JP2017154076A - 水蒸気吸放出材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】LCST挙動を示す物質がメソ多孔体の細孔内に均一に保持され、再生に要するエネルギーを低減させることが可能な水蒸気吸放出材料を提供する。
【解決手段】イミダゾリウム環を有し、15〜50℃の間にLCSTを有するイオン液体が細孔内に保持されてなるメソ多孔体を含む、水蒸気吸放出材料とする。
【選択図】図10

Description

本発明は、水蒸気吸放出材料に関する。
従来、デシカント式の除湿機や空調機において、空気中の水蒸気を吸収及び放出する特性を持つ水蒸気吸放出材料が使用される。水蒸気吸放出材料は、温度又は相対湿度の変化に応じて水蒸気の吸収及び放出を行う特性を有する。そのため、水蒸気を吸収して吸湿性が低下した場合でも、所定条件下で水蒸気を放出して吸湿性を回復させることができ、再生可能な除湿材として繰り返し使用される。
このような水蒸気吸放出材料として、例えば、特許文献1には、細孔直径が1〜10nmの範囲内にある細孔を有し、該細孔の内部に液体の蒸気圧を低下させる降圧剤を添着したメソ多孔体よりなり、該メソ多孔体は、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示す多孔体であることを特徴とする蒸気吸放出材料が開示されている。また、非特許文献1には、感温性を有するポリマー(感温性ポリマー)をメソポーラスシリカゲルに導入・複合化させることにより、吸湿性に温度依存性を持たせたメソポーラスシリカゲル/高分子ゲル(複合シリカゲル)が開示されている。感温性ポリマーは、水に対する下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution temperature,LCST)を有し、LCSTより高い温度ではその分子内、或いは分子間の疎水結合が強まりポリマー鎖が凝集し、逆に、LCSTより低い温度ではポリマー鎖が水分子を結合し水和する。
特開平11−114410号公報
市橋利夫、中野義夫、「感温性を有するメソポーラスシリカゲル/高分子ゲルの水蒸気吸脱着特性」、化学工学論文集、第34巻、2008年、p.471−476
特許文献1に開示されている蒸気吸放出材料によれば、吸湿性を高めることが可能である。しかし、その効果は温度によって不変であるため、一度吸湿した水分を放出しにくく、吸湿性を回復させる(再生する)ために高い温度での加熱等を行う必要があり、再生に要するエネルギーが増大するという問題があった。一方、非特許文献1に開示されている複合シリカゲルによれば、水蒸気の吸着量が、感温性ポリマーのLCSTより低い温度では増大し、LCSTより高い温度では減少するため、再生温度を低下させることができ、再生に要するエネルギーを低減させることが可能である。しかしながら、感温性ポリマーは一般に分子量が数万であるため嵩高く、細孔径が数ナノメートル以下であるメソポーラスシリカゲルの細孔内に均一に保持させることは困難であった。
本発明者らは、メソ多孔体の細孔内に、より均一にLCST挙動を示す物質を保持させると、温度による吸湿特性の違いを大きくすることができ、再生温度をより低くすることが期待できると考えた。
そこで本発明は、LCST挙動を示す物質がメソ多孔体の細孔内に均一に保持され、再生に要するエネルギーを低減させることが可能な水蒸気吸放出材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、LCSTを有するイオン液体がメソ多孔体の細孔内に保持されることにより、イオン液体のLCST挙動により、イオン液体のLCST前後で吸湿特性を大きく変化させることが可能であることを見出した。本発明は該知見に基づいて完成させた。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明の第1の態様は、イミダゾリウム環を有し、15〜50℃の間にLCSTを有するイオン液体が細孔内に保持されてなるメソ多孔体を含む、水蒸気吸放出材料である。
本発明において、「15〜50℃の間にLCSTを有するイオン液体」とは、15〜50℃の間に水に対する下限臨界溶液温度(LCST)を有し、LCSTより低い温度では、イオン液体と水とが相溶(水和)し、LCSTより高い温度では、イオン液体と水とが相分離(脱水和)する挙動(以下、「LCST挙動」ということがある。)を示すイオン液体を意味する。
また、本発明において、「イオン液体が細孔内に保持されてなる」とは、イオン液体がメソ多孔体の細孔内部に導入され、イオン液体とメソ多孔体との電荷によってイオン液体が細孔表面に固定される(担持される)ことを意味する。
また、本発明において、「メソ多孔体」とは、孔径が2nm以上50nm以下であるメソ孔を有する多孔体を意味する。
本発明の第1の態様において、イオン液体は、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナ−ト、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸、1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライド、から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明の水蒸気吸放出材料によれば、LCST挙動を示す物質がメソ多孔体の細孔内に均一に保持され、再生に要するエネルギーを低減させることが可能な水蒸気吸放出材料を提供することができる。
1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート水溶液に対する定電流モード測定の結果を示す図である。 1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸水溶液に対する定電流モード測定の結果を示す図である。 1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド水溶液に対する定電位モード測定の結果を示す図である。 1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライド水溶液に対する定電位モード測定の結果を示す図である。 1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド水溶液に対する定電位モード測定の結果を示す図である。 1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド水溶液に対する定電位モード測定の結果を示す図である。 1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミド水溶液に対する定電位モード測定の結果を示す図である。 1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド水溶液に対する定電流モード測定の結果を示す図である。 1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライド水溶液に対する定電位モード測定の結果を示す図である。 実施例1の水蒸気吸着等温線の測定結果を示す図である。 比較例1の水蒸気吸着等温線の測定結果を示す図である。
以下、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
1.水蒸気吸放出材料
本発明の第1の態様は、イミダゾリウム環を有し、15〜50℃の間にLCSTを有するイオン液体が細孔内に保持されてなるメソ多孔体を含む、水蒸気吸放出材料である。
1.1.イオン液体
イオン液体とは、液体で存在する塩、特に、常温付近で液体となる塩の総称であり、イオン性液体又は低融点溶融塩とも称される。イオン液体は、イオンのみ(アニオン、カチオン)から構成される液体である。そのため、イオン液体はメソ多孔体の細孔内に導入しやすく、感温性ポリマーを用いた場合には困難であった、メソ多孔体の細孔内への均一な保持を容易に行うことが可能である。また、イオン液体は、不揮発性(又は蒸気圧がほぼゼロ)であるため、不燃又は難燃性であるという特徴を有するとともに、耐熱性が高い、液体温度範囲が広い、化学的に安定である等の特徴を有する。従って、水蒸気吸放出材料が、たとえ、高温に加熱された場合であっても、メソ多孔体の細孔内から失われにくい。
イオン液体の中には、水に対する下限臨界溶液温度(LCST)を有し、LCSTより低い温度では、イオン液体と水とが相溶(水和)し、LCSTより高い温度では、イオン液体と水とが相分離(脱水和)する挙動(LCST挙動)を示すものがある。
本発明者らは、実験の結果、LCST挙動を示すイオン液体を細孔内に保持したメソ多孔体は、当該イオン液体のLCST挙動に対応し、LCSTより低い温度では細孔内の親水性が高まり吸湿特性が高くなり、LCSTより高い温度では細孔内の疎水性が高まり吸湿特性が低くなることを確認した。LCST挙動を示す物質としてイオン液体を用いる本発明では、メソ多孔体の細孔内に、LCST挙動を示す物質をより均一に保持させることができ、細孔内の親水性/疎水性を均一にし、かつ、それぞれの性質を高めることができるため、LCSTの前後でメソ多孔体の吸湿特性を従来よりも飛躍的に変化させることが可能となり、従来よりも再生温度を低下させることができると考えられる。
LCST挙動を示すイオン液体のうち、公知のものとしては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、トリブチル−n−オクチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムp−トルエンスルホナート、テトラブチルホスホニウム2,4−ジメチルベンゼンスルホナート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウム2,4,6−トリメチルベンゼンスルホナート、テトラブチルアンモニウム2,4,6−トリメチルベンゼンスルホナートが挙げられる。
上記公知のLCST挙動を示すイオン液体のうち、4級ホスホニウム、4級アミンを含むものは、吸湿/再生を繰り返した場合に、劣化・分解する虞がある。4級ホスホニウム、4級アミンは一般的に、塩基性雰囲気下で加熱すると容易に分解:ホフマン分解することが知られており、これらをカチオンに含むイオン液体をメソ多孔体の細孔内に保持させた水蒸気吸放出材料がアンモニア等の塩基成分を吸着した状態で、吸湿/再生を繰り返した場合に、上記分解反応が誘起される。一方、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミドをメソ多孔体の細孔内に保持させた水蒸気吸放出材料は、4級ホスホニウム、4級アミンをカチオンに含むイオン液体をメソ多孔体の細孔内にコートした水蒸気吸放出材料よりも安定性が高いと考えられるが、LCSTを有する範囲が2〜11℃であるため、除湿される空気の温度が2〜11℃の範囲を越えて高い場合の使用には適さず、一般的な室温以下の環境下においてのみ使用に適していた。
実用に供される水蒸気吸放出材料は、水蒸気の他に様々な成分を吸着するため、塩基性雰囲気下で分解する4級ホスホニウム、4級アミンをカチオンに含むイオン液体をメソ多孔体の細孔内に保持させた水蒸気吸放出材料よりも、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミドを保持させた水蒸気吸放出材料の方が安定性に優れると考えられる。よって、吸湿/再生を多数回繰り返した場合の安定性を確保する観点、及び、一般的な室温条件下での使用に好適なものとする観点から、本発明の水蒸気吸放出材料には、イミダゾリウム環を有し、15〜50℃の間にLCSTを有するイオン液体を使用することが重要である。
イミダゾリウム環を有し、15〜50℃の間にLCSTを有するイオン液体としては、例えば、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナ−ト、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸、1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライドが挙げられる。
本発明の水蒸気吸放出材料に使用するイオン液体は、上記列挙した複数種のイオン液体から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
1.2.メソ多孔体
メソ多孔体は細孔直径が2〜50nmである細孔(メソ孔)を有する多孔体である。本発明に用いることのできるメソ多孔体は、このような細孔(メソ孔)を有するものであれば特に限定されず、特許文献1に記載のメソ多孔体を使用することができる。
感温性ポリマーをメソポーラスシリカゲルに導入・複合化させる場合には、メソ多孔体の細孔半径によっては、LCSTの上下の温度で吸湿特性が変化しないことがあったが、本発明においては、広範囲の孔径を有するメソ多孔体を採用することが可能である。
イオン液体をメソ多孔体の細孔内に保持させる方法は特に限定されず、例えば、イオン液体と水との混合物にメソ多孔体を浸し、乾燥する方法、イオン液体に直接浸した後に、LCST以上の温度で水に浸して余剰のイオン液体を分離させて除去する方法等が挙げられる。
なお、イオン液体は、メソ多孔体の細孔以外の表面領域にも保持されていてもよい。
2.LCST挙動測定方法
本発明に使用するイオン液体のLCST挙動は、イオン液体と水との混合物の水和/脱水和状態変化を交流インピーダンス測定によって電気信号として検出することにより、イオン液体のLCST挙動を測定することが可能である。
交流インピーダンスの測定は、以下のように行う。
イオン液体と水との混合物を満たした容器中に、2枚の白金板電極を相対させて設置し、それぞれの電極をインピーダンス測定装置と接続し、以下の手順(1)、(2)の通りに行う。
(1)定電流(ガルバノスタット)モード又は定電位(ポテンショスタット)モードにて、少なくとも−5℃〜100℃の範囲において、3〜10℃毎に少なくとも1Hz〜1MHzの範囲で交流インピーダンス測定を行う。特定の周波数において、温度変化に対して単調ではない位相の変化が見られた場合、状態変化が起こっていると考えられ、その時の温度がおおよその状態変化が起こる温度(LCST)ということができる。ここで、「温度変化に対して単調ではない位相の変化が見られた場合」とは、温度変化に対して、位相の単調増加傾向が変化した場合や位相が単調増加から単調減少に転じた場合など、単位温度あたりの位相の変化率や変化率の符号(正負)が入れ替わるような変化が生じた場合を意味する。
(2)上記(1)の周波数にて、混合物の温度を(1)より細かく変化させながら、インピーダンス又は位相を測定することで、状態変化が起こる温度(LCST)をより詳細に測定する。
上記の通り、(1)のみによってもLCSTのおおよその数値を測定することが可能である。LCSTをより正確に測定する場合には上記(2)を行えばよい。
上記(1)において、定電流モードで測定を行う際の電流値は、位相の変化を検出可能であれば特に限定されないが、電極の劣化抑制の観点から、0mA〜500mAの定電流を流すことが好ましい。
該定電流を流し、少なくとも−5℃〜100℃の範囲において、3〜10℃毎に1Hz〜1MHzの範囲で交流インピーダンス測定を行えば、種々のイオン液体に対して本発明のLCST挙動測定方法を適用した場合でも、上記(1)における単調ではない位相の変化の見落としを防止することができる。
上記(1)の測定において、特定の周波数における1回の測定に数分〜数十分を要するため、その間は温度を一定にした状態で測定を行う必要がある。一方、上記(2)の測定において、特定の温度における測定は数秒で完了するため、温度を連続的に変化させながら測定を行うことも可能である。
従来のような、光透過率の変化によるLCST挙動測定では、溶質分子が発生し始める時から、溶質分子が集まって光透過率を変化させるに至る時までに時間的なずれが発生するため、LCSTに測定誤差が生じてしまうが、インピーダンス測定では電気信号を見るため時間的なずれが発生しないので、正確なLCSTを導くことができる。
1.LCSTを有するイオン液体の探索
1.1.イオン液体の選定
或るイオン液体がLCSTを有するかどうか、明確な指導原理はこれまで報告されていないが、アニオンの水和力が一つの指標になり得る(D. Dupont et al., J. Phys. Chem. B 2015, 119, 6747-6757.)。本発明者らは、この指標から水和力の異なる複数のアニオン種と、カチオン構造(下記化学式(1)において、R1〜R3で示すイミダゾリウム環の側鎖)を様々に変化させて親水性を変えたカチオン種と、を含むイオン液体の物性を網羅的に評価し、イミダゾリウム系イオン液体のうち、LCSTを有する物質群を明らかにした。
具体的には、検討したアニオン種はメトキシ酢酸イオン(CHOCHCOO)、トリフルオロメタンスルホナート(CFSO )、トリフルオロ酢酸イオン(CFCOO)、臭化物イオン(Br)、塩化物イオン(Cl)の5種類である。
一方、検討したカチオン種の側鎖の構造は1−メチル−3−アリル(式(1)においてR1=CH、R2=H、R3=CHCH=CH)、1−メチル−3−アルキル(式(1)においてR1=CH、R2=H、R3=n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ドデシル)、1−ブチル−3−アルキル(式(1)においてR1=−CHCHCHCH、R2=H、R3=n−ブチル)、1,2−ジメチル−3−アルキル(式(1)においてR1=CH、R2=CH、R3=n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ドデシル)である。なお、1,2−ジメチル−3−アルキルと塩化物イオンとの組み合わせにおいては、アルキルがR3=n−ブチル、n−ドデシルの場合についてのみ検証を行った。
上記アニオン種及びカチオン種を組み合わせた複数のイオン液体を合成し、LCST挙動を測定した。結果を表1、2に示す。表1、2において、「LCST」とは、イオン液体と水との混合物がLCST挙動を示したことを意味し、「UCST」とは、イオン液体と水との混合物がUCST挙動(水に対する上限臨界溶液温度(Upper Critical Solution temperature,UCST)を有し、UCSTより低い温度では、イオン液体と水とが相分離(脱水和)し、UCSTより高い温度では、イオン液体と水とが相溶(水和)する挙動)を示したことを意味する。また、表1、2において、「親水」とは、測定の間、イオン液体と水とが常に相溶していたことを意味し、「不溶」とは、測定の間、イオン液体と水とが常に相分離していたことを意味する。
表1、2にまとめたように、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナ−ト、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライドの9種類のイオン液体が、LCST挙動を示すことが確認された。
以下、これらのイオン液体のLCST挙動の測定方法及び測定結果を示す。
1.2.LCST挙動の測定
上記イオン液体を含む水溶液について、表3に示す電極構成で、LCST挙動の測定を行った。
(1)1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナ−ト
(1−1)定電流(ガルバノスタット)モード測定
1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナ−ト水溶液(30wt%)について、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃の各温度における定電流(ガルバノスタット)モード測定を行った。結果を図1に示す。図1は10mHz〜1MHzにおけるPhaseAngle(位相角)を示す図である。図1に示すように、0.1Hz〜1Hzにおいて、45℃でピークが出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナ−トは45℃付近にLCSTを有することが確認された。
(2)1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸
(2−1)定電流(ガルバノスタット)モード測定
1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸水溶液(30wt%)について、15℃、20℃、30℃、40℃、50℃の各温度における定電流(ガルバノスタット)モード測定を行った。結果を図2に示す。図2に示すように、1Hz〜10Hzにおいて、40℃でピークが出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸は40℃付近にLCSTを有することが確認された。
(3)1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド
(3−1)定電位(ポテンショスタット)モード測定
1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド水溶液(30wt%)について、1℃、3℃、5℃、7℃の各温度における定電位(ポテンショスタット)モード測定を行った。結果を図3に示す。図3に示すように、0.1Hz〜10Hzにおいて、7℃でショルダーが出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミドは7℃付近にLCSTを有することが確認された。
(4)1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライド
(4−1)定電位(ポテンショスタット)モード測定
1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライド水溶液(15wt%)について、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃の各温度における定電位(ポテンショスタット)モード測定を行った。結果を図4に示す。図4に示すように、1Hz〜100Hzにおいて、45℃〜50℃でピークが出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライドは45℃〜50℃の間にLCSTを有することが確認された。
(5)1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド
(5−1)定電位(ポテンショスタット)モード測定
1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド水溶液(15wt%)について、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃の各温度における定電位(ポテンショスタット)モード測定を行った。結果を図5に示す。図5に示すように、1Hz〜100Hzにおいて、30℃でピークが消失し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミドは30℃付近にLCSTを有することが確認された。なお、50℃においてピークが消失しているのは、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミドが50℃付近にUCSTを有するためであると考えられる。
(6)1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド
(6−1)定電位(ポテンショスタット)モード測定
1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド水溶液(30wt%)について、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃の各温度における定電位(ポテンショスタット)モード測定を行った。結果を図6に示す。図6に示すように、0.1Hz〜1Hzにおいて、20℃でピークが出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミドは20℃付近にLCSTを有することが確認された。
(7)1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミド
(7−1)定電位(ポテンショスタット)モード測定
1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミド水溶液(30wt%)について、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃の各温度における定電位(ポテンショスタット)モード測定を行った。結果を図7に示す。図7に示すように、0.1Hz〜1Hzにおいて、20℃で変曲点が出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミドは20℃付近にLCSTを有することが確認された。
(8)1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド
(8−1)定電流(ガルバノスタット)モード測定
1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド水溶液(30wt%)について、5℃、10℃、15℃、20℃、30℃、40℃、50℃の各温度における定電流(ガルバノスタット)モード測定を行った。結果を図8に示す。図8に示すように、0.1Hz〜10Hzにおいて、15℃でピークが出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライドは、15℃付近にLCSTを有することが確認された。
(9)1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライド
(9−1)定電位(ポテンショスタット)モード測定
1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライド水溶液(20wt%)について、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃の各温度における定電位(ポテンショスタット)モード測定を行った。結果を図9に示す。図9に示すように、0.1Hz〜1Hzにおいて、25℃でピークが出現し、他の温度と異なる挙動を示した。よって、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライドは、25℃付近にLCSTを有することが確認された。
2.水蒸気吸放出材料の吸湿特性評価
2.1.実施例1
(1)水蒸気吸放出材料の合成
メソ多孔体として市販のアミノプロピルシリカゲル(ジーエルサイエンス(株)製、粒子径10μm、平均細孔径10nm)0.162gと、イオン液体として1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド(以下、「DMOImBr」という。)0.0405gとを水中で10分間撹拌したのち、100℃で乾燥させることにより、水蒸気吸放出材料を合成した。
(2)水蒸気吸着量の測定
(1)で合成した水蒸気吸放出材料を真空中、60℃で6時間乾燥させた後、20℃及び50℃における任意の相対湿度に対する水蒸気吸着量の平衡値を、ガス吸着評価装置(BELSORP−MAX、日本ベル(株)製)にて測定した。水蒸気吸着等温線の測定結果を図10に示す。
2.2.比較例1
実施例1で使用したアミノプロピルシリカゲルに何も保持させない状態で、実施例1と同様に水蒸気吸着量を測定した。水蒸気吸着等温線の測定結果を図11に示す。
図10に示すように、メソ多孔体にDMOImBrを保持させた実施例1に係る水蒸気吸放出材料の吸着等温線は20℃と50℃とで大きく異なり、50℃において吸湿量が低下していた。これは、DMOlmBrが、20℃においては水和する性質があるため、細孔内が親水性を示すのに対し、50℃においては水と分離する性質があるため、細孔内が疎水化するためであると考えられる。一方、図11に示すように、当該性質を有さない比較例1に係るアミノプロピルシリカゲルの吸着等温線は、20℃と50℃とで大きな変化が見られなかった。

Claims (2)

  1. イミダゾリウム環を有し、15〜50℃の間にLCSTを有するイオン液体が細孔内に保持されてなるメソ多孔体を含む、水蒸気吸放出材料。
  2. 前記イオン液体が、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナ−ト、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸、1,3−ジブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−3−ドデシルイミダゾリウムクロライド、から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする、請求項1に記載の水蒸気放出材料。
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