JP2017144839A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ピッチバリエーションを有する空気入りタイヤであって、排水性能、操縦安定性能、および耐偏摩耗性能をバランスよく両立することを可能にした空気入りタイヤを提供する。【解決手段】回転方向が指定され、ショルダー陸部がピッチバリエーションを有するブロックに区画された空気入りタイヤにおいて、ブロックの踏込側壁面31をブロックの踏面からラグ溝の溝外側に向かって傾斜させ、ブロックの蹴出側壁面32をブロックの踏面からラグ溝の溝内側に向かって傾斜させ、トレッドパターン構成単位のピッチが大きいほど、踏込側壁面31とブロックの踏面の法線とがなす角度αを大きくし、蹴出側壁面32とブロックの踏面の法線とがなす角度βを小さくする。【選択図】図3
Description
本発明は、ピッチバリエーションを有する空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、排水性能、操縦安定性能、および耐偏摩耗性能をバランスよく両立することを可能にした空気入りタイヤに関する。
一般的に、ピッチバリエーションを有する空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる主溝と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝と、これら主溝とラグ溝とにより区画された陸部とからなるトレッドパターン構成単位がタイヤ周方向に繰り返し配置され、このトレッドパターン構成単位としてタイヤ周方向の長さであるピッチが異なる複数種類が存在することで構成される。このような構造では、ピッチの小さいトレッドパターン構成単位に含まれる陸部は小さく、低剛性になるため、周上の陸部剛性が不均一になって操縦安定性能や耐偏摩耗性能が充分に得られなくなるという問題がある。
そのため、例えば特許文献1や特許文献2では、ピッチの異なるトレッドパターン構成単位ごとに溝体積を異ならせて、周上の陸部剛性を均一化することが提案されている。即ち、ピッチの小さいトレッドパターン構成単位では溝体積を相対的に小さくして陸部を大きくすることで陸部剛性を確保し、ピッチの大きいトレッドパターン構成単位では溝体積を相対的に大きくして陸部を小さくすることで陸部剛性を抑制して、陸部剛性が周上で均一化されるように調整している。しかしながら、この方法では、ピッチの小さいトレッドパターン構成単位において溝体積が小さくなるため、排水性能が阻害されるという問題がある。そのため、優れた排水性能を維持しながら、周上の陸部剛性を均一化して優れた操縦安定性能および耐偏摩耗性能を発揮するための対策が求められている。
本発明の目的は、ピッチバリエーションを有する空気入りタイヤであって、排水性能、操縦安定性能、および耐偏摩耗性能をバランスよく両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、回転方向が指定され、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を有し、該複数本の主溝により区画された複数の陸部のうち少なくともタイヤ幅方向最外側に位置するショルダー陸部にタイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝が形成され、該ラグ溝によってショルダー陸部が複数のブロックに区画され、前記ラグ溝と前記ブロックとからなるトレッドパターン構成単位が前記ショルダー陸部においてタイヤ周方向に繰り返し配置され、該トレッドパターン構成単位としてタイヤ周方向のピッチが異なる複数種類が存在する空気入りタイヤにおいて、前記ブロックの踏込側の壁面を踏込側壁面とし、前記ブロックの蹴出側の壁面を蹴出側壁面としたとき、前記踏込側壁面が前記ブロックの踏面から前記ラグ溝の溝外側に向かって傾斜し、前記蹴出側壁面が前記ブロックの踏面から前記ラグ溝の溝内側に向かって傾斜し、前記トレッドパターン構成単位のピッチが大きいほど、前記踏込側壁面と前記ブロックの踏面の法線とがなす角度αが大きく、前記蹴出側壁面と前記ブロックの踏面の法線とがなす角度βが小さいことを特徴とする。
本発明では、上述のように、踏込側壁面を溝外側に傾斜させると共に、蹴出側壁面を溝内側に傾斜させて、これら踏込側壁面および蹴出側壁面の傾斜角度α,βをそれぞれトレッドパターン構成単位ごとに異ならせ、トレッドパターン構成単位のピッチが大きいほど、踏込側壁面の角度αを大きくし、蹴出側壁面の角度βを小さくすることで、ピッチの大きいトレッドパターン構成単位のブロックでは踏込側壁面の溝底側が大きく抉れた形状になる一方で蹴出側壁面は溝底側の突き出しが小さくなってブロック剛性が相対的に低くなり、ピッチの小さいトレッドパターン構成単位のブロックでは蹴出側壁面の溝底側の突き出しが大きくなる一方で踏込側壁面の溝底側の抉れは小さくなってブロック剛性が相対的に高くなる。その結果、異なるピッチのトレッドパターン構成単位に含まれるブロックどうしの剛性差を抑制して、周上の陸部剛性を均一化することができ、優れた操縦安定性能および耐偏摩耗性能を発揮することが可能になる。このとき、踏込側壁面は溝外側に向かって傾斜しているので、溝体積を充分に確保することができ、優れた排水性能を得ることができる。
本発明では、タイヤ周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位に含まれる踏込側壁面の角度αどうしの差と蹴出側壁面の角度βどうしの差とがそれぞれ1°以上8°以下であることが好ましい。このように角度差を設定することで、周方向に隣り合うブロックどうしの剛性差を抑制することができ、周上の陸部剛性を均一化するには有利になる。
本発明では、踏込側壁面の角度αが40°以下であることが好ましい。このように踏込側壁面の角度αを設定することで、充分な排水性能を得ながら、踏込側壁面の傾斜角度が過大になってブロック剛性が極度に低下することを防ぐことができる。
本発明では、1本のラグ溝に含まれる踏込側壁面の角度αと蹴出側壁面の角度βとがα≧βの関係を満たすことが好ましい。これにより、溝体積を充分に確保することができ、排水性能を高めるには有利になる。特に、摩耗時にも充分な溝体積を確保することができ、摩耗時であっても優れた排水性能を発揮することが可能になる。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。
本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その断面構造は上述の基本構造に限定されるものではない。
トレッド部1には、図2に示すように、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝10と、タイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝20とを設け、これら主溝10とラグ溝20とによって複数の陸部30(ブロック30)を設けることができる。特に、本発明では、少なくともタイヤ幅方向最外側の主溝10のタイヤ幅方向外側に陸部30(ブロック30)を設けるものとする。
尚、図2には、本発明の内容を説明するための単純なトレッドパターンとして、タイヤ赤道CL上に1本の主溝10が設けられると共に、そのタイヤ幅方向両側に1本ずつの主溝10が設けられて、これら3本の主溝10によって4列の陸部列が区画され、これら陸部列にそれぞれ複数本のラグ溝20がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されることで、複数のブロック30が区画されたパターンを示しているが、本発明が適用されるトレッドパターンはこの態様に限定されるものではなく、後述の「ピッチバリエーション」を有していれば、様々なトレッドパターンに適用することができる。
本発明では、上述のように主溝10、ラグ溝20、および陸部30を設ける際に、タイヤ幅方向に並んだ陸部30と、この陸部30のタイヤ周方向の一方側に隣接するラグ溝20とがトレッドパターン構成単位を構成し、このトレッドパターン構成単位がタイヤ周方向に繰り返し配列される。このとき、トレッドパターン構成単位として、タイヤ周方向の長さであるピッチが異なる複数種類が存在するようにすることで、ピッチバリエーションを有するトレッドパターンが構成される。
具体的には、図2の例では、ピッチの異なる4種類のトレッドパターン構成単位A,B,C,Dによってトレッドパターンが構成されている。各トレッドパターン構成単位A〜Dのタイヤ周方向の長さであるピッチPA 〜PD は互いに異なり、PA >PB >PC >PD という大小関係になっている。これらトレッドパターン構成単位A〜Dは、所定の配列でタイヤ周方向に繰り返し配置され、これにより、ピッチバリエーションを有するトレッドパターンが構成される。尚、タイヤ周方向に隣接するトレッドパターン構成単位間でブロック剛性差が過大になることを避けるために、ピッチが最大のトレッドパターン構成単位Aとピッチが最小のトレッドパターン構成単位Dとがタイヤ周方向に隣接することはない。これらトレッドパターン構成単位A〜Dは、例えば「A,B,C,D,C,B,A,B・・・」のように配列される。
本発明の空気入りタイヤは回転方向が指定されており、図2において矢印Rは回転方向を示す。この矢印Rの向きにタイヤが回転する際に、1つのブロック30において最初に路面に当接する側を踏込側(図2の下側)、最後に路面から離れる側を蹴出側(図2の上側)と言う。
ブロック30の踏込側の壁面を踏込側壁面31とし、ブロック30の蹴出側の壁面を蹴出側壁面32としたとき、図3に示すように、踏込側壁面31はブロック30の踏面からラグ溝20の溝外側に向かって傾斜し、蹴出側壁面32はブロック30の踏面からラグ溝の溝内側に向かって傾斜している。このとき、踏込側壁面31とブロックの踏面の法線とがなす角度(踏込側壁面31の傾斜角度)をα、蹴出側壁面32とブロックの踏面の法線とがなす角度(蹴出側壁面32の傾斜角度)をβとすると、トレッドパターン構成単位のピッチが大きいほど、角度αが大きく、角度βが小さくなっている。
具体的には、図2〜3のように、4種類のトレッドパターン構成単位A〜Dが存在し、そのピッチPA 〜PD がPA >PB >PC >PD という大小関係になっている場合、トレッドパターン構成単位A〜Dに含まれる踏込側壁面31の傾斜角度をαA 〜αD 、蹴出壁面の傾斜角度をβA 〜βD とすると、これら傾斜角度は、αA >αB >αC >αD 、かつ、βA <βB <βC <βD という大小関係になっている。
このように踏込側壁面31を溝外側に傾斜させると共に、蹴出側壁面32を溝内側に傾斜させて、これら踏込側壁面31および蹴出側壁面32の傾斜角度α,βをそれぞれトレッドパターン構成単位ごとに異ならせ、トレッドパターン構成単位のピッチが大きいほど、踏込側壁面31の角度αを大きくし、蹴出側壁面32の角度βを小さくすることで、ピッチの大きいトレッドパターン構成単位のブロックでは踏込側壁面31の溝底側が大きく抉れた形状になる一方で蹴出側壁面32は溝底側の突き出しが小さくなってブロック剛性が相対的に低くなり、ピッチの小さいトレッドパターン構成単位のブロックでは蹴出側壁面32の溝底側の突き出しが大きくなる一方で踏込側壁面31の溝底側の抉れは小さくなってブロック剛性が相対的に高く低くなる。その結果、異なるピッチのトレッドパターン構成単位に含まれるブロックどうしの剛性差を抑制して、周上の陸部剛性を均一化することができ、優れた操縦安定性能および耐偏摩耗性能を発揮することが可能になる。このとき、踏込側壁面31は溝外側に向かって傾斜しているので、溝体積を充分に確保することができ、優れた排水性能を得ることができる。
踏込側壁面31の傾斜角度αA 〜αD および蹴出側壁面32の傾斜角度βA 〜βD は、上述の大小関係を満たしていれば任意の大きさに設定することができるが、踏込側壁面31の傾斜角度αが極端に大きくなると、ブロック30が踏込側において溝底側が大きく抉れた形状になり、ブロック剛性が大きく低下する。そのため、踏込側壁面31の傾斜角度αは好ましくは40°以下、より好ましくは10°〜30°に設定するとよい。これにより、充分な排水性能を得ながら、踏込側壁面31の傾斜角度αが過大になってブロック30の踏込側において剛性が極度に低下することを防ぐことができる。尚、踏込側壁面31の傾斜角度αが40°を超えると、ブロック剛性を充分に得ることが難しくなるだけでなく、タイヤ製造時に釜抜け性が悪化する。一方、蹴出側壁面32の傾斜角度βが極端に大きくなると、ブロック30が蹴出側において溝底側が大きく突き出た形状になり、排水性能が阻害される虞がある。そのため、蹴出側壁面32の傾斜角度βについても、好ましくは40°以下、より好ましくは10°〜30°に設定するとよい。これにより、充分なブロック剛性を得ながら、蹴出側壁面32の傾斜角度βが過大になって排水性能が阻害されることを防ぐことができる。
上述のように踏込側壁面31はブロック踏面から溝外側に向かって傾斜し、蹴出側壁面32はブロック踏面から溝内側に向かって傾斜しており、傾斜方向が互いに異なっているが、1本のラグ溝20に含まれて互いに対向する踏込側壁面31および蹴出側壁面32のそれぞれの傾斜角度α,β(絶対値)は同じであってもよい。即ち、1本のラグ溝20に含まれて互いに対向する踏込側壁面31と蹴出側壁面32とは平行であってもよい。しかしながら、1本のラグ溝20に含まれて互いに対向する踏込側壁面31および蹴出側壁面32について踏込側壁面31の傾斜角度αを蹴出側壁面32の傾斜角度βよりも大きくすると、そのラグ溝20は溝底に向かって溝幅が徐々に拡大する形状になるので、ラグ溝20の溝体積を確保するには有利になる。特に、ラグ溝20が溝底に向かって溝幅が拡大することで、摩耗が進行した状態でも充分な溝体積が確保されて、優れた排水性能を発揮することが可能になる。つまり、1本のラグ溝20に含まれる踏込側壁面31の角度αと蹴出側壁面32の角度βとはα≧βの関係を満たすことが好ましく、排水性の観点からはα>βであることが好ましい。
このように、1本のラグ溝20において踏込側壁面31の傾斜角度αを蹴出側壁面32の傾斜角度βよりも大きくするとき、踏込側壁面31の傾斜角度αと蹴出側壁面32の傾斜角度βとの差(α−β)は例えば3°〜30°の範囲に設定することが好ましい。この傾斜角度の差が3°よりも小さいと、踏込側壁面31の傾斜角度αと蹴出側壁面32の傾斜角度βとが実質的に同じになり、踏込側壁面31の傾斜角度αを蹴出側壁面32の傾斜角度βよりも大きくすることによる効果が充分に得られない。この傾斜角度の差が30°よりも大きいと、踏込側壁面31の傾斜角度αが過大であるか、蹴出側壁面32の傾斜角度βが過小であることになるので、操縦安定性能および耐偏摩耗性能の向上(陸部剛性の確保)と排水性能の維持とを高度に両立することが難しくなる。
前述のように、本発明では、踏込側壁面31および蹴出側壁面32のそれぞれの傾斜角度α,βについてトレッドパターン構成単位のピッチに応じて大小関係を設定するが、タイヤ周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位に含まれる踏込側壁面31どうしの傾斜角度αの差は1°以上8°以下に設定することが好ましい。同様に、タイヤ周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位に含まれる蹴出側壁面32どうしの傾斜角度βの差についても1°以上8°以下に設定することが好ましい。これにより、周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位に含まれるブロックどうしの剛性差を抑制することができ、周上の陸部剛性を均一化するには有利になる。この傾斜角度の差が1°よりも小さいと、角度差が殆ど無いため、タイヤ周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位に含まれる踏込側壁面31や蹴出側壁面32どうしの傾斜角度が実質的に同じになり、所期の効果が充分に得られない。この傾斜角度の差が8°よりも大きいと、傾斜角度が大きい踏込側壁面31を有するブロックにおける剛性減少と傾斜角度が小さい踏込側壁面31を有するブロックにおける剛性維持とのバランスが悪くなり、また、傾斜角度が大きい蹴出側壁面32を有するブロックにおける剛性増加と傾斜角度が小さい蹴出側壁面32を有するブロックにおける剛性維持とのバランスが悪くなり、周上の陸部剛性の均一化が阻害される虞がある。
本発明では、少なくともショルダー陸部において、上述のように踏込側壁面31および蹴出側壁面32の傾斜角度α,βを設定するが、このとき、傾斜角度を設定するラグ溝20の溝深さは3mm以上10mm以下であり、溝幅は3mm以上10mm以下であることが好ましい。これにより、溝壁面の傾斜角度を設定する際に溝体積を適切な範囲に調整することができ、充分な排水性能を得ながら、陸部剛性を均一化するには有利になる。ラグ溝20の溝深さが3mmよりも小さいと、ラグ溝20が浅過ぎるため、踏込側壁面31および蹴出側壁面32の傾斜角度α,βを設定したとしても、充分に各ブロックの剛性を変化させることができず、陸部剛性を周上で均一化する効果が得難くなる。ラグ溝20の溝深さが10mmよりも大きいと、ラグ溝20が深過ぎるため、溝底のゴムゲージが小さくなり、タイヤ本来の性能が損なわれる虞がある。ラグ溝20の溝幅が3mmよりも小さいと、溝壁面の傾斜角度による溝体積への影響が大きくなり、溝壁面の傾斜角度によって陸部剛性を適切に調整することが難しくなる。ラグ溝20の溝幅が10mmよりも大きいと、トレッド部1に占める陸部20の割合が小さくなるので、タイヤ全体として充分な陸部剛性を得ることが難しくなる。
タイヤサイズが255/30ZR20であり、図1に例示する基本構造を有すると共に、図2に例示するトレッドパターンを有し、ショルダー陸部に設けられたラグ溝について、溝深さ、溝幅、トレッドパターン構成単位A〜Eのそれぞれにおける踏込側壁面の傾斜角度、蹴出側壁面の傾斜角度、タイヤ周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位の踏込側壁面どうしの傾斜角度の角度差、タイヤ周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位の蹴出側壁面どうしの傾斜角度の角度差、1本のラグ溝に含まれる踏込側壁面の傾斜角度と蹴出側壁面の傾斜角度との大小関係をそれぞれ表1のように設定した従来例1、比較例1、実施例1〜8の10種類の空気入りタイヤを作製した。
尚、各トレッドパターン構成単位A〜EのピッチPA 〜PD は、PA =38mm、PB =33mm、PC =31mm、PD =29mmに設定される。
表1において、踏込側壁面および蹴出側壁面の傾斜角度α,βはそれぞれタイヤ回転方向Rの逆方向(即ち、踏込側壁面については溝外側方向、蹴出側壁面については溝内側方向)を正として示した。即ち、踏込側壁面の傾斜角度αが負の値である従来例1および比較例1では、踏込側壁面は、実施例1〜8とは異なり、溝内側方向に傾斜している(従来のラグ溝のように溝底に向かって溝幅が小さくなっている)。
これら10種類の空気入りタイヤについて、下記の評価方法により排水性能(新品時および50%摩耗時)、操縦安定性能、耐偏摩耗性能を評価し、その結果を表1に併せて示した。
排水性(新品時、50%摩耗時)
各試験タイヤをリムサイズ20×9.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を240kPaとして、排気量が1.8Lである前輪駆動の乗用車に装着し、直進路上で水深10mmのプールに進入するようにした走行試験を実施し、プールへの進入速度を徐々に増加させ、ハイドロプレーニング現象が発生する限界速度を測定した。尚、50%摩耗時の排水性については、各試験タイヤをトレッド表面から有効溝深さの50%の位置まで摩耗したうえで、上記試験を行って測定した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど排水性能が優れることを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ20×9.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を240kPaとして、排気量が1.8Lである前輪駆動の乗用車に装着し、直進路上で水深10mmのプールに進入するようにした走行試験を実施し、プールへの進入速度を徐々に増加させ、ハイドロプレーニング現象が発生する限界速度を測定した。尚、50%摩耗時の排水性については、各試験タイヤをトレッド表面から有効溝深さの50%の位置まで摩耗したうえで、上記試験を行って測定した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど排水性能が優れることを意味する。
操縦安定性能
各試験タイヤをリムサイズ20×9.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を240kPaとして、排気量が1.8Lである前輪駆動の乗用車に装着し、テストコースにてテストドライバーによる試験走行を実施し、その際の操縦安定性を官能評価した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。尚、指数値が「99」以上であれば、従来レベルの操縦安定性を維持できたことを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ20×9.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を240kPaとして、排気量が1.8Lである前輪駆動の乗用車に装着し、テストコースにてテストドライバーによる試験走行を実施し、その際の操縦安定性を官能評価した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。尚、指数値が「99」以上であれば、従来レベルの操縦安定性を維持できたことを意味する。
耐偏摩耗性能
各試験タイヤをリムサイズ20×9.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を240kPaとして、排気量が1.8Lである前輪駆動の乗用車に装着し、テストコースにて20000kmの走行試験を実施した後の車両外側の主溝に隣接する陸部に発生する偏摩耗量を測定した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐偏摩耗性能が優れていることを意味する。尚、指数値が「99」以上であれば、従来レベルの操縦安定性を維持できたことを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ20×9.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を240kPaとして、排気量が1.8Lである前輪駆動の乗用車に装着し、テストコースにて20000kmの走行試験を実施した後の車両外側の主溝に隣接する陸部に発生する偏摩耗量を測定した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐偏摩耗性能が優れていることを意味する。尚、指数値が「99」以上であれば、従来レベルの操縦安定性を維持できたことを意味する。
表1から明らかなように、実施例1〜8はいずれも、従来例1と同等以上の優れた耐偏摩耗性能および操縦安定性能を発揮しながら、従来例1よりも優れた排水性能を新品時および摩耗時に発揮することができ、これら性能をバランスよく両立した。
一方、比較例1は、溝壁面の傾斜角度によって陸部剛性を均一化して操縦安定性能および偏摩耗性能を改善することはできるものの、主溝の内側壁面が溝内側に傾斜しているため、溝底側に向かって溝幅が徐々に狭くなり、溝容積を充分に確保できず、排水性能が悪化した。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
10 主溝
11 内側壁面
12 外側壁面
20 ラグ溝
30 陸部(ブロック)
31 踏込側壁面
32 蹴出側壁面
A,B,C,D トレッドパターン構成単位
CL タイヤ赤道
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
10 主溝
11 内側壁面
12 外側壁面
20 ラグ溝
30 陸部(ブロック)
31 踏込側壁面
32 蹴出側壁面
A,B,C,D トレッドパターン構成単位
CL タイヤ赤道
Claims (4)
- 回転方向が指定され、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を有し、該複数本の主溝により区画された複数の陸部のうち少なくともタイヤ幅方向最外側に位置するショルダー陸部にタイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝が形成され、該ラグ溝によってショルダー陸部が複数のブロックに区画され、前記ラグ溝と前記ブロックとからなるトレッドパターン構成単位が前記ショルダー陸部においてタイヤ周方向に繰り返し配置され、該トレッドパターン構成単位としてタイヤ周方向のピッチが異なる複数種類が存在する空気入りタイヤにおいて、
前記ブロックの踏込側の壁面を踏込側壁面とし、前記ブロックの蹴出側の壁面を蹴出側壁面としたとき、前記踏込側壁面が前記ブロックの踏面から前記ラグ溝の溝外側に向かって傾斜し、前記蹴出側壁面が前記ブロックの踏面から前記ラグ溝の溝内側に向かって傾斜し、前記トレッドパターン構成単位のピッチが大きいほど、前記踏込側壁面と前記ブロックの踏面の法線とがなす角度αが大きく、前記蹴出側壁面と前記ブロックの踏面の法線とがなす角度βが小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。 - タイヤ周方向に隣り合うトレッドパターン構成単位に含まれる前記踏込側壁面の角度αどうしの差と前記蹴出側壁面の角度βどうしの差とがそれぞれ1°以上8°以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記踏込側壁面の角度αが40°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 1本の前記ラグ溝に含まれる前記踏込側壁面の角度αと前記蹴出側壁面の角度βとがα≧βの関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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