信する検知対象物からの電波の強度が弱かったり、また、電波センサと検知対象物との間において自動車が通過したりするために、検知対象物の位置を測定することが困難なときがあっても、検知対象物を安定して検知することができる。
(7)本発明の実施の形態に係る検知プログラムは、FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアへ送信可能であり、電波を受信する電波センサにおいて用いられる検知プログラムであって、コンピュータを、受信した電波に基づいて、前記対象エリアにおける物体の位置を定期的または不定期に測定可能な測定部と、前記対象エリアにおいて、停止した物体である停止物が前記測定部によって前記FM−CW方式を用いて測定された場合、前記測定部による前記2周波CW方式を用いた、前記停止物と異なる前記対象エリアにおける物体である移動物に関する測定結果に基づいて、前記移動物が検知対象物であるか否かを判定する検知部と、として機能させるためのプログラムである。
このような構成により、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、対象エリアにおける対象物をより正しく検知することができる。また、このように、停止車両および電柱といった停止物を検知可能である一方で、停止物が対象エリアに存在することで、停止物の近傍に検知対象物の検知困難領域が発生し、検知困難領域における物体を検知することが困難なFM−CW方式により停止物が測定された場合に、停止物を検知することが困難である一方で、停止物の近傍において移動している移動物を検知することが可能な2周波CW方式を用いて、移動物が検知対象物であるか否かを判定する構成により、これらの方式の弱点を互いに補完することができるので、たとえば、車両が停止物として停止線を越えた位置に存在することで、車両の近傍に検知困難領域が発生した場合においても、検知困難領域において移動する物体について、歩行者であるか否かを正しく判定することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムの構成を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムの交差点における設置例を斜め上方から見た状態を示す図である。
図1および図2を参照して、安全運転支援システム301は、電波センサ101と、中継装置141と、信号制御装置151と、無線送信装置152と、アンテナ153と、歩行者用信号灯器161とを備える。安全運転支援システム301における信号制御装置151および歩行者用信号灯器161は、交通信号機を構成し、たとえば交差点CS1の近傍に設置される。
[交差点付近について]
たとえば、図2に示すように、交差点CS1付近において横断歩道PC1が設けられている。ここで、横断歩道PC1が設けられている道路を対象道路Rd1と定義する。対象道路Rd1は、交差点CS1を形成する。また、交差点CS1において対象道路Rd1と交差する道路を交差道路Rd2と定義する。
すなわち、対象道路Rd1および交差道路Rd2が交差する部分が交差点CS1である。言い換えると、交差点CS1は、対象道路Rd1と重複し、かつ交差道路Rd2と重複している。なお、交差点CS1において、さらに多数の道路が交差してもよい。
対象道路Rd1は、交差点CS1から流出する図示しない自動車Tgt1が走行する流出道路Rdeと、交差点CS1へ流入する自動車Tgt1が走行する流入道路Rdiとを含む。流出道路Rdeおよび流入道路Rdiの間に、車線TrLが設けられている。
流出道路Rdeに対する流入道路Rdiの反対側の端には、対象道路Rd1に沿って延伸するように歩道Pv1が設けられている。歩道Pv1は、交差点CS1の近傍において円弧形状の隅切りCCeに沿って延伸することにより対象道路Rd1に沿う方向から交差道路Rd2に沿う方向へ延伸方向を変える。
また、流入道路Rdiに対する流出道路Rdeの反対側の端には、対象道路Rd1に沿って延伸するように歩道Pv2が設けられている。歩道Pv2は、交差点CS1の近傍において円弧形状の隅切りCCiに沿って延伸することにより対象道路Rd1に沿う方向から交差道路Rd2に沿う方向へ延伸方向を変える。
対象エリアA1は、電波センサ101から送信された電波の照射範囲の少なくとも一部であり、横断歩道PC1のたとえば全部を含むエリアである。
センサ設置者は、対象エリアA1において、たとえばサブエリアSAis,SAes、SAerおよびSAirの4つのサブエリアを設定する。なお、サブエリアの個数は、4つに限らず、2つ、3つ、または5つ以上でもよい。
サブエリアSAisは、たとえば四角形状を有しており、歩道Pv2の一部であって横断歩道PC1に隣接する部分を含む。サブエリアSAisは、たとえば歩行者Tgt2の待機エリアである。
サブエリアSAesは、たとえば四角形状を有しており、歩道Pv1の一部であって横断歩道PC1に隣接する部分を含む。サブエリアSAesは、たとえば歩行者Tgt2の待機エリアである。
サブエリアSAerは、たとえば四角形状を有しており、交差点CS1から流出する車両が通過する道路の部分と横断歩道PC1との重複エリアの少なくとも一部を含む。この例では、サブエリアSAerは、横断歩道PC1および流出道路Rdeが重複するエリアを含む。サブエリアSAerは、歩行者用信号灯器161が「すすめ」を点灯しているときに、歩行者Tgt2が横断歩道PC1に沿って通過するエリアであり、かつ交差道路Rd2から右折または左折した図示しない自動車Tgt1が対象道路Rd1に沿って通過するエリアである。以下、サブエリアSAerを、流出エリアとも称する。
サブエリアSAirは、たとえば四角形状を有しており、交差点CS1へ流入する車両が通過する道路の部分と横断歩道PC1との重複エリアの少なくとも一部を含む。この例では、サブエリアSAirは、たとえば、横断歩道PC1および流入道路Rdiが重複するエリアを含む。サブエリアSAirは、歩行者用信号灯器161が「すすめ」を点灯しているときに、歩行者Tgt2が横断歩道PC1に沿って通過するエリアである。以下、サブエリアSAirを、流入エリアとも称する。
電波センサ101は、対象エリアA1における物体を検知対象物として検知することが可能である。より詳細には、電波センサ101は、対象エリアA1において、横断歩道PC1を用いて道路を横断する歩行者Tgt2を検知対象物として検知する。ここで、歩行者Tgt2は、歩いている人間に限定されず、自転車等を含む。なお、検知対象物には、歩行者Tgt2の他に、対象道路Rd1に沿って走行して横断歩道PC1を通過する自動車Tgt1が含まれてもよい。
[電波センサの設置位置]
電波センサ101は、たとえば対象道路Rd1付近に設置されている。具体的には、電波センサ101は、歩道Pv1に対して対象道路Rd1の反対側に設置された支柱PWに固定されている。より詳細には、電波センサ101は、横断歩道PC1の歩道Pv1側への延長線上に設けられている。
中継装置141は、支柱PWに固定されている。電波センサ101および中継装置141は、図2では図示していないがたとえば信号線で接続されている。中継装置141は、電波センサ101から受信した情報を信号制御装置151へ送信する中継処理を行う。
信号制御装置151および無線送信装置152は、歩道Pv2に対して対象道路Rd1の反対側に設置された支柱PVに固定されている。また、アンテナ153は、支柱PVの頂部に固定されている。
2つの歩行者用信号灯器161は、支柱PWおよびPVにそれぞれ固定されている。信号制御装置151と、無線送信装置152、中継装置141および2つの歩行者用信号灯器161とは、図2では図示していないが信号線でそれぞれ接続されている。無線送信装置152およびアンテナ153は、図2では図示していないが信号線で接続されている。
電波センサ101は、対象エリアA1へ電波を送信する。対象エリアA1内に位置する物体は、電波センサ101から送信された電波を反射する。電波センサ101は、物体により反射された電波を受信する。
電波センサ101は、受信した電波に基づいて、横断歩道PC1における歩行者Tgt2を検知し、検知結果を中継装置141経由で信号制御装置151へ送信する。
歩行者用信号灯器161は、信号制御装置151の制御に従って、横断歩道PC1を横断する歩行者Tgt2に対して「すすめ」または「とまれ」を点灯して表示する。
たとえば、信号制御装置151は、歩行者用信号灯器161において「すすめ」を点灯する残り時間が少ない場合において、横断歩道PC1において歩行者Tgt2を検知したことを検知結果が示すとき、残り時間の延長を行う。なお、信号制御装置151は、たとえば、「すすめ」を点灯する残り時間が少ない旨を歩行者Tgt2に音声で通知してもよい。
また、信号制御装置151は、たとえば、歩行者用信号灯器161において「とまれ」を点灯している場合において、横断歩道PC1において歩行者Tgt2を検知したことを検知結果が示すとき、危険である旨を歩行者Tgt2に音声で警告する。
また、信号制御装置151は、電波センサ101から受信した検知結果に基づいて自動車Tgt1に対してサービスを提供する。
具体的には、信号制御装置151は、たとえば、歩行者Tgt2が横断歩道PC1に存在することを検知結果が示すとき、横断歩道PC1における歩行者Tgt2に注意すべき旨を示す歩行者警戒情報を作成し、作成した歩行者警戒情報を無線送信装置152へ送信する。
無線送信装置152は、たとえば、信号制御装置151から歩行者警戒情報を受信すると、受信した歩行者警戒情報を含む電波を生成し、生成した電波をアンテナ153経由で送信することにより、交差点CS1周辺に位置する自動車Tgt1へ歩行者警戒情報を報知する。
たとえば、交差道路Rd2から右折または左折して横断歩道PC1を通過しようとする図示しない自動車Tgt1は、無線送信装置152から送信された電波を受信すると、受信した電波に含まれる歩行者警戒情報を取得し、取得した歩行者警戒情報に基づいて、横断歩道PC1における横断対象物に注意すべき旨を当該自動車Tgt1の運転者に通知する。
[電波センサの構成]
図3は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムにおける電波センサの構成を示す図である。
図3を参照して、電波センサ101は、送信部1と、受信部2と、差分信号生成部3と、制御部4と、信号処理部5と、検知部7とを備える。
送信部1は、送信アンテナ21と、パワーアンプ22と、方向性結合器23と、VCO(Voltage−Controlled Oscillator)24と、電圧発生部25と、スイッチ26とを含む。
受信部2は、受信アンテナ31A,31B,31C,31Dと、ローノイズアンプ32A,32B,32C,32Dとを含む。以下、受信アンテナ31A,31B,31C,31Dの各々を、受信アンテナ31とも称する。ローノイズアンプ32A,32B,32C,32Dの各々を、ローノイズアンプ32とも称する。
ローノイズアンプ32は、受信アンテナ31に対応して設けられている。図3では、受信アンテナ31および対応のローノイズアンプ32の4つの組を代表的に示しているが、2つ、3つまたは5つ以上の当該組が設けられてもよい。
差分信号生成部3は、ミキサ33A,33B,33C,33Dと、IF(Intermediate Frequency)アンプ34A,34B,34C,34Dと、ローパスフィルタ35A,35B,35C,35Dと、A/Dコンバータ(ADC)36A,36B,36C,36Dとを含む。
以下、ミキサ33A,33B,33C,33Dの各々を、ミキサ33とも称する。IFアンプ34A,34B,34C,34Dの各々を、IFアンプ34とも称する。ローパスフィルタ35A,35B,35C,35Dの各々を、ローパスフィルタ35とも称する。ADコンバータ36A,36B,36C,36Dの各々を、ADコンバータ36とも称する。
ミキサ33、IFアンプ34、ローパスフィルタ35およびA/Dコンバータ36は、受信アンテナ31に対応して設けられている。図3では、ミキサ33、IFアンプ34、ローパスフィルタ35およびA/Dコンバータ36の4つの組を代表的に示しているが、2つ、3つまたは5つ以上の当該組が設けられてもよい。
電波センサ101は、非特許文献1(四分一 浩二、外2名、”拡大するミリ波技術の応用”、[online]、[平成27年9月20日検索]、インターネット〈URL:http://www.spc.co.jp/spc/pdf/giho21_09.pdf〉)および非特許文献2(稲葉 敬之、桐本 哲郎、”車載用ミリ波レーダ”、自動車技術、2010年2月、第64巻、第2号、P.74−79)に記載された、FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式および2周波CW方式を用いて検知対象物を検知するレーダである。
電波センサ101における送信部1は、たとえば、FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアA1へ送信可能である。
より詳細には、送信部1は、たとえば、FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式の変調方式の電波および2周波CW方式の変調方式の電波を時分割送信する。
なお、送信電波の変調方式は、FM−CW方式および2周波CW方式に限らず、パルス方式または2周波ICW(Interrupted CW)方式等の他の変調方式であってもよい。
パルス方式または2周波ICW方式を用いる場合、不連続波を用いるので、電波の送信が開始または停止されるタイミングに基づいて電波センサ101と物体との間の距離を算出することができ、また、マルチパスの影響を低減することができる。
また、2周波CW方式を用いる場合、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った物体の移動速度が略同じ2つの物体を分離して検知することが困難である。一方、2周波ICW方式を用いる場合、当該2つの物体間の距離が離れているとき、当該2つの物体を分離して検知することができる。
以下、送信部1が2周波CW方式を用いて生成した周波数F1およびF2の電波を、それぞれ送信波RFt1およびRFt2とも称する。また、送信部1がFM−CW方式を用いて生成した電波を、送信波RFt3とも称する。また、送信波RFt1、RFt2およびRFt3の各々を、送信波RFtとも称する。
制御部4は、信号制御装置151から中継装置141経由で測定開始命令を受信すると、受信した測定開始命令に従って、自己の電波センサ101における検知対象物の検知処理を開始させる。
図4は、本発明の実施の形態に係る安全運転支援システムにおける電波センサが送信および受信する電波の周波数の時間変化の一例を示す図である。
なお、図4において、横軸は時間を示し、縦軸は周波数を示す。また、送信する電波の周波数Ftは実線で表され、また、受信する電波の周波数Frは破線で表されている。図4では、送信電波に対する受信電波の遅延が示されている。
図4を参照して、電波センサ101では、たとえば、2周波CW方式を用いて生成された、周波数F1,F2をそれぞれ有する送信波RFt1,RFt2を送信する送信期間P1,P2、およびFM−CW方式を用いて生成された送信波RFt3を送信する送信期間P3がこの順で繰り返される。ここで、送信期間P2,P3の間、および送信期間P3,P1の間には、たとえば電波センサ101が電波の送信を行わないガード期間Pgが設けられている。また、送信期間P1,P2の長さは、たとえば同じである。また、周波数F2は、周波数F1より小さい。
図3および図4を参照して、制御部4は、FM−CW方式において用いる周波数掃引幅Δfおよび送信期間P3の長さである掃引時間Tsを初期設定値として送信部1および信号処理部5へ出力する。
制御部4は、送信期間P1、送信期間P2、ガード期間Pg、送信期間P3およびガード期間Pgをこれらの順で繰り返し設定する。ここで、時間的に連続する送信期間P1、送信期間P2、ガード期間Pg、送信期間P3およびガード期間Pgを、単位シーケンスUSと定義する。単位シーケンスUSの長さすなわち測定周期は、たとえばτである。測定周期τは、たとえば100ミリ秒である。
より詳細には、制御部4は、送信期間P1の開始タイミングにおいて、制御信号Ss1を生成して送信部1および信号処理部5へ出力する。また、制御部4は、送信期間P1の終了タイミングすなわち送信期間P2の開始タイミングにおいて、制御信号St1を生成して送信部1および信号処理部5へ出力する。
制御部4は、送信期間P2の終了タイミングにおいて、制御信号Se1を生成して送信部1および信号処理部5へ出力する。また、制御部4は、送信期間P3の開始タイミングおよび終了タイミングにおいて、制御信号Ss2およびSe2をそれぞれ生成し、生成した制御信号Ss2およびSe2を送信部1および信号処理部5へ出力する。
送信部1におけるVCO24は、電圧発生部25から受ける電圧の大きさに応じた周波数を有する送信波RFtを生成する。
電圧発生部25は、制御部4から制御信号Ss1を受けると、制御部4から制御信号St1を受けるまで大きさV1aの電圧を生成してVCO24へ出力する。VCO24は、電圧発生部25から大きさV1aの電圧を受けている間、周波数F1を有する24GHz帯の送信波RFt1を生成してスイッチ26へ出力する。
また、電圧発生部25は、制御部4から制御信号St1を受けると、制御部4から制御信号Se1を受けるまで大きさV1bの電圧を生成してVCO24へ出力する。VCO24は、電圧発生部25から大きさV1bの電圧を受けている間、周波数F2を有する24GHz帯の送信波RFt2を生成してスイッチ26へ出力する。
また、電圧発生部25は、制御部4から制御信号Ss2を受けると、初期設定値として予め制御部4から受けた周波数掃引幅Δfおよび掃引時間Tsを用いて、制御部4から制御信号Se2を受けるまで、大きさが一定の割合で増加する電圧すなわちFM変調電圧を生成してVCO24へ出力する。
VCO24は、電圧発生部25から受けるFM変調電圧に応じて、周波数掃引幅Δfが180MHzである24GHz帯の送信波RFt3を生成してスイッチ26へ出力する。
スイッチ26は、VCO24に接続された第1端と、方向性結合器23に接続された第2端とを有する。スイッチ26は、制御部4から制御信号Ss1またはSs2を受けると、第1端および第2端を電気的に接続する。また、スイッチ26は、制御部4から制御信号Se1またはSe2を受けると、第1端および第2端を電気的に絶縁する。これにより、VCO24が出力する送信波RFtは、送信期間P1,P2,P3において方向性結合器23へ伝送され、かつガード期間Pgにおいて方向性結合器23へ伝送されない。
方向性結合器23は、VCO24から受ける送信波RFtをパワーアンプ22および差分信号生成部3へ分配する。
パワーアンプ22は、方向性結合器23から受ける送信波RFtを増幅し、増幅後の送信波RFtを送信アンテナ21経由で対象エリアA1へ送信する。
図5は、本発明の実施の形態に係る送信アンテナおよび受信アンテナの、上方から見た場合における配置の一例を示す図である。
図3および図5を参照して、受信アンテナ31A〜31Dは、たとえば送信アンテナ21の近傍に位置する。より詳細には、受信アンテナ31A〜31Dは、たとえば、送信アンテナ21と略同じ高さにおいて、対象道路Rd1の延伸方向に沿って水平に並べて配置される。各受信アンテナ31は、たとえば、交差点CS1側から受信アンテナ31A〜31Dの順番で間隔dを空けて並べられている。
なお、受信アンテナ31A〜31Dは、送信アンテナ21から離れた位置に配置されてもよいが、電波センサ101の構成を簡易にするために、送信アンテナ21の近傍に配置されることが好ましい。
ここで、物体たとえば歩行者Tgt2からの反射波が受信アンテナ31へ入射する角度を示す方位角φを、受信アンテナ31A〜31Dが並べられた方向であって交差点CS1へ向かう方向Xがφ=90°になり、かつ受信アンテナ31の上方から見て時計回りにφが増加するように定義する。したがって、φ=0°の方向Yが、横断歩道PC1の延伸方向となる。
なお、電波センサ101は、送信アンテナ21および複数の受信アンテナ31が別々のアンテナである構成に限らず、複数の受信アンテナ31のうちのいずれか1つのアンテナを送信アンテナとして用いる構成であってもよい。
図3を参照して、受信部2は、対象エリアA1等からの電波を受信する。より詳細には、受信部2が受信する電波には、検知対象物によって反射された電波、および検知対象物以外の物体である構造物、たとえばガードレールおよびポールによって反射された電波、ならびに電波を送信する電波送信体からの電波等が含まれる。受信部2における受信アンテナ31A〜31Dは、対象エリアA1等からの電波をそれぞれ受信する。
ローノイズアンプ32A〜32Dは、受信アンテナ31A〜31Dがそれぞれ受信した電波である受信波RFr1〜RFr4を増幅し、差分信号生成部3へ出力する。
差分信号生成部3は、送信部1によって送信される電波の周波数成分と受信部2によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号を生成する。
より詳細には、差分信号生成部3におけるミキサ33A〜ミキサ33Dは、送信部1から受ける送信波RFtとローノイズアンプ32A〜32Dからそれぞれ受ける受信波RFr1〜RFr4との差の周波数成分を有する差分信号Ba1〜Ba4を生成する。ミキサ33A〜ミキサ33Dは、生成した差分信号Ba1〜Ba4をIFアンプ34A〜34Dへそれぞれ出力する。
IFアンプ34A〜34Dは、それぞれ、ミキサ33A〜ミキサ33Dから受ける差分信号Ba1〜Ba4を増幅し、ローパスフィルタ35A〜35Dへ出力する。
ローパスフィルタ35A〜35Dは、IFアンプ34A〜34Dにおいてそれぞれ増幅された差分信号Ba1〜Ba4の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分を減衰させる。
A/Dコンバータ36Aは、たとえば所定のサンプリング周波数fsmplで差分信号Ba1のサンプリング処理を行う。より詳細には、A/Dコンバータ36Aは、ローパスフィルタ35Aを通過したアナログ信号である差分信号Ba1を、サンプリング周期である(1/fsmpl)ごとにqビット(qは2以上の整数)のデジタルの差分信号Bd1に変換する。
同様に、A/Dコンバータ36B〜36Dは、サンプリング周波数fsmplでそれぞれ差分信号Ba2〜Ba4のサンプリング処理を行い、アナログの差分信号Ba2〜Ba4をデジタルの差分信号Bd2〜Bd4に変換する。
A/Dコンバータ36A〜36Dは、変換後の差分信号Bd1〜Bd4をそれぞれ信号処理部5へ出力する。
図6は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける信号処理部の構成を示す図である。
図6を参照して、信号処理部5は、メモリ41と、FFT(Fast Fourier Transform)処理部42と、測定部46と、演算部(推定部)45とを含む。測定部46は、FMCW処理部43と、2FCW処理部44とを含む。
信号処理部5におけるメモリ41は、A/Dコンバータ36A〜36Dからそれぞれ受ける差分信号Bd1〜Bd4を蓄積する。
FFT処理部42は、制御部4から受ける制御信号Ss1,St1,Se1,Ss2,Se2に基づいて、送信期間P1,P2,P3(図4参照)を認識する。
FFT処理部42は、送信期間P1における差分信号Bd1〜Bd4のメモリ41への蓄積が完了すると、メモリ41に蓄積された差分信号Bd1〜Bd4を取得し、取得した差分信号Bd1〜Bd4に対してそれぞれFFT処理を行う。
より詳細には、FFT処理部42は、差分信号Bd1に対してFFT処理を行うことにより、パワースペクトルFS11および位相スペクトルPS11を生成する。ここで、パワースペクトルFS11は、送信期間P1において蓄積された差分信号Bd1に含まれる各周波数成分の振幅を示す。また、位相スペクトルPS1は、送信期間P1において蓄積された差分信号Bd1に含まれる各周波数成分の位相を示す。
同様に、FFT処理部42は、送信期間P1において蓄積された差分信号Bd2,Bd3,Bd4に対してFFT処理を行うことにより、パワースペクトルFS12,FS13,FS14をそれぞれ生成するとともに、位相スペクトルPS12,PS13,PS14をそれぞれ生成する。
FFT処理部42は、生成したパワースペクトルFS11〜FS14および位相スペクトルPS11〜PS14を2FCW処理部44へ出力する。
また、FFT処理部42は、送信期間P2において蓄積された差分信号Bd1,Bd2,Bd3,Bd4についても同様にFFT処理を行い、パワースペクトルFS21,FS22,FS23,FS24をそれぞれ生成するとともに、位相スペクトルPS21,PS22,PS23,PS24をそれぞれ生成する。
FFT処理部42は、生成したパワースペクトルFS21〜FS24および位相スペクトルPS21〜PS24を2FCW処理部44へ出力する。
また、FFT処理部42は、送信期間P3において蓄積された差分信号Bd1,Bd2,Bd3,Bd4についても同様にFFT処理を行い、パワースペクトルFS31,FS32,FS33,FS34をそれぞれ生成するとともに、位相スペクトルPS31,PS32,PS33,PS34をそれぞれ生成する。
FFT処理部42は、生成したパワースペクトルFS31〜FS34および位相スペクトルPS31〜PS34をFMCW処理部43へ出力する。
図7は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける測定部によるピークの検出結果を示す測定結果表の一例を示す図である。図7に示す測定結果表400には、ピークに対応する、極座標における測定位置、直交座標における測定位置および物体識別子が、検出されたピークごとにリストアップされる。
図7を参照して、測定部46は、対象エリアA1における物体の位置を定期的に測定可能である。ここで、「測定可能である」とは、測定部46は、物体の位置を測定可能である場合、たとえば対象エリアA1に物体が存在する場合、当該物体の位置を定期的に測定することを意味する。測定部46は、物体の位置を測定できない場合、具体的には、たとえば、対象エリアA1において物体が存在しない場合、または対象エリアA1における物体からの反射波の強度が弱い場合、物体の位置を測定しない。
より詳細には、測定部46におけるFMCW処理部43および2FCW処理部44は、たとえば、受信部2によって受信された電波に基づいて、FM−CW方式および2周波CW方式を用いて物体の位置をそれぞれ測定可能である。
FMCW処理部43は、たとえば、対象エリアA1において歩行者Tgt2および自動車Tgt1等の移動可能な物体が存在しないとした状態におけるパワースペクトルである背景スペクトルを保持している。
FMCW処理部43は、パワースペクトルFS31〜FS34および位相スペクトルPS31〜PS34をFFT処理部42から受けると、以下の処理を行う。
すなわち、FMCW処理部43は、たとえばパワースペクトルFS31の各周波数成分から背景スペクトルの各周波数成分をそれぞれ差し引くことにより処理スペクトルを生成する。
FMCW処理部43は、生成した処理スペクトルに対してピーク検出処理を行う。より詳細には、FMCW処理部43は、処理スペクトルを解析し、しきい値Thfm以上の強度を有するピークの検出を試みる。
この例では、FMCW処理部43は、5つのピークを検出し、検出した各ピークにPn1〜Pn5のピーク番号を付する。
FMCW処理部43は、検出したピークに対応する物体の位置である測定位置をピークごとに算出する。
より詳細には、FMCW処理部43は、検出したピークのピーク周波数Fbを処理スペクトルから取得し、取得した周波数Fbと、制御部4から受けた周波数掃引幅Δfおよび掃引時間Tsとを以下の式(1)に代入することにより距離Lpを算出する。
FMCW処理部43は、距離Lpの算出をピークごとに行う。この例では、FMCW処理部43は、ピーク番号Pn1〜Pn5のピークに対応する距離としてL1〜L5をそれぞれ算出する。
そして、FMCW処理部43は、ピーク番号Pn1〜Pn5のピーク周波数Fb、および位相スペクトルPS31〜PS34に基づいて、ピーク番号Pn1〜Pn5のピークにそれぞれ対応する方位角φ1〜φ5を算出する。
より詳細には、FMCW処理部43は、位相スペクトルPS31〜PS34において、ピーク番号Pn1のピーク周波数Fbにおける位相をそれぞれ取得する。FMCW処理部43は、非特許文献3(菊間 信良著、「アレーアンテナによる適応信号処理」、初版、株式会社科学技術出版、1998年11月、p.181,p.194)に記載のビームフォーマ法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法およびCapon法等に従って、取得した各位相に基づいてピーク番号Pn1のピークに対応する方位角φ1を算出する。
FMCW処理部43は、方位角φ1の算出と同様に、ピーク番号Pn2〜Pn5のピークにそれぞれ対応する方位角φ2〜φ5をそれぞれ算出する。
ピーク番号Pn1〜Pn5のピークにそれぞれ対応する物体の測定位置は、このようにして算出された距離および方位角を用いた極座標により示される位置である。
FMCW処理部43は、測定位置を示す極座標を直交座標へ変換する。具体的には、演算部45は、X1=L1×sin(φ1)およびY1=L1×cos(φ1)を算出することにより、極座標系における座標(L1,φ1)を直交座標系における座標(X1,Y1)へ変換する。
同様に、FMCW処理部43は、極座標系における座標(L2,φ2)〜(L5,φ5)についても、直交座標系における座標(X2,Y2)〜(X5,Y5)へそれぞれ変換する。
FMCW処理部43は、ピーク番号Pn1〜Pn5のピークにそれぞれ対応する、極座標および直交座標を測定結果表400に書き込み、測定結果表400を演算部45へ出力する。
一方、FMCW処理部43は、処理スペクトルを解析したときに、しきい値Thfm以上の強度を有するピークの検出ができなかった場合、測定結果表400には何も書き込まずに測定結果表400を演算部45へ出力する。
演算部45は、過去に推定した物体の位置に基づいて今回の物体の位置を推定する。より詳細には、演算部45は、たとえば、物体の位置、速さおよび移動方向を変数として用いる時系列フィルタを用いて物体の位置を推定する。ここで、当該変数は、後述する第1状態変数および第2状態変数である。また、演算部45は、たとえば各サブエリアの位置を認識している。
図8は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける演算部による物体の追跡結果を示す追跡結果表の一例を示す図である。
図8を参照して、追跡結果表401には、物体の状態を示すデータ集合体が追跡対象の物体ごとにリストアップされる。データ集合体は、対応の物体についての各データを含む。具体的には、データ集合体は、物体識別子、追跡状態、第1状態変数、第2状態変数および遷移時刻を含む。第1状態変数および第2状態変数の各々は、座標x,y、速さvおよび移動方向φを含む。
この例では、追跡結果表401は、P1,P2,P3の物体識別子をそれぞれ有する3つのデータ集合体を含む。なお、追跡状態、第1状態変数、第2状態変数および遷移時刻の詳細については後述する。
図9は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける演算部によってデータ集合体に設定される追跡状態の遷移ルートの一例を示す図である。
図9を参照して、演算部45は、測定周期τごとに追跡状態を更新する。より詳細には、演算部45は、追跡状態が歩行者候補状態のデータ集合体について、歩行者候補状態を維持させるか、歩行者状態に遷移させるか、停止物として特定するか、または消滅させる。ここで、「消滅させる」とは、対応のデータ集合体を追跡結果表401から削除することである。
また、演算部45は、追跡状態が歩行者状態のデータ集合体について、歩行者状態を維持させるか、または消滅させる。ここで、「消滅させる」とは、対応のデータ集合体を追跡結果表401から削除することである。
演算部45は、追跡状態を歩行者候補状態に設定した場合、および追跡状態を歩行者状態に設定した場合、設定を行った時刻を追跡結果表401における対応の遷移時刻の欄に書き込む。
図10は、本発明の実施の形態に係る演算部において行われる各処理の入力値および出力値の時系列変化の一例を示す図である。
図10を参照して、演算部45は、データ集合体が追跡結果表401にリストアップされている場合、時刻(t−τ),t,(t+τ)等の測定周期τごとに、データ集合体について時間更新処理、バリデーションゲート処理(以下、単にゲート処理とも称する。)および観測更新処理を行う。
なお、時間更新処理、ゲート処理および観測更新処理の詳細、ならびにこれらの処理における入力値および出力値の詳細については、後述する。また、時間更新処理およびゲート処理は測定周期τごとに行われる。一方、観測更新処理は、測定周期τごとに行われないことがある。
再び図6を参照して、演算部45は、時系列フィルタとしてたとえばカルマンフィルタを用いることによりデータ集合体について時間更新処理および観測更新処理を行う。なお、演算部45は、カルマンフィルタに限らず、たとえばパーティクルフィルタを用いて時間更新処理および観測更新処理を行ってもよい。
[時間更新処理]
ここでは、時刻tにおける時間更新処理について説明する。時刻(t−τ),(t+τ)等における時間更新処理についても同様である。
演算部45は、図10に示すように、時刻(t−τ)における観測更新処理の出力値を入力値として用いて、時刻tにおける物体の位置の誤差分布を推定する時間更新処理を行う。
演算部45は、追跡結果表401に含まれるデータ集合体ごとに、時間更新処理を行う。すなわち、演算部45は、追跡結果表401におけるデータ集合体を1つ選択し、選択したデータ集合体に対して時間更新処理を行う。
たとえば、演算部45は、時刻(t−τ)の観測更新処理において算出され、かつ第2状態変数のx,y,v,φvを成分とする、以下の式(2)に示す第2状態変数ベクトルr<t−1|t−1>を保持している。
なお、第2状態変数ベクトルr<t−1|t−1>が算出されていない場合がある。具体的には、たとえば、時刻(t−τ)において観測更新処理が行われていない場合、または選択したデータ集合体が追跡結果表401に新たに追加されたデータ集合体である場合である。
このような場合、演算部45は、直近の過去に算出された第2状態変数ベクトルを用いる。また、第2状態変数ベクトルが過去に算出されていない場合、演算部45は、後述する初期値を成分として有する第2状態変数ベクトルを用いる。
また、演算部45は、所定の加速度aおよび所定の角速度ωを成分とする、以下の式(3)に示す入力ベクトルuを保持している。
演算部45は、以下の式(4)に示す状態方程式を用いて時刻tにおける第1状態変数ベクトルr<t|t−1>を算出する。
ここで、f<t−1>は、第2状態変数ベクトルr<t−1|t−1>および入力ベクトルuを変数とする非線形演算子である。また、x<t|t−1>、y<t|t−1>、v<t|t−1>およびφv<t|t−1>は、第1状態変数ベクトルr<t|t−1>の成分である。また、f1<t|t−1>、f2<t|t−1>、f3<t|t−1>およびf4<t|t−1>は、f<t−1>(r<t−1|t−1>,u)の成分である。
演算部45は、算出したx<t|t−1>,y<t|t−1>,v<t|t−1>,φv<t|t−1>を、追跡結果表401における、選択したデータ集合体に対応する第1状態変数のx,y,v,φvの欄にそれぞれ書き込む。
また、たとえば、演算部45は、時刻(t−τ)において算出された第2誤差共分散行列P<t−1|t−1>を保持している。
なお、第2誤差共分散行列P<t−1|t−1>が算出されていない場合がある。具体的には、たとえば、時刻(t−τ)において観測更新処理が行われていない場合、または選択したデータ集合体が追跡結果表401に新たに追加されたデータ集合体である場合である。
このような場合、演算部45は、直近の過去に算出された第2誤差共分散行列を用いる。また、第2誤差共分散行列が過去に算出されていない場合、演算部45は、所定の初期値を成分として有する第2誤差共分散行列を用いる。
演算部45は、以下の式(5)を用いて、第2誤差共分散行列P<t−1|t−1>、および入力ベクトルuの共分散行列Qから時刻tにおける第1誤差共分散行列P<t|t−1>を算出する。
ここで、共分散行列Qは、以下の式(6)により示される。
Qa,Qωは所定値である。また、F<t−1>,G<t−1>は、以下の式(7),(8)によりそれぞれ示される。
f<t−1>が非線形演算子であるので、第2誤差共分散行列P<t−1|t−1>から第1誤差共分散行列P<t|t−1>を直接求めることが困難である。F<t−1>,G<t−1>は、この困難を解決するために用いられる。
すなわち、演算部45は、時間更新処理において、時刻(t−τ)における第2状態変数ベクトルr<t−1|t−1>および第2誤差共分散行列P<t−1|t−1>から、時刻tにおける第1状態変数ベクトルr<t|t−1>および第1誤差共分散行列P<t|t−1>を算出する。
[ゲート処理]
演算部45は、測定部46によって測定された物体の位置すなわち測定位置と推定した物体の位置である推定位置との位置関係が第1の所定条件を満たすか否かを判定するゲート処理を行う。
詳細には、演算部45は、たとえば、測定位置と推定位置との相違に基づく距離が所定値以上であるか否かを判定するゲート処理を行う。
具体的には、演算部45は、ゲート処理において、所定条件C1を満たすピークが観測されたか否かを判定する。ここで、所定条件C1は、時間更新処理において算出された第1状態変数ベクトルr<t|t−1>に基づく推定位置と観測されたピークに基づく測定位置との相違に基づく距離であるマハラノビス距離が、カイ二乗検定に基づくしきい値以下であることである。
ここでは、時刻tにおけるゲート処理について説明するが、時刻(t−τ),(t+τ)等におけるゲート処理についても同様である。
演算部45は、追跡結果表401に含まれるデータ集合体ごとにゲート処理を行う。
より詳細には、演算部45は、測定結果表400に示すピークごとに、以下の式(9)に示す測定位置ベクトルzobs<t>を作成する。この例では、演算部45は、測定結果表400におけるPn1〜Pn5のピーク番号に対応して5つの測定位置ベクトルzobs<t>を作成する。
なお、演算部45は、測定結果表400にピークが含まれない場合、測定位置と推定位置との位置関係が第1の所定条件を満たしていないと判定し、ゲート処理を終了する。
演算部45は、たとえば、追跡結果表401におけるデータ集合体を1つ選択し、選択したデータ集合体の第1状態変数すなわち第1状態変数ベクトルr<t|t−1>、および以下の式(10)に示す観測方程式を用いて、計算位置ベクトルzcal<t>を作成する。
そして、演算部45は、測定位置ベクトルzobs<t>ごとに、以下の式(11)を用いて、測定位置ベクトルzobs<t>と計算位置ベクトルzcal<t>との相違、具体的には差を示す観測予測誤差ベクトルzerr<t>を算出する。この例では、演算部45は、Pn1〜Pn5のピーク番号に対応して5つの観測予測誤差ベクトルzerr<t>を算出する。
また、演算部45は、選択しているデータ集合体に対応する第1誤差共分散行列P<t|t−1>、および以下の式(12)を用いて、観測予測誤差分散行列S<t>を算出する。
ここで、共分散行列Rは、以下の式(13)により示される。
共分散行列Rにおける分散RxおよびRyは、所定値であり、たとえばそれぞれ0.7および1.8に設定される。これは、横断歩道PC1における歩行者Tgt2は、基本的にY軸に沿って直進するが、速さが変化するため、状態変数における座標yの分散Ryは、状態変数における座標xの分散Rxより大きい可能性が高いことが理由である。
演算部45は、測定位置ベクトルzobs<t>と計算位置ベクトルzcal<t>との相違に基づく距離として、マハラノビス距離を算出する。具体的には、演算部45は、作成した観測予測誤差分散行列S<t>、および以下の式(14)を用いて、検出されたピークごとにマハラノビス距離Rmを算出する。この例では、演算部45は、Pn1〜Pn5のピーク番号に対応して5つのマハラノビス距離Rmを算出する。
また、演算部45は、カイ二乗検定に用いる棄却域αを設定し、設定した棄却域αおよびカイ二乗分布表に基づいて、しきい値であるχ^2(1−α)を算出する。ここで、「a^b」は、yのx乗を意味する。
演算部45は、算出した各マハラノビス距離Rmのうち、所定条件C1を満たすマハラノビス距離Rmが存在するか否かを確認する。より詳細には、演算部45は、以下の式(15)を満たすマハラノビス距離Rmが存在するか否かを確認する。
演算部45は、所定条件C1を満たすマハラノビス距離Rmが存在しないことを確認すると、選択したデータ集合体に対する観測更新処理を行わないことを決定する。
一方、演算部45は、所定条件C1を満たすマハラノビス距離Rmが存在することを確認すると、選択したデータ集合体に対する観測更新処理を行うことを決定するとともに、以下の処理を行う。
すなわち、所定条件C1を満たすマハラノビス距離Rmのうち、最も小さいマハラノビス距離Rmを特定し、特定したマハラノビス距離Rmに対応するピークのピーク番号および観測予測誤差ベクトルzerr<t>を特定する。
演算部45は、選択したデータ集合体と特定したピーク番号および観測予測誤差ベクトルzerr<t>との対応関係を示す対応情報を作成して保持する。
なお、演算部45は、測定位置と推定位置との相違に基づく距離として、マハラノビス距離を算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。演算部45は、測定位置と推定位置との相違に基づく距離として、測定位置と推定位置との間の距離を算出してもよいし、マハラノビス距離以外の距離を算出する構成であってもよい。
[観測更新処理]
演算部45は、観測更新処理を行うことを決定したデータ集合体に対して観測更新処理を行う。ここでは、時刻tにおける観測更新処理について説明するが、時刻(t−τ),(t+τ)等における観測更新処理についても同様である。
演算部45は、観測更新処理を行うことを決定したデータ集合体ごとに、対象のデータ集合体に対応する第1誤差共分散行列P<t|t−1>および観測予測誤差分散行列S<t>を、以下の式(16)に代入することによりカルマンゲインK<t>を算出する。
演算部45は、保持する対応情報に基づいて、対象のデータ集合体に対応する観測予測誤差ベクトルzerr<t>を特定し、特定した観測予測誤差ベクトルzerr<t>、対象のデータ集合体に対応する第1状態変数ベクトルr<t|t−1>、および算出したカルマンゲインK<t>を以下の式(17)に代入することにより第2状態変数ベクトルr<t|t>を算出する。
演算部45は、算出したr<t|t>の各成分を、追跡結果表401における、対象のデータ集合体に対応する第2状態変数のx,y,v,φvの欄にそれぞれ書き込む。
また、演算部45は、対象のデータ集合体に対応する、第1誤差共分散行列P<t|t−1>および観測予測誤差分散行列S<t>と算出したカルマンゲインK<t>とを以下の式(18)に代入することにより第2誤差共分散行列P<t|t>を算出する。
[記録処理]
図11は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける演算部が更新する処理結果履歴表の一例を示す図である。
図11を参照して、演算部45は、処理結果履歴表403を保持しており、たとえば追跡結果表401に含まれる各データ集合体のゲート処理が完了すると、データ集合体ごとに、追跡状態、ゲート処理結果、推定位置およびピーク強度を処理結果履歴表403に書き込む。
ここで、ゲート処理結果は、対象のデータ集合体がゲート処理において所定条件C1を満たしたか否かを示す。推定位置は、対象のデータ集合体に対応する計算位置ベクトルzcal<t>である。ピーク強度は、対象のデータ集合体に対応するピークの観測強度である。
[追跡状態の遷移判断処理]
図12は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける演算部が更新する停止物一覧表の一例を示す図である。
図9、図11および図12を参照して、演算部45は、停止物一覧表402を保持している。演算部45は、ゲート処理の結果の時間的推移に基づいて、データ集合体の追跡状態の遷移を判断する遷移判断処理を行う。
具体的には、演算部45は、たとえば処理結果履歴表403の更新が完了すると、処理結果履歴表403における直近の所定時間内の各ゲート処理結果の値に基づいて、データ集合体の追跡状態の遷移を判断する。
たとえば、演算部45は、対象のデータ集合体の追跡状態が歩行者候補状態であり、かつ直近の所定時間TL内において、「偽」のゲート処理結果を示す回数が所定回数NL以上である場合、当該データ集合体を消滅させる(遷移Tr1)。
また、演算部45は、対象のデータ集合体の追跡状態が歩行者候補状態であり、かつ直近の所定時間TM内において、「真」のゲート処理結果を示す回数が所定回数NM以上である場合、当該データ集合体の追跡状態を歩行者状態に遷移させるか(遷移Tr2)、または停止物として特定する(遷移Tr4)。
より詳細には、演算部45は、対象のデータ集合体が所定条件C2を満たす場合、以下の処理を行う。ここで、所定条件C2は、対象のデータ集合体に対応する各処理タイミングの推定位置すなわち計算位置ベクトルzcal<t>の各成分の分散が所定値以下であり、かつ当該データ集合体に対応する各処理タイミングのピーク強度の分散が所定値以下であることである。
すなわち、演算部45は、対象のデータ集合体に対応する物体が移動していないと判断し、当該データ集合体を停止物として特定する。そして、演算部45は、追跡結果表401から当該データ集合体を削除するとともに、停止物一覧表402に当該データ集合体を追加する。
一方、演算部45は、所定条件C2を満たさない場合、対象のデータ集合体に対応する物体が移動していると判断し、当該データ集合体の追跡状態を歩行者候補状態から歩行者状態へ遷移させる。
また、演算部45は、対象のデータ集合体の追跡状態が歩行者状態であり、かつ直近の所定時間TN内において、「偽」のゲート処理結果を示す回数が所定回数NN以上である場合、当該データ集合体を消滅させる(遷移Tr3)。
ここで、所定時間TMは、たとえば1秒である。また、所定時間TNおよびTLは、好ましくは所定時間TMより大きい。所定時間TL,TM,TNは、一部または全部が同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。
また、所定回数NL,NM,NNは、1回であってもよいし、複数回であってもよい。より詳細には、所定回数NL,NM,NNの上限値は、たとえば所定時間TL,TM,TNを測定周期τでそれぞれ除した値である。所定回数NL,NM,NNが上限値を有する場合、データ集合体の追跡状態の遷移は、所定時間TL,TM,TNそれぞれにおいて、ゲート処理の同じ結果が連続して得られる場合に発生する。また、所定回数NL,NM,NNは、一部または全部が同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。
[対応付け処理]
演算部45は、たとえば遷移判断処理が完了すると、対応情報に基づいて、測定結果表400におけるピークとデータ集合体とを対応付けるための対応付け処理を行う。
より詳細には、演算部45は、対応情報に基づいて、追跡結果表401におけるデータ集合体ごとに、対応するピーク番号を特定する。そして、演算部45は、測定結果表400において、特定したピーク番号に対応する物体識別子の欄に、対応のデータ集合体に含まれる物体識別子を書き込む。
また、演算部45は、停止物一覧表402に基づいて、停止物一覧表402におけるデータ集合体に対応するピーク番号を特定する。より詳細には、演算部45は、たとえば、停止物一覧表402における第1状態変数のx,yと測定結果表400における直交座標の観測位置とを比較し、比較結果に基づいて、停止物一覧表402におけるデータ集合体に対応するピーク番号を特定する。
そして、演算部45は、測定結果表400において、特定したピーク番号に対応する物体識別子の欄に、対応のデータ集合体に含まれる物体識別子を書き込む。
一方、演算部45は、停止物一覧表402におけるデータ集合体に対応するピーク番号を特定できなかったときは、停止物一覧表402から当該データ集合体を削除する。
演算部45は、測定結果表400を確認し、物体識別子を書き込まなかったピーク、この例ではPn4のピーク番号のピークについて、以下の処理を行う。
すなわち、演算部45は、たとえば、物体識別子を書き込まなかったピークの強度が歩行者Tgt2の反射断面積に応じた強度を示し、かつ当該ピークに対応する位置が横断歩道PC1またはサブエリアSAisもしくはSAes内に位置する場合、当該ピークに対応する物体の種類が歩行者Tgt2である可能性が高いと判断する。
演算部45は、歩行者Tgt2である可能性が高いと判断したピークに対応する新たなデータ集合体を作成し、作成したデータ集合体を追跡結果表401に追加する。
より詳細には、演算部45は、たとえば、第2状態変数の初期値として、測定位置に応じた値を設定する。
具体的には、演算部45は、ピーク番号Pn4のピークに対応するデータ集合体に対して、ピーク番号Pn4に対応する測定位置に応じた初期値を有する第2状態変数を設定する。
たとえば、演算部45は、測定位置(X,Y)がサブエリアSAesまたはSAerに含まれる場合、第2状態変数の初期値として、x,y,v,φvをそれぞれX,Y,4.0メートル毎秒および0°に設定する。
また、演算部45は、たとえば、測定位置(X,Y)がサブエリアSAisまたはSAirに含まれる場合、第2状態変数の初期値として、x,y,v,φvをそれぞれX,Y,4.0メートル毎秒および180°に設定する。
また、演算部45は、第1状態変数におけるx,y,v,φvの初期値として、割り当てなしを示すNAを設定する。
なお、演算部45は、たとえば、物体識別子を書き込まなかったピークの強度が自動車Tgt1の反射断面積に応じた強度を示す場合、当該ピークに対応する物体の種類が自動車Tgt1である可能性が高いと判断し、自動車Tgt1の追跡に用いるデータ集合体を作成してもよい。
再び図6を参照して、2FCW処理部44は、パワースペクトルFS11〜FS14,FS21〜FS24および位相スペクトルPS11〜PS14,PS21〜PS24をFFT処理部42から受けると、以下の処理を行う。
すなわち、2FCW処理部44は、たとえばパワースペクトルFS11に対してピーク検出処理を行う。より詳細には、演算部45は、パワースペクトルFS11を解析し、しきい値Thtf以上の強度を有するピークの検出を試みる。
2FCW処理部44は、検出したピークに対応する物体の位置である測定位置をピークごとに算出する。
より詳細には、2FCW処理部44は、非特許文献1および非特許文献2の記載の方法に従って、検出したピークに対応する距離Ltfを算出する。
具体的には、2FCW処理部44は、検出したピークのピーク周波数FtfをパワースペクトルFS11から取得する。2FCW処理部44は、たとえば位相スペクトルPS11,PS21において、ピーク周波数Ftfにおける位相をそれぞれ取得する。2FCW処理部44は、取得した2つの位相の位相差に基づいて距離Ltfを算出する。
また、2FCW処理部44は、非特許文献3に記載のビームフォーマ法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法およびCapon法等に従って、検出したピークに対応する方位角φtfを算出する。
具体的には、2FCW処理部44は、たとえば位相スペクトルPS11〜PS14において、ピーク周波数Ftfにおける位相をそれぞれ取得し、取得した各位相に基づいて、検出したピークに対応する方位角φtfを算出する。
2FCW処理部44は、算出した距離Ltfおよび方位角φtfに基づいて、直交座標における測定位置である(Xtf,Ytf)を算出する。
また、2FCW処理部44は、非特許文献1および非特許文献2の記載の方法に従って、検出したピークに対応する物体の速度vtfを、ピーク周波数Ftfに基づいて算出する。
2FCW処理部44は、検出した1または複数のピークの強度、バンド幅、速度vtfおよび測定位置(Xtf,Ytf)を示す2周波CW結果情報を作成し、作成した2周波CW結果情報を検知部7へ出力する。
再び図3を参照して、検知部7は、物体が検知対象物であるか否かを判定する前の未判定状態において、測定位置と推定位置との位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間TM内において所定回数NM以上である場合、物体が検知対象物であると判定する。
また、検知部7は、たとえば、物体が検知対象物であるか否かを判定する前の未判定状態において、測定位置と推定位置との位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間TL内において所定回数NLより小さい場合、または物体が検知対象物であると判定した後、当該位置関係が第2の所定条件を満たす回数が、所定時間TN内において所定回数NNより小さい場合、物体が検知対象物でないと判定する。ここで、第1の所定条件と第2の所定条件とは、たとえば同じである。
また、検知部7は、たとえば、対象エリアA1において、停止した物体である停止物が測定部46によってFM−CW方式を用いて測定された場合、測定部46による2周波CW方式を用いた、停止物と異なる物体に関する測定結果に基づいて、停止物と異なる物体が検知対象物であるか否かを判定する。
また、検知部7は、たとえば、測定部46によってFM−CW方式を用いて新たな物体が測定されてから当該新たな物体が検知対象物であると判定するまでの間において、測定部46による2周波CW方式を用いた物体に関する測定結果に基づいて、物体が検知対象物であるか否かを判定する。
より詳細には、検知部7は、たとえば各サブエリアの位置を認識している。また、検知部7は、演算部45により作成された追跡結果表401および停止物一覧表402の内容、および2FCW処理部44から受ける2周波CW結果情報に基づいて、物体が歩行者Tgt2であるか否かを判定し、判定結果に基づいて横断歩道PC1における歩行者Tgt2を検知する。
図13は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける検知部によって設定された検知状態の遷移ルートの一例を示す図である。
図13を参照して、検知部7は、「未確定状態」、「歩行者なし状態」および「歩行者あり状態」を設定可能であり、これらの状態間の遷移が可能である。ただし、ここでは「歩行者なし状態」から「歩行者あり状態」への遷移は除かれる。
検知部7は、追跡結果表401および停止物一覧表402の内容に基づいて、測定周期τごとに検知状態を設定する。
より詳細には、検知部7は、停止物一覧表402においてデータ集合体が含まれる場合、検知困難な領域が存在すると判断し、検知状態を「未確定状態」に設定する。
一方、検知部7は、停止物一覧表402においてデータ集合体が含まれない場合、以下の処理を行う。
すなわち、検知部7は、追跡結果表401においてデータ集合体が含まれない場合、検知状態を「歩行者なし状態」に設定する。すなわち、電波センサ101において、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在しないことが検知される。
また、検知部7は、追跡結果表401においてデータ集合体が含まれる場合において、データ集合体の追跡状態がすべて「歩行者候補状態」であるとき、検知状態を「未確定状態」に設定する。
一方、検知部7は、追跡結果表401に含まれるデータ集合体のうちの少なくともいずれか1つが所定条件C4を満たす場合、検知状態を「歩行者あり状態」に設定する。すなわち、電波センサ101において、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在することが検知される。ここで、所定条件C4は、データ集合体の追跡状態が「歩行者状態」であり、かつ当該データ集合体に対応する物体の位置が横断歩道PC1に含まれることである。
検知部7は、「歩行者あり状態」に設定した場合、物体が検知対象物であると判定する。
また、検知部7は、「未確定状態」に設定した場合、2FCW処理部44から受ける2周波CW結果情報に基づいて、物体が検知対象物であるか否かを判定する。
より詳細には、検知部7は、2周波CW結果情報の内容が所定条件C3を満たす場合、物体が検知対象物であると判定する。すなわち、電波センサ101において、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在することが検知される。
ここで、所定条件C3は、たとえば、2周波CW結果情報の示す測定位置(Xtf,Ytf)が横断歩道PC1に含まれ、かつ2周波CW結果情報の示すピークの強度、バンド幅およぼ速度vtfが対応の所定範囲にそれぞれ含まれることである。
一方、検知部7は、2周波CW結果情報の内容が所定条件C3を満たさない場合、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在しないことを検知する。検知部7は、検知結果を中継装置141へ送信する。
[動作]
電波センサ101は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下に示すフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図14は、本発明の実施の形態に係る電波センサが単位シーケンスにおいて対象物の検知を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図14を参照して、まず、電波センサ101は、FM−CW方式による結果であるパワースペクトルFS31〜FS34および位相スペクトルPS31〜PS34が出力されるまで待機する(ステップS102でNO)。
電波センサ101は、FM−CW方式による結果が出力されると(ステップS102でYES)、ピーク検出処理を行う(ステップS104)。
次に、電波センサ101は、追跡結果表401においてデータ集合体が含まれる場合(ステップS106でYES)、追跡結果表401からデータ集合体を1つ選択する(ステップS108)。
次に、電波センサ101は、選択したデータ集合体の追跡状態が歩行者状態である場合、後述する歩行者状態処理を行う(ステップS112)。
一方、電波センサ101は、選択したデータ集合体の追跡状態が歩行者候補状態である場合、後述する歩行者候補状態処理を行う(ステップS114)。
次に、電波センサ101は、歩行者状態処理を行うか(ステップS112)、または歩行者候補状態処理を行うと(ステップS114)、追跡結果表401におけるすべてのデータ集合体を選択したか否かを判断する(ステップS116)。
次に、電波センサ101は、追跡結果表401におけるすべてのデータ集合体を選択していないと判断した場合(ステップS116でNO)、追跡結果表401から他のデータ集合体を1つ選択する(ステップS108)。
一方、電波センサ101は、追跡結果表401においてデータ集合体が含まれない場合(ステップS106でNO)、または追跡結果表401におけるすべてのデータ集合体を選択したと判断した場合(ステップS116でYES)、対応付け処理を行う(ステップS118)。
次に、電波センサ101は、後述する検知判断処理を行う(ステップS120)。
図15は、本発明の実施の形態に係る電波センサが歩行者候補状態処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図15は、図14のステップS114における動作の詳細を示している。
まず、電波センサ101は、選択したデータ集合体について時間更新処理を行う(ステップS202)。
次に、電波センサ101は、時間更新処理の結果に基づいてゲート処理を行い、当該ゲート処理において所定条件C1が満たされた場合、すなわちゲート処理の結果が真である場合(ステップS204でYES)、選択したデータ集合体について観測更新処理を行う(ステップS206)。
次に、電波センサ101は、ゲート処理の結果が偽であるか(ステップS204でNO)、または観測更新処理を行うと(ステップS206)、直近の所定時間TL内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNL以上であるか否かを判断する(ステップS208)。
電波センサ101は、直近の所定時間TL内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNLより小さいと判断すると(ステップS208でNO)、選択したデータ集合体を追跡結果表401から削除して歩行者候補状態処理を終了する。
一方、電波センサ101は、直近の所定時間TL内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNL以上であると判断すると(ステップS208でYES)、以下の処理を行う。
すなわち、電波センサ101は、直近の所定時間TM内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNM以上であるか否かを判断する(ステップS212)。
電波センサ101は、直近の所定時間TM内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNMより小さいと判断すると(ステップS212でNO)、歩行者候補状態処理を終了する。
一方、電波センサ101は、直近の所定時間TM内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNM以上であると判断すると(ステップS212でYES)、以下の処理を行う。
すなわち、電波センサ101は、選択したデータ集合体が所定条件C2を満たす場合、すなわち選択したデータ集合体に対応する物体が停止している場合(ステップS214でYES)、選択したデータ集合体を追跡結果表401から削除し、当該データ集合体を停止物一覧表402に追加する。そして、電波センサ101は、歩行者候補状態処理を終了する(ステップS216)。
一方、電波センサ101は、選択したデータ集合体に対応する物体が停止していない場合(ステップS214でNO)、選択したデータ集合体の追跡状態を歩行者状態に設定し、歩行者候補状態処理を終了する(ステップS218)。
図16は、本発明の実施の形態に係る電波センサが歩行者状態処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図16は、図14のステップS112における動作の詳細を示している。
まず、電波センサ101は、選択したデータ集合体について時間更新処理を行う(ステップS302)。
次に、電波センサ101は、時間更新処理の結果に基づいてゲート処理を行い、当該ゲート処理において所定条件C1が満たされた場合、すなわちゲート処理の結果が真である場合(ステップS304でYES)、選択したデータ集合体について観測更新処理を行う(ステップS306)。
次に、電波センサ101は、ゲート処理の結果が偽であるか(ステップS304でNO)、または観測更新処理を行うと(ステップS306)、直近の所定時間TN内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNN以上であるか否かを判断する(ステップS308)。
電波センサ101は、直近の所定時間TN内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNNより小さいと判断すると(ステップS308でNO)、選択したデータ集合体を追跡結果表401から削除して歩行者状態処理を終了する。
一方、電波センサ101は、直近の所定時間TN内の各ゲート処理において、所定条件C1が満たされた回数がNN以上であると判断すると(ステップS308でYES)、歩行者状態処理を終了する。
図17は、本発明の実施の形態に係る電波センサが検知判断処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図17は、図14のステップS120における動作の詳細を示している。
まず、電波センサ101は、検知困難な領域が存在するか否かを判断する。具体的には、電波センサ101は、停止物一覧表402においてデータ集合体が含まれるか否かを確認する(ステップS402)。
次に、電波センサ101は、検知困難な領域が存在しないと判断した場合(ステップS402でNO)、追跡結果表401においてデータ集合体が含まれるか否かを確認する(ステップS404)。
次に、電波センサ101は、追跡結果表401においてデータ集合体が含まれないと確認した場合(ステップS404でNO)、検知状態を歩行者なし状態に設定するとともに、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在しないと判断し、検知判断処理を終了する(ステップS406)。
一方、電波センサ101は、追跡結果表401においてデータ集合体が含まれると確認した場合(ステップS404でYES)、以下の処理を行う。
すなわち、電波センサ101は、所定条件C4を満たすデータ集合体が追跡結果表401に含まれる場合、すなわち追跡状態が歩行者状態であり、かつ対応の物体が横断歩道PC1に位置するデータ集合体が追跡結果表401に含まれる場合(ステップS408でYES)、検知状態を歩行者あり状態に設定するとともに、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在すると判断し、検知判断処理を終了する(ステップS410)。
一方、電波センサ101は、検知困難な領域が存在すると判断するか(ステップS402でYES)、または所定条件C4を満たすデータ集合体が追跡結果表401に含まれないと判断すると(ステップS408でNO)、検知状態を未確定状態に設定する(ステップS412)。
次に、電波センサ101は、2周波CW結果情報を取得する(ステップS414)。
次に、電波センサ101は、取得した2周波CW結果情報の内容が所定条件C3を満たす場合(ステップS416でYES)、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在すると判断し、検知判断処理を終了する(ステップS420)。
一方、電波センサ101は、取得した2周波CW結果情報の内容が所定条件C3を満たさない場合(ステップS416でNO)、横断歩道PC1において歩行者Tgt2が存在しないと判断し、検知判断処理を終了する(ステップS418)。
なお、本発明に実施の形態に係る電波センサでは、測定部46は、対象エリアA1における物体の位置を定期的に測定可能な構成であるとしたが、これに限定するものではない。測定部46は、対象エリアA1における物体の位置を不定期に測定可能な構成であってもよい。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、第1の所定条件と第2の所定条件とが同じであるとしたが、これに限定するものではない。第1の所定条件と第2の所定条件とは、異なってもよい。具体的には、たとえば、歩行者候補状態のデータ集合体に対して行うゲート処理に用いるしきい値とは異なるしきい値を、歩行者状態のデータ集合体に対して行うゲート処理に用いてもよい。
ところで、特許文献1に記載の物体識別装置では、音波または電磁波の照射処理および検出処理と、画像処理とを用いて物体の種別を識別するため、装置の構成が複雑になり、かつコストがかかるという問題がある。
また、特許文献2に記載の歩行者感知器では、検知領域である上記境界を歩道側から車道側に向かって通過する歩行者の有無について検知を行うことが可能であるが、車道側の横断歩道における歩行者について検知を行うことが困難である。
これに対して、たとえば、横断歩道を含む対象エリアに電波を送信し、対象エリアから受信した電波に基づいて、横断歩道における歩行者について検知を行う方法が考えられる。
しかしながら、電波センサから離れた場所に歩行者が位置する場合、電波センサが受信する歩行者からの電波の強度が弱いため、電波センサが歩行者を検知することが困難な時間が発生することがある。
また、たとえば、電波センサと歩行者との間を自動車が通過する場合、電波センサの見通し内に歩行者が存在しなくなるため、電波センサは、電波を照射した歩行者からの反射波に基づく検知を行うことが困難となる。
これに対して、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、測定部46は、対象エリアA1における物体の位置を定期的または不定期に測定可能である。演算部45は、過去に推定した物体の位置に基づいて今回の物体の位置を推定する。そして、検知部7は、測定部46によって測定された物体の位置と演算部45によって推定された物体の位置との位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間TM内において所定回数NM以上である場合、物体が検知対象物であると判定する。
このような構成により、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、対象エリアにおける対象物をより正しく検知することができる。また、このように、対象エリアA1における物体の位置を繰り返し測定し、たとえば推定位置の近傍に測定位置が存在する頻度が高い場合、物体が検知対象物であると判定する構成により、推定位置の近傍に測定位置が存在しないことがあっても、物体が検知対象物でないとすぐに判定してしまうことを防ぐことができる。これにより、電波センサ101が受信する検知対象物からの電波の強度が弱かったり、また、電波センサ101と検知対象物との間において自動車Tgt1が通過したりするために、検知対象物の位置を測定することが困難なときがあっても、検知対象物を安定して検知することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、検知部7は、上記位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間TL内において所定回数NLより小さい場合、または物体が検知対象物であると判定した後、上記位置関係が第2の所定条件を満たす回数が、所定時間TN内において所定回数NNより小さい場合、物体が検知対象物でないと判定する。
このように、物体が検知対象物であると判定した後、たとえば推定位置の近傍に測定位置が存在しないことがあっても、物体が検知対象物でないとすぐに判定せずに、推定位置の近傍に測定位置が存在する頻度が低い場合、物体が検知対象物でないと判定する構成により、物体が検知対象物であるにも関わらず当該物体が検知対象物でないと誤って判定する可能性を低減することができる。また、たとえば、推定位置の近傍に測定位置が存在することがあっても、物体が検知対象物であるとすぐに判定せずに、推定位置の近傍に測定位置が存在する頻度が低い場合、物体が検知対象物でないと判定する構成により、物体が検知対象物でないにも関わらず当該物体が検知対象物であると誤って判定する可能性を低減することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、演算部45は、物体の位置、速さおよび移動方向を変数として用いる時系列フィルタを用いて物体の位置を推定する。そして、変数の初期値は、測定部46によって測定された物体の位置に応じた値である。
このように、物体の位置に応じた初期値を変数として用いる時系列フィルタを用いる構成により、物体の位置をより正しく推定することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、送信部1は、FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアA1へ送信可能である。受信部2は、電波を受信する。測定部46は、受信部2によって受信された電波に基づいて、FM−CW方式を用いて物体の位置を測定可能である。そして、検知部7は、測定部46によってFM−CW方式を用いて新たな物体が測定されてから当該新たな物体が検知対象物であると判定するまでの間において、測定部46による2周波CW方式を用いた物体に関する測定結果に基づいて、物体が検知対象物であるか否かを判定する。
このような構成により、FM−CW方式を用いて新たな物体が測定されてから当該物体が検知対象物であると判定するまでの未判定期間を、2周波CW方式を用いた判定で補うことができるので、判定漏れのない検知を実現することができる。
ここで、たとえば、図2に示すように、反射断面積の大きい自動車Tgt1が、自己の一部が対象エリアA1に含まれるように停止する場合、自動車Tgt1の近傍が歩行者Tgt2の検知困難領域RDとなる。ここで、検知困難領域RDは、たとえば電波センサ101の距離分解能および角度分解能に基づいて定まる。歩行者Tgt2が検知困難領域RDに位置する場合、電波センサ101は、自動車Tgt1からの強い反射波および歩行者Tgt2からの弱い反射波を重ね合わせた電波を受信するため、これらの反射波を分離することが困難となる。したがって、電波センサ101は、検知困難領域RDに位置する歩行者Tgt2を検知することが困難となる。
これに対して、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、送信部1は、FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアA1へ送信可能である。受信部2は、電波を受信する。測定部46は、受信部2によって受信された電波に基づいて、FM−CW方式を用いて物体の位置を測定可能である。そして、検知部7は、対象エリアA1において、停止した物体である停止物が測定部46によってFM−CW方式を用いて測定された場合、測定部46による2周波CW方式を用いた、停止物と異なる物体に関する測定結果に基づいて、停止物と異なる物体が検知対象物であるか否かを判定する。
このような構成により、停止物が対象エリアA1に存在することで、停止物の近傍に検知対象物の検知困難領域が発生し、たとえば、検知対象物が検知困難領域に存在するにも関わらず推定位置の近傍に測定位置が存在しない状況が継続する場合においても、電波センサ101に対する速度成分を有する物体すなわち移動している物体を良好に検知可能な2周波CW方式を用いて物体を測定することができるので、検知困難領域において移動する物体について、検知対象物であるか否かを正しく判定することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサ101は、推定部を備えず、かつ検知部7が、測定部46によって測定された物体の位置と推定部によって推定された物体の位置との位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数以上であるという条件を用いない構成であってもよい。
具体的には、本発明の実施の形態に係る電波センサでは、送信部1は、FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアへ送信可能である。受信部2は、電波を受信する。測定部46は、受信部2によって受信された電波に基づいて、対象エリアA1における物体の位置を定期的または不定期に測定可能である。そして、検知部7は、対象エリアA1において、停止した物体である停止物が測定部46によってFM−CW方式を用いて測定された場合、測定部46による2周波CW方式を用いた、停止物と異なる対象エリアA1における物体である移動物に関する測定結果に基づいて、移動物が検知対象物であるか否かを判定する。
このような構成により、画像処理を行うことなく対象物を検知することができるので、電波センサを低コストかつ簡易な構成にすることができる。したがって、簡易かつ低コストな構成で、対象エリアにおける対象物をより正しく検知するという本発明の目的を達成することが可能である。また、このように、停止車両および電柱といった停止物を検知可能である一方で、停止物が対象エリアA1に存在することで、停止物の近傍に検知対象物の検知困難領域RDが発生し、検知困難領域RDにおける物体を検知することが困難なFM−CW方式により停止物が測定された場合に、停止物を検知することが困難である一方で、停止物の近傍において移動している移動物を検知することが可能な2周波CW方式を用いて、移動物が検知対象物であるか否かを判定する構成により、これらの方式の弱点を互いに補完することができるので、たとえば、車両が停止物として停止線を越えた位置に存在することで、車両の近傍に検知困難領域RDが発生した場合においても、検知困難領域RDにおいて移動する物体について、歩行者Tgt2であるか否かを正しく判定することができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
対象エリアにおける物体の位置を定期的または不定期に測定可能な測定部と、
過去に推定した前記物体の位置に基づいて今回の前記物体の位置を推定する推定部と、
前記測定部によって測定された前記物体の位置と前記推定部によって推定された前記物体の位置との位置関係が第1の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数以上である場合、前記物体が検知対象物であると判定する検知部とを備え、
前記対象エリアは、横断歩道を含み、
前記横断歩道は、交差点付近に設けられ、
前記検知対象物は、人間または自転車であり、
前記測定部は、前記対象エリアにおける物体の位置を定期的に測定可能であり、
前記推定部は、前回以前の回に推定した前記物体の位置に基づいて今回の前記物体の位置を推定し、
前記検知部は、前記物体が前記検知対象物であるか否かを判定する前の未判定状態において、前記測定部によって測定された前記物体の位置と前記推定部によって推定された前記物体の位置との相違に基づく距離が所定値以下であることを満たす回数が、前記所定時間内において前記所定回数以上である場合、前記物体が前期検知対象物であると判定する、電波センサ。
[付記2]
前記検知部は、前記未判定状態において前記位置関係が前記第1の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数より小さい場合、または前記物体が検知対象物であると判定した後、前記位置関係が第2の所定条件を満たす回数が、所定時間内において所定回数より小さい場合、前記物体が検知対象物でないと判定する、付記1に記載の電波センサ。
[付記3]
前記電波センサは、さらに、
FM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を前記対象エリアへ送信可能な送信部と、
電波を受信する受信部とを備え、
前記測定部は、前記受信部によって受信された電波に基づいて、前記FM−CW方式を用いて前記物体の位置を測定可能であり、
前記検知部は、前記対象エリアにおいて、停止した前記物体である停止物が前記測定部によって前記FM−CW方式を用いて測定された場合、前記測定部による前記2周波CW方式を用いた、前記停止物と異なる前記物体に関する測定結果に基づいて、前記停止物と異なる前記物体が検知対象物であるか否かを判定する、付記1または付記2に記載の電波センサ。
[付記4]
FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波および2周波CW方式の変調方式を用いて生成した電波を対象エリアへ送信可能な送信部と、
電波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された電波に基づいて、前記対象エリアにおける物体の位置を定期的または不定期に測定可能な測定部と、
前記対象エリアにおいて、停止した物体である停止物が前記測定部によって前記FM−CW方式を用いて測定された場合、前記測定部による前記2周波CW方式を用いた、前記停止物と異なる前記対象エリアにおける物体である移動物に関する測定結果に基づいて、前記移動物が検知対象物であるか否かを判定する検知部とを備え、
前記対象エリアは、横断歩道を含み、
前記横断歩道は、交差点付近に設けられ、
前記検知対象物は、人間または自転車であり、
前記測定部は、前記対象エリアにおける物体の位置を定期的に測定可能であり、
前記停止物は、車両である、電波センサ。