JP2017155218A - 着色ポリマー微粒子およびその製造方法 - Google Patents

着色ポリマー微粒子およびその製造方法 Download PDF

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友彦 中村
到 浅野
Itaru Asano
到 浅野
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Hiroshi Takezaki
宏 竹崎
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Abstract

【課題】色の分離や脱色がなく、流動性、分散性に優れた材料を提供する。【解決手段】ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂からなるポリマー(A)、ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)、顔料および有機溶媒(C)を混合してポリマー溶液としたときに、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相と、ポリマー(B)を主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルションを形成させた後、ポリマー(A)の貧溶媒を接触させることにより、顔料を内包する着色ポリマー微粒子を析出させることで得られる顔料が偏在化された着色ポリマー微粒子であって、円の中心から半径で0.8倍以内の領域に80%以上の顔料が偏在化している数平均粒子径Dnが1〜200μmである着色ポリマー微粒子であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、顔料を含む着色ポリマー微粒子とその製造方法に関する。詳しくは、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂に顔料が内包されたポリマー微粒子とその製造方法に関する。
ポリマー微粒子とは、ポリマーからなる微粒子のことであり、一般的にその直径は、数十nmから数百μmの大きさである。ポリマー微粒子は、フィルム、繊維、射出成形品、押出成形品などのポリマー成形品とは異なり、比表面積が大きい点や、微粒子の構造を利用することで各種材料の改質、改良に用いられている。主要用途としては、化粧品の改質剤、トナー用添加剤、塗料などのレオロジー改質剤、医療用診断検査剤、自動車材料、建築材料などの成形品への添加剤、3Dプリンタ用粉末原料などが挙げられる。
一方で、これらポリマー微粒子を染料や顔料で着色した着色ポリマー微粒子が、塗料、トナー、化粧品、流体の可視化等種々の分野で利用されている。ポリマー微粒子の着色方法は、染料で染色する方法と顔料による着色に分類されるが、着色安定性の観点から顔料の使用が好ましいとされている。
具体的には、多孔質粒子に顔料を保持させる方法(特許文献1)や、顔料を含有した原料溶液を懸濁重合することで着色ポリマー微粒子を作製する方法(特許文献2および3)が報告されている。しかしながら、いずれの方法においても、粒子の表面付近に存在する顔料が脱離することで、色の分離、脱色や色移りなどが発生するという問題が未解決であった。
特開2006−274250号公報 特開平2−187402号公報 特開2013−76040号公報
本発明は、色の分離や脱色を抑制すると同時に流動性、分散性に優れた材料を提供することを課題とし、さらには、従来の方法に比べ、簡便でかつ、均一な粒子径分布を有する着色ポリマー微粒子の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、下記発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記を特徴とする。
<1>顔料を含むABS樹脂またはポリカーボネート樹脂からなるポリマー(A)の微粒子であって、その中心から半径の0.8倍以内の領域に80%以上の顔料が偏在化し、数平均粒子径Dnが1〜200μmであることを特徴とする着色ポリマー微粒子。
<2>粒子径分布指数PDIが1〜3であることを特徴とする<1>に記載の着色ポリマー微粒子。
<3>平均真球度が80以上であることを特徴とする<1>または<2>に記載の着色ポリマー微粒子。
<4>前記顔料の含有量が、前記ポリマー(A)に対して0超〜50質量%以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の着色ポリマー微粒子。
<5>ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂からなるポリマー(A)、ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)、顔料および有機溶媒(C)を混合してポリマー溶液としたときに、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相と、ポリマー(B)を主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルションを形成させた後、ポリマー(A)の貧溶媒を接触させることにより、顔料を内包する着色ポリマー微粒子を析出させることを特徴とする着色ポリマー微粒子の製造方法。
本発明により、従来技術では入手困難であった、顔料が粒子の中心部に偏在化しており、真球状で粒子径が揃ったABSまたはポリカーボネートからなるポリマー微粒子を得ることができる。
本発明の着色ポリマー微粒子は、顔料が微粒子を構成するポリマー深部に選択的に内包された着色粉末であるため、粒子表面付近の顔料脱離による色の分離、脱色や色移りが発生しない。さらに粒子径が微細かつ均一で真球なため流動性と分散性に優れるという特徴を有する。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の顔料を含むABS樹脂またはポリカーボネート樹脂であるポリマー(A)の微粒子とは、顔料が内包されたABS樹脂またはポリカーボネート樹脂からなるポリマー微粒子のことであり、顔料によって着色されたことを特徴とする顔料内包着色ポリマー粒子である。
本発明で好ましく用いられるABS樹脂とは、ゴム質重合体により耐衝撃性が付与されたスチレン系共重合体を含有する樹脂であり、なかでも、ゴム質重合体90〜5質量部に対し、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、及びアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物の共重合体を10〜95質量部用いることが好ましい。ビニル系単量体混合物の内、芳香族ビニル系単量体5〜70質量%、シアン化ビニル系単量体0〜50質量%であることが好ましく、これらと共重合可能な他の単量体を0〜50質量%含有していても構わない。
芳香族ビニル系単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレンおよび2,6−ジクロロスチレン等が挙げられるが、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニル系単量体の例として、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタクリロニトリル等が挙げられるが特にアクリロニトリルが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
また、これらと共重合可能な他の単量体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド等の不飽和アミドなどが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
またゴム質重合体としては特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどが例示され、具体的には、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソブチレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)、ポリ(エチレン−アクリル酸エチル)などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用される。なかでもポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合ゴムが耐衝撃性改善効果の点から特に好ましく用いられる。
このゴム質重合体の平均粒子径は、得られるABS樹脂の耐衝撃性、成形加工性、外観の点から0.1〜1.5μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.15〜1.2μmである。
またゴム質重合体のスチレン系共重合体への分散性向上の観点から、ゴム質重合体にビニル系単量体混合物をグラフトさせることが好ましい。このゴム質重合体含有グラフト共重合体のグラフト成分の重合原料となるビニル系単量体混合物の組成は特に制限されないが、得られるABS樹脂の透明性および耐衝撃性と剛性との物性バランスの点から、芳香族ビニル系単量体5〜70質量%、シアン化ビニル系単量体0〜50質量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜50質量%を含有してなることが好ましい。このビニル系単量体混合物を構成する単量体組成は、前記したビニル系単量体混合物と同一であっても異なっていてもよい。
ゴム質含有グラフト共重合体の極限粘度は特に制限はないが、0.05〜1.2dl/gが耐衝撃性および成形性のバランスの点から好ましく、さらには0.1〜0.7dl/gがより好ましい。
このゴム質含有グラフト共重合体は、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体混合物をグラフト重合してなるものであるが、ビニル系単量体混合物全量がグラフトしている必要はなく、通常はグラフトしていない共重合体との混合物として得られたものを使用する。この混合物は、本来は組成物であるが、本発明においては便宜上まとめてゴム質含有グラフト共重合体という。ゴム質含有グラフト共重合体のグラフト率に制限はないが、耐衝撃性の点から好ましくは5〜150質量%、より好ましくは10〜100質量%のものが使用される。
ゴム質含有グラフト共重合体中のゴム質重合体の割合は、得られる樹脂組成物の機械的強度および成形性の観点から好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは20〜70質量部である。
ゴム質含有グラフト共重合体製造時のグラフト重合の方法として、制限はないが、公知の乳化重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合法等の任意の方法により製造でき、好ましくは乳化重合法または塊状重合法で製造される。なかでも、過度の熱履歴によるゴム成分の劣化および着色を抑制するため、乳化重合法で製造されることが最も好ましい。
ABS樹脂の分子量や分子量分布は、実質的に有機溶媒(C)に溶解可能であれば、特に限定されるものではないが、粒子構造を維持しやすいという点で、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは1万5千以上、さらに好ましくは2万以上、特に好ましくは5万以上、最も好ましくは10万以上である。上限は特に制限されないが、100万以下である。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン(PS)換算の重量平均分子量である。
本発明で好ましく用いられるポリカーボネート樹脂とは、炭酸エステル結合であるカーボネート基を有したポリマーであり、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネートなどが挙げられるが、例えば、下記一般式で代表される構造を有するものが挙げられる。
ここで、R及びRは、各々独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又はハロゲン基を示し、m及びnは各々独立に0〜4の整数を示し、Xは、直接結合、酸素、硫黄、SO、SO、CR(ここでR及びRは、各々独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基を示し、互いに同一でも異なっていても構わない。)、炭素数5〜11のシクロアルキリデン基、炭素数2〜10のアルキレン基、ポリジメチルシロキサン基、又はトリフルオロメチル基で示す構造で表される繰り返し単位である。
置換基R及びRの具体例に関し、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、シクロペンチルメチル基などを挙げることができ、前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基などを挙げることができ、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、4−ビフェニル基、3−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、エチルナフチル基などを挙げることができ、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができる。
XのCRの内、R及びRの具体例に関し、水素原子、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、シクロペンチルメチル基などを挙げることができ、前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基などを挙げることができ、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、4−ビフェニル基、3−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、エチルナフチル基などを挙げることができる。
入手の容易さ、コストの観点から、R及びRは、水素原子であることが好ましく、Xは、CRの内、R及びRがメチル基、あるいは水素原子であることが好ましく、最も好ましくは、メチル基である。
ポリカーボネート樹脂の分子量や分子量分布は、実質的に有機溶媒(C)に溶解可能であれば、特に限定されるものではないが、粒子構造を維持しやすく、耐加水分解性が向上するという点で、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは1万5千以上、さらに好ましくは2万以上、特に好ましくは3万以上、最も好ましくは5万以上である。上限は特に制限されないが、100万以下であり、好ましくは50万以下であり、さらに好ましくは30万以下であり、特に好ましくは10万以下である。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン(PS)換算の重量平均分子量である。
本発明における顔料とは、水や有機溶媒に対して溶解性が小さい着色料である。水や有機溶媒に可溶な染料と比較して劣化しにくい特徴があり、塗料、インク、織物、化粧品、食品などの着色に広く用いられている。顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料等を用いることができるが、耐熱性、透明性の面から有機顔料が好ましい。中でも透明性が高く、耐光性、耐熱性、耐薬品性に優れたものが好ましい。代表的な有機顔料の具体的な例をカラ−インデックス(CI)ナンバ−で示すと、次のようなものが好ましく使用されるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
赤色顔料の例としては、ピグメントレッド(以下PRと略す)9、48、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254などが使用される。
また、緑色顔料の例としては、ピグメントグリ−ン(以下PGと略す)7、10、36、58などが使用される。また、黄色顔料の例としては、ピグメントイエロ−(以下PYと略す)12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、125、129、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、185などが使用される。
また、青色顔料の例としては、ピグメントブルー(以下PBと略す)15:3、15:4、15:6、21、22、60、64などが使用される。また、バイオレット顔料としてはピグメントバイオレット(以下PVと略す)19、23、29、30、37、40、50などが使用される。
これらの顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性処理、塩基性処理などの表面処理がされていてもかまわず、耐光性や耐溶剤性を損なわない程度に染料を含むことができる。
上記顔料は、例えばカラ−フィルタ−のR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)3色の画素が、CRT(陰極線管)蛍光体の色度特性、バックライトや液晶ディスプレイに用いる液晶特性に合うように、数色組み合わせて調色され使用することもできる。
R(レッド)の場合を例にあげると、PR−254とPR−177の組合せ、PR−254とPY−138の組合せ、PR−254とPY−139の組合せ等で色度が調色される。G(グリーン)の場合は、PG−7やPG−36と上記黄色顔料、例えば、PY−17、PY−83の組合せやPY−138の組合せ、PY−139の組合せ、PY−150の組合せ等で色度が調色される。
本発明における着色ポリマー微粒子とは、顔料がポリマー微粒子の内部に含まれていることを意味する。このとき、すべての顔料がポリマー微粒子の内部に分散していても良いし、内部に偏在化していても良いし、内包されているだけでなく一部がポリマー微粒子の表面に容易に分離しない状態で固定化されていても良いが、表面付近の顔料脱離による色の分離、脱色や色移りなどを極めて抑制可能なことから顔料が内部に偏在化していることが好ましい。
特に着色ポリマー微粒子の内部に偏在化している顔料がポリマー微粒子の中心から半径で0.8倍以内の領域に内在している割合が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上である。
着色ポリマー微粒子の内部に偏在化している顔料の割合(UD)は、デジタルマイクロスコープで得られる画像を用いて、無作為に選択した10個の粒子における、顔料の総面積(A)に対するポリマー微粒子の中心から半径で0.8倍の面積中の顔料の面積(A0.8)の割合の算術平均値として以下の式から算出した。
なお、UD:ポリマー微粒子の中心から0.8倍以内の領域に内在している顔料の割合、Ai:微粒子個々の顔料の総面積、A0.8i:微粒子個々の微粒子中心から0.8倍以内の領域における顔料の面積、n:測定数10である。
顔料の内包される量としては特に制限されないがポリマー(A)に対して0超〜50質量%である。顔料の内包される量がポリマー(A)に対して多すぎると脱離する顔料が発生してしまうことから、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。また顔料の内包される量がポリマー(A)に対して少なすぎると、ポリマー微粒子が着色されないことから、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは1質量%以上である。
本発明で得られる着色ポリマー微粒子は、数平均粒子径Dnが1〜200μmである。数平均粒子径Dnの下限としては、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。また、数平均粒子径Dnの上限としては、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。
数平均粒子径が下限未満になると、取扱い性が低下する場合がある。数平均粒子径が上限を超えると、粒子径分布が広くなるので好ましくない。
着色ポリマー微粒子の数平均粒子径Dnは、走査型電子顕微鏡(FE−SEM、例えば、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)を用いて着色ポリマー微粒子を観察し、無作為に選択した100個の着色ポリマー微粒子についてその直径(粒子径)を測長した算術平均値である。
具体的には、粒子径のバラつきを反映した正確な数平均粒子径を求めるために、1枚の画像に2個以上100個未満の微粒子が写るような倍率で観察し、粒子径を測長する。続いて、下記式により100個の微粒子の粒子径につき、その算術平均を求めることで数平均粒子径を算出する。そのようなFE−SEMの倍率としては、粒子径にも依るが、100倍〜5,000倍の範囲とすることができる。具体的に例示するならば、着色ポリマー微粒子の粒子径が1μm以上3μm未満の場合は5,000倍、3μm以上5μm未満の場合は3,000倍以上、5μm以上10μm未満の場合は1,000倍以上、10μm以上50μm未満の場合は500倍以上、50μm以上100μm未満の場合は250倍以上、100μm以上200μm以下の場合は100倍以上である。なお、画像上で微粒子が真円状でない場合(例えば楕円状のような場合や、微粒子が不規則に寄せ集まった凝集体を形成している場合)は、その最長径を粒子径として測定する。
なお、Ri:微粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径とする。
本発明の着色ポリマー微粒子の粒子径分布の広さを示す指標である粒子径分布指数(PDI)としては、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2.5であり、さらに好ましくは1〜2.0であり、特に好ましくは1〜1.8であり、著しく好ましくは1〜1.6である。なお、粒子径分布指数PDIの下限値は理論上1である。粒子径分布指数が1に近いほど、粒子径のそろった均一な粒子であることを示す。粒子径分布指数が上記範囲より大きいと、粒子径分布が広くなり、均一な粒子径を有しないので好ましくない。均一な粒子径は、ポリマーアロイ用添加剤、光拡散剤、液晶用スペーサー、トナー、触媒担持体などに適用する場合、予期した以上の性能を発現することがあるため好ましい。
着色ポリマー微粒子の粒子径分布指数PDIは、数平均粒子径の算出時に行った粒子径の測長結果を用いて、次の式により算出される。
なお、Ri:微粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
本発明の着色ポリマー微粒子の真球度は、80以上であることが好ましく、より好ましくは85以上、さらに好ましくは90以上、特に好ましくは95以上、著しく好ましくは97以上である。真球度が高いと、着色ポリマー微粒子の流動性や充填性、すべり性、触感が向上するため好ましい。
本発明における着色ポリマー微粒子の真球度とは、走査型電子顕微鏡にて、無作為に選択した粒子30個の真球度Siの算術平均値であり、下記式に従い算出される平均真球度Snを指す。真球度Siは、個々の粒子の短径aiと、それと垂直に交わる長径biの比であり、下記式に従い算出される。
なお、Sn:平均真球度、Si:微粒子個々の真球度、ai:微粒子個々の短径、bi:微粒子個々の長径、n:測定数30とする。
また、本発明の着色ポリマー微粒子は、所望の分散媒に分散させ、分散液とすることができる。
ポリマー樹脂が溶解しない範囲において分散液の分散媒を特に選ぶものではないが、脂肪族系炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、カルボン酸系溶媒、エーテル系溶媒、イオン性液体、水などが挙げられる。
これら溶媒として、次のものが具体的に例示される。脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、シクロペンタンが挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。カルボン酸溶媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、アニソール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等が挙げられる。イオン性液体としては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロゲンスルフェート、1−エチル−3−イミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートなどが挙げられる。
ポリマー微粒子との親和性に起因する分散性の良さと産業上での取扱いやすさの両者の観点から、これらの中でも好ましい溶媒としては、アルコール系溶媒、水であり、より好ましいものとしては、水である。なお、これらの溶媒は、複数種を混合して用いても良い。
また、本発明の着色ポリマー微粒子は、所望の樹脂に分散させ、樹脂組成物とすることができる。
着色ポリマー微粒子の製造方法は、本発明の着色ポリマー微粒子が得られるのであれば、従来公知の技術を用いて良い。例えば、ポリマー樹脂と顔料を溶融混練しマスターバッチ樹脂組成物とした後に、その樹脂組成物をボールミル、ビーズミル、ジェットミルあるいは乳鉢等の機械的粉砕処理によって粉末とする方法、前記マスターバッチと海成分樹脂とを溶融混練させ、海成分のみを除去させる強制溶融混練法、高揮発性溶媒のポリマー溶液に顔料を懸濁させた液をスプレードライして微粒子とする方法、ポリマー溶液と顔料を懸濁させた液を冷却して析出させる方法等が挙げられる。その中でも、高分子溶液の相分離現象を利用した以下に示す微粒子化方法によって得るのが最も好ましい。高分子溶液の相分離現象を利用した微粒子化方法を採用することで、粒子径分布指数が小さい微粒子を得ることができ、また、真球度の高い微粒子を得ることができる点で好ましい。
高分子溶液の相分離現象を利用した微粒子化法とは、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂からなるポリマー(A)、ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)、顔料および有機溶媒(C)を混合してポリマー溶液としたときに、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相と、ポリマー(B)を主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相が分散相、ポリマー(B)を主成分とする溶液相が連続相になるエマルションを形成させた後、該エマルションにポリマー(A)の貧溶媒を接触させることで、顔料が内包された着色ポリマー微粒子を析出させる方法である。
ここで、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂であるポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相(以下、ポリマー(A)溶液相と呼ぶ)とは、(i)ポリマー(A)およびポリマー(B)の2種のポリマーのうちポリマー(A)を主として分配された溶液相と、(ii)ポリマー(A)およびポリマー(B)の2種のポリマーのうちポリマー(B)を主として分配された溶液相とに相分離する系において、前記(i)のポリマー(A)を主として分配された溶液相に顔料を含む溶液相である。また、ポリマー(B)を主成分とする溶液相(以下、ポリマー(B)溶液相と呼ぶ)とは、前記(ii)のポリマー(B)が主として分配された溶液相である。
ポリマー(A)とポリマー(B)と有機溶媒(C)を成分として、前記(i)のポリマー(A)を主として分配された溶液相と、前記(ii)ポリマー(B)を主として分配された溶液相とに相分離する系において、第四の成分として顔料を加えた場合に、少なくとも一部の顔料が、前記(i)のポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれる系を用いることで、本発明の着色ポリマー微粒子を得ることができる。
なお、顔料はポリマー(A)とポリマー(B)が有機溶媒(C)に溶解した溶液に加えても良いし、顔料をポリマー(A)とポリマー(B)と有機溶媒(C)の混合物に加えてからポリマー(A)とポリマー(B)を溶解して溶液にしても良く、いずれの方法においても、顔料が前記(i)のポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれる系を用いることで、本発明の着色ポリマー微粒子を得ることができる。
つまり、「ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂であるポリマー(A)、ポリマー(B)、顔料および有機溶媒を混合してポリマー溶液としたときに、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相と、ポリマー(B)を主成分とする溶液相の2相に相分離する系」とは、ポリマー(A)とポリマー(B)と有機溶媒(C)と顔料を混合したときに、顔料を含むポリマー(A)溶液相と、ポリマー(B)溶液相の2相に分かれる系をいう。本発明の着色ポリマー微粒子を得るには、このときに、顔料が前記(i)のポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれることが重要であり、一部の顔料が前記(ii)ポリマー(B)を主として分配された溶液相に含まれていてもよい。
顔料が前記(i)のポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれるためには、顔料、ポリマー(A)、ポリマー(B)、溶媒の組み合わせが重要であり、顔料がポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれる顔料、ポリマー(A)、ポリマー(B)、溶媒の組合せを選択することが好ましい。顔料が前記(i)のポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれるための条件としては、顔料のポリマー(A)との親和性が高いことや、溶媒中で分散性が優れていることが挙げられる。
本発明において、詳しい機構は不明であるが、特に顔料の分散性が優れている場合に、顔料が前記(i)のABS樹脂またはポリカーボネート樹脂であるポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれ、顔料が内部に偏在化した着色ポリマー微粒子が得られることがわかった。ここで、顔料の分散性が優れているとは、溶媒中で巨視的に均質化することを示し、分子の極性などの効果によって他の分子と相互作用して、凝集、沈殿しにくい物質であることを示す。
顔料の分散性を判断する方法としては、たとえば、具体的には化合物の分子構造から後述するLogSや疎水性溶媒と水へ分配したときの濃度比の対数値であるLogP、SP値(Solubility Parameter値)などを推算する方法、顔料を分散できる界面活性剤を実験的に特定し、顔料のHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance値)やSP値などを算出する方法、顔料のゼータ電位を測定して静電反発力を明らかにする方法などが挙げられる。適用可能な顔料の種類が多いという観点から、顔料を界面活性剤を用いて分散させ、そのHLB値とSP値から判定する方法、および顔料の分子構造を元にLogP、SP値を推算する方法が好ましく、簡便であるという点から、顔料の分子構造を元にLogS、SP値を推算する方法がより好ましい。
SP値を推算する方法としては、Fedorsの方法、Hildebrandの方法、Hansenの方法などがあるが、ここでいう顔料の分散性を判定するためのSP値としては、顔料が低分子である点、分散、分極、水素結合の3つのエネルギーパラメーターから推算でき、より正確な分散性が判定できるという観点から、Hansenの方法によるSP値を用いるのがより好ましい。
なお、本発明において、分散性の判断にはHansenの方法によるSP値を用いて算出されるLogSを用いることが好ましい。LogSとは、100gの水に溶解する質量の常用対数値であり、その物質の吸着性や分散性を判定するのに有効なパラメーターである。本発明においてLogSは、ChemDraw Professional Ver.15.0(PerkinElmer社)において分子構造を作成し、Chemical Propertiesによって計算された値を示す。
顔料のLogSの下限としては、−10.0以上が好ましく、より好ましくは−9.0以上、さらに好ましくは−8.5以上、特に好ましくは−8.0以上である。LogSが−10未満である場合、分散性が低く、顔料がポリマー(A)を主として分配された溶液相に含まれにくくなるため、好ましくない。またその上限は特に制限されないが、水溶性であると色の分離や脱色、滲みなどが発生しやすくなるという観点から、−2.0以下が好ましく、より好ましくは−3.0以下、さらに好ましくは−4.0以下、特に好ましくは−5.0以下である。顔料のLogSがこの範囲となる顔料を用いることで、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂であるポリマー(A)、ポリマー(B)、顔料および有機溶媒を混合してポリマー溶液としたときに、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相と、ポリマー(B)を主成分とする溶液相の2相に相分離する系とすることができる。
前記ポリマー(B)としては、ポリマー(A)とは異なるポリマーのうち、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられるが、有機溶媒(C)に溶解しやすいという観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(完全ケン化型や部分ケン化型のポリビニルアルコールであってもよい)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。得られる着色ポリマー微粒子の粒子径分布が狭くなることから、好ましくはポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(完全ケン化型や部分ケン化型のポリビニルアルコールであってもよい)である。
ポリマー(B)の分子量については、重量平均分子量1,000以上のものを使用することが好ましく、そのようなポリマー(B)を用いることで、ポリマー(A)溶液相と、ポリマー(B)溶液相の2相への相分離が誘発され、エマルションが形成されることで、真球度80以上の着色ポリマー微粒子が得られる。ポリマー(B)の分子量は、重量平均分子量で1,000〜10,000,000の範囲であることが好ましい。より好ましい上限としては5,000,000以下、さらに好ましくは2,000,000以下であり、特に好ましい上限は1,000,000以下である。また、相分離が起こりやすくなる観点から、より好ましい下限は1,000以上、さらに好ましくは5,000以上であり、特に好ましい下限は10,000以上である。
ここでいう重量平均分子量とは、溶媒として水を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリエチレングリコールで換算した重量平均分子量を指す。溶媒として、水で測定できない場合においてはジメチルホルムアミドを用い、それでも測定できない場合においてはテトラヒドロフランを用い、さらに測定できない場合においてはヘキサフルオロイソプロパノールを用いる。
有機溶媒(C)とは、ポリマー(A)および前記ポリマー(B)を溶解する溶媒である。ここで、ポリマーを溶解する溶媒とは、実際に実施する温度、すなわちポリマー(A)とポリマー(B)を溶解混合させる温度において、有機溶媒(C)に対し、ポリマー(A)およびポリマー(B)を1質量%超溶解することを意味する。有機溶媒(C)は、貧溶媒を接触させ着色ポリマー微粒子を得る工程での温度において、ポリマー(A)を少なくとも準安定的に溶解できることが好ましい。ポリマー(A)溶液相の有機溶媒(C)と、ポリマー(B)溶液相の有機溶媒(C)とは、同一でも異なっていても良いが、実質的に同じ溶媒であることが好ましい。
好ましい溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム等の有機アミド系溶媒である。これらの溶媒は、複数種用いても単独で用いてもかまわない。ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂の溶解度の観点からN−メチル−2−ピロリドンがより好ましい。
ポリマー(A)の貧溶媒とは、溶媒に対するポリマー(A)の溶解度が1質量%以下のものを言い、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
貧溶媒としては、ポリマー(A)の貧溶媒であり、かつポリマー(B)を溶解する溶媒であることが好ましい。これにより、ポリマー(A)と顔料を含む着色ポリマー微粒子を効率よく析出させることができる。また、前記有機溶媒(C)と貧溶媒とは均一に混合する溶媒であることが好ましい。
具体的には、ポリマー(A)とポリマー(B)の種類によって変わるが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒および水の中から少なくとも1種類から選ばれる溶媒等が挙げられる。着色ポリマー微粒子を効率的に得る観点から、好ましくは、アルコール系溶媒あるいは水であり、より好ましいものは水である。
相分離状態になりやすい条件を得るためには、ポリマー(A)とポリマー(B)のSP値の差が離れていた方が好ましい。この際、SP値の差としては1(J/cm1/2以上、より好ましくは2(J/cm1/2以上、さらに好ましくは3(J/cm1/2以上、特に好ましくは5(J/cm1/2以上、著しく好ましくは8(J/cm1/2以上である。SP値がこの範囲であれば、容易に相分離しやすくなり、また相分離がしやすくなることから、ポリマー(A)の含有率のより高い着色ポリマー微粒子を得ることができる。ポリマー(A)とポリマー(B)の両者が有機溶媒(C)に溶解するのであれば特に制限はないが、SP値の差の上限としては、好ましくは20(J/cm1/2以下、より好ましくは15(J/cm1/2以下であり、さらに好ましくは10(J/cm1/2以下である。
なお、ここでいうSP値とは、Fedorsの推算法に基づき計算されるものであり、凝集エネルギー密度とモル分子容を基に計算されるもの(以下、計算法と称することもある)である(「SP値 基礎・応用と計算方法」 山本秀樹著、株式会社情報機構、平成17年 3月 31日発行)。本方法により計算できない場合においては、溶解度パラメーターが既知の溶媒に対し溶解するか否かの判定による、実験法によりSP値を算出(以下、実験法と称することもある)し、それを代用する(「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」 ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行)。
相分離状態になる条件を選択するためには、ポリマー(A)、ポリマー(B)およびこれらを溶解する有機溶媒(C)の3成分の比率を変化させた状態の観察による簡単な予備実験で作成可能な3成分相図で判別ができる。
相図の作成は、ポリマー(A)、ポリマー(B)および有機溶媒(C)を任意の割合で混合溶解させ、静置を行った際に、界面が生じるか否かの判定を少なくとも3点以上、好ましくは5点以上、より好ましくは10点以上の点で実施し、2相に分離する領域および1相になる領域を峻別することで、相分離状態になる条件を見極めることができるようになる。
この際、相分離状態であるかどうかを判定するためには、ポリマー(A)およびポリマー(B)を、実際にエマルションを形成させる際の温度および圧力において、ポリマー(A)、ポリマー(B)および有機溶媒(C)を任意の比に調整し、ポリマー(A)およびポリマー(B)を完全に溶解させた後に十分な攪拌を行い、3日静置し、巨視的に相分離をするかどうかを確認する。しかし、十分に安定なエマルションになる場合においては、3日放置しても巨視的な相分離をしない場合がある。その場合は、光学顕微鏡・位相差顕微鏡等を用い、微視的に相分離しているかどうかで相分離を判別する。
顔料がポリマー(A)溶液相に含まれるかどうかを判定するためには、上記の相分離状態の確認を行った後に、相分離が確認されたポリマー(A)、ポリマー(B)および有機溶媒(C)の任意の比に対し、顔料を任意の量だけ加え、実際にエマルションを形成させる際の温度および圧力で顔料が分散したポリマー溶液を十分に撹拌した後、静置することでポリマー溶液の相分離を促し、ポリマー(A)を主とする溶液相が顔料によって着色されるかどうかを目視で確認して行う。
有機溶媒(C)に対するポリマー(A)およびポリマー(B)の濃度は、有機溶媒(C)に溶解する可能な限りの範囲内であることが前提であるが、全質量に対して好ましくは、それぞれその下限は1質量%超であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。また、それぞれの上限は50質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
相分離して得られるポリマー(A)溶液相とポリマー(B)溶液相の2相間の界面張力は、両相とも有機溶媒を主とするから、その界面張力が小さく、その性質により、生成するエマルションが安定であり、液滴径分布の非常に狭いエマルションが得られることから、得られる着色ポリマー微粒子の粒子径分布が狭くなると考えられる。この傾向は、有機溶媒(C)として単一溶媒を用いて、ポリマー(A)およびポリマー(B)の両方を溶解して相分離させる際に顕著である。
相分離した2相間の界面張力は、界面張力が小さすぎることから、通常用いられる溶液に異種の溶液を加えて測定する懸滴法等では直接測定することはできないが、各相の空気との表面張力から推算することにより、界面張力を見積もることができる。各相の空気との表面張力をr、rとした際、その界面張力r1/2は、r1/2=r−rの絶対値で推算することができる。
この際、このr1/2の好ましい範囲は、その上限は10mN/m以下であり、より好ましくは5mN/m以下であり、さらに好ましくは3mN/m以下であり、特に好ましくは2mN/m以下である。また、その下限は0mN/m超である。
相分離した2相の粘度比は、得られる着色ポリマー微粒子の数平均粒子径および粒子径分布に影響を与える。粘度比の好ましい範囲としては、その下限としては0.1以上が好ましく、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、著しく好ましいのは0.8以上である。また粘度比の上限としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは3以下であり、特に好ましくは1.5以下であり、著しく好ましくは1.2以下である。ここでいう2相の粘度比は、実際に実施しようとする温度条件下での、ポリマー(A)溶液相の粘度/ポリマー(B)溶液相の粘度と定義する。
以上のようにして得た相分離状態になる条件をもとに、相分離するポリマー溶液に顔料が加えられた溶液を調製し、それを混合してエマルションを形成させた後に、着色ポリマー微粒子を製造する工程に供する。
本発明の着色ポリマー微粒子の製造方法では、通常の反応槽でポリマー溶液の調製、エマルションの形成、および粒子化工程が実施される。
ポリマー溶液の調製工程では、相分離性を示す任意組成のポリマー(A)、ポリマー(B)、および有機溶媒(C)と、さらに顔料を混合した後、ポリマー(A)およびポリマー(B)を有機溶媒(C)に完全に溶解させ、顔料が混合された相分離するポリマー溶液が得られる。本工程を実施する温度は、ポリマー(A)やポリマー(B)が有機溶媒(C)に溶解する温度以上であり、その好ましい温度はポリマーの種類によって変わるため一義的に決めることはできないが、工業的な実現性の観点から0℃〜300℃が好ましい。温度範囲の下限は、ポリマー(A)およびポリマー(B)の溶解性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。また、温度範囲の上限は、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
上記工程で得られたポリマー溶液は撹拌混合され、エマルション形成が実施される。エマルション形成工程の温度は、ポリマー(A)およびポリマー(B)が有機溶媒(C)に溶解する温度以上であれば特に制限はないが、工業的な実現性の観点から0℃〜300℃が好ましい。温度範囲の下限は、ポリアミドや有機溶媒(C)の種類によって適正な温度が変わるため、一義的に決めることはできないが、ポリマー(A)が析出する温度より高ければ特に制限はない。
具体的に挙げるとすれば、エマルション形成工程の温度の下限は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。また、温度範囲の上限は、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
エマルション形成工程の圧力は、工業的な実現性の観点から、常圧から100気圧(10.1MPa)の範囲である。エマルション形成工程時の温度におけるポリマー溶液の飽和蒸気圧によるが、好ましい上限としては20気圧(2.0MPa)以下である。
また、好ましい下限は、エマルション形成工程時の温度におけるポリマー溶液の飽和蒸気圧以上である。
エマルションを形成させるのに十分な剪断力を得るためには、公知の方法による攪拌を用いれば十分であり、攪拌羽による液相攪拌法、連続2軸混合機による攪拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射等を用いることができる。
攪拌羽による攪拌の場合、攪拌羽の形状にもよるが、攪拌速度は好ましくは50rpm〜1,200rpm、より好ましくは100rpm〜1,000rpm、さらに好ましくは200rpm〜800rpm、特に好ましくは300rpm〜600rpmである。
攪拌羽としては、プロペラ型、パドル型、フラットパドル型、タービン型、ダブルコーン型、シングルコーン型、シングルリボン型、ダブルリボン型、スクリュー型、ヘリカルリボン型等が挙げられるが、系に対して十分に剪断力をかけられるものであれば、これらに特に限定されるものではない。また、効率的な攪拌を行うために、槽内に邪魔板等を設置してもよい。
また、エマルションを発生させるためには、必ずしも攪拌機である必要はなく、乳化機、分散機等の装置を用いてもよい。具体的に例示するならば、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業(株)社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー((株)荏原製作所社製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業(株)社製)、コロイドミル((株)日本精機製作所社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(日本コークス工業(株)社製)、超音波ホモジナイザー、スタティックミキサー等が挙げられる。
このようにして得られたエマルションは、引き続き微粒子を析出させる微粒子化工程に供する。貧溶媒を前記工程で形成したエマルションに接触させることで、エマルションの液滴径に応じた径で着色ポリマー微粒子が析出する。
貧溶媒を接触させるときの反応槽内温度は、ポリマー(A)およびポリマー(B)が有機溶媒(C)に溶解する温度以上であれば特に制限はないが、工業的な実現性の観点から0℃〜300℃が好ましい。温度範囲の下限は、ポリマー(A)や有機溶媒(C)の種類によって適正な温度が変わるため、一義的に決めることはできないが、ポリマー(A)が析出する温度より高ければ特に制限はない。具体的に挙げるとすれば、温度範囲の下限は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。また、温度範囲の上限は、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
貧溶媒とエマルションの接触方法は、貧溶媒にエマルションを入れる方法でも良いし、エマルションに貧溶媒を入れる方法でも良いが、エマルションに貧溶媒を入れる方法がより好ましい。
この際、貧溶媒を投入する方法としては、本発明の着色ポリマー微粒子が得られる限り特に制限はなく、連続滴下法、分割添加法および一括添加法のいずれでも良い。貧溶媒添加時にエマルションが凝集、融着または合一し、得られる着色ポリマー微粒子の粒子径分布が広くなったり、200μmを超える塊状物が生成したりすることを防ぐために、好ましくは連続滴下法または分割滴下法であり、工業的に効率的に実施するためには、最も好ましいのは連続滴下法である。
貧溶媒を加える時間としては、5分〜50時間であることが好ましい。より好ましくは10分〜10時間であり、さらに好ましくは30分〜5時間であり、特に好ましくは1時間〜3時間である。この時間の範囲内で貧溶媒の添加を行うことにより、エマルションから着色ポリマー微粒子を析出させる際に、微粒子間の凝集を抑制することができ、粒子径が揃った粒子径分布の狭い着色ポリマー微粒子を得ることができる。この範囲よりも短い時間で貧溶媒の添加を実施すると、エマルションの凝集融着または合一に伴い、得られる着色ポリマー微粒子の粒子径分布が広くなったり、塊状物が生成したりする場合がある。また、これ以上長い時間で実施する場合は、工業的に不利である。
貧溶媒を加える量は、ポリマー(B)の分子量、およびポリマー(A)の有機溶媒(C)への溶解度によってエマルションの状態が変化するため最適量は変化するが、エマルション100質量部に対して、通常10質量部から1,000質量部であることが好ましい。より好ましい上限としては、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下であり、特に好ましくは、200質量部以下であり、最も好ましくは、100質量部以下である。また、好ましい下限は、10質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上である。
貧溶媒とエマルションとの接触時間は、微粒子が析出するのに十分な時間であればよいが、十分な析出を引き起こし、かつ効率的な生産性を得るためには、貧溶媒添加終了後5分〜50時間が好ましく、より好ましくは5分〜10時間であり、さらに好ましくは10分〜5時間であり、特に好ましくは20分〜4時間であり、最も好ましくは30分〜3時間である。
このようにして作られた着色ポリマー微粒子の分散液は、ろ過、減圧濾過、加圧ろ過、遠心分離、遠心ろ過、スプレードライ等の通常公知の方法で固液分離することにより、着色ポリマー微粒子を回収することができる。
固液分離した微粒子は、必要に応じて溶媒等で洗浄を行うことにより、付着または含有している不純物等の除去を行い、精製を行う。
得られた着色ポリマー微粒子の分散液について、例えば減圧濾過によって固液分離をすると、微粒子を固液分離した後の濾液は透明である。これは、本方法で得られる着色ポリマー微粒子には、ポリマー微粒子とは分離された単独の顔料が存在せず、すべての顔料がポリマー微粒子と複合化されているためである。
これは、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂であるポリマー(A)とポリマー(B)と顔料と有機溶媒とを混合してポリマー溶液としたときに、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相と、ポリマー(B)を主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルションを形成させた後、ポリマー(A)の貧溶媒を接触させることにより、顔料を内包する着色ポリマー微粒子を析出させることで、本発明の着色ポリマー微粒子が製造されるためである。
本方法においては、微粒子を得る際に行った固液分離工程で分離された有機溶媒(C)およびポリマー(B)を再度利用するリサイクルが実施可能である。
固液分離工程で分離された溶媒は、ポリマー(B)、有機溶媒(C)および貧溶媒の混合物である。この溶媒から、貧溶媒を除去することにより、エマルション形成用の溶媒として再利用することができる。貧溶媒を除去する方法としては、公知の方法が使用可能である。具体的には、単蒸留、減圧蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、抽出、膜分離等が挙げられるが、好ましくは単蒸留、減圧蒸留または精密蒸留による方法である。
単蒸留、減圧蒸留等の蒸留操作を行う際は、着色ポリマー微粒子の製造時と同様、系に熱がかかり、ポリマー(B)や有機溶媒(C)の熱分解を促進する可能性があることから、極力酸素のない状態で行うことが好ましく、より好ましくは不活性雰囲気下で行う。具体的には、窒素、ヘリウム、アルゴンまたは二酸化炭素雰囲気下で実施することが好ましい。また、蒸留操作を行う際に、酸化防止剤としてフェノール系化合物を添加しても良い。
溶媒等をリサイクルする際、貧溶媒は極力除くことが好ましい。具体的には、貧溶媒除去後の溶媒において、貧溶媒の残存量が有機溶媒(C)およびポリマー(B)の合計量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であると良い。この範囲よりも超える場合には、エマルション形成用の溶媒として再利用した際に、得られる着色ポリマー微粒子の粒子径分布が広くなったり、微粒子が凝集したりするので好ましくない。リサイクルする溶媒中の貧溶媒の量は、ガスクロマトグラフィー法、カールフィッシャー法等の公知の方法で測定できる。
貧溶媒を除去する操作において、現実的には有機溶媒(C)やポリマー(B)をロスすることもあるので、回収した溶媒を再利用する際には、適宜、組成を調整し直すのが好ましい。
さらに本発明では、粒子径分布が小さく、平均粒子径1μm以上であり、かつ顔料を含む着色ポリマー微粒子の内部に、顔料とは異なる子粒子を含有するポリマー微粒子を作るのに好適である。
本発明での粒子の作りやすさから、顔料と、顔料とは異なる子粒子を含有するポリマー微粒子の好ましい範囲は、数平均粒子径Dnの下限としては、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。また、数平均粒子径Dnの上限としては、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。
この顔料とは異なる子粒子は、ポリマー微粒子に対して、平均粒子径が1/3以下であり、さらに好ましくは、1/4以下であり、より好ましくは、1/5以下であり、特に好ましくは、1/8以下であり、著しく好ましくは、1/10以下である。
この範囲であると、顔料を含む着色ポリマー微粒子の中に、顔料とは異なる子粒子を取り込ませるに適切な大きさである。
子粒子の平均粒子径は、添加する前に、粒度分布計や走査型電子顕微鏡にて測定することができる。子粒子の粒子径が小さく、この方法で観察できない場合には、観察できる程度に倍率を高めるか、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、同様の方法で決定する。
また、粒子の内部に子粒子が取り込まれたかどうかの確認は、ポリマー微粒子をエポキシ樹脂などで固め、電子顕微鏡用の超薄切片を作成し、走査型電子顕微鏡にて、これで観察が困難な場合は透過型電子顕微鏡にて測長することが出来る。
ポリマー微粒子内の子粒子の粒子径は、前記電子顕微鏡用超薄切片での観察より粒子径を測定する。この際、写真上の粒子径は、必ずしも子粒子の赤道面での断面とは限らないため、写真上での最大粒子径をその子粒子の粒子径とする。
子粒子の粒子径を超薄切片で測定する場合は、子粒子の粒子数を100個以上測定し、その最大長を子粒子の粒子径とする。
子粒子の材質としては、無機粒子、有機粒子などが挙げられるが、特に有機粒子が好ましく、中でもゴム質重合体などが好適である。このようなものの代表的なものとして、ABS樹脂などに含まれるゴム質重合体などの微粒子などが挙げられる。また、無機粒子、その他の有機粒子を微粒子内部に含有させるには、予めポリマー(A)に上記粒子を混合しておき、その後有機溶媒に溶解させる、あるいは無機粒子、有機粒子の有機溶媒分散液に、ポリマー(A)を溶解するなどの方法が挙げられる。
このように本発明の着色ポリマー微粒子は、従来技術では入手困難であった、顔料が微粒子を構成するポリマー深部に選択的に内包された着色粉末であるため、粒子表面付近の顔料脱離による色の分離、脱色や色移りが発生せず、取り扱い性に優れる。さらに粒子径が微細かつ均一で真球なため流動性と分散性に優れるという特徴を有する。かかる特徴に加え、本着色ポリマー微粒子には、ABSやポリカーボネート樹脂の加工性、耐衝撃性などが付与されることで各種用途において利用することが可能である。
例えば、本発明の着色ポリマー微粒子は、顔料が内包されていることから、各種塗料の光沢調節剤、ツヤ消し仕上げ材等の用途としての添加剤や部材として好適に使用できる。特に従来材のポリメチルメタクリレートからなる着色ポリマー微粒子に対して、ABSやポリカーボネート樹脂からなる本発明の着色ポリマー微粒子は、高い耐熱性や柔軟性を有する。
他にも、射出成形、微細加工等に代表される成形加工用材料;各種成形加工時の増粘剤、成形寸法安定化剤等の添加剤;分散液、塗液、塗料等の形態としての塗膜、コーティング用材料;粉体としての流動性改良剤、潤滑剤、研磨剤および増粘剤用途;プラスチックフイルム、シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤およびツヤ消し仕上げ剤用途;プラスチックフイルム、シート、レンズの光拡散材、表面硬度向上剤および靭性向上剤等の各種改質剤;各種インク;トナーの光沢調節剤、ツヤ消し仕上げ材等の用途としての添加剤;液晶表示操作用スペーサー用途;クロマトグラフィー用充填剤;化粧品用基材および添加剤;化学反応用触媒および担持体;ガス吸着剤等の用途に用いることができる。特に顔料がポリマー微粒子内に偏在していることから、顔料とポリマーをドライブレンドした場合に比べても、顔料が良好に分散した成形加工品、フィルムなどが得られ、かつ顔料の脱離による色の分離、脱色や色移りが発生しないことから取り扱い性に優れる。
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(数平均粒子径の測定)
着色ポリマー微粒子の数平均粒子径Dnは、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)を用いて着色ポリマー微粒子を観察し、無作為に選択した100個の着色ポリマー微粒子についてその直径(粒子径)を測長した算術平均値として求めた。
具体的には、粒子径のバラつきを反映した正確な数平均粒子径を求めるために、1枚の画像に2個以上100個未満の粒子が写るような倍率で観察し、粒子径を測長した。続いて、下記式により100個の微粒子の粒子径につき、その算術平均を求めることで数平均粒子径を算出した。なお、画像上で粒子が真円状でない場合(例えば楕円状のような場合や、粒子が不規則に寄せ集まった凝集体を形成している場合)は、その最長径を粒子径として測定した。
なお、Ri:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径とする。
(粒子径分布指数の算出)
着色ポリマー微粒子の粒子径分布指数PDIは、数平均粒子径の算出時に行った粒子径の測長結果を用いて、次の式により算出した。
なお、Ri:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
(真球度の測定)
着色ポリマー微粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡にて、無作為に選択した粒子30個の真球度Siの算術平均値であり、下記式に従い算出した。真球度Siは、個々の微粒子の短径aiと、それと垂直に交わる長径biの比であり、下記式に従い算出した。
なお、Sn:平均真球度、Si:粒子個々の真球度、ai:粒子個々の短径、bi:粒子個々の長径、n:測定数30とする。
(粒子内部に偏在化している顔料の割合)
着色ポリマー微粒子の内部に偏在化している顔料の割合(UD)、デジタルマイクロスコープで得られる画像を用いて、無作為に選択した10個の粒子における、顔料の総面積(A)に対するポリマー微粒子の中心から半径で0.8倍の面積中の顔料の面積(A0.8)の割合の算術平均値として以下の式から算出した。
なお、UD:ポリマー微粒子の中心から0.8倍以内の領域に内在している顔料の割合、Ai:微粒子個々の顔料の総面積、A0.8i:微粒子個々の微粒子中心から0.8倍以内の領域における顔料の面積、n:測定数10である。
[実施例1]
200mlのセパラブルフラスコの中に、ポリマー(A)としてABS樹脂(重量平均分子量 110,000 東レ株式会社製‘トヨラック(登録商標)’T100、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)共重合体をマトリックスとし、平均粒子径300nmのゴム含有グラフト共重合体が分散したもの)2.5g、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン45g、ポリマー(B)としてポリビニルアルコール2.5g(日本合成化学工業株式会社‘ゴーセノール(登録商標)’ GL−05)、顔料としてPigment Blue 15を25mg加え、80℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を80℃に維持したまま、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として50gのイオン交換水を、送液ポンプを経由して、0.41g/分のスピードで滴下した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水100gで洗浄し、濾別したものを80℃で真空乾燥することで、2.33gの青色固体を得た。得られた粉体は手で触っても色移りがなく、水で洗うと手に色は残らなかった。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、真球状の形状をしており、平均粒子径Dnは17.4μm、粒子径分布指数PDIは1.37、真球度Snは97.7%のABS微粒子であった。この粒子中で顔料が存在する領域を測定するため、得られた粉体を水で分散した分散液をデジタルマイクロスコープにて観察したところ、顔料は粒子内部に内包されており、粒子内部に偏在化している顔料の割合UDは98.8%であった。用いた顔料Pigment Blue 15について、ChemDraw Professional Ver.15.0(Chemical Properties)を用いてLogSを推算したところ、−7.119だった。この粒子の断面観察のために電子顕微鏡用超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡にて観察を行ったところ、粒子内部に顔料と子粒子を有する構造であり、本写真より顔料の粒子径は0.14μm、子粒子の粒子径は0.28μmであった。なお、本実施例で用いたABSの融解熱量は観測されず、このポリマーのSP値は、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)として、計算法より、24.3(J/cm1/2だった。また、本有機溶媒とポリマーA、ポリマーBを別途溶解させ、静置観察したところ、本系は2相分離することが分かった。貧溶媒である水に対する、ABSの溶解度(室温)は、0.1質量%以下であった。
なお、上記の工程において、実際にエマルションが形成されていることを確認する実験を別途行った。上記のABS樹脂、ポリマー(B)、顔料および有機溶媒(C)を上記の組成割合で耐圧試験管に入れて、撹拌しながら80℃に加熱して溶解させ、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を採取し、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−100)を用いて形態観察したところ、エマルションの形成を確認した。
続いて、上記のポリアミド、ポリマー(B)、有機溶媒(C)および顔料を上記の組成割合で耐圧試験管に入れて、撹拌しながら80℃に加熱して混合し、ポリマーが完全に溶解したことを確認した後、撹拌を止め、80℃で3日間静置して相分離を促した。静置の結果、該ポリマー溶液は、顔料を含む青色の上相と、顔料の割合が少ない薄い青色の下相の2相に相分離することを確認した。
[実施例2]
顔料としてPigment Red 177を使用した以外は、実施例1と同様に微粒子化を行った。固液分離後の濾液は透明で、濾液中に顔料は確認されなかった。得られた粉体は手で触っても色移りがなく、水で洗うと手に色は残らなかった。デジタルマイクロスコープ観察からは、顔料が微粒子に内包されている様子が確認された。得られた着色ポリマー微粒子の数平均粒子径Dnは16.6μm、粒子径分布指数PDIは1.92、真球度Snは96.6%、粒子内部に偏在化している顔料の割合UDは99.4%であった。また、Pigment Red 177はLogS=−7.133であった。実施例1と同様の手順で相分離状態について確認したところ、顔料を含む赤色の上相と、顔料を含む赤色の下相の2相に相分離した。
[実施例3]
顔料としてPigment Red 254を使用した以外は、実施例1と同様に微粒子化を行った。固液分離後の濾液は透明で、濾液中に顔料は確認されなかった。得られた粉体は手で触っても色移りがなく、水で洗うと手に色は残らなかった。デジタルマイクロスコープ観察からは、顔料が微粒子に内包されている様子が確認された。得られた着色ポリマー微粒子の数平均粒子径Dnは14.7μm、粒子径分布指数PDIは1.52、真球度Snは98.5%、粒子内部に偏在化している顔料の割合UDは97.9%であった。また、Pigment Red 254はLogS=−6.086であった。実施例1と同様の手順で相分離状態について確認したところ、顔料を含む赤色の上相と、顔料を含む赤色の下相の2相に相分離した。
[比較例1]
顔料としてPigment Yellow 110を使用した以外は、実施例1と同様に微粒子化を行った。固液分離後の濾液は黄色に着色しており、濾液に顔料が含まれていた。デジタルマイクロスコープ観察から、顔料は粒子に内包されていないことが確認された。走査型電子顕微鏡観察からは、顔料が粒子表面を被覆するように付着している様子が確認された。得られた着色ポリマー微粒子の数平均粒子径Dnは14.8μm、粒子径分布指数PDIは3.75、真球度Snは97.4%、粒子内部に偏在化している顔料の割合UDは0%であった。また、Pigment Yellow 110はLogS=−10.8であった。実施例1と同様の手順で相分離状態について確認したところ、顔料をほとんど含まない白色の上相と、薄く黄色に着色した下相の2相に相分離し、顔料が沈殿している様子が見られた。
[実施例4](着色ポリマー微粒子を用いたプレスフィルム)
実施例1〜3で得られた着色ポリマー微粒子を用いてプレスフィルムを作製した。着色ポリマー微粒子500mgを200℃、30kNで45秒間加圧プレスしたところ、均一な着色フィルムが得られた。このフィルムをヘイズメーターNDH4000(日本電色工業(株)社製)に装填し、全光線透過率を測定した。作製したプレスフィルムそれぞれについて、異なる3箇所を測定し、フィルム内の全光線透過率のばらつきを示す変動係数を求めた。実施例1で得られた粒子からなるプレスフィルムでは、全光線透過率の変動係数2.6%であった。実施例2で得られた粒子からなるプレスフィルムは、全光線透過率の変動係数1.6%であった。実施例3で得られた粒子からなるプレスフィルムは、全光線透過率の変動係数0.8%であった。いずれの変動係数も、低い値を示し、本粒子から作成されたプレスフィルムは、均一性の高いものであった。
[比較例2](顔料をドライブレンドした樹脂を用いたプレスフィルム)
ABS樹脂(東レ株式会社製‘トヨラック(登録商標)’T100)3.0gと顔料Pigment Blue 15を30mgポリエチレン製の袋に入れて混合し、顔料をドライブレンドしたABS樹脂を得た。得られた顔料をドライブレンドしたABS樹脂は、手で触ると色移りが発生した。実施例4と同様に、顔料をドライブレンドしたABS樹脂500mgを200℃、30kNで45秒間加圧プレスしたところ、不均一な着色フィルムが得られた。このプレスフィルムの異なる3箇所についてヘイズメーターで全光線透過率を測定したところ、全光線透過率のばらつきは非常に大きく、その変動係数は、50.6%であった。

Claims (5)

  1. 顔料を含むABS樹脂またはポリカーボネート樹脂からなるポリマー(A)の微粒子であって、その中心から半径の0.8倍以内の領域に80%以上の顔料が偏在化し、数平均粒子径Dnが1〜200μmであることを特徴とする着色ポリマー微粒子。
  2. 粒子径分布指数PDIが1〜3であることを特徴とする請求項1に記載の着色ポリマー微粒子。
  3. 平均真球度が80以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の着色ポリマー微粒子。
  4. 前記顔料の含有量が、前記ポリマー(A)に対して0超〜50質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の着色ポリマー微粒子。
  5. ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂からなるポリマー(A)、ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)、顔料および有機溶媒(C)を混合してポリマー溶液としたときに、ポリマー(A)を主成分とし顔料を含む溶液相と、ポリマー(B)を主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルションを形成させた後、ポリマー(A)の貧溶媒を接触させることにより、顔料を内包する着色ポリマー微粒子を析出させることを特徴とする着色ポリマー微粒子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019167749A1 (ja) * 2018-02-28 2019-09-06 東レ株式会社 顔料含有脂肪族ポリエステル微粒子、その製造方法および化粧品

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