JP2017151020A - 油圧機械の診断システム及び診断方法、油圧機械、並びに再生可能エネルギー型発電装置 - Google Patents

油圧機械の診断システム及び診断方法、油圧機械、並びに再生可能エネルギー型発電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】弁体の位置を規制するための位置規制部の損傷を検知可能な油圧機械の診断システムを提供する。
【解決手段】回転シャフトと、シリンダと、シリンダと共に作動室を形成するピストンと、作動室に設けられる高圧弁28及び低圧弁と、を有し、回転シャフトの回転運動とピストンの往復運動との間で変換を行う油圧機械において、高圧弁28又は低圧弁の少なくとも一方は、ソレノイドコイル42に電流を供給して生じる磁力によってコア41に向かって吸引される弁体35と、コア41に最も近付く位置を規制するための位置規制部60と、を有する電磁弁であり、診断システムは、作動室の圧力を検出する圧力センサと、圧力センサにより得られる筒内圧の経時変化に基づいて、コイルへの電流の供給を停止した時点から弁体がコアから離れた時点までの応答遅れを算出する応答遅れ算出部と、応答遅れに基づいて、位置規制部の損傷を検知する損傷検知部と、を備える。
【選択図】図5A

Description

本開示は、油圧機械の診断システム及び診断方法、油圧機械、並びに再生可能エネルギー型発電装置に関する。
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、油圧機械の作動室の圧力制御を行うためのバルブ(高圧弁又は低圧弁)として、コイルを励磁することで生じた磁力により、弁体をコアに向かって吸引することで弁体を駆動するように構成された電磁弁を用いることがある。
国際公開第2014/024232号
ところで、電磁弁のコアと弁体とが直接接触すると、コイルを非励磁にしても弁体がコアから離れにくくなり、弁体の応答性が低下してしまうことがある。このため、弁体が吸引されたときにコアに最も近づく位置を規制するための位置規制部を設けることがある。
しかしながら、本発明者の鋭意検討の結果、バルブの長期に亘る使用に伴い、弁体と位置規制部とが繰り返し衝突し、位置規制部の摩耗が徐々に進行することが明らかになった。
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の目的は、弁体の位置を規制するための位置規制部の損傷を検知することが可能な油圧機械並びにその診断システム及び診断方法と、再生可能エネルギー型発電装置とを提供することである。
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る油圧機械の診断システムは、
回転シャフトと、シリンダと、前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、を有し、前記回転シャフトの回転運動と前記ピストンの往復運動との間で変換を行うように構成された油圧機械の診断システムであって、
前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方は、
コイルに電流を供給して生じる磁力によってコアに向かって吸引されるように構成された弁体と、
前記弁体が吸引されたときに前記コアに最も近付く位置を規制するための位置規制部と、
を有する電磁弁であり、
前記作動室の圧力を検出するための圧力センサと、
前記圧力センサにより得られる筒内圧の経時変化に基づいて、前記コイルへの電流の供給を停止した時点から前記弁体が前記コアから離れた時点までの時間である応答遅れを算出する応答遅れ算出部と、
前記応答遅れに基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するように構成された損傷検知部と、
を備える。
本発明者の鋭意検討の結果、電磁弁の位置規制部の損傷が進行するに従い、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの時間(応答遅れ)が増加する傾向があることを見出した。
上記(1)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記損傷検知部は、前記応答遅れが閾値以上であるときに、前記位置規制部に損傷が生じたと判定するように構成される。
上記(2)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れと閾値との比較により、位置規制部の損傷を容易に検知することができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記損傷検知部は、前記応答遅れの経時変化に基づいて、前記位置規制部の損傷度を評価するように構成される。
上記(3)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れの経時変化に基づいて、位置規制部の損傷の進行度合い(損傷度)を適切に評価することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記診断システムは、
前記電磁弁の初期状態における前記応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するように構成された閾値設定部をさらに備え、
前記損傷検知部は、前記応答遅れ算出部により算出された前記応答遅れと、前記閾値設定部で設定された前記閾値との比較結果に基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するように構成される。
作動室の圧力計測により得られる筒内圧波形は、電磁弁の個体差の影響があるため、個々の電磁弁ごとに異なる。
上記(4)の構成によれば、電磁弁の初期状態における応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するので、個々の電磁弁に対して、それぞれ適切な閾値を設定することができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記弁体及び前記コアは、それぞれ磁性材料で構成され、
前記電磁弁は、前記弁体と前記コアとが最も近付いたときに、前記弁体と前記コアとの間には隙間が形成されるように構成される。
上記(5)の構成によれば、弁体とコアが最も近づいたときに弁体の位置が位置規制部によって規制される結果、弁体とコアとの間には隙間が形成されるようになっている。このため、電磁弁のコアと弁体とが直接接触する場合に比べて、弁体の応答性を向上させることができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記位置規制部は、前記弁体と前記コアとの間に設けられた非磁性体層を含む。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記非磁性体層は、非磁性材料で構成された板材を含む。
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記非磁性体層は、前記弁体又は前記コアの少なくとも一方の表面に設けられた非磁性材料で構成された溶射層を含む。
上記(6)〜(8)の構成によれば、上記(1)で述べた原理により、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、位置規制部としての非磁性体層の摩耗を検知することができる。
(9)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る油圧機械は、
回転シャフトと、
シリンダと、
前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、
前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、
上記(1)乃至(8)の何れかの構成の油圧機械の診断システムと、を備える。
上記(9)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記診断システムにより前記位置規制部の損傷が検知されたときに、該位置規制部を含む前記電磁弁に対応する前記シリンダを、押しのけ容積を生成しない休止状態とするように構成される。
上記(10)の構成によれば、位置規制部の損傷が検知されたときに、該位置規制部を含む電磁弁に対応するシリンダを休止状態とする。これにより、位置規制部の損傷に起因して正常に動作しない電磁弁を休止させ、油圧機械の運転を適切に行うことができる。
(11)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る再生可能エネルギー型発電装置は、
再生可能エネルギーを受け取って回転するように構成されたロータと、
前記ロータによって駆動されて作動油を昇圧するように構成された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより昇圧された作動油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧ポンプの吐出口と前記油圧モータの吸込口とを接続する高圧ラインと、
前記油圧モータの吐出口と前記油圧ポンプの吸込口とを接続する低圧ラインと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備え、
前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方は、上記(9)又は(10)の何れかの構成の油圧機械である
ことを特徴とする。
上記(11)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、油圧機械の電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(12)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る油圧機械の診断方法は、
回転シャフトと、シリンダと、前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、を有し、前記回転シャフトの回転運動と前記ピストンの往復運動との間で変換を行うように構成された油圧機械の診断方法であって、
前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方は、
コイルに電流を供給して生じる磁力によってコアに向かって吸引されるように構成された弁体と、
前記弁体が吸引されたときに前記コアに最も近付く位置を規制するための位置規制部と、
を有する電磁弁であり、
前記作動室の圧力を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力検出ステップで得られる筒内圧の経時変化に基づいて、前記コイルへの電流の供給を停止した時点から前記弁体が前記コアから離れた時点までの時間である応答遅れを算出するステップと、
前記応答遅れに基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するステップと、
を備えることを特徴とする。
上記(12)の方法によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、油圧機械の電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の方法において、
前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れが閾値以上であるときに、前記位置規制部に損傷が生じたと判定する。
上記(13)の方法によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れと閾値との比較により、位置規制部の損傷を容易に検知することができる。
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)の方法において、
前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れの経時変化に基づいて、前記位置規制部の損傷度を評価する。
上記(14)の方法によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れの経時変化に基づいて、位置規制部の損傷の進行度合い(損傷度)を適切に評価することができる。
(15)幾つかの実施形態では、上記(12)乃至(14)の何れかの方法において、
前記電磁弁の初期状態における前記応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するステップをさらに備え、
前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れ算出により算出された前記応答遅れと、前記閾値を決定するステップで設定された前記閾値との比較結果に基づいて、前記位置規制部の損傷を検知する。
上記(15)の方法によれば、電磁弁の初期状態における応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するので、個々の電磁弁に対して、それぞれ適切な閾値を設定することができる。
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、弁体の位置を規制するための位置規制部の損傷を検知することが可能な油圧機械並びにその診断システム及び診断方法と、再生可能エネルギー型発電装置とが提供される。
一実施形態に係る風力発電装置の概略図である。 一実施形態に係る油圧モータ(油圧機械)の構成を示す概略図である。 一実施形態に係る診断システムの構成を示す概略図である。 一実施形態に係る高圧弁及び低圧弁の構成を示す概略断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る油圧機械における作動室圧力の経時変化を示すグラフである。 油圧モータにおける応答遅れの時間変化の一例を示すグラフである。 一実施形態に係る電磁弁の構成を示す断面図である。 一実施形態に係る電磁弁の構成を示す断面図である。 応答遅れを回転数依存成分とピストン速度依存成分とに分けて示した図である。 一実施形態に係る正規化応答遅れの算出方法を示す信号処理を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
まず、一実施形態に係る診断システム及び診断方法の適用対象である油圧機械を備えた再生可能エネルギー型発電装置の一例である風力発電装置の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る風力発電装置の概略図である。同図に示すように、風力発電装置1は、再生可能エネルギーとしての風を受けて回転するように構成されたロータ3と、ロータ3の回転を伝達するための油圧トランスミッション7と、電力を生成するための発電機16とを備える。
ロータ3は、少なくとも一本のブレード2と、ブレード2が取り付けられるハブ4とを含む。
油圧トランスミッション7は、回転シャフト6を介してロータ3に連結される油圧ポンプ8と、油圧モータ10と、油圧ポンプ8と油圧モータ10とを接続する高圧ライン12及び低圧ライン14と、を含む。高圧ライン12は、油圧ポンプ8の吐出口と油圧モータ10の吸込口とを接続しており、低圧ライン14は、油圧モータ10の吐出口と油圧ポンプ8の吸込口とを接続している。
発電機16は、油圧モータ10の出力軸を介して油圧モータ10に連結される。一実施形態では、発電機16は、電力系統に連系されるとともに、油圧モータ10によって駆動される同期発電機である。
なお、油圧ポンプ8及び油圧モータ10や発電機16は、タワー19上に設置されたナセル18の内部に設置されてもよい。
図1に示す風力発電装置1では、ロータ3の回転エネルギーは、油圧ポンプ8及び油圧モータ10を含む油圧トランスミッション7を介して発電機16に入力され、発電機16において電力が生成されるようになっている。
ブレード2が風を受けると、風の力によってロータ3全体が回転し、油圧ポンプ8がロータ3によって駆動されて作動油を加圧し、高圧の作動油(圧油)を生成する。油圧ポンプ8で生成された圧油は高圧ライン12を介して油圧モータ10に供給され、この圧油によって油圧モータ10が駆動される。そして、出力軸を介して油圧モータ10に接続される発電機16において電力が生成される。油圧モータ10で仕事をした後の低圧の作動油は、低圧ライン14を経由して油圧ポンプ8に再び流入するようになっている。
油圧ポンプ8及び油圧モータ10は、押しのけ容積が調節可能な可変容量型であってもよい。
幾つかの実施形態では、油圧ポンプ8又は油圧モータ10の少なくとも一方は、以下で説明する油圧機械20である。
次に、一実施形態に係る油圧機械及びその診断システムの構成について説明する。
図2は、一実施形態に係る油圧機械の構成を示す概略図であり、図3は、一実施形態に係る診断システムの構成を示す概略図である。
一実施形態に係る診断システム及び診断方法における診断対象である油圧機械20は、図2に示すように、回転シャフト32と、シリンダ21と、シリンダ21と共に作動室24を形成するピストン22と、作動室24に対して設けられる高圧弁28及び低圧弁30と、回転シャフト32の回転運動とピストン22の往復運動との間の変換を行うためのカム26(変換機構)とを有する。カム26は、ピストン22に当接するカム曲面を有する。
なお、油圧機械20において、複数のシリンダ21及びピストン22が、油圧機械20の周方向に沿って配列されている。
ピストン22は、ピストン22の往復運動を回転シャフト32の回転運動にスムーズに変換する観点から、シリンダ21内を摺動するピストン本体部22Aと、該ピストン本体部22Aに取り付けられ、カム26のカム曲面に当接するピストンローラー又はピストンシューとで構成することが好ましい。なお図2には、ピストン22がピストン本体部22Aとピストンシュー22Bとからなる例を示した。
カム26は、油圧機械20の回転シャフト(クランクシャフト)32の軸中心Oから偏心して設けられた偏心カムである。ピストン22が上下動を一回行う間に、カム26及びカム26が取り付けられた回転シャフト32は一回転するようになっている。
他の実施形態では、カム26は、複数のローブ(凸部)を有する環状のマルチローブドカム(リングカム)であり、この場合には、カム26及びカム26が取り付けられた回転シャフト32が一回転する間に、ピストン22は上下動をローブの数だけ行うようになっている。
高圧弁28は、作動室24と作動室24の外部に設けられた高圧ライン12との間の高圧連通ライン34に設けられており、作動室24と高圧ライン12との連通状態を切り替え可能に構成されている。低圧弁30は、作動室24と作動室24の外部に設けられた低圧ライン14との間の低圧連通ライン36に設けられており、作動室24と低圧ライン14との連通状態を切り替え可能に構成されている。
高圧弁28又は低圧弁30の少なくとも一方は、コイルへの励磁電流の供給の切替えにより開閉制御可能な電磁弁である。
図2及び図3に示す油圧機械20の診断システム101は、各作動室24の圧力を検出するための圧力センサ72と、回転シャフト32の回転数を検出するための回転数センサ74と、圧力センサ72及び/又は回転数センサ74による検出結果に基づいて油圧機械20の診断及び制御を行うための診断・制御部100と、を含む。
診断システム101の診断・制御部100は、損傷検知部102と、応答遅れ算出部103と、閾値設定部104と、バルブ制御部106と、を含み、診断システム101は、以下に説明するように、油圧機械20の電磁弁(高圧弁28又は低圧弁30)の損傷を検知するように構成されている。
図2に示す油圧機械20では、ピストン22の往復運動に合わせてバルブが制御されて、ピストン22の往復運動に合わせて作動室24の圧力(作動室圧力)が周期的に変化するようになっている。ここで、油圧機械20の高圧弁28及び低圧弁30の構成、及び、バルブの開閉制御による周期的な作動室圧力の変化について説明する。
図4は、高圧弁28及び低圧弁30の構成を示す概略断面図である。なお、図4に示す例では、高圧弁28及び低圧弁30はともに電磁弁であり、図4では、高圧弁28が閉弁していて低圧弁30が開弁している状態が図示されている。幾つかの実施形態では、図4に示すように、高圧弁28、低圧弁30及びそれらのケーシング37をユニット化してバルブユニット38として構成してもよい。
図4に例示する高圧弁28は、弁体35を含む可動ユニット40と、可動ユニット40を開弁位置と閉弁位置とに移動させるためのアクチュエータとして機能するソレノイドコイル42と、スプリング44と、弁座46とを備えている。高圧弁28は、ノーマルクローズ式のポペット形電磁弁であり、弁座46が弁体35に対して作動室24側に設けられている。高圧弁28は、作動室24と高圧ライン12(図2参照)との連通状態を、ソレノイドコイル42の電磁力又はスプリング44の付勢力に起因した可動ユニット40の移動により切り替え可能に構成されている。
図4に例示する低圧弁30は、弁体48およびアーマチュア50を有する可動ユニット52と、ソレノイドコイル54と、スプリング56と、弁座58とを備えている。低圧弁30は、ノーマルオープン式のポペット形電磁弁(ポペット弁)であり、弁体48が弁座58に対して作動室24側に設けられている。低圧弁30は、作動室24と低圧ライン14(図2参照)との連通状態を、ソレノイドコイル54の電磁力又はスプリング56の付勢力に起因した可動ユニット52の移動により切り替え可能に構成されている。
高圧弁28及び低圧弁30の開閉は、バルブコントローラからの制御信号(開閉指令)により制御されるようになっている。幾つかの実施形態では、診断・制御部100のバルブ制御部106(図3参照)から高圧弁28及び低圧弁30に開閉指令の制御信号が付与されるようになっている。
バルブ制御部106からの制御信号によって高圧弁28が励磁されていないときには、可動ユニット40は、スプリング44によって弁座46に向かって付勢されて、作動室24と高圧ライン12とが連通しない位置(ノーマル位置;図4に図示される可動ユニット40の位置)に保持される。バルブ制御部106からの制御信号によって高圧弁28が励磁されると、可動ユニット40は、電磁力によってスプリング44の付勢力に抗して、作動室24と高圧ライン12とが連通する位置(励磁位置)に移動する。すなわち、高圧弁28は、励磁電流の供給制御によって、励磁電流の非供給時におけるノーマル位置と、励磁電流の供給時における励磁位置との間で弁体が移動可能に構成される。
一方、バルブ制御部106からの制御信号によって低圧弁30が励磁されていない時には、可動ユニット52は、スプリング56によって弁座58から離間する方向へ付勢されて、作動室24と低圧ライン14とが連通する開弁位置(ノーマル位置;図4に図示される可動ユニット52の位置)に保持される。バルブ制御部106からの制御信号によって低圧弁30が励磁されると、ソレノイドコイル54の電磁力によってアーマチュア50が吸引されて、可動ユニット52は、電磁力によってスプリング56の付勢力に抗して弁座58に向かって移動し、作動室24と高圧ライン12とが連通しない閉弁位置(励磁位置)に移動する。すなわち、低圧弁30は、励磁電流の供給制御によって、励磁電流の非供給時におけるノーマル位置と、励磁電流の供給時における励磁位置との間で弁体が移動可能に構成される。
上述した構成の高圧弁28及び低圧弁30を有する油圧機械20では、高圧弁28及び低圧弁30の開閉制御により、ピストン22の往復運動に伴って、作動室圧力が周期的に変化するようになっている。
油圧機械20が油圧モータ10である場合、油圧ポンプ8により生成される高圧ライン12と低圧ライン14との差圧によって、ピストン22が周期的に上下動し、ピストン22が上死点から下死点に向かうモータ工程と、ピストン22が下死点から上死点に向かう排出工程とが繰り返される。油圧モータ10の運転中、ピストン22とシリンダ21の内壁面によって形成される作動室24の容積は周期的に変化する。すなわち、油圧モータ10では、モータ工程において高圧弁28を開き低圧弁30を閉じることで高圧ライン12から作動室24内に作動油を流入させるとともに、排出工程において高圧弁28を閉じ低圧弁30を開くことで作動室24内で仕事をした作動油を低圧ライン14に送り出す。
このようにして、作動室24への圧油の導入によってピストン22の往復運動が起こり、この往復運動がカム26の回転運動に変換される結果、カム26とともに油圧機械20の回転シャフト32が回転する。
油圧機械20が油圧ポンプ8である場合、回転シャフト32とともにカム26が回転すると、カム面に合わせてピストン22が周期的に上下動し、ピストン22が下死点から上死点に向かうポンプ工程と、ピストン22が上死点から下死点に向かう吸入工程とが繰り返される。そのため、ピストン22とシリンダ21の内壁面によって形成される作動室24の容積は周期的に変化する。すなわち、油圧ポンプ8では、吸入工程において高圧弁28を閉じ低圧弁30を開くことで低圧ライン14から作動室24内に作動油を流入させるとともに、ポンプ工程において高圧弁28を開き低圧弁30を閉じることで作動室24から高圧ライン12に圧縮された作動油を送り出す。
このようにして、油圧機械20の回転シャフト32とともに回転するカム26の回転運動がピストン22の往復運動に変換され、作動室24の周期的な容積変化が起こり、作動室24で高圧の作動油(圧油)が生成される。
幾つかの実施形態に係る電磁弁(高圧弁28又は低圧弁30の少なくとも一方)は、上述に説明した構成に加えて、以下に説明する特徴的な構成をさらに有する。幾つかの実施形態に係る電磁弁の特徴的な構成について、図5A〜図5Dを参照して以下に説明する。図5A〜図5Dは、それぞれ、一実施形態に係る電磁弁(高圧弁28)の断面図である。図5A〜図5Dでは、高圧弁28の開弁状態を示している。
なお、図5A〜図5Dにおいては、幾つかの実施形態に係る電磁弁の例として高圧弁28を図示しているが、幾つかの実施形態に係る電磁弁は、低圧弁30であってもよい。
図5A〜図5Dに示すように、高圧弁28(電磁弁)は、ソレノイドコイル42を収容するコア(バルブケーシング)41を備え、弁体35は、ソレノイドコイル42に電流を供給して生じる磁力によってコア41に向かって吸引されるように構成されている。
そして、高圧弁28(電磁弁)は、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置を規制するための位置規制部60をさらに有する。
なお、高圧弁28は、連通流路43を介して高圧ライン12(図2参照)と連通可能であるとともに、連通流路45を介して作動室24(図2参照)と連通可能となっている。
幾つかの実施形態では、コア41及び弁体35はともに磁性材料で構成されている。そして、幾つかの実施形態では、図5A〜図5Dに励磁するように、高圧弁28は位置規制部60を有するため、弁体35とコア41が最も近付いたときであっても、弁体35とコア41との間(すなわちコア41の下端面61と弁体35の上端面63との間)に隙間Gが形成されるようになっている。
この場合、高圧弁28(電磁弁)のコア41と弁体35が直接接触する場合に比べて、弁体35の応答性を向上させることができる。
位置規制部60は様々な態様をとり得る。
例えば、図5A及び図5Bに示す例では、位置規制部60は、弁体35とコア41との間に設けられた非磁性体層62(62a又は62b)を含む。
弁体35とコア41との間に非磁性体層62を介在させることで、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
また、弁体35とコア41との間に非磁性体層62を介在させることで、弁体35及びコア41が磁性材料で構成された場合であっても、磁性体同士(弁体35とコア41)が直接接触しないため、弁体35の応答性が良好となる。
図5Aに示す非磁性体層62は、非磁性材料で構成された板材62aである。板材62aは、一面側がコア(バルブケーシング)41の下端面61に当接した状態で、クランプ82によってコア41に固定されている。
図5Bに示す非磁性体層62は、コア41の表面(すなわち弁体35に対向する表面)に非磁性材料を溶射することにより設けられた溶射層62bである。
一実施形態では、溶射層62bは、弁体35の表面(すなわちコア41に対向する表面)に設けられていてもよい。
非磁性体層62(例えば板材62a又は溶射層62b)を構成する非磁性材料の例として、例えば、ベリリウム銅又はステライトが挙げられる。これらの非磁性材料を用いることで、耐摩耗性の良好な非磁性体層62を形成することができる。
図5Cに示す例では、位置規制部60は、弁体35に設けられた段差部64(64a,64b)を含む。
図5Cに示す例では、弁体35の移動方向において弁体35とコア41の間に非磁性の環状部材84が設けられており、該環状部材84は、コア41に対して固定されている。そして、段差部64aは、弁体35の上端部においてにおいて、弁体35の半径方向外向きに突出するように形成され、弁体35がコア41に最も近付いたときに、段差部64aが環状部材84に当接するようになっている。このように段差部64aが環状部材84に当接することにより、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
また、図5Cに示す例では、コア(バルブケーシング)41とバルブケーシング47との間には、連通流路43を形成する環状スペーサ86が設けられており、該環状スペーサ86は、環状部材84を介してコア41に対して固定されている。弁体35には、弁体35の移動方向において弁体35の上端面63とシート面65(弁座46と当接する面)との間において、弁体35の半径方向外向きに突出するように段差部64bが形成されている。そして、段差部64bは、弁体35がコア41に最も近付いたときに、段差部64bが環状スペーサ86に当接するようになっている。このように段差部64bが環状スペーサ86に当接することにより、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
なお、図5Cにおいては、段差部64a及び64bを含む2つの段差部64が弁体35に形成された例を示したが、幾つかの実施形態では1つ又は3つ以上の段差部64が弁体35に形成されていてもよい。
また、位置規制部60としての段差部64は、必ずしも弁体35に設けられている必要はない。例えば、段差部64は、高圧弁28の開閉にともなって弁体35とともに移動する可動ユニット40に設けられていてもよい。なお、可動ユニット40は、開弁位置と閉弁位置との間で弁体35の移動をガイドするためのロッド49を含んでいてもよい。
あるいは、段差部64は、高圧弁28のうち、高圧弁28の開閉に伴って弁体35とともに移動しない固定側(例えば、環状部材84や環状スペーサ86)に設けられていてもよい。
図5Dに示す例では、位置規制部60は、弁体35の背面66を含んでいる。ここで、弁体35の背面66は、弁体35を挟んでシート面65と反対側に位置する面である。
この場合、弁体35の背面66は、弁体35がコア41に向かって吸引されて弁体35とコア41とが最も近付いたときに、高圧弁28のうちの上述の固定側(図4Dにおいては環状スペーサ86)に当接するように構成されている。
弁体35の背面66がこのように構成されることで、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
次に、以上に説明した構成を有する油圧機械20において、位置規制部60の損傷を検知するための油圧機械の診断方法について説明する。
幾つかの実施形態に係る油圧機械20の診断方法は、作動室24の圧力を検出する圧力検出ステップと、圧力検出結果に基づいて応答遅れを算出する応答遅れ算出ステップと、算出した応答遅れに基づいて位置規制部60の損傷を検知する損傷検知ステップと、を備える。
また、幾つかの実施形態において、以下に説明する油圧機械20の診断方法は、上述の診断システム101により実行される。
(圧力検出ステップ)
圧力検出ステップでは、作動室24の圧力(作動室圧力)を検出する。圧力検出ステップでは、油圧機械20の各シリンダ21に設けられた圧力センサ72を用いて各シリンダ21の作動室圧力を検出してもよい。
(応答遅れ算出ステップ)
応答遅れ算出ステップでは、圧力検出ステップで得られた筒内圧の経時変化に基づいて、ソレノイドコイル42への電流の供給を停止した時点から、弁体35がコア41から離れた時点までの時間である応答遅れDRを算出する。
ここで、図6は、一実施形態に係る油圧機械20の一例としての油圧モータ10において、圧力検出の結果得られる筒内圧(作動室圧力)の経時変化を示すグラフである。
図6のグラフにおいて、横軸は時刻tを表し、縦軸は、ピストン22の位置、高圧弁28の制御信号及び作動室24の圧力をそれぞれ表す。ここで、高圧弁28の制御信号は、バルブコントローラから出力された制御信号(開閉指令)であり、“On”は高圧弁28を開状態とするために励磁電流を供給していることを示し、“Off”は高圧弁28を閉状態とするために励磁電流を供給していないことを示す。
既に説明したように(図6も参照)、油圧モータ10では、ピストン22が上死点付近に到達したときに、低圧弁30を閉状態とするとともに高圧弁28を開状態として高圧ライン12から作動室24へ高圧の作動油を導入するため、作動室圧力は高くなる。一方、油圧モータ10では、ピストン22が下死点付近に到達したときに、高圧弁28を閉状態とするとともに低圧弁30を開状態として作動室24から低圧ライン14へ作動油を排出するため、作動室圧力は低くなる。
ここで、ピストン22が下死点付近に到達するときに、高圧弁28には、バルブコントローラにより、高圧弁28を閉じるための制御信号(閉指令)が付与されて、図6に示すように制御信号は“Off”となる。すなわち、このように制御信号が“Off”となる時点(時刻t)で、高圧弁28を開状態に維持するためのソレノイドコイル42への励磁電流の供給が停止される。
一方、筒内圧(作動室圧力)の低下が開始する時点(時刻t)は、高圧弁28が閉じた時点、すなわち弁体35がコア41から離れた時点であるとみなすことができる。
そこで、高圧弁28に閉指令が付与されてソレノイドコイル42への励磁電流の供給が停止された時点tから、弁体35がコア41から離れ、実質的に高圧弁28が閉じた時点tまでの期間を、応答遅れDRと定義する。
なお、一実施形態では、高圧弁28に供給される励磁電流の電流値を例えば電流計により検出し、該励磁電流の検出の結果得られる電流値の経時変化と、筒内圧(作動室圧力)の経時変化との関係から、応答遅れDRを算出してもよい。
(損傷検知ステップ)
損傷検知ステップでは、応答遅れ算出ステップで算出された応答遅れDRに基づいて、位置規制部60の損傷を検知する。
本発明者の知見によれば、高圧弁28(電磁弁)の位置規制部60の損傷が進行するに従い、ソレノイドコイル42への電流供給停止時点から弁体35がコア41から離れるまでの時間(応答遅れDR)が増加する傾向があることが見出された。これは、位置規制部60において摩耗等の損傷が進行すると、該損傷に起因して、弁体35とコア41との間の隙間Gの幅が減少し、このため、ソレノイドコイル42への電流供給によるコア41の吸着力が増加して、応答遅れDRが増加するためであると考えられる。
そこで、ソレノイドコイル33への電流供給停止時点から弁体35がコア41から離れるまでの応答遅れDRに基づいて、高圧弁28(電磁弁)の位置規制部の損傷を検知することができる。
ここで、図7は、油圧モータ10における応答遅れDRの時間変化の一例を示すグラフである。なお、図7は、油圧モータ10において、ピストン22の往復運動サイクル毎に上述のようにして油圧モータ10における応答遅れDRを取得し、取得データの規定期間における平均値を横軸の時間tに対してプロットしたものである。
なお、ピストン22の往復運動サイクル毎の応答遅れDRを取得するために、回転数センサ74により、ピストン22の位相(ピストン位置)を取得するようにしてもよい。
図7のグラフに示された結果を見れば、油圧モータ10の運転時間が経過するにしたがって、応答遅れDRが増加傾向であることがわかる。すなわち、油圧モータ10における応答遅れDRと位置規制部60の損傷の程度とは相関関係があるので、応答遅れDRに基づいて、位置規制部60の損傷を検知することができる。
また、油圧モータ10における応答遅れDRと、該応答遅れDRに対応する位置規制部60の損傷の程度とを予め把握しておけば、応答遅れDRに関する適切な閾値DRthを設定することができる(図7参照)。そして、損傷検知ステップでは、該閾値DRthと応答遅れDRの算出結果とを比較することにより、位置規制部60に損傷が生じたか否かを判定することができる。
例えば、閾値DRthと算出した応答遅れDRとを比較した結果、応答遅れDRが閾値DRth以上であるときに、位置規制部60に損傷が生じたと判定するようにしてもよい。
また、幾つかの実施形態では、損傷検知ステップにおいて、応答遅れDRの経時変化に基づいて、位置規制部60の損傷度(摩耗等の進行度合い)を評価するようにしてもよい。
例えば、所定期間における応答遅れDRの近似直線La(図7参照)の傾きと、設定されている閾値DRthとから、位置規制部60の余寿命を算出するようにしてもよい。
損傷検知ステップにて、高圧弁28の位置規制部60に損傷が生じていると判定された場合には、油圧機械20のシリンダ21のうち、該高圧弁28に対応するシリンダ21を、押しのけ容積を生成しない休止状態としてもよい。あるいは、損傷検知ステップにて、高圧弁28の位置規制部60に損傷が生じていると判定された場合には、該高圧弁28を交換してもよい。
なお、油圧機械20のシリンダ21を休止状態とするには、該シリンダ21に対応する高圧弁28及び低圧弁30に対して、バルブ制御部106(図3参照)から、適切な開閉指令の制御信号を送る。油圧機械20(油圧モータ10又は油圧ポンプ)においてシリンダ21を休止状態とするには、該シリンダ21に対応する高圧弁28を閉状態に維持するとともに、低圧弁30を開状態に維持する。これにより、シリンダ21と高圧ライン12とは非連通状態となるとともに、シリンダ21と低圧ライン14とは連通状態となるので、作動油は、作動室24と低圧ライン14との間で流出入するのみである。よって、該シリンダ21に対応するピストン22は、実質的に仕事をせず、又は仕事をされない。
(閾値決定ステップ)
損傷検知ステップにて算出した応答遅れDRと比較する閾値DRthは、閾値設定部104により設定してもよい。
損傷検知ステップにて算出した応答遅れDRと比較する閾値DRthは、複数の高圧弁28(電磁弁)の個体毎に行ってもよい。
例えば、幾つかの実施形態では、高圧弁28(電磁弁)の初期状態(使用し始め)における応答遅れDRの統計値(例えば平均値)に基づいて閾値DRthを決定してもよい。
このように、電磁弁の初期状態における応答遅れDRの統計値に基づいて閾値DRthを決定することで、個々の電磁弁に対して、それぞれ適切な閾値DRthを設定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、以上においては、ノーマルクローズ式の高圧弁28である場合を電磁弁の一例として説明したが、一実施形態では、ノーマルオープン式の電磁弁を採用した油圧機械20において、同様の診断方法又は診断システムを適用することができる。
ここで、図8A及び図8Bは、一実施形態に係るノーマルオープン式の電磁弁の構成を示す断面図である。図8A及び図8Bに示す電磁弁は、油圧機械20において、作動油90が入口92から供給されるとともに出口94から排出されるように構成された電磁弁である。図8Aは、弁体35がノーマル位置(すなわち開位置)に位置するときの状態を示し、図8Bは、弁体35が励磁位置(すなわち閉状態)に位置するときの状態を示す。なお、図8A及び図8Bにおいて、図5A〜図5Dに図示される電磁弁に対応する主要な各構成要素については、図5A〜図5Dと同一の符号を付して示している。
図9Bに示すように、弁体35は、コイル42に電流を供給して生じる磁力によって、コア41に向かって吸引されることによって、閉じられる。
そして、弁体35が吸引されたときに、弁体35がコア41に最も近付く位置は、位置規制部60によって規制されている。また、位置規制部60により弁体35のコア41に対する位置が規制されているため、弁体35がコア41に最も近付いたときの弁体35とコア41との間には、隙間Gが形成されている。
なお、ノーマルオープン式の電磁弁の場合、応答遅れ算出ステップで算出される応答遅れDRは、コイル42への電流の供給を停止した時点(電磁弁に対して開指令が出力された時点)から弁体35がコア41から離れて開弁した時点までの時間であり、すなわち“開応答遅れ”である。
これに対して、先に説明したノーマルクローズ式の電磁弁の場合、応答遅れ算出ステップで算出される応答遅れDRは、コイル42への電流の供給を停止した時点(電磁弁に対して閉指令が出力された時点)から弁体35がコア41から離れて閉弁した時点までの時間であり、すなわち“閉応答遅れ”である。
また、上述の実施形態では、ソレノイドコイル42への電流の供給を停止した時点から、弁体35がコア41から離れた時点までの時間である応答遅れDR(図6参照)の値自体を用いて、位置規制部60の損傷を検知するようになっていたが、他の実施形態では、ピストン22の速度Vや、回転シャフト32の回転数Nに応じて正規化処理を行った正規化応答遅れDRを用いて、位置規制部60の損傷を検知してもよい。この場合、例えば、正規化応答遅れDRを上述の閾値DRthと比較し、正規化応答遅れDRが閾値DRth以上であるときに、位置規制部60に損傷が生じたと判定するようにしてもよい。
図9は、応答遅れDRを、回転数依存成分Rdと、ピストン速度依存成分(DR−Rd)とに分けて示した図である。
図9に示すように、応答遅れDRは、ソレノイドコイル42への電流供給に応じて高圧弁28の弁体35が非励磁位置に向かって動き始めるまでの間の第1遅れRdと、弁体35が非励磁位置に到達するまでの第2遅れ(DR−Rd)と、の和であると捉えることができる。ここで、第1遅れRdは、ピストン22の速度Vには直接依存せず、回転シャフト32の回転数Nに依存し、具体的には回転数Nに反比例する。一方、第2遅れ(DR−Rd)は、ピストン22の速度Vに依存し、具体的にはピストン速度Vに反比例する。
このため、基準となる第1遅れRdを基準第1遅れRdBとし、基準となるピストン22の速度Vを基準ピストン速度VBとし、基準となる回転シャフト32の回転数Nを基準回転数NBとしたとき、下記式(1)により、応答遅れDRを正規化することができる。
[数1]
DR=(DR−RdB)×V/VB+Rd×N/NB (1)

これにより、ピストン22の速度V及び回転シャフト32の回転数Nが異なる複数の運転状態間において、V及びRの差異に起因した影響を排除した正規化応答遅れDRを得ることができるため、油圧機械20の運転状態によらず、高精度に位置規制部60の損傷を検知することができる。
図10は、一実施形態に係る正規化応答遅れDRの算出方法を示す信号処理を示す図である。
同図に示すように、回転シャフト32の回転パルスをパルス計により取得する(S200)。次に、回転パルス200の計測結果から位相角情報を算出する(S202)。位相角情報202から回転シャフト32の回転数Nが得られる(S204)。一方、ソレノイド42における電流値、および、作動室24における圧力(筒内圧)を監視しておく(S206及びS208)。そして、S202において取得した位相角情報から、ソレノイド42における電流値がゼロになった時点(ソレノイド42への電流供給停止時点)における位相角を算出する(S210)。また、S202において取得した位相角情報から、筒内圧が低下し始める時点(弁体35がコア41から離れて非励磁位置に到達した時点)における位相角を算出する(S212)。S210において算出した位相角と、S212で算出した位相角との差を求めることで、応答遅れDRが算出される(S214)。一方、S204で求めた回転シャフト32の回転数Nから、S212で求めた位相角から、弁体35がコア41から離れて非励磁位置に到達した時点におけるピストン22の速度Vが求まる(S216)。こうして、上記式(1)に対して、応答遅れDRと、S204で求めた回転数Nと、S216で求めたピストン速度Vと、既知のパラメータ(基準第1遅れRdB、基準ピストン速度VB及び基準ピストン速度VB)と、を代入することで、正規化応答遅れDRを算出することができる(S218)。
なお、幾つかの実施形態では、上述の処理(S200〜S218)は、診断システム101の応答遅れ算出部103において行ってもよい。この場合、診断システム101の損傷検知部102が、応答遅れ算出部103により算出された正規化応答遅れDRと、閾値設定部104により設定された閾値DRthとの比較結果に基づいて、位置規制部60の損傷を検知してもよい。
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
1 風力発電装置
2 ブレード
3 ロータ
4 ハブ
6 回転シャフト
7 油圧トランスミッション
8 油圧ポンプ
10 油圧モータ
12 高圧ライン
14 低圧ライン
16 発電機
18 ナセル
19 タワー
20 油圧機械
21 シリンダ
22 ピストン
22A ピストン本体部
22B ピストンシュー
24 作動室
26 カム
28 高圧弁
30 低圧弁
32 回転シャフト
33 ソレノイドコイル
34 高圧連通ライン
35 弁体
36 低圧連通ライン
37 ケーシング
38 バルブユニット
40 可動ユニット
41 コア
42 ソレノイドコイル
43 連通流路
44 スプリング
45 連通流路
46 弁座
47 バルブケーシング
48 弁体
49 ロッド
50 アーマチュア
52 可動ユニット
54 ソレノイドコイル
56 スプリング
58 弁座
60 位置規制部
61 下端面
62 非磁性体層
62a 板材
62b 溶射層
63 上端面
64 段差部
65 シート面
66 背面
72 圧力センサ
74 回転数センサ
76 電流センサ
82 クランプ
84 環状部材
86 環状スペーサ
90 作動油
92 入口
94 出口
100 制御部
101 診断システム
102 損傷検知部
103 応答遅れ算出部
104 閾値設定部
106 バルブ制御部
DRth 閾値
G 隙間
O 軸中心
本開示は、油圧機械の診断システム及び診断方法、油圧機械、並びに再生可能エネルギー型発電装置に関する。
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、油圧機械の作動室の圧力制御を行うためのバルブ(高圧弁又は低圧弁)として、コイルを励磁することで生じた磁力により、弁体をコアに向かって吸引することで弁体を駆動するように構成された電磁弁を用いることがある。
国際公開第2014/024232号
ところで、電磁弁のコアと弁体とが直接接触すると、コイルを非励磁にしても弁体がコアから離れにくくなり、弁体の応答性が低下してしまうことがある。このため、弁体が吸引されたときにコアに最も近づく位置を規制するための位置規制部を設けることがある。
しかしながら、本発明者の鋭意検討の結果、バルブの長期に亘る使用に伴い、弁体と位置規制部とが繰り返し衝突し、位置規制部の摩耗が徐々に進行することが明らかになった。
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の目的は、弁体の位置を規制するための位置規制部の損傷を検知することが可能な油圧機械並びにその診断システム及び診断方法と、再生可能エネルギー型発電装置とを提供することである。
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る油圧機械の診断システムは、
回転シャフトと、シリンダと、前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、を有し、前記回転シャフトの回転運動と前記ピストンの往復運動との間で変換を行うように構成された油圧機械の診断システムであって、
前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方は、
コイルに電流を供給して生じる磁力によってコアに向かって吸引されるように構成された弁体と、
前記弁体が吸引されたときに前記コアに最も近付く位置を規制するための位置規制部と、
を有する電磁弁であり、
前記作動室の圧力を検出するための圧力センサと、
前記圧力センサにより得られる筒内圧の経時変化に基づいて、前記コイルへの電流の供給を停止した時点から前記弁体が前記コアから離れた時点までの時間である応答遅れを算出する応答遅れ算出部と、
前記応答遅れに基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するように構成された損傷検知部と、
を備える。
本発明者の鋭意検討の結果、電磁弁の位置規制部の損傷が進行するに従い、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの時間(応答遅れ)が増加する傾向があることを見出した。
上記(1)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記損傷検知部は、前記応答遅れが閾値以上であるときに、前記位置規制部に損傷が生じたと判定するように構成される。
上記(2)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れと閾値との比較により、位置規制部の損傷を容易に検知することができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記損傷検知部は、前記応答遅れの経時変化に基づいて、前記位置規制部の損傷度を評価するように構成される。
上記(3)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れの経時変化に基づいて、位置規制部の損傷の進行度合い(損傷度)を適切に評価することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記診断システムは、
前記電磁弁の初期状態における前記応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するように構成された閾値設定部をさらに備え、
前記損傷検知部は、前記応答遅れ算出部により算出された前記応答遅れと、前記閾値設定部で設定された前記閾値との比較結果に基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するように構成される。
作動室の圧力計測により得られる筒内圧波形は、電磁弁の個体差の影響があるため、個々の電磁弁ごとに異なる。
上記(4)の構成によれば、電磁弁の初期状態における応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するので、個々の電磁弁に対して、それぞれ適切な閾値を設定することができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記弁体及び前記コアは、それぞれ磁性材料で構成され、
前記電磁弁は、前記弁体と前記コアとが最も近付いたときに、前記弁体と前記コアとの間には隙間が形成されるように構成される。
上記(5)の構成によれば、弁体とコアが最も近づいたときに弁体の位置が位置規制部によって規制される結果、弁体とコアとの間には隙間が形成されるようになっている。このため、電磁弁のコアと弁体とが直接接触する場合に比べて、弁体の応答性を向上させることができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記位置規制部は、前記弁体と前記コアとの間に設けられた非磁性体層を含む。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記非磁性体層は、非磁性材料で構成された板材を含む。
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記非磁性体層は、前記弁体又は前記コアの少なくとも一方の表面に設けられた非磁性材料で構成された溶射層を含む。
上記(6)〜(8)の構成によれば、上記(1)で述べた原理により、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、位置規制部としての非磁性体層の摩耗を検知することができる。
(9)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る油圧機械は、
回転シャフトと、
シリンダと、
前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、
前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、
上記(1)乃至(8)の何れかの構成の油圧機械の診断システムと、を備える。
上記(9)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記診断システムにより前記位置規制部の損傷が検知されたときに、該位置規制部を含む前記電磁弁に対応する前記シリンダを、押しのけ容積を生成しない休止状態とするように構成される。
上記(10)の構成によれば、位置規制部の損傷が検知されたときに、該位置規制部を含む電磁弁に対応するシリンダを休止状態とする。これにより、位置規制部の損傷に起因して正常に動作しない電磁弁を休止させ、油圧機械の運転を適切に行うことができる。
(11)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る再生可能エネルギー型発電装置は、
再生可能エネルギーを受け取って回転するように構成されたロータと、
前記ロータによって駆動されて作動油を昇圧するように構成された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより昇圧された作動油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧ポンプの吐出口と前記油圧モータの吸込口とを接続する高圧ラインと、
前記油圧モータの吐出口と前記油圧ポンプの吸込口とを接続する低圧ラインと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備え、
前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方は、上記(9)又は(10)の何れかの構成の油圧機械である
ことを特徴とする。
上記(11)の構成によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、油圧機械の電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(12)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る油圧機械の診断方法は、
回転シャフトと、シリンダと、前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、を有し、前記回転シャフトの回転運動と前記ピストンの往復運動との間で変換を行うように構成された油圧機械の診断方法であって、
前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方は、
コイルに電流を供給して生じる磁力によってコアに向かって吸引されるように構成された弁体と、
前記弁体が吸引されたときに前記コアに最も近付く位置を規制するための位置規制部と、
を有する電磁弁であり、
前記作動室の圧力を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力検出ステップで得られる筒内圧の経時変化に基づいて、前記コイルへの電流の供給を停止した時点から前記弁体が前記コアから離れた時点までの時間である応答遅れを算出するステップと、
前記応答遅れに基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するステップと、
を備えることを特徴とする。
上記(12)の方法によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れに基づいて、油圧機械の電磁弁の位置規制部の損傷を検知することができる。
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の方法において、
前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れが閾値以上であるときに、前記位置規制部に損傷が生じたと判定する。
上記(13)の方法によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れと閾値との比較により、位置規制部の損傷を容易に検知することができる。
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)の方法において、
前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れの経時変化に基づいて、前記位置規制部の損傷度を評価する。
上記(14)の方法によれば、コイルへの電流供給停止時点から弁体がコアから離れるまでの応答遅れの経時変化に基づいて、位置規制部の損傷の進行度合い(損傷度)を適切に評価することができる。
(15)幾つかの実施形態では、上記(12)乃至(14)の何れかの方法において、
前記電磁弁の初期状態における前記応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するステップをさらに備え、
前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れを算出するステップで算出された前記応答遅れと、前記閾値を決定するステップで設定された前記閾値との比較結果に基づいて、前記位置規制部の損傷を検知する。
上記(15)の方法によれば、電磁弁の初期状態における応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するので、個々の電磁弁に対して、それぞれ適切な閾値を設定することができる。
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、弁体の位置を規制するための位置規制部の損傷を検知することが可能な油圧機械並びにその診断システム及び診断方法と、再生可能エネルギー型発電装置とが提供される。
一実施形態に係る風力発電装置の概略図である。 一実施形態に係る油圧モータ(油圧機械)の構成を示す概略図である。 一実施形態に係る診断システムの構成を示す概略図である。 一実施形態に係る高圧弁及び低圧弁の構成を示す概略断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る電磁弁(高圧弁)の断面図である。 一実施形態に係る油圧機械における作動室圧力の経時変化を示すグラフである。 油圧モータにおける応答遅れの時間変化の一例を示すグラフである。 一実施形態に係る電磁弁の構成を示す断面図である。 一実施形態に係る電磁弁の構成を示す断面図である。 応答遅れを回転数依存成分とピストン速度依存成分とに分けて示した図である。 一実施形態に係る正規化応答遅れの算出方法を示す信号処理を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
まず、一実施形態に係る診断システム及び診断方法の適用対象である油圧機械を備えた再生可能エネルギー型発電装置の一例である風力発電装置の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る風力発電装置の概略図である。同図に示すように、風力発電装置1は、再生可能エネルギーとしての風を受けて回転するように構成されたロータ3と、ロータ3の回転を伝達するための油圧トランスミッション7と、電力を生成するための発電機16とを備える。
ロータ3は、少なくとも一本のブレード2と、ブレード2が取り付けられるハブ4とを含む。
油圧トランスミッション7は、回転シャフト6を介してロータ3に連結される油圧ポンプ8と、油圧モータ10と、油圧ポンプ8と油圧モータ10とを接続する高圧ライン12及び低圧ライン14と、を含む。高圧ライン12は、油圧ポンプ8の吐出口と油圧モータ10の吸込口とを接続しており、低圧ライン14は、油圧モータ10の吐出口と油圧ポンプ8の吸込口とを接続している。
発電機16は、油圧モータ10の出力軸を介して油圧モータ10に連結される。一実施形態では、発電機16は、電力系統に連系されるとともに、油圧モータ10によって駆動される同期発電機である。
なお、油圧ポンプ8及び油圧モータ10や発電機16は、タワー19上に設置されたナセル18の内部に設置されてもよい。
図1に示す風力発電装置1では、ロータ3の回転エネルギーは、油圧ポンプ8及び油圧モータ10を含む油圧トランスミッション7を介して発電機16に入力され、発電機16において電力が生成されるようになっている。
ブレード2が風を受けると、風の力によってロータ3全体が回転し、油圧ポンプ8がロータ3によって駆動されて作動油を加圧し、高圧の作動油(圧油)を生成する。油圧ポンプ8で生成された圧油は高圧ライン12を介して油圧モータ10に供給され、この圧油によって油圧モータ10が駆動される。そして、出力軸を介して油圧モータ10に接続される発電機16において電力が生成される。油圧モータ10で仕事をした後の低圧の作動油は、低圧ライン14を経由して油圧ポンプ8に再び流入するようになっている。
油圧ポンプ8及び油圧モータ10は、押しのけ容積が調節可能な可変容量型であってもよい。
幾つかの実施形態では、油圧ポンプ8又は油圧モータ10の少なくとも一方は、以下で説明する油圧機械20である。
次に、一実施形態に係る油圧機械及びその診断システムの構成について説明する。
図2は、一実施形態に係る油圧機械の構成を示す概略図であり、図3は、一実施形態に係る診断システムの構成を示す概略図である。
一実施形態に係る診断システム及び診断方法における診断対象である油圧機械20は、図2に示すように、回転シャフト32と、シリンダ21と、シリンダ21と共に作動室24を形成するピストン22と、作動室24に対して設けられる高圧弁28及び低圧弁30と、回転シャフト32の回転運動とピストン22の往復運動との間の変換を行うためのカム26(変換機構)とを有する。カム26は、ピストン22に当接するカム曲面を有する。
なお、油圧機械20において、複数のシリンダ21及びピストン22が、油圧機械20の周方向に沿って配列されている。
ピストン22は、ピストン22の往復運動を回転シャフト32の回転運動にスムーズに変換する観点から、シリンダ21内を摺動するピストン本体部22Aと、該ピストン本体部22Aに取り付けられ、カム26のカム曲面に当接するピストンローラー又はピストンシューとで構成することが好ましい。なお図2には、ピストン22がピストン本体部22Aとピストンシュー22Bとからなる例を示した。
カム26は、油圧機械20の回転シャフト(クランクシャフト)32の軸中心Oから偏心して設けられた偏心カムである。ピストン22が上下動を一回行う間に、カム26及びカム26が取り付けられた回転シャフト32は一回転するようになっている。
他の実施形態では、カム26は、複数のローブ(凸部)を有する環状のマルチローブドカム(リングカム)であり、この場合には、カム26及びカム26が取り付けられた回転シャフト32が一回転する間に、ピストン22は上下動をローブの数だけ行うようになっている。
高圧弁28は、作動室24と作動室24の外部に設けられた高圧ライン12との間の高圧連通ライン34に設けられており、作動室24と高圧ライン12との連通状態を切り替え可能に構成されている。低圧弁30は、作動室24と作動室24の外部に設けられた低圧ライン14との間の低圧連通ライン36に設けられており、作動室24と低圧ライン14との連通状態を切り替え可能に構成されている。
高圧弁28又は低圧弁30の少なくとも一方は、コイルへの励磁電流の供給の切替えにより開閉制御可能な電磁弁である。
図2及び図3に示す油圧機械20の診断システム101は、各作動室24の圧力を検出するための圧力センサ72と、回転シャフト32の回転数を検出するための回転数センサ74と、圧力センサ72及び/又は回転数センサ74による検出結果に基づいて油圧機械20の診断及び制御を行うための診断・制御部100と、を含む。
診断システム101の診断・制御部100は、損傷検知部102と、応答遅れ算出部103と、閾値設定部104と、バルブ制御部106と、を含み、診断システム101は、以下に説明するように、油圧機械20の電磁弁(高圧弁28又は低圧弁30)の損傷を検知するように構成されている。
図2に示す油圧機械20では、ピストン22の往復運動に合わせてバルブが制御されて、ピストン22の往復運動に合わせて作動室24の圧力(作動室圧力)が周期的に変化するようになっている。ここで、油圧機械20の高圧弁28及び低圧弁30の構成、及び、バルブの開閉制御による周期的な作動室圧力の変化について説明する。
図4は、高圧弁28及び低圧弁30の構成を示す概略断面図である。なお、図4に示す例では、高圧弁28及び低圧弁30はともに電磁弁であり、図4では、高圧弁28が閉弁していて低圧弁30が開弁している状態が図示されている。幾つかの実施形態では、図4に示すように、高圧弁28、低圧弁30及びそれらのケーシング37をユニット化してバルブユニット38として構成してもよい。
図4に例示する高圧弁28は、弁体35を含む可動ユニット40と、可動ユニット40を開弁位置と閉弁位置とに移動させるためのアクチュエータとして機能するソレノイドコイル42と、スプリング44と、弁座46とを備えている。高圧弁28は、ノーマルクローズ式のポペット形電磁弁であり、弁座46が弁体35に対して作動室24側に設けられている。高圧弁28は、作動室24と高圧ライン12(図2参照)との連通状態を、ソレノイドコイル42の電磁力又はスプリング44の付勢力に起因した可動ユニット40の移動により切り替え可能に構成されている。
図4に例示する低圧弁30は、弁体48およびアーマチュア50を有する可動ユニット52と、ソレノイドコイル54と、スプリング56と、弁座58とを備えている。低圧弁30は、ノーマルオープン式のポペット形電磁弁(ポペット弁)であり、弁体48が弁座58に対して作動室24側に設けられている。低圧弁30は、作動室24と低圧ライン14(図2参照)との連通状態を、ソレノイドコイル54の電磁力又はスプリング56の付勢力に起因した可動ユニット52の移動により切り替え可能に構成されている。
高圧弁28及び低圧弁30の開閉は、バルブコントローラからの制御信号(開閉指令)により制御されるようになっている。幾つかの実施形態では、診断・制御部100のバルブ制御部106(図3参照)から高圧弁28及び低圧弁30に開閉指令の制御信号が付与されるようになっている。
バルブ制御部106からの制御信号によって高圧弁28が励磁されていないときには、可動ユニット40は、スプリング44によって弁座46に向かって付勢されて、作動室24と高圧ライン12とが連通しない位置(ノーマル位置;図4に図示される可動ユニット40の位置)に保持される。バルブ制御部106からの制御信号によって高圧弁28が励磁されると、可動ユニット40は、電磁力によってスプリング44の付勢力に抗して、作動室24と高圧ライン12とが連通する位置(励磁位置)に移動する。すなわち、高圧弁28は、励磁電流の供給制御によって、励磁電流の非供給時におけるノーマル位置と、励磁電流の供給時における励磁位置との間で弁体が移動可能に構成される。
一方、バルブ制御部106からの制御信号によって低圧弁30が励磁されていない時には、可動ユニット52は、スプリング56によって弁座58から離間する方向へ付勢されて、作動室24と低圧ライン14とが連通する開弁位置(ノーマル位置;図4に図示される可動ユニット52の位置)に保持される。バルブ制御部106からの制御信号によって低圧弁30が励磁されると、ソレノイドコイル54の電磁力によってアーマチュア50が吸引されて、可動ユニット52は、電磁力によってスプリング56の付勢力に抗して弁座58に向かって移動し、作動室24と高圧ライン12とが連通しない閉弁位置(励磁位置)に移動する。すなわち、低圧弁30は、励磁電流の供給制御によって、励磁電流の非供給時におけるノーマル位置と、励磁電流の供給時における励磁位置との間で弁体が移動可能に構成される。
上述した構成の高圧弁28及び低圧弁30を有する油圧機械20では、高圧弁28及び低圧弁30の開閉制御により、ピストン22の往復運動に伴って、作動室圧力が周期的に変化するようになっている。
油圧機械20が油圧モータ10である場合、油圧ポンプ8により生成される高圧ライン12と低圧ライン14との差圧によって、ピストン22が周期的に上下動し、ピストン22が上死点から下死点に向かうモータ工程と、ピストン22が下死点から上死点に向かう排出工程とが繰り返される。油圧モータ10の運転中、ピストン22とシリンダ21の内壁面によって形成される作動室24の容積は周期的に変化する。すなわち、油圧モータ10では、モータ工程において高圧弁28を開き低圧弁30を閉じることで高圧ライン12から作動室24内に作動油を流入させるとともに、排出工程において高圧弁28を閉じ低圧弁30を開くことで作動室24内で仕事をした作動油を低圧ライン14に送り出す。
このようにして、作動室24への圧油の導入によってピストン22の往復運動が起こり、この往復運動がカム26の回転運動に変換される結果、カム26とともに油圧機械20の回転シャフト32が回転する。
油圧機械20が油圧ポンプ8である場合、回転シャフト32とともにカム26が回転すると、カム面に合わせてピストン22が周期的に上下動し、ピストン22が下死点から上死点に向かうポンプ工程と、ピストン22が上死点から下死点に向かう吸入工程とが繰り返される。そのため、ピストン22とシリンダ21の内壁面によって形成される作動室24の容積は周期的に変化する。すなわち、油圧ポンプ8では、吸入工程において高圧弁28を閉じ低圧弁30を開くことで低圧ライン14から作動室24内に作動油を流入させるとともに、ポンプ工程において高圧弁28を開き低圧弁30を閉じることで作動室24から高圧ライン12に圧縮された作動油を送り出す。
このようにして、油圧機械20の回転シャフト32とともに回転するカム26の回転運動がピストン22の往復運動に変換され、作動室24の周期的な容積変化が起こり、作動室24で高圧の作動油(圧油)が生成される。
幾つかの実施形態に係る電磁弁(高圧弁28又は低圧弁30の少なくとも一方)は、上述に説明した構成に加えて、以下に説明する特徴的な構成をさらに有する。幾つかの実施形態に係る電磁弁の特徴的な構成について、図5A〜図5Dを参照して以下に説明する。図5A〜図5Dは、それぞれ、一実施形態に係る電磁弁(高圧弁28)の断面図である。図5A〜図5Dでは、高圧弁28の開弁状態を示している。
なお、図5A〜図5Dにおいては、幾つかの実施形態に係る電磁弁の例として高圧弁28を図示しているが、幾つかの実施形態に係る電磁弁は、低圧弁30であってもよい。
図5A〜図5Dに示すように、高圧弁28(電磁弁)は、ソレノイドコイル42を収容するコア(バルブケーシング)41を備え、弁体35は、ソレノイドコイル42に電流を供給して生じる磁力によってコア41に向かって吸引されるように構成されている。
そして、高圧弁28(電磁弁)は、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置を規制するための位置規制部60をさらに有する。
なお、高圧弁28は、連通流路43を介して高圧ライン12(図2参照)と連通可能であるとともに、連通流路45を介して作動室24(図2参照)と連通可能となっている。
幾つかの実施形態では、コア41及び弁体35はともに磁性材料で構成されている。そして、幾つかの実施形態では、図5A〜図5Dに励磁するように、高圧弁28は位置規制部60を有するため、弁体35とコア41が最も近付いたときであっても、弁体35とコア41との間(すなわちコア41の下端面61と弁体35の上端面63との間)に隙間Gが形成されるようになっている。
この場合、高圧弁28(電磁弁)のコア41と弁体35が直接接触する場合に比べて、弁体35の応答性を向上させることができる。
位置規制部60は様々な態様をとり得る。
例えば、図5A及び図5Bに示す例では、位置規制部60は、弁体35とコア41との間に設けられた非磁性体層62(62a又は62b)を含む。
弁体35とコア41との間に非磁性体層62を介在させることで、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
また、弁体35とコア41との間に非磁性体層62を介在させることで、弁体35及びコア41が磁性材料で構成された場合であっても、磁性体同士(弁体35とコア41)が直接接触しないため、弁体35の応答性が良好となる。
図5Aに示す非磁性体層62は、非磁性材料で構成された板材62aである。板材62aは、一面側がコア(バルブケーシング)41の下端面61に当接した状態で、クランプ82によってコア41に固定されている。
図5Bに示す非磁性体層62は、コア41の表面(すなわち弁体35に対向する表面)に非磁性材料を溶射することにより設けられた溶射層62bである。
一実施形態では、溶射層62bは、弁体35の表面(すなわちコア41に対向する表面)に設けられていてもよい。
非磁性体層62(例えば板材62a又は溶射層62b)を構成する非磁性材料の例として、例えば、ベリリウム銅又はステライトが挙げられる。これらの非磁性材料を用いることで、耐摩耗性の良好な非磁性体層62を形成することができる。
図5Cに示す例では、位置規制部60は、弁体35に設けられた段差部64(64a,64b)を含む。
図5Cに示す例では、弁体35の移動方向において弁体35とコア41の間に非磁性の環状部材84が設けられており、該環状部材84は、コア41に対して固定されている。そして、段差部64aは、弁体35の上端部においてにおいて、弁体35の半径方向外向きに突出するように形成され、弁体35がコア41に最も近付いたときに、段差部64aが環状部材84に当接するようになっている。このように段差部64aが環状部材84に当接することにより、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
また、図5Cに示す例では、コア(バルブケーシング)41とバルブケーシング47との間には、連通流路43を形成する環状スペーサ86が設けられており、該環状スペーサ86は、環状部材84を介してコア41に対して固定されている。弁体35には、弁体35の移動方向において弁体35の上端面63とシート面65(弁座46と当接する面)との間において、弁体35の半径方向外向きに突出するように段差部64bが形成されている。そして、段差部64bは、弁体35がコア41に最も近付いたときに、段差部64bが環状スペーサ86に当接するようになっている。このように段差部64bが環状スペーサ86に当接することにより、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
なお、図5Cにおいては、段差部64a及び64bを含む2つの段差部64が弁体35に形成された例を示したが、幾つかの実施形態では1つ又は3つ以上の段差部64が弁体35に形成されていてもよい。
また、位置規制部60としての段差部64は、必ずしも弁体35に設けられている必要はない。例えば、段差部64は、高圧弁28の開閉にともなって弁体35とともに移動する可動ユニット40に設けられていてもよい。なお、可動ユニット40は、開弁位置と閉弁位置との間で弁体35の移動をガイドするためのロッド49を含んでいてもよい。
あるいは、段差部64は、高圧弁28のうち、高圧弁28の開閉に伴って弁体35とともに移動しない固定側(例えば、環状部材84や環状スペーサ86)に設けられていてもよい。
図5Dに示す例では、位置規制部60は、弁体35の背面66を含んでいる。ここで、弁体35の背面66は、弁体35を挟んでシート面65と反対側に位置する面である。
この場合、弁体35の背面66は、弁体35がコア41に向かって吸引されて弁体35とコア41とが最も近付いたときに、高圧弁28のうちの上述の固定側(図4Dにおいては環状スペーサ86)に当接するように構成されている。
弁体35の背面66がこのように構成されることで、弁体35がコア41に向かって吸引されたときに、弁体35とコア41とが最も近付く位置が規制されるようになっている。
次に、以上に説明した構成を有する油圧機械20において、位置規制部60の損傷を検知するための油圧機械の診断方法について説明する。
幾つかの実施形態に係る油圧機械20の診断方法は、作動室24の圧力を検出する圧力検出ステップと、圧力検出結果に基づいて応答遅れを算出する応答遅れ算出ステップと、算出した応答遅れに基づいて位置規制部60の損傷を検知する損傷検知ステップと、を備える。
また、幾つかの実施形態において、以下に説明する油圧機械20の診断方法は、上述の診断システム101により実行される。
(圧力検出ステップ)
圧力検出ステップでは、作動室24の圧力(作動室圧力)を検出する。圧力検出ステップでは、油圧機械20の各シリンダ21に設けられた圧力センサ72を用いて各シリンダ21の作動室圧力を検出してもよい。
(応答遅れ算出ステップ)
応答遅れ算出ステップでは、圧力検出ステップで得られた筒内圧の経時変化に基づいて、ソレノイドコイル42への電流の供給を停止した時点から、弁体35がコア41から離れた時点までの時間である応答遅れDRを算出する。
ここで、図6は、一実施形態に係る油圧機械20の一例としての油圧モータ10において、圧力検出の結果得られる筒内圧(作動室圧力)の経時変化を示すグラフである。
図6のグラフにおいて、横軸は時刻tを表し、縦軸は、ピストン22の位置、高圧弁28の制御信号及び作動室24の圧力をそれぞれ表す。ここで、高圧弁28の制御信号は、バルブコントローラから出力された制御信号(開閉指令)であり、“On”は高圧弁28を開状態とするために励磁電流を供給していることを示し、“Off”は高圧弁28を閉状態とするために励磁電流を供給していないことを示す。
既に説明したように(図6も参照)、油圧モータ10では、ピストン22が上死点付近に到達したときに、低圧弁30を閉状態とするとともに高圧弁28を開状態として高圧ライン12から作動室24へ高圧の作動油を導入するため、作動室圧力は高くなる。一方、油圧モータ10では、ピストン22が下死点付近に到達したときに、高圧弁28を閉状態とするとともに低圧弁30を開状態として作動室24から低圧ライン14へ作動油を排出するため、作動室圧力は低くなる。
ここで、ピストン22が下死点付近に到達するときに、高圧弁28には、バルブコントローラにより、高圧弁28を閉じるための制御信号(閉指令)が付与されて、図6に示すように制御信号は“Off”となる。すなわち、このように制御信号が“Off”となる時点(時刻t1)で、高圧弁28を開状態に維持するためのソレノイドコイル42への励磁電流の供給が停止される。
一方、筒内圧(作動室圧力)の低下が開始する時点(時刻t2)は、高圧弁28が閉じた時点、すなわち弁体35がコア41から離れた時点であるとみなすことができる。
そこで、高圧弁28に閉指令が付与されてソレノイドコイル42への励磁電流の供給が停止された時点t1から、弁体35がコア41から離れ、実質的に高圧弁28が閉じた時点t2までの期間を、応答遅れDRと定義する。
なお、一実施形態では、高圧弁28に供給される励磁電流の電流値を例えば電流計により検出し、該励磁電流の検出の結果得られる電流値の経時変化と、筒内圧(作動室圧力)の経時変化との関係から、応答遅れDRを算出してもよい。
(損傷検知ステップ)
損傷検知ステップでは、応答遅れ算出ステップで算出された応答遅れDRに基づいて、位置規制部60の損傷を検知する。
本発明者の知見によれば、高圧弁28(電磁弁)の位置規制部60の損傷が進行するに従い、ソレノイドコイル42への電流供給停止時点から弁体35がコア41から離れるまでの時間(応答遅れDR)が増加する傾向があることが見出された。これは、位置規制部60において摩耗等の損傷が進行すると、該損傷に起因して、弁体35とコア41との間の隙間Gの幅が減少し、このため、ソレノイドコイル42への電流供給によるコア41の吸着力が増加して、応答遅れDRが増加するためであると考えられる。
そこで、ソレノイドコイル33への電流供給停止時点から弁体35がコア41から離れるまでの応答遅れDRに基づいて、高圧弁28(電磁弁)の位置規制部の損傷を検知することができる。
ここで、図7は、油圧モータ10における応答遅れDRの時間変化の一例を示すグラフである。なお、図7は、油圧モータ10において、ピストン22の往復運動サイクル毎に上述のようにして油圧モータ10における応答遅れDRを取得し、取得データの規定期間における平均値を横軸の時間tに対してプロットしたものである。
なお、ピストン22の往復運動サイクル毎の応答遅れDRを取得するために、回転数センサ74により、ピストン22の位相(ピストン位置)を取得するようにしてもよい。
図7のグラフに示された結果を見れば、油圧モータ10の運転時間が経過するにしたがって、応答遅れDRが増加傾向であることがわかる。すなわち、油圧モータ10における応答遅れDRと位置規制部60の損傷の程度とは相関関係があるので、応答遅れDRに基づいて、位置規制部60の損傷を検知することができる。
また、油圧モータ10における応答遅れDRと、該応答遅れDRに対応する位置規制部60の損傷の程度とを予め把握しておけば、応答遅れDRに関する適切な閾値DRthを設定することができる(図7参照)。そして、損傷検知ステップでは、該閾値DRthと応答遅れDRの算出結果とを比較することにより、位置規制部60に損傷が生じたか否かを判定することができる。
例えば、閾値DRthと算出した応答遅れDRとを比較した結果、応答遅れDRが閾値DRth以上であるときに、位置規制部60に損傷が生じたと判定するようにしてもよい。
また、幾つかの実施形態では、損傷検知ステップにおいて、応答遅れDRの経時変化に基づいて、位置規制部60の損傷度(摩耗等の進行度合い)を評価するようにしてもよい。
例えば、所定期間における応答遅れDRの近似直線La(図7参照)の傾きと、設定されている閾値DRthとから、位置規制部60の余寿命を算出するようにしてもよい。
損傷検知ステップにて、高圧弁28の位置規制部60に損傷が生じていると判定された場合には、油圧機械20のシリンダ21のうち、該高圧弁28に対応するシリンダ21を、押しのけ容積を生成しない休止状態としてもよい。あるいは、損傷検知ステップにて、高圧弁28の位置規制部60に損傷が生じていると判定された場合には、該高圧弁28を交換してもよい。
なお、油圧機械20のシリンダ21を休止状態とするには、該シリンダ21に対応する高圧弁28及び低圧弁30に対して、バルブ制御部106(図3参照)から、適切な開閉指令の制御信号を送る。油圧機械20(油圧モータ10又は油圧ポンプ)においてシリンダ21を休止状態とするには、該シリンダ21に対応する高圧弁28を閉状態に維持するとともに、低圧弁30を開状態に維持する。これにより、シリンダ21と高圧ライン12とは非連通状態となるとともに、シリンダ21と低圧ライン14とは連通状態となるので、作動油は、作動室24と低圧ライン14との間で流出入するのみである。よって、該シリンダ21に対応するピストン22は、実質的に仕事をせず、又は仕事をされない。
(閾値決定ステップ)
損傷検知ステップにて算出した応答遅れDRと比較する閾値DRthは、閾値設定部104により設定してもよい。
損傷検知ステップにて算出した応答遅れDRと比較する閾値DRthは、複数の高圧弁28(電磁弁)の個体毎に行ってもよい。
例えば、幾つかの実施形態では、高圧弁28(電磁弁)の初期状態(使用し始め)における応答遅れDRの統計値(例えば平均値)に基づいて閾値DRthを決定してもよい。
このように、電磁弁の初期状態における応答遅れDRの統計値に基づいて閾値DRthを決定することで、個々の電磁弁に対して、それぞれ適切な閾値DRthを設定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、以上においては、ノーマルクローズ式の高圧弁28である場合を電磁弁の一例として説明したが、一実施形態では、ノーマルオープン式の電磁弁を採用した油圧機械20において、同様の診断方法又は診断システムを適用することができる。
ここで、図8A及び図8Bは、一実施形態に係るノーマルオープン式の電磁弁の構成を示す断面図である。図8A及び図8Bに示す電磁弁は、油圧機械20において、作動油90が入口92から供給されるとともに出口94から排出されるように構成された電磁弁である。図8Aは、弁体35がノーマル位置(すなわち開位置)に位置するときの状態を示し、図8Bは、弁体35が励磁位置(すなわち閉状態)に位置するときの状態を示す。なお、図8A及び図8Bにおいて、図5A〜図5Dに図示される電磁弁に対応する主要な各構成要素については、図5A〜図5Dと同一の符号を付して示している。
図9Bに示すように、弁体35は、コイル42に電流を供給して生じる磁力によって、コア41に向かって吸引されることによって、閉じられる。
そして、弁体35が吸引されたときに、弁体35がコア41に最も近付く位置は、位置規制部60によって規制されている。また、位置規制部60により弁体35のコア41に対する位置が規制されているため、弁体35がコア41に最も近付いたときの弁体35とコア41との間には、隙間Gが形成されている。
なお、ノーマルオープン式の電磁弁の場合、応答遅れ算出ステップで算出される応答遅れDRは、コイル42への電流の供給を停止した時点(電磁弁に対して開指令が出力された時点)から弁体35がコア41から離れて開弁した時点までの時間であり、すなわち“開応答遅れ”である。
これに対して、先に説明したノーマルクローズ式の電磁弁の場合、応答遅れ算出ステップで算出される応答遅れDRは、コイル42への電流の供給を停止した時点(電磁弁に対して閉指令が出力された時点)から弁体35がコア41から離れて閉弁した時点までの時間であり、すなわち“閉応答遅れ”である。
また、上述の実施形態では、ソレノイドコイル42への電流の供給を停止した時点から、弁体35がコア41から離れた時点までの時間である応答遅れDR(図6参照)の値自体を用いて、位置規制部60の損傷を検知するようになっていたが、他の実施形態では、ピストン22の速度Vや、回転シャフト32の回転数Nに応じて正規化処理を行った正規化応答遅れDR*を用いて、位置規制部60の損傷を検知してもよい。この場合、例えば、正規化応答遅れDR*を上述の閾値DRthと比較し、正規化応答遅れDR*が閾値DRth以上であるときに、位置規制部60に損傷が生じたと判定するようにしてもよい。
図9は、応答遅れDRを、回転数依存成分Rdと、ピストン速度依存成分(DR−Rd)とに分けて示した図である。
図9に示すように、応答遅れDRは、ソレノイドコイル42への電流供給に応じて高圧弁28の弁体35が非励磁位置に向かって動き始めるまでの間の第1遅れRdと、弁体35が非励磁位置に到達するまでの第2遅れ(DR−Rd)と、の和であると捉えることができる。ここで、第1遅れRdは、ピストン22の速度Vには直接依存せず、回転シャフト32の回転数Nに依存し、具体的には回転数Nに反比例する。一方、第2遅れ(DR−Rd)は、ピストン22の速度Vに依存し、具体的にはピストン速度Vに反比例する。
このため、基準となる第1遅れRdを基準第1遅れRdBとし、基準となるピストン22の速度Vを基準ピストン速度VBとし、基準となる回転シャフト32の回転数Nを基準回転数NBとしたとき、下記式(1)により、応答遅れDRを正規化することができる。
[数1]
DR*=(DR−RdB)×V/VB+Rd×N/NB (1)

これにより、ピストン22の速度V及び回転シャフト32の回転数Nが異なる複数の運転状態間において、V及びRの差異に起因した影響を排除した正規化応答遅れDR*を得ることができるため、油圧機械20の運転状態によらず、高精度に位置規制部60の損傷を検知することができる。
図10は、一実施形態に係る正規化応答遅れDR*の算出方法を示す信号処理を示す図である。
同図に示すように、回転シャフト32の回転パルスをパルス計により取得する(S200)。次に、回転パルス200の計測結果から位相角情報を算出する(S202)。位相角情報202から回転シャフト32の回転数Nが得られる(S204)。一方、ソレノイド42における電流値、および、作動室24における圧力(筒内圧)を監視しておく(S206及びS208)。そして、S202において取得した位相角情報から、ソレノイド42における電流値がゼロになった時点(ソレノイド42への電流供給停止時点)における位相角を算出する(S210)。また、S202において取得した位相角情報から、筒内圧が低下し始める時点(弁体35がコア41から離れて非励磁位置に到達した時点)における位相角を算出する(S212)。S210において算出した位相角と、S212で算出した位相角との差を求めることで、応答遅れDRが算出される(S214)。一方、S204で求めた回転シャフト32の回転数Nから、S212で求めた位相角から、弁体35がコア41から離れて非励磁位置に到達した時点におけるピストン22の速度Vが求まる(S216)。こうして、上記式(1)に対して、応答遅れDRと、S204で求めた回転数Nと、S216で求めたピストン速度Vと、既知のパラメータ(基準第1遅れRdB、基準ピストン速度VB及び基準ピストン速度VB)と、を代入することで、正規化応答遅れDR*を算出することができる(S218)。
なお、幾つかの実施形態では、上述の処理(S200〜S218)は、診断システム101の応答遅れ算出部103において行ってもよい。この場合、診断システム101の損傷検知部102が、応答遅れ算出部103により算出された正規化応答遅れDR*と、閾値設定部104により設定された閾値DRthとの比較結果に基づいて、位置規制部60の損傷を検知してもよい。
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
1 風力発電装置
2 ブレード
3 ロータ
4 ハブ
6 回転シャフト
7 油圧トランスミッション
8 油圧ポンプ
10 油圧モータ
12 高圧ライン
14 低圧ライン
16 発電機
18 ナセル
19 タワー
20 油圧機械
21 シリンダ
22 ピストン
22A ピストン本体部
22B ピストンシュー
24 作動室
26 カム
28 高圧弁
30 低圧弁
32 回転シャフト
33 ソレノイドコイル
34 高圧連通ライン
35 弁体
36 低圧連通ライン
37 ケーシング
38 バルブユニット
40 可動ユニット
41 コア
42 ソレノイドコイル
43 連通流路
44 スプリング
45 連通流路
46 弁座
47 バルブケーシング
48 弁体
49 ロッド
50 アーマチュア
52 可動ユニット
54 ソレノイドコイル
56 スプリング
58 弁座
60 位置規制部
61 下端面
62 非磁性体層
62a 板材
62b 溶射層
63 上端面
64 段差部
65 シート面
66 背面
72 圧力センサ
74 回転数センサ
76 電流センサ
82 クランプ
84 環状部材
86 環状スペーサ
90 作動油
92 入口
94 出口
100 制御部
101 診断システム
102 損傷検知部
103 応答遅れ算出部
104 閾値設定部
106 バルブ制御部
DRth 閾値
G 隙間
O 軸中心

Claims (15)

  1. 回転シャフトと、シリンダと、前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、を有し、前記回転シャフトの回転運動と前記ピストンの往復運動との間で変換を行うように構成された油圧機械の診断システムであって、
    前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方は、
    コイルに電流を供給して生じる磁力によってコアに向かって吸引されるように構成された弁体と、
    前記弁体が吸引されたときに前記コアに最も近付く位置を規制するための位置規制部と、
    を有する電磁弁であり、
    前記作動室の圧力を検出するための圧力センサと、
    前記圧力センサにより得られる筒内圧の経時変化に基づいて、前記コイルへの電流の供給を停止した時点から前記弁体が前記コアから離れた時点までの時間である応答遅れを算出する応答遅れ算出部と、
    前記応答遅れに基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するように構成された損傷検知部と、
    を備えることを特徴とする油圧機械の診断システム。
  2. 前記損傷検知部は、前記応答遅れが閾値以上であるときに、前記位置規制部に損傷が生じたと判定するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の油圧機械の診断システム。
  3. 前記損傷検知部は、前記応答遅れの経時変化に基づいて、前記位置規制部の損傷度を評価するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧機械の診断システム。
  4. 前記電磁弁の初期状態における前記応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するように構成された閾値設定部をさらに備え、
    前記損傷検知部は、前記応答遅れ算出部により算出された前記応答遅れと、前記閾値設定部で設定された前記閾値との比較結果に基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の油圧機械の診断システム。
  5. 前記弁体及び前記コアは、それぞれ磁性材料で構成され、
    前記電磁弁は、前記弁体と前記コアとが最も近付いたときに、前記弁体と前記コアとの間には隙間が形成されるように構成された
    ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の油圧機械の診断システム。
  6. 前記位置規制部は、前記弁体と前記コアとの間に設けられた非磁性体層を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の油圧機械の診断システム。
  7. 前記非磁性体層は、非磁性材料で構成された板材を含むことを特徴とする請求項6に記載の油圧機械の診断システム。
  8. 前記非磁性体層は、前記弁体又は前記コアの少なくとも一方の表面に設けられた非磁性材料で構成された溶射層を含むことを特徴とする請求項6に記載の油圧機械の診断システム。
  9. 回転シャフトと、
    シリンダと、
    前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、
    前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、
    請求項1乃至8の何れか一項に記載の油圧機械の診断システムと、を備えることを特徴とする油圧機械。
  10. 前記診断システムにより前記位置規制部の損傷が検知されたときに、該位置規制部を含む前記電磁弁に対応する前記シリンダを、押しのけ容積を生成しない休止状態とするように構成された
    ことを特徴とする請求項9に記載の油圧機械。
  11. 再生可能エネルギーを受け取って回転するように構成されたロータと、
    前記ロータによって駆動されて作動油を昇圧するように構成された油圧ポンプと、
    前記油圧ポンプにより昇圧された作動油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
    前記油圧ポンプの吐出口と前記油圧モータの吸込口とを接続する高圧ラインと、
    前記油圧モータの吐出口と前記油圧ポンプの吸込口とを接続する低圧ラインと、
    前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備え、
    前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方は、請求項9又は10に記載の油圧機械である
    ことを特徴とする再生可能エネルギー型発電装置。
  12. 回転シャフトと、シリンダと、前記シリンダと共に作動室を形成するピストンと、前記作動室に対して設けられる高圧弁及び低圧弁と、を有し、前記回転シャフトの回転運動と前記ピストンの往復運動との間で変換を行うように構成された油圧機械の診断方法であって、
    前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方は、
    コイルに電流を供給して生じる磁力によってコアに向かって吸引されるように構成された弁体と、
    前記弁体が吸引されたときに前記コアに最も近付く位置を規制するための位置規制部と、
    を有する電磁弁であり、
    前記作動室の圧力を検出する圧力検出ステップと、
    前記圧力検出ステップで得られる筒内圧の経時変化に基づいて、前記コイルへの電流の供給を停止した時点から前記弁体が前記コアから離れた時点までの時間である応答遅れを算出するステップと、
    前記応答遅れに基づいて、前記位置規制部の損傷を検知するステップと、
    を備えることを特徴とする油圧機械の診断方法。
  13. 前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れが閾値以上であるときに、前記位置規制部に損傷が生じたと判定することを特徴とする請求項12に記載の油圧機械の診断方法。
  14. 前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れの経時変化に基づいて、前記位置規制部の損傷度を評価することを特徴とする請求項12又は13に記載の油圧機械の診断方法。
  15. 前記電磁弁の初期状態における前記応答遅れの統計値に基づいて、閾値を決定するステップをさらに備え、
    前記損傷を検知するステップでは、前記応答遅れ算出により算出された前記応答遅れと、前記閾値を決定するステップで設定された前記閾値との比較結果に基づいて、前記位置規制部の損傷を検知することを特徴とする請求項12乃至14の何れか一項に記載の油圧機械の診断方法。
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