JP2017145242A - 重度の肝機能障害のある患者のためのルストロンボパグを含有する血小板産生促進剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明者は、ルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩が重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者のため血小板産生促進剤として有用であることを見出した。重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者のためのルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩を含有する血小板産生促進剤を見出した。
【選択図】なし
Description
しかしながら、脾臓摘出は侵襲性が高く門脈血栓、免疫能の低下が報告されていること、PSEでは脾膿瘍や敗血症を引き起こすことが報告されていること、血小板輸血には輸血に伴う副作用(輸血関連急性肺障害や感染症)のリスクを有することや血小板製剤自体の有効期限が短いこと(採血後4日間)等の問題点があり、必ずしも安全かつ簡便な処置ではない。また、血小板を輸血する場合、繰り返し輸血を実施することにより抗体の産生を促し、血小板輸血不応症を引き起こす可能性があることも知られている。
このような状況の下、副作用が無く、簡便に投与可能な血小板減少症治療薬が望まれている。
ルストロンボパグを有効成分として含有するムルプレタ(登録商標)錠3mgの添付文書(非特許文献1)において、「用法・用量に関連する使用上の注意」の欄には、「血小板数が5万/μL以上となり、かつ本剤投与開始前から2万/μL以上増加した場合は,本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと」と記載されている。また、同文献の「薬物動態」の「肝機能障害者」の欄には、「健康成人、軽度(Child-Pugh分類A)及び中等度(Child-Pugh分類B)肝機能障害者各8例に0.75mg(承認外用量)を単回経口投与したとき、軽度肝機能障害者のCmax 及びAUC、中等度肝機能障害者のCmaxは健康成人と同程度であり,中等度肝機能障害者のAUCは健康成人より約20%高かった。」と記載されている。
また、同文献では、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者に対しては、血中濃度が上昇するおそれがあるとして、禁忌、すなわち、ルストロンボパグを投与してはいけないことになっている。
従って、本発明の目的は、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者に対しても十分な血小板数の増加効果を得ることと、血小板数を過剰に増加させないことの両方を満たす、ルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩を含有する血小板産生促進剤を提供することにある。
[1]重度の肝機能障害のある患者に投与することを特徴とする、ルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩を含有する血小板産生促進剤。
[2]重度の肝機能障害のある患者を含む成人に投与することを特徴とする、ルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩を含有する血小板産生促進剤。
[3]重度の肝機能障害のある患者を含む成人が、待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者である、前記[2]記載の血小板産生促進剤。
[4] 重度の肝機能障害のある患者を含む成人が、血小板減少患者である、前記[2]記載の血小板産生促進剤。
[5]重度の肝機能障害がChild-Pugh分類Cに分類される肝機能障害である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の血小板産生促進剤。
重度肝機能障害患者にルストロンボパグを投与した場合の影響を調べるため、これまでに慢性肝疾患患者を対象に実施した国内臨床試験(M0623、M0625、M0626、及びM0631)におけるルストロンボパグ投与例149名の血漿中濃度データから、新たに母集団薬物動態モデルを用いた経験ベイズ法により患者の個々の見かけの全身クリアランス(CL/F)を推定し、Child-Pughスコア及びChild-Pugh分類によるルストロンボパグへの影響を調べた。ルストロンボパグは、特許第5557146号記載の製剤を使用した。
ここで、「母集団薬物動態モデルを用いた経験ベイズ法」とは、母集団モデル上でパラメータの母集団平均値と分散、及び患者の血漿中薬物濃度データよりCL/F値を推定する方法をいう。
「見かけの全身クリアランス(CL/F)」は、CL/F (L/hr)であり、母集団薬物動態モデルを用いた経験ベイズ法により、Post-hoc解析で算出した。
M0623は、経皮的肝癌焼灼術を予定しているChild-Pugh分類Cでない慢性肝疾患による血小板減少患者を対象に、ルストロンボパグ0.25mg、0.5mg、1mg、1.5mg、又は2mgを1日1回7日間反復経口投与した時の有効性、安全性及び薬物動態を確認し、ルストロンボパグの至適用量を探索することを目的とした臨床試験である。
M0625は、経皮的肝癌焼灼術を予定しているChild-Pugh分類Cでない慢性肝疾患による血小板減少患者を対象に、ルストロンボパグ2.5mg、3mg、3.5mg、又は4mgを1日1回7日間反復経口投与した時の有効性、安全性及び薬物動態を確認することを目的とした臨床試験である。
M0626は、経皮的肝癌焼灼術を予定しているChild-Pugh分類Cでない慢性肝疾患による血小板減少患者を対象に、ルストロンボパグ2mg、3mg、又は4mgを1日1回7日間反復経口投与した時の有効性、安全性及び薬物動態を確認すること、経皮的肝癌焼灼術の前処置としてルストロンボパグを投与した時の至適用量を経皮的肝癌焼灼術実施前の血小板輸血回避率を指標として検討することを目的とした臨床試験である。
M0631は、観血的侵襲術を予定しているChild-Pugh分類Cでない慢性肝疾患による血小板減少患者を対象に、ルストロンボパグ3mgを1日1回7日間反復経口投与した時の有効性、安全性及び薬物動態を確認すること、観血的侵襲術の前処置としてルストロンボパグ3mgを投与した時のプラセボに対する優越性を観血的侵襲術実施前の血小板輸血回避率を指標として検証することを目的とした臨床試験である。
M0633は、Child-Pugh分類A又はBの慢性肝疾患による血小板減少患者を対象とした非盲検試験におけるルストロンボパグの投与経験のない患者に対するルストロンボパグ3mgを1日1回7日間反復投与した時の観血的手技前の処置としてルストロンボパグを投与した時の安全性、薬物動態及び有効性を確認すること、過去にルストロンボパグを投与された経験がある患者にルストロンボパグを投与した時の安全性、薬物動態及び有効性を確認することを目的とした臨床試験である。
M0634は、観血的侵襲術を予定しているChild-Pugh分類Cでない慢性肝疾患による血小板減少患者を対象に、ルストロンボパグ3mgを1日1回7日間反復経口投与した時の有効性、安全性及び薬物動態等を確認することを目的とした、外国における臨床試験である。
これらの結果より、本発明者らは、ルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩が重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者のため血小板産生促進剤として有用であることを見出した。すなわち、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者のためのルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩を含有する血小板産生促進剤を見出した。
Child-Pugh分類Cの慢性肝疾患による血小板減少患者にルストロンボパグを投与した時の安全性、薬物動態、及び血小板数の推移を確認するために、Child-Pugh分類Cの慢性肝疾患による血小板減少患者15例を対象として、1日1回3mgのルストロンボパグを7日間投与する。なお、ルストロンボパグは、ムルプレタ(登録商標)錠3mgを使用する。
下記すべての選択基準を満たす者を対象とする。
1)同意取得時に20歳以上の男性又は女性患者
2)Child-Pugh分類Cの慢性肝疾患による血小板減少患者
3)スクリーニング時の血小板数が5万/μL未満の患者
4)スクリーニング時の検査で、肝障害の程度がChild-Pugh分類のCに該当する患者
5)Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG)の全身状態(Performance Status)がGrade 0又は1の患者
ルストロンボパグの3mg錠1錠を、1日1回経口投与する。治験薬投与期間は7日間とする。2日目の投与は1日目の投与から少なくとも12時間以上あけることとし、2日目以降の治験薬投与は、可能な限り同時刻に実施する。
3〜7日目の臨床検査(血小板数)はその日の治験薬投与前に実施し、当日測定された血小板数が投与中止基準(後述)に合致していないことを確認した後に治験薬を投与する。
治験責任(分担)医師は、下記基準に該当した場合、被験者の治験薬投与を中止する。
・血小板数が投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上となった場合
・血栓に関連する有害事象が発現した場合
・重篤又は忍容できない有害事象が発現し、治験責任(分担)医師が中止すべきと判断した場合
・治験薬効果不十分のため、治験責任医師が中止すべきと判断した場合
・被験者が投与中止を申し出た場合
・治験開始後に本治験の対象として不適切であることが判明した場合
・被験者の追跡ができなくなった場合
・その他の理由により、治験責任医師が中止すべきと判断した場合
Child-Pugh分類Cの患者へのルストロンボパグの投与前後に採血を実施し、血液学的検査として、血小板数、幼若血小板比率、及び網血小板比率を検査する。
(1)血小板数の推移
・観測時点ごとに、血小板数の要約統計量を算出する。また、投与開始前の血小板数からの変化量について、同様の解析を行う。
・各被験者の最大血小板数及び最大増加量について、要約統計量を算出する。
(2)レスポンダーの割合
血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上となった患者をレスポンダーと定義して次の解析を行う。なお、血小板製剤の初回併用後にのみ本基準を満たした場合は、ノンレスポンダーとする。
・治験期間中に少なくとも1回はレスポンダーの基準を満たした患者数とその割合を求める。
・観測時点ごとに、レスポンダーの例数とその割合を求める。
(3)血小板数増加の維持期間
血小板数増加の維持の基準が異なる次の3つの期間について要約統計量を算出する。
・血小板数が5万/μL以上を維持していた日数。
・血小板数が7万/μL以上を維持していた日数。
・血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上の値を維持していた日数。
(4)評価
上記試験で得られたChild-Pugh分類C患者の血小板数の推移データと、実施例1の臨床試験であるM0623、M0625、M0626、及びM0631に加え、別途実施の臨床試験M0633及びM0634を加えたChild-Pugh分類Aと分類Bの患者の血小板数の推移データを比較し、類似性を検討する。Post-hoc解析により行う。
Child-Pugh分類Cの患者へのルストロンボパグの投与後一定期間ごとに採血をし、血漿中ルストロンボパグ濃度を測定した。結果を図2に示す。例数、算術平均値 (Mean)、標準偏差 (SD)、及びその変動係数 (CV% = SD/Mean × 100で算出)、幾何平均値及びその変動係数 (Geometric CV% = [exp (sd2)-1]1/2 × 100で算出する。sdは自然対数に変換した値の標準偏差)、中央値、最小値及び最大値を算出する。終末相消失速度定数 (λz) 及び終末相消失半減期 (t1/2,z) は投与終了又は中止後の血漿中濃度測定値から算出する。
Cmax (ng/mL) :最高血漿中薬物濃度
Tmax (hr) :最高血漿中薬物濃度到達時間
AUC0-τ (ng・hr/mL) :台形法による投与時から投与間隔時間 (24時間) までの血漿中薬物濃度-時間曲線下面積 (Linear Up/Log Down法を用いる)
λz (hr-1) :終末相消失速度定数
t1/2,z (hr):終末相消失半減期。t1/2,z = (ln2)/λzで算出
CL/F (L/hr):みかけの全身クリアランス。 CL/F = Dose/AUC0-τで算出
上記試験で得られたChild-Pugh分類C患者のデータと、実施例1の臨床試験であるM0623、M0625、M0626、及びM0631に加え、別途実施の臨床試験M0633及びM0634を加えたChild-Pugh分類Aと分類Bの患者のデータを比較し、類似性を検討する。Post-hoc解析により行う。
Child-Pugh分類Cの患者へのルストロンボパグの投与前後に以下の検査項目を実施し、Child-Pugh分類Cの患者へルストロンボパグを投与しても安全性の問題がないことを確認する。
1)門脈血栓
CT又はMRIによる画像診断を実施し、門脈血栓の有無を判定する。
2)門脈血流方向
超音波ドプラによって門脈血流方向(遠肝性、求肝性、うっ滞)を測定する。
3)血圧及び脈拍数
安静時の血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)及び脈拍を測定し、投与開始前からの異常の有無を判定する。
4)心電図検査
12誘導心電図検査により心電図の以上の有無を確認する。
5)臨床検査
以下の項目の臨床検査を実施し、検査基準値の範囲内であれば正常とし、範囲外であれば異常とする。
5−1)血液学的検査(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数)
5−2)血液生化学的検査(AST、ALT、LDH、γ-GTP、ALP、総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン、そうタンパク、アルブミン、BUN、血清クレアチニン、Na、K、Cl、Ca)
5−3)血液凝固・線溶系検査(PT-INR、活性化部分トロンボプラスチン時間、アンチトロンビンIII活性、フィブリノゲン、フィブリン分解産物、D-ダイマー)
以下に示す製剤例は例示にすぎないものであり、発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
製剤例1 錠剤
ルストロンボパグ 15mg
乳糖 15mg
ステアリン酸カルシウム 3mg
ステアリン酸カルシウム以外の成分を均一に混合し、破砕造粒して乾燥し、適当な大きさの顆粒剤とする。次にステアリン酸カルシウムを添加して圧縮成形して錠剤とする。
ルストロンボパグ 10mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
乳糖 80mg
を均一に混合して粉末又は細粒状として散剤をつくる。それをカプセル容器に充填してカプセル剤とする。
ルストロンボパグ 30g
乳糖 265g
ステアリン酸マグネシウム 5g
をよく混合し、圧縮成型した後、粉砕、整粒し、篩別して適当な大きさの顆粒剤とする。
Claims (5)
- 重度の肝機能障害のある患者に投与することを特徴とする、ルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩を含有する血小板産生促進剤。
- 重度の肝機能障害のある患者を含む成人に投与することを特徴とする、ルストロンボパグ又はその製薬上許容される塩を含有する血小板産生促進剤。
- 重度の肝機能障害のある患者を含む成人が、待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者である、請求項2記載の血小板産生促進剤。
- 重度の肝機能障害のある患者を含む成人が、血小板減少患者である、請求項2記載の血小板産生促進剤。
- 重度の肝機能障害がChild−Pugh分類Cに分類される肝機能障害である、請求項1〜4のいずれかに記載の血小板産生促進剤。
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