(本開示に係る一態様を得るに至った経緯)
本願発明者は、従来の液体処理装置を用いて水道水を処理した場合、放電を開始して3分程度で放電が不安定化することを確認した。また、放電を開始して5分後には、絶縁体の開口付近に析出物が付着していることを目視で確認した。
図1は、絶縁体50xに付着した析出物90xを絶縁体50xの開口側から観察した結果を示す図である。図1において、白又は灰色の所定幅の略円環が絶縁体50xの概略形状を示している。第1の電極30xは、絶縁体50xの開口よりも奥に位置しているために、図1に示す画像には撮影されなかった。このため、第1の電極30xを開口側から見たときの概略形状を白色の破線の円形で示している。これらは、後述する図6及び図8においても同様である。
絶縁体50xの内径が1mmであり、第1の電極30xの外径が0.8mmである。したがって、第1の電極30xの側面と絶縁体50xの内側面との距離、すなわち、空間52xの幅d1は、0.1mmである。この場合、図1に示すように、絶縁体50xの開口付近の内側面に析出物90xが付着していることが分かる。
図2は、図1に示す絶縁体50xに付着した析出物90xの分析結果を示す図である。具体的には、図2は、析出物90xをSEM(Scanning Electron Microscope)のEDX(Energy Dispersive X−ray)分析によって分析した結果を示している。図2において、横軸は、特性X線のエネルギーであり、縦軸は、その強度(カウント値)である。
図2に示すように、析出物90xは、シリコン酸化物(SiOx)の化合物であることが分かる。本願発明者は、析出物90xが絶縁体50xの内側面に付着する要因を以下の通りに検討した。
図1に示す第1の電極30xと絶縁体50xとでは、空間52xの幅d1が約0.1mmである。つまり、第1の電極30xと絶縁体50xとが近いために、第1の電極30xと絶縁体50xとの間に誘電体バリア放電又は沿面放電が発生する。これらの放電によって生成されるプラズマに、絶縁体50xの表面が曝されることで、水道水に含まれるシリカが絶縁体50xの内側面に析出したと考えられる。つまり、析出物90xは、水道水中に含まれるシリカが析出して形成された物質であると考えられる。
析出物90xが開口付近に形成された場合、析出物90xと第1の電極30xとの間で放電が発生する可能性がある。このため、第1の電極30xと第2の電極(図示せず)との間に発生する放電に使用される電圧が変化してしまい、プラズマが不安定化する可能性がある。
そこで、上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る液体処理装置は、被処理液内に少なくとも一部が配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極の側面を、空間を介して囲むように配置され、前記被処理液に接する端面に開口が設けられた筒状の第1の絶縁体と、前記第1の絶縁体内に気体を供給することで、前記開口を介して前記気体を前記被処理液中に放出する気体供給装置と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することで、プラズマを発生させる電源とを備え、前記第1の電極の側面と前記第1の絶縁体の内側面との距離は、1mm以上である。
これにより、第1の電極の側面と第1の絶縁体の内側面との距離が1mm以上で離れているので、第1の電極と第1の絶縁体との間で誘電体バリア放電又は沿面放電などが発生しにくくなる。このため、これらの放電が発生した場合に生じるプラズマによって第1の絶縁体の表面が曝されることが少なくなるので、第1の絶縁体の内側面にシリカなどの析出物が付着するのが抑制される。
また、例えば、前記第1の距離は、1mm以上3mm以下でもよい。
これにより、第1の電極の側面と第1の絶縁体の内側面との距離が3mm以下で離れすぎていないので、供給した気体によって第1の電極を覆いやすくなる。したがって、本開示の一態様に係る液体処理装置は、放電がより安定し、プラズマをより安定して生成することができる。
また、例えば、前記第1の電極の前記端面は、前記第1の絶縁体の前記開口から0mm以上3mm以下、後退又は突出していてもよい。
これにより、第1の電極の端面と気液界面との間で放電が発生しやすくなり、第1の電極と第1の絶縁体との間での放電の発生を抑制することができる。したがって、シリカなどの析出物の発生を抑制することができるので、本開示の一態様に係る液体処理装置は、放電がより安定し、プラズマをより安定して生成することができる。
また、供給する気体の流量によって第1の電極と気液界面との間で発生する放電の体積を制御することができる。このため、例えば、本開示の一態様に係る液体処理装置では、前記気体供給装置が供給する気体の流量は、0.5L/min以上であってもよい。
これにより、気体の流量が多い程、放電が第1の絶縁体の内側面に向かって拡がるのを抑制することができるので、第1の絶縁体の表面がプラズマに曝されにくくなる。したがって、シリカなどの析出物の発生を抑制することができるので、本開示の一態様に係る液体処理装置は、放電がより安定し、プラズマをより安定して生成することができる。
また、例えば、前記第1の電極は、長尺の円柱状の電極部を有し、前記第1の絶縁体は、前記電極部の側面を囲む長尺の円筒体であり、前記電極部と前記第1の絶縁体とは、同軸上に配置されていてもよい。
これにより、電極部と第1の絶縁体との間には、幅が均一の空間が形成されているので、第1の絶縁体の表面がプラズマに曝されにくくなる。また、空間内を流れる気体の量を均等にすることができるので、本開示の一態様に係る液体処理装置は、プラズマをより安定して生成することができる。
ところで、所定の流路内を気体が進行する場合において、気体の流路幅が変化した場合には、気体の流速が局所的に変化し、当該変化によって旋回流が発生する可能性がある。第1の絶縁体の内部で旋回流が発生した場合、第1の絶縁体の開口を介して液体を第1の絶縁体内に引き入れてしまう可能性がある。
これに対して、本開示の一態様に係る液体処理装置では、例えば、前記第1の電極は、長尺の円柱状の電極部と、前記電極部の後端側に設けられ、前記電極部を支持する支持部であって、前記電極部より太い円柱状の支持部とを有し、前記支持部には、前記気体供給装置が供給する気体を通過させる気体供給孔が設けられ、前記気体供給孔の開口幅と前記第1の絶縁体の内径とは、略同一であってもよい。
これにより、気体供給装置が供給する気体が気体供給孔を介して第1の絶縁体の内部に進入する場合に、気体供給孔と第1の絶縁体との間で気体の流路幅を略均一にすることができる。このため、第1の絶縁体の内部で気体の旋回流が発生するのを抑制することができ、プラズマをより安定して生成することができる。
また、例えば、前記第1の絶縁体の後端側に設けられた、前記気体供給装置が供給する気体を前記第1の絶縁体の内部に導入するための導入口を備え、前記導入口を通過するときの前記気体の流入方向は、前記第1の絶縁体の軸方向に交差してもよい。
これにより、導入口から導入された気体は、軸方向に交差する方向に進行して第1の絶縁体の内側面などに当たった後、第1の絶縁体の内部を軸方向に沿って進行する。このように、内側面などによって一度進行方向が変更されることで、第1の絶縁体の開口近傍では、軸方向に沿って安定した流速で気体を流すことができる。したがって、第1の絶縁体の内部で気体の旋回流が発生するのを抑制することができ、プラズマをより安定して生成することができる。
また、例えば、開口幅が前記第1の絶縁体と略同一の有底筒体部をさらに備え、前記有底筒体部は、前記第1の絶縁体と同軸上に位置するように、前記第1の絶縁体の後端側に接続され、前記導入口は、前記有底筒体部の側壁に設けられ、前記導入口を通過するときの前記気体の流入方向は、前記第1の絶縁体の軸方向に略直交してもよい。
これにより、導入口から導入された気体は、軸方向に直交する方向に進行して有底筒体部の側壁などに当たった後、第1の絶縁体の内部を軸方向に沿って進行する。このように、側壁などによって一度進行方向が変更されることで、第1の絶縁体内では、軸方向に沿って安定した流速で気体を流すことができる。したがって、第1の絶縁体の内部で気体の旋回流が発生するのを抑制することができ、プラズマをより安定して生成することができる。
また、筒状の第1の絶縁体によって空間を介して囲まれた第1の電極に電圧を印加した場合、第1の絶縁体の開口の近傍の気液界面(気体と被処理液との界面)には、当該界面に生じている電界の強度に応じて、マクスウェル(Maxwell)応力が掛かる。このため、被処理液が、第1の絶縁体の開口から内側面を伝って浸入する可能性がある。この結果、第1の絶縁体の内部に被処理液が浸入する可能性がある。
そこで、本開示の一態様に係る液体処理装置では、例えば、前記第1の電極の側面を、空間を介して囲むように配置される筒状の第2の絶縁体をさらに備え、前記第2の絶縁体は、前記第1の絶縁体の後端側に、当該第2の絶縁体と前記第1の絶縁体との各々の内部が連通するように接続され、前記第1の電極の側面と前記第2の絶縁体の内側面との間の距離である第2の距離は、前記第1の距離よりも大きくてもよい。
これにより、第2の絶縁体の内側面と第1の電極との間に生じる電界は、第1の絶縁体の内側面と第1の電極との間に生じる電界より小さいので、第1の絶縁体の内部に浸入した被処理液は、第2の絶縁体の内部には浸入しにくくなる。したがって、本開示の一態様に係る液体処理装置によれば、プラズマをより安定して生成することができる。
また、例えば、前記第2の距離は、前記電源が印加する電圧の値に応じて決定される距離であって、前記電圧によって前記第2の絶縁体の内側面に生じる電界が所定の値以下となる距離であってもよい。
これにより、第1の電極及び第2の電極間に印加される電圧に応じて第2の絶縁体を適切な大きさに設計することができる。したがって、例えば、必要以上に大きな第2の絶縁体を用いることを回避できるので、液体処理装置の小型化、軽量化及び低コスト化を実現することができる。
また、例えば、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電圧の値は、5kV以下であり、前記第2の距離は、2.6mm以上であってもよい。
これにより、印加電圧が5kV以下である場合に、第2の絶縁体の内部への被処理液の浸入を抑制することができる。
また、例えば、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電圧の値は、5kV以上であり、前記第2距離は、5mm以上であってもよい。
これにより、印加電圧が5kV以上である場合に、第2の絶縁体の内部への被処理液の浸入を抑制することができる。
また、例えば、前記第1の電極は、長尺の円柱状の電極部を有し、前記第1の絶縁体は、前記電極部の先端側の側面を囲む円筒体であり、前記第2の絶縁体は、前記電極部の後端側の側面を囲む筒体であり、前記電極部、前記第1の絶縁体及び前記第2の絶縁体は、同軸上に配置されていてもよい。また、例えば、前記第2の絶縁体は、円筒体又は角筒体であってもよい。
これにより、電極部と第1の絶縁体との間、及び、電極部と第2の絶縁体との間の各々には、それぞれに幅が均一の空間が形成されているので、それぞれに生じる電界の強度を均一にすることができる。したがって、局所的に電界が強くなる部分などが生じにくくなるので、第2の絶縁体の内部に被処理液が浸入するのを抑制することができる。したがって、本開示の一態様に係る液体処理装置は、プラズマをより安定して生成することができる。
また、例えば、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体とは、それぞれ異なる材料で構成されていてもよい。
これにより、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の各々の加工性を高めることができる。したがって、例えば、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の各々を精密に形成することができるので、液体処理装置の信頼性を高めることができる。
また、例えば、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体とは、互いに同一の材料で一体に構成されていてもよい。
これにより、部品点数を削減することができるので、液体処理装置を軽量化することができる。また、液体処理装置の製造方法において、部品の組み立て工程の工程数を削減することができるので、低コスト化を実現することができる。
また、本開示の他の態様に係る液体処理装置では、例えば、被処理液内に気体を放出するための第1の開口と第1の内側面とを有する筒状の第1の絶縁体と、前記第1の内側面によって囲まれる第1の空間内に少なくとも一部が配置された第1の電極と、前記被処理液内に少なくとも一部が配置された第2の電極と、前記第1の空間内に前記気体を供給することで、前記第1の開口を介して前記気体を前記被処理液中に放出する気体供給装置と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することで、プラズマを発生させる電源とを備えている。前記第1の内側面は、前記第1の開口に接する第1の部分領域を含む。前記第1の電極の先端は、前記第1の開口から前記第1の空間外に突出、または前記第1の開口から前記第1空間内に3mm未満後退している。前記第1の電極の側面と前記第1の部分領域との間の最短距離である第1の距離は、1mm以上である。
これにより、第1の電極の側面と、第1の部分領域との間の最短距離が1mm以上となるので、第1の電極と第1の絶縁体との間で誘電体バリア放電又は沿面放電などが発生しにくくなる。このため、これらの放電が発生した場合に生じるプラズマによって第1の絶縁体の表面が曝されることが少なくなるので、第1の絶縁体の内側面にシリカなどの析出物が付着するのが抑制される。
なお、この明細書において、「筒状」は、円筒形状、多角筒状、または漏斗状であってもよい。また、筒状は、回転対称であってもよく、また、回転対称でなくてもよい。第1の絶縁体の外側の形状は、第1の空間の形状と同一であってもよく、また、異なっていてもよい。例えば、第1の絶縁体の外側の形状が円柱状で、第1の空間の形状が多角柱状であってもよい。逆に、第1の絶縁体の外側の形状が多角柱状で、第1の空間の形状が円柱状であってもよい。また、第1の電極は、円柱状、多角柱状または錐状であってもよい。第1の電極の形状、第1の絶縁体の外側の形状および第1の空間の形状が、それぞれ長手方向の中心軸を有する場合、これらの中心軸が一致していてもよく、また、一致していなくてもよい。
第1の開口は、下向きで、下方に気体を放出してもよい。また、第1の開口は、上向きで、上方に気体を放出してもよい。さらに、第1の開口は、他の方向を向き、その方向に気体を放出してもよい。
また、第1の部分領域は、第1の内側面のうち、第1の開口から所定距離(例えば、4mm)以内のリング状の領域であってもよい。
また、例えば、前記第1の電極の先端は、前記第1の開口から前記第1の空間外に突出していてもよい。
従来技術では、誘電体バリア放電又は沿面放電を補助放電として用いてグロー放電の放電開始電圧を低電圧化していたが、本態様では、誘電体バリア放電又は沿面放電が発生しにくくなる。しかし、第1の電極の先端が外側に突出していることにより、補助放電が無い又は弱い場合もグロー放電を開始することができる。
また、例えば、前記第1の電極の前記先端は、前記第1の開口から前記第1の空間外に1mm以上突出していてもよい。
また、例えば、前記第1の電極の前記先端は、前記第1の開口から前記第1の空間外に3mm以下突出していてもよい。
これにより、第1の電極の突出部分全体をより確実に気泡で覆い、プラズマをより安定して生成することができる。
また、例えば、前記第1の内側面は、前記第1の部分領域とは異なり、前記第1の電極を囲む第2の部分領域を含んでいてもよい。前記第1の距離、または前記第1の電極の側面と前記第2の部分領域との間の最短距離は、前記電圧によって前記第1または第2の部分領域に生じる電界が1.6×106V/m以下となる距離であってもよい。
また、例えば、前記第1の距離、または前記第1の電極の側面と前記第2の部分領域との間の最短距離は、2.6mm以上であってもよい。
また、例えば、前記第1の距離、または前記第1の電極の側面と前記第2の部分領域との間の最短距離は、5mm以上であってもよい。
さらに、第1の距離は、10mm以下であってもよい。これにより、より適切に気泡を生成することができる。
また、例えば、前記気体供給装置が供給する気体の流量は、0.5L/min以上であってもよい。
また、例えば、前記第1の電極は、長尺の円柱状の電極部を備えていてもよい。前記第1の絶縁体は、前記電極部の側面を囲む長尺の円筒体であってもよい。前記電極部と前記第1の絶縁体とは、同軸上に配置されていてもよい。
また、例えば、前記第1の電極は、前記気体の流れの下流側の先端および上流側の後端を有する長尺の円柱状の電極部と、前記電極部の後端側に設けられ、前記電極部を支持する支持部とを備えていてもよい。前記支持部は、前記電極部より太い円柱状であってもよい。前記第1の絶縁体は、円筒体であってもよい。前記支持部には、前記気体供給装置が供給する前記気体を通過させる気体供給孔が設けられていてもよい。前記気体供給孔の開口幅と前記第1の絶縁体の内径とは、略同一であってもよい。
また、例えば、本態様の液体処理装置は、前記気体供給装置が供給する気体を前記第1の空間に導入するための導入口を有する管をさらに備えていてもよい。前記導入口を通過するときの前記気体の流入方向は、前記第1の絶縁体の軸方向に交差してもよい。
また、例えば、本態様の液体処理装置は、第3の開口と前記第3の開口の反対側の閉じられた端部とを有する筒体をさらに備えていてもよい。前記第1の絶縁体は、前記第1の開口の反対側に第2の開口を有していてもよい。前記第3の開口の開口幅が前記第2の開口の開口幅と略同一であってもよい。前記筒体が前記第1の絶縁体と同軸上に位置するように、前記第3の開口と前記第2の開口が接続されていてもよい。前記導入口は、前記筒体の側壁に設けられていてもよい。
また、例えば、本態様の液体処理装置は、前記第1の電極の側面を、第2の空間を介して囲む第2の内側面部分を有する筒状の第2の絶縁体をさらに備えていてもよい。前記第1の絶縁体は、前記第1の開口の反対側に第2の開口を有していてもよい。前記第2の絶縁体は、前記第1の絶縁体の前記第2の開口側に、前記第2の空間と前記第1の空間とが連通するように接続されていてもよい。前記第1の電極の側面と前記第2の内側面部分との間の最短距離である第2の距離は、前記第1の距離よりも大きくてもよい。
なお、第2の絶縁体の外側の形状は、第2の空間の形状と同一であってもよく、また、異なっていてもよい。例えば、第2の絶縁体の外側の形状が円柱状で、第2の空間の形状が多角柱状であってもよい。逆に、第2の絶縁体の外側の形状が多角柱状で、第2の空間の形状が円柱状であってもよい。第1の電極の形状、第2の絶縁体の外側の形状および第2の空間の形状が、それぞれ長手方向の中心軸を有する場合、これらの中心軸が一致していてもよく、また、一致していなくてもよい。
また、例えば、前記第2の距離は、前記電源が印加する前記電圧によって前記第2の内側面部分に生じる電界が1.6×106V/m以下となる距離であってもよい。
また、例えば、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電圧の値は、5kV以下であり、前記第2の距離は、2.6mm以上であってもよい。
また、例えば、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電圧の値は、5kV以上であり、前記第2距離は、5mm以上であってもよい。
また、例えば、前記第1の電極は、前記気体の流れの下流側の先端および上流側の後端を有する長尺の円柱状の電極部を備えていてもよい。前記第1の絶縁体は、前記電極部の先端側の側面を囲む円筒体であってもよい。前記第2の絶縁体は、前記電極部の後端側の側面を囲む筒体であってもよい。前記電極部、前記第1の絶縁体及び前記第2の絶縁体は、同軸上に配置されていてもよい。
また、例えば、前記第2の絶縁体は、円筒体又は角筒体であってもよい。
また、例えば、前記第1の絶縁体の材料は、前記第2の絶縁体の材料と異なっていてもよい。
また、例えば、前記第1の絶縁体の材料は、前記第2の絶縁体の材料と同一であり、前記第1の絶縁体は前記第2の絶縁体と一体に構成されていてもよい。
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
(実施の形態1)
[1−1.概要]
まず、実施の形態に係る液体処理装置の概要について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る液体処理装置1の構成を示す図である。
図3に示すように、液体処理装置1は、液体2内に供給された気体3中でプラズマ4を生成する。液体2内に供給された気体3は、気泡として液体2内に存在する。気体3による気泡は、気液界面が液体2内で閉じていてもよく、あるいは、外部空間と連通していてもよい。
液体2は、液体処理装置1による処理対象となる被処理液である。液体2は、例えば水道水又は純水などの水、又は水溶液である。液体処理装置1は、液体2内でプラズマ4を生成することで、液体2に活性種を発生させる。活性種には、例えば、ヒドロキシルラジカル(OH)、水素ラジカル(H)、酸素ラジカル(O)、スーパーオキシドアニオン(O2 −)、一価酸素イオン(O−)又は過酸化水素(H2O2)などが含まれる。
発生した活性種が液体2に含まれる被分解物質などを分解するので、液体処理装置1は、液体2を殺菌することができる。あるいは、活性種を含む液体2(すなわち、プラズマ処理された液体2)を用いて他の液体又は気体を殺菌することができる。プラズマ処理された液体2は、殺菌に限らず、その他の様々な目的に用いることができる。
[1−2.構成]
次に、本実施の形態に係る液体処理装置1の構成について説明する。
図3に示すように、液体処理装置1は、処理槽10と、反応槽15と、配管部20と、第1の電極30と、第1の保持部35と、第2の電極40と、第2の保持部45と、絶縁体50と、気体供給ポンプ60と、液体供給ポンプ70と、電源80とを備える。以下では、液体処理装置1が備える各構成要素について詳細に説明する。
[1−2−1.処理槽]
処理槽10は、液体2を溜めるための容器である。処理槽10の外形形状は、例えば、直方体、円柱又は球体など、いかなるものでもよい。処理槽10は、例えば、開放部を備えた貯液タンクでもよく、あるいは、上部が開放されたトレイなどでもよい。
処理槽10には、配管部20が接続されている。具体的には、処理槽10は、配管部20を介して反応槽15と接続されている。配管部20には、液体供給ポンプ70が接続されており、処理槽10、反応槽15及び配管部20の間で液体2が循環される。
処理槽10は、例えば、耐酸性の樹脂材料などで形成される。例えば、処理槽10は、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、シリコンゴム、ポリ塩化ビニル、ステンレス又はセラミックなどから形成される。
[1−2−2.反応槽]
反応槽15は、内部に第1の電極30及び第2の電極40が配置された槽である。具体的には、反応槽15の側壁を貫通するように第1の電極30及び第2の電極40が配置されている。反応槽15内には、液体2が満たされている。反応槽15内では、気体供給ポンプ60が供給した気体3(気泡)内で、第1の電極30及び第2の電極40間で放電させることにより、プラズマ4が生成される。
反応槽15の外形形状は、例えば直方体、円柱又は球体など、いかなるものでもよい。反応槽15は、例えば、開放部を備えた貯液タンクでもよく、あるいは、上部が開放されたトレイでもよい。また、反応槽15は、配管部20の一部でもよい。
反応槽15は、例えば、耐酸性の樹脂材料で形成される。例えば、反応槽15は、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、シリコンゴム、ポリ塩化ビニル、ステンレス又はセラミックなどから形成される。
[1−2−3.配管部]
配管部20は、液体2の流路を形成するための配管である。配管部20は、例えば、パイプ、チューブ又はホースなどの中空の部材から形成される。配管部20は、耐酸性の樹脂材料などから形成される。例えば、配管部20は、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、シリコンゴム、ポリ塩化ビニル、ステンレス又はセラミックなどから形成される。
本実施の形態では、配管部20は、処理槽10と液体供給ポンプ70とを接続し、液体供給ポンプ70と反応槽15とを接続し、反応槽15と処理槽10とを接続している。このように、配管部20は、処理槽10、液体供給ポンプ70、反応槽15、処理槽10をこの順で接続し、液体2の循環経路を形成している。なお、図3において、配管部20に沿って描かれた実線の矢印は、液体2が流れる方向(すなわち、循環方向)を示している。
[1−2−4.第1の電極]
図4Aは、本実施の形態に係る第1の電極30の一例を示す断面図である。具体的には、図4Aは、第1の電極30の長軸を通る断面を示している。図4Aに示すように、第1の電極30は、電極部31と、ネジ部32とを備える。
第1の電極30は、プラズマ4を生成するための一対の電極の一方である。第1の電極30は、反応電極として用いられ、周囲にプラズマ4が生成される。
電極部31は、第1の電極30の先端側に設けられた長尺の円柱状の電極部である。電極部31の直径は、プラズマ4が生成可能な直径であり、例えば2mm以下である。ここでは、一例として、電極部31の直径は0.8mmである。
電極部31は、例えばタングステンから形成されるが、これに限定されない。電極部31は、アルミニウム、鉄若しくは銅又はこれらの合金などの金属材料から形成されてもよい。
第1の電極30は、空間52内に少なくとも一部が配置されている。具体的には、第1の電極30の電極部31の少なくとも一部が、反応槽15内に配置される。電極部31は、図4Aに示すように、空間52を介して絶縁体50に囲まれている。気体供給ポンプ60によって気体3が供給されていない場合には、液体2が空間52を満たすので、第1の電極30の少なくとも一部は、液体2内に配置されることになり、液体2に接触する。気体供給ポンプ60によって気体3が供給された場合には、供給された気体3が空間52を満たすので、電極部31は、供給された気体3に覆われて液体2には接触しない。
本実施の形態では、電極部31と絶縁体50とは、同軸上に配置されている。電極部31と絶縁体50との間には、全周に亘って空間52が設けられている。すなわち、空間52は、幅d1が略均一の円筒状の空間である。幅d1は、第1の電極30の側面36と絶縁体50の内側面55の部分領域56との最短距離である第1の距離であり、1mm以上である。幅d1は、例えば、1mm以上3mm以下でもよい。
ネジ部32は、電極部31を支持する金属製の部材である。具体的には、電極部31は、ネジ部32に圧入されることで固定されている。ネジ部32は、電極部31と電気的に接続されており、電源80から受けた電力を電極部31に伝える。
ネジ部32は、電極部31の後端側に設けられた円柱状の支持部である。ネジ部32の直径は、電極部31の直径より大きく、例えば、3mmである。例えば、ネジ部32は、ステンレス、鉄などの、加工が容易な金属材料を用いて形成される。
ネジ部32は、第1の保持部35に保持されている。具体的には、ネジ部32の外側面には雄ねじが設けられている。当該雄ねじが、第1の保持部35に設けられた雌ねじと螺合することで、ネジ部32は、第1の保持部35に保持されている。
ネジ部32には、気体供給ポンプ60に接続された貫通孔34が設けられている。貫通孔34は、空間52と連通している。このため、気体供給ポンプ60から供給された気体3は、貫通孔34及び空間52を介して、絶縁体50の開口51から反応槽15に溜められた液体2内に放出される。
本実施の形態では、図4Aに示すように、ネジ部32には、2つの貫通孔34が設けられている。これにより、貫通孔34での気体3の圧損が抑制される。なお、貫通孔34の数は、1つのみ又は3以上でもよい。
図4Aに示すように、第1の電極30の端面(先端)33は、開口51より空間52内に後退している。このときの後退量d2は、第1の電極30の端面33の近傍に発生するプラズマ4と絶縁体50の内側面55との接触が抑制される範囲である。具体的には、第1の電極30の端面33の後退量d2は、0mm以上3mm以下である。後退量d2は、3mm未満でもよい。
後退量d2は、ネジ部32を軸周りに回転させることで調整することができる。ネジ部32が回転することで、電極部31とネジ部32とが連動して、第1の保持部35に固定された絶縁体50に対して、軸方向に移動する。これにより、端面33の位置を可変にすることができる。例えば、図4Bに示すように、第1の電極30の端面33は、開口51から空間52外に突出していてもよい。例えば、端面33は、開口51から空間52外に1mm以上突出している。また、端面33は、開口51から空間52外に3mm以下突出していてもよい。
図4Bは、本実施の形態の第1の電極30の別の一例を示す断面図である。このときの突出量d3は、気体供給ポンプ60によって供給された気体3内に収まる範囲である。具体的には、第1の電極30の端面33の突出量d3は、0mm以上3mm以下である。
[1−2−5.第1の保持部]
第1の保持部35は、第1の電極30を保持するための部材である。本実施の形態では、第1の保持部35は、第1の電極30と絶縁体50とを保持し、反応槽15の所定の位置に取り付ける。
第1の保持部35には、雌ねじが設けられている。雌ねじは、第1の電極30のネジ部32の雄ねじと螺合する。これにより、ネジ部32を軸周りに回転させることで、第1の保持部35に対して、軸方向に第1の電極30の位置を調整することができる。絶縁体50は、第1の保持部35又は反応槽15に固定されているので、絶縁体50の開口51に対する第1の電極30の端面33の位置を調整することができる。すなわち、第1の電極30の端面33の後退量d2又は突出量d3を調整することができる。
[1−2−6.第2の電極]
図5は、本実施の形態に係る第2の電極40を示す断面図である。具体的には、図5は、第2の電極40の長軸を通る断面を示している。図5に示すように、第2の電極40は、電極部41と、ネジ部42とを備える。
第2の電極40は、プラズマ4を生成するための一対の電極の他方である。第2の電極40は、液体2内に少なくとも一部が配置されている。具体的には、第2の電極40の電極部41が、反応槽15内に配置されて、液体2に接触する。
電極部41は、第2の電極40の先端側に設けられた長尺の円柱状の電極部である。電極部41のサイズ及び材料は、第1の電極30の電極部31と同じであるが、異なっていてもよい。
ネジ部42は、電極部41を支持する金属製の部材である。具体的には、電極部41は、ネジ部42に圧入されることで固定されている。ネジ部42は、電極部41と電気的に接続されており、電源80から受けた電力を電極部41に伝える。
ネジ部42は、第2の電極40の後端側に設けられた円柱状の支持部である。ネジ部42の直径は、電極部41の直径より大きく、例えば、3mmである。例えば、ネジ部42は、ステンレス、鉄などの、加工が容易な金属材料を用いて形成される。
ネジ部42は、第2の保持部45に保持されている。具体的には、ネジ部42の外側面には雄ねじが設けられている。当該雄ねじが第2の保持部45に設けられた雌ねじと螺合することで、ネジ部42は、第2の保持部45に保持されている。
[1−2−7.第2の保持部]
第2の保持部45は、第2の電極40を保持するための部材である。本実施の形態では、第2の保持部45は、第2の電極40を保持し、反応槽15の所定の位置に取り付ける。
第2の保持部45には、雌ねじが設けられている。雌ねじは、第2の電極40のネジ部42の雄ねじと螺合する。これにより、反応槽15内に位置する電極部41の位置を調整することができる。
[1−2−8.絶縁体(第1の絶縁体)]
絶縁体50は、液体2内に気体3を放出するための開口51と内側面55とを有する筒状の第1の絶縁体の一例である。絶縁体50は、第1の電極30の側面36を、空間52を介して囲むように配置されている。絶縁体50は、液体2に接する端面53に開口51が設けられた筒状の絶縁体である。本実施の形態では、絶縁体50は、第1の電極30の電極部31の側面36を囲む長尺の円筒体である。
絶縁体50の内径は、電極部31の外径より大きい。また、電極部31と絶縁体50とが同軸上に配置されている。このため、空間52は、電極部31の全周に亘って円筒状に形成される。なお、空間52は、第1の空間の一例であり、絶縁体50の内側面55によって囲まれる空間である。空間52によって、電極部31は、絶縁体50に接触しない。例えば、絶縁体50の内径が3mmであり、電極部31の外径が0.8mmである。これにより、空間52の幅d1は、1.1mmとなる。
絶縁体50の開口51は、液体2内に気体3を放出するための第1の開口の一例である。空間52に供給された気体3は、開口51を介して反応槽15内の液体2中へ放出される。放出された気体3は、気泡となって液体2中に拡散される。このとき、開口51が、気泡の大きさの上限を決定する機能を有する。
内側面55は、第1の内側面の一例であり、筒状の絶縁体50の内側の面である。内側面55は、部分領域56を含んでいる。部分領域56は、開口51に接する第1の部分領域の一例である。部分領域56は、例えば、開口51から所定距離(例えば、4mm以内)のリング状(円筒側面状)の領域である。
絶縁体50は、例えば、アルミナセラミックから構成される。あるいは、絶縁体50は、マグネシア、ジルコニア、石英又は酸化イットリウムなどから構成されてもよい。
なお、絶縁体50は、円筒体に限らず角筒体でもよい。また、絶縁体50は、第1の保持部35に保持されているが、反応槽15の壁面に固定されていてもよい。また、絶縁体50と第1の保持部35との間隙、又は、絶縁体50と反応槽15の壁面との間隙は、エポキシ接着剤などの接着剤により埋められていてもよい。これにより、間隙から液体2が絶縁体50の内部へ浸透し、放電が不安定化することを抑制することができる。
[1−2−9.気体供給ポンプ]
気体供給ポンプ60は、絶縁体50の空間52内に気体3を供給することで、開口51を介して液体2内へ気体3を放出する気体供給装置の一例である。気体供給ポンプ60は、例えば、第1の電極30のネジ部32に接続されている。気体供給ポンプ60は、例えば、周囲の空気を取り込んで、ネジ部32の貫通孔34を介して空間52に気体3を供給する。なお、気体供給ポンプ60は、空気に限らず、アルゴン、ヘリウム、窒素ガス又は酸素ガスなどを供給してもよい。
本実施の形態では、気体供給ポンプ60が供給する気体3の流量は、0.5L/min以上である。気体供給ポンプ60が気体3を供給した場合、気体3が空間52内に溜まった液体2を開口51から押し出して、電極部31を気体3が覆う。気体3は、開口51を介して反応槽15内の液体2中へ放出される。
[1−2−10.液体供給ポンプ]
液体供給ポンプ70は、配管部20を介して、処理槽10と反応槽15との間で液体2を循環させる液体供給装置の一例である。本実施の形態では、液体供給ポンプ70は、配管部20の途中に配置されている。
[1−2−11.電源]
電源80は、第1の電極30と第2の電極40との間に電圧を印加することで、プラズマ4を発生させる。具体的には、電源80は、第1の電極30と第2の電極40との間にパルス電圧又は交流電圧を印加する。
例えば、印加する電圧は、2kV〜50kV/cm、1Hz〜100kHzの正極性の高電圧パルスである。電圧波形は、例えば、パルス状、正弦半波形及び正弦波形のいずれでもよい。また、第1の電極30と第2の電極40との間に流れる電流値は、例えば、1mA〜3Aである。ここでは、一例として、電源80は、周波数が30kHzで、ピーク電圧が4kVの正のパルス電圧を印加する。
[1−3.動作]
続いて、本実施の形態に係る液体処理装置1の動作について説明する。
本実施の形態に係る液体処理装置1では、液体供給ポンプ70が液体2を循環させながら、気体供給ポンプ60が気体3を供給する。気体供給ポンプ60によって供給された気体3は、ネジ部32の貫通孔34を介して空間52に供給される。気体3が供給される前に空間52を満たしていた液体2は、開口51を介して、反応槽15内の液体2中に放出される。例えば、気体3の流量は、0.8L/minである。気体3は、空間52を満たすことで第1の電極30の電極部31を覆う。
また、電源80は、第1の電極30と第2の電極40との間に電圧を印加する。例えば、周波数が30kHz、ピーク電圧が4kVの正のパルス電圧を印加する。これにより、第1の電極30の端面33から第1の電極30を覆う気体3(気泡)内で放電が発生し、プラズマ4が生成される。プラズマ4によって活性種が生成され、生成された活性種は、液体2に取り込まれる。液体2は循環しているので、活性種が液体2の全体に行き渡らせることができる。
[1−4.効果など]
[1−4−1.第1の電極と絶縁体との間の距離(幅d1)がプラズマに与える影響]
本実施の形態に係る液体処理装置1では、第1の電極30の側面36と絶縁体50の内側面55との距離は、1mm以上であり、例えば3mm以下である。
このように、液体処理装置1では、第1の電極30の側面36と絶縁体50の内側面55との距離(すなわち、空間52の幅d1)が1mm以上であって、離れている。このため、絶縁体50と第1の電極30との間における誘電体バリア放電及び沿面放電が発生しにくくなる。したがって、これらの放電によって生成されるプラズマに、絶縁体50の表面が曝されにくくなるため、シリカが絶縁体50の内側面55(部分領域56)に析出することが抑制される。
図6は、本実施の形態に係る第1の電極30及び絶縁体50を開口51側から観察した結果を示す図である。具体的には、図6は、液体2として、シリカの濃度が72ppmの水500ccを用いて、電源80が第1の電極30と第2の電極40との間に電圧を1時間印加した後、開口51を観察した結果を示している。なお、図6において、第1の電極30の端面33が部分的に撮影されて、破線の円形の中央付近に白い部分が写っている。
本実施の形態に係る液体処理装置1では、図6に示すように、絶縁体50の開口51付近の内側面55には、析出物は見られない。なお、仮に微量の析出物が絶縁体50の内側面55に付着したとしても、幅d1が1mm以上であるため、放電の不安定化は起こりにくい。
また、液体処理装置1では、幅d1が3mm以下であって離れすぎていない。このため、空間52に供給した気体3によって電極部31を覆いやすくなるので、気液界面の形状などが安定しやすくなって、放電が安定する。
以上のように、本実施の形態に係る液体処理装置1は、放電が安定しプラズマ4を安定して生成することができる。
[1−4−2.後退量d2がプラズマに与える影響]
続いて、第1の電極30の側面36と絶縁体50の内側面55との間の距離(幅d1)と、第1の電極30の端面33の開口51からの後退量d2との関係について説明する。
ここでは、液体2として、シリカの濃度が88ppmの水500ccを用いて、電源80が第1の電極30と第2の電極40との間に電圧を1時間印加した後、放電が不安定化するか否かを観察した。なお、気体供給ポンプ60が供給する気体3の流量は1.0L/minとし、絶縁体50の内径は3mmとし、第1の電極30の電極部31の径及び端面33の位置を変えて、幅d1及び後退量d2の組み合わせ毎に観察した。観察した結果を図7に示す。
図7は、本実施の形態に係る第1の電極30と絶縁体50との間の距離(幅d1)と、第1の電極30の端面33の後退量d2とに対するプラズマ4の安定性を示す図である。図7において、横軸が幅d1であり、縦軸が後退量d2である。また、丸印(○)は、シリカの析出量が極微量であり、放電が安定していたことを示している。バツ印(×)は、シリカが析出し、放電が不安定化していたことを示している。なお、目視において放電による光が点滅していた場合に、放電が不安定化していると判断し、放電による光が所定の輝度で継続して確認できた場合に、放電が安定していると判断した。
図7に示すように、幅d1が1mmより小さい場合(具体的には約0.1mm及び0.3mm)、後退量d2に関わらず、放電は安定しなかった。幅d1が1.1mmである場合には、後退量d2が2mm及び3mmのとき、シリカの析出は見られず、放電が安定した。
一方で、図8に示すように、幅d1が1.1mmであっても、後退量d2が4mmのとき、シリカの析出物90xが見られ、放電は安定しなかった。なお、図8は、図7に示す幅d1が1.1mmで、かつ、後退量d2が4mmの場合の第1の電極30及び絶縁体50を開口51側から観察した結果を示す図である。
以上のことから、本実施の形態に係る液体処理装置1では、第1の電極30の端面33は、絶縁体50の開口51から0mm以上3mm以下、後退している。
これにより、第1の電極30の端面33と気液界面との間で放電が発生しやすくなり、第1の電極30と絶縁体50との間での放電の発生を抑制することができる。したがって、シリカなどの析出物90xの発生を抑制することができるので、液体処理装置1は、放電がより安定し、プラズマ4をより安定して生成することができる。
なお、図7に示すように、幅d1が2.6mmで、かつ、後退量d2が3mmの場合、シリカの析出は見られず、放電が安定した。
第1の電極30の端面33が開口51から突出している場合も、プラズマ4を安定して生成することができる。これは、端面33と気液界面との間で大部分の放電が発生し、電極部31と絶縁体50の内側面55との間での放電が抑制されるためである。
ただし、端面33の突出量d3が3mm未満である場合、端面33を含む電極部31の全体を気体3が覆いやすくなり、放電がより安定する。そのため、突出量d3は、0mm以上3mm以下である場合に、放電が安定し、プラズマ4を安定して生成することができる。なお、例えば、気体3の供給量を多くして電極部31を気体3が安定して覆うことができれば、突出量d3は3mmより大きくてもよい。
[1−4−3.気体の流量がプラズマに与える影響]
次に、後退量d2と、気体供給ポンプ60が供給する気体3の流量(気流量)との関係について説明する。
ここでは、図7及び図8で示した場合と同じ条件で、後退量d2及び気流量を変えて、後退量d2及び気流量の組み合わせ毎に放電を観察した。観察した結果を図9に示す。
図9は、本実施の形態に係る第1の電極30の端面33の後退量d2と、気流量とに対するプラズマ4の安定性を示す図である。図9において、横軸が後退量d2であり、縦軸が気流量である。また、丸印(○)及びバツ印(×)が表す意味は、図7と同様である。なお、ここでは、電極部31と絶縁体50の内側面55(部分領域56)との最短距離(幅d1)は、1.1mmである。
図9に示すように、気流量が0.5L/minである場合、後退量d2が1mm〜3mmの範囲では、シリカの析出が見られず、放電が安定した。後退量d2が4mmの場合、気流量が0.5L/minであるときは、シリカの析出が見られて、放電が不安定化した。一方で、後退量d2が4mmの場合であっても、気流量が1.0L/minであるときには、シリカの析出は見られず、放電が安定化した。
図10A及び図10Bは、図9に示す後退量d2が4mmの場合の第1の電極30及び絶縁体50を側方から観察した結果を示す図である。具体的には、図10Aは、気流量が0.3L/minの場合を示し、図10Bは、気流量が1.0L/minの場合を示している。
なお、図10A及び図10Bでは、側方からの観察を容易にするため、絶縁体50の材料として透明な石英を用いた。また、第1の電極30と空間52との位置関係を分かりやすくするために、第1の電極30及び絶縁体50の概略形状を白い実線で示している。
図10Aと図10Bとを比較して分かるように、気流量が多い程、プラズマ4は、気体3の流れに沿って流れるので、絶縁体50に向かって(すなわち、横方向に)拡がる量が少なくなる。このように、気体3の流量を調整することで、プラズマ4の発生領域を制御することができる。具体的には、気体3の流量を調整することで、プラズマ4の絶縁体50への暴露量を制御することができる。
以上のことから、本実施の形態に係る液体処理装置1は、気体供給ポンプ60が供給する気体3の流量は、0.5L/min以上である。
これにより、気体3の流量が多い程、絶縁体50の方向へのプラズマ4の拡がりを抑制することができるので、絶縁体50の表面がプラズマ4に曝されにくくなる。したがって、シリカなどの析出物90xの発生を抑制することができるので、液体処理装置1は、放電がより安定し、プラズマ4をより安定して生成することができる。
なお、気体3の流量が少ない程、プラズマ4の拡がりが大きくなるが、電極部31の端面33が開口51より突出している場合、プラズマ4が拡がったとしても、プラズマ4は絶縁体50の内側面55にはほとんど接触しない。このため、例えば、端面33が開口51より突出している場合、又は、後退量d2が少ない場合は、気体3の流量は0.5L/minより小さくてもよい。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。なお、以下の実施の形態2では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明を行い、実施の形態1と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する場合がある。
[2−1.構成]
図11は、本実施の形態に係る液体処理装置101の構成を示す図である。図11に示すように、液体処理装置101は、実施の形態1に係る液体処理装置1と比較して、絶縁体50の代わりに、第1の絶縁体150及び第2の絶縁体155を備える点が相違する。また、第1の電極30が反応槽15の下面ではなく、上面に取り付けられている点が相違するが、これに限らない。第1の電極30は、反応槽15の下面又は側面に取り付けられていてもよい。実施の形態1の第1の電極30も反応槽15の上面又は側面に取り付けられていてもよい。
[2−1−1.第1の絶縁体]
第1の絶縁体150は、実施の形態1に係る絶縁体50と略同じで、後端側に第2の絶縁体155が接続されている点が相違する。具体的には、第1の絶縁体150は、第1の電極30の電極部31の全体ではなく、一部のみを囲む筒状の絶縁体である。例えば、第1の絶縁体150は、開口151を有する円筒体であり、空間152を介して、第1の電極30の電極部31の先端(前方端)側の側面36を囲んでいる。
第1の絶縁体150は、電極部31と同軸上に配置されている。第1の絶縁体150の内側面157と第1の電極30(具体的には、電極部31)の側面36との間の最短距離である第1の距離D1は、実施の形態1に係る空間52の幅d1と同じである。第1の距離D1は、1mm以上である。第1の距離D1は、例えば、1mm以上3mm以下でもよい。
第1の絶縁体150は、例えば、反応槽15の壁面に固定されている。第1の絶縁体150と反応槽15の壁面との間隙は、エポキシ接着剤などの接着剤により埋められていてもよい。あるいは、第1の絶縁体150は、第2の絶縁体155に固定されて支持されていてもよい。本実施の形態では、第1の絶縁体150の後端側が第2の絶縁体155の先端側に連結されている。
第1の絶縁体150の材料、大きさ及び機能などは、例えば、実施の形態1に係る絶縁体50と同じである。
[2−1−2.第2の絶縁体]
第2の絶縁体155は、第1の電極30の側面36を、空間156を介して囲むように配置される筒状の絶縁体である。第2の絶縁体155は、第1の絶縁体150の先端側の端面とは反対側に、第2の絶縁体155の内部と第1の絶縁体150の内部が連通するように接続されている。具体的には、第1の絶縁体150の空間152と、第2の絶縁体155の空間156とが連通している。
第2の絶縁体155は、第1の電極30の電極部31の後端側の側面36を囲む筒体である。なお、電極部31の後端側は、気体供給ポンプ60が供給する気体が流れる方向における上流側である。また、電極部31の先端側は、気体供給ポンプ60が供給する気体が流れる方向における下流側である。つまり、図11では、下方が先端側であり、上方が後端側である。第2の絶縁体155は、第1の絶縁体150が囲む電極部31の部分よりも後端側の部分を囲んでいる。第2の絶縁体155は、電極部31の後端側の端面、またはネジ部32を囲んでいなくてもよい。
図11に示すように、第2の絶縁体155の内側面158は、第1の部分領域159aと、第1の部分領域159aとは異なる第2の部分領域159bとを含んでいる。第1の部分領域159a及び第2の部分領域159bはそれぞれ、第1の電極30を囲んでいる。ネジ部32近傍の第2の部分領域159bにおいて、第1の電極30の側面36との距離が狭くなっており、他の第1の部分領域159aにおいて、第1の電極30の側面36との距離が広くなっている。第1の電極30の側面36と第2の絶縁体155の内側面158における第1の部分領域159aとの間の最短距離である第2の距離D2は、第1の距離D1よりも大きい。第2の距離D2は、第1の電極30と第2の電極40との間に印加される電圧に応じて決定される距離である。すなわち、第2の距離D2は、電源80が印加する電圧に応じて決定される距離である。詳細については、後で説明する。
第2の絶縁体155は、例えば、円筒体であるが、これに限らない。例えば、第2の絶縁体155は、角筒体でもよく、また、第1の電極30と第2の絶縁体155の内側面158との間の距離が変化する形状(例えば漏斗状)であってもよい。第2の絶縁体155が漏斗状である場合も、第1の電極30の側面36を囲み、第1の電極30の側面36との最短距離が第1の距離D1よりも大きい内側面部分を第2の絶縁体155が有する。
図11の例では、第2の絶縁体155は、先端側及び後端側の両方が部分的に閉じられた円筒体である。第2の絶縁体155の先端側には、第1の絶縁体150の外径に略一致する径を有する円形状の開口が設けられ、当該開口に第1の絶縁体150が連結されている。第2の絶縁体155の後端側には、ネジ部32の外径に略一致する径を有する円形状の開口が設けられ、当該開口にネジ部32が固定されている。ここで、後端側の開口には、ネジ部32の雄ねじに螺合する雌ねじが設けられていてもよい。
第2の絶縁体155は、例えば、扁平な筒体であるが、これに限らない。第2の絶縁体155は、電極部31の軸方向において長尺な筒体でもよい。また、第2の絶縁体155は、例えば、内部が空洞の直方体又は立方体などの多角体でもよい。
第2の絶縁体155を構成する部材は、特定の絶縁体に限定されず、例えば、PMMA(Polymethyl methacrylate)などのアクリル樹脂、PPS(Polyphenylenesulfide)、PEEK(Polyetheretherketone)、アルミナセラミック、石英、マグネシア、ジルコニアなどで構成されていてもよい。
なお、第2の絶縁体155は、第1の絶縁体150の材料とは異なる材料で構成されていてもよい。あるいは、第1の絶縁体150と第2の絶縁体155とは、同一の材料で一体に構成されていてもよい。
[2−2.効果など]
以下では、第2の絶縁体155を第1の絶縁体150の後端側に設けたことによる本実施の形態の効果について、本実施の形態に至る経緯も含めて説明する。
[2−2−1.本実施の形態に至る経緯と本実施の形態の主な特徴]
本開示における第1の電極30のように、空間を介して、開口部を有する筒状の絶縁体に囲まれた電極に対してプラズマを生成させるべく高い電圧を印加すると、絶縁体の開口部近傍の被処理液の気液界面には、そこに生じている電界に応じて、マクスウェル(Maxwell)応力が掛かる。これによって、長時間(例えば、50分以上)連続で放電を行った場合に、絶縁体の開口部から内側面を伝って被処理液が絶縁体の内側へ浸入し、放電が不安定化する可能性がある。
これに対して、本実施の形態に係る液体処理装置101では、第1の電極30の側面36の先端側を筒状の第1の絶縁体150で囲うとともに、第1の電極30の根元側を筒状の第2の絶縁体155で囲った。また、第1の絶縁体150の後端と第2の絶縁体155の先端とを接続した。
このとき、第1の電極30の側面36と第2の絶縁体155の内側面部分(第1の部分領域159a)との間の第2の距離D2を、第1の電極30の側面36と第1の絶縁体150の内側面157との間の第1の距離D1よりも大きく設定する。これによって、第1の絶縁体150の内側面157に生じる電界よりも、第2の絶縁体155の内側面158に生じる電界の方が小さくなり、第2の絶縁体155の内側面158に掛かるマクスウェル応力も小さくなる。そのため、第1の絶縁体150の開口151から浸入した液体2は、第2の絶縁体155の内側へ浸入しづらくなり、液体2が第1の電極30の根元へ到達することを抑制することができる。
このとき、第2の距離D2は、例えば、第1の電極30と第2の電極40との間に印加される電圧の値に応じて決定される距離である。後述する実験結果及びシミュレーション結果から、例えば、電圧の値が5kV以下である場合には、第2の距離D2を2.6mm以上に設定してもよい。また、電圧の値が5kV以上である場合には、第2の距離D2を5.0mm以上に設定してもよい。これにより、第2の絶縁体155の内側面158では、電界が十分に緩和される。これにより、第2の絶縁体155の内側面158への液体2の浸入に対して高い抑制効果が期待できる。
同様に、実施の形態1の液体処理装置1において、第1の距離D1を、第1の電極30と第2の電極40との間に印加される電圧の値に応じて決定される距離にしてもよい。電圧の値が5kV以下である場合には、第1の距離D1を2.6mm以上に設定してもよい。また、電圧の値が5kV以上である場合には、第1の距離D1を5.0mm以上に設定してもよい。
また、実施の形態1または2において、第1の距離D1または第2の距離D2を10.0mm以下にしてもよい。これにより、より適切に気泡を生成することができる。
[2−2−2.実験結果]
本実施の形態において、ピーク電圧が5kVの正極性のパルス電圧を第1の電極30と第2の電極40との間に印加し、第1の電極30と液体2との間にプラズマを発生させた場合に、液体2が第1の絶縁体150の内側及び第2の絶縁体155の内側へ浸入するか否かを観察した。このとき、液体2としては、水道水を用いた。
また、第1の距離D1を1.1mmとし、第2の距離D2を2.6mmとして2時間連続で放電を行った。当該実験の結果を図12及び図13に示す。
図12は、本実施の形態に係る液体処理装置101の第2の絶縁体155を側方から観察した結果を示す図である。図13は、本実施の形態に係る液体処理装置101の第1の絶縁体150を側方から観察した結果を示す図である。ここで、第1の絶縁体150及び第2の絶縁体155はそれぞれ、内部の様子を視認できるように、透明な石英を用いて形成されている。
図12の中央の四角の領域(白色の一点鎖線)は、第2の絶縁体155で囲まれている領域、すなわち、空間156に相当する領域である。空間156の略中央に上下方向に延びる黒い部分が第1の電極30の電極部31を示している。図12の下部において電極部31(図には明確に表れていない)を囲んでいる略矩形の領域(白色の二点鎖線)は、第1の絶縁体150で囲まれている領域、すなわち、空間152に相当する領域である。また、図12の上部において電極部31を囲んでいる部分は、ネジ部32である。
図12において、空間156の電極部31がはっきりと視認できることから分かるように、空間156には、液体2は浸入していない。一方では、第1の絶縁体150で囲まれている電極部31の先端側をはっきりと視認することができず、液体2が浸入していることが分かる。
図13の中央の上下方向に延びる矩形の領域(円筒状の部分、白色の一点鎖線)が第1の絶縁体150を示している。第1の絶縁体150の中央に沿って上下方向に延びる黒い部分は、第1の電極30の電極部31である。電極部31の下端から下方に延びる白い領域は、放電により発生するプラズマ4である。なお、図13の中央の左右方向に延びる黒いリング状の部分は、第1の絶縁体150を支持する別の部材である。
図12と同様に、第1の絶縁体150内で電極部31がはっきりと視認することが難しいことから、第1の絶縁体150の内部(空間152、白色の二点鎖線)に液体2が侵入していることが分かる。また、図13からは確認が難しいが、第1の絶縁体150の内側面157に沿って水滴が付着していることが確認された。
以上のように、第2の距離D2を第1の距離D1より大きくすることで、第1の絶縁体150内に浸入した液体2が、第2の絶縁体155内には浸入していないことが分かる。すなわち、第2の絶縁体155を設けることで、電極部31の根元への液体2の浸入を抑制することができたことが確認された。
また、第1の距離D1を2.6mmとして、第2の距離D2を4.6mm、7.1mm、9.6mmの3つの場合の各々について、2時間連続での放電実験を行なった。これらの場合、第1の絶縁体150および第2の絶縁体155の内側への液体2の浸入は見られなかった。この結果から、第1の距離D1および第2の距離D2が2.6mm以上の環境では、第1の絶縁体150および第2の絶縁体155の内側面158において十分に電界が緩和されることが分かる。
[2−2−3.シミュレーション結果]
ここで、印加電圧と第2の距離D2との関係に関するシミュレーション結果について説明する。具体的には、第1の電極30と第2の電極40との間に5kVの電圧を印加し、第2の距離D2が2.6mmであるときに、第2の絶縁体155の内側面158に生じる電界をシミュレーションにより算出すると、1.6×106V/mであった。電界の値が小さい程、マクスウェル応力の値も小さくなるため、少なくとも、1.6×106V/m以下の電界が生じる環境では、第2の絶縁体155の内側へ液体2の浸入は観測されないと考えられる。
図14は、本実施の形態に係る第1の電極30と第2の絶縁体155との間の第2の距離D2と、第2の絶縁体155の内側面158に生じる電界値との関係をシミュレートした結果を示す図である。具体的には、図14は、第1の電極30と第2の電極40との間への印加電圧が2.5kV、5kV、10kVの3つの場合の各々の静電界シミュレーション結果を示している。また、各プロットは、第2の距離D2が1.1mm、2.6mm、4.9mm、7.1mm、9.6mmの場合を示している。
図14に示すシミュレーション結果は、第2の絶縁体155の内側面158に生じる電界の絶対値が、第2の距離D2に応じてどのように変化するかを表わしている。また、図14の破線は、前述の実験結果に基づき、液体2が第2の絶縁体155の内側面158に浸入しないと考えられる電界の閾値(1.6×106V/m)を表わしている。破線より下側であれば、第2の絶縁体155の内部への液体2の浸入を抑制することができる。
図14に示すシミュレーション結果から、第2の距離D2を5mm以上に設定することで、印加電圧が10kV及びこれ以下の環境においても、第2の絶縁体155の内側面158に生じる電界の大きさを1.6×106V/m以下にすることができる。すなわち、第2の絶縁体155の内部への液体2の浸入を抑制することができる。
また、印加電圧が5kV以下で大きくない場合には、第2の距離D2を2.6mm以上に設定することで、第2の絶縁体155の内側面158に生じる電界の大きさを1.6×106V/m以下にすることができる。
このように、本実施の形態によれば、第2の距離D2を第1の電極30と第2の電極40との間に印加される電圧の値に応じて設定することで、第2の絶縁体155の内側面158に生じる電界を十分緩和できる。その結果、液体2が第2の絶縁体155の内側へ浸入することを抑制することができるため、安定なプラズマ生成が可能である。
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。なお、以下の実施の形態3では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明を行い、実施の形態1と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する場合がある。
[3−1.構成]
図15は、本実施の形態に係る液体処理装置201の構成を示す図である。図15に示すように、液体処理装置201は、実施の形態1に係る液体処理装置1と比較して、第1の電極30及び第1の保持部35の代わりに、第1の電極230及び第1の保持部235を備える点が相違する。
図16は、本実施の形態に係る第1の電極230及び絶縁体50を示す断面図である。図17は、本実施の形態に係る第1の電極230及び絶縁体50を先端側から見たときの正面図である。なお、図17では、第1の保持部235を示していない。また、図17では、各部材の概略形状を分かりやすくするため、図16で各部材に付した網掛けと同じ網掛けを各部材に付している。
[3−1−1.第1の電極]
第1の電極230は、図16及び図17に示すように、電極部231と、ネジ部232とを備える。第1の電極230は、プラズマ4を生成するための一対の電極の一方である。第1の電極230は、反応電極として用いられ、周囲にプラズマ4が生成される。
電極部231は、第1の電極230の先端側に設けられた長尺の円柱状の電極部である。電極部231の軸方向の長さは、例えば、絶縁体50の軸方向の長さと同じ、又は、絶縁体50の軸方向の長さより長い。電極部231は、先端側の端面233が絶縁体50の開口51より後退するように配置された場合に、後端が絶縁体50の後端側の開口54より突出する。なお、開口54は、開口51の反対側の第2の開口の一例である。例えば、電極部231の長さは、15mm以上30mm以下であるが、これに限らない。
ネジ部232は、電極部231の後端側に設けられた、電極部231を支持する支持部の一例である。ネジ部232は、電極部231より太い円柱状の部分である。ネジ部232には、図17に示すように、気体供給孔234が設けられている。
気体供給孔234は、気体供給ポンプ60が供給する気体3を通過させる孔である。気体供給孔234は、例えば、ネジ部232を軸方向に貫通する貫通孔である。本実施の形態では、気体供給孔234の開口幅と絶縁体50の内径とは、略同一である。
具体的には、気体供給孔234は、図17に示すように、正面視形状がクロス状(十字状)である。なお、クロス状の気体供給孔234の中央に電極部231が圧入されている。これにより、ネジ部232は、電極部231を支持する。気体供給孔234は、正面視において、電極部231を中心とする放射状に形成されている。具体的には、気体供給孔234は、2つの貫通孔234a及び234bが形成されている。2つの貫通孔234a及び234bの各々は、ネジ部232の径方向に長尺の矩形開口を有し、ネジ部232の正面視における中央で直交している。貫通孔234a及び234bの各々の矩形開口の長さが、絶縁体50の内径に一致している。矩形開口の長さは、例えば、ネジ部232の径方向に沿った長さであり、気体供給孔234の開口幅である。矩形開口の幅は、例えば、電極部231の径より短い。
なお、気体供給孔234の形状は、図示した例に限らない。例えば、気体供給孔234は、1つのみの貫通孔234a及び234bのいずれか一方のみでもよく、3つ以上の貫通孔の組み合わせでもよい。
[3−1−2.第1の保持部]
第1の保持部235は、第1の電極230を保持するための部材である。本実施の形態では、第1の保持部235は、第1の電極230と絶縁体50とを保持し、反応槽15の所定の位置に取り付ける。
第1の保持部235は、図16に示すように、ネジ部232を保持する。具体的には、第1の保持部235の内側面には雌ねじ(図示せず)が設けられ、ネジ部232の外側面に設けられた雄ねじ(図示せず)に螺合する。
第1の保持部235は、絶縁体50の内径と略同じ内径を有する筒体である。具体的には、図16に示すように、第1の保持部235は、気体供給孔234と、絶縁体50の空間52とに連通する空間236を有する。空間236の内径と空間52の内径とは略一致する。空間236は、気体供給ポンプ60から供給された気体3が流れる流路の一部である。空間236は、気体供給孔234から排出された気体3の流れを安定化させて絶縁体50の空間52に導入する。空間236の軸方向の長さは、特に限定されないが、長い程、気体3の流れを安定化させることができる。
[3−2.効果など]
以下では、気体供給孔234の開口幅を絶縁体50の内径と略一致させたことによる本実施の形態の効果について、本実施の形態に至る経緯も含めて説明する。
[3−2−1.本実施の形態に至る経緯]
本開示のように、電極部31の側面36と絶縁体50の内側面55との距離(空間52の幅d1)を大きくした場合、すなわち、絶縁体50の内径を大きくした場合、絶縁体50の内側へ気流を導入する気体供給孔の大きさが絶縁体50の内径より小さくなることがある。このとき、気体供給孔から供給される気体3の流路幅が、気体供給孔と絶縁体50との接続部分において非連続的に変化する。気体3の流路幅の非連続的な変化に起因して、絶縁体50の内側面55付近で気体3の旋回流が生じ、旋回流に巻き込まれた液体2が絶縁体50の内側面55を伝って絶縁体50の内部へ浸入する可能性がある。
例えば、図18は、本実施の形態の比較例に係る絶縁体50の近傍の気液界面の位置をシミュレート(数値計算)した結果を示す図である。図19は、図18と同じシミュレーションにおける気体3の流速分布を示す図である。なお、図18及び図19では、説明を分かりやすくするため、ネジ部232x及び絶縁体50が厚みを持たないものとして図示している。後述する図20及び図21についても同様である。
ここでは、気体供給孔234xの開口幅が0.8mm、絶縁体50の内径が3.0mm、気体供給孔234xから供給される気体3の流量は1.5L/min、液体2(水道水)が反応槽内を循環する流量が1.0[L/min]であるとして数値計算を行なっている。
図18及び図19に示すように、絶縁体50の内側面55付近では、旋回流が生じていることが分かる。さらに、この旋回流の発生に応じて、気液界面が絶縁体50の開口51から内側へ入り込んでいることが分かる。
[3−2−2.本実施の形態に係る主な特徴]
これに対し、本実施の形態に係る液体処理装置201では、図16及び図17に示したように、気体供給孔234の開口幅と絶縁体50の内径とが略同一であることで、絶縁体50の内部に供給する気体3の流速分布が安定し、絶縁体50の開口51で形成する気泡の形状が安定する。
図20は、本実施の形態に係る絶縁体50の近傍の気液界面の位置をシミュレート(数値計算)した結果を示す図である。図21は、図20と同じシミュレーションにおける気体3の流速分布を示す図である。
このとき、気体供給孔234の開口幅が3.0mm、絶縁体50の内径が3.0mm、気体供給孔234から供給される気体3の流量は1.5L/min、液体2が反応槽15内を循環する流量は1.0L/minであるとして数値計算を行なっている。
図20及び図21に示すように、絶縁体50の内側に生じる気体3の流速分布は、均一な分布となっていることが分かる。その結果、図20に示すように、気液界面は、絶縁体50の開口51の近傍に位置しており、絶縁体50の内側へほとんど浸入していないことが分かる。
以上のように、本実施の形態に係る液体処理装置201では、絶縁体50の内部に均一な気体3の流速分布が生じるので、液体2が絶縁体50の内部に引き込まれない。このため、安定なプラズマ生成が可能である。
なお、本実施の形態では、絶縁体50の内部にネジ部232が挿入されていてもよい。すなわち、空間236が設けられずに、気体供給孔234を通過した気体3は、空間236を介さずに直接、絶縁体50の空間52に導入される。
[3−3.変形例]
続いて、絶縁体50の内部での旋回流の発生を抑制することができる変形例について、図22を用いて説明する。図22は、本変形例に係る液体処理装置の第1の電極230及び絶縁体50の近傍を示す断面図である。
図22に示すように、本変形例に係る液体処理装置は、第1の電極230のネジ部232の代わりに、有底筒体部332及び導入口335を備える。導入口335は、例えば、気体供給ポンプ60と有底筒体部332とを接続する管の開口である。
有底筒体部332は、第3の開口の一例である開口334と、開口334の反対側の閉じられた端部とを有する筒体である。有底筒体部332は、絶縁体50と略同一の開口幅を有する有底筒体状の部材である。例えば、有底筒体部332は、空間333と、円形の開口334とを有する有底円筒体である。有底筒体部332は、気体供給ポンプ60が供給する気体3の進行方向を空間333内で変更し、絶縁体50の内部に安定供給するための流路変更部として機能する。
有底筒体部332は、絶縁体50の後端側に設けられている。具体的には、有底筒体部332は、絶縁体50と同軸上に位置するように、絶縁体50の後端側に接続されている。有底筒体部332の空間333と、絶縁体50の空間52とは連通している。空間333及び空間52は、気体3の流路を構成する。
例えば、図22に示すように、絶縁体50の後端側の開口54に、有底筒体部332の開口334が接続されている。開口54と開口334とは、同じ形状及び同じ大きさを有する。すなわち、有底筒体部332と絶縁体50とは、流路幅が略均一になるように接続されている。
有底筒体部332を構成する材料は、例えば、絶縁体である。具体的には、有底筒体部332は、例えば、PMMA(Polymethyl methacrylate)などのアクリル樹脂、PPS(Polyphenylenesulfide)、PEEK(Polyetheretherketone)、アルミナセラミック、石英、マグネシア、ジルコニアなどで構成されていてもよい。
導入口335は、気体供給ポンプ60が供給する気体3を絶縁体50の内部に導入するための開口である。導入口335は、絶縁体50の軸方向には直交していない。具体的には、導入口335は、有底筒体部332の側壁に設けられ、絶縁体50の軸方向に略平行である。言い換えると、導入口335を通過するときの気体3の流入方向(すなわち、導入口335に直交する方向)は、軸方向に略直交する。なお、導入口335は、絶縁体50の軸方向に対して傾斜していてもよい。つまり、導入口335を通過するときの気体3の流入方向は、絶縁体50の軸方向に交差していてもよい。
導入口335を介して有底筒体部332内に供給された気体3は、有底筒体部332の空間333内で、進行方向が変更されて、絶縁体50に向かって進行する。有底筒体部332の開口334と絶縁体50の後端側の開口54とが同じ形状及び同じ大きさであるので、気体3は、流路幅が非連続的に変化することなく、絶縁体50の内部(空間52)を軸方向に沿って進行し、開口51から液体2内に放出される。
このように、絶縁体50の内部で気体3の流路幅の非連続的な変化がないので、絶縁体50の内部に均一な気体3の流速分布を発生させることができる。したがって、絶縁体50の内部に旋回流の発生が抑制されるので、液体2の浸入を抑制することができる。これにより、本変形例に係る液体処理装置によれば、より安定なプラズマの生成が可能になる。
なお、本変形例では、導入口335が、絶縁体50の後端側に設けられた有底筒体部332の側壁に設けられている例について示したが、これに限らない。導入口335は、絶縁体50の側壁を貫通するように設けられていてもよい。すなわち、絶縁体50は、後端側の開口54が塞がれた有底筒体形状を有し、開口54の近傍の側壁に導入口335が設けられていてもよい。これにより、部品点数を削減し、液体処理装置の軽量化及び低コスト化を実現することができる。
また、本変形例では、絶縁体50と有底筒体部332とが直接接続されているが、図16に示す構成と同様に、絶縁体50と有底筒体部332との間に、空間236を有する第1の保持部235が設けられていてもよい。この場合、空間333、空間236及び空間52は、互いに径が略同じであり、気体3の流路幅が略一定にすることができる。
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係る液体処理装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、ネジ部32を回転させることで、電極部31の端面33の位置が可変である場合について説明したが、これに限らない。電極部31と絶縁体50との位置関係は固定されていてもよい。具体的には、第1の保持部35には雌ねじが設けられていなくてもよく、ネジ部32には雄ねじが設けられていなくてもよい。
また、例えば、第1の電極30は、電極部31とネジ部32とを備える例について示したが、第1の電極30は、1本の棒状電極(円柱体)でもよい。あるいは、第1の電極30は、角柱状又は平板状の電極でもよい。第2の電極40についても同様である。
また、液体処理装置1は、第1の保持部35及び第2の保持部45の少なくとも一方を備えずに、第1の電極30及び第2の電極40の少なくとも一方を反応槽15に直接固定してもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、処理槽10と反応槽15とを配管部20を介して接続し、液体供給ポンプ70によって液体2を循環させたが、これに限らない。例えば、液体処理装置1は、処理槽10及び配管部20を備えずに、流れていない液体2(例えば静水)中でプラズマ4を発生させてもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、液体2としてシリカを含有する水道水を用いる例について示したが、これに限らない。液体2は、純水でもよく、あるいは、例えばカルシウムなどのミネラル成分を含む液体でもよい。
また、例えば、上記の実施の形態2では、第1の電極30を囲む絶縁体が第1の絶縁体150と第2の絶縁体155とで構成される例について示したが、これに限らない。第1の電極30を囲む絶縁体は、第1の絶縁体150のみで構成されてもよい(実施の形態1に相当する)。
あるいは、第1の電極30を囲む絶縁体は、第2の絶縁体155のみで構成されてもよい。この場合、第2の絶縁体155が、被処理液内に気体を放出するための第1の開口と第1の内側面とを有する筒状の第1の絶縁体に相当する。
また、例えば、第1の電極30を囲む絶縁体は、第1の絶縁体150及び第2の絶縁体155が一体に構成された1つの絶縁体であってもよい。1つの絶縁体において、その内側面と第1の電極30との最短距離が異なる領域が設けられていてもよい。すなわち、1つの絶縁体の内側面には、第1の電極30の側面との間の最短距離が第1の距離となる第1の部分領域と、第1の電極30の側面との間の最短距離が第2の距離となる第2の部分領域とが含まれていてもよい。
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。