以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る過電流保護装置を示すブロック図、図2は本発明の一実施の形態に係る過電流保護装置による制御を示すタイムチャート、図3(a)は本発明の一実施の形態に係るキャパシタが充電を行っている状態を説明するための図、図3(b)は本発明の一実施の形態に係るキャパシタが放電を行っている状態を説明するための図、図3(c)は本発明の一実施の形態に係るキャパシタの充電が完了した状態を説明するための図、図4は本発明の一実施の形態に係る閾値時間T1と閾値時間T2とを説明するためのグラフ、図5は(7)式を説明するためのグラフである。なお、図1において、実線は電力線を示し、一点鎖線は信号線を示している。
本実施形態における過電流保護装置10は、外部スイッチ200からの駆動要求信号に基づいて、車輌に搭載されるランプやモータ等の外部負荷100に対して電力を供給する負荷駆動用回路に搭載されるものである。このような、過電流保護装置10は、図1に示すように、電源20と、半導体スイッチ30と、制御装置40と、を備えている。
本実施形態における「過電流保護装置10」が本発明における「過電流保護装置」の一例に相当し、本実施形態における「電源20」が本発明における「電源」の一例に相当し、本実施形態における「外部負荷100」が本発明における「外部負荷」の一例に相当し、本実施形態における「半導体スイッチ30」が本発明における「半導体スイッチ」の一例に相当し、本実施形態における「制御装置40」が本発明における「制御装置」の一例に相当する。
電源20は、たとえば、車輌に搭載される直流電源である。このような電源20としては、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の2次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタ等を用いることができる。
電源20は、電力線Pを介して外部負荷100に対して電力を供給している。外部負荷100は、等価的に電気抵抗成分と電気容量成分とを含んで構成されている。本実施形態の外部負荷100は、抵抗成分として抵抗110を有し、容量成分としてキャパシタ120を有している。本実施形態における「電力線P」が本発明における「電力線」の一例に相当し、本実施形態における「抵抗110」が本発明における「抵抗成分」及び「電気抵抗体」の一例に相当し、本実施形態における「キャパシタ120」が本発明における「容量成分」及び「キャパシタ」の一例に相当する。
抵抗110は、ランプ等の灯火系、ワイパ、ウォッシャ、又はその他ECU等の車載機器である。この抵抗110は、一端が電力線P及び半導体スイッチ30を介して電源20に接続されており、他端が接地されている。キャパシタ120は、たとえば、電源20から送られる直流電流を平滑化する平滑キャパシタや、ノイズ吸収用キャパシタである。このキャパシタ120は、一端が電力線P及び半導体スイッチ30を介して電源20に接続されており、他端が接地されている。電源20に対して、抵抗110とキャパシタ120は、並列に接続されている。なお、図1において、RIは動力線Pの電気抵抗値であり、RLは抵抗110の電気抵抗値であり、Cはキャパシタ120の電気容量である。なお、抵抗110やキャパシタ120の一端と、電源20との間には、電力線Pや半導体スイッチ30以外の構成要素が介在していてもよい。また、本実施形態では、抵抗110やキャパシタ120の他端は、いずれも接地されているが、特に上述に限定されない。つまり、等価的に示した電気回路モデルにおいて抵抗成分と容量成分とが存在していれば、当該抵抗成分や容量成分の接続先は特に限定されない。
電力線Pには、半導体スイッチ30が設けられている。この半導体スイッチ30としては、たとえば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子を用いることができる。本実施形態の半導体スイッチ30は、ドレイン電極31と、ソース電極32と、ゲート電極33と、を有している。
半導体スイッチ30のドレイン電極31は、電力線P(具体的には、第1の区間Pa)を介して電源20と接続されている。半導体スイッチ30のソース電極32は、電力線P(具体的には、第2の区間Pb)を介して外部負荷100と接続されている。ゲート電極33は、信号線S2を介して制御装置40のゲート駆動部90(後述)と接続されている。この半導体スイッチ30は、ゲート駆動部90からゲート電極33に出力される駆動信号によりオン/オフの切り替えが可能となっている。
なお、半導体スイッチ30に代えて、半導体素子を含み、当該半導体素子の制御回路、加熱保護回路、及び/又は電流検出回路等を含むIPD(Intelligent Power Device)等のICパッケージを用いてもよい。
ゲート電極33に駆動信号が入力されると、半導体スイッチ30は、ドレイン電極31とソース電極32との間が導通するオン状態となる。これにより、電力線Pは導通し、電源20による外部負荷100に対する電力の供給が行われる。一方、ゲート電極33に対する駆動信号が停止すると、半導体スイッチ30は、ドレイン電極31とソース電極32との間が遮断するオフ状態となる。これにより、電力線Pが遮断し、電源20から外部負荷100に対する電力の供給が停止する。
制御装置40は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器予備入出力インタフェース等を含んで構成されるマイクロコンピュータから構成されている。この制御装置40は、外部スイッチ200からの駆動要求信号に応じて、半導体スイッチ30のオン状態とオフ状態との切り替えを行う。また、制御装置40は、突入電流による過電流を抑えるため、半導体スイッチ30の状態に応じて、リトライ動作を実行する。
次に、本実施形態の過電流保護装置10の制御部40について、図1〜図5を参照しながら、詳細に説明する。
制御装置40は、図1に示すように、状態検出部50と、異常判定部60と、タイマ70と、リトライ実行部80と、ゲート駆動部90と、を有している。本実施形態における「状態検出部50」が本発明における「状態検出部」の一例に相当し、本実施形態における「異常判定部60」が本発明における「異常判定部」の一例に相当し、本実施形態における「タイマ70」が本発明における「タイマ」の一例に相当し、本実施形態における「リトライ実行部80」が本発明における「リトライ実行部」の一例に相当する。
本実施形態の状態検出部50は、半導体スイッチ30を流れる電流値を検出する電流センサである。この状態検出部50は、検出した電流値(検出結果)を、信号線S3を介して異常判定部60に出力している。なお、本実施形態では、半導体スイッチ30の状態を検出するため、半導体スイッチ30を流れる電流値を用いているが、特にこれに限定されない。たとえば、半導体スイッチ30を流れる電流値の単位時間当たりの変化量を用いてもよい。また、半導体スイッチ30の温度を用いてもよい。また、半導体スイッチ30の温度の単位時間当たりの変化量を用いてもよい。また、半導体スイッチ30の温度と当該半導体スイッチ30の外部の温度を検出し、これらの温度の差分値を用いてもよい。半導体スイッチの温度を検出する場合、状態検出部50としては、サーミスタ等を用いることができる。なお、半導体スイッチに代えて、IPD等のICパッケージを用いる場合、当該ICパッケージに含まれる電流検出回路等を状態検出部として用いてもよい。
異常判定部60は、状態検出部50の検出結果に基づいて、半導体スイッチ30が異常であるか否かを判定する。この異常判定部60には、半導体スイッチ30の特性情報として、閾値電流I0が予め保存されている。この閾値電流I0としては、たとえば、半導体スイッチ30を流れる電流値として正常な範囲の上限値等を用いることができる。なお、状態検出部が半導体スイッチの温度を用いて当該半導体スイッチの状態を検出している場合、半導体スイッチの特性情報として、閾値温度を用いる。この閾値温度としては、たとえば、半導体スイッチのオン状態における温度として正常な範囲の上限値を用いることができる。
本実施形態の異常判定部60は、予め保存された閾値電流I0と、状態検出部50により検出された電流値とを比較して、これらの大小関係に基づいて、半導体スイッチ30が異常であるか否かを判定する。異常判定部60は、半導体スイッチ30が異常であると判定した場合、判定結果を、信号線S4を介してリトライ実行部80に出力する。
タイマ70は、半導体スイッチ30が最初にオン状態となってからの経過時間を計測しており、ゲート駆動部90から駆動信号が入力された時にカウントを開始する。また、このタイマ70は、ゲート駆動部90から駆動信号が入力されることで、カウントをリセットするようになっている。ここで計測した経過時間tは、信号線S5を介してリトライ実行部80に出力される。
なお、本明細書において、「半導体スイッチ30が最初にオン状態となる」とは、外部スイッチ200からの駆動要求信号に応じてゲート駆動部90から出力された駆動信号により、半導体スイッチ30がオン状態となることをいう。
リトライ実行部80は、異常判定部60により半導体スイッチ30の異常が判定された場合に、リトライ動作を実行する信号をゲート駆動部90に出力する。ここで、リトライ動作とは、図2に示すように、半導体スイッチ30のオン状態とオフ状態とを繰り返し行う動作のことをいう。このリトライ動作は、維持時間t10に亘り半導体スイッチ30のオン状態が維持されるオン動作と、維持時間t20に亘り半導体スイッチ30のオフ状態が維持されるオフ動作と、を交互に含んでいる。なお、本明細書においてt10は、図2のt12,t13,t14,及びt15の総称である。また、本明細書においてt20は、図2のt21,t22,t23,及びt24の総称である。
本実施形態における「オン動作」が本発明における「第1の動作」の一例に相当し、本実施形態における「オフ動作」が本発明における「第2の動作」の一例に相当し、本実施形態における「維持時間t10」が本発明における「第1の間隔」の一例に相当し、本実施形態における「維持時間t20」が本発明における「第2の間隔」の一例に相当する。
維持時間t10は、オフ動作からオン動作への切り替えが行われた時に開始し、その後、異常判定部60が半導体スイッチ30の異常を判定した時に終了する値である。なお、維持時間t10は、特に上述に限定されず、予め設定された値を用いてもよい。
維持時間t20は、リトライ実行部80により、一度のオン動作中にキャパシタ120が蓄えた電荷量に対して、当該オン動作の直後の一度のオフ動作中にキャパシタ120から放出される電荷量が相対的に小さくなるように設定されている。
本実施形態では、図3(a)に示すように、リトライ実行部80によりオン動作が実行されると、半導体スイッチ30がオン状態となり、電源20が外部負荷100に対して電力を供給する。このとき、外部負荷100のキャパシタ120に電荷が蓄えられる。一方、リトライ実行部80によりオフ動作が実行されると、図3(b)に示すように、半導体スイッチ30がオフ状態となり、電源20による外部負荷100に対する電力供給が停止する。このとき、外部負荷100のキャパシタ120は、蓄えた電荷を抵抗110に向けて放出する。
本実施形態では、リトライ実行部80が上述の通り維持時間t20を設定することで、キャパシタ120における充放電を制御して、当該キャパシタ120に電荷を徐々に蓄えることができる(図2参照)。キャパシタ120の充電が完了すると、図3(c)に示すように、抵抗110が電源20からの電力供給を受けて安定した動作を開始する。
本実施形態のリトライ実行部80による維持時間t
20の設定方法について、さらに詳しく説明する。本実施形態において、一度のオン動作中にキャパシタ120に蓄えられる電荷量q(t
10)は、下記(2)式で表すことができる。
但し、上記(2)式において、Cはキャパシタ120の電気容量であり、Eは電源20の出力電圧であり、RIは電力線Pの電気抵抗値である。
また、オン動作とオフ動作を各一度ずつ行った後にキャパシタ120に残存する電荷量q(t
20)は、下記(3)式で表すことができる。
但し、上記(3)式において、Q0はキャパシタ120が電荷を放出する前に当該キャパシタ120に蓄えられていた電荷量であり、RLは抵抗110の電気抵抗値である。なお、本実施形態では、Q0はオフ動作の直前のオン動作中にキャパシタ120に蓄えられた電荷量q(t10)である。
上記(2)式及び(3)式に基づくと、一度のオン動作と、直後の一度のオフ動作とが実行された後にキャパシタ120に残存する電荷量q(t
10,t
20)は、下記(4)式で表すことができる。
本実施形態のリトライ実行部80は、一度のオン動作中にキャパシタ120が蓄えた電荷量に対して、当該オン動作の直後の一度のオフ動作中にキャパシタ120から放出される電荷量が相対的に小さくなるように、下記(5)式の演算式に基づいて維持時間t
20を設定する。
なお、図2に示すように、最初に実行されるオフ動作の維持時間t21は、半導体スイッチ30の最初のオン状態の間にキャパシタ120に蓄えられた電荷量に対して、当該最初に実行されるオフ動作中にキャパシタ120から放出される電荷量が相対的に小さくなるように設定する。
本明細書中の電荷量q(t10,t20)は、図2のq(t11,t21),q(t12,t22),q(t13,t23),及びq(t14,t24)の総称である。
本実施形態のリトライ実行部80には、閾値時間T1と、閾値時間T2とが予め保存されている。本実施形態における「閾値時間T1」が本発明における「第1の閾値」の一例に相当し、本実施形態における閾値時間T2」が本発明における「第2の閾値」の一例に相当する。
閾値時間T1は、図4に示すように、リトライ動作を行わない場合において、半導体スイッチ30が最初にオン状態となってから突入電流が収束するまでの推定時間であり、電源20から外部負荷100に対して電力が供給された際に、突入電流による過電流が生じているか否かを判定するために用いられる。この閾値時間T1は、キャパシタ120の電気容量に応じて、予め実験的に求める。
リトライ実行部80は、異常判定部60により半導体スイッチ30の異常が判定されたら、その判定結果が入力されたときの経過時間tをタイマ70から取得し、当該タイマ70が計測した計測値と、閾値時間T1とを比較する。そして、リトライ実行部80は、これらの大小関係に基づいて、リトライ動作を実行するか否かを判定する。ここでは、タイマ70による計測値が閾値時間T1よりも小さいときに異常判定部60により半導体スイッチ30の異常が判定された場合、リトライ実行部80はリトライ動作を開始する。
閾値時間T2は、図4に示すように、リトライ動作を行う場合において、半導体スイッチ30が最初にオン状態となってから突入電流が収束するまでの推定時間であり、発生している過電流が突入電流によるものか否かを判定するために用いられる。リトライ動作が実行される分だけ、閾値時間T2は閾値時間T1に対して相対的に大きい値となる。この閾値時間T2は、外部負荷100の抵抗110の種類に応じて、予め実験的に求める。特に限定しないが、たとえば、抵抗の種類が灯火系、ワイパ系、ウォッシャ系の場合、閾値時間T2は200msに設定される。抵抗の種類がECUの場合、閾値時間T2は100msに設定される。
リトライ実行部80は、リトライ動作を実行している間、タイマ70から経過時間tを取得して、タイマ70が計測した計測値と、閾値時間T2とを比較する。そして、リトライ実行部80は、これらの大小関係に基づいて、リトライ動作を終了するか否かを判定する。ここでは、タイマ70が計測した計測値が閾値時間T2よりも大きい場合、リトライ実行部80はリトライ動作を終了する。一方、タイマ70が計測した計測値が閾値時間T2以下の場合、リトライ実行部80はリトライ動作を継続する。
また、本実施形態のリトライ実行部80は、当該リトライ動作が終了するまでにキャパシタ120の充電をより確実に完了させる観点から、下記(6)式の演算式を満たすように、オフ動作の維持時間t
20を設定している。
上記(6)式の右辺は、一度のオン動作と、直後の一度のオフ動作とが実行された後にキャパシタ120に残存する電荷量であって、タイマ70が計測した計測値が閾値時間T2のときに、キャパシタ120の充電が完了しているために必要な値である。
上記(6)式を整理すると、下記(7)式として表すことができる。
上記(7)式をグラフに示すと、図5のとおりとなる。本実施形態のリトライ実行部80は、図5に示すように、下記(8)式を満たす範囲で維持時間t20を設定することができる。これにより、突入電流による過電流を収束させつつ、リトライ動作が終了するまでにキャパシタ120の充電をより確実に完了させることができる。
0<t20<Tz・・・(8)
また、本実施形態のリトライ実行部80は、リトライ動作に含まれる複数のオフ動作の維持時間t20が、相互に異なる値となるように設定している。具体的には、図2に示すt21,t22,t23,及びt24を、相互に異なる値となるように設定する。この場合、リトライ実行部80は、各オフ動作の維持時間t20を予め設定された線形合同法等の乱数発生アルゴリズムを用いてランダムに設定してもよい。なお、各オフ動作の維持時間t20をランダムに設定する場合でも、リトライ実行部80は、上記(8)式の範囲内において、各維持時間t20を設定することが好ましい。
ゲート駆動部90には、信号線S1を介して外部スイッチ200から駆動要求信号が入力される。ゲート駆動部90は、駆動要求信号が入力されると、駆動信号をゲート電極33に出力する。これにより、半導体スイッチ30がオン状態となる。外部スイッチ200からの駆動要求信号が停止すると、ゲート駆動部90は、ゲート電極33に対する駆動信号を停止する。これにより、半導体スイッチ30はオフ状態となる。なお、ゲート駆動部90は、外部スイッチ200から駆動要求信号が入力された場合、信号線S6を介して、駆動信号をタイマ70に出力する。
また、ゲート駆動部90には、信号線S7を介してリトライ実行部80からリトライ動作を実行する指令が入力される。ゲート駆動部90は、リトライ動作を実行する指令に合わせて、ゲート電極33に駆動信号の入力と停止とを交互に行う。
次に、図2及び図6を参照して、本実施形態に係る過電流保護装置10の制御手順を説明する。以下の処理は過電流保護装置10の制御装置40内にインストールされた当該過電流保護装置10の制御プログラムによって実行される。図6は本発明の一実施の形態に係る過電流保護装置の制御手順を示すフローチャート(その1)である。
図6に示す制御ルーチンは、外部負荷100のキャパシタ120の充電が完了していない状態で実行される。まず、ステップST1にて、外部スイッチ200の駆動要求信号がゲート駆動部90に入力されると、ステップST2にてゲート駆動部90が駆動信号をゲート電極33に出力する。これにより、半導体スイッチ30がオン状態となり、電源20による外部負荷100に対する電力供給が開始される。
ステップST3では、ゲート駆動部90は、駆動信号をタイマ70に出力する。これにより、タイマ70がカウントをリセットする共に、半導体スイッチ30が最初にオン状態となってからの経過時間tの計測を開始する。このタイムカウントは、ステップST6又はステップST78(図7参照)で過電流保護装置10の制御が終了するまで行われる。なお、図2のタイムチャートにおけるt0が、半導体スイッチ30が最初にオン状態となった時に相当する。
ステップST4では、リトライ実行部80がタイマ70により計測された計測値と閾値時間T1とを比較する。計測値が閾値時間T1よりも小さい場合、ステップST5に進む。計測値が閾値時間T1以上の場合、ステップST6に進む。ステップST6では、過電流保護装置10は、突入電流による過電流が発生していないと判定して、その制御を終了する。なお、計測値が閾値時間T1以上のときに半導体スイッチに過電流が流れている場合は、デッドショート等の突入電流以外の原因によるものと推定される。
ステップST5では、半導体スイッチ30が異常であるか否かを判定する。具体的には、異常判定部60は、状態検出部50により検出された半導体スイッチ30を流れる電流値Iを取得して、当該電流値Iと、予め設定された閾値電流I0とを比較する。電流値Iが、閾値電流I0よりも大きい場合、ステップST7に進む。ステップST7では、リトライ実行部80は、突入電流による過電流が発生しているものと判定して、リトライ動作を開始する。このステップST7については、後に詳細に説明する。電流値Iが、閾値電流I0よりも小さい場合、ステップST4に戻り、ステップST4〜ステップST5を繰り返す。なお、図2のタイムチャートにおけるt1が、リトライ実行部80がリトライ動作を開始した時に相当する。
次に、図2及び図7を参照しながら、リトライ実行部80がリトライ動作を実行するときの制御ルーチンについて説明する。図7は本発明の一実施の形態に係る過電流保護装置の制御手順を示すフローチャート(その2)である。
まず、ステップST71では、リトライ実行部80が半導体スイッチ30をオフ状態にする指令をゲート駆動部90に出力する。ゲート駆動部90は、半導体スイッチ30に対する駆動信号を停止し、半導体スイッチ30をオフ状態にする。これにより、リトライ動作のオフ動作が開始される。
次に、ステップST72では、リトライ実行部80は、ステップST71で開始されたオフ動作の維持時間t20を算出するため、直前のオン動作の維持時間t10を求める。具体的には、リトライ実行部80は、オフ動作からオン動作へ切り替わった時の経過時間tをタイマ70から取得し、その後に異常判定部60が半導体スイッチ30の異常を判定した時の経過時間tをタイマ70から取得し、これらを減算処理することで維持時間t10を求める。なお、最初のオフ動作の維持時間t21を算出する場合、リトライ実行部80は、半導体スイッチ30の最初のオン状態が維持された時間t11を求める。
次に、ステップST73では、リトライ実行部80は、オフ動作の維持時間t20を設定する。ここでは、リトライ実行部80は、まず、ステップST72で求めた維持時間t10と、予め保存された上記(7)式の演算式とを用いて維持時間t20の設定可能な範囲(すなわち、上記(8)式の範囲)を算出する。そして、リトライ実行部80は、上記(8)式の範囲内において、維持時間t20をランダムに設定する。
次に、リトライ実行部80は、オフ動作を開始してから設定した維持時間t20が経過するまで、ステップST74を繰り返し、オフ動作を開始してから維持時間t20が経過したら、ステップST75に進む。
次に、ステップST75では、リトライ実行部80は、半導体スイッチ30をオン状態にする指令をゲート駆動部90に出力する。ゲート駆動部90は、半導体スイッチ30に対する駆動信号を出力し、半導体スイッチ30をオン状態とする。これにより、リトライ動作のオフ動作が終了すると共に、オン動作が開始される。
次に、ステップST76では、リトライ実行部80がタイマ70により計測された計測値と閾値時間T2とを比較する。計測値が閾値時間T2よりも小さい場合、ステップST77に進む。計測値が閾値時間T2以上の場合、ステップST78に進む。ステップST78では、時間経過により突入電流による過電流は収束したものとして、リトライ実行部80はリトライ動作を終了する。なお、計測値が閾値時間T2以上のときに半導体スイッチ30に過電流が流れている場合は、デッドショート等の突入電流以外の原因によるものと推定される。なお、図2のタイムチャートにおけるt2が、リトライ実行部80がリトライ動作を終了した時に相当する。
次に、ステップST77では、半導体スイッチ30が異常であるか否かを判定する。リトライ動作を実行している間でも、キャパシタ120の充電が完了していなければ、半導体スイッチ30を再度オン状態となった場合に、半導体スイッチ30に突入電流が流れる。ここでは、異常判定部60により半導体スイッチ30の異常が判定されると、突入電流が収束していないものとして、リトライ動作を継続する。
このステップST77では、異常判定部60は、状態検出部50により検出された半導体スイッチ30を流れる電流値Iを取得して、当該電流値Iと、予め設定された閾値電流I0とを比較する。電流値Iが、閾値電流I0よりも大きい場合、ステップST71に戻り、ステップST71〜ステップST77を繰り返す。一方、電流値Iが、閾値電流I0以下の場合、ステップST76に戻り、ステップST76〜ステップST77を繰り返す。ここでは、キャパシタ120の充電が完了していれば、経過時間tが閾値時間T2に達した後、リトライ動作が終了する(ステップST78)。
ステップST77において、状態検出部50が検出した電流値Iが、閾値電流I0以上の場合、ステップST71に戻り、リトライ実行部80は、半導体スイッチ30をオフ状態にする指令をゲート駆動部90に出力する。これにより、リトライ動作のうち2回目のオフ動作が開始される。そして、リトライ実行部80は、2回目のオフ動作の直前のオン動作の維持時間t12を求めた後(ステップST72)、2回目のオフ動作の維持時間t22を設定する(ステップST73)。この場合、リトライ実行部80は、維持時間t22を最初のオフ動作の維持時間t21とは異なる値となるようにランダムに設定する。
ステップST78において、リトライ実行部80がリトライ動作を終了したら、図2に示すように、過電流保護装置10は、半導体スイッチ30のオン状態を保持する。そして、外部200からの駆動要求信号が停止されると、半導体スイッチ30をオフ状態に切り替えて、電源20による外部負荷100への電力供給を停止する。なお、図2のタイムチャートにおけるt3が、電源20による外部負荷100への電力供給を停止した時に相当する。
本実施形態の過電流保護装置10及び制御方法は、以下の効果を奏する。
従来の過電流保護装置としては、機械式のヒューズを用いたものが一般的であった。この機械式ヒューズは過電流によって溶断してしまうので、その都度交換が必要であったり、対象とする電圧帯に応じたヒューズを用いる必要がある等、コストの増大を招いていた。このため、近年では、機械式ヒューズに代わり、半導体スイッチを用いて、当該半導体スイッチのオン状態とオフ状態により電力線の導通・遮断を切り替える過電流保護装置が用いられている。このような半導体スイッチを用いた過電流保護装置では、機械式ヒューズのような交換作業が不要であり、対象とする電圧帯も設定可能であるため、コストを低減することができる。
ここで、外部負荷がキャパシタを含む場合、未充電のキャパシタのインピーダンスが極めて小さいことに起因して突入電流による過電流が発生することがある。従来の半導体スイッチを用いた過電流保護装置では、上述のような場合に生じる突入電流に対しても半導体スイッチがオフとなるように動作してしまうことがあった。この場合、キャパシタを十分に充電することができず、また、再度半導体スイッチをオンとするまでにキャパシタに蓄えられた電荷が放出されてしまうため、突入電流による過電流が収束し難い。このため、その後も半導体スイッチが誤動作してオフ状態となってしまうおそれがある、という問題があった。
また、突入電流による過電流は許容する一方、デッドショートによる過電流は遮断するように過電流保護回路を構築すると、電力線の線径を大きくしたり、高い遮断特性を有する半導体スイッチを用いる必要があるため、コストの増大を招く、という問題もあった。
これに対し、本実施形態の過電流保護装置10は、突入電流が発生した場合に行われるリトライ動作において、オン動作中に外部負荷100のキャパシタ120に蓄えられた電荷量に対して、当該オン動作の直後のオフ動作中にキャパシタ120から放出される電荷量を相対的に小さくなるように、当該オフ動作の維持時間t20を設定している。このため、突入電流による過電流を収束させることができるので、突入電流による過電流に対する半導体スイッチ30の誤動作の発生を抑制することができる。
また、半導体スイッチ30の誤動作の発生の抑制を図るに際し、電力線Pの線径を大きくしたり、高い遮断特性を有する半導体スイッチを用いる必要がないため、過電流保護装置10のコストを低減できる。
また、本実施形態では、タイマ70が計測した計測値が閾値時間T1以下のときに半導体スイッチ30の異常が検出された場合に、リトライ実行部80がリトライ動作を実行する。この閾値時間T1を基準として、電源20から外部負荷100に対して電力が供給された際に、突入電流による過電流が生じているか否かを判定することで、突入電流による過電流に対する半導体スイッチ30の誤動作の発生をさらに抑制することができる。
また、本実施形態では、タイマ70が計測した計測値が閾値時間T2以上となった場合に、リトライ実行部80がリトライ動作を終了する。これにより、発生している過電流が突入電流によるものか否かを判定することができるので、突入電流による過電流に対して、半導体スイッチ30の誤動作の発生をより確実に抑制することができる。
また、本実施形態では、リトライ実行部80が上記(7)式を満たすように、維持時間t20を設定することで、当該リトライ動作が終了するまでにキャパシタ120の充電をより確実に完了させることができる。
また、リトライ動作において、複数のオフ動作の各維持時間が相互に同一の値に設定すると、周期的な電圧降下が生じてしまうおそれがある。この場合、電源20に接続された他の外部負荷(不図示)に対する電源電圧も周期的に振動してしまい、当該他の外部負荷の性能を損ねるおそれがある。これに対し、本実施形態では、リトライ実行部80は、複数のオフ動作のそれぞれついて、維持時間t20を相互に異なる値に設定することで、周期的な電圧降下が生じるのを抑制することができる。
以上に説明した過電流保護装置10を複数備え、一つの電源から複数の外部負荷に対して電力を分配して供給する電力分配装置1について、図8を参照しながら説明する。図8は本発明の一実施の形態に係る電力分配装置を示すブロック図である。
本実施形態の電力分配装置1は、図8に示すように、2つの外部負荷100A,100Bに対して電力を分配して供給する装置である。本実施形態における「電力分配装置1」が本発明における「電力分配装置」の一例に相当する。
本実施形態の外部負荷100A,100Bは、いずれも上述の車載機器である。この外部負荷100A,100Bは、共通の電源20Aに対して並列に接続されている。電源20Aと外部負荷100Aとは、電力線P1を介して接続されている。電源20Aと外部負荷100Bとは、電力線P2を介して接続されている。
本実施形態の電力分配装置1は、第1の過電流保護装置10Aと、第2の過電流保護装置10Bとを備えている。本実施形態では、第1の過電流保護装置10Aの電源と、第2の過電流保護装置10Bの電源とは、同一の電源20Aとなっている。
第1の過電流保護装置10Aは、外部負荷100Aに対応している。具体的には、第1の過電流保護装置10Aの半導体スイッチ30Aが電力線P1に設けられており、当該半導体スイッチ30Aのオン/オフを切り替えて、電源20Aによる外部負荷100Aに対する電力の供給/停止を制御している。この第1の過電流保護装置10Aには、外部スイッチ200Aから外部負荷100Aの駆動要求信号が入力される。
第2の過電流保護装置10Bは、外部負荷100Bに対応している。具体的には、第2の過電流保護装置10Bの半導体スイッチ30Bが電力線P2に設けられており、当該半導体スイッチ30Bのオン/オフを切り替えて、電源20Aによる外部負荷100Bに対する電力の供給/停止を制御している。この第2の過電流保護装置10Bには、外部スイッチ200Bから外部負荷100Bの駆動要求信号が入力される。
本実施形態では、第1の過電流保護装置10Aのリトライ実行部80Aは、異常判定部60Aの判定結果に応じて、リトライ動作を実行する指令をゲート駆動部90Aに出力すると共に、第2の過電流保護装置10Bのリトライ実行部80Bにも同じ指令を出力する。
第2の過電流保護装置10Bのリトライ実行部80Bは、異常判定部60Bの判定結果に応じて、リトライ動作を実行する指令をゲート駆動部90Bに出力すると共に、第1の過電流保護装置10Aのリトライ実行部80Aにも同じ指令を出力する。リトライ実行部80Aとリトライ実行部80Bとは、信号線S8を介して、相互に信号の送受をすることができる。
次に、本実施形態の電力分配装置1における制御手順について、図9を参照しながら説明する。図9は本発明の一実施の形態に係る電力分配装置による制御を示すタイムチャートである。
第1の過電流保護装置10Aは、外部スイッチ200Aから駆動要求信号を受け取ると、半導体スイッチ30Aをオン状態に切り替える。そして、状態検出部50Aにより、半導体スイッチ30Aの状態を監視して、異常判定部60Aにより半導体スイッチ30Aの異常が判定されたら、リトライ実行部80Aがリトライ動作を実行する。
一方、第2の過電流保護装置10Bは、外部スイッチ200Bから駆動要求信号を受け取ると、半導体スイッチ30Bをオン状態に切り替える。ここでは、外部スイッチ200Bからの駆動要求信号の入力タイミングが、外部スイッチ200Aからの駆動要求信号の入力タイミングに対して遅れている。そして、状態検出部50Bにより、半導体スイッチ30Bの状態を監視して、異常判定部60Bにより半導体スイッチ30Bの異常が判定されたら、リトライ実行部80Bがリトライ動作を実行する。
このとき、リトライ実行部80Aは、第2の過電流保護装置10Bにおいてオフ動作を実行している場合、第1の過電流保護装置10Aにおいてオフ動作を行うのを禁止する。すなわち、リトライ実行部80Aは、リトライ動作中において、半導体スイッチ30Aのオフ状態が、半導体スイッチ30Bのオフ状態と重なるのを禁止している。
一方、リトライ実行部80Bは、第1の過電流保護装置10Aにおいてオフ動作を実行している場合、第2の過電流保護装置10Bにおいてオフ動作を行うのを禁止する。すなわち、リトライ実行部80Bは、リトライ動作中において、半導体スイッチ30Bのオフ状態が、半導体スイッチ30Aのオフ状態と重なるのを禁止している。
図9のタイムチャートを用いて、具体的に説明すると、第1の過電流保護装置10Aでは、経過時間t4の時に半導体スイッチ30Aの異常が判定され、リトライ実行部80Aによりリトライ動作が開始されている。そして、リトライ実行部80Aは、経過時間t4から経過時間t6までオフ動作を行う。
第2の過電流保護装置10Bでは、経過時間t5の時に半導体スイッチ30Bの異常が判定され、リトライ実行部80Bによりリトライ動作が開始されている。この場合、リトライ実行部80Bは、第1の過電流保護装置10Aにおいてオフ動作が行われているから、第2の過電流保護装置10Bにおいてオフ動作を行わない。リトライ実行部80Bは、第1の過電流保護装置10Aにおいてオフ動作が終了(図9の経過時間t6に相当)するまで、半導体スイッチ30Bのオン状態を保持する。
そして、リトライ実行部80Bは、第1の過電流保護装置10Aにおいてオフ動作が終了したら、第2過電流保護装置10Bにおいてオフ動作を開始する。その後、第1及び第2の過電流保護装置10A,10Bは、オフ動作が重ならないように、リトライ動作を実行する。
このように、本実施形態の電力分配装置1では、リトライ実行部80Aは、第2の過電流保護装置10Bにおいてオフ動作が行われている場合に、第1の過電流保護装置においてオフ動作を行うことを禁止している。また、リトライ実行部80Bは、第1の過電流保護装置10Aにおいてオフ動作が行われている場合に、第2の過電流保護装置においてオフ動作を行うことを禁止している。これにより、共通の電源20Aから外部負荷100Aに対する電力供給と、外部負荷100Bに対する電力供給と、を分散して行うことができる。この場合、電力分配装置1において、電源20Aから複数の外部負荷に対して供給される電力に共振が生じて、過大な電圧降下が生じることを防ぐことができる。この結果、他の外部負荷の動作の安定性を損ねるのを抑制することができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上記の実施形態では、電気容量成分を有するキャパシタ120における電気エネルギ量の増減を制御しているが、熱容量成分を有する発熱抵抗体における熱エネルギ量の増減を制御してもよい。以下に、等価的に示した熱回路モデルにおいて、熱抵抗成分と熱容量成分とを含む外部負荷100Cを備える過電流保護装置10Cについて説明する。
図10は、本発明の他の実施形態に係る過電流保護装置10Cを示すブロック図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
本例の外部負荷100Cは、図10に示すように、抵抗110Cを有している。この抵抗110Cは、発熱抵抗体であり、たとえば、ランプ等の車載機器である。本例の抵抗110Cでは、その一端が電力線P及び半導体スイッチ30を介して電源20に接続されており、他端が接地されている。なお、抵抗110Cの一端及び他端の接続先は、特に上述に限定されない。なお、本例において、外部負荷が電気容量成分を含んでいてもよい。
抵抗110Cは、通電される(すなわち、電源20から電力の供給を受ける)ことで自己発熱する。図11は、抵抗110Cを等価的に示した熱回路モデルである。
図11におけるΔTは、自己発熱により上昇した抵抗110Cの温度であり、Cthは、抵抗110Cの熱容量であり、Rthは、抵抗110Cの熱抵抗であり、Toutは、抵抗110Cの外部環境温度である。抵抗110Cの熱容量Cthや抵抗110Cの熱抵抗Rthは、予め実験的に求める。抵抗110Cにおける自己発熱は、ゲート駆動部90からゲート電極33に駆動信号が出力され、半導体スイッチ30がオン状態になると同時に開始する。
ここで、抵抗発熱体のインピーダンスと、当該抵抗発熱体の温度とは、正の相関を有することが知られている。抵抗発熱体の温度が高いほど、当該抵抗発熱体のインピーダンスは増大し、抵抗発熱体の温度が低いほど、当該抵抗発熱体のインピーダンスは減少する。つまり、抵抗発熱体の温度が低い場合、当該抵抗発熱体が低インピーダンスであることに起因して、当該抵抗発熱体を含む回路に突入電流による過電流が発生するおそれがある。
本例の制御装置40Cは、図10に示すように、リトライ実行部80Cを有している。このリトライ実行部80Cは、温度検出部81を有している。この温度検出部81は、抵抗110Cの温度を検出する機能を有している。温度検出部81は、信号線S9を介して抵抗110Cの温度(検出結果)をリトライ実行部80Cに出力している。このような温度検出部81としては、たとえば、サーミスタ等を用いることができる。
本例の過電流保護装置1Cの制御方法について説明する。本例における制御ルーチンは、外部負荷100Cの抵抗110Cが昇温されていない状態で実行する。まず、半導体スイッチ30がオン状態となり、外部負荷100Cに電力が供給される。この際、半導体スイッチ30が最初にオン状態となった直後では、抵抗110Cの温度が十分に低いため、当該抵抗110Cの低インピーダンスに起因して過大な電流が半導体スイッチ30に流れる。異常判定部60は、半導体スイッチ30を流れる電流値を監視して、半導体スイッチ30が異常であると判定したら、判定結果をリトライ実行部80Cに出力する。リトライ実行部80Cは、異常判定部60が半導体スイッチ30の異常を判定した場合、リトライ動作を実行する。
ここで、抵抗110Cは、通電することで自己発熱する。一方、抵抗110Cは、通電されていない状態では、当該抵抗110Cの温度が外部環境温度TOUTと一致するまで放熱する。つまり、リトライ動作におけるオン動作中では、抵抗110Cの自己発熱により当該抵抗110Cの熱容量成分に熱量が蓄えられる(図11参照)。一方、リトライ動作におけるオフ動作中では、当該抵抗110Cの熱容量成分に蓄えられた熱量が発散される。
この場合、本例のリトライ実行部80Cは、リトライ動作において、オフ動作の維持時間t20を、直前のオン動作中に抵抗110Cに蓄えられた熱量に対して、当該オフ動作中に抵抗110Cから発散される熱量が相対的に小さくなるように設定する。具体的には、リトライ実行部80Cは、温度検出部81から取得した抵抗110Cの温度から、オン動作中に抵抗110Cに蓄えられた熱量を求め、当該求めた熱量よりもオフ動作中に発散される熱量が相対的に小さくなるようにオフ動作の維持時間t20を設定する。なお、ここでいう温度検出部81から取得した抵抗110Cの温度とは、異常判定部60が半導体スイッチ30の異常を判定した時の抵抗110Cの温度である。
本例において、維持時間t20を上述のように設定することで、一度のオン動作と、直後の一度のオフ動作とが実行された後に抵抗110Cに残存する熱量は正となる。このため、リトライ実行部80Cがリトライ動作を継続することで、抵抗110Cが徐々に昇温する。そして、抵抗110Cが十分に昇温したら、当該抵抗110Cが電源20からの電力供給を受けて安定した動作を開始する。
ここで、従来の過電流保護装置では、抵抗発熱体の温度が低い場合における当該抵抗発熱体の低インピーダンスに起因して突入電流による過電流が発生することがあり、この過電流により電子スイッチがオフ状態となるように動作してしまうことがあった。電子スイッチがオフ状態となると、抵抗発熱体を通電できず、当該抵抗発熱体が自己発熱できない。このため、抵抗発熱体が昇温せず、当該抵抗発熱体の低インピーダンス状態が持続してしまい、突入電流による過電流が収束しない。これにより、電子スイッチが誤動作を繰り返すおそれがあった。
これに対し、本例の過電流保護装置1Cでは、リトライ動作において、オン動作中に抵抗110Cの熱容量成分に蓄えられた熱量に対して、当該オン動作の直後のオフ動作中に熱容量成分から発散される熱量を相対的に小さくできるので、当該抵抗110Cが徐々に昇温し、突入電流による過電流を収束させることができる。これにより、半導体スイッチ30の誤動作の発生を抑制することができる。
なお、本例においても、リトライ実行部80Cに閾値時間T1、T2が予め保存されていてもよい。この場合、閾値時間T1は、抵抗110Cの熱容量Cthに応じて、予め実験的に求める。また、閾値時間T2は、抵抗110Cの種類に応じて、予め実験的に求める。