JP2017147135A - 燃料電池システムの制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池システムの燃料ガス供給流路に設けられるインジェクタ内の弁につき、低温時等における動作不良を回避する。【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池スタック12のアノード電極34に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給流路51を含む。この燃料ガス供給流路51は、メインインジェクタ54及びエゼクタ56が設けられた主流路52と、BPインジェクタ60が設けられた水素側バイパス流路53とを有する。燃料電池スタック12の運転開始要求がなされた際、メインインジェクタ54には、燃料電池スタック12の定常運転時に通電される電流値よりも大きな電流値での通電が瞬間的になされる。これに伴って、メインインジェクタ54内の弁が開閉動作する。【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムの制御方法に関し、一層詳細には、燃料ガス供給流路に設けられたインジェクタの動作不良を防止するための燃料電池システムの制御方法に関する。
固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の一方の面にアノード電極が、他方の面にカソード電極が、それぞれ配設された電解質膜・電極構造体(MEA)を備える。電解質膜・電極構造体がセパレータによって挟持されることにより、発電セル(単位セル)が構成される。発電セルは、通常、所定の数で積層され、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池車両(燃料電池電気自動車等)に組み込まれる。
燃料電池を運転するに際しては、アノード電極に燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給されるとともに、カソード電極に酸化剤ガス(例えば、圧縮空気等の酸素含有ガス)が供給される。このため、燃料電池には、燃料ガス供給流路及び酸化剤ガス供給流路等が設けられる。これにより、燃料電池システムが構築されている。
この種の燃料電池システムにおいて、燃料ガス供給路を、主流路と、該主流路から分岐したバイパス流路とを含むようにして構成することが知られている。例えば、特許文献1には、主流路とバイパス流路の各々にインジェクタ及びエゼクタ(エジェクタ)を設けた燃料ガス供給路が開示されている。一方、特許文献2には、主流路にはインジェクタ及びエゼクタを介装し、バイパス流路にはインジェクタのみを介装することが記載されている。
いずれの場合においても、エゼクタには、アノード電極から排出された排出燃料ガス(アノードオフガス)が供給される。すなわち、アノードオフガスは、新たに供給された燃料ガスとエゼクタにて合流し、アノード電極に循環再供給される。
特開2012−119300号公報 特開2013−243007号公報
周知の通り、インジェクタは、その内部に弁を有する。すなわち、インジェクタの内部で弁が開放状態又は閉止状態とされ、これにより、燃料ガスが流通状態又は流通停止状態となる。燃料電池の運転を停止するときには、弁が閉止され、この状態が次回の燃料電池の運転開始まで維持される。
例えば、燃料電池システムを搭載した燃料電池車両を寒冷地で使用するような場合、特に冬季には、大気が0℃を下回る。このため、燃料電池の発電後にインジェクタ内に残留した燃料ガス中の水分が凍結することに起因し、弁が弁座に固着する可能性がある。このような事態が生じると、次回の燃料電池の発電時に、燃料電池の温度が上昇して弁が固着から解放されるまでの間、弁が動作不良を起こす懸念がある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、特に低温時におけるインジェクタ内の弁の動作不良を回避することが可能な燃料電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極との間で挟持する電解質膜・電極構造体を備えるとともに、主流路とバイパス流路とを含む燃料ガス供給流路を介して前記アノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介して前記カソード電極に供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記主流路に設けられた第1インジェクタと、
を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池の運転開始要求がなされた際、前記第1インジェクタに、前記燃料電池の定常運転時に通電される電流値よりも大きな電流値での通電、及び通電停止を行うことで弁の開閉動作を行わせることを特徴とする。
すなわち、本発明においては、燃料電池の運転開始(始動)要求がなされたとき、該燃料電池が定常運転に到達する前に第1インジェクタを強制的に開放するようにしている。このため、弁と弁座の間に仮に凍結が起こっていたとしても、弁が弁座から離間する。すなわち、弁が固着から解放される。従って、燃料電池を定常運転状態とするべく第1インジェクタを開放するとき、該第1インジェクタが容易に開放する。このため、所定量の燃料ガスをアノード電極に供給することができる。
燃料電池システムは、第1インジェクタを迂回する前記バイパス流路に第2インジェクタが設けられたものであってもよい。ここで、第1インジェクタは、燃料電池が運転されているときに連続的に開放するか、又は、比較的短時間で開閉する。このため、燃料電池の運転中に第1インジェクタの弁の周囲で凍結が起こる懸念はない。これに対し、バイパス流路に設けられた第2インジェクタは、燃料電池の運転中であっても、閉止状態が比較的長時間維持される。この閉止状態中において凍結が起こることを回避するべく、第2インジェクタに対しては燃料電池の運転中に通電及び通電停止を行い、これにより該第2インジェクタの弁の開閉動作を行わせることが好ましい。
上記したように、第2インジェクタは比較的長時間閉止していることが多い。従って、第2インジェクタの開放要求がなされたときに上記の開閉動作を行わせることが好ましい。この場合、強制開放が行われて弁が固着から解放された直後に該弁が再開放される。従って、該弁が容易に開き、第2インジェクタが設けられたバイパス流路から所定量の燃料ガスを供給することができる。
以上の開閉動作は、凍結の懸念がない状況下で行う必要は特にない。すなわち、温度測定対象を定め、該温度測定対象が予め設定された開閉動作開始温度以下であるときに開閉動作を行わせるようにしてもよい。
温度測定対象の好適な例としては、燃料電池に設けられた冷却媒体出口内の冷却媒体が挙げられる。この場合、冷却媒体の温度が0℃以下であるときに「凍結の懸念あり」と想定し、上記の開閉動作を行わせるようにすればよい。
ここで、インジェクタの弁は、該インジェクタの上流側と下流側の内圧差が大きいときには動作し難い。すなわち、弁が開放状態とならないことがある。従って、第1インジェクタ又は第2インジェクタのいずれか一方が開放状態とならない場合には、残余の一方を開閉動作させることが好ましい。これにより上流側の燃料ガスが下流側の燃料電池に送気されるので、インジェクタの上流側と下流側の内圧差が小さくなる。従って、前記開閉動作を行わせることが容易となる。
第1インジェクタ又は第2インジェクタの弁が前記開放要求に対応して開放されると、燃料ガスが燃料電池に供給されることになる。この際、燃料電池の内圧が上昇する。そこで、前記開閉動作要求がなされた際、燃料電池の内圧が許容範囲内であるか否かを検出し、許容範囲内であるときに前記開閉動作を行わせることが好ましい。これにより、燃料電池の内圧が過度に上昇することを回避することができる。
本発明によれば、燃料電池の運転開始(始動)要求がなされたときに第1インジェクタを強制的に開放するようにしているので、弁と弁座の間に凍結が起こり、このために弁が弁座に固着していた場合であっても、弁が弁座から離間して固着から解放される。これにより、燃料電池を定常運転状態とするときに第1インジェクタが容易に開放するので、所定量の燃料ガスをアノード電極に供給することができる。
本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの制御方法が実施される燃料電池システムの概略構成説明図である。 アノード電極に供給される燃料ガスの供給圧力と、メインインジェクタ(第1インジェクタ)及びBPインジェクタ(第2インジェクタ)の動作不良対策時に通電される電流値とを示したタイムチャートである。
以下、本発明に係る燃料電池システムの制御方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
先ず、燃料電池システムにつき、その概略構成説明図である図1を参照して説明する。この燃料電池システム10は、燃料電池スタック12(燃料電池)を備える。
燃料電池スタック12は、燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置14と、酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置16と、冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置18とを備える。本実施の形態では、燃料ガスとして水素ガス、酸化剤ガスとして圧縮空気を用いる。燃料電池システム10は、さらに、エネルギ貯蔵装置であるバッテリ20と、システム制御装置である制御部22とを備える。
燃料電池スタック12は、複数の発電セル24が水平方向又は鉛直方向に積層されて構成される。ここで、発電セル24は、電解質膜・電極構造体26を第1セパレータ28及び第2セパレータ30で挟持したものである。第1セパレータ28及び第2セパレータ30は、金属又はカーボンからなる。
電解質膜・電極構造体26は、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜32と、前記固体高分子電解質膜32を挟持するアノード電極34及びカソード電極36とを備える。固体高分子電解質膜32としては、上記のようなフッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を採用することもできる。
第1セパレータ28には、電解質膜・電極構造体26との間に、アノード電極34に水素ガスを供給するための水素ガス流路(燃料ガス流路)38が設けられる。一方、第2セパレータ30には、電解質膜・電極構造体26との間に、カソード電極36に空気を供給するための空気流路40が設けられる。互いに隣接する第1セパレータ28と第2セパレータ30との間には、冷却媒体を流通させるための冷却媒体流路42が形成される。
燃料電池スタック12には、水素ガス入口44a、水素ガス出口44b、空気入口46a、空気出口46b、冷却媒体入口48a及び冷却媒体出口48bが設けられる。この中の水素ガス入口44aは、各発電セル24の積層方向に貫通するとともに、水素ガス流路38の供給側に連通する。同様に、水素ガス出口44bも各発電セル24の積層方向に貫通するとともに、水素ガス流路38の排出側に連通する。水素ガス流路38、水素ガス入口44a及び水素ガス出口44bにより、アノード流路が構成される。
同様に、空気入口46aは、各発電セル24の積層方向に貫通するとともに、空気流路40の供給側に連通する。空気出口46bは、各発電セル24の積層方向に貫通するとともに、空気流路40の排出側に連通する。空気流路40、空気入口46a及び空気出口46bにより、カソード流路が構成される。
さらに、冷却媒体入口48aは、各発電セル24の積層方向に貫通するとともに、冷却媒体流路42の供給側に連通する。冷却媒体出口48bは、各発電セル24の積層方向に貫通するとともに、冷却媒体流路42の排出側に連通する。冷却媒体出口48bには、該冷却媒体出口48bから排出された冷却媒体の温度を測定するための温度センサ49が設置される。
燃料ガス供給装置14は、高圧水素ガスを貯留する水素タンク50を備え、この水素タンク50は、水素ガス供給路51(燃料ガス供給流路)を介して燃料電池スタック12の水素ガス入口44aに接続される。水素ガス供給路51は、燃料電池スタック12に水素ガスを供給する。
水素ガス供給路51は、主流路52と水素側バイパス流路53とを有する。主流路52には、メインインジェクタ54(第1インジェクタ)とエゼクタ56が直列に設けられる。前記水素側バイパス流路53は、メインインジェクタ54の上流側で主流路52から分岐し、エゼクタ56の下流側で主流路52に合流する。すなわち、水素側バイパス流路53は、メインインジェクタ54及びエゼクタ56を迂回するように設けられている。
水素側バイパス流路53には、第2インジェクタとしてのBP(バイパス)インジェクタ60が介装されている。BPインジェクタ60は、燃料電池スタック12に高負荷発電が要求された際等に、高濃度の水素ガスを供給するために使用されるサブインジェクタであり、一方、メインインジェクタ54は、燃料電池スタック12の定常運転時(通常発電時)に主として使用されるメインインジェクタである。
燃料電池スタック12の水素ガス出口44bには、水素ガス排出路62(アノードオフガス配管)が接続される。水素ガス排出路62は、アノード電極34で少なくとも一部が使用された水素ガスである排出水素ガス(アノードオフガス)を、燃料電池スタック12から導出する。
水素ガス排出路62には、気液分離器64が設けられる。前記気液分離器64の下流からは水素循環流路66が分岐し、この水素循環流路66の下流側が前記エゼクタ56に接続される。水素循環流路66には、水素ポンプ68が設けられる。水素ポンプ68は、特に起動時に、水素ガス排出路62に排出されたアノードオフガスを、水素循環流路66及びエゼクタ56を介して水素ガス供給路51に循環させる。
水素ガス排出路62は、パージ流路70の一端が連通するとともに、前記パージ流路70の途上には、パージ弁72が設けられる。気液分離器64の底部には、主に液体成分を含む流体を排出する排水流路74の一端が接続される。排水流路74の途上には、ドレイン弁76が配設される。燃料ガス供給装置14は、アノード流路の水素ガス圧力を検出するために、例えば、水素ガス供給路51に水素ガス入口44aの近傍に位置して圧力センサ77を備え、前記圧力センサ77の検出信号が制御部22に送られる。
酸化剤ガス供給装置16は、大気(空気)を圧縮して供給するエアポンプ78を備え、前記エアポンプ78が空気供給路(酸化剤ガス供給流路)80に配設される。空気供給路80は、燃料電池スタック12に圧縮空気を供給する。
空気供給路80は、エアポンプ78の下流側に位置するとともに燃料電池スタック12の空気入口46aに接続され、その間に供給側開閉弁(入口封止弁)82a及び加湿器84が介装される。空気供給路80には、加湿器84を迂回するバイパス供給路86が接続される。バイパス供給路86には、開閉弁88が設けられる。
燃料電池スタック12の空気出口46bには、空気排出路(カソードオフガス排出路)90が接続される。空気排出路90は、カソード電極36で少なくとも一部が使用された圧縮空気である排出圧縮空気(カソードオフガス)を、燃料電池スタック12から排出する。
空気排出路90の下流には前記加湿器84が配設されており、このため、加湿器84は、エアポンプ78から供給された圧縮空気とカソードオフガスとの間で水分及び熱を交換する。さらに、空気排出路90において、加湿器84の下流側には排出側開閉弁(出口封止弁)82b及び背圧弁92が配設される。空気排出路90の下流には、パージ流路70の他端及び排水流路74の他端が接続されて合流しており、これにより希釈部を構成している。
空気供給路80と空気排出路90とには、供給側開閉弁82aの上流側と排出側開閉弁82bの下流側及び背圧弁92の下流側とに位置して、空気側バイパス流路94の両端が連通する。空気側バイパス流路94には、前記空気側バイパス流路94を流通する空気の流量を調整するBP流量調整弁96が配設される。
また、空気供給路80と空気排出路90とには、供給側開閉弁82aの下流側及び排出側開閉弁82bの上流側に位置して、空気循環流路98が連通する。空気循環流路98には、循環ポンプ100が配置される。循環ポンプ100は、空気排出路90に排出された排出空気を、空気循環流路98を通って空気供給路80に循環させる。
冷却媒体供給装置18は、燃料電池スタック12の冷却媒体入口48aに接続される冷却媒体供給路102を備え、前記冷却媒体供給路102の途上には、水ポンプ104が配置される。冷却媒体供給路102は、ラジエータ106に接続されるとともに、前記ラジエータ106には、冷却媒体出口48bに連通する冷却媒体排出路108が接続される。
次に、本実施の形態に係る燃料電池システム10の制御方法につき、該燃料電池システム10の動作との関係で説明する。
このように構成される燃料電池システム10は、例えば、燃料電池電気自動車等の燃料電池車両(図示せず)に搭載される。以下においては、この場合を例示する。
後述するように、水素循環流路66を流通するアノードオフガスは水分を含む。この水分が、寒冷地の特に冬季の夜間等において気温が0℃以下となったときに凍結すると、メインインジェクタ54内の弁が弁座に固着する可能性がある。このような状況となった場合、燃料電池車両を走行させるべく燃料電池スタック12を始動すると、燃料電池の温度が上昇して凍結部分が融解して弁が固着から解放されるまでの間、弁が動作不良を起こす懸念がある。
そこで、本実施の形態では、温度センサ49により、冷却媒体出口48b内の冷却媒体を温度測定対象とし、その温度を常時測定している。そして、燃料電池スタック12が始動されて所定時間(例えば、約5秒以内)が経過したときの測定結果が0℃以下であるときには、制御部22は「弁に固着の可能性あり」と想定し、第1イジェクタ内の弁の開閉動作を行うべく、図2に示すように、制御部22の制御司令下に、メインインジェクタ54に対して瞬間的な通電が行われる。通電時間は、例えば、約10ミリ秒である。
この通電の際、燃料電池の定常運転時に通電される電流値と同程度の電流値であると、万一凍結が起こっているときには、凍結による固着力が弁の開閉力を上回り、弁が開放状態とならない可能性がある。これを回避するべく、メインインジェクタ54に対し、定常運転時の電流値に比して大きな電流値での通電がなされる。これにより、メインインジェクタ54の弁が強制的に開放される。すなわち、凍結が起こっていたとしても、弁が固着から解放される。
大電流での通電が瞬間的であるので、弁は、通電停止に伴って即座に閉止状態に戻る。このように、本実施の形態では、燃料電池車両が停車している最中にメインインジェクタ54の強制開放及び閉止(動作不良対策)を行う。このため、燃料電池車両の走行挙動に影響が及ぶことはない。
通電時の電流値が過度に大きいと、制御部22等に熱的問題が生じる一因となる。これを回避するべく、電流値は、メインインジェクタ54の弁を開放することが可能であるとともに、制御部22等の温度上昇が許容範囲内となる間に設定される。
なお、この時点でBPインジェクタ60を上記と同様にして開閉させるようにしてもよいが、必須ではない。BPインジェクタ60の開閉を行わない場合、該BPインジェクタ60には通電が行われない(図2参照)。
燃料電池スタック12の暖機運転が終了すると、制御部22は、燃料ガス供給装置14からアノード流路に水素ガスを供給するべく、メインインジェクタ54を再開放する指令信号を発する。すなわち、メインインジェクタ54に通電がなされる。このときの電流値は、上記の強制開放を行った際の電流値よりも小さい。
メインインジェクタ54の弁は、既に行われた強制開放により、弁座への固着から解放されている。このため、弁は、通電の再開に伴って容易に開放する。換言すれば、メインインジェクタ54の弁が制御指令に従って正常に動作する。このため、水素タンク50から水素ガス供給路51に供給された所定量の水素ガスが、主流路52のメインインジェクタ54及びエゼクタ56を通過して燃料電池スタック12の水素ガス入口44aに供給される。
水素ガスは、さらに、水素ガス入口44aから水素ガス流路38に導入され、前記水素ガス流路38に沿って移動する。これにより、電解質膜・電極構造体26のアノード電極34に水素ガスが供給される。
その一方で、制御部22は、酸化剤ガス供給装置16から圧縮空気を供給するべく、エアポンプ78を付勢する指令信号を発する。これに伴い、エアポンプ78の回転作用下に、空気供給路80に圧縮空気が送られる。この圧縮空気は、加湿器84を通過する際に加湿された後、燃料電池スタック12の空気入口46aに供給される。圧縮空気は、空気入口46aから空気流路40に導入された後、前記空気流路40に沿って移動することによって電解質膜・電極構造体26のカソード電極36に供給される。
従って、各電解質膜・電極構造体26では、アノード電極34に供給される水素ガスと、カソード電極36に供給される圧縮空気中の酸素とが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。加湿器84にて圧縮空気に付与された湿分の一部は、カソード電極36から固体高分子電解質膜32に浸透し、アノード電極34に到達する。
また、冷却媒体供給装置18では、水ポンプ104の作用下に、冷却媒体供給路102から燃料電池スタック12の冷却媒体入口48aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。冷却媒体は、冷却媒体流路42に沿って流動し、発電セル24を冷却した後、冷却媒体出口48bから冷却媒体排出路108に排出される。上記したように、冷却媒体出口48b内の冷却媒体の温度が、温度センサ49によって常時測定される。
次いで、アノード電極34に供給されて一部が消費された水素ガスは、アノードオフガスとして水素ガス出口44bから水素ガス排出路62に排出される。この際、アノードオフガスは、上記のようにしてアノード電極34に到達した湿分(水分)を同伴する。すなわち、気液分離器64に導入されるアノードオフガスは、水分を含んだ湿潤ガスである。
気液分離器64において、アノードオフガス中の水分の大部分が分離される。液分(水)は、ドレイン弁76が開放されることによって排水流路74から排出される。一方、水分が分離されたアノードオフガスは、若干残留したミストを含んだ状態で、水素ポンプ68の作用下に、水素ガス排出路62から水素循環流路66に導入される。アノードオフガスは、さらに、水素循環流路66からエゼクタ56に吸引され、メインインジェクタ54を通過した新たな水素ガスに合流して水素ガス供給路51からアノード流路に供給される。このように、アノードオフガスは燃料電池スタック12に循環供給される。
なお、水素ガス排出路62に排出されたアノードオフガスは、必要に応じて、パージ弁72の開放作用下に外部に排出(パージ)される。
同様に、カソード電極36に供給されて一部が消費された圧縮空気は、カソードオフガスとして空気出口46bから空気排出路90に排出される。カソードオフガスは、加湿器84を通って空気供給路80から供給される新たな圧縮空気を加湿した後、背圧弁92の設定圧力に調整されて希釈部に排出される。なお、空気排出路90に排出されたカソードオフガスは、必要に応じて、循環ポンプ100の作用下に空気循環流路98から空気供給路80に供給される。この場合、カソードオフガスも燃料電池スタック12に循環供給される。
以上のようにして燃料電池スタック12の定常運転が行われている間は燃料電池スタック12の温度が比較的高く、このため、アノードオフガスも比較的高温である。また、メインインジェクタ54は、水素ガスを供給するべく、連続的に、又は比較的短時間で間欠的に開放される。このため、定常運転の最中にメインインジェクタ54の弁が弁座に固着する懸念が払拭される。従って、このような場合には、メインインジェクタ54に対する動作不良対策、換言すれば、瞬間的な大電流通電による上記の強制開放及び閉止を行う必要はない。
なお、燃料電池システム10の温度が低い状況下では、メインインジェクタ54及びBPインジェクタ60の双方を閉止する場合も想定される。このようなときには、メインインジェクタ54を閉止して所定時間が経過した際に、該メインインジェクタ54に対して上記の動作不良対策を実施すればよい。
一方、BPインジェクタ60は、定常運転時は閉止しており、燃料電池スタック12に高負荷発電が要求されたとき等に開放される。この際、凍結によって弁の弁座への固着が生じた状態のままであると、BPインジェクタ60に対して開放要求がなされたにも関わらずBPインジェクタ60が開放状態とならない懸念がある。
そこで、BPインジェクタ60に対しては、燃料電池スタック12の運転中に動作不良対策を行うことが好ましい。具体的には、BPインジェクタ60に開放要求がなされたとき、該BPインジェクタ60に対して瞬間的に大電流を通電する。この際の電流値は、BPインジェクタ60の弁に固着が起こっていたとしても該弁を強制的に開放することが可能であるとともに、制御部22等の温度上昇が許容範囲内となる間に設定される。
この通電と通電停止により、BPインジェクタ60の弁が強制的に開閉されて凍結が起こっていたとしても弁が固着から解放される。その直後、強制開放時よりも小さな電流値での通電がなさるとともに、BPインジェクタ60が開放される。その結果、主流路52(メインインジェクタ54及びエゼクタ56)を経由する水素ガスと、水素側バイパス流路53(BPインジェクタ60)を経由する水素ガスとが燃料電池スタック12のアノード流路に供給される。このように、BPインジェクタ60に対して動作不良対策を行うことにより、燃料電池スタック12の高負荷発電要求に対応することが容易となる。
高負荷発電が不要となると、制御部22の制御作用下にBPインジェクタ60が閉止される。高負荷発電が再度必要となったときには、必要に応じて上記の動作不良対策を行えばよい。又は、BPインジェクタ60の動作不良対策を、所定時間が経過する毎、換言すれば、定期的に行うようにしてもよい。
ここで、制御部22には、燃料電池スタック12の内圧が情報として送信されている。上記したようなタイミングでBPインジェクタ60の動作不良対策要求がなされたとき、制御部22は、燃料電池スタック12の内圧が許容範囲内であるか否かを判断する。そして、許容上限を超えているときにはBPインジェクタ60の動作不良対策を行わないことが好ましい。燃料電池スタック12の内圧がそれ以上高くなることを防止するためである。
このように、燃料電池スタック12の内圧に応じてBPインジェクタ60の動作不良対策を行うか否かを決定するようにすることもできる。
燃料電池車両の運転が停止されると、燃料電池スタック12の温度が比較的緩やかに低下する。すなわち、ある程度の間は十分に高温である。この状況下で燃料電池車両を再運転するときには、凍結が起こる懸念はない。従って、この場合には、メインインジェクタ54やBPインジェクタ60の動作不良対策を行う必要は特にない。燃料電池車両の運転が停止された後に比較的長時間が経過したときであっても、冷却媒体出口48b内の冷却媒体の温度が比較的高温(例えば、3℃以上)であるときには、上記と同様に凍結が起こる懸念がないことから、メインインジェクタ54やBPインジェクタ60の動作不良対策を行う必要は特にない。
燃料電池車両の運転停止後、ソーク時間が長くなると、水素ガス排出路62や水素循環流路66内の圧力は、水素ガス供給路51に比して小さくなる。すなわち、例えば、メインインジェクタ54を間に挟む上流側配管と下流側配管との間に内圧差が生じる。この内圧差が過度に大きい状況下では、次回の燃料電池車両の運転開始時にメインインジェクタ54の動作不良対策を行うとき、該メインインジェクタ54の弁を動作させることが容易ではない。
そこで、この場合には、BPインジェクタ60に対し、上記と同様に瞬間的な大電流通電を行い、水素ガス供給路51内の水素ガスを、アノード流路を介して水素ガス排出路62に排出する。これにより、メインインジェクタ54の上流側配管と下流側配管との内圧差が低減される。なお、BPインジェクタ60に対する大電流通電は即座に停止して差し支えない。
この状態で、メインインジェクタ54に対して上記した動作不良対策を実施する。メインインジェクタ54の上流側と下流側で内圧差が低減されており、しかも、メインインジェクタ54に対して大電流が通電されるので、該メインインジェクタ54の弁を強制的に開放及び閉止することが容易となる。
以上のように動作不良対策を行ってもなお、メインインジェクタ54が開放状態とならないことも想定される。この場合には、制御部22はBPインジェクタ60を開放し、水素側バイパス流路53から水素ガスをアノード流路に供給する制御を行う。
このような制御を行うことにより、燃料電池スタック12の負荷に応じて必要量の水素ガスを主流路52ないし水素側バイパス流路53からアノード流路に供給することができる。
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、燃料電池スタック12が始動されて所定時間が経過したときに冷却媒体出口48b内の冷却媒体の温度が所定温度(例えば、約3℃)以上となったときには、メインインジェクタ54の動作不良対策を行う必要は特にない。又は、燃料電池スタック12の始動時には冷却媒体の温度に関わらずメインインジェクタ54の動作不良対策を行うようにしてもよい。
また、温度測定対象は、冷却媒体出口48b内の冷却媒体に限定されるものではなく、水素ガス供給路51内の水素ガスであってもよい。
さらに、メインインジェクタ54の動作不良対策を、燃料電池車両の走行中に再度実施するようにしてもよい。動作不良対策(大電流での通電)が瞬間的であるので、燃料電池車両の走行挙動に影響が及ぶことが回避される。
10…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
14…燃料ガス供給装置 16…酸化剤ガス供給装置
18…冷却媒体供給装置 22…制御部
24…発電セル 26…電解質膜・電極構造体
28、30…セパレータ 32…固体高分子電解質膜
34…アノード電極 36…カソード電極
38…水素ガス流路 40…空気流路
50…水素タンク 51…水素ガス供給路
52…主流路 53…水素側バイパス流路
54…メインインジェクタ 56…エゼクタ
60…BPイジェクタ 62…水素ガス排出路
66…水素循環流路 68…水素ポンプ
78…エアポンプ 80…空気供給路
84…加湿器 90…空気排出路
94…水素側バイパス流路 96…BP流量調整弁
98…空気循環流路 100…循環ポンプ

Claims (7)

  1. 固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極との間で挟持する電解質膜・電極構造体を備えるとともに、主流路とバイパス流路とを含む燃料ガス供給流路を介して前記アノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介して前記カソード電極に供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
    前記主流路に設けられた第1インジェクタと、
    を備える燃料電池システムの制御方法であって、
    前記燃料電池の運転開始要求がなされた際、前記第1インジェクタに、前記燃料電池の運転時に通電される電流値よりも大きな電流値での通電、及び通電停止を行うことで弁の開閉動作を行わせることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
  2. 請求項1記載の制御方法において、前記燃料電池システムは、前記第1インジェクタを迂回する前記バイパス流路に設けられた第2インジェクタを有し、
    前記燃料電池の運転中に、前記第2インジェクタに、前記燃料電池の運転時に通電される電流値よりも大きな電流値での通電、及び通電停止を行って弁の開閉動作を行わせることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
  3. 請求項2記載の制御方法において、前記第2インジェクタの開放要求がなされたときに前記開閉動作を行わせることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の制御方法において、温度測定対象が予め設定された開閉動作開始温度以下であるときに前記開閉動作を行わせることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
  5. 請求項4記載の制御方法において、前記温度測定対象を、前記燃料電池に設けられた冷却媒体出口内の冷却媒体とし、且つ前記冷却媒体の温度が0℃以下であるときに前記開閉動作を行うことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の制御方法において、前記第1インジェクタ又は前記第2インジェクタのいずれか一方のインジェクタが開放状態とならないとき、残余の一方のインジェクタを開閉動作させた後、前記一方のインジェクタの前記開閉動作を行わせることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の制御方法において、前記開閉動作要求がなされた際に前記燃料電池の内圧が許容範囲内であるとき、前記開閉動作を行わせることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
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