JP2017147045A - フロー電池、蓄電池及び給電システム - Google Patents

フロー電池、蓄電池及び給電システム Download PDF

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Abstract

【課題】蓄電池をより急速に充電する。【解決手段】給電システム1は、フロー電池10とフロー電池10の構成を用いて充電される蓄電池50とを備える。フロー電池10は、固体活物質と、電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液と、電極の集電体と固体活物質との間でメディエータ含有電解液を流通する循環経路と、メディエータ含有電解液を外部の蓄電池50へ送液する送液経路と、循環経路及び送液経路のうち少なくとも一方へメディエータ含有電解液を送液する送液部と、を有する正極部17及び負極部18を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、フロー電池、蓄電池及び給電システムに関する。
従来、電池の活物質を含む電解液を循環させて充放電を行うフロー電池が知られている。フロー電池は、低コスト、安全、長寿命といった多くのメリットがあるため、体積容量面での制約の少ない大規模定置型電池として実用化されている。しかしながら、その充放電容量が活物質の溶解度で決まるため、電気容量が比較的低いことがあった。そこで、充放電容量を高めるため、固体活物質を電解液中に分散させることが提案されている(例えば、特許文献1〜3及び非特許文献1〜3参照)。
特開平8−138716号公報 特表2014−500599号公報 特表2012−523103号公報
Qizhao Huang, et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 1793(2013). Mihai Duduta, et al., Adv., Energy Mater., 1, 511(2011). Z. Li, et al., B1-397, Prime2012要旨集、Honolulu, HI 2012年10月7-12日
ところで、例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池では、近年、高容量化が図られているが、その充電に長時間を要し、実用上の課題となっている。また、蓄電池の短時間の充電を行うためには、大電流で高電圧な充電電源が必要となり、例えば、家庭用電源などでは適用に難がある。このように、電力を供給するシステムにおいて、蓄電池の充電をより急速に行うことができるものが求められていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、蓄電池をより急速に充電することができるフロー電池、蓄電池及び給電システムを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、メディエータを含む電解液によって正極活物質及び負極活物質の酸化還元を行うフロー電池の電解液を用いて蓄電池の充電を行うものとすると、より急速に充電することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のフロー電池は、
フロー電池と該フロー電池の構成を用いて充電される蓄電池とを備えた給電システムに用いられるフロー電池であって、
電極の集電体と、
電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を収容する電解液溜めと、
前記集電体と前記電解液溜めとの間で前記メディエータ含有電解液を流通する循環経路と、
前記メディエータ含有電解液を外部の前記蓄電池へ送液する送液経路と、
前記循環経路及び前記送液経路のうち少なくとも一方へ前記メディエータ含有電解液を送液する送液部と、
を有する正極部及び負極部のうち少なくとも一方を備えたものである。
本発明のフロー電池は、前記電解液溜め、前記循環経路及び前記集電体を収容した電極室のうちいずれかに固体活物質を収容しているものとしてもよい。
本発明の蓄電池は、
フロー電池と該フロー電池の構成を用いて充電される蓄電池とを備えた給電システムに用いられる蓄電池であって、
正極活物質を有する正極と、
前記フロー電池から供給された電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を前記正極へ流通する正極側流通経路と、
負極活物質を有する負極と、
前記フロー電池から供給された電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を前記負極へ流通する負極側流通経路と、
を備えたものである。
あるいは、本発明の蓄電池は、
フロー電池と該フロー電池の構成を用いて充電される蓄電池とを備えた給電システムに用いられる蓄電池であって、
固体活物質と、
電極の集電体と前記固体活物質との間で電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を流通する循環経路と、
前記循環経路で前記メディエータ含有電解液を循環させる循環部と、
前記フロー電池から供給された電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を前記循環経路へ流通する流通経路と、
を有する正極部及び負極部のうち少なくとも一方を備えたものである。
本発明の給電システムは、上述のフロー電池と、上述の蓄電池とを備えたものである。
本発明のフロー電池、蓄電池及び給電システムでは、蓄電池をより急速に充電することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、メディエータを用いて化学的に酸化還元を行うと、液状物と固体間の酸化還元反応は比較的早いことから、電池を電気的に酸化還元するのに比してより高速且つ容易に充電することができるためであると推察される。
給電システム1の一例を表す説明図。 フロー電池として構成された蓄電池50Bの一例を表す説明図。
次に、本発明を具現化した一実施形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態である給電システム1の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態の給電システム1は、フロー電池10とフロー電池10の構成を用いて充電される蓄電池50とを備えている。フロー電池10は、家庭用電源や工場用電源など施設に配設されて用いられる比較的大型の電池としてもよい。また、蓄電池50は、自動車用電源やモバイル機器用電源など移動を伴う装置等に用いられる比較的小型の電池としてもよい。蓄電池50は、充電時において蓄電池側接続部60が外部充電用接続部40に接続され、フロー電池10から供給される正極メディエータ含有電解液21及び負極メディエータ含有電解液31によって充電される。
フロー電池10は、ケース11と、正極部17と、負極部18とを備えている。正極部17は、正極室12と、正極リザーバ容器24(電解液溜め)と、正極側循環経路25と、正極側送液経路43とを備えている。負極部18は、負極室13と、負極リザーバ容器34(電解液溜め)と、負極側循環経路35と、負極側送液経路47とを備えている。ケース11には、正極集電体20や正極メディエータ含有電解液21が収容された正極室12と、負極集電体30や負極メディエータ含有電解液31が収容された負極室13とがセパレータ14により分離されて形成されている。正極メディエータ含有電解液21や負極メディエータ含有電解液31は、電子伝達媒介物質であるメディエータと溶媒とを含む。
正極リザーバ容器24は、その内部に正極メディエータ含有電解液21と正極固体活物質22とを貯留しており、フィルタ15によって正極固体活物質22の流出を防止している。正極側循環経路25は、正極室12と正極リザーバ容器24との間に接続された配管であり、正極集電体20と正極固体活物質22との間で正極メディエータ含有電解液21を流通する。この正極側循環経路25には、正極側送液ポンプ27(送液部)や切替バルブ28,29が取り付けられている。正極側送液ポンプ27は、切替バルブ28、29の切り替えに応じて正極側循環経路25及び正極側送液経路43(供給経路41)のうち少なくとも一方へ正極メディエータ含有電解液21を送液する。切替バルブ28、29は、例えば、三方弁などとしてもよい。
正極側送液経路43は、供給経路41と、回収経路42とを含む。供給経路41は、正極リザーバ容器24と正極室12の入口側の接続管26との間に設けられた正極側循環経路25に接続され、外部充電用接続部40及び蓄電池側接続部60を介して、正極メディエータ含有電解液21を外部の蓄電池50へ送液する。回収経路42は、正極室12の出口側の接続管36と正極リザーバ容器24との間に設けられた正極側循環経路25に接続され、蓄電池側接続部60及び外部充電用接続部40を介して、蓄電池50から正極メディエータ含有電解液21が送液される。外部充電用接続部40は、正極メディエータ含有電解液21や負極メディエータ含有電解液31を流通可能な状態で蓄電池側接続部60と接続されるものであり、電解液を流通、閉鎖可能な弁が設けられている。
負極リザーバ容器34は、その内部に負極メディエータ含有電解液31と負極固体活物質32とを貯留しており、フィルタ16によって負極固体活物質32の流出を防止している。負極側循環経路35は、負極室13と負極リザーバ容器34との間に接続された配管であり、負極集電体30と負極固体活物質32との間で負極メディエータ含有電解液31を流通する。この負極側循環経路35には、負極側送液ポンプ37(送液部)や切替バルブ38,39が取り付けられている。負極側送液ポンプ37は、切替バルブ38、39の切り替えに応じて負極側循環経路35及び負極側送液経路47(供給経路45)のうち少なくとも一方へ負極メディエータ含有電解液31を送液する。切替バルブ38、39は、例えば、三方弁などとしてもよい。
負極側送液経路47は、供給経路45と、回収経路46とを含む。供給経路45は、負極リザーバ容器34と負極室13の入口側の接続管26との間に設けられた負極側循環経路35に接続され、外部充電用接続部40及び蓄電池側接続部60を介して、負極メディエータ含有電解液31を外部の蓄電池50へ送液する。回収経路46は、負極室13の出口側の接続管36と負極リザーバ容器34との間に設けられた負極側循環経路35に接続され、蓄電池側接続部60及び外部充電用接続部40を介して、蓄電池50から負極メディエータ含有電解液31が送液される。
フロー電池10において、正極固体活物質22は、蓄電池50の正極活物質52の電位以上であることが好ましい。こうすれば、フロー電池10によって蓄電池50を充電することができる。また、フロー電池10の負極固体活物質32は、蓄電池50の負極活物質56の電位以下であることが好ましい。こうすれば、フロー電池10によって蓄電池50を充電することができる。また、フロー電池10は、蓄電池50よりも大きい容量を有していることが好ましい。こうすれば、フロー電池10によって蓄電池50を十分充電することができる。例えば、フロー電池10の容量は、蓄電池50の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましい。フロー電池10の容量がより多ければ、充電後の蓄電池50の蓄電量SOCがより大きくなるからである。
また、フロー電池10は、その電流や電圧を測定するための回路80を備えている。この回路80は、正極室12の接続管36に接続された参照電極81(例えばAg/AgCl参照電極)と正極集電体20との間の電位差(カソード電圧)を測定する電圧計83とを備えている。また、負極室13の接続管36に接続された参照電極84(例えばAg/AgCl参照電極)と負極集電体30との間の電位差(アノード電圧)を測定する電圧計86とを備えている。また、正極集電体20と負極集電体30との間を流れる電流を測定する電流計87や、外部装置89と並列に設けられ正極集電体20と負極集電体30との間の電位差(セル電圧)を測定する電圧計88を備えている。
このフロー電池10では、図示しないコントローラを備えており、正極側送液ポンプ27により正極メディエータ含有電解液21を循環させて正極集電体20に接触させると共に、負極側送液ポンプ37により負極メディエータ含有電解液31を循環させて負極集電体30に接触させながら、充放電を行う。このとき、回路80により各電圧や電流を測定し、その値に基づいて、循環する各メディエータ含有電解液21,31などの流速を調整することもできる。
ここで、フロー電池の具体的な構成について説明する。フロー電池の固体活物質は、電解液中で充放電可能な電圧域にあるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸バナジウムナトリウム(Na32(PO43)、リチウムマンガネート(LiMn24)、リン酸チタンリチウム(LiTi2(PO43)、リン酸チタンナトリウム(NaTi2(PO43)、ピロリン酸チタン(TiP27)、バナジウム酸リチウム(LiV24)などの、無機系の活物質を好適に用いることができる。このうち、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムナトリウム、リチウムマンガネートは、正極の固体活物質に好適であり、リン酸鉄リチウムやリン酸バナジウムナトリウムがより好適である。また、リン酸チタンリチウム、リン酸チタンナトリウム、ピロリン酸チタン、バナジウム酸リチウムは、負極の固体活物質に好適であり、リン酸チタンリチウム、リン酸チタンナトリウムがより好適である。固体活物質としては、無機系活物質に限らず、キノン系やポリアニリンなどの導電性高分子など水に不溶か難溶な有機系活物質としてもよい。固体活物質の形状は、例えば、メディエータとの接触面積を大きくできるものが好ましく、粒子状や繊維状、シート状、多孔質状などとすることができる。例えば、粒子状とする場合には、10mm〜0.1mmのサイズとしてもよい。なお、ここでいう正極、負極は、2種の電極の電位差で決まるものであり、固体活物質及びメディエータ含有電解液を用いる電極が対極に対し貴な電圧であれば正極、卑な電圧であれば負極となる。
フロー電池において、メディエータは、固体活物質と集電体との間の電子の授受を媒介する。メディエータは、酸化還元物質であれば特に限定されないが、分子量が大きいもの(例えば分子量が1000以上など)であることが好ましく、例えば、ポリオキソメタレート(ポリ酸)であることが好ましい。分子量が大きいものでは、セパレータを通過しにくく、対極側への拡散によるクロスコンタミネーションが生じにくく、好ましい。ポリオキソメタレートは、イソポリ酸でもよいし、ヘテロポリ酸でもよいが、ヘテロポリ酸が好ましい。ヘテロポリ酸としては、例えば、ケイバナドモリブデン酸(H4+x[SiVxMo12-x40](0≦x≦4))、リンバナドモリブデン酸(H3+x[PVxMo12-x40](0≦x≦4))、ケイタングステン酸(H4[SiW1240])などが挙げられる。ポリオキソメタレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。メディエータがケイバナドモリブデン酸である場合、上記一般式中のxの値は1.5以上3.5以下であることが好ましい。こうしたものでは、pH3〜pH10.5という広いpHの範囲で再現性良く動作可能である。また、メディエータがケイバナドモリブデン酸である場合、上記一般式中のxの値は、3.5以上であるものとしてもよい。こうしたものでは、pH11以上の強アルカリ域で安定に動作可能である。
このメディエータは、固体活物質の酸化還元電位に近い酸化還元電位(標準電位)を有するか、固体活物質の酸化還元電位を挟むような複数の酸化還元電電位を有するものとすることが好ましい。即ち、メディエータは、固体活物質の酸化還元電位よりも低い低電位側酸化還元電位と固体活物質の酸化還元電位よりも高い高電位側酸化還元電位とを有することが好ましい。こうしたものでは、分極が生じにくく、エネルギーロスを低減できる。特に、水溶液系電解液を用いた電池では、セル電圧が1V前後と低いことから、分極の低減の効果は、非水系電解液を用いた電池よりも相対的に大きくなる。例えば、分極が大きいと、送液部(送液ポンプ等)の駆動エネルギーすら確保できない状況になり得る。また、1種のメディエータで、固体活物質の酸化反応にも還元反応にも対応できるため、複数種のメディエータを用いる必要がない。ここで、固体活物質の酸化還元電位に近い酸化還元電位とは、固体活物質の酸化還元電位との差が0.5V以下の範囲にある酸化還元電位としてもよく、0.18V以下の範囲にある酸化還元電位とすることが好ましく、0.12V以下の範囲にある酸化還元電位とすることがより好ましい。メディエータは、固体活物質の酸化還元電位を挟むような複数の酸化還元電位を有する場合も、固体活物質の酸化還元電位に近い酸化還元電位を有することがより好ましい。また、メディエータは、酸化還元において傾斜電位を示すものであることが好ましい。なお、傾斜電位を示すとは、充放電曲線において、明瞭な充放電プラトーを示さない、別の表現をすれば、サイクリックボルタモメトリー(CV)でシャープな酸化還元ピークを示さない擬似容量キャパシタ的な挙動を示すことと同義である。傾斜電位を示す範囲としては、例えば、上述した固体活物質の酸化還元電位に近い酸化還元電位の範囲としてもよいし、上述した固体活物質の酸化還元電位を挟むような複数の酸化還元電位の間の範囲としてもよい。なお、上述したポリオキソメタレートは、固体活物質の酸化還元電位に近い位置に固体活物質の酸化還元電位を挟むような複数の酸化還元電位を有する。
フロー電池において、正極では、メディエータがケイバナドモリブデン酸及びリンバナドモリブデン酸の少なくとも一方であり、固体活物質がリン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムナトリウム及びリチウムマンガネートからなる群より選ばれる1以上であることが好ましい。また、負極では、メディエータがケイバナドモリブデン酸及びケイタングステン酸の少なくとも一方であり、固体活物質がリン酸チタンリチウム及びリン酸チタンナトリウムの少なくとも一方であることが好ましい。この場合、正極及び負極では、メディエータが同種でもよいし、異種でもよいが、同種であることが好ましい。同種であれば、セパレータを通過して対極側へ拡散したとしても、同種であるため、クロスコンタミネーションによる問題などを生じにくいからである。同種の場合、メディエータとしては、ケイバナドモリブデン酸が好適である。ケイバナドモリブデン酸は、正負極固体活物質の酸化還元電位に近く、且つ、それら電位をそれぞれ挟むように複数の酸化還元電位を示し、且つ、ブロードな傾斜電位を示す。また、固体活物質が安定に動作する弱酸性から弱アルカリ性域で安定に動作する。これらのことから、ケイバナドモリブデン酸は、正極にも負極にも用いることのできる好適なメディエータであるといえる。
フロー電池において、メディエータ含有電解液は、pHが3以上11以下であることが好ましい。こうした範囲では、固体活物質が安定に動作するとともに、負極での水素発生、正極での酸素発生を抑制することができる。また、電極組成物は、バッファー(緩衝剤)を含むものとすることが好ましい。こうすれば、充放電時に、酸素発生や水素発生などの副反応により生じるpH変化を抑制できる。バッファーは、所望のpHに応じて適宜選択すればよく、例えば、フタル酸系のバッファー、リン酸系のバッファーや酢酸系のバッファーなどを用いることができる。
フロー電池において、集電体(電極)としては、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1cm〜500μmのものが用いられる。
フロー電池において、セパレータは、イオン透過能を有し、かつ、正極の電極組成物と負極の電極組成物とが混じり合うクロスコンタミネーションを防止する機能を有するものであればよい。セパレータは、例えば、イオンを伝導可能なイオン伝導性高分子膜(イオン交換膜)や、イオン伝導性固体電解質膜、ゲル膜、微多孔膜などを用いることができる。イオン伝導性高分子膜としては、例えば、炭素−フッ素からなる疎水性テトラフルオロエチレン骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖から構成されるパーフルオロカーボン材料(テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニル共重合体)などが挙げられる。また、イオン伝導性固体電解質膜としては、例えば、カチオン伝導性ガラス(酸化物系ガラス)などが挙げられる。
蓄電池50は、正極集電体及び正極活物質52を有する正極51と、フロー電池10から供給された正極メディエータ含有電解液21を正極51へ流通する正極側流通経路58と、負極集電体及び負極活物質56を有する負極55と、フロー電池10から供給された負極メディエータ含有電解液31を負極55へ流通する負極側流通経路59と、を備えている。正極51と負極55とは、セパレータ54により分離されている。蓄電池50の正極活物質52や負極活物質56、セパレータ54は、それぞれが上述したフロー電池10の正極固体活物質22や負極固体活物質32、セパレータ14と同じものとしてもよいし、異なるものとしてもよいが、同じものである方が好ましい。正極51に含まれる電解液は、正極メディエータ含有電解液21と同じものである。また、負極55に含まれる電解液は、負極メディエータ含有電解液31と同じものである。
正極側流通経路58は、供給管61と、排出管63とを含む。供給管61は、正極51の一端側に接続され、正極メディエータ含有電解液21を正極51へ送液する。排出管63は、正極51の他端側に接続され、正極51から正極メディエータ含有電解液21を排出する。負極側流通経路59は、供給管65と、排出管67とを含む。供給管65は、負極55の一端側に接続され、負極メディエータ含有電解液31を負極55へ送液する。排出管67は、負極55の他端側に接続され、負極55から負極メディエータ含有電解液31を排出する。蓄電池50は、供給管61を開放閉鎖する正極側バルブ62と、排出管63を開放閉鎖する正極側バルブ64と、供給管65を開放閉鎖する負極側バルブ66と、排出管67を開放閉鎖する負極側バルブ68とを備えている。この蓄電池50は、フロー電池の構成を有するが、正極側バルブ62,64及び負極側バルブ66,68を閉鎖した状態で放電するものとしてもよい。こうすれば、蓄電池50は、正極リザーバ容器や負極リザーバ容器が不要であるので、構成を簡略化すると共に、コンパクト化を図ることができる。蓄電池側接続部60は、正極側流通経路58及び負極側流通経路59の先端部であり、正極メディエータ含有電解液21や負極メディエータ含有電解液31を流通可能な状態で外部充電用接続部40と接続される。
この給電システム1では、例えば太陽電池からの電力や夜間電力などをフロー電池10によって予め蓄電しておき、必要に応じて外部装置89への電力供給を行う。また、蓄電池50は、必要に応じて外部装置99へ電力供給を行う。使用者は、放電後の蓄電池50を外部充電用接続部40に接続し、フロー電池10による蓄電池50の充電を行う。このとき、フロー電池10は、予め充電された正極メディエータ含有電解液21及び負極メディエータ含有電解液31を蓄電池50へ供給する。この正極メディエータ含有電解液21及び負極メディエータ含有電解液31によって、化学的に正極活物質52や負極活物質56が酸化還元され、蓄電池50の蓄電量が回復する。この給電システム1において、メディエータの濃度と電解液の送液速度の積によって蓄電池50の充電速度が定められるため、これらの条件を出力規模に応じて適宜設定することにより、充電速度を制御することができる。例えば、電圧1.5V、5mol/Lの濃度のメディエータを用いれば、1L/分の流速では、0.20kWh/分の充電速度となり、50L/分の流速にすれば5分という短時間で50kWhの電池が充電可能となる。
以上説明した実施形態のフロー電池では、フロー電池10から供給される正極メディエータ含有電解液21や負極メディエータ含有電解液31を用いて蓄電池50をより急速に充電することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、メディエータを用いて化学的に酸化還元を行うと、液状物と固体間の酸化還元反応は比較的早いことから、電池を電気的に酸化還元するのに比してより高速に充電することができるためである。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、フロー電池10及び蓄電池50は、正極及び負極共にメディエータ含有電解液を用いるものとして説明したが、特にこれに限定されず、例えば、正極のみメディエータ含有電解液を用いるものとしてもよいし、負極のみメディエータ含有電解液を用いるものとしてもよい。蓄電池50は、正極又は負極のいずれかがフロー電池10と共通する構成を有していればよい。例えば、フロー電池は、正極及び負極共にメディエータ含有電解液を用いるものとし、蓄電池は、正極又は負極の一方がメディエータ含有電解液を用いるものとしてもよい。具体的には、蓄電池は、負極を上述した負極側流通経路を備えるものとし、正極は正極活物質を酸素とする空気極を備える空気電池の構成を有するものとしてもよい。このような空気電池としては、例えば、負極にメディエータ含有電解液を流通して充電する亜鉛空気電池などが挙げられる。
上述した実施形態では、蓄電池50は、正極側バルブ62,64及び負極側バルブ66,68を閉じた状態で放電するものとして説明したが、特にこれに限定されない。例えば、蓄電池は、放電時においてメディエータ含有電解液を流通させるフロー電池の構成を有し、メディエータ含有電解液を流通させながら放電するものとしてもよい。一例として、例えば、図2に示すように、蓄電池50は、フロー電池10と同様に電解液を流通させて放電するフロー電池としてもよい。図2は、フロー電池として構成された蓄電池50Bの一例を表す説明図である。なお、上述したフロー電池10及び蓄電池50と同様の構成については、同じ符号を付しその説明を省略する。図2に示すように、蓄電池50Bは、フロー電池10と同様に、正極メディエータ含有電解液71及び正極活物質52を収容した正極リザーバ容器72と、負極メディエータ含有電解液75及び負極活物質56を収容した負極リザーバ容器76と備えている。正極部17Bは、正極集電体20B、正極メディエータ含有電解液71、正極リザーバ容器72、正極側循環経路73及び正極側循環ポンプ74(循環部)を有している。また、負極部18Bは、負極集電体30B、負極メディエータ含有電解液75、負極リザーバ容器76、負極側循環経路77及び負極側循環ポンプ78(循環部)を有している。正極側流通経路58は、正極側循環経路73に接続され、負極側流通経路59は、負極側循環経路77に接続されている。この蓄電池50Bでは、フロー電池10の正極リザーバ容器24から正極リザーバ容器72へ正極メディエータ含有電解液21が供給されると共に、フロー電池10の負極リザーバ容器34から負極リザーバ容器76へ負極メディエータ含有電解液31が供給されて充電される。この蓄電池50Bでも、蓄電池50と同様に、フロー電池10から供給される正極メディエータ含有電解液21や負極メディエータ含有電解液31を用いてより急速に充電することができる。なお、充電時において、フロー電池10から供給されるメディエータ含有電解液は、固体活物質を流通するものとすれば、蓄電池50Bの集電体を流通しなくてもよいし、流通してもよい。
上述した実施形態では、フロー電池10は、電解液溜め(正極リザーバ容器24や負極リザーバ容器34)に固体活物質を収容するものとして説明したが、メディエータ含有電解液が流通する場所に固体活物質を収容するものとすればよく、電解液溜め、循環経路(正極側循環経路25や負極側循環経路35)及び集電体を収容した電極室(正極室12や負極室13)のうちいずれか1以上に固体活物質を収容するものとすればよい。あるいは、上述した実施形態では、フロー電池10は、正極リザーバ容器24内に正極固体活物質22を備えるものとしたが、これを省略してもよい。同様に、フロー電池10は、負極リザーバ容器34内に負極固体活物質32を備えるものとしたが、これを省略してもよい。例えば、容量増加の必要がある場合に、正極固体活物質22を正極リザーバ容器24に備えるものとしてもよい。また、例えば、容量増加の必要がある場合に、負極固体活物質32を負極リザーバ容器34に備えるものとしてもよい。
上述した実施形態では、メディエータ含有電解液は、溶媒を水とする水溶液系電解液を主として説明したが、特にこれに限定されず、例えば、メディエータを含有した非水系電解液としてもよい。非水電解液の溶媒は、一般的な二次電池で用いられるものを採用することができる。
以下では、給電システムの充電フロー電池を具体的に検討した例について、実施例として説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(フロー電池の作製)
図1のように構成されたフロー電池及び蓄電池を作製した。正極において、固体活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO4、以下LFPと略す。宝泉社製SLFP−PD60)を、メディエータとしてケイバナドモリブデン酸(H6[SiV2Mo1040]・29H2O、以下SiVMoと略す。日本無機化学工業製)を用いた。また、負極において、固体活物質としてリン酸チタンリチウム(LiTi2(PO43、以下LTPと略す。)を、メディエータとして、正極と同じSiVMoを用いた。なお、LTPとしては、以下のように作製したものを用いた。まず、チタンイソプロポキシド、酢酸リチウム、リン酸一アンモニウムを所定量混ぜた後、加水分解した固形物を、Ar雰囲気下700℃で24時間加熱焼成した。その後、焼成粉末表面をスクロースで表面被覆し、Ar雰囲気下700℃で焼成して表面カーボン被覆したものを用いた。
実施例1のフロー電池は、具体的には、以下のように作製した。まず、固体活物質としてのLFP95質量部とバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5質量部とを混練し塊状にした。これをミキサーにかけて粉砕し、篩で1mm〜0.5mmのサイズの粒子を選別し、これを正極固体活物質粒子とした。また、固体活物質としてLTPを用いた以外は正極と同様にして、負極固体活物質粒子を得た。また、水酸化リチウム及び0.1Mフタル酸バッファーでpHを4.65に調整した、10質量%SiVMoの3M硝酸リチウム水溶液を作製し、これを正極用及び負極用のメディエータ含有電解液とした。
次に、図1に示すフロー電池を以下のように組み立てた。まず、ケース内に、イオン交換膜と、イオン交換膜を介して対向する正極電極及び負極電極と、を配設した。イオン交換膜としてはLiイオン交換したナフィオン膜(ナフィオンは登録商標)を用い、正極電極及び負極電極としてはいずれも厚さ3mm、4cm2のカーボンフェルトを用いた。次に、正極側のリザーバ容器内に、上述した正極固体活物質粒子(LFP)2g及びメディエータ含有電解液18mLを投入し、負極側のリザーバ容器内にメディエータ含有電解液18mLを投入した。なお、各リザーバ容器には、あらかじめ、固体活物質粒子の流出を防止するフィルタを配設し、固体活物質粒子がフロー電池内を流動しないように構成した。また、蓄電池は、上記フロー電池と同様の構成で、図1に示す構造になるよう作製した。フロー電池の容量は、蓄電池の5倍とした。
蓄電池をSOC=0%まで放電させたのち、フロー電池の正極のメディエータ含有電解液及び負極のメディエータ含有電解液をそれぞれ正極、負極に30mL/分の送液速度で流通させた。すると、蓄電池のセル電圧が上昇した。メディエータ含有電解液の流れを止めた状態で、蓄電池の放電を行ったところ、長時間にわたって放電ができた。このため、蓄電池内の活物質が電気的によらず充電できていることが分かった。
本発明は、エネルギー産業、例えば電池産業の分野に利用可能である。
1 給電システム、10 フロー電池、11 ケース、12 正極室、13 負極室、14 セパレータ、15 フィルタ、16 フィルタ、17,17B 正極部、18,18B 負極部、20,20B 正極集電体、21 正極メディエータ含有電解液、22 正極固体活物質、24 正極リザーバ容器、25 正極側循環経路、26 接続管、27 正極側送液ポンプ、28 切替バルブ、29 切替バルブ、30,30B 負極集電体、31 負極メディエータ含有電解液、32 負極固体活物質、34 負極リザーバ容器、35 負極側循環経路、36 接続管、37 負極側送液ポンプ、38 切替バルブ、39 切替バルブ、40 外部充電用接続部、41 供給経路、42 回収経路、43 正極側送液経路、45 供給経路、46 回収経路、47 負極側送液経路、50,50B 蓄電池、51 正極、52 正極活物質、53 正極側電解液、54 セパレータ、55 負極、56 負極活物質、57 負極側電解液、58 正極側流通経路、59 負極側流通経路、60 蓄電池側接続部、61 供給管、62 正極側バルブ、63 排出管、64 正極側バルブ、65 供給管、66 負極側バルブ、67 排出管、68 負極側バルブ、71 正極メディエータ含有電解液、72 正極リザーバ容器、73 正極側循環経路、74 正極側循環ポンプ、75 負極メディエータ含有電解液、76 負極リザーバ容器、77 負極側循環経路、78 負極側循環ポンプ、80 回路、81 参照電極、83 電圧計、84 参照電極、86 電圧計、88 電流計、89 外部装置、99 外部装置。

Claims (11)

  1. フロー電池と該フロー電池の構成を用いて充電される蓄電池とを備えた給電システムに用いられるフロー電池であって、
    電極の集電体と、
    電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を収容する電解液溜めと、
    前記集電体と前記電解液溜めとの間で前記メディエータ含有電解液を流通する循環経路と、
    前記メディエータ含有電解液を外部の前記蓄電池へ送液する送液経路と、
    前記循環経路及び前記送液経路のうち少なくとも一方へ前記メディエータ含有電解液を送液する送液部と、
    を有する正極部及び負極部のうち少なくとも一方を備えた、フロー電池。
  2. 前記電解液溜め、前記循環経路及び前記集電体を収容した電極室のうちいずれかに固体活物質を収容している、請求項1に記載のフロー電池。
  3. 前記蓄電池は、正極活物質を有する正極と、前記フロー電池から供給された前記メディエータ含有電解液を前記正極へ流通する正極側流通経路と、負極活物質を有する負極と、前記フロー電池から供給された前記メディエータ含有電解液を前記負極へ流通する負極側流通経路と、を備えており、
    前記フロー電池の正極固体活物質は、前記蓄電池の正極活物質の電位以上であり、前記フロー電池の負極固体活物質は、前記蓄電池の負極活物質の電位以下である、請求項1又は2に記載のフロー電池。
  4. 前記フロー電池は、前記蓄電池よりも大きい容量を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフロー電池。
  5. 前記メディエータは、ポリオキソメタレートである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフロー電池。
  6. 前記正極部は、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムナトリウム及びリチウムマンガネートのうち1以上である固体活物質を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフロー電池。
  7. 前記負極部は、リン酸チタンリチウム及びリン酸チタンナトリウムのうち1以上である固体活物質を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフロー電池。
  8. フロー電池と該フロー電池の構成を用いて充電される蓄電池とを備えた給電システムに用いられる蓄電池であって、
    正極活物質を有する正極と、
    前記フロー電池から供給された電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を前記正極へ流通する正極側流通経路と、
    負極活物質を有する負極と、前記フロー電池から供給された電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を前記負極へ流通する負極側流通経路と、
    を備えた蓄電池。
  9. 請求項8に記載の蓄電池であって、
    前記正極側流通経路を開放閉鎖する正極側弁と、
    前記負極側流通経路を開放閉鎖する負極側弁と、を備え、
    前記正極側弁及び前記負極側弁を閉鎖した状態で放電する、蓄電池。
  10. フロー電池と該フロー電池の構成を用いて充電される蓄電池とを備えた給電システムに用いられる蓄電池であって、
    固体活物質と、
    電極の集電体と前記固体活物質との間で電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を流通する循環経路と、
    前記循環経路で前記メディエータ含有電解液を循環させる循環部と、
    前記フロー電池から供給された電子伝達媒介物質であるメディエータを含むメディエータ含有電解液を前記循環経路へ流通する流通経路と、
    を有する正極部及び負極部のうち少なくとも一方を備えた、蓄電池。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のフロー電池と、
    請求項8〜10のいずれか1項に記載の蓄電池と、を備えた給電システム。
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