以下、本発明の一実施の形態にかかる自動分析装置、及び搬送ラインの異常検出方法について、血液、尿等の生体試料の定量、定性分析を行う自動分析装置、その検体(検体試料)が収容されている検体容器を搬送する搬送ラインを例に、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施例にかかる自動分析装置の概略構成図である。
本実施例の自動分析装置1は、ラック供給部11、分析部12、再検部13、ラック収納部14、主搬送部15が設けられた機構部本体10と、機構部本体10のこれら各部を作動制御して分析処理を行う制御装置20とを有する。
ラック供給部11は、図示せぬラック供給口から投入された分析待ちの一乃至複数の検体ラック30が収容蓄積される。検体ラック30には、一乃至複数の検体容器40が搭載保持されている。図示の例では、ラック供給部11は、投入された検体ラック30がそれぞれ分析作業を開始されるまで先入れ先出しとなるように配列されて収容蓄積される構成になっている。
ラック供給部11には、分析待ちの検体ラック30の中から、順次、分析作業を開始する検体ラック30を主搬送部15に1つずつ移送するための搬送機構が一体的に備えられている。搬送機構は、検体ラック30の配列方向に沿って移動可能な押し出しアーム511を有し、移送指示を受けると、順番最後尾の検体ラック30の筐体面をアーム511で押動して、順番が1つ上位の検体ラック30の配列位置になるように移動変位させる当接移送機構51になっている。
これにより、配列順が先頭の検体ラック30は、主搬送部15の送りレーン15-1に移送され、送りレーン15-1上に搭載されるようになっている。この搭載された検体ラック30は、送りレーン15-1上を分析部12側へ搬送される際、ラック供給部11の隣に設けられた識別装置16によって、検体ラック30に付されたラック識別コードの読み取り、検体ラック30に搭載保持されている検体容器40それぞれに付された検体識別コードの読み取りが行われ、制御装置20に送信される。
分析部12は、試薬ディスク12-1、反応ディスク12-2、試薬分注機構12-3、検体分注機構12-4、分注待機レーン12-5、光源及び光度計からなる測定機器(図示省略)等を有する。
試薬ディスク12-1は、複数の試薬容器(図示省略)がディスク周方向に沿って搭載可能になっており、所望の試薬の採取指示を受けると、その回動変位によって、該当の試薬容器を、試薬分注機構12-3の試薬採取位置に位置させる。
反応ディスク12-2は、複数の反応容器(図示省略)がディスク周方向に沿って搭載可能になっており、試薬の分注指示を受けると、その回動変位によって、該当の分析に用いる反応容器を試薬分注機構12-3の試薬分注位置に位置させ、同様に、検体の分注指示を受けると、その回動変位によって、該当の分析に用いる反応容器を検体分注機構12-4の検体分注位置に位置させる。さらに、反応ディスク12-2は、試薬及び検体の分注が完了した反応容器を撹拌機構(図示省略)による撹拌位置に回動変位させて、分注された検体及び試薬を混合した反応液を作製し、また、反応液が収容されている反応容器を所定の分析期間の間、所定のタイミングで測定機器による測定位置に回動変位させて、透過光や散乱光の光量測定を行わせる。
分注待機レーン12-5は、分析作業を行う検体の検体容器40が保持された検体ラック30を、検体分注機構12-4による反応容器への分注に備えて待機させる。分注待機レーン12-5は、複数の検体ラック30を搭載可能なレーン長さを有するベルトコンベアライン52によって構成されている。分注待機レーン12-5は、ベルトコンベアライン52の駆動に応じて始端側(ラック供給部11側)のラック搭載位置から終端側(再検部13側)のラック移載位置へ検体ラック30を移動変位させながら、検体分注機構12-4による検体の採取に備え、検体ラック30を先入れ先出しで搭載している。検体分注機構12-4による検体採取位置は、レーン長さ方向に沿ったラック移載位置側の所定位置で、本実施例では、ラック移載位置と同位置になっている。
再検部13は、検体ラック30をそれぞれ個別に収容可能な複数のスロット13-1と、搭載された検体ラック30を保持しながら、これらスロット13-1の中の所望のスロット13-1に対して移送するラック搬送部13-2とを有する。再検部13の各スロット13-1には、例えば、再検査が必要と判断された検体の検体容器40が保持された検体ラック30、ラック相互の当初の配列順に変更が必要な検体ラック30等が、その作業に備えて収容される。そのため、ラック搬送部13-2は、それ自体が搬送機構として、スロット13-1の配列方向に沿って移動自在になっている。加えて、ラック搬送部13-2及び各スロット13-1には、対向位置されたラック搬送部13-2とスロット13-1との間でラック移載(スロット13-1に対する検体ラック30の格納、取り出し)を行うための搬送機構(図示省略)が備えられている。搬送機構としては、例えば進退可能なプッシュロッド、正逆回動可能な搬送ローラ等を利用した搬入出機構が適用される。ラック搬送部13-2は、検体ラック30の搬入及び搬出に当たっては、再検部13における、主搬送部15寄りの所定の搬入出位置に移動位置される。
ラック収納部14は、ラック供給部11から搬出されて作業が済んだ検体ラック30が収容蓄積される。ラック収納部14には、主搬送部15の送りレーン15-1で移送されてくる検体ラック30をラック収納部14に引き込み、或いは主搬送部15の戻りレーン15-2に移送するための搬送機構が一体的に備えられている。
搬送機構は、収容される検体ラック30の配列方向に沿って移動可能な引き込み・押し出し兼用アーム531を有し、収容指示を受けると、主搬送部15の送りレーン15-1を移送されてきた検体ラック30を兼用アーム531でラック収納部14に引き込んで収容し、戻りレーン15-2への移送指示を受けると、送りレーン15-1を移送されてきた検体ラック30を兼用アーム531で押し出し、戻りレーン15-2に移送する当接移送機構53になっている。これにより、ラック収納部14には、当接移送機構53により引き込まれた、作業の済んだ検体ラック30が、収容順に配列されて収納される。
主搬送部15は、ラック供給部11、分析部12、再検部13、ラック収納部14の各部間で、検体ラック30を移送する。主搬送部15は、送りレーン15-1、戻りレーン15-2、及び把持移載機構57といった搬送機構が設けられた構成になっている。
送りレーン15-1は、自動分析装置1における、検体ラック30の搬送開始側であるラック供給部11から搬送終端側であるラック収納部14へ、分析部12における分注待機レーン12-5と並べられて平行に延び、分注待機レーン12-5と同様に、ベルトコンベアライン54によって構成されている。送りレーン15-1上には、ラック供給部11側からラック収納部14側に向けて順番に、ラック供給部11及び戻りレーン15-2からのラック搭載位置、分析部12の分注待機レーン12-5へのラック移載位置、分析部12の分注待機レーン12-5からのラック搭載位置、再検部13に対してのラック搭載/移載位置、ラック収納部14及び戻りレーン15-2に対してのラック移載位置が形成される。
戻りレーン15-2は、自動分析装置1における搬送終端側のラック収納部14から搬送開始側のラック供給部11へ、分析部12における分注待機レーン12-5や送りレーン15-1と並べられて平行に延び、分注待機レーン12-5及び送りレーン15-1と同様に、ベルトコンベアライン55によって構成されている。戻りレーン15-2では、レーン長さ方向の、送りレーン15-1におけるラック収納部14へのラック移載位置に対応したレーン位置部分が、送りレーン15-1からのラック搭載位置になっている。同様に、戻りレーン15-2では、レーン長さ方向の、送りレーン15-1におけるラック供給部11からのラック搭載位置に対応したレーン位置部分が、送りレーン15-1に対するラック移載位置になっている。
そして、本実施例の場合、送りレーン15-1のベルトコンベアライン54、及び戻りレーン15-2のベルトコンベアライン55は、ラック供給部11の当接移送機構51による送りレーン15-1への検体ラック30の移送、及びラック収納部14の当接移送機構53による送りレーン15-1からラック収納部14若しくは戻りレーン15-2への移送に配慮して、両ベルトコンベアライン54、55の互いの搭載面がラック供給部11、ラック収納部14それぞれの搭載面と同一高さ位置になるように調整されて設けられている。
また、送りレーン15-1のベルトコンベアライン54、及び戻りレーン15-2のベルトコンベアライン55は、ラック供給部11の当接移送機構51による送りレーン15-1への検体ラック30の移送、及びラック収納部14の当接移送機構53によるラック収納部14若しくは戻りレーン15-2への検体ラック30の移送に関連し、そのラック搭載位置又はラック移載位置については、ベルトコンベア541、551それぞれの幅方向両側に設けられた、搭載面に対し上方に突出するはみ出し防止用のガイドレール542、552が、検体ラック30の移送の邪魔にならないように取り除かれて、移送相手側に対して連結接続されている。
戻りレーン15-2の、ラック供給部11側のレーン端には、戻りレーン15-2を介して戻ってきた検体ラック30が収容される戻りラック収容部17が設けられている。戻りラック収容部17には、戻りレーン15-2からの検体ラック30の収容を案内するとともに、収容されている検体ラック30を、戻りレーン15-2上の、送りレーン15-1に対するラック移載位置へ位置させるための搬送機構が一体的に備えられている。
搬送機構は、戻りレーン15-2のレーン長さ方向に沿って移動可能な押し出しアーム561を有し、搬入指示を受けると、押し出しアーム561が戻りラック収容部17内の奥部へ移動して検体ラック30の収容を案内し、搬出指示を受けると、押し出しアーム561が奥部から収容口側へ移動して、検体ラック30を押動して、戻りレーン15-2の、送りレーン15-1に対するラック移載位置に移送する当接移送機構56になっている。
戻りラック収容部17には、例えば、分析結果が通常に対して異常に外れている、試薬が無くなって反応液の作製ができない等の理由により、アラームが発生して分析作業が適切に行われなかった検体容器40が搭載された検体ラック30が、戻りレーン15-2を介して移送され、再分析が必要な再検ラック30として収容される。戻りラック収容部17に収容された再検ラック30は、再分析可能なタイミングで供給される再分析開始指示を受けると、当接移送機構56によって、戻りレーン15-2の、送りレーン15-1に対するラック移載位置に移送させられる。
把持移載機構57は、主搬送部15の送りレーン15-1や戻りレーン15-2上のラック移載位置、及び分析部12の分注待機レーン12-5上のラック移載位置に位置している検体ラック30を、グリップ機構部571で把持して持ち上げて、対応する他部の搭載位置の上方まで搬送機構部572によって検体ラック30を持ち上げた状態で移動し、対応する他部の搭載位置上で検体ラック30を下ろし、グリップ機構部571による把持を解放して搭載する。
図2は、本実施例の自動分析装置に備えられた把持移載機構の構成図である。
把持移載機構57は、グリップ機構部571と、移送機構部572と有して構成されている。グリップ機構部571は、相対向する2枚のグリップ板5711,5711の間隔距離が拡縮するように、グリップ板5711,5711をその対向方向(Y方向)に対して開閉することによって、検体ラック30の把持若しくは把持解放を行い、さらに、検体ラック30を把持した状態で、グリップ板5711をその対向方向(拡縮方向)に直交する高さ方向(Z方向)に昇降変位させて、検体ラック30を持ち上げる。移送機構部572は、グリップ機構部571をグリップ板5711,5711の対向方向(Y方向)に沿って移動変位させて、検体ラック30を、グリップ機構部571ごと水平方向(Y方向)に沿って移動変位させる。
グリップ機構部571は、ベルト5712を介してモータ5713により回動変位させられ、板面の径方向両側の縁部に一対のベアリング5714が設けられたプーリ5715と、プーリ5715と軸5716を介して同軸的に固定接続され、プーリ5715と一体的に回動変位させられる段付きカム5717と、一端側(上方側)がプーリ5715に設けられたベアリング5714との当接側となり、他端側(下方側)が検体ラック30との当接側となって、一端側と他端側との中間部に段付きカム5717に対するカムフォロア5718が備えられた一対の相対向するグリップ板5711、5711と、グリップ板5711、5711間の距離を縮小させるように両端がグリップ板5711、5711それぞれに接続されたバネ5719とを備えた構成になっている。これにより、グリップ機構部571では、プーリ5715と段付きカム5717が一体的に回動変位させられると、それに応動して、プーリ5715に対するグリップ板5711板面の当接位置がずれて、グリップ板5711はバネ5719のバネ力によってグリップ板5711、5711の間隔距離を縮小できるようになり、他端側(下方側)で検体ラック30を挟持できるようになる。加えて、グリップ板5711のカムフォロア5718が段付きカム5717のカム面に形成された段部に乗り上げることにより、グリップ板5711、5711は上方側に変位させられ、挟持された検体ラック30は当初位置よりも上方側に持ち上げられる。
移送機構部572は、モータ5721と、グリップ機構部571を水平方向(Y方向)に沿って移動自在に支持するガイドレール5722と、モータ5721とグリップ機構部571との間に介在され、モータ5721の回転をガイドレール5722上でのグリップ機構部571の水平移動に変換して伝達する伝達機構5723とを備えた構成なっている。これにより、移送機構部572では、モータ5721の回転に応動してグリップ機構部571が伝達機構5723を介してガイドレール5722上で移動変位させられると、これに連動してグリップ機構部571のグリップ板5711、5711に挟持された検体ラック30も、水平方向(Y方向)に移動変位させられる。
本実施例では、把持移載機構57Aは、送りレーン15-1から分注待機レーン12-5へのラック移送指示を受け、送りレーン15-1の、分注待機レーン12-5へのラック移載位置に位置された検体ラック30を、分析部12の分注待機レーン12-5上のラック搬入位置に搭載する。把持移載機構57Bは、分注待機レーン12-5から送りレーン15-1へのラック移送指示を受け、分析部12の分注待機レーン12-5上のラック搬出位置に位置された検体ラック30を、送りレーン15-1の、分注待機レーン12-5からのラック搭載位置に搭載する。把持移載機構57Cは、送りレーン15-1から再検部13へのラック移送指示を受け、送りレーン15-1の、再検部13に対してのラック搭載/移載位置に位置された検体ラック30を、再検部13のラック搬送部13-2に搭載する。把持移載機構57Dは、再検ラック30の再分析開始指示を受け、戻りレーン15-2の、送りレーン15-1に対するラック移載位置に位置された検体ラック30を、送りレーン15-1上のラック供給部11によるラック搭載位置に搭載する。
なお、上記説明では、把持移載機構57は、ラック移載位置毎に対応した複数の把持移載機構57A〜57Dが設けられている構成として説明したが、把持移載機構57を主搬送部15に沿って複数のラック移載位置間で移動可能な構成とすることにより、把持移載機構57の数は低減することが可能である。
また、本実施例の自動分析装置1では、主搬送部15の送りレーン15-1、及び副搬送部としての分析部12の分注待機レーン12-5がベルトコンベアライン52、54、55で構成されていることに関連して、送りレーン15-1及び分注待機レーン12-5には、ラック移載位置や検体採取位置に対応させて、ラックストッパ58が適宜設けられている。
ラックストッパ58は、規制片581と、この規制片581を進退させるためのアクチェータ582とを有して構成され(図13参照)、機構部本体10の非可動部分に取り付け固定されている。ラックストッパ58は、進行状態で、規制片581をベルトコンベアライン52、54、55のベルトコンベア521、541、551の搭載面上にその移送方向に対して直交させるようにして突出させ、退行状態で、規制片581をベルトコンベア521、541、551の搭載面上へ突出しないように退避させる。ラックストッパ58は、突出させた規制片581の外周面を検体ラック30の進行側であるラック前面30Fと当接させて検体ラック30の移動を規制する。
ラックストッパ58は、把持移載機構57のグリップ機構部571が検体ラック30を把持するラック移載位置、ラック収納部14における当接移送機構53が検体ラック30を戻りレーン15-2に移すラック移載位置、分析部12における検体分注機構12-4が検体を採取する検体採取位置で、検体ラック30の移動を規制して、検体ラック30を高精度にかつ安定的に停止位置させる。これにより、把持移載機構57、当接移送機構53、検体分注機構12-4が高精度かつ安定的に検体ラック30に対して作用できるようになっている。
このように構成された自動分析装置1の機構部本体10において、搬送ラインは、主搬送部15の送りレーン15-1及び戻りレーン15-2、分析部12の分注待機レーン12-5を含んで構成され、レーン15-1、15-2、12-5それぞれのベルトコンベアライン54、55、52、ラック供給部11の当接移送機構51、再検部13のスロット13-1及びラック搬送部13-2、ラック収納部14の当接移送機構53、戻りラック収容部17の当接移送機構56、並びに各把持移載機構57は、それぞれ搬送ラインに設けられた搬送機構50に該当する。なお、搬送機構については、ラックを移動させることができるものであればその搬送方式は上記説明した方式に限られるものではなく、どのような搬送方式でも適用可能である。
一方、制御装置20は、制御部21、記憶部22、入力部23、出力部24を含んだコンピュータ装置で構成され、制御部20は図示せぬインターフェースを介して機構部本体10の各部と接続されている。制御装置20は、搬送ラインにおける検体ラック30の搬送制御と分析部12による検体の分析制御とを行う。自動分析装置1による分析作業は、装置制御部としての制御部20が機構部本体10の各部を作動制御して、次のようにして行われる。
検体容器40を搭載した検体ラック30は、ラック供給部11から主搬送部15の送りレーン15-1に供給される。送りレーン15-1により検体ラック30の搬送が開始されると、識別装置16によって、検体ラック30及び検体容器40の確認が行われる。検体ラック30は、送りレーン15-1を、分注待機レーン12-5へのラック移載位置まで移送されると、把持移載機構57により分析部12の分注待機レーン12-5に移載され、検体分注機構12-4による検体採取の順番が来るまで待機させられる。
分析部12では、検体ラック30は分注待機レーン12-5上をラック移載位置を兼ねた検体採取位置まで移動すると、検体分注機構12-4により検体を採取され、反応ディスク12-2上の該当する反応容器に分注されて、試薬との混合液である反応液が作製される。反応液が作製された反応容器に対しては、光源及び光度計からなる測定機器により光が照射され、透過光または散乱光等の光データが測定される。制御部21では、この測定された光データに基づいて、検体中の目的成分の濃度等を求めることにより、検体の分析が行われる。
一方、分析部12における分注すなわち検体採取が終了した検体ラック30は、把持移載機構57により主搬送部15の送りレーン15-1に移載され、分析部12から戻される。そして、分析の結果、再検査が必要と判断された場合には、送りレーン15-1を、再検部13に対してのラック搭載/移載位置まで搬送され、把持移載機構57によって再検部13に収容される。これに対し、分析の結果、再検査の必要がないと判断された場合には、送りレーン15-1を、ラック収納部14及び戻りレーン15-2に対してのラック移載位置まで搬送され、当接移送機構53によってラック収納部14に収容される。さらに、分析の結果が通常に対して異常に外れている、試薬が無くなって反応液の作製ができない等の理由でアラームが発生して分析作業が適切に行われなかった場合は、送りレーン15-1を、ラック収納部14及び戻りレーン15-2に対してのラック移載位置まで搬送され、当接移送機構53によって主搬送部15の戻りレーン15-2に移載され、戻りレーン15-2経由で戻りラック収容部17に収容される。
このようにして、ラック供給部11から供給された検体ラック30は、主搬送部15の送りレーン15-1及び分注部12の分注待機レーン12-5を経由して、再検部13、ラック収納部14、戻りラック収容部17に収容されるように、搬送ラインを搬送される。
また、本実施例の自動分析装置1においては、制御装置20は、搬送ラインの点検作業が行われる際には、さらに、点検管理装置70としても機能するようになっている。なお、点検管理装置70として機能する場合の制御装置20については、追って詳しく説明する。
次に、本実施例の自動分析装置1において、検体の分析作業に用いられる検体ラック、及び搬送ラインの点検作業に用いられる点検用ラックの具体的な構成について、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施例の自動分析装置で検体の分析作業に用いられる検体ラックの外観構成図である。
検体ラック30は、搬送ラインに搭載される搭載面としての底面30Uと、把持移載機構57のグリップ機構部571による把持面(挟持面)となる一対の側面30R、30Lと、主搬送部15の送りレーン15-1での搬送方向の前側になる前面30Fと、同じく搬送方向の後ろ側になる後面30Bと、検体容器40の搭載及び取り出し側になる上面30Tとを有する。検体ラック30の上面30Tには、有底の検体容器搭載孔31が、ラック前後方向に間隔を空けて複数(図示の例では5個)並べられて形成されている。検体容器搭載孔31は、その孔深さが検体容器40の容器長さ(容器高さ)よりも短くなっており、検体容器40が検体容器搭載孔31に搭載保持された状態で、検体容器40の検体採取口側の一部が上面30Tから突出して現れるようになっている。
搬送ライン上で識別装置16が設けられた側に対応する検体ラック30の側面30Rには、検体容器搭載孔31の孔内と連通した確認窓32が形成され、ユーザーが収容されている検体量等の状態や、識別装置16が容器周面に貼付されている検体又は検体容器40の識別コードラベル43を確認できるようになっている。また、検体ラック30自体の、識別装置16により確認可能な所定面位置には、検体ラック30の識別コードラベル33が貼付された構成になっている。
検体ラック30の左右側面方向の幅は、主搬送部15の送りレーン15-1及び戻りレーン15-2、分析部12の分注待機レーン12-5を構成するベルトコンベアライン54、55、52のベルトコンベア541、551、521の幅よりも所定量だけ小さくなっており、ベルトコンベアの長さ方向に平行にして搭載したときに、両側面30R、30Lいずれもベルトコンベアライン54、55、52のはみ出し防止用のガイドレール542、552、522に当接させることなく搭載することが可能な大きさになっている。また、検体ラック30の前面30Fと一対の側面30R、30Lそれぞれとの連接部分には面取りが施された面取り部34が形成され、搬送ラインでの搬送の際、ベルトコンベアのはみ出し防止用のガイドレールのような搬送ラインの非可動部に対して引っ掛かりにくい構造になっている。
図4は、本実施例の自動分析装置で、搬送ラインの点検作業に用いられる点検用ラックの外観構成図である。
図5は、点検用ラックと検体ラックとの外観比較図である。
点検用ラック60は、搬送ラインの点検作業において、搬送ラインで検体ラック30に代えて搬送され、搬送ラインでの搬送中における自身の移送時状態を検出する。
本実施例では、点検用ラック60は、検体ラック30と同様に、搬送ラインに搭載される搭載面としての底面60Uと、把持移載機構57のグリップ機構部571による把持面(挟持面)となる一対の側面60R、60Fと、主搬送部15の送りレーン15-1での搬送方向の前側になる前面60Fと、同じく搬送方向の後ろ側になる後面60Bと、検体容器40の搭載及び取り出し側に相当する上面60Tとを有する。
点検用ラック60は、搬送ラインに生じた異常の影響を受け易い、すなわち異常を検出し易いように、面取りがなされていない直方体形状の外観形態で形成されている。その左右方向の幅寸法は、主搬送部15の送りレーン15-1及び戻りレーン15-2、分析部12の分注待機レーン12-5を構成するベルトコンベアライン54、55、52のベルトコンベア521、541、551の幅寸法よりも小さく搭載面に載置可能ながらも、検体ラック30の左右方向の幅寸法よりも僅かながら大きくなっている。高さ寸法も、検体容器40が検体容器搭載孔31に搭載保持された状態での、検体ラック30と検体容器40とを合わせた高さ寸法よりも僅かながら大きくなっている。前後方向の長さ寸法も、検体ラック30の長さ寸法よりも僅かながら大きくなっている。また、点検用ラック60の重量も、搬送ラインの搬送機構の異常を検出し易いように、検体容器40が搭載れている検体ラック30の最大重量以上になっている。また、点検用ラック60の筐体面構成素材は、搬送ラインを傷付けにくいように、検体ラック30の筐体面構成素材よりも軟らかい素材になっている。また、検体ラック30の筐体面構成素材とは、摩擦係数等の物理的特性を異ならせた素材を用いるようにして、搬送ラインに生じた異常の影響を受け易くしてもよい。なお、本実施例では、搬送ラインに生じた異常を検出し易いように、点検用ラック60は、検体ラック30と筐体形状、筐体寸法、筐体面構成素材等がいずれも異なるものとして説明したが、検体ラック30と筐体形状、筐体寸法、筐体面構成素材等の中のいずれか若しくは全部が同じであってもよい。点検用ラック60は、搬送ラインでの検体ラック30の移送時状態をシミュレートできるものであれば、その具体的な外観形態は上述した外観形態に限定されるわけではない。
そして、点検用ラック60は、上述した外観形態に加えて、搬送ラインでの搬送中における自身の移送時状態を検出するため、図6に示すような移送時状態検出システムを内蔵している。
図6は、点検用ラックに内蔵された移送時状態検出システムの構成図である。
点検用ラック60の移送時状態検出システムは、点検用ラック60の各筐体面60U〜60Tに対してそれぞれ設けられた点検用センサ61(61U、61R、61L、61F、61B、61T)と、各点検用センサ61により逐次検出される対応する筐体面それぞれの搬送時における状態測定データが蓄積記憶される記憶部62と、点検管理装置70との間で指示やデータの入出力を行う入出力部63と、システム全体の制御を行うラック制御部64と、各部を駆動するための電源を供給する電源部65とを含んで構成されている。
各点検用センサ61は、対応する筐体面が外部との接触で受ける圧力の大きさを筐体面内の各位置毎に分けて検出できる感圧式センサによって構成されている。各点検用センサ61は、例えば、筐体面それぞれに対して設けられた、筐体面が外部との接触で受ける筐体面の圧力分布を抵抗値、静電容量等の電気的物理量で検出する圧力センサシートによって構成されている。各筐体面60U〜60Tに対して設けられた各点検用センサ61U〜61Tは、ラック制御部64によって駆動制御される。
記憶部62には、各筐体面に対応して設けられた点検用センサ61の検出出力を基にラック制御部64によって演算された筐体面内の圧力分布測定データが、筐体面60U、60R、60L、60F、60B、60T毎に、例えば搬送開始からの経過時間や検出順等といった点検用ラック60が搬送ライン上におけるどの移送工程及び位置にあるか否かを特定可能な移送工程特定用データと対応付けて、逐次蓄積記憶される。なお、搬送開始の検出については、点検用ラック60が点検管理装置70と無線通信接続されておらず、搬送ラインの各搬送機器に対する制御指示との同期がとれない場合でも、点検用ラック60がラック供給口からラック供給部11に投入されたことを、ラック供給部11の搭載面が当接する筐体面60Uの点検用センサ61Uの検出出力の所定変化や、ラック供給部11における当接移送機構51の押し出しアーム511が当接する筐体面60Rの点検用センサ61Rの検出出力の所定変化に基づいて、ラック制御部64により検出可能である。また、点検用ラック60の所定位置に識別タグを貼付しておき、この識別タグを識別装置16が読み取ったタイミングで搬送開始の検出するようにしてもよい。
図7は、点検用ラックの記憶部に蓄積記憶された筐体面内の圧力分布測定データK(i,j)の一実施例の模式図を示す。
図7は、圧力分布測定データK(i,j)(ただし、Kは、各筐体面60U〜60Tの中のいずれか)の一例として、筐体面60R内の圧力分布測定データR(i,j)のデータ様式を示したものである。筐体面60Rの圧力分布測定データR(i,j)は、筐体面60R内を予め設定されたm×n個の領域R(1,1)〜R(m,n)に分け、ラック制御部64が、点検用センサ61Rによる筐体面60R内の検出出力それぞれをこのm×n個の領域R(1,1)〜R(m,n)毎に分け、その分布結果を基に所定の方式で取得したもので、筐体面60Rの領域R(1,1)〜R(m,n)それぞれが外部から受けた圧力値に該当するものである。一の筐体面内のm×n個の領域数は、各筐体面60U〜60Tでその面積の大きさや必要な測定精度の違い等に応じて相違していても、また、対応する点検用センサ61U〜61Tによる検出可能な測定位置数(解像度)と一致していなくてもよい。
入出力部63は、例えば、有線若しくは無線の通信インターフェース、又はリムーバブルメディア等により構成されている。入出力部63は、点検管理装置70との間で、指示や、圧力分布測定データK(i,j)(=U(i,j),R(i,j),L(i,j),F(i,j),B(i,j),T(i,j))を含むデータのやり取りを行うためのものである。なお、入出力部63が無線通信インターフェースを有し、かつ、搬送ラインの点検中、すなわち搬送ラインによる点検用ラック60の搬送中も点検管理装置70との間で指示やデータの入出力を行える構成になっている場合には、各筐体面内の圧力分布測定データK(i,j)を実際の測定時にリアルタイムで点検管理装置70に送信することができるので、ラック制御部64が記憶部62に圧力分布測定データK(i,j)を記憶する際の、移送工程特定用データとの対応付けについては省略することもできる。
電源部65は、一次電池、二次電池等からなる電源、レギュレータを含む電源回路、システム電源スイッチを有して構成され、各部に駆動電源を供給する。
本実施例の自動分析装置1では、移送時状態検出システムを備えた点検用ラック60は、入力部23の所定操作により点検管理装置70として機能する制御装置20と協働して、搬送ラインの点検作業を行う。点検管理装置70としての制御装置20は、点検用ラック60の搬送を装置制御部としての制御部21に指示し、検体ラック30に代えて搬送ラインでの点検用ラック60の移送制御を制御部21に行わせ、搬送ラインでの点検用ラック60の搬送中に点検用センサ61によって逐次検出される点検用ラック60自身の移送時状態の情報と予め設定された基準値とを比較して、搬送ラインに生じた異常を検知する。
制御装置20では、入力部23の所定操作により点検管理装置モードが設定されると、制御部21は、出力部24の表示装置や入力部23のキーボード等を搬送ラインの点検のGUI(graphical user interface)として機能させ、出力部24の表示装置に図8に示すような搬送ラインの点検作業メニュー設定画面700を表示し、搬送ラインの点検作業内容の設定及び確認を作業者に促す。
図8は、搬送ラインの点検作業内容の設定及び確認を行うための点検作業メニュー設定画面の一実施例である。
例えば、図8(A)に示す点検作業メニュー設定画面700の場合は、ベルトコンベアラインのはみ出し防止用のガイドレールの「1. レール幅等の寸法チェック」、ベルトコンベアラインにおける「2. ベルト等の段差チェック」、ベルトコンベアラインにおける「3. ラックストッパの位置チェック」、搬送機構としてのベルトコンベアライン以外の「4. ラック移載機構のチェック」といった搬送ラインの点検作業内容を作業別に設定可能な作業別チェックボックス710と、それぞれの作業別チェックボックス710から所望の作業を選択すると画面700中にポップアップ表示される、点検作業を行う対象を該当する対象別に選択可能な対象別チェックボックス720と、チェックボックス710、720で設定した内容を確認するための内容表示確認部730と、「設定」、「取消」、「登録」といった操作ボタン740と、を有する形式になっている。作業者は、この点検作業メニュー設定画面700に基づいて、所望の点検作業及びその対象を、それぞれ任意の組み合わせで設定できるようになっている。
図8(A)に示す点検作業メニュー設定画面700においては、作業別チェックボックス710で「1. レール幅等の寸法チェック」が選択され、その対象別チェックボックス720で「1.1 全レーン(送りレーン15-1、分注待機レーン12-5、戻りレーン15-2の全て)」、「1.2 送りレーン」15-1、「1.3 分注待機レーン」12-5、「1.4 戻りレーン」15-1が選択可能な状態が表されている。図8(B)〜図8(D)は、「2. ベルト等の段差チェック」、「3. ラックストッパの位置チェック」、「4. ラック移載機構のチェック」がそれぞれ選択された場合にポップアップ表示される対象別チェックボックス720の実施例を示したものである。
制御装置20では、点検作業メニュー設定画面700で設定された点検作業内容が登録されると、予め記憶部22に記憶されている搬送ラインの各作業別及び各対象別の点検作業ルーチンを基にして、制御部21が、設定された点検作業内容に対応する各作業別及び各対象別の点検作業ルーチンを必要に応じて組み合わせ、搬送ラインにおける点検用ラック60の移送制御パターンを作成する。この点検用ラック60の移送制御パターンの作成に当たっては、制御部21は、通常の分析作業おける検体ラック30の搬送ラインでの移送制御パターンを基本移送制御パターンとして、基本移送制御パターンにおける関係部分を、設定された点検作業内容に対応する各作業別及び各対象別の点検作業ルーチンに基づいて変更し、点検用ラック60の移送制御パターンを作成する。この制御部21による点検用ラック60の移送制御パターンの作成について、図9を参照しながら説明する。
図9は、点検用ラックの搬送ラインにおける移送制御パターンの説明図である。
まず、通常の分析作業おける検体ラック30の搬送ラインでの移送制御パターンに該当する基準移送制御パターンで、点検用ラック60を搬送した場合について説明する。
ST100:ラック供給部11に投入された点検用ラック60は、その当接移送機構51によって主搬送部15の送りレーン15-1に搭載される。
ST200:送りレーン15-1に搭載された点検用ラック60は、送りレーン15-1のベルトコンベアライン54によって搬送され、送りレーン15-1の、分析部12の分注待機レーン12-5への移載位置に対応して設けられたラックストッパ58の作動により、その移載位置で移動が停止させられる。
ST300:この移載位置で移送が停止させられた点検用ラック60は、把持移載機構57Aにより送りレーン15-1から持ち上げられ、分注待機レーン12-5に搭載される。
ST400:分注待機レーン12-5に搭載された点検用ラック60は、分注待機レーン12-5のベルトコンベアライン52によって搬送され、分注待機レーン12-5の検体採取位置に対応して設けられたラックストッパ58の作動により、この検体採取位置で移動が停止させられ、検体分注機構12-4に対して位置決めされる。なお、実際の検体ラック30の移送では、検体採取位置での検体ラック30に対する作業時間があるので、移動と停止を繰り返しながら、搭載位置から検体採取位置まで移送されるが、点検用ラック60による点検作業の場合は、検体採取位置でラックが滞ることがないので、移動と停止の繰り返しは生じない。
ST500:検体採取位置に搬送された点検用ラック60は、把持移載機構57Bにより分注待機レーン12-5から持ち上げられ、送りレーン15-1に戻されて搭載される。
ST600:送りレーン15-1に搭載された点検用ラック60は、送りレーン15-1のベルトコンベアライン54によって搬送され、送りレーン15-1の、ラック収納部14への移載位置に対応して設けられたラックストッパ58の作動により、その移載位置で移動が停止させられる。
ST700:この移載位置で移送が停止させられた点検用ラック60は、ラック収納部14の当接移送機構53により、送りレーン15-1からラック収納部14に引き込まれ収容される。
その上で、対象として「1.2 送りレーン」が設定登録されている場合は、ST200に示した処理を行う前に、次のような送りレーン点検作業ルーチンを追加する。
ST190:通常より遅い移送速度で、ラック供給部11による搭載位置からラック収納部14による移載位置まで移送した後、ベルトコンベアライン54を逆走させてラック供給部11による搭載位置まで移送し、点検用ラック60を送りレーン15-1のレーン全域に亘って往復させる。この往復回数は1回でも複数回でもよい。さらに、この場合、従前に幅が狭い等の異常を検知したレーン部分については、往復途中で、その部分だけ移送範囲を絞ってさらに複数回往復させる等の充填チェックを行うようにしてもよい。
また、対象として「1.3 分注待機レーン」が設定登録されている場合は、工程ST400が次のように変更される。
ST400:分注待機レーン12-5に搭載された点検用ラック60は、分注待機レーン12-5のベルトコンベアライン52によって、通常よりも遅い一定速度で、送りレーン15-1からの搭載位置から、ラック収納部14による検体採取位置まで移送した後、ベルトコンベアライン52を逆走させて搭載位置まで移送し、点検用ラック60を分注待機レーン12-5のレーン全域に亘って往復させ、最終的に、検体採取位置に停止させる。具体的な点検用ラック往復のさせ方については、「1.2 送りレーン」の場合と同様な対応が可能である。
また、対象として「1.4 戻りレーン」が設定登録されている場合は、工程ST700の前に、次のような作業ルーチンを追加する。
ST660:移載位置で移送が停止させられた点検用ラック60を、ラック収納部14の当接移送機構53により、戻りレーン15-2に搭載する。
ST670:戻りレーン15-2の、送りレーン15-1からの搭載位置と送りレーン15-1への移載位置との間で、ベルトコンベアライン55によって点検用ラック60を戻りレーン15-2のレーン全域に亘って往復させる。
ST680:戻りレーン15-2の、送りレーン15-1への移載位置にある点検用ラック60を、把持移載機構57Dにより、送りレーン15-1に搭載し直す。
ST690:送りレーン15-1により、分注待機レーン12-5を介さずに、直接、ラック収納部14への移載位置に向けて移送する。
制御部21は、「1. レール幅等の寸法チェック」以外の「2. ベルト等の段差チェック」、「3. ラックストッパの位置チェック」、「4. ラック移載機構のチェック」が設定登録された場合も、基本移送制御パターンにおける関係部分を、設定された点検作業内容に対応する各作業別及び各対象別の点検作業ルーチンに基づいて変更し、点検用ラック60の移送制御パターンを作成する。その際、「2. ベルト等の段差チェック」が設定登録された場合には、把持移載機構57の持ち上げ高さ位置を通常よりも低くして段差を検出し易くしたり、通常は所定の一方方向だけの移送機構部572による移動を双方向にして移送方向と逆方向の段差も検出できるようになっている。また、「3. ラックストッパの位置チェック」が設定登録された場合には、次の作業を遅らせて、点検用ラック60が対象のラックストッパ58により規制されている時間を通常の場合よりも長くし、異常を検知し易いようになっている。また、「4. ラック移載機構のチェック」が設定登録された場合には、ラック供給部11やラック収納部14の当接移送機構51、53をその全域で点検用ラック60を押し出したり、引き込んだりするようにして、異常を検知し易いようになっている。
そして、点検用ラック60がラック供給部11に搭載され、入力部23から搬送ラインの点検作業の開始指示が操作入力されると、制御部21は、装置制御部として、設定登録された点検作業内容を基に作成した点検用ラック60の移送制御パターンに基づいて、搬送ラインの各部を作動制御して、点検用ラック60を移送する。これにより、点検用ラック60では、その記憶部62に、搬送中おける筐体面内の圧力分布測定データK(i,j)(=U(i,j),R(i,j),L(i,j),F(i,j),B(i,j),T(i,j))が、点検用ラック自身の移送時状態のデータとして記憶蓄積される。
その上で、制御装置20では、搬送ラインにおける異常検出部として、点検用ラック60により収集された搬送中おける筐体面内の圧力分布測定データK(i,j)を基に、搬送ラインに異常やその兆候が現れた箇所が有るか無いかを判定し、異常やその兆候が現れた箇所を検知する。その際、制御装置20は、取得した点検用ラック自身の移送時状態のデータである圧力分布測定データK(i,j)を、基準値と比較して搬送ラインにおける異常の有無を判定する。そのために、制御装置20の記憶部22には、異常判定のための基準値の一実施例として、例えば図10に示すような基準範囲・基準圧力値範囲テーブル75が予め登録されている。
図10は、異常判定のための基準値の一実施例としての、基準範囲・基準圧力値範囲テーブルである。
基準範囲・基準圧力値範囲テーブル75は、点検用ラック60の筐体面K毎に、点検作業メニュー設定画面700で設定可能なチェック項目それぞれに対応して、筐体面内において外部から圧力を受ける基準範囲と、その基準範囲で、異常が生じていない適正状態で生じる基準圧力値範囲、等とが記憶されている形式になっている。ここで、この基準範囲・基準圧力値範囲テーブル75における、基準範囲、基準圧力値範囲それぞれの概念について、図面を参照しながら説明する。
図11は、例えば「1. レール幅等の寸法チェック」で、対象として「1.2 送りレーン」が設定された場合に、点検用ラックが送りレーンを移送されているときの基準範囲、基準圧力値範囲の概念説明図である。図11(A)では、例えば主搬送部15の送りレーン15-1を構成するベルトコンベアライン54のはみ出し防止用ガイドレール542、542間に狭隘箇所91が生じた場合が示されている。図11(B)では、はみ出し防止用ガイドレール542、542間に拡幅箇所92が生じた場合が示されている。
図11(B)に示すように、はみ出し防止用ガイドレール542、542間にレール幅に異常がない場合は、送りレーン15-1での搬送中、点検用ラック60は、左右側面方向の幅寸法がベルトコンベア541の幅寸法よりも小さく搭載面に載置可能ながらも、検体ラック30の左右側面方向の幅寸法よりも僅かながら大きくなっているため、一対の側面60R、60Lの中のいずれかがガイドレール542に摺接することがある。このようなガイドレール542との摺接時でも、その摺接部分が受ける圧力(垂直抗力)の大きさは限られた値であり、その摺接部分も、ガイドレール542、542に対向する側面60R、60L内の、領域高さの上限がガイドレール542によるガイド高さに対応し、領域長さが点検用ラック60の前後方向長さに亘った領域部分A1となる。
ところが、図11(A)に示すようにガイドレール542、542間に狭隘箇所91が生じている場合は、この狭隘箇所91を通過する際に領域部分A1内に、ガイドレール542に通常に摺接している場合よりも受ける圧力(垂直抗力)が大きくなる領域A1xが生じる。また、図11(A)に示すようにガイドレール542、542間に拡幅箇所92が生じている場合は、ガイドレール542に摺接しても圧力(垂直抗力)を受ける部分の領域部分が、通常の場合の領域部分A1よりも狭くなる。
そこで、「1. レール幅等の寸法チェック」で、対象として「1.2 送りレーン」が設定された場合については、この側面60R、60L内それぞれの領域部分A1が基準範囲となり、基準圧力値範囲がこの領域部分A1が通常にガイドレール542に摺接した場合の最大圧力値以下になっている。
なお、ここでは、点検用ラック60の側面60R、60L内それぞれについての基準範囲及び基準圧力値範囲について説明したが、他の面について、その面内にさらに基準範囲及び基準圧力値範囲を有するようにしてもよい。例えば、底面60Uを基準範囲とし、基準圧力値範囲を通常の搭載面から受ける圧力(垂直抗力)の大きさの範囲内にしておけば、ベルトコンベア541の搭載面に対する付着物で生じた搭載面の凹凸も一緒に検出することができる。
また、図10に示した基準範囲・基準圧力値範囲テーブルでは、領域部分A1の面積等といった、基準範囲についての基準圧力値範囲以外の基準値要素については記載省略してあるが、基準値要素はガイドレール542からの圧力(垂直抗力)に関係するものであれば、さらにその基準値要素(例えば、受圧面積、受圧時間、受圧部分等)の値範囲をこの基準圧力値範囲とともに要件として加えたり、基準圧力値範囲自体の代用にすることも可能である。
図12は、例えば「2.ベルト等の段差チェック」で、対象として「2.3 当接移送機構(送りレーン→ラック収納部)」と「2.3 当接移送機構(送りレーン→戻りレーン)」が設定された場合に、これら当接移送機構により点検用ラックが移送されているときの基準範囲、基準圧力値範囲の概念説明図である。
ラック収納部14の当接移送機構53によって、送りレーン15-1の移載位置にある点検用ラック60をラック収納部14に引き込んだり、また、戻りレーン15-2に押し出して搭載する場合、例えば、点検用ラック60の側面60R、60L内それぞれの底面60U側の縁部分A2を基準範囲とする。通常の移送の場合は、この基準範囲A2は、送りレーン15-1とラック収納部14との間の段差A2xや、送りレーン15-1と戻りレーン15-2のとの間の段差A2xに引っ掛からなければ外部から圧力を受けることはないので、基準圧力値範囲を僅かの大きさの圧力値以下にしておく。これにより、段差A2xが生じた場合は、検出することができる。
図13は、例えば「3.ラックストッパの位置チェック」で、対象として「2.3 当接移送機構(送りレーン→ラック収納部)」と「3.3 分注待機レーン(送りレーンへのラック移載位置」が設定された場合に、ラックストッパにより点検用ラックが停止されているときの基準範囲、基準圧力値範囲の概念説明図である。
ラックストッパ58が、アクチュエータ582の作動により、分注待機レーン12-5におけるベルトコンベアライン52のはみ出し防止用ガイドレール522に形成された進退孔から、その規制片581をベルトコンベア521その移送方向に対して直交させるようにして突出させことができる正常状態では、その規制片581は、点検用ラック60の前面60Fの所定部分と当接部分の面積を最大にして当接することになる。ところが、ラックストッパ58の取り付け固定が緩む等して、規制片581が回動したり傾倒すると、その規制片581の、点検用ラック60の前面60Fと当接する部分が減少する。
そこで、正常状態のラックストッパ58の規制片581が当接する点検用ラック60の前面60Fの所定部分A3を基準範囲とし、基準圧力値範囲を正常状態のラックストッパ58の規制片581から受ける圧力(垂直抗力)の大きさの範囲内にしておけば、規制片581が回動したり傾倒すると、所定部分A3内の一部A3xがラックストッパ58の規制片581から受ける圧力が基準圧力値範囲の範囲外になるので、ラックストッパ58の異常を検出することができる。
図14は、例えば「3.ラックストッパの位置チェック」で、対象として「2.3 当接移送機構(送りレーン→ラック収納部)」と「3.3 分注待機レーン(送りレーンへのラック移載位置」が設定された場合に、ラックストッパにより点検用ラックが停止されているときの基準範囲、基準圧力値範囲の他の概念説明図である。
本例では、分析部12の分注待機レーン12-5から主搬送部15の送りレーン15-1へ点検用ラック60を把持移載機構57により移載する際に、グリップ機構部571のグリップ板5711が当接する点検用ラック60の左右側面60R、60Lそれぞれの所定部分A4を基準範囲とし、基準圧力値範囲を点検用ラック60が持ち上げられた際の把持移載機構57による把持力の大きさにする。
正常状態のラックストッパ58の規制片581が正常状態であるならば、分注待機レーン12-5を移送されてきた点検用ラック60は所定のラック移載位置(検体採取位置) に停止するので、グリップ機構部571のグリップ板5711が当接する点検用ラック60の左右側面60R、60Lそれぞれの所定部分A4は、一定で変位しない。ところが、ラックストッパ58の規制片581に異常があれば、点検用ラック60の所定のラック移載位置(検体採取位置)からずれるので、グリップ機構部571のグリップ板5711が当接する点検用ラック60の左右側面60R、60Lそれぞれの当接位置も変化する。そこで、基準圧力値範囲を所定部分A4がグリップ板5711による把持で受ける圧力の大きさの範囲内にしておけば、ラックストッパ58の規制片581に異常が生じると、所定部分A4の一部A4xがグリップ板5711から受ける圧力が基準圧力値範囲の範囲外になるので、ラックストッパ58の異常を検出することができる。
図15は、例えば「4.ラック移載機構のチェック」で、対象として「4.2 当接移送機構(ラック供給部)」が設定された場合に、ラック供給部の当接移送機構よって点検用ラックが移送されているときの基準範囲、基準圧力値範囲の概念説明図である。
本例では、ラック供給部11から主搬送部15の送りレーン15-1へ点検用ラック60を当接移送機構51により移載する際に、当接移送機構51の押し出しアーム511が当接する点検用ラック60の右側面60R内の所定部分A5を基準範囲とし、基準圧力値範囲を押し出しアーム511で押動されている際に所定部分A5が受ける圧力の大きさにする。
当接移送機構51の押し出しアーム511が変形しておらず正常状態であるならば、ラック供給部11に搭載された点検用ラック60は、その所定部分A5が押し出しアーム511によって均等に押動されることになる。これに対し、押し出しアーム511に変形等の異常が生じていれば、その所定部分A5内が均等に押動されなくなり、押し出しアーム511によって押動されない部分A5xが生じることになる。そこで、基準圧力値範囲を点検用ラック60の右側面60R内の所定部分A5とし、基準圧力値範囲を押し出しアーム511による押動で受ける圧力の大きさの範囲内にしておけば、当接移送機構51の押し出しアーム511に異常が生じると、所定部分A5の一部A5xが押し出しアーム511から受ける圧力が基準圧力値範囲の範囲外になるので、押し出しアーム511の異常を検出することができる。
次に、点検管理装置70でもある制御装置20が、搬送ラインにおける異常検出部として点検用ラック60から取得した、点検用ラック自身の移送時状態測定データである筐体面Kそれぞれの、K面内を所定分割した領域位置毎の圧力分布測定データK(i,j)に対して、対応する基準範囲・基準圧力値範囲を基に、搬送ラインにおける異常の有無の判定を行う異常検知処理について、図16、図17により説明する
図16、図17は、点検管理装置によって行われる搬送ラインの異常検知処理の一実施例のフローチャートである。
点検管理装置70でもある制御装置20は、点検用ラック60から、その記憶部62に蓄積記憶されている筐体面K(Kは、筐体面60U、60R、60L、60F、60B、60Tにそれぞれ対応)それぞれの、K面内を所定分割した領域位置毎の圧力分布測定データK(i,j)を取得すると、制御部21は、点検用ラック60の移送制御パターンに基づいて点検用ラック60の該当する移送時状態と対応付けることにより、この移送時状態の筐体面Kに対応した基準範囲・基準圧力値範囲を選択する。その際、K面内を所定分割した領域位置毎の圧力分布測定データK(i,j)と点検用ラック60の移送時状態それぞれとの対応付けは、例えば制御装置20と点検用ラック60との間が無線通信接続されていない等の理由で制御装置20側でリアルタイムで対応付けが行えないような場合は、制御装置20は、この圧力分布測定データK(i,j)に対応付けられた移送工程特定用データを基にして行う。
制御装置20では、制御部21によって、取得されたK面内を所定分割した領域位置毎の圧力分布測定データK(i,j)それぞれについて、図16、図17に示すようにして、K面に応じて選択された基準範囲・基準圧力値範囲を基準値として比較が行われ、搬送ラインにおける異常の有無が判別される。この異常検知処理においては、K面内を所定分割した複数の領域位置の中の、一の領域位置の圧力分布測定データK(i,j) 毎に対して、図16、図17に示すような判別処理が行われ、その複数の領域位置全てについて行われる。
図16、図17に示す判別処理では、その一の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)が、K面に応じて選択された基準範囲内の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)であるか否かが判別される(ステップS10)。圧力分布測定データK(i,j)が基準範囲内の領域位置のものではない場合は、その一の領域位置が外部(搬送ライン)と接触しているか否かについて、圧力分布測定データK(i,j)の値から判別する(S20)。そして、該当領域位置が外部と接触していない場合は、この一の圧力分布測定データK(i,j)に対応するK面内の該当領域位置には異常が発生していないものと判別し(S40)、K面内の次の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)についての判別処理を行う。
ステップS10で、その一の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)が、K面に応じて選択された基準範囲内の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)であると判別された場合は、K面内の該当領域位置が外部、すなわちこの場合はK面の基準範囲・基準圧力値範囲に関わる搬送ラインの監視対象と接触しているか否かについて、圧力分布測定データK(i,j)の値から判別する(S30)。そして、K面内の該当領域位置がこの搬送ラインの監視対象と接触している場合には、その圧力分布測定データK(i,j)の圧力値が、選択された基準範囲について規定された基準圧力値範囲の範囲内であるか否かを確認し(S50)、範囲内である場合は、この圧力分布測定データK(i,j)のK面内の該当領域位置にはこの搬送ラインの監視対象との接触で異常が発生していないものと判別し(S60)、K面内の次の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)についての判別処理を行う。
これに対し、ステップS50で、K面内の基準範囲内にある該当領域位置の圧力分布測定データK(i,j)の圧力値が基準圧力値範囲の範囲外である場合は、この圧力分布測定データK(i,j)に対応するK面内の該当領域位置には、異常があり(S61)、その異常がこのK面の基準範囲・基準圧力値範囲に関わる搬送ラインの監視対象との接触異常(異常C)であることを判別する(S62)。さらに、K面内の基準範囲内にある該当領域位置の圧力分布測定データK(i,j)の圧力値が基準圧力値範囲よりも大きいか又は小さいかを判別し(S63)、大きい場合には、搬送ラインの監視対象との接触異常(異常C)が監視対象との過度の接触による異常(異常Ca)であるものと判別し(S64)、小さい場合には、搬送ラインの監視対象との接触異常(異常C)が監視対象との接触不足による異常(異常Cb)であるものと判別する(S65)。
一方、ステップS30で、その一の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)が、K面に応じて選択された基準範囲内のものであり、K面内の該当領域位置が外部と接触していない場合には、接触すべきものが接触していない異常があり(S31)、その異常がこのK面の基準範囲・基準圧力値範囲に関わる搬送ラインの監視対象との未接触異常(異常A)であることを判別する(S32)。さらに、そのK面内の該当領域位置が基準範囲内における上側部分であるか又は下側部分であるかを判別し(S33)、その判別結果に応じて、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が下側にずれていることによる未接触異常(異常Aa)であるか(S34)、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が上側にずれていることによる未接触異常(異常Ab)であるか(S35)を識別する。また、同様に、そのK面内の該当領域位置が基準範囲内における右側部分であるか又は左側部分であるかを判別し(S36)、その判別結果に応じて、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が左側にずれていることによる未接触異常(異常Ac)であるか(S37)、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が右側にずれていることによる未接触異常(異常Ad)であるか(S38)も識別する。
一方、ステップS20で、その一の領域位置の圧力分布測定データK(i,j)がK面に応じて選択された基準範囲内の領域位置のものではなく、その一の領域位置が外部(搬送ライン)と接触していることが判別された場合は、そのK面内の該当領域位置が本来外部と接触することがないにもかかわらず外部と接触している異常(異常B)があり(S21)、その異常がこのK面の基準範囲・基準圧力値範囲に関わる搬送ラインの監視対象との想定外接触異常(異常B)であることを判別する(S22)。さらに、そのK面内の該当領域位置が基準範囲に対してその上側部分に当たるか又は下側部分に当たるかを判別し(S23)、その判別結果に応じて、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が上側にずれていることによる想定外接触異常(異常Ba)であるか(S24)、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が下側にずれていることによる想定外接触異常(異常Bb)あるか(S25)を識別する。また、同様に、そのK面内の該当領域位置が基準範囲内における右側部分であるか又は左側部分であるかを判別し(S26)、その判別結果に応じて、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が右側にずれていることによる想定外接触異常(異常Bc)あるか(S27)、搬送ラインの本来接触すべき監視対象が左側にずれていることによる想定外接触異常(異常Bd)あるか(S28)も識別する。
本実施例では、搬送ライン上での点検用ラック60の搬送開始から終了までの間に逐次検出される、筐体面K(Kは、筐体面60U、60R、60L、60F、60B、60Tにそれぞれ対応)それぞれの圧力分布測定データK(i,j)それぞれに基づいて、図16、図17に示すような判別処理を行うことによって、図11で説明したような「1. レール幅等の寸法チェック」、図12で説明したような「2.ベルト等の段差チェック」、図13、図14で説明したような「3.ラックストッパの位置チェック」、図15で説明したような「4.ラック移載機構のチェック」を行うことができる。
具体的に、K面を図7に示したR面とし、圧力分布測定データR(m,n−1)〜R(m,2)及びR(m−1,n−1)〜R(m−1,2)に対応の矩形領域が、監視対象が本来当接する基準範囲に該当するものとしたときに、監視対象が実際に当接する領域位置が、図7中で左斜め上方にずれ、圧力分布測定データR(m−1,n)〜R(m−1,3) 及びR(m−2,n)〜R(m−2,3)に対応の矩形領域に対して当接するような異常が起きた場合を仮定して、その場合における判別処理について説明する。この場合、R面の基準範囲内の圧力分布測定データRinの中の、基準範囲内の圧力分布測定データR(m,n−1)〜R(m,2)の中で、基準範囲内の左側に位置する圧力分布測定データR(i,j) がいずれも異常Ab及び異常Adに識別され、右側の圧力分布測定データR(i,j) がいずれも異常Ab及び異常Acに識別されるとともに、同じくR面の基準範囲内の圧力分布測定データRinの中の、圧力分布測定データR(m−1,2)は、異常Aa及び異常Acに識別される。その一方で、R面の基準範囲外の圧力分布測定データRoutの中の、圧力分布測定データR(m−2,n−1)〜R(m−2,3)がいずれも異常Baに識別され、圧力分布測定データR(m−2,n)が異常Ba及び異常Bdに識別されるとともに、圧力分布測定データR(m−1,n)が異常Bdに識別される。そして、点検管理装置70としての制御装置20は、R面内の圧力分布測定データR(i,j)それぞれの識別結果や、基準範囲との形状及び面積等の変化等に基づき、監視対象が実際に当接する領域位置が図7中で左斜め上方にずれた異常を検出する。
また、本実施例では、制御装置20は、このように点検管理装置40として行った搬送ラインのチェック結果を、点検作業が行われる度にその実施日時やそのときの分析装置の稼動時間(累積稼動時間)と対応付けて記憶部に蓄積し、搬送ラインに生じた異常履歴として保存しておくようになっている。そして、制御装置20は、点検作業が行われない期間にあっても、記憶部22に蓄積されている点検作業実施毎のチェック結果に基づいて、搬送ラインの監視対象毎に、異常発生検出間隔を日時データや稼働時間間隔で演算し、異常発生検出間隔が迫っている場合は、その搬送ラインの該当する監視対象と異常発生時期を予測し、出力部24から報知するようにもなっている。
そしてこれら搬送ラインのチェックを行うことで、点検用ラック60の筐体面K(Kは、筐体面60U、60R、60L、60F、60B、60Tにそれぞれ対応)それぞれについて、このK面に対して選択された基準範囲・基準圧力値範囲との関係が、K面内を所定分割した領域位置毎の圧力分布測定データK(i,j)でK面全体又はその所望部分について取得できるので、発生した異常の傾向や、発生しそうな異常の兆候を的確に精度よく検出することができる。
具体的には、図16、図17におけるステップS10−S30−S50−S60で示す一連の処理で、搬送ラインの監視対象との接触で異常が発生していないことが確認された場合でも、例えば、基準範囲内の圧力分布測定データK(i,j)それぞれの基準圧力値範囲内での値分散傾向が基準圧力値範囲の上限又は下限にどれくらい寄ってきたことをさらに算出するようにすれば、接触異常が発生する前にその兆候を感得することができる。また、この基準範囲内の圧力分布測定データK(i,j)それぞれの基準圧力値範囲内での値分散傾向は、搬送ラインの監視対象に対してのメンテナンスで利用する調整値となる。
また、図16、図17におけるステップS10−S30−S31〜 38で示す一連の処理と、ステップS10−S20−S21〜 38で示す一連の処理とで、基準範囲と搬送ラインの監視対象と当接している筐体面K内の領域位置の集合との間での、上下方向、左右方向、又はこれら方向を合成した所定方向のずれを把握するようにし、この把握したずれ量が所定量以下で一時的なものと判断できる場合は、検体ラック30の搬送制御で用いられるこの搬送ラインの監視対象についての制御パラメータを、このずれ量に基づいて調整することにより、基準範囲と搬送ラインの監視対象と当接している筐体面K内の領域位置の集合との間をずれを解消して、搬送ラインの監視対象を筐体面K内の基準範囲で作用させることができる。
このように本実施例にかかる自動分析装置1によれば、搬送ラインの各部の劣化を検出するために、搬送ラインの各部それぞれに専用の劣化検知機構を搭載して、自動分析装置の装置内の構成についてさらに複雑化を招くことなく、搬送ラインの各部の劣化を幅広くかつ的確に検出することができる。また、異常の検知も、実際に検体ラック30を搬送できなくなる異常事態が発生する前に、事前に異常事態の発生兆候が現れた段階で検知することができるので、異常の把握をタイムリーに行える。
また、その異常検出の仕方も、搬送ラインでの搬送中における自身の移送時状態を検出する点検用センサ61が備えられている点検用ラック60を、検体ラック30に代えて搬送ラインによって搬送させることにより行い得るので、自動分析装置1の据え付け時やメンテナンス作業時における搬送ラインの調整、点検作業も、効率化することができる。
さらに、点検作業自体も、搬送ラインでの点検用ラック自身の移送時状態の情報と予め設定された基準値とを比較して装置が自動的に行い得るので、専門の点検知識を備えていないユーザーでも行うことができる。これにより、搬送ラインの点検時期や点検間隔をユーザーの作業都合に合わせる可能となり、例えば、長時間を要する分析作業を実施する際に事前に行うようにすれば、作業途中に検体ラック30を搬送できなくなる異常事態が発生することを、未然回避できる。
なお、本実施例にかかる自動分析装置1では、入力部23の所定操作により制御装置20を点検管理装置70として機能させるものとして説明したが、制御装置20と点検管理装置70とはそれぞれ個別の装置として構成してもよい。また、本実施例にかかる自動分析装置1では、点検用ラック60は、搬送ラインでの搬送中における自身の移送時状態を検出するものとして説明したが、点検管理装置70で作成した点検用ラック60の搬送ラインにおける移送制御パターン、及び必要な基準値を点検用ラック60に記憶しておくようにすれば、図16、図17に示したような搬送ラインの異常検知処理は、点検用ラック60のラック制御部64により行わせることもできる。この場合、点検用ラック60は、移送制御パターンと点検用センサの検出出力に基づいて、搬送ライン上での自身の搬送位置を取得することができる。また、本実施例にかかる自動分析装置1では、点検用ラック60が搬送ライン上におけるどの移送工程にあるか否かを特定可能な移送工程特定用データはラック制御部64が作成するものとして説明したが、点検用ラック60が機構部本体10上における所在位置を確認できるポジショニングシステムを、自動分析装置1に設けるようにしてもよい。具体例として、点検用ラック60にRFIDタグを付けておき、自動分析装置1の制御装置20に接続されて設けられたRFID読取装置により点検用ラック60の所在位置を読み取ることが可能である。
また、本実施例にかかる自動分析装置1では、1つの点検用ラック60により搬送ラインの点検作業を行う構成としたが、複数の点検用ラック60それぞれに対して移送制御パターンを作成し、複数の点検用ラック60で搬送ラインの点検作業内容を個別に分担させることにより、複数の点検用ラック60を同時に用いて搬送ラインの点検作業を行うようにすることも可能である。このように、本発明にかかる自動分析装置の具体的構成については、種々の変形例の採用が可能である。