JP2017147376A - n型熱電変換材料およびその製造方法、並びに熱電変換デバイス - Google Patents

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斐之 野々口
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壯 河合
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智博 池田
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Abstract

【課題】安定したn型導電性を示すとともに電気伝導率が改善されたn型熱電変換材料を実現する。
【解決手段】本発明に係るn型熱電変換材料は、ナノ材料と、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含んでいる。
【選択図】なし

Description

本発明は、n型熱電変換材料およびその製造方法、並びに熱電変換デバイスに関する。
近年、環境発電への要請が高まりつつあるため、自然再生可能エネルギーまたは排熱等から電力を得るものであるCOフリーの発電技術の一つとして、熱電変換材料が注目されている。また一方で、緊急時用、災害時用または医療用の電源として利用するために、小型かつ軽量な熱電変換材料が求められている。また、上記熱電変換材料をウェアラブルデバイスまたはポータブルデバイス等に適用する場合、熱電変換材料を体の形状に沿って密着させ、熱源として体温を利用できることが好ましい。そのため、柔軟性を有する熱電変換材料も求められていた。そこで、屋根、壁および変電所等の産業廃熱および生活廃熱による中低温で動作する柔軟かつ軽量な熱電変換材料の実現が待たれている。
このような分野に利用可能であり、且つ、希少原料または毒性原料に頼らない材料として、導電性高分子を含む有機半導体またはカーボンナノチューブ等のナノ材料が注目されている。例えば、有機系またはカーボン系の熱電変換材料は、軽量であることおよび炭素−炭素結合に由来する構造のしなやかさから、持ち運びが可能でフレキシブルな熱電モジュールの候補となる素子材料と考えられている。
通常、上記分野では、p型導電性を示す材料(p型材料)およびn型導電性を示す材料(n型材料)の両方を備えた双極型素子を用いることが好ましい。熱電変換デバイスは、温度差によって物質内に生じる電位差を利用することによって発電を行う熱電発電に用いられる。p型材料またはn型材料のいずれか一方のみを備えた熱電変換デバイスでは、高温側の端子から熱が逃げるため、発電効率が良くない。図1は、n型材料とp型材料とを備えた双極型熱電変換デバイスの一例を示した概略図である。双極型熱電変換デバイスであれば、n型材料とp型材料とを直列につなぐことにより、効率的に発電することができる。
熱電変換材料に関する技術としては、例えば、以下のような技術が挙げられる。特許文献1には、導電性高分子と熱励起アシスト剤とを含有する熱電変換材料が開示されている。また、特許文献2には、カーボンナノチューブおよび共役高分子を含有する熱電変換材料が開示されている。
さらに、非特許文献1には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を利用した導電性フィルムが記載されている。非特許文献2には、PEDOTおよびポリ(スチレンスルホン酸)の複合体(PEDOT:PSS)またはメソ−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィン(TCPP)と、カーボンナノチューブとを利用した複合材料が記載されている。
これらの技術(特に非特許文献1および2に記載の技術)は、そのゼーベック係数が正の値であることからもわかるようにp型材料である。n型材料に関しては、非特許文献3に記載のように、n型有機系材料もしくはn型カーボン系材料またはその添加剤が本質的に有する化学結合の不安定性に起因し、安定したn型材料を得ることは困難であるということが当該分野の技術常識であった。そのような状況の中で、本発明者らは、p型材料をn型材料へ変換する技術として、例えば、特許文献3に記載の技術を開発している。
国際公開第2013/047730号(2013年4月4日公開) 国際公開第2013/065631号(2013年5月10日公開) 国際公開第2015/198980号(2015年12月30日公開)
T. Park et. al.,Energy Environ. Sci. 6,788-792,2013 G. P. Moriarty et al., Energy Technol. 1, 265-272, 2013 D.M. de Leeuw et al., Synthetic Metals87, 51-59, 1997
しかしながら、上記p型材料に匹敵する出力を示すn型材料を実現するという観点からは、上述の従来技術には更なる改善の余地があった。双極型熱電変換デバイスの高性能化のためにはp型材料およびn型材料の双方に同様の電気抵抗率および熱抵抗率が要求される。従来のp型材料の基準までn型材料の出力を増大させるためには、例えば、n型導電性の安定化および電気伝導率の向上が必要とされる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、安定したn型導電性を示すとともに電気伝導率が改善されたn型熱電変換材料を実現することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体を用いることにより、安定したn型導電性を示すとともに電気伝導率が飛躍的に改善されたn型熱電変換材料を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の構成からなるものである。
〔1〕ナノ材料と、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含んでいることを特徴とするn型熱電変換材料。
〔2〕上記2つ以上のアリール環は縮合環を形成していることを特徴とする〔1〕に記載のn型熱電変換材料。
〔3〕上記縮合環は、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、ヘプタセン環、オクタセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ベンゾピレン環、トリフェニレン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾイミダソール環またはキノリン環であることを特徴とする〔2〕に記載のn型熱電変換材料。
〔4〕上記金属塩は、金属水酸化物、金属アルコキシド、金属硫化物、金属チオラート、金属ジチオナイト、金属ピロ亜硫酸塩、金属亜硫酸塩、金属シアン化物、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物および金属酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のn型熱電変換材料。
〔5〕上記ナノ材料は、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノロッドおよびナノシートからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載のn型熱電変換材料。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のn型熱電変換材料を備えることを特徴とする熱電変換デバイス。
〔7〕ナノ材料に、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と金属塩とを含む溶液を接触させる接触工程を含むことを特徴とするn型熱電変換材料の製造方法。
〔8〕上記溶液における溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンであることを特徴とする〔7〕に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
〔9〕上記接触工程の前に、上記ナノ材料を集積させてフィルムを成形する成形工程を含むことを特徴とする〔7〕または〔8〕に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
〔10〕上記接触工程において、上記溶液に、上記フィルムを浸漬させることを特徴とする〔9〕に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
本発明は、安定したn型導電性を示すとともに電気伝導率が改善されたn型熱電変換材料を提供することができるという効果を奏する。
n型材料とp型材料とを備えた双極型熱電変換デバイスの一例を示した概略図である。 量子化学計算によって得られた、クラウンエーテル誘導体と金属イオンとの錯体における電荷の分布を示す図である。 実施例1および比較例1〜3におけるゼーベック係数を示す図である。 実施例1、並びに比較例4および5におけるゼーベック係数を示す図である。 実施例1、並びに比較例4および5における電気伝導率を示す図である。 実施例1、並びに比較例4および5におけるゼーベック係数と電気伝導率との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔1.熱電変換材料の性能に関する指標〕
まず、熱電変換材料の性能に関する指標について説明する。当該指標としては出力因子(パワーファクター)が挙げられる。出力因子は、以下の式(α)によって求められる。
P=Sσ (α)
式(α)中で、Pは出力因子、Sはゼーベック係数、σは電気伝導率を示す。熱電変換材料においては、例えば、出力因子が310Kにて100μW/mK以上であることが好ましく、200μW/mK以上であることがより好ましく、400μW/mK以上であることが特に好ましい。出力因子が310Kにて100μW/mK以上であれば、従来型のp型材料と同等またはそれを上回る値であるため、好ましい。このような高出力の熱電変換材料を得るためには、ゼーベック係数および/または電気伝導率を向上させることが考えられる。
ゼーベック係数とは、ゼーベック効果を示す回路の、高温接合点と低温接合点との間の温度差に対する、開放回路電圧の比をいう(「マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版」より)。ゼーベック係数は、例えば、後述する実施例で用いたゼーベック効果測定装置(MMR Technologies社製)等を用いて測定することができる。ゼーベック係数の絶対値が大きいほど、熱起電力が大きいことを表す。
また、ゼーベック係数は、カーボンナノチューブ等の電子材料の極性を判別するための指標となり得る。具体的には、例えば、ゼーベック係数が正の値を示す電子材料は、p型導電性を有しているといえる。これに対して、ゼーベック係数が負の値を示す電子材料は、n型導電性を有しているといえる。
n型熱電変換材料においては、ゼーベック係数が−20μW/K以下であることが好ましく、−30μW/K以下であることがより好ましく、−40μW/K以下であることがさらに好ましい。ただし、低温熱源などの微小エネルギーを用いて発電を行う場合においては熱起電力の増大とともに導電率の増大により、昇圧回路に要求されるインピーダンスの抑制を必要とする場合もある。この場合は、ゼーベック係数が−40〜−20μW/Kであることがより好ましい。
電気伝導率は、例えば、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP)を用いた4探針法により測定することができる。
n型熱電変換材料においては、電気伝導率が1000S/cm以上であることが好ましく、1500S/cm以上であることがより好ましく、2000S/cm以上であることがさらに好ましい。電気伝導率が1000S/cm以上であれば、熱電変換材料が高出力であるため、好ましい。
〔2.n型熱電変換材料〕
本n型熱電変換材料は、ナノ材料と、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含んでいる。上記クラウンエーテル誘導体および上記金属塩は、上記ナノ材料に対してn型ドーパントとして作用する。本明細書において、n型ドーパントとは、ナノ材料におけるゼーベック係数を正の値から負の値に変化させ得るドーパントを意味し、換言すれば、n型導電性を付与するドーパントである。
上記金属塩から生じたアニオンは、ナノ材料のキャリアを正孔から電子へと変化させる。これによって、ナノ材料のゼーベック係数が変化するとともにナノ材料は負に帯電する。負に帯電したナノ材料は、負の電荷が非局在化した状態となっており、軟らかい塩基(soft base)となっている。一方、クラウンエーテル誘導体と上記金属塩から生じた金属イオンとは錯体を形成する。クラウンエーテル誘導体と金属イオンとの錯体は、正の電荷が非局在化した軟らかい酸(soft acid)となっている。軟らかい塩基に対しては、軟らかい酸を作用させることで安定化することができる。それゆえ、本n型熱電変換材料は、安定したn型導電性を示すとともに高い電気伝導率を示す。なお、軟らかい酸および塩基の定義は、HSAB理論に基づく(R. G. Pearson, J. Am. Chem. Soc. 85 (22), 3533-3539, 1963)。
本n型熱電変換材料は、必要に応じて、ナノ材料、クラウンエーテル誘導体および金属塩以外の物質を含んでいてもよい。このような物質としては、クラウンエーテル誘導体および金属塩による上記効果を阻害しないものであれば特に限定されない。
<2−1.ナノ材料>
本n型熱電変換材料は、ナノ材料を含んでいる。本明細書において、「ナノ材料」とは、少なくとも1つの方向の寸法がナノスケール(例えば100nm以下)の物質を意味する。上記ナノ材料は、例えば電子材料等として用いられる物質である。
上記ナノ材料は、低次元ナノ材料であってもよい。本明細書において、「低次元」とは、3次元よりも小さい次元を意図する。すなわち、本明細書において、「低次元」とは、0次元、1次元、または、2次元を意図する。そして、本明細書において「低次元ナノ材料」とは、「低次元」にて立体構造を略規定し得るナノ材料を意図する。
0次元のナノ材料としては、例えば、ナノ粒子(量子ドット)が挙げられる。1次元のナノ材料としては、例えば、ナノチューブ、ナノワイヤおよびナノロッドが挙げられる。2次元のナノ材料としては、例えばナノシートが挙げられる。上記ナノ材料は、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノロッドおよびナノシートからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記ナノ材料は、炭素、半導体、半金属および金属からなる群より選択される少なくとも1つ以上を含んでいるナノ材料であってもよい。上記ナノ材料は、炭素、半導体、半金属および金属からなる群より選択される少なくとも1つ以上からなるナノ材料であってもよい。軽量であることおよび炭素−炭素結合に由来する柔軟性の観点からは、上記ナノ材料は、炭素からなるナノ材料であることが好ましい。炭素からなるナノ材料としては、カーボンナノチューブおよびグラフェン(すなわち、炭素からなるナノシート)等が挙げられる。本明細書においては、カーボンナノチューブを「CNT」と称する場合もある。
半導体としては、ケイ素化鉄、コバルト酸ナトリウムおよびテルル化アンチモン等が挙げられる。半金属としては、テルル、ホウ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、セレンおよびグラファイト等が挙げられる。金属としては、金、銀、銅、白金およびニッケル等が挙げられる。
上記ナノチューブおよび上記ナノシートは、単層、または多層(二層、三層、四層、またはそれよりも多層)の構造を有していてもよい。例えば、上記ナノ材料は、単層カーボンナノチューブ(single-wall carbon nanotube:SWNT)または多層カーボンナノチューブ(multi-wall carbon nanotube:MWNT)であってもよい。本n型熱電変換材料へ優れた弾性および機械的強度を付与するという観点からは、上記ナノ材料は、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
本n型熱電変換材料において、上記ナノ材料は、所望の形状に成形されていてもよい。例えば、本n型熱電変換材料は、ナノ材料が集積したフィルムを含んでいてもよい。ここで、上記「フィルム」は、シートまたは膜とも言い換えられる。フィルムは、例えば、1μm〜1000μmの厚みであってもよい。フィルムの密度は特に限定されないが、0.05〜1.0g/cmであってもよく、0.1〜0.5g/cmであってもよい。上記フィルムは、ナノ材料同士が互いに絡み合うように不織布状の構造を形成している。そのため、上記フィルムは軽量であり、且つ、柔軟性を有している。
<2−2.金属塩>
本n型熱電変換材料は、金属塩を含んでいる。当該金属塩は、金属イオンとアニオンとがイオン結合しているものである。
上記金属塩における金属としては、典型金属(アルカリ金属およびアルカリ土類金属)および遷移金属が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムが挙げられる。アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムが挙げられる。遷移金属としては、スカンジウム等が挙げられる。
上記金属塩は、金属水酸化物、金属アルコキシド、金属硫化物、金属チオラート、金属ジチオナイト、金属ピロ亜硫酸塩、金属亜硫酸塩、金属シアン化物、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物および金属酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。例えば、上記金属塩におけるアニオンは、ヒドロキシイオン(OH)、アルコキシイオン(CH、CHCH、i−PrOおよびt−BuO等)、チオイオン(S2−、SH)、アルキルチオイオン(CHおよびC等)、ジチオナイトイオン(S 2−)、ピロ亜硫酸イオン(S 2−)、亜硫酸イオン(SO 2−)、シアヌルイオン(CN)、炭酸イオン(CO 2−)、I、Br、Clおよびカルボキシイオン(CHCOO等)からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、OHおよびCHのうち少なくとも一方であることがより好ましい。上記アニオンによれば、効率よくナノ材料のゼーベック係数を変化させることができる。
アニオンがドーパントとして作用する理由の一つとしては、アニオンが非共有電子対を有していることが考えられる。アニオンは、その非共有電子対に基づいて、ドーピングの対象となるナノ材料と相互作用するか、または化学反応を誘起すると推測される。また、ドーピングの効率においては、ドーパントのルイス塩基性、分子間力および解離性が重要であると考えられる。
本明細書において、「ルイス塩基性」とは、電子対を供与する性質を意図している。ルイス塩基性の強いドーパントは、ゼーベック係数の変化に対して、より大きな影響を与えると考えられる。
また、ドーパントの分子間力も、ナノ材料に対するドーパントの吸着性に関連していると考えられる。ドーパントの分子間力としては、水素結合、CH−π相互作用、π−π相互作用等が挙げられる。上記アニオンのなかでも、弱い水素結合を与えるアニオンが好ましい。弱い水素結合を与えるアニオンとしては、例えば、OH、CH、CHCH、i−PrO、t−BuOが挙げられる。また、アニオンは、π−π相互作用を与えるアニオンであることが好ましい。π−π相互作用を与えるアニオンとしては、例えば、CHCOOが挙げられる。
また、金属塩の解離定数pKaは、7以上であることが好ましく、14以上であることがより好ましい。pKaが7以上であれば、金属イオンとアニオンとがより解離しやすいため好ましい。
入手が容易であるという観点からは、上記金属塩は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであることが好ましい。
<2−3.クラウンエーテル誘導体>
本n型熱電変換材料は、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体を含んでいる。なお、本明細書において、クラウンエーテル誘導体における「誘導体」との表現は、少なくとも上記のようにアリール環を有することを意図して用いられている。
図2は、量子化学計算によって得られた、クラウンエーテル誘導体と金属イオンとの錯体における電荷の分布を示す図である。図2の(a)、(b)および(c)はそれぞれ、18−クラウン−6、2,3−ベンゾ−18−クラウン−6および2,3−ナフト−18−クラウン−6の構造式を示している。また、図2の(d)、(e)および(f)はそれぞれ、図2の(a)、(b)および(c)に示すクラウンエーテルまたはその誘導体とカリウムイオンとの錯体における正電荷の分布を示している。図2の(d)、(e)、(f)の順に、アリール環の部位の拡張に伴い、電荷がより非局在化していることがわかる。このため、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体を用いた場合、アリール環を有さないクラウンエーテルまたはベンゼン環を1つ有するクラウンエーテル誘導体を用いた場合に比べて、より安定したn型導電性を示すとともに高い電気伝導率を示す。
正電荷の非局在化という観点からは、上記2つ以上のアリール環は、縮合環を形成していることが好ましい。すなわち、上記クラウンエーテル誘導体は、縮合環を有するクラウンエーテル誘導体であることが好ましい。上記縮合環としては、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のアリール環が縮合したものであってもよい。また、上記アリール環は、炭素原子がその他の原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子等)によって置換されているものであってもよい。例えば、上記アリール環は芳香族複素環であってもよい。上記縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、ヘプタセン環、オクタセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ベンゾピレン環、トリフェニレン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾイミダソール環またはキノリン環が挙げられる。
ナフタレン環を有するクラウンエーテル誘導体としては、例えば、下記式(1)で表される2,3−ナフト−18−クラウン−6が挙げられる。
アントラセン環を有するクラウンエーテル誘導体としては、例えば、下記式(2)で表される2,3−アントラセノ−18−クラウン−6が挙げられる。
テトラセン環を有するクラウンエーテル誘導体としては、例えば、下記式(2)で表される2,3−テトラセノ−18−クラウン−6が挙げられる。
なお、上記クラウンエーテル誘導体としては、縮合環を形成していない2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体も利用可能であり、この例としては、ジベンゾクラウンエーテル等が挙げられる。
上記クラウンエーテル誘導体における1分子中の酸素原子の数は、特に限定されず、例えば、4つであってもよく、5つであってもよく、6つであってもよく、それ以上であってもよい。上記クラウンエーテル誘導体は、取り込む対象となる金属イオンのサイズに合わせて選択してもよい。例えば、上記金属イオンがカリウムイオンである場合、18−クラウン−6の誘導体が好ましく、上記金属イオンがナトリウムイオンである場合は、15−クラウン−5の誘導体が好ましく、上記金属イオンがリチウムイオンである場合は、12−クラウン−4の誘導体が好ましい。
また、上記クラウンエーテル誘導体は、炭素原子がその他の原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子等)によって置換されているものであってもよい。例えば、上記クラウンエーテル誘導体は、アザクラウンエーテル誘導体であってもよい。また、上述のように、上記アリール環が芳香族複素環であってもよい。芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環およびピラジン環等が挙げられる。さらに芳香族複素環が縮合環を形成していてもよく、このような例としては、ベンゾフラン環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環およびジベンゾチオフェン環等が挙げられる。
〔3.n型熱電変換材料の製造方法〕
本n型熱電変換材料の製造方法(以下、本製造方法とも称する)は、ナノ材料に、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と金属塩とを含む溶液を接触させる接触工程を含む。上記金属塩は、溶媒に溶解して、金属イオンとアニオンとを生じる。当該アニオンは、ナノ材料のキャリアを正孔から電子へと変化させる。これによって、ナノ材料のゼーベック係数が変化するとともにナノ材料は負に帯電する。負に帯電したナノ材料は、負の電荷が非局在化した状態となっており、軟らかい塩基となっている。一方、クラウンエーテル誘導体と金属イオンとは錯体を形成する。クラウンエーテル誘導体と金属イオンとの錯体は、正電荷が非局在化した軟らかい酸となっている。それゆえ、本製造方法によれば、軟らかい塩基と軟らかい酸との作用により、安定したn型導電性を示すとともに高い電気伝導率を示すn型熱電変換材料を製造することができる。
なお、〔2.n型熱電変換材料〕にて既に説明した事項について、以下では説明を省略し、適宜、上述の記載を援用する。
<3−1.接触工程>
本工程は、ナノ材料に、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と金属塩とを含む溶液を接触させる工程である。
上記溶液における溶媒は、水であってもよく有機溶媒であってもよい。当該溶媒は、好ましくは有機溶媒であり、より好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンである。プロパノールとしては、1−プロパノールおよび2−プロパノールが挙げられる。ブタノールとしては、1−ブタノールおよび2−ブタノール等が挙げられる。
溶液中のクラウンエーテル誘導体および金属塩の濃度は、任意の濃度であってよく、例えば、0.001〜1mol/Lであってもよく、0.01〜0.1mol/Lであってもよい。錯体を効率的に形成させるという観点からは、上記溶液は、金属イオンとクラウンエーテル誘導体とのモル比が1:1になるように、クラウンエーテル誘導体および金属塩を含んでいることが好ましい。
接触工程では、ナノ材料と溶液とを接触させることができればよく、その方法は特に限定されない。ナノ材料と溶液とを十分に接触させる観点から、溶液をナノ材料に含浸させることによって、または、溶液中にナノ材料をせん断分散させることによって、ナノ材料と溶液とを接触させることが好ましい。
溶液をナノ材料に含浸させる方法としては、後述のように所望の形状に成形したナノ材料(例えばフィルム)を溶液に浸漬させる方法が挙げられる。また、溶液中にナノ材料をせん断分散させる方法としては、均質化装置を用いてナノ材料を溶液中に分散させる方法が挙げられる。
上記均質化装置としては、ナノ材料を溶液中で均質に分散させることができる装置であれば特に限定されないが、例えば、ホモジナイザーまたは超音波ホモジナイザー等の公知の手段を用いることができる。なお、本明細書中において、単に「ホモジナイザー」と表記した場合は、「撹拌ホモジナイザー」が意図される。
均質化装置の運転条件としては、ナノ材料を溶液中に分散させることができる条件であれば特に限定されない。例えば、均質化装置として、ホモジナイザーを用いる場合は、ナノ材料を加えた溶液を、ホモジナイザーの撹拌速度(回転数)20000rpmにて、室温(23℃)にて10分間懸濁することによって、ナノ材料を溶液中に分散させることができる。
また、成形済のナノ材料を溶液に浸漬させる方法の場合、浸漬させる時間は特に限定されないが、10〜600分であることが好ましく、100〜600分であることがより好ましく、200〜600分であることがさらに好ましい。
<3−2.成形工程>
本製造方法は、上記接触工程の前または後に成形工程を含んでいてもよい。すなわち、本工程は、上記接触工程の前にナノ材料を所望の形状(例えばフィルム)に成形する工程であってもよく、上記接触工程によって得られたn型熱電変換材料を所望の形状に成形する工程であってもよい。
好ましくは、本製造方法は、上記接触工程の前に、ナノ材料を集積させてフィルムを成形する成形工程を含む。この場合、上記接触工程においては、上記溶液に、上記フィルムを浸漬させることが好ましい。
フィルムを成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、溶媒中にナノ材料を分散させ、得られた分散液を濾過することによってフィルムを成形する方法が挙げられる。濾過には、メンブレンフィルターを用いる方法が挙げられる。具体的には、ナノ材料の分散液を、0.1〜2μm孔のメンブレンフィルターを用いて吸引濾過を行い、得られた膜を、50〜150℃にて、1〜24時間、減圧乾燥させることにより、フィルムを成形することができる。
ナノ材料を分散させる溶媒は、水であってもよく有機溶媒であってもよい。当該溶媒は、好ましくは有機溶媒であり、より好ましくはo−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレンまたはシクロヘキサノンである。これらの溶媒であれば、ナノ材料を効率的に分散させることができる。
ナノ材料を分散させる方法としては、上述の<3−1.接触工程>における均質化装置を用いてナノ材料を溶液中に分散させる方法と同様の方法を用いることができる。
〔4.熱電変換デバイス〕
本熱電変換デバイスは、上記n型熱電変換材料を備えている。そのため、本熱電変換デバイスは、軽量であるとともに、優れた熱電変換特性を備えている。また、上記n型熱電変換材料は柔軟性を有しており、加工性に優れているため、様々な形状の熱電変換デバイスを製造することができる。
本熱電変換デバイスは、上記n型熱電変換材料と、p型熱電変換材料とを組み合わせることで実現できる。換言すれば、本熱電変換デバイスは、上記n型熱電変換材料と、p型熱電変換材料とを備えている。上記n型熱電変換材料と組み合わせるp型熱電変換材料としては、特に限定されないが、例えば公知のp型熱電変換材料を用いることができる。
本熱電変換デバイスは優れた熱電変換特性を有するため、例えば、地熱発電等の環境発電、並びに配管および電気炉等の工業廃熱、並びに車体、エンジン周辺機器および空調設備等の機器廃熱の利用に適用することができる。また、本熱電変換デバイスは軽量かつ優れた熱電変換特性を有するため、緊急時用、災害時用および医療用の電源に利用することができる。さらに、本熱電変換デバイスは、軽量かつ柔軟性を有し、優れた熱電変換特性を有するため、ポータブルデバイス、ウェアラブルデバイスおよびフレキシブルデバイス等の小型機器の電源に利用することができる。当該小型機器としては、例えば、携帯電話、腕時計および心臓ペースメーカー等が挙げられる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
5mgのSWNT(名城ナノカーボン社製、EC2.0)と20mLのo−ジクロロベンゼンとを混合し、高速撹拌機(IKA社製、T 25 digital ULTRA-TURRAXQ125、125W)を用いて10分間撹拌した。得られた分散液を吸引濾過し、80℃にて減圧乾燥することにより、メンブレンフィルター(ミリポア社製、オムニポアメンブレンフィルター JGWP02500)上に不織布状のSWNTフィルムを得た。
SWNTフィルムを、0.01mol/LのKOH(和光純薬工業社製、試薬特級)および0.01mol/Lの2,3−ナフト−18−クラウン−6を含むブタノール溶液に浸漬した。なお、2,3−ナフト−18−クラウン−6は、E. P. Kyba et al., J. Am. Chem. Soc. 99, 2564-2571 (1977)に記載の方法によって得ることができる。また、ブタノールとしては1−ブタノールを用いた。
その後、SWNTフィルムをブタノール溶液から引き上げ、窒素ブローにより乾燥させ、さらに室温にて10時間減圧乾燥を行い、熱電変換材料であるSWNTフィルムを得た。
〔比較例1〕
SWNTフィルムを、0.01mol/Lの2,3−ナフト−18−クラウン−6を含むブタノール溶液(すなわち、KOHを含まないブタノール溶液)に浸漬したこと以外は実施例1と同様にして、SWNTフィルムを得た。
〔比較例2〕
SWNTフィルムを、0.01mol/LのKOHを含むブタノール溶液(すなわち、2,3−ナフト−18−クラウン−6を含まないブタノール溶液)に浸漬したこと以外は実施例1と同様にして、SWNTフィルムを得た。
〔比較例3〕
SWNTフィルムを、ブタノール(すなわち、KOHおよび2,3−ナフト−18−クラウン−6を含まないブタノール)に浸漬したこと以外は実施例1と同様にして、SWNTフィルムを得た。
〔比較例4〕
2,3−ナフト−18−クラウン−6の代わりに2,3−ベンゾ−18−クラウン−6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、SWNTフィルムを得た。
〔比較例5〕
2,3−ナフト−18−クラウン−6の代わりに18−クラウン−6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、SWNTフィルムを得た。
〔ゼーベック係数〕
実施例1および比較例1〜5にて得られたSWNTフィルムのゼーベック係数を、ゼーベック効果測定装置(MMR technologies社製、SB−200)を用いて測定した。なお、ブタノール溶液(またはブタノール)に浸漬した時間が0分、10分、60分、180分、300分または600分であるSWNTフィルムについてゼーベック係数を測定した。結果を図3および4に示す。
図3は、実施例1および比較例1〜3におけるゼーベック係数を示す図である。横軸は、SWNTフィルムをブタノール溶液(またはブタノール)に浸漬した時間を表している。図3において、実施例1の結果は白い丸および実線で示され、比較例1の結果は白い四角形および点線で示され、比較例2の結果は白い三角形および破線で示され、比較例3の結果は白い逆三角形および一点鎖線で示されている。
比較例2および3はゼーベック係数が正の値である。このことから、比較例2および3で得られたSWNTフィルムは、p型導電性を示すことがわかる。一方、実施例1および比較例1はゼーベック係数が負の値である。このことから、実施例1および比較例1で得られたSWNTフィルムは、n型導電性を示すことがわかる。
また、比較例1では、ブタノール溶液に浸漬した時間が長くなるとゼーベック係数の絶対値が低下する傾向にあった。一方、実施例1では、ブタノール溶液に10分浸漬したSWNTフィルムにおいてゼーベック係数が約−40μV/Kに達した。このことから、ナノ材料に、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と金属塩とを含む溶液を接触させた場合、早い段階で反応することがわかる。また、実施例1では、浸漬した時間を長くしてもゼーベック係数はほとんど変化しなかった。このことから、ナノ材料と、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含んでいるn型熱電変換材料であれば、安定したn型導電性を示すことがわかる。
図4は、実施例1、並びに比較例4および5におけるゼーベック係数を示す図である。横軸は、SWNTフィルムをブタノール溶液に浸漬した時間を表している。図4において、実施例1の結果は白い丸および実線で示され、比較例4の結果は黒い四角形および破線で示され、比較例5の結果は黒い三角形および二点鎖線で示されている。
実施例1、並びに比較例4および5においてもゼーベック係数は負の値を示した。とりわけ、実施例1においては、ゼーベック係数の数値が安定していることがわかる。
〔電気伝導率〕
実施例1、並びに比較例4および5にて得られたSWNTフィルムについて、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP)を用いた4探針法によって電気伝導率を測定した。なお、ブタノール溶液に浸漬した時間が0分、10分、60分、180分、300分または600分であるSWNTフィルムについて電気伝導率を測定した。結果を図5に示す。
図5は、実施例1、並びに比較例4および5における電気伝導率を示す図である。横軸は、SWNTフィルムをブタノール溶液に浸漬した時間を表している。図5において、実施例1の結果は白い丸および実線で示され、比較例4の結果は黒い四角形および破線で示され、比較例5の結果は黒い三角形および二点鎖線で示されている。
実施例1は、比較例4および5に比べて高い電気伝導率を示した。特に実施例1は、ブタノール溶液に浸漬した時間が200分または600分の場合に、2000S/cm以上の電気伝導率を示した。なお測定値は5%程度の誤差を含む。このことから、ナノ材料と、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含んでいるn型熱電変換材料であれば、アリール環を有さないクラウンエーテルまたはベンゼン環を1つ有するクラウンエーテル誘導体を用いた場合に比べて、電気伝導率を飛躍的に改善できることがわかる。このように高い電気伝導率を示すn型導電性の熱電変換材料はこれまで知られていない。
〔ゼーベック係数と電気伝導率との関係〕
図6は、実施例1、並びに比較例4および5におけるゼーベック係数と電気伝導率との関係を示す図である。図6において、実施例1の結果は白い丸で示され、比較例4の結果は黒い四角形で示され、比較例5の結果は黒い三角形で示されている。
図6は、SWNTフィルムをブタノール溶液に600分浸漬した場合のゼーベック係数と電気伝導率との関係を示している。これらは3回実施した測定値の平均である。実施例1は、n型導電性を示すとともに、高い電気伝導率を示すことがわかる。なお、実施例1は、比較例4および5に比べて低いゼーベック係数を示している。すなわち、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含んでいるn型熱電変換材料であれば、アリール環を有さないクラウンエーテルまたはベンゼン環を1つ有するクラウンエーテル誘導体を用いた場合とは異なる範囲のゼーベック係数を示すn型材料を得ることも可能である。つまり、アリール環の拡張によってゼーベック係数と電気伝導率との関係をチューニングできることがわかる。
本発明は、例えば環境発電、廃熱発電、緊急・災害時用電源、医療電源および小型機器電源等の分野において好適に利用することができる。

Claims (10)

  1. ナノ材料と、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と、金属塩とを含んでいることを特徴とするn型熱電変換材料。
  2. 上記2つ以上のアリール環は縮合環を形成していることを特徴とする請求項1に記載のn型熱電変換材料。
  3. 上記縮合環は、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、ヘプタセン環、オクタセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ベンゾピレン環、トリフェニレン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾイミダソール環またはキノリン環であることを特徴とする請求項2に記載のn型熱電変換材料。
  4. 上記金属塩は、金属水酸化物、金属アルコキシド、金属硫化物、金属チオラート、金属ジチオナイト、金属ピロ亜硫酸塩、金属亜硫酸塩、金属シアン化物、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物および金属酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料。
  5. 上記ナノ材料は、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノロッドおよびナノシートからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料を備えることを特徴とする熱電変換デバイス。
  7. ナノ材料に、2つ以上のアリール環を有するクラウンエーテル誘導体と金属塩とを含む溶液を接触させる接触工程を含むことを特徴とするn型熱電変換材料の製造方法。
  8. 上記溶液における溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンであることを特徴とする請求項7に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
  9. 上記接触工程の前に、上記ナノ材料を集積させてフィルムを成形する成形工程を含むことを特徴とする請求項7または8に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
  10. 上記接触工程において、上記溶液に、上記フィルムを浸漬させることを特徴とする請求項9に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019093620A (ja) * 2017-11-22 2019-06-20 平岡織染株式会社 帯電防止性抗菌膜材

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