JP2017145151A - 非晶質炭素材の黒鉛結晶化処理方法および黒鉛を回収する際に生成する生成物並びに黒鉛 - Google Patents

非晶質炭素材の黒鉛結晶化処理方法および黒鉛を回収する際に生成する生成物並びに黒鉛 Download PDF

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Abstract

【課題】不純物が少なく、結晶化が十分な人造黒鉛を提供すること。また、黒鉛化に必要な試料全体の反応温度を炭素発火点未満の低温に抑え、試料内の温度分布を均一にし、黒鉛化反応の歩留まりを安定して向上させる黒鉛化反応プロセスを提供すること。【解決手段】非晶質炭素材料に、黒鉛化触媒を添加して、分散させ、前記黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料にマイクロ波を照射して加熱する黒鉛化処理方法であって、前記黒鉛化触媒が、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属の単体又は化合物であり、前記黒鉛化触媒の平均粒子径が、200[μm]以下であり、前記黒鉛化触媒の非晶質炭素材料に対する添加割合が、質量比で5%以上15%以下であり、前記非晶質炭素材料を、1000℃以上に加熱して黒鉛化反応させる、ことを特徴とする、非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。【選択図】 図5

Description

本発明は、非晶質炭素材の黒鉛結晶化処理方法および黒鉛を回収する際に生成する生成物並びに黒鉛に関するものである。
黒鉛は、炭素を層状に結晶したものであり、耐火物原料やリチウム二次電池電極材として、結晶質の黒鉛原料の需要は高まっている。しかしながら、天然に産出する鱗状黒鉛は、枯渇傾向にある。また、天然黒鉛は、不可避的にシリカを含む。そのため、非結晶の、非晶質炭素、樹脂、カーボン原料をもとに、結晶質である黒鉛を合成する試みが行われている。ここで、炭素は昇華点の高い(3642℃)物質であり、高温高圧下(4327℃、10.8MPa)でようやく融解する物質であるため、非晶質炭素等を結晶化させて結晶質である黒鉛を合成するには、高温高圧により非晶質構造を結晶質構造に転換する必要があり、結晶化のための手法の開発は非常に困難である。そのため、1980年代からこれらに比べ比較的低温条件かつ常圧下で非晶質構造の炭素を、結晶化して黒鉛化する反応を実現させる黒鉛化(結晶化)触媒の研究が進められてきた。
上記黒鉛化触媒を用いた黒鉛化反応プロセスには次のような方法が提案されている。特許文献1では、Si、Fe、Ti、B等の化合物を黒鉛化触媒として用い、材料のバインダー部分を2000℃以上で黒鉛化させ、充放電平均電圧が低く耐用性の高いリチウム二次電池負極材を提供する方法が開示されている。特許文献2では、石油系または石炭系のタールまたはピッチ類、樹脂類の黒鉛前駆体と水溶性遷移金属化合物とアルカリを水中で接触させ、遷移金属酸化物の触媒反応を介して1500℃以上で黒鉛化させる方法が開示されている。また、非特許文献1では、Fe、B等の黒鉛化触媒をフェノール樹脂に添加し1300℃以上で黒鉛化させる方法が報告されている。また、非特許文献2には、一般的な触媒黒鉛化反応がまとめられている。実際に非晶質炭素が黒鉛化したことを確認するには、例えば特許文献3の通り、粉末X線回折、ラマン分光解析を用いて行う。
一方、マイクロ波を用いてカーボン粉末を黒鉛化させるプロセスについてもいくつか提案されている。特許文献4では、電気炉加熱の補助としてマイクロ波加熱を用い、カーボン粉末を3200℃以上に昇温させることで黒鉛化を行う方法や、特許文献5では、マイクロ波の共振を応用し、3000℃までカーボン粉末を加熱することで黒鉛化を行う方法が、開示されている。
上記のような従来の黒鉛化プロセスでは、黒鉛化触媒を用いて黒鉛化反応をより低温の2000℃程度で行う方法や、マイクロ波加熱を適用し電気炉内のカーボン粉末温度を3000℃の高温まで効率的に加熱する方法により非晶質炭素を黒鉛へ結晶化させることが可能であったとされている。
また、特許文献6では、カーボン原料を導電性樹脂に分散した際、2800℃で焼成し得られたカーボン原料に残留する金属酸化物や金属硫化物が該樹脂を低分子量化させ、導電性樹脂の劣化を招くため、これらの残留物をハロゲン化させ所定の温度で気化させ除去する方法が提案されている。
国際公開第2002/059040号 特開2009−263160号公報 特開2014−89975号公報 特開2000−16807号公報 特開2000−86222号公報 国際公開第2015/020130号
耐火物誌 vol.65 No.3 pp.122 (2013) 炭素 vol.1980 No.102 pp.118−131 (1980)
しかしながら、上記の方法によって製造された黒鉛は、完全な黒鉛構造とならず、非晶質炭素や乱層構造の炭素を含んでしまう。非晶質炭素や乱層構造の炭素を含むと、耐酸化性が劣るため、好ましくない。特に、非特許文献1には、黒鉛化触媒を用いた黒鉛結晶化プロセスを用い、炭素の昇華点(3642℃)や三重点(4327℃)と比べはるかに低温である1000℃〜2000℃の条件で黒鉛結晶化が可能となるという報告もなされている。しかしながら、この方法で製造された黒鉛は、XRDピーク2θが黒鉛結晶を示す26.5°よりずれており、結晶性については不十分なものとなっていた。また、加熱手法としては、熱伝導および熱輻射を用いた外部からの加熱であるために材料全体を高温に上げる必要があり、黒鉛結晶の歩留まりを向上させる点においても不完全な方法であった。
一方、加熱効率向上を狙ったマイクロ波加熱の特許文献4の例では、出発原料を反応容器に付着しないカーボン粉末原料とする必要があり歩留まり低下の可能性が高く生産性が悪い。さらに、特許文献5の例では、共振を利用する場合はマイクロ波密度分布が安定せず3000℃までの加熱において誤差が大きい等の問題があった。
また、黒鉛の応用技術として、導電性樹脂等に用いるカーボン原料として使用することが行われている。従来技術によって製造された黒鉛を、このような用途に適用するには、ハロゲン化等により金属酸化物および金属硫化物などを除去はすることが行われていた。しかしながら、導電性樹脂等に用いるカーボン原料の特性に害となる不純物を完全に除去することは困難であった。
いずれにしても、上記従来技術は、完全に黒鉛を結晶化させるには、不十分であり、結晶化黒鉛以外の黒鉛を含んでおり、原料全体を高温にするため、黒鉛化試料を常温まで冷却する時間がかかることや、炉内や試料容器、断熱材中の残留酸素と反応し、炭素分や黒鉛化した炭素が容易に発火しうること等の問題があった。
上記課題を解決するための、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)非晶質炭素材料に、黒鉛化触媒を添加して、分散させ、前記黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料にマイクロ波を照射して加熱する黒鉛化処理方法であって、
前記黒鉛化触媒が、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属の単体又は化合物であり、
前記黒鉛化触媒の平均粒子径が、200[μm]以下であり、
前記黒鉛化触媒の非晶質炭素材料に対する添加割合が、質量比で5%以上15%以下であり、
前記非晶質炭素材料を、1000℃以上に加熱して黒鉛化反応させる、
ことを特徴とする、非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
(2)前記黒鉛化触媒が金属Fe又は酸化鉄であることを特徴とする、(1)に記載の非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
(3)前記黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料を、前記黒鉛化触媒を構成する金属が溶融する温度未満に加熱することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
(4)黒鉛化反応終了後、前記黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料を、前記黒鉛化触媒を構成する金属元素が溶融する温度以上に加熱し、該金属を溶融凝集させ、該金属量の95%以上を分離回収することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかひとつに記載の非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
(5)非晶質炭素材料に、黒鉛化触媒を質量比で5%以上15%以下の割合で添加して、前記非晶質炭素材料に前記触媒を分散させ、前記触媒を分散させた非晶質炭素材料にマイクロ波を照射して加熱し、1000℃以上で黒鉛結晶化処理する方法において、黒鉛を回収する際に生成する生成物であって、
前記黒鉛化触媒が、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属の単体又は化合物であり、
前記生成物は、黒鉛化反応によって生成した黒鉛と、前記金属とが別相に分離して生成した組織を有する混合物であり、
前記金属が粒径1μm以下となっていることを特徴とする、黒鉛を回収する際に生成する生成物。
(6)黒鉛相と、金属相が前記黒鉛相から別相に分離して含まれる黒鉛であって、
前記黒鉛相は、XRDによる構造解析により得られる最大ピークが2θ=26.5±0.02°で、前記最大ピークの半価幅が、0.2°以下であり、
前記金属相は、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、粒径が1μm以下である、
ことを特徴とする黒鉛。
(7)黒鉛であって、前記黒鉛は、C:99質量%以上、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素:0.1質量%未満、Si:5質量ppm以下、S:10質量ppm以下であり、XRDによる構造解析により得られる最大ピークのピーク位置が2θ=26.5±0.02°であり、前記最大ピークの半価幅が、0.2°以下であることを特徴とする黒鉛。
本発明により、原料に不純物を含まない人工的な方法で黒鉛を製造できることから、天然黒鉛のようなシリカ等を含まず、非晶質炭素や乱層構造の炭素を残存させることなく黒鉛化された人造黒鉛を提供することができる。また、黒鉛化触媒をマイクロ波により選択加熱し、触媒反応がおこる触媒表面近傍を黒鉛化反応に必要な温度とすることで、全体としては低温での加熱で、短時間で、黒鉛化することができる。更に材料を均一に加熱することができるため、材料内部に未反応物を残留させることなく歩留まり良く黒鉛化反応を起こすことができる。また、黒鉛化触媒が金属化合物であっても、反応途中に金属化するため、温度を当該金属の融点以上に到達させることで、金属化した黒鉛化触媒を加熱後分離回収することができる。また、非晶質炭素分や黒鉛化した炭素が発火する温度以下で処理が可能である。
マイクロ波加熱装置 試料設置図 XRDピーク解析図 発明例1における試料内部温度、マイクロ波入射/反射エネルギー測定結果 発明例1 XRD評価結果 発明例4における試料内部温度、マイクロ波入射/反射エネルギー測定結果 発明例6における試料内部温度、マイクロ波入射/反射エネルギー測定結果 発明例8 XRD評価結果 比較例1 XRD評価結果 比較例2 XRD評価結果 比較例3 XRD評価結果 比較例4 XRD評価結果 比較例5 XRD評価結果 比較例6における試料内部温度、マイクロ波入射/反射エネルギー測定結果 比較例6 試料写真 比較例7 試料写真 グラッシーカーボンを非晶質炭素原料とした発明例における試料内部温度、マイクロ波入射/反射エネルギー測定結果 グラッシーカーボンを非晶質炭素原料とした発明例 XRD評価結果
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、非晶質炭素材料に、黒鉛化触媒を添加して分散させ、マイクロ波を照射して加熱することにより、黒鉛化処理を行う。
本発明においては、マイクロ波を用いることで、黒鉛化触媒が、非晶質炭素材料よりも、優先的に加熱されることが重要である。黒鉛化触媒が、マイクロ波により選択的、優先的に強加熱された場合、黒鉛化触媒自体が高温となっても、非晶質炭素材料全体は従来のように2000〜3000℃等の高温になることはない。そして、黒鉛化触媒自体が黒鉛化温度以上に加熱されれば、黒鉛化触媒表面に接触している界面部分の非晶質炭素材料は、黒鉛化触媒からの熱伝導による加熱と触媒の効果により黒鉛化することができる。黒鉛化触媒から非晶質炭素材料への熱伝導により低下した黒鉛化触媒の熱量は、マイクロ波加熱を続ける限り常に補充することができる。すなわち、黒鉛化反応の反応場である黒鉛化触媒と非晶質炭素材料の接触界面近傍は、常に黒鉛化に必要な温度に加熱することができる。
また、黒鉛化触媒は、非晶質炭素材料中に均一に分散していることから、マイクロ波加熱を行った場合、非晶質炭素材料の内部に分散している粒子も、表面近傍に分散している粒子も、各々の黒鉛化触媒粒子が均等に加熱される。すなわち、内部の黒鉛化触媒も各熱源として働くために、内部からも均等に加熱されて、非晶質炭素材料全体を均一に黒鉛化することができる。
本発明において、非晶質炭素材料とは、黒鉛以外の炭素源を有する原料をいう。代表的には、グラッシーカーボン、ピッチ、タール又はフェノール樹脂等の炭素含有樹脂を用いることが好ましい。
非晶質炭素材料への触媒の分散は、非晶質炭素材料が樹脂の場合は溶剤に溶かし、非晶質炭素材料がグラッシーカーボン等の場合は溶剤に分散させ、さらに触媒を混合することにより行う。溶剤には、エチレングリコール、エタノール、水等を用いることができる。溶剤への非晶質炭素材料添加量は特に規定しないが、15〜45質量%程度を推奨する。
本発明の黒鉛化触媒は、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属から構成される単体又はその化合物であることを要件としている。これら元素はマイクロ波吸収特性に優れ、黒鉛化触媒自体を効率よく加熱できる。そして非晶質炭素材料よりもマイクロ波に加熱され易い。
マイクロ波吸収特性を示す指標の一つとして、下記式1で表される表皮深さδがある。
δ=(2ρ/ωμ)0.5 (式1)
ここで、ρ:電気抵抗率[Ω・m]、ω:2πf[f(Hz)]、μ:透磁率[H/m]、f:マイクロ波周波数[Hz]
表1に、実際に使用されるマイクロ波の周波数f=2.45[GHz]の場合の、上記金属の表皮深さを示す。マイクロ波が吸収されるには、表皮深さδが小さい方が良い。また低温で処理するには融点が低い方が好ましい。以上のことから、上記の黒鉛化触媒反応特性を有する元素のうち、本発明のマイクロ波加熱による黒鉛化反応においては、表皮深さが小さく、融点が比較的低いFe、Ni、Coを用いた黒鉛化触媒を用いる。またこれらの合金でも利用できる。
触媒として前記金属の化合物を適用することもでき、該黒鉛化触媒をマイクロ波により選択的に加熱できる。例えばFe、Ni、Coの炭化物、硫化物、酸化物、ホウ化物、窒化物が利用可能である。当該触媒が選択的に温度上昇し、C、S、O、B、Nが脱離し、最終的には金属単体となって黒鉛化が進行する。よっていずれの金属化合物についても、マイクロ波による選択加熱により、金属元素のみから構成される状態を経て、触媒反応が起きるため、反応開始前に添加される黒鉛化触媒としてはC、S、O、B、Nいずれの元素を含む化合物であっても金属のみから構成される化合物であってもよい。
さらにその中でも、黒鉛化触媒能を有する金属元素としては金属Fe、又は酸化鉄を用いることがより好ましい。Feは最もCと親和性がよく、C溶解度も高いため、好ましい。酸化鉄は、マイクロ波により誘電加熱により加熱されやすい。また、酸化鉄は、加熱により分解し、金属鉄を生成する。金属鉄が生成すると、金属鉄が上述のように触媒として働くために、Feを触媒として添加した場合と同様に好ましい。
本発明に用いる黒鉛化触媒粒子の平均粒子径は、200μm以下とする。平均粒子径はレーザーマイクロトラック法により測定した、体積基準累積粒度分布D50値とする。またこの時、D10/D50>0.5かつD50/D90>0.5となる粒度分布が好ましい。発明者らが鋭意検討した結果、平均粒子径が200μmを超えると、黒鉛化反応前に金属粒子の溶融凝集が起こって、マイクロ波吸収能が低下し、試料を黒鉛化反応が起きる温度まで加熱できない。
本発明の触媒の添加量は、非晶質炭素材料に対し質量比で5〜15%である。5%未満であると、非晶質炭素材料中の分散量が少なく、非晶質炭素材料を十分黒鉛化できない。15%を超えると、触媒が溶融凝集してマイクロ波吸収能が低下し、試料を黒鉛化反応が起きる温度まで加熱できなくなる。
本発明は、マイクロ波照射によって、非晶質炭素材料の温度を1000℃以上に昇温して行う。1000℃未満では、黒鉛化反応が十分に進行しないため、黒鉛結晶性が悪く、良好な特性を有する黒鉛が得られない。1000℃以上であれば、黒鉛化が十分に進行し、黒鉛結晶性が良く、良好な特性を有する黒鉛が得られる。
発明者は非晶質炭素材料の加熱温度を、1000℃以上にすれば、黒鉛化触媒を構成する金属の少なくとも一部が溶融し、黒鉛化反応場として好ましい液体の存続が可能になることによって、より黒鉛化が促進されることを見出した。従って、黒鉛化触媒が、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属から構成される単体又は化合物であるときには、1000℃以上が必要である。
ここで、非晶質炭素材料の温度は、マイクロ波加熱では触媒が局所的に加熱されるところ、触媒表面や反応が起こっている場所の温度を直接測定できないため、例えば内径5〜10mmの太さの保護管を試料と接触させて、前記保護管内からの輻射光を放射温度計によって測定する。
本発明の製造方法により、黒鉛化反応を進行させると、生成物は、完全に黒鉛化した黒鉛と、黒鉛化触媒を構成する金属が別相に分離した組織となる。この際に、200μm以下のミクロンオーダーの大きさで添加した黒鉛化触媒が、反応終了後の組織においては、サブミクロンオーダーの大きさに微細化された金属となっていることが見いだされた。これは、黒鉛化反応後に、非晶質炭素材料全体を黒鉛化触媒を構成する金属の溶融する温度以上まで加熱せずに冷却した場合に観察された。そしてこのように加熱制御された際に、非常に結晶性のよい黒鉛が得られた。
微細化される理由ついては必ずしも明確ではないが、黒鉛化触媒を構成する金属が溶融し(化合物の場合は金属化した後に溶融し)、溶融した金属は揮発して非晶質炭素材料中に拡散し、冷却時に拡散先で凝結することにより、金属が微細に分散することが考えられる。この際に、拡散した溶融金属に炭素が溶解して、金属炭化物の生成を経て、黒鉛として析出することにより、非晶質炭素材料が均一に効率よく黒鉛化されるということが考えられる。
このような特異な現象は従来技術では得られず、黒鉛化触媒が約粒径1μm以下という、サブミクロンオーダーに微細化され、非晶質炭素材料全体に均一に分散したことにより、材料の全体にわたって黒鉛化が十分に進行したものと推定される。
前記微細粒の粒径は、光学顕微鏡観察を行い、画像解析により金属部分を球形近似したときの粒径であって、その分布は平均が1μm以下、標準偏差0.5μm未満である。本発明の反応生成物は、黒鉛化反応終了時には、このように、黒鉛化した黒鉛相と、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属相とが、金属相の大きさが1μ以下の微細に分散した混合した組織として得られる。黒鉛相のみを取り出す場合は、後述するように、黒鉛相と金属相を機械的に分離すればよい。本発明の黒鉛化により生成した金属と黒鉛を分離する前の生成物を黒鉛化生成物と呼ぶことにする。
ところで、非晶質炭素材料を分散させた溶剤内に黒鉛化触媒を添加した際、これらの触媒が沈殿し、溶剤内で不均一に分散した状態となった場合、試料が不均一に加熱される恐れがある。しかし本発明であれば、最初の触媒の分散状態に関わらず、触媒の金属は加熱過程で微細化して、非晶質炭素材料内に均一に分散するので、黒鉛化反応後、試料の部位に関わらず、均一に黒鉛化させることが可能である。従来の電気炉加熱等では、不均一な触媒添加は、生成する黒鉛の不均質にそのまま反映される。したがって、本発明のマイクロ波加熱での黒鉛合成は電気炉加熱の場合よりも非常に歩留まりは高く、ほぼ100%合成可能である。
ところが、黒鉛化処理の段階において、非晶質炭素材料全体を黒鉛化触媒を構成する金属の溶融する温度以上まで加熱すると、金属が溶融凝集してしまい、十分な黒鉛化反応をさせることができない場合もある。
そこで本発明では、非晶質炭素材料の黒鉛化処理温度の上限は、黒鉛化触媒を構成する金属元素が溶融する温度未満が好ましい。ここで、本発明の黒鉛化触媒はFe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含んでおり、各金属の融点は表1に記載されるが、黒鉛化反応過程で金属には各種成分が溶解するために、当該金属は必ずしも純粋元素の融点で溶融が始まるわけではないので、本発明の黒鉛化処理温度の上限は、金属が液体状態になる温度(融点)未満とする。また、加熱温度を増加させると、投入する熱量が増大し、電力等のエネルギーコストが増大し、装置を高耐熱化する必要等が生じ、設備コストが増大するため、より低いほうが好ましい。
電気炉加熱等の外部からの輻射加熱では、非晶質炭素材料を介して黒鉛化触媒が加熱されるので、反応場である黒鉛化触媒と非晶質炭素材料の界面付近を、黒鉛化温度にまで加熱するとなると、必要以上に非晶質炭素材料全体を高温に加熱しなければならないので熱効率も生産効率も悪い。また、材料全体について黒鉛化反応が進行する温度となると、黒鉛化触媒が互いに凝集する懸念がある。黒鉛化触媒が凝集すると、触媒と材料の接触界面面積が減少し、触媒効果が得られる部分が減少する。一方、本発明の方法では、非晶質炭素材料の加熱温度を、黒鉛化触媒が凝集しない温度に保持しつつ、反応場の温度を黒鉛化が十分進行する温度に上げることができる。
即ち、マイクロ波加熱により、黒鉛化触媒は、選択加熱されて黒鉛化反応が進行する一方、材料の温度を黒鉛化触媒に含まれる金属の融点以下に保持しておけば、離散した黒鉛化触媒粒子が互いに凝集することがない。
本発明では、黒鉛化反応が十分進行した後には、黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料全体の温度を、触媒を構成する金属元素の溶融する温度以上に加熱させることで、触媒金属を溶融凝集させ、反応終了後に、冷却固化させて、触媒に含まれる金属を容易に分離回収することができる。その結果、添加した触媒に含まれる金属量の95%以上を分離回収することができる。
本発明では、黒鉛化触媒に用いる化合物は、上記の通り、黒鉛化反応後は金属として残存する。そこで、材料全体温度を黒鉛化触媒を構成する金属元素の溶融温度以上に加熱することで、黒鉛化反応後、これらの金属を凝集させ回収することが可能である。発明者らが鋭意検討した結果、高温加熱によって完全に再凝集させることは困難であり、一部はサブミクロンオーダーで分散したままであるものの、その殆どを、篩分級できる程度の粒径にまで再凝集させることができる。この方法により、添加した金属量質量比換算で少なくとも95%は回収可能であることを確認している。金属の回収方法は、例えば次の通りである。得られた黒鉛化材料を直径10〜20mmのジルコニアボールあるいはアルミナボールで充填した容器内に投入し、100rpmでボールミル粉砕後、得られた試料を106[μm]の篩で分離し回収する。この際、篩上には、金属が残留することにより分離できる。
本発明は、揮発物質を排気しながら加熱を行うことが好ましい。非晶質炭素材料として樹脂などを原料とした場合、触媒として金属の化合物を採用した場合には、加熱の際に金属酸化物および金属硫化物などが発生する。揮発物質を排気しながら加熱を行うことにより、金属酸化物および金属硫化物などを、生成した黒鉛内部に残留させることなく、歩留まり良く黒鉛化反応を起こすことができる。また、試料から発生したエチレングリコール等沸点が加熱装置内温度よりも高い揮発分は、装置の断熱層内壁に付着し、揮発分付着部分がマイクロ波を吸収し、試料の加熱を妨げる。揮発物質を排気しながら加熱を行うことにより、揮発分の内壁への付着を防止できるため、試料への加熱が妨げられず、マイクロ波加熱を効率よく行うことができる。沸点が加熱装置内温度よりも高い揮発物質が非晶質炭素材料に含まれない場合は、特に排気は重要ではない。また揮発物質が、非晶質炭素材料へのマイクロ波入射を遮蔽することなく加熱できるのであれば、特に排気は重要ではない。
次に、マイクロ波加熱方法について説明する。
本発明に用いるマイクロ波は、周波数2.45GHzである。当該周波数は、本発明の非晶質炭素材料や溶媒の加熱及び乾燥、また金属触媒粒子の加熱に好適である。しかしながら、金属触媒表面を溶融して黒鉛化反応を行える温度に加熱できるならば、周波数は限定されない。
図1に、本発明のマイクロ波加熱による黒鉛製造方法に用いる装置の例を示す。マイクロ波は、マイクロ波発振機11から導波管12を介しアプリケータ14内へ照射される。アプリケータ内は、N、Ar等の不活性ガス(15)によって不活性ガス気流雰囲気とする。導波管12の形状は、EIAJ規格に準拠し、2.45GHz帯マイクロ波の場合は、WRJ−2、WRI−22あるいはWRI−26を選択する。アプリケータ14の形状は、アプリケータ内でマイクロ波を均一に分散させるため、内寸400mm以上のものが望ましい。マイクロ波入射エネルギーおよび反射エネルギーはパワーモニター(13)で測定する。マイクロ波を用いることで、試料のみを効率よく加熱できるが、開放状態では試料表面からの抜熱が大きく、加熱効率が低下する。本発明では、試料容器16の外周に断熱層17を設置することにより試料からの抜熱を抑え加熱効率を向上させる。
図2に試料設置図を示す。本発明の黒鉛化触媒を分散した非晶質炭素材料を効率よく加熱するには、アプリケータ14(図1参照)内ガス流入速度は揮発分発生速度以上に設定することが好ましい。したがって、試料重量は揮発分含有量に応じて設定する。アプリケータ内温度が300K程度であるとして、溶媒エチレングリコールを60%含む試料の場合、試料100gでは30L程度揮発分が発生する。下記に示す試料加熱条件では、20〜30分程度で試料温度がエチレングリコールの沸点に到達するため、揮発分発生速度は少なくとも1.0〜1.5[L/min]となる。アプリケータ内ガス流入速度はこの速度以上の値、すなわち1.5[L/min]に設定する必要がある。試料201は、試料容器202に充填され、更に外部坩堝203に収納される。試料容器202と外部坩堝203との間には、Al、SiO、MgO、CaO等あるいはその化合物からなる酸化物の微粉を充填して断熱層204を設け、更に外部坩堝203の外側にはセラミックファイバー状の断熱層205を設ける。酸化物微粉断熱層204および外部坩堝203はセラミックファイバー状の断熱層としてもよい。
本発明のマイクロ波加熱処理は、試料温度をモニタリングし、マイクロ波照射出力を制御して行う。図2に示すように、試料温度は、試料201中にセラミック保護管206を挿入し、マイクロ波によって加熱された試料からの伝熱で加熱される保護管の内部からの輻射熱を放射温度計207で検知し、測温する。試料の平均温度が測定できれば、この方法に限定されない。
初期出力は試料を安定的に昇温させるため、発明者らの検討により、(入射出力)−(反射出力)のエネルギーが3[W/g]以上供給できるような値を推奨する。
本発明のマイクロ波加熱では、試料温度をモニタリングしながら、照射出力を制御して行う。黒鉛化処理開始時の加熱制御については、照射出力増加により、試料温度の昇温速度を高めることが可能であるが、発明者らの検討により、溶剤の存在する条件下で急激に試料を昇温させた際、爆発の恐れがあるため、試料温度が500℃以下では、マイクロ波出力の上限値を、(照射出力)/(試料重量)=10[W/g]とすることを推奨する。
本発明のマイクロ波照射は、試料温度をモニタリングしながら、非晶質炭素からの揮発分発生が完了し、温度1000℃以上の、非晶質炭素が十分結晶化される温度までとする。非晶質炭素が十分結晶化されるとは、溶剤の揮発や、黒鉛化反応により、昇温速度の停滞現象が観察された後、マイクロ波の照射出力を上げることなく再度昇温が見られた状態とする。
黒鉛化触媒のみが選択的に加熱され、その熱によって周囲の非晶質炭素材料等が昇温する過程においては、溶媒等の揮発や不純物の分解も起こる。この際マイクロ波照射出力が一定であると、昇温速度が開始時より低下したり、停滞する。この現象の起こる温度域は、出発物質により異なるものの、概ね800℃までである。このような現象が完了した後においては、引き続き一定出力で加熱を行うこともできるし、出力を上げて昇温速度を速めることも可能であり、いずれの場合であっても、1000℃以上に昇温すれば、黒鉛化処理を完了させることができる。
揮発分発生、不純物分解に際しても、照射したマイクロ波エネルギーがそれらの反応エネルギーに消費されるため、試料の昇温速度が著しく低下する。不純物の蒸発・分解温度は出発物質により異なるが、200〜300℃の温度範囲にて試料の昇温速度が一度低下し、マイクロ波の照射出力を上げることなく再度昇温が開始された際、その温度での出発原料からの分解が終了したと判定する。昇温速度を上げ到達温度を高くするためマイクロ波照射出力を高める際は、上記黒鉛化反応温度、不純物分解温度以上の温度で行う。
揮発分発生、不純物分解が終了し、900〜950℃程度に昇温できれば、その後は照射出力増加により、試料温度をより高温の1000℃以上まで到達させることができる。好ましくは、試料温度をモニタリングしながら、最大でも触媒を構成する金属が溶融する温度未満であるよう制御する。黒鉛化が不十分の状態で、試料温度を当該金属の溶融温度以上に上げると、金属の凝集により、以降の黒鉛化反応が十分進まなくなる。当該金属の溶融温度以上に上げない範囲では、試料温度は高い方が、より結晶性を向上させることができる。
一方、黒鉛化反応が十分進行した後には、黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料全体の温度を、触媒を構成する金属元素の溶融する温度以上に加熱させることで、触媒金属を溶融凝集させ、反応終了後に、冷却固化させて、触媒に含まれる金属を容易に分離回収することができる。その結果、添加した触媒に含まれる金属量の95%以上を分離回収することができる。黒鉛化反応が十分進行するように実施するには、本発明の実施例の加熱温度と時間を参考に決定した条件から、適宜XRDにより黒鉛化を確認しながら、加熱条件を決定することで、実施することができる。
本発明の上記黒鉛化方法により、黒鉛化反応終了時には、黒鉛化した黒鉛相と、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属相とが、金属相の大きさが1μm以下の微細に分散した混合した組織として得られる。黒鉛相のみを取り出す場合は、後述するように、黒鉛相と金属相を機械的に分離すればよい。また、黒鉛化した黒鉛相は、XRDによる構造解析により得られる最大ピークのピーク位置が2θ=26.5±0.02°、最大ピークの半価幅が、0.2°以下である。最大ピーク位置と最大ピークの半価幅については次に詳述する。
本発明の人造黒鉛は、天然黒鉛と異なり、原料にそもそもSiを含まないことから、天然黒鉛に不可避に含まれるシリカを実質含まないものとすることができる。また、従来の人造黒鉛では完全な黒鉛化が不可能であったところ、XRDによる構造解析により得られる最大ピークのピーク位置が2θ=26.5±0.02°からずれないものであり、前記最大ピークの半価幅が、0.2以下であるという、非常に結晶性の高い黒鉛とすることができた。結晶性は、XRDのピークがシャープであればあるほど、X線の乱れが少なく、所定の構造の結晶が多いことを示している。逆に、ブロード(幅広)のピークは、特定結晶構造以外が混合していることを示している。本発明では、結晶性の程度の指標として、半価幅が0.2以下と規定した。半価幅はピーク高さが半分となる強度位置の、波形の幅を測定した数値である。
本発明における黒鉛の結晶化度の評価は、CuのKα線を用いた粉末X線回折(以下、XRD)を用いて行う。図3にXRDピーク解析図を示す。非特許文献2によれば、黒鉛の層間ピークは2θ=26°および26.5°が存在するが、結晶性の高いORDER STATEと呼ばれる相に相当する結晶ピークは2θ=26.5°のピークであるため、黒鉛化反応後の結晶性は、2θ=26.5°近傍の黒鉛[002]方向ピークのピーク半値幅(以下、FWHM)33を測定した。
発明者らの検討により半価幅が0.2°以下のとき、耐酸化性に優れた黒鉛結晶であることを確認しており、非晶質炭素が黒鉛化していると判断した。
表2に本発明の発明例1〜8および比較例1〜7の黒鉛化処理条件を一覧する。
非晶質炭素としてフェノール樹脂を用いた。フェノール樹脂は、非晶質炭素材料の中でも、グラッシーカーボン等を材料とするよりも黒鉛化しにくいので、フェノール樹脂が黒鉛化できれば、おおむね非晶質炭素材料は、黒鉛化できるといえる。エチレングリコールにフェノール樹脂を混合後、発明例1では、平均粒径100μmのFeを添加して分散させた試料150g(質量比%で、非晶質炭素:エチレングリコール:金属Fe=45:55:5)を出発原料とした。発明例1に用いた黒鉛化触媒は、フェライト(α相)単相の金属Feである。温度測定方法、黒鉛化評価方法は上述の通りである。発明例2〜8、比較例1〜7については、表2に示した条件で行った。
黒鉛化処理は、図1および図2に図示された装置を用い、マイクロ波(2.45GHz)照射を行った。
図4に、発明例1における、マイクロ波照射中の試料内部温度51、マイクロ波入射エネルギー52、マイクロ波反射エネルギー53の測定結果を示す。マイクロ波照射出力を初期0.8kW一定にして処理したところ、試料温度は溶媒揮発物質の揮発(54)後、黒鉛化反応による昇温停滞(55)を経て、試料が再び昇温し、マイクロ波照射開始からおよそ90分後に温度900℃に到達した。次いで照射出力を1.5[kW]に上げ、照射開始から150[min]後、1500℃まで試料温度が到達したところで、マイクロ波照射を停止した。試料を不活性ガス気流中で室温まで冷却して回収し、XRDで結晶性を評価した。
図5に、発明例1における、XRD評価結果を示す。金属触媒として用いたFe相、および、黒鉛相の生成が確認された。黒鉛の半価幅は0.18と算出され、十分な結晶度が確認できた。また、坩堝内部の試料に対し5点から採取したXRD評価結果から、いずれの採取箇所においても半価幅が0.2以下であることが確認され、本発明例1の手法により、半価幅が0.2以下の黒鉛結晶がほぼ100%であることが確認された。また、電子顕微鏡による表面観察により、測定部のすべてが黒鉛化していることも合わせて確認した。電子顕微鏡では、輝度により黒鉛を識別できる。輝度は、触媒由来の金属が最も高く、その他の黒鉛化していない部分は最も低い。黒鉛はその中間的な輝度を示す。
発明例2は、黒鉛化触媒であるFeの添加量を5%とした以外は、発明例1と同様の条件で出発原料を調整し、発明例1と同様の加熱条件で黒鉛化を行った例である。得られた試料のXRD評価結果は、図5と同様であった。発明例1と同様、2θ=26.5°に鋭い黒鉛002ピークが観察され、半価幅が0.2と結晶性がよい黒鉛試料が得られていることが確認された。
発明例3は、黒鉛化触媒であるFeの添加量を15%とした以外は、発明例1と同様の条件で出発原料を調整し、到達温度が1600℃となった以外、発明例1と同様の加熱条件で黒鉛化を行った例である。得られた試料のXRD評価結果は、図5とほぼ同様であった。2θ=26.5°に鋭い黒鉛002ピークが観察され、半価幅が0.15と結晶性がよい黒鉛試料が得られていることが確認された。
発明例4は、発明例1と同様の条件で出発原料を調整し、加熱条件は、マイクロ波照射条件を800[W]×90[min]照射した後、出力を段階的に上げ、1600℃に到達後、1600±20℃の範囲に試料温度が保持されるように出力を調整して、128分間の処理を行った例である。このときの試料温度履歴を図6に示す。得られた試料のXRD評価結果は、図5とほぼ同様であった。2θ=26.5°に鋭い黒鉛002ピークが観察され半価幅が0.1と結晶性がよい黒鉛試料が得られていることが確認された。
また発明例3、発明例4では、1000℃以上まで加熱して黒鉛化反応を促進させた後、金属Feの融点(1538℃)以上に昇温させた結果、金属Feの凝集が見られた。この凝集した金属Feの分離回収を行った。金属Feの回収方法は以下のように行った。すなわち、得られた黒鉛化材料をφ150×200mmの容器内に投入し、直径20mmのアルミナボールを用いて、100rpmでボールミル粉砕後、得られた試料を106[μm]の篩で分離し回収した。金属Fe回収率を発明例1と比較した結果を表3に示す。発明例3の回収率は98%であり、Feの融点以上に加熱した結果、金属Feを回収できることが確認された。また発明例4も、Feの融点以上に試料温度を加熱保持した結果、回収率は99%以上回収できた。一方、発明例1は、温度が1500℃と、鉄の融点未満としたため、鉄は微細粒のまま分散しており、回収率が低かった。
発明例5は、黒鉛化触媒であるFeの平均粒径を200μmとした以外は、発明例1と同様の条件で出発原料を調整し、加熱条件は、マイクロ波照射条件を800[W]一定として、到達温度1200[℃]の条件で、黒鉛化を行った例である。得られた試料のXRD評価結果は、図5と同様であった。2θ=26.5°近傍の26.48°に鋭い黒鉛002ピークが観察され、半価幅が0.2と結晶性がよい黒鉛試料が得られていることが確認された。触媒のFeは、1μm以下の微細粒として分散していた。
発明例6は、発明例1と同様の条件で出発原料を調整し、加熱条件は、マイクロ波照射条件を800[W]一定として、到達温度1050[℃]の処理を行った。図7に試料温度履歴を示す。得られた試料のXRD評価結果は、図5と同様であった。2θ=26.5°近傍の26.48°に鋭い黒鉛002ピークが観察され、半価幅が0.2と結晶性がよい黒鉛試料が得られていることが確認された。本例は、停滞期が観察されなかったが、到達温度を1000℃以上とすれば、十分な黒鉛化が可能である。
発明例7は、黒鉛化触媒であるFeの平均粒径を4[μm]とした以外は、発明例1と同様の条件で出発原料を調整し、加熱条件は、マイクロ波照射条件を800[W]一定とし、黒鉛化を行った例である。到達温度は1000[℃]、得られた試料のXRD評価結果は、図5と同様であった。2θ=26.5°近傍の26.48°に鋭い黒鉛002ピークが観察され、半価幅が0.2と結晶性がよい黒鉛試料が得られていることが確認された。
発明例8は、黒鉛化触媒を粒径0.07[μm]のFeとした以外は、発明例1と同様の条件で出発原料を調整し、加熱条件は、マイクロ波加熱条件800[W]×90[min]+1500[W]×60[min]の下、黒鉛化を行った例である。到達温度は1460[℃]、得られた試料のXRD評価結果を図8に示す。添加したFe相は確認されず、Fe源は全てフェライト相(αFe)として検出された。2θ=26.5°近傍の26.49°に鋭い黒鉛002ピークが観察され、半価幅が0.16と結晶性のよい黒鉛試料が得られていることが確認された。マイクロ波でFeが誘電加熱によって選択加熱され、酸素が分離され、金属鉄による黒鉛化触媒反応が進行したものと推測される。
比較例1は、黒鉛化触媒を添加せず、その他は発明例6と同条件で、マイクロ波加熱処理を行った。試料到達温度は最高800℃であった。得られた試料のXRD評価結果を図9に示す。2θ=26.5°近傍に黒鉛002ピークは検出されず、黒鉛化が確認されなかった。
比較例2〜4では、加熱源としてマイクロ波の替わりに電気炉を用い、試料最高温度はそれぞれ800℃、1000℃、1500℃とし、Nガス雰囲気下で保持時間10時間加熱することで、黒鉛化処理を行った。その他は発明例6と同条件である。この時の昇温速度は600[K/hr]とした。得られた試料のXRD評価結果を図10、11、12にそれぞれ示す。2θ=26.5°近傍に観察されるピークは、それぞれ、2θ=26.0°、2θ=26.0°、2θ=26.1°と結晶性が悪かった。また、上記のピークの半価幅はそれぞれ2.5、2.1、2.2であり、殆ど黒鉛化されていないことが確認された。
また、電気炉で処理した試料は、いずれも2θ=26°と2θ=26.5°の混成ピークが観察され、乱層構造(2θ=26°)と黒鉛結晶(2θ=26.5°)が混在していることが確認された。一方、発明例1の黒鉛002ピークは、乱層構造を含まない黒鉛結晶であった。従って、従来の電気炉処理に比べ、本発明のマイクロ波加熱処理では短期間で従来なかった結晶性の高い黒鉛が得られる。
比較例5は、発明例6と同条件でマイクロ波を照射し、800[℃]到達後マイクロ波照射を停止した例である。得られた試料のXRD評価結果を図13に示す。2θ=26.5°近傍の26.4°に黒鉛002ピークが観察されたが、半価幅が2.5と十分な結晶性は得られていなかった。また発明例1および2には観察されなかった、セメンタイト(FeC)相のピークが検出された。セメンタイト相が残留している場合、マイクロ波加熱による黒鉛化反応が十分に進んでいないことが確認された。
比較例6では、平均粒径250μmの金属Feを用い、その他は発明例6と同条件で、マイクロ波加熱処理を行った。比較例6における試料内部温度、マイクロ波入射/反射エネルギー測定結果を図14に示した。当該処理では、処理途中でマイクロ波反射エネルギーが強まり、1000℃以上まで昇温できず、黒鉛化処理ができなかった。回収した試料の外観を図15に示すが、溶融凝集したFe粒子となっていることが確認された。金属Feの溶融凝集によってマイクロ波が反射され、試料を加熱できなくなったものと考えられる。
比較例7は、金属Feの添加量を20質量%とし、その他は発明例6と同条件で、マイクロ波加熱処理を行った。得られた試料の外観を図16に示す。Fe粒子の溶融凝集が確認され、また当該条件によるマイクロ波加熱では、Feの溶融凝集後マイクロ波反射エネルギーが強まり、出発原料中の揮発分が完全に揮発する前に昇温が停止し、黒鉛化が起こらないことが確認された。
また、グラッシーカーボンを非晶質炭素材料に利用し、図17に示す加熱温度履歴で黒鉛化反応を行ったところ、図18に示すように結晶性のよい黒鉛が生成していることが確認できた。
また、発明例4の成分分析を行った結果、表4に示したように、天然黒鉛、熱分解黒鉛に比して、不純物を含まない黒鉛が製造できたことが確認できた。
*1:伊藤黒鉛工業(株)製 Z−5F
*2:特開2001−240404号公報 ジャパンマテックス参照
本発明により、不純物を含まず結晶性のよい黒鉛が提供できた。また、処理時間が短く、装置温度も低く抑えられる非晶質炭素材の黒鉛化処理方法が提供できたので、熱効率、エネルギー効率を高く、装置負担が少なく黒鉛が生産できるという産業上の利用性を有する。
11:マイクロ波発振機導波管
12:導波管
13:パワーモニター
14:アプリケータ
15:流入不活性ガス
16:試料
17:断熱材
18:排気口
201:試料
202:試料容器
203:外部坩堝
204:酸化物微粉断熱層
205:セラミックファイバー断熱層
206:セラミック保護管
207:放射温度計
208:容器
209:空隙
31:ピーク高さ
32:ピーク半値
33:ピーク半値幅(FWHM)
51:試料内部温度
52:マイクロ波入射エネルギー
53:マイクロ波反射エネルギー
54:揮発物質揮発時の温度変化
55:黒鉛化反応による昇温停滞

Claims (7)

  1. 非晶質炭素材料に、黒鉛化触媒を添加して、分散させ、前記黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料にマイクロ波を照射して加熱する黒鉛化処理方法であって、
    前記黒鉛化触媒が、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属の単体又は化合物であり、
    前記黒鉛化触媒の平均粒子径が、200[μm]以下であり、
    前記黒鉛化触媒の非晶質炭素材料に対する添加割合が、質量比で5%以上15%以下であり、
    前記非晶質炭素材料を、1000℃以上に加熱して黒鉛化反応させる、
    ことを特徴とする、非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
  2. 前記黒鉛化触媒が金属Fe又は酸化鉄であることを特徴とする、請求項1に記載の非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
  3. 前記黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料を、前記黒鉛化触媒を構成する金属が溶融する温度未満に加熱することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
  4. 黒鉛化反応終了後、前記黒鉛化触媒を分散させた非晶質炭素材料を、前記黒鉛化触媒を構成する金属元素が溶融する温度以上に加熱し、該金属を溶融凝集させ、該金属量の95%以上を分離回収することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の非晶質炭素材の黒鉛化処理方法。
  5. 非晶質炭素材料に、黒鉛化触媒を質量比で5%以上15%以下の割合で添加して、前記非晶質炭素材料に前記触媒を分散させ、前記触媒を分散させた非晶質炭素材料にマイクロ波を照射して加熱し、1000℃以上で黒鉛結晶化処理する方法において、黒鉛を回収する際に生成する生成物であって、
    前記黒鉛化触媒が、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属の単体又は化合物であり、
    前記生成物は、黒鉛化反応によって生成した黒鉛と、前記金属と が別相に分離して生成した組織を有する混合物であり、
    前記金属が粒径1μm以下となっていることを特徴とする、黒鉛を回収する際に生成する生成物。
  6. 黒鉛相と、金属相が前記黒鉛相から別相に分離して含まれる黒鉛であって、
    前記黒鉛相は、XRDによる構造解析により得られる最大ピークが2θ=26.5±0.02°で、前記最大ピークの半価幅が、0.2°以下であり、
    前記金属相は、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、粒径が1μm以下である、
    ことを特徴とする黒鉛。
  7. 黒鉛であって、前記黒鉛は、C:99質量%以上、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の元素:0.1質量%未満、Si:5質量ppm以下、S:10質量ppm以下であり、XRDによる構造解析により得られる最大ピークのピーク位置が2θ=26.5±0.02°であり、前記最大ピークの半価幅が、0.2°以下であることを特徴とする黒鉛。
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