以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、本実施の形態の放射線画像処理装置を備えた放射線画像撮影システム全体の概略構成について説明する。図1には、本実施の形態の放射線画像撮影システムの一例の全体構成の概略である概略構成図を示す。本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、電子カセッテ20自身が、放射線の照射開始(撮影開始)を検出する機能を有している。
本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、コンソール16を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System:放射線情報システム)から入力された指示(撮影メニュー)に基づいて、医師や放射線技師等の操作により放射線画像の撮影を行う機能を有する。
また、本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、撮影された放射線画像をコンソール16のディスプレイ50や放射線画像読影装置18に表示させることにより、医師や放射線技師等に放射線画像を読影させる機能を有する。
本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、放射線発生装置12、放射線画像処理装置14、コンソール16、記憶部17、放射線画像読影装置18、および電子カセッテ20を備えている。
放射線発生装置12は、放射線照射制御ユニット22を備えている。放射線照射制御ユニット22は、放射線画像処理装置14の放射線制御部62の制御に基づいて放射線源22Aから放射線Xを撮影台32上の被検者30の撮影対象部位に照射させる機能を有している。
被検者30を透過した放射線Xは、撮影台32内部の保持部34に保持された電子カセッテ20に照射される。電子カセッテ20は、被検者30を透過した放射線Xの線量に応じた電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成して出力する機能を有する。本実施の形態の電子カセッテ20は、放射線検出器26を備えている。
また、放射線検出器26の被写体側には、被検者30において散乱した放射線の放射線検出器26への入射を防止するためのグリッドGmおよびグリッドGsが、出し入れ自在に設けられている。本実施形態においては、グリッドGmは揺動撮影用グリッドであり、グリッドGsは静止撮影用グリッドである。
本実施の形態では、電子カセッテ20により出力された放射線画像を示す画像情報は、放射線画像処理装置14を介してコンソール16に入力される。本実施の形態のコンソール16は、無線通信(LAN:Local Area Network)等を介して外部システム(RIS)等から取得した撮影メニューや各種情報等を用いて、放射線発生装置12および電子カセッテ20の制御を行う機能を有している。また、本実施の形態のコンソール16は、放射線画像処理装置14との間で放射線画像の画像情報を含む各種情報の送受信を行う機能に加えて、電子カセッテ20との間で各種情報の送受信を行う機能を有している。
本実施の形態のコンソール16は、サーバー・コンピュータとして構成されており、制御部40、ディスプレイドライバ51、ディスプレイ50、操作入力検出部52、操作パネル54、I/O部56、およびI/F部58を備えて構成されている。
制御部40は、コンソール16全体の動作を制御する機能を有しており、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびHDD(Hard Disk Drive:ハードディスク・ドライブ)を備えている。CPUは、コンソール16全体の動作を制御する機能を有しており、ROMには、CPUで使用される制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する機能を有しており、HDDは、各種データを記憶して保持する機能を有している。
ディスプレイドライバ51は、ディスプレイ50への各種情報の表示を制御する機能を有している。本実施の形態のディスプレイ50は、撮影メニューや撮影された放射線画像等を表示する機能を有している。操作入力検出部52は、操作パネル54に対する操作状態を検出する機能を有している。操作パネル54は、放射線画像の撮影に関する操作指示を、医師や放射線技師等が入力するためのものである。本実施の形態では操作パネル54は、例えば、タッチパネル、タッチペン、複数のキー、およびマウス等を含んでいる。なお、操作パネル54をタッチパネルとして構成する場合は、ディスプレイ50にタッチパネルの機能を持たせてもよい。
また、I/O部56およびI/F部58は、無線通信により、放射線画像処理装置14および放射線発生装置12との間で各種情報の送受信を行う機能を有している。さらに、I/O部56およびI/F部58は、無線通信により、電子カセッテ20との間で画像情報等の各種情報の送受信を行う機能を有している。
制御部40、ディスプレイドライバ51、操作入力検出部52、およびI/O部56は、システムバスやコントロールバス等のバス59を介して相互に情報等の授受が可能に接続されている。従って、制御部40は、ディスプレイドライバ51を介したディスプレイ50への各種情報の表示の制御、およびI/F部58を介した放射線発生装置12および電子カセッテ20との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。
本実施の形態の放射線画像処理装置14は、コンソール16からの指示に基づいて、放射線発生装置12および電子カセッテ20を制御する機能を有し、かつ電子カセッテ20から受信した放射線画像の記憶部17への記憶、およびコンソール16のディスプレイ50や放射線画像読影装置18への表示を制御する機能を有する。
本実施の形態の放射線画像処理装置14は、システム制御部60、放射線制御部62、パネル制御部64、およびI/F部68を備えている。
システム制御部60は、放射線画像処理装置14全体を制御する機能を有し、かつ放射線画像撮影システム10を制御する機能を有している。システム制御部60は、CPU、ROM、RAM、およびHDDを備えている。CPUは、放射線画像処理装置14全体および放射線画像撮影システム10の動作を制御する機能を有している。ROMには、CPUで使用される制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する機能を有している。HDDは、各種データを記憶して保持する機能を有している。放射線制御部62は、コンソール16の指示に基づいて、放射線発生装置12の放射線照射制御ユニット22を制御する機能を有している。パネル制御部64は、電子カセッテ20からの情報を、無線または有線により受け付ける機能を有している。
システム制御部60、放射線制御部62、およびパネル制御部64は、システムバスやコントロールバス等のバス69を介して相互に情報等の授受が可能に接続されている。
記憶部17は、撮影された放射線画像およびその放射線画像に関係する情報を記憶する機能を有する。記憶部17としては、例えば、HDD等が挙げられる。
また、放射線画像読影装置18は、撮影された放射線画像を読影者が読影するための機能を有する装置であり、特に限定されないが、いわゆる、読影ビューワ、コンソール、およびタブレット端末等が挙げられる。本実施の形態の放射線画像読影装置18は、パーソナル・コンピュータとして構成されており、コンソール16や放射線画像処理装置14と同様に、CPU、ROM、RAM、HDD、ディスプレイドライバ、ディスプレイ23、操作入力検出部、操作パネル24、I/O部、およびI/F部を備えて構成されている。なお、図1では、記載が煩雑になるのを避けるため、これらの構成のうち、ディスプレイ23および操作パネル24のみを示し、その他の記載を省略している。
次に、電子カセッテ20の概略構成について説明する。本実施の形態では、X線等の放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器26に本発明を適用した場合について説明する。本実施の形態では、電子カセッテ20は、間接変換方式の放射線検出器26を備えて構成されている。なお、図2では、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
放射線検出器26には、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのスイッチング素子であるTFTスイッチ74と、を含んで構成される画素100が複数、マトリクス状に配置されている。本実施の形態では、シンチレータによって変換された光が照射されることにより、センサ部103において電荷が発生する。
画素100は、一方向(図2のゲート配線方向)およびそのゲート配線方向に対する交差方向(図2の信号配線方向)にマトリクス状に複数配置されている。図2では、画素100の配列を簡略化して示している。例えば、画素100はゲート配線方向および信号配線方向に1024個×1024個配置されている。
本実施の形態では、複数の画素100のうち、放射線画像撮影用の画素100Aと放射線検知用の画素100Bが予め定められている。図2では、放射線検知用の画素100Bを破線で囲んでいる。放射線画像撮影用の画素100Aは、放射線を検出して放射線が示す画像を生成するために用いられる。放射線検知用の画素100Bは、放射線の照射開始等を検出するための放射線の検知に用いられる画素であり、電荷の蓄積期間であっても、電荷を出力する画素である(詳細後述)。
また、放射線検出器26には、不図示の基板上に、TFTスイッチ74をオン/オフするための複数のゲート配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線73と、が互いに交差して設けられている。本実施の形態では、一方向の各画素列に信号配線73が1本ずつ設けられ、交差方向の各画素列にゲート配線101が1本ずつ設けられており、例えば、画素100がゲート配線方向および信号配線方向に1024個×1024個配置されている場合、信号配線73およびゲート配線101は1024本ずつ設けられている。
さらに、放射線検出器26には、各信号配線73と並列に共通電極配線95が設けられている。共通電極配線95は、一端および他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給するバイアス電源110に接続されている。センサ部103は共通電極配線95に接続されており、共通電極配線95を介してバイアス電圧が印加されている。
ゲート配線101には、各TFTスイッチ74をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各ゲート配線101に流れることによって、各TFTスイッチ74がスイッチングされる。
信号配線73には、各画素100のTFTスイッチ74のスイッチング状態に応じて、各画素100に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各信号配線73には、その信号配線73に接続された画素100の何れかのTFTスイッチ74がオンされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
各信号配線73には、各信号配線73に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されている。また、各ゲート配線101には、各ゲート配線101にTFTスイッチ74をオン/オフするための制御信号を出力するスキャン信号制御回路104が接続されている。図2では、信号検出回路105およびスキャン信号制御回路104を1つに簡略化して示しているが、例えば、信号検出回路105およびスキャン信号制御回路104を複数設けて所定本(例えば、256本)毎に信号配線73又はゲート配線101を接続する。例えば、信号配線73およびゲート配線101が1024本ずつ設けられている場合、スキャン信号制御回路104を4個設けて256本ずつゲート配線101を接続し、信号検出回路105も4個設けて256本ずつ信号配線73を接続する。
信号検出回路105は、各信号配線73毎に、入力される電気信号を増幅する公知の増幅回路を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線73から入力される電気信号を増幅回路により増幅し、ADC(アナログ・デジタル変換器)によりデジタル信号へ変換する。
この信号検出回路105およびスキャン信号制御回路104には、信号検出回路105において変換されたデジタル信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施し、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御回路104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御部106が接続されている。
制御部106は、マイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)、ROMおよびRAM、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部を備えている。制御部106は、ROMに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより、放射線画像の撮影のための制御を行う。また、制御部106は、上記所定の処理が施された画像データに対して、各放射線検知用の画素100Bの画像データを補間する処理(補間処理)を行って、照射された放射線が示す画像を生成する。すなわち、制御部106は、各放射線検知用の画素100Bの画像データを、上記所定の処理が施された画像データに基づいて補間することにより、照射された放射線が示す画像を生成する。
電子カセッテ20は、放射線検知用の画素100Bが接続された信号配線73(図2の場合、D2およびD3の少なくとも一方、例えば、D2)の電気信号(電荷情報)を信号検出回路105の増幅回路120で検出し、制御部106が、信号検出回路105により変換されたデジタル信号の値を予め定めた検出用の閾値TH1と比較し、閾値以上となった否かにより放射線が照射されたか否かの検出を行うように構成されている。すなわち、電子カセッテ20は、外部(例えば、放射線画像処理装置14)からの制御信号を必要としないで放射線の照射に関する検出を行うように構成されている。なお、制御部106による放射線が照射されたか否かの検出は、検出用の閾値と比較することに限らず、例えば、検出回数等、予め設定した条件に基づいて検出するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において電気信号の「検出」とは、電気信号をサンプリングすることを示している。以下、上記放射線検出用の画素100Bにモニタリングされた時系列の電気信号(画素信号)を表すデータを線量データと記載する。放射線検出用の画素100Bは、本実施の形態では、放射線の照射開始を検出した後も、放射線検知用の画素100Bから出力される電気信号(電荷情報)の検出を継続する。そして、詳細は後述するが、撮影期間を含む特定期間の線量データを取得する。
放射線の線量データを取得可能であれば、任意の検出方法および任意の構成の検出画素を採用してよい。例えば、放射線の線量データをモニタリングするために、下記に採用可能な(1)〜(6)のような構成を例示する。
(1)放射線画像撮影用の画素(2次元アレイ)の中から任意に選択した画素を放射線検知用の専用画素とする。なお、この場合、放射線画像撮影用の画素と、放射線検知用の画素は、同一の形状をしている。
(2)放射線画像撮影用の画素(2次元アレイ)の中から任意に選択した画素を放射線検知も可能な構造にする。すなわち、一部の画素を、放射線画像撮影および放射線検知兼用の画素とする。例えば、選択した画素は、センサ部が2分割されていて放射線画像撮影の場合と放射線検知の場合とで、センサ部を使い分ける構成とする。また例えば、選択した画素はTFTスイッチが追加で配置されていて、追加で配置されたTFTスイッチのリーク電流に基づいて放射線を検知する構成としてもよい。
(3)放射線画像撮影用の画素(2次元アレイ)の画素間(例えば、画素間の隙間)に任意に放射線検知専用のセンサが配置されている。
なお、上記(2)および(3)の方法において、これらの方法に用いられる放射線検出器の構造は選択した画素(選択した隙間)のみがこのような構造になっていてもよいし、センサ部、およびTFTスイッチの構造は繰り返しパターニングされていて、選択した画素のみ電荷が取り出せるような接続になっていてもよい。
(4)放射線画像撮影用の画素(2次元アレイ)およびその隙間は一般的な構成であり、別途に検知手段を設ける。検知方法としては、例えば、放射線検出器のバイアス電流検知、ゲート電流検知、およびリーク電流検知等が挙げられる。
(5)放射線画像撮影用の画素(2次元アレイ)およびその隙間は一般的な構成であり、また、別途に検知手段を設けることもなく、放射線画像撮影用の制御部を検知に用いるようにしてもよい。検知方法としては、例えば、リーク電流検知等が挙げられる。
上記(1)〜(5)のいずれの方法も、放射線検出器内部に放射された放射線の線量に応じて電荷(電気信号)を発生させるセンサを設けた場合に対応する。なおこれに限らず、下記(6)のように放射線検出器外部にセンサを設けるようにしてもよい。なお、放射線検出器内部のセンサ、および放射線検出器外部のセンサを総称する場合は、放射線センサという。
(6)放射線検出器の外部に放射線検知センサを設ける。例えば、放射線非照射となる放射線検出器の底面に放射線検知センサを設けておく。
また、上記(1)〜(6)のいずれの方法においても、TFTスイッチのゲートがオン状態の場合に放射線を検知するようにしてもよいし、ゲートがオフ状態の場合に放射線を検知するようにしてもよい。
また、本実施の形態の電子カセッテ20の放射線検出器26の構成およびその配置として、上記の線量データの取得と画像情報の生成とが可能な範囲内で任意の構成を採用可能である。
コンソール16の制御部40は、コンソール16全体の動作を制御する機能に加えて、画像解析装置としての機能を兼ね備えている。制御部40(画像解析装置)は、CPU、ROM、RAM、およびHDDなどのハードウェアによって本発明の一実施形態の画像解析プログラムを実行することにより、図3に示すような画像取得部41、線量データ取得部42、判別部43、グリッド縞検出部45、グリッド縞抑制部46、散乱線抑制部47、画像処理部48、表示制御部49および記憶部44として機能する。
画像取得部41は、コンソール16における操作入力検出部52によって操作入力を検出すると、操作入力に応じた放射線画像を取得する。放射線画像は、放射線検出器26において放射線画像撮影用の画素100Aによって検出した画像信号に対して制御部106による補間処理が施された画像である。
線量データ取得部42は、放射線画像の撮影期間を含む特定期間に、放射線画像に対応する撮影領域内の図2に示すような放射線検知用の画素100Bの位置(特定位置)に照射された放射線量を時系列に表す線量データを取得する。なお、放射線撮影時の線量データとかかる放射線撮影によって撮影された放射線画像(線量データに対応する放射線画像)は互い対応づけられて記憶部17に記憶される。
なお、上記「特定期間」とは、撮影期間の少なくとも一部を含む期間である。また「特定期間」は、特定位置と放射線源との間を少なくとも2回以上グリッドの放射線吸収体が通過するための所要期間より長い期間が設定される。例えば、特定期間を、線量データにおける放射線量が、放射線が照射されていることを判別可能な閾値以上となった時以降の期間であって、特定位置と放射線源との間を少なくとも2回以上グリッドの放射線吸収体層が通過するための所要期間より長い期間を、想定される放射線グリッドのピッチとグリッドの揺動速度から算出して設定することが好ましい。なお、本実施の形態では、放射線画像の撮影開始t0から撮影終了時までの期間の線量データが放射線検出用の画素100Bによって検出されて記憶部17に記憶され、記憶部17から制御部40の線量データ取得部42によって取得される。
判別部43は、線量データが、複数の放射線吸収体と、隣接する放射線吸収体の間に位置する放射線透過体とが特定位置と放射線撮影に用いられた放射線源との間を通過したことによる線量の変動を表す第1の特徴を有するか否かを判別し、後述の第1の特徴を有すると判別された線量データに対応する放射線画像を、散乱線を除去するためのグリッドGmを揺動させて撮影された揺動グリッド使用画像であると判別する。
また、本実施形態における判別部43は、第1の特徴を有さないと判別された線量データに対応する放射線画像を、散乱線を除去するためのグリッドGsを静止させて撮影した静止グリッド使用画像および散乱線を除去するためのグリッドを用いないで撮影したグリッド不使用画像のいずれかであると判別する。
また、判別部43は、後述のグリッド縞検出部45によって検出された放射線画像のグリッド縞の有無に基づいて、放射線画像が静止グリッドに起因するグリッド縞(静止グリッドの像)を含むという第2の特徴を有するか否かを判別し、第2の特徴を有すると判別された放射線画像を静止グリッド使用画像であると判別し、第1の特徴を有さないと判別された線量データに対応する放射線画像であって、かつ、第2の特徴を有さないと判別された放射線画像をグリッド不使用画像であると判別する。
また、判別部43は、揺動グリッド使用画像か否かを判別する処理において、揺動グリッド使用画像と判別されたか否かを表す判別情報を、放射線画像に対して付帯情報として追加する。なお、揺動グリッド使用画像か否かを判別する処理の実施後は、判別部43、グリッド縞検出部45、グリッド縞抑制部46、散乱線抑制部47、表示制御部49などの各部は、必要に応じて放射線画像の付帯情報を参照して、揺動グリッド使用画像に必要な処理と不要な処理を判別するように構成されている。
以上のように、本実施形態における判別部43は、第1の特徴を有する放射線画像を揺動グリッド使用画像であると判別し、第2の特徴を有する放射線画像を静止グリッド使用画像であると判別し、第1および第2の特徴の両方を有さない放射線画像をグリッド不使用画像と判別する。つまり、判別部43は、放射線画像の第1の特徴と第2の特徴の有無に基づいて、かかる放射線画像に対するグリッドの使用の有無と、放射線画像に使用されたグリッドの種類とを判別することができる。判別部43は、第1の特徴の有無に基づいて揺動グリッド使用画像を判別する処理(放射線画像の撮影時のグリッドGmの揺動の有無を判別する処理)と、第2の特徴の有無に基づいて静止グリッド使用画像を判別する処理とを任意の順番で行ってよい。
ここで、図4および図5を用いて、上記構成の電子カセッテ20によって放射線画像を撮影する際に放射線検知用の画素100Bによって取得される線量データと、線量データを用いた揺動グリッド使用画像の判別の概念について説明する。
図4に放射線検知用の画素100Bに取得された線量データの例を示す。図4は、横軸に時間軸を表し、縦軸に画素信号の値を表す時系列グラフである。放射線が照射されると電気信号Diは、増加し、時間と共に変化するため、時間tの関数として表すことができる。本実施の形態の放射線検出器26では、電気信号Diが、検出用の閾値を超えたか否かにより、放射線の照射開始を検出する。図4において、グリッド不使用の状態において放射線が照射された場合の線量データをf(t)、ブッキーグリッドを使用した場合の線量データを関数g(t)、衝撃ノイズを表す線量データn(t)、周辺機器による電磁波ノイズを表す線量データm(t)として表す。また、図5は、グリッドGmと放射線検出用の画素100Bとの関係を説明するための図である。
本発明の発明者らの解析によれば、図4に示すように、静止グリッドを使用した場合またはグリッドを不使用の場合の撮影時の線量データf(t)は、放射線Xの照射開始時t0から放射線源22Aの立ち上がりに応じて増加し、放射線源22Aが安定照射可能な状態になると画素100Bに蓄積する電荷量が所定値となった後は、略一定値を維持するという特徴を有する。また、放射線検出器26に衝撃が加わった際に画素100Bに生じる衝撃ノイズを表す線量データn(t)は、衝撃直後に大きなピークを示したのち、徐々に振幅を減少しつつ時間軸に沿って正のピークと負のピークを周期的に繰り返すという特徴を有する。また、放射線検出器26に周辺機器からの電磁波ノイズが検出されることも考えられる。このような電磁波ノイズを表す線量データm(t)は、微弱な略一定の振幅を有し、時間軸に沿って正のピークと負のピークを周期的に繰り返すという特徴を有する。
ここで、本発明の発明者らは、線量データの解析を進める中で、放射線撮影に使用されるグリッドGmが、図5に示すように複数の放射線吸収体gmaと複数の放射線透過体gmbとを交互に隣接させた構造を有し、グリッドGmを揺動して放射線撮影を行った場合には、放射線吸収体gmaと放射線透過体gmbとが交互に画素100Bと放射線源22Aとの間を通過することに着目した。そして、グリッドGmを揺動して放射線撮影を行った場合には、放射線検知用の画素100Bにモニタリングされた線量データに、複数の放射線吸収体gmaと、隣接する放射線吸収体gmaの間に位置する放射線透過体gmbとが、画素100Bの位置(特定位置)と放射線源22Aとの間を通過したことによる線量の変動を表す特徴(第1の特徴)が現れることを見出した。なお、要求される事項に応じて、グリッドGmに対する第1の放射線吸収率を有する放射線吸収体gmaと第1の放射線吸収率よりも小さい第2の放射線吸収率を有する放射線透過体gmbの素材や幅や厚みが選択される。
図5を用いて詳細に説明するとグリッドGmの図5矢印方向の移動に応じて、放射線透過体gmbを放射線Xが通過する時t3−t5には、照射方向の厚さtbを有する放射線透過体gmbによる放射線の吸収に応じた放射線量が画素100Bに到達し、放射線吸収体gmaを放射線Xが通過する時t5−t7には、照射方向の厚さtaを有する放射線吸収体gmaによる放射線の吸収に応じた放射線量が画素100Bに到達し、放射線透過体gmbを放射線Xが通過する時t7−t9には、照射方向の厚さtbを有する放射線透過体gmbによる放射線の吸収に応じた放射線量が画素100Bに到達し、放射線吸収体gmaを放射線Xが通過する時t9−t11には、照射方向の厚さtaを有する放射線吸収体gmaによる放射線の吸収に応じた放射線量が画素100Bに到達する。このように、放射線吸収体gmaと放射線透過体gmbとが交互に繰り返し通過することによって、画素100Bにおける線量データは、放射線吸収体gmaに対応する線量値と放射線透過体gmbに対応する線量値と放射線吸収体gmaに対応する線量値とを交互に往き来する変動を示す。本発明は、上述したような第1の特徴を利用して、線量データが第1の特徴を有する場合には、かかる線量データに対応する放射線画像は揺動グリッドを揺動させて撮影された揺動グリッド使用画像であると判別する。
上記の第1の特徴を任意の方法によって特定してよい。例えば、以下のように、第1の特徴を特徴1A又は1Bのようにとらえることができる。
(特徴1A)線量データg(t)が一定の振幅の隣接する略正弦波形状を有する。
グリッドGmが、各放射線吸収体gmaが移動方向(図5矢印方向)に略同一の幅waを有し、各放射線透過体gmbが移動方向(図5矢印方向)に略同一の幅wbを有する場合、ブッキーグリッドの揺動により、放射線検出用の画素100Bにおいて、一定の正方向の振幅と一定の負方向の振幅を有する隣接する所定波形が検出される。また、かかる各所定波形は、ブッキーグリッドの揺動に伴う到達放射線量の切り替えに対して、画素100Bの応答速度による電荷量の時間遅れが生じるため略正弦波形状となる。また、隣接する正弦波形状は、正方向の振幅が略一致し、負方向の振幅が略一致するものであれば、正方向の振幅と負方向の振幅が異なっていてもよく、同じであってもよい。
線量データg(t)における1周期の略正弦波形状において、放射線透過体gmbの放射線吸収量が小さくなるほど正方向の振幅(Vmaxと線量データg(t)の振幅の中心に対応する値(図4の例ではg(t5))との差)が大きくなり、各放射線吸収体gmaの放射線吸収量が小さくなるほど負方向の振幅(Vminと線量データg(t)の振幅の中心に対応する値との差)が小さくなる。また、略正弦波形状の周期C1において、時間軸方向に隣接する2つの変曲点(線量データg(t)の振幅の中心に対応する点)の間の期間は、放射線吸収体gmaの幅wa(または放射線透過体gmbの幅wb)とグリッドGmの移動方向の速度とに応じて定まる。例えば、図4における時間t5と時間t7の間の期間および時間t9と時間t11との間の期間は、放射線吸収体gmaの幅waとグリッドGmの移動方向の速度とに応じて定まる。また、図4における時間t2と時間t5との間の期間および時間t7と時間t9の間の期間は、放射線透過体gmbの幅wbとグリッドGmの移動方向の速度とに応じて定まる。従って、放射線吸収体gmaの幅waと放射線透過体gmbの幅wbとグリッドGmの移動方向の速度が既知であれば、略正弦波の周期C1および振幅の中心の時間軸方向の位置を特定できる。さらに、放射線吸収体gmaの放射線吸収量と照射方向の厚さ、および放射線透過体gmbの放射線吸収量と照射方向の厚さが既知であれば、正弦波形状の正方向の振幅と負方向の振幅を特定できる。この結果、グリッドGmによって生じる略正弦波形状を特定することができる。
判別部43は、上記のような特徴1AによってグリッドGmの揺動の有無を判別する任意の方法を採用可能である。判別部43が特徴1AによってグリッドGmの揺動の有無を判別した場合には、線量データを用いて揺動グリッド使用画像を正確に判別することができる。
例えば、判別部43は、線量データの複数の線量値からフィッティングした近似曲線を算出し、算出した近似曲線と一定の振幅の隣接する正弦波と比較して、算出した曲線が一定の振幅の隣接する正弦波形状を有するかを判別して特徴1Aを判別することができる。例えば、比較用に用いる一定の振幅を有する隣接する正弦波のサンプルの振幅や周期は、使用が想定される放射線吸収体gmaの幅waと放射線透過体gmbの幅wbとグリッドGmの移動方向の速度などの情報から特定すればよい。この場合には、より正確に揺動グリッド使用画像を判別することができる。なお、使用が想定される揺動撮影用のグリッドGmが複数存在する場合には、各グリッドGmにそれぞれ対応する正弦波のサンプルを用意し、各サンプルと近似曲線をそれぞれ比較して特徴1Aを算出するようにしてもよい。
(特徴1B)放射線量の変動に応じて画素100Bに蓄積する電荷量が変動することに対応して、線量データg(t)が一定の間隔を空けて放射線透過体の通過に起因する正の極大値Vmaxと放射線吸収体の通過に起因する零以上の極小値Vminを交互に有する。
判別部43は、上記のような特徴1Bによって揺動グリッド使用画像を判別する任意の方法を採用可能である。判別部43が特徴1Bによって揺動グリッド使用画像を判別した場合には、線量データを用いて比較的簡易な方法で揺動グリッド使用画像を好適に判別することができる。例えば、判別部43は、線量データの複数の線量値からフィッティングした近似曲線を算出して、時系列に放射線透過体の通過に起因する正の極大値Vmaxと放射線吸収体の通過に起因する零以上の極小値Vminを検出し、極大値Vmaxと極小値Vminを交互に繰り返しているか否かを判別することができる。また、特徴1Bによって、グリッドGmの揺動の有無を判別した場合には、線量データにおける、衝撃ノイズや電磁波ノイズとも区別してグリッドの揺動を判別することができる。
なお、本実施の形態におけるグリッドGmにおいて、各放射線透過体gmbの放射方向の厚さtbと各放射線吸収体gmaの放射線の照射方向の厚さtaは一致しており、各放射線透過体gmbの移動方向の幅wbと各放射線吸収体gmaの移動方向の厚さwaは一致している。
図3に戻って続きを説明する。グリッド縞検出部45は、放射線画像において、撮影時に使用するグリッドに起因する縞模様であるグリッド縞の有無を検出する。具体的には、放射線画像を周波数解析して周波数スペクトルを求め、周波数スペクトルにおける、ある周波数成分にピークが存在するか否かを判定する。ここで、グリッドを使用して撮影を行うことにより取得した放射線画像においては、グリッドの周期に起因する周期縞および周期縞に起因して放射線画像のサンプリングにより発生するモアレが含まれるため、周波数スペクトルにおいては、グリッドの周期およびモアレに対応する周波数成分にピークが存在することとなる。したがって、グリッド縞検出部45は、求めた周波数スペクトルにピークが存在するか否かを判定することにより、放射線画像におけるグリッド縞の有無を検出する。
また、グリッド縞検出部45は、静止グリッド使用画像と判別されたか否かを表す判別情報を放射線画像に対して付帯情報として追加する。なお、静止グリッド使用画像か否かを判別する処理の実施後は、判別部43、グリッド縞検出部45、グリッド縞抑制部46、散乱線抑制部47、表示制御部49などの各部は、必要に応じて放射線画像の付帯情報を参照して、静止グリッド使用画像に必要な処理と不要な処理を判別するように構成されている。
グリッド縞抑制部46は、静止グリッド使用画像から、静止グリッド使用画像に含まれる静止撮影用グリッドを表す像(グリッド縞)に対応する周波数成分を抑制するグリッド縞抑制処理を行う。グリッド縞抑制処理としては、例えばグリッド縞に対応する周波数成分を低減するためのフィルタによるフィルタリング処理を用いることができる。
散乱線抑制部47は、グリッド不使用画像からグリッド不使用画像の各位置における散乱線成分を示す散乱線画像を生成し、グリッド不使用画像から散乱線画像を減算することにより散乱線成分抑制処理を行う。図6は散乱線抑制部47の構成を示す概略ブロック図である。図6に示すように、散乱線抑制部47は、放射線画像の撮影時に、散乱線を除去するために使用が想定される、仮想的なグリッドの特性である仮想グリッド特性を取得する特性取得部451と、放射線画像に含まれる放射線の散乱成分を表す散乱成分情報を取得する散乱情報取得部452と、特性取得部451が取得した仮想グリッド特性および散乱情報取得部452が取得した散乱成分情報に基づいて、放射線検出器26により取得された放射線画像の散乱線抑制処理を行う除去処理部453とを備える。
特性取得部451は、操作者による操作入力を操作入力検出部52で受け付けて、受け付けた操作入力に応じた仮想グリッド特性を取得する。本実施形態においては、仮想グリッド特性は、仮想グリッドについての散乱線透過率Ts、および被検者30である被写体を透過して直接放射線検出器26に照射される一次線の透過率(一次線透過率)Tpとする。なお、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは0〜1の間の値をとる。
特性取得部451は、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpの値の入力を直接受け付けることにより仮想グリッド特性を取得してもよいが、本実施形態においては、グリッドの種類を表すグリッド情報、被写体についての情報(被写体情報)、および放射線画像の取得時の撮影条件の少なくとも1つの指定を受け付けることにより、仮想グリッド特性、すなわち散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを取得する。
ここで、グリッド情報とは、グリッド比、グリッド密度、収束型か平行型か、収束型の場合の集束距離、インタースペース素材(アルミニウム、ファイバー、ベークライト等)等の、グリッドの種類を特定する情報の少なくとも1つを含む。散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpはグリッドの種類に応じて異なる。このため、グリッド情報に関して、各種グリッド情報の少なくとも1つと仮想グリッド特性とを対応付けたテーブルが記憶部44に記憶されている。
被写体情報は、胸部、腹部および頭部等の被写体の種類を含む。ここで、放射線画像の撮影時には、一般的に撮影部位に応じて使用するグリッドの種類が決められており、グリッドの種類に応じて散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpが異なる。このため、被写体情報に関して、各種被写体情報と仮想グリッド特性とを対応付けたテーブルが記憶部44に記憶されている。
撮影条件は、撮影時の撮影距離(SID)、撮影線量、管電圧、線源のターゲットおよびフィルタの材質、並びに撮影に使用される放射線検出器の種類等のうちの少なくとも1つを含む。ここで、放射線画像の撮影時には、一般的に撮影条件に応じて使用するグリッドの種類が決められており、グリッドの種類に応じて散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpが異なる。このため、撮影条件に関して、各種撮影条件と仮想グリッド特性とを対応付けたテーブルが記憶部44に記憶されている。なお、各種撮影条件は、放射線画像撮影システムが設置される施設に応じて決まっていることが多い。このため、実際の撮影時の撮影条件が不明である場合は、施設に応じた撮影条件を使用すればよい。
特性取得部451は、記憶部44に記憶されたテーブルを参照して、操作者による操作入力を操作入力検出部52で受け付けて、受け付けた操作入力に応じて得られたグリッド情報、被写体情報および撮影条件の少なくとも1つに基づいて、仮想グリッド特性を取得する。なお、グリッド情報、被写体情報および撮影条件は、入力部9から直接の入力を受け付ければよい。または、各種グリッド情報、各種被写体情報および各種撮影条件のリストをディスプレイ50に表示し、リストからグリッド情報、被写体情報および撮影条件の少なくとも1つの選択を受け付けることにより、グリッド情報、被写体情報および撮影条件の入力を行うようにしてもよい。また、撮影条件については、放射線制御部62から取得するようにしてもよい。
なお、撮影条件が撮影線量である場合、厚さが既知のアクリルモデルを被写体とともに撮影し、取得された放射線画像におけるアクリルモデルの部分の濃度に基づいて、撮影線量を取得するようにしてもよい。この場合、アクリルモデルの濃度と撮影線量とを対応付けたテーブルを記憶部44に記憶しておき、アクリルモデルの濃度に基づいてこのテーブルを参照して撮影線量を取得すればよい。また、放射線検出器26に直接放射線を照射することにより得られる素抜け領域が放射線画像に含まれる場合、素抜け領域の濃度に基づいて、撮影線量を取得するようにしてもよい。この場合、素抜け領域の濃度と撮影線量とを対応付けたテーブルを記憶部44に記憶しておき、素抜け領域の濃度に基づいてこのテーブルを参照して撮影線量を取得すればよい。また、線量計を用いて撮影線量を測定し、測定した撮影線量を撮影条件として用いてもよい。
また、本実施形態においては,散乱線抑制処理は、後述するように放射線画像を周波数分解することにより行われる。本実施形態においては、仮想グリッド特性は、周波数分解により得られる放射線画像の複数の周波数帯域のそれぞれについて取得される。このため、上記テーブルにおける仮想グリッド特性は、複数の周波数帯域のそれぞれに対応付けられている。
また、グリッド情報、被写体情報および撮影条件のすべてと仮想グリッド特性とを対応付けたテーブルを記憶部44に記憶しておき、グリッド情報、被写体情報および撮影条件のすべてに基づいて仮想グリッド特性を取得するようにしてもよい。この場合、テーブルは、各種グリッド情報、各種被写体情報および各種撮影条件と、仮想グリッド特性とを対応付けた少なくとも4次元のテーブルとなる。
なお、グリッドを使用することによって増加する照射線量の増加率である露出倍数、グリッドを使用した場合と使用しない場合とのコントラストの比率であるコントラスト改善係数、および一次X線透過率の散乱X線透過率に対する比率である選択度は、グリッドの特性を表す特性値である。これらの特性値から散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを算出することができる。このため、特性取得部451において、露出倍数、コントラスト改善係数および選択度の少なくとも1つの指定を受け付けることにより、仮想グリッド特性、すなわち散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを算出して取得するようにしてもよい。
また、本実施形態において散乱線抑制部47は、仮想グリッド特性のみならず、散乱成分情報にも基づいて散乱線抑制処理を行う。このため、散乱情報取得部452は散乱成分情報を取得する。本実施形態においては、散乱成分情報は、例えば被写体が胸部であれば、縦隔が存在する放射線画像の中央部分ほど散乱線が多く、肺野が存在する周辺部ほど散乱線が少ないという、放射線画像における散乱線含有率分布とする。
散乱情報取得部452は、撮影により取得された放射線画像を解析することにより、散乱成分情報すなわち散乱線含有率分布を取得する。放射線画像の解析は、放射線画像の撮影時における照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいて行う。
照射野情報とは、照射野絞りを用いて撮影を行った場合における、放射線画像に含まれる照射野の位置および大きさに関する照射野分布を表す情報である。被写体情報とは、上述した胸部、腹部および頭部等の被写体の種類に加えて、被写体の放射線画像上での位置、被写体の組成の分布、被写体の大きさおよび被写体の厚さ等に関する情報である。撮影条件とは、撮影時の照射線量(管電流×照射時間)、管電圧、撮影距離(放射線源から被写体までの距離と被写体から放射線検出器までの距離との合計)、エアギャップ量(被写体から放射線検出器までの距離)、および放射線検出器の特性等に関する情報である。これらの照射野情報、被写体情報および撮影条件は、放射線画像に含まれる散乱線の分布を決める要因となっている。例えば、散乱線の大小は照射野の大きさにより左右され、被写体の厚さが大きいほど散乱線は多くなり、被写体と放射線検出器との間に空気が存在すると散乱線が減少する。したがって、これらの情報を用いることにより、より正確に散乱線含有率分布を取得することができる。
散乱情報取得部452は、撮影により取得した放射線画像内の被写体厚の分布T(x,y)から、下記の式(1)および(2)にしたがって一次線像および散乱線像を算出し、算出した一次線像および散乱線像から式(3)に基づいて、散乱線含有率分布S(x,y)を算出する。なお、散乱線含有率分布S(x,y)は0〜1の間の値をとる。
Icp(x,y) = Io(x,y)×exp(-μ×T(x,y)) …(1)
Ics(x,y) = Io(x,y)*Sσ(T(x,y)) …(2)
S(x,y) = Ics(x,y)/(Ics(x,y)+Icp(x,y)) …(3)
ここで、(x,y)は放射線画像の画素位置の座標、Icp(x,y)は画素位置(x,y)における一次線像、Ics(x,y)は画素位置(x,y)における散乱線像、Io(x,y)は画素位置(x,y)における被写体表面への入射線量、μは被写体の線減弱係数、Sσ(T(x,y))は画素位置(x,y)における被写体厚に応じた散乱の特性を表す畳みこみカーネルである。式(1)は公知の指数減弱則に基づく式であり、式(2)は「J M Boon et al, An analytical model of the scattered radiation distribution in diagnostic radiolog, Med. Phys. 15(5), Sep/Oct 1988」(参考文献1)に記載された手法に基づく式である。なお、被写体表面への入射線量Io(x,y)は、どのような値を定義してもS(x,y)を算出する際に除算によってキャンセルされるため、例えば値を1とする等、任意の値とすればよい。
また、被写体厚の分布T(x,y)は、放射線画像における輝度分布が被写体の厚さの分布と略一致すると仮定し、放射線画像の画素値を線減弱係数値により厚さに変換することにより算出すればよい。これに代えて、センサ等を用いて被写体の厚さを計測してもよく、立方体あるいは楕円柱等のモデルで近似してもよい。
ここで、式(2)における*は畳みこみ演算を表す演算子である。カーネルの性質は、被写体の厚さの他に、照射野の分布、被写体の組成の分布、撮影時の照射線量、管電圧、撮影距離、エアギャップ量、および放射線検出器の特性等によっても変化する。参考文献1に記載された手法によれば散乱線は一次線に対する位置拡張関数(point spread function、式(2)におけるSσ(T(x,y)))の畳みこみにより近似することができる。なお、Sσ(T(x,y))は、照射野情報、被写体情報および撮影条件等に応じて実験的に求めることができる。
本実施形態においては、撮影時の照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいてSσ(T(x,y))を算出してもよいが、各種照射野情報、各種被写体情報および各種撮影条件とSσ(T(x,y))とを対応付けたテーブルを記憶部44に記憶しておき、撮影時の照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいて、このテーブルを参照してSσ(T(x,y))を求めるようにしてもよい。なお、Sσ(T(x,y))をT(x,y)にて近似するようにしてもよい。
除去処理部453は、仮想グリッド特性および散乱成分情報に基づいて、放射線画像における散乱線と見なせる周波数帯域の周波数成分を低減させることにより、散乱線抑制処理を行う。このため、除去処理部453は、放射線画像を周波数分解して複数の周波数帯域毎の周波数成分を取得し、少なくとも1つの周波数成分のゲインを低減する処理を行い、処理済みの周波数成分およびこれ以外の周波数成分を合成して、散乱線抑制処理済みの放射線画像を取得する。なお、周波数分解の手法としては、放射線画像を多重解像度変換する手法の他、ウェーブレット変換、フーリエ変換等、公知の任意の手法を用いることができる。
除去処理部453は、仮想グリッド特性である散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tp、並びに散乱線含有率分布S(x,y)から、周波数成分を変換する変換係数R(x,y)を下記の式(4)により算出する。
R(x,y) = S(x,y)×Ts + (1-S(x,y))×Tp …(4)
散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tp、並びに散乱線含有率分布S(x,y)は0〜1の間の値となるため、変換係数R(x,y)も0〜1の間の値となる。除去処理部453は、変換係数R(x,y)を複数の周波数帯域のそれぞれについて算出する。
なお、以降の説明において、放射線画像の画素値をI(x,y)、周波数分解により得られる周波数成分画像をI(x,y,r)、周波数合成をI(x,y)=ΣrI(x,y,r)、周波数帯域毎の変換係数をR(x,y,r)、周波数帯域毎の散乱線透過率および一次線透過率をTs(r)、Tp(r)で表す。なお、rは周波数帯域の階層を表し、rが大きいほど低周波であることを表す。したがって、I(x,y,r)は、ある周波数帯域の周波数成分画像となる。散乱線含有率分布S(x,y)は放射線画像について算出した値をそのまま用いればよいが、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpと同様に周波数帯域のそれぞれについて取得するようにしてもよい。
本実施形態においては、周波数成分毎に変換係数R(x,y,r)を算出し、周波数成分画像I(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算して、周波数成分画像I(x,y,r)の画素値を変換し、変換係数R(x,y,r)が乗算された周波数成分画像I(x,y,r)(すなわち、I(x,y,r)×R(x,y,r))を周波数合成して処理済みの放射線画像I′(x,y)を取得する。したがって、除去処理部453において行われる処理は、下記の式(5)により表される。なお、変換係数R(x,y,r)は0〜1の間の値となるため、周波数成分(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算することにより、その周波数成分の画素位置(x,y)における画素値すなわちゲインが低減されることとなる。
I’(x,y)=Σr{I(x,y,r)×R(x,y,r)}
=Σr{I(x,y,r)×(S(x,y)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Tp(r))} …(5)
ここで、本実施形態においては、放射線画像を6つの周波数帯域に周波数分解し、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは6つの周波数帯域について取得される。この場合、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは、例えば下記式(6)に示す値となる。なお、式(6)では右側ほど低周波数帯域の値を表す。
Ts={0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.3, 0.2}
Tp={0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.7} …(6)
式(6)に示すように、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは、高周波数帯域(r=1〜4)では同一の値であるが、低周波数帯域(r=5〜6)においては、散乱線透過率Tsの方が低い値となる。グリッドは、散乱線の周波数成分が支配的である低周波帯域ほどその除去率が高いが、一次線については除去率の周波数依存性が小さいからである。
図7は胸部の放射線画像における散乱線含有率分布S(x,y)を示す図である。図7においては、散乱線含有率分布S(x,y)が高いほど各画素位置における輝度が高くなっている。胸部の画像においては縦隔部および肺野の周囲において散乱線の含有率が高いことが図7から分かる。このような散乱線含有率分布S(x,y)を示す場合において、式(4)および(6)に基づいて算出した変換係数を図8に示す。図8において、輝度が低いほど値が小さく、より大きく画素値が低減されることとなる。図7および図8を比較すると、散乱線の含有率が高い縦隔部および肺野の周囲において、変換係数の値が小さくなっていることが分かる。したがって、このように算出した変換係数を用いて式(5)に示す処理を行うことにより取得された処理済みの放射線画像においては、使用が想定されるグリッドの種類に応じて散乱線成分が除去される。
なお、除去処理部453においては、下記のようにして放射線画像の散乱線を除去するようにしてもよい。まず、上記と同様に周波数合成をI(x,y)=ΣrI(x,y,r)で表すとすると、除去処理部453は、周波数成分画像I(x,y,r)を、下記の式(7)により、散乱線含有率分布S(x,y)を用いて、散乱成分Ics(x,y,r)と一次線成分Icp(x,y,r)とに分解する。
Ics(x,y,r)= S(x,y)×I(x,y,r)
Icp(x,y,r)=(1-S(x,y))×I(x,y,r) …(7)
さらに除去処理部453は、下記の式(8)により、散乱成分Ics(x,y,r)および一次線成分Icp(x,y,r)のそれぞれに対して、仮想グリッド特性である散乱線透過率Ts(r)および一次線透過率Tp(r)を適用して画像変換し、変換された散乱成分Ics′(x,y,r)および一次線成分Icp′(x,y,r)を算出する。
Ics′(x,y,r)=Ics(x,y,r)×Ts(r)=S(x,y)×I(x,y,r)×Ts(r)
Icp′(x,y,r)=Icp(x,y,r)×Tp(r)=(1-S(x,y))×I(x,y,r)×Tp(r) …(8)
そして下記の式(9)により、Ics′(x,y,r)および一次線成分Icp′(x,y,r)を周波数合成して、処理済みの放射線画像I(x,y)′を算出する。
I′(x,y)=Σr{Ics′(x,y,r)+Icp′(x,y,r)}
=Σr{S(x,y)×I(x,y,r)×Ts(r)+(1-S(x,y))×I(x,y,r)×Tp(r)}
=Σr{I(x,y,r)×(S(x,y)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Tp(r))} …(9)
なお、散乱線抑制部47は、必要に応じて被写体(被検者30)の体厚分布を推定し、推定された被写体の体厚分布に応じて被写体の体厚が大きい位置ほど散乱線量をより低減するように散乱線抑制処理を行うことが好ましい。体厚分布推定方法として、任意の方法を用いることができ、例えば、特開平2−244881号に記載された方法を採用することができる。また、本出願人の出願である特願2013−229941に記載された方法を採用した場合には精度よく推定した体厚分布を散乱線抑制処理に採用することができ、好適に被写体の体厚分布に応じた散乱線抑制処理を行うことができる。
図3に戻って続きを説明する。画像処理部48は、グリッド縞抑制処理が行われた静止グリッド使用画像、散乱線抑制処理が行われたグリッド不使用画像、および、グリッド縞抑制処理と散乱線抑制処理のいずれも実施されていない揺動グリッド使用画像に対して、ノイズを除去するノイズ除去処理、階調処理および周波数処理等の所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像を取得する。なお、画像処理部48は、所要の画像処理が実施された処理済み画像を記憶部17に記憶する。
また、画像処理部48は、揺動グリッド使用画像と静止グリッド使用画像とグリッド不使用画像の3種類の画像に対して、3種類の画像の各処理済み画像の画質を一致させるように、各種類の画像の所要の画像処理のための画像処理パラメータをそれぞれ予め設定した設定テーブルを用意する。画像処理部48は、その設定テーブルに基づいて、揺動グリッド使用画像に対して揺動グリッド使用画像用の画像処理パラメータに基づく所要の画像処理を実施し、静止グリッド使用画像に対して静止グリッド使用画像用の画像処理パラメータに基づく所要の画像処理を実施し、グリッド不使用画像に対してグリッド不使用画像用の画像処理パラメータに基づく所要の画像処理を実施する。
表示制御部49は、処理済みの放射線画像をディスプレイ50に表示する。なお、グリッド縞抑制処理が行われた静止グリッド使用画像、散乱線抑制処理が行われたグリッド不使用画像、および、グリッド縞抑制処理と散乱線抑制処理のいずれも実施されていない揺動グリッド使用画像は、画像処理が行われてディスプレイ50に表示される。以降の説明において、画像処理のみが行われた放射線画像を放射線画像G0、グリッド縞抑制処理および画像処理が行われた放射線画像を放射線画像G1、散乱線抑制処理および画像処理が行われた放射線画像を放射線画像G2とする。
次いで、第1の実施形態において行われる処理について説明する。図9は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。取得された線量データに対応する放射線画像を画像取得部41が取得し(ステップST1)、線量データ取得部42が線量データを取得すると(ステップST2)、判別部43が線量データに基づいて線量データ内における第1の特徴の有無を判別し、第1の特徴を有する線量データに対応する放射線画像を揺動グリッド使用画像に該当すると判別する(ステップST3、Yes)。放射線画像が揺動グリッド使用画像に該当すると判別された場合には、判別部43は、揺動グリッド使用画像に対して、揺動グリッド使用画像用の画像処理パラメータを設定して所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G0を生成する(ステップST7)。そして、表示制御部49が、放射線画像G0をディスプレイ50に表示する(ステップST8)。
また、判別部43によって線量データが第1の特徴を有さないと判別された場合、すなわち、放射線画像が揺動グリッド使用画像に該当しないと判別された場合には(ステップST3、No)、グリッド縞検出部45が放射線画像のグリッド縞の有無を検出し、グリッド縞検出部45によってグリッド縞が検出されると、判別部43は、グリッド縞が検出された放射線画像を静止グリッド使用画像として判別する(ステップST4、Yes)。そして、グリッド縞抑制部46が静止グリッド使用画像に対してグリッド縞抑制処理を行い(ステップST6)、画像処理部48がグリッド縞抑制処理を行った静止グリッド使用画像に静止グリッド使用画像用の画像処理パラメータを設定して所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G1を生成する(ステップST7)。そして、表示制御部49が、放射線画像G1をディスプレイ50に表示する(ステップST8)。
また、グリッド縞検出部45が放射線画像のグリッド縞の有無を検出し、グリッド縞検出部45によってグリッド縞が検出されなかった場合、判別部43は、グリッド縞が検出されなかった放射線画像をグリッド不使用画像として判別する(ステップST4:No)。そして、散乱線抑制部47がグリッド不使用画像に対して散乱線抑制処理を行い(ステップST5)、画像処理部48が散乱線抑制処理を行ったグリッド不使用画像にグリッド不使用画像用の画像処理パラメータを設定して所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G2を生成する(ステップST7)。そして、表示制御部49が、放射線画像G2をディスプレイ50に表示する(ステップST8)。
画像解析装置は、処理済み画像の表示を終了するユーザ指示に応じて処理を終了する。なお、処理済みの放射線画像は、記憶部44に保存されるか、コンソール16とネットワーク接続されたサーバに送信されて記憶部17に保存される。
本実施の形態(第1の実施形態)によれば、放射線画像の撮影期間を含む特定期間に放射線画像に対応する撮影領域内の特定位置に照射された放射線量を時系列に表す線量データを取得し、線量データが、複数の放射線吸収体と、隣接する放射線吸収体の間に位置する放射線透過体とが特定位置と放射線撮影に用いられた放射線源との間を通過したことによる線量の変動を表す第1の特徴を有するか否かを判別し、線量データが第1の特徴を有すると判別された放射線画像を、散乱線を除去するための揺動撮影用グリッドを揺動させて撮影された揺動グリッド使用画像であると判別している。このため、線量データを活用して、放射線画像がグリッドを揺動させて撮影されたか否かを好適に判別することができる。また、判別した情報を、例えば、ブッキーグリッドの使用の有無に応じて異なる画像処理を施す技術などに好適に応用できる。
また、本実施の形態において、判別部43が、第1の特徴を有さないと判別された線量データに対応する放射線画像を、散乱線を除去するための静止撮影用グリッドを静止させて撮影した静止グリッド使用画像および散乱線を除去するためのグリッドを用いないで撮影したグリッド不使用画像のいずれかであると判別することができるため、好適に揺動グリッドの使用の有無を判別できる。
さらに、本実施の形態において、判別部43が、放射線画像が静止撮影用グリッドの像を含むという第2の特徴を有するか否かを判別し、第2の特徴を有すると判別された放射線画像を静止グリッド使用画像であると判別し、第1の特徴を有さないと判別された線量データに対応し、かつ、第2の特徴を有さないと判別された放射線画像をグリッド不使用画像であると判別することができるため、揺動グリッド使用画像と静止グリッド使用画像とグリッド不使用画像とを好適に判別することができる。
さらに、本実施の形態において、静止グリッド使用画像から、静止グリッド使用画像に含まれる静止撮影用グリッドを表す像(グリッド縞)に対応する周波数成分を抑制するグリッド縞抑制部46を備える。そのため、グリッドの種類の判別結果に応じて、グリッド縞を有さない画像であるグリッド不使用画像および揺動グリッド使用画像に対して誤ってグリッド縞抑制処理を行うことを防ぐことができる。この結果、適切な処理済み画像を生成表示することができる。
また、本実施の形態において、グリッド不使用画像からグリッド不使用画像の各位置における散乱線成分を示す散乱線画像を生成し、グリッド不使用画像から散乱線画像を減算することにより散乱線成分抑制処理を行う散乱線抑制部47を備えることにより、グリッドの種類の判別結果に応じて、静止グリッド使用画像および揺動グリッド使用画像に対して誤って散乱線抑制処理を行うことを防ぐことができる。この結果、適切な処理済み画像を生成表示することができる。
また、本実施の形態において、判別部43が、放射線画像に揺動グリッド使用画像と判別されたか否かを表す判別情報を放射線画像の付帯情報として追加し、後続の処理において放射線画像の付帯情報を参照して、揺動グリッド使用画像に必要な処理と不要な処理を判別するようにしている。このため、放射線画像の付帯情報を参照することにより、揺動グリッド不使用画像であるか否かを容易に判別できるため、揺動グリッド使用画像であるか否かによって処理の種類や有無を異ならせたいという要求に役立つ情報を提供することができる。
また、画像処理部48が、揺動グリッド使用画像と静止グリッド使用画像とグリッド不使用画像の3種類の画像に対して、各画像の種類に応じた適切な画像処理パラメータを用いて各画像の種類に応じた所要の画像処理を実施するようにしたことにより、各画像の処理済み画像の画質を一致させて、種類の異なる処理済み画像の比較観察に適した処理済み画像を提供することができる。このような画像処理は、病気の治癒状況あるいは進行状況の診断を行うために、過去の放射線画像を用いて経時比較観察を行う場合などにおいて、種類の異なる処理済み画像を比較観察するケースに好適に適用可能である。また、画像処理部48が、揺動グリッド使用画像と静止グリッド使用画像とグリッド不使用画像の3種類の画像に対して、各画像の種類に応じた適切な画像処理パラメータを用いて各画像の種類に応じた所要の画像処理を実施するようにしたことにより、操作者の操作入力の負担を軽減し、各画像に対する画像処理を正確かつ効率よく行うことができる。
なお、第1の実施形態のように、判別部43を静止グリッド使用画像と揺動グリッド使用画像とを判別可能に構成した場合には、静止グリッド使用画像を判別する処理と揺動グリッド使用画像とを判別する処理とは、どちらを先に実施してもよく、同時に実施してもよい。第2の実施形態として、第1の実施形態において判別部43による静止グリッド使用画像を判別する処理と揺動グリッド使用画像とを判別する処理との順番を逆にした例を説明する。図9は第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。第2の実施形態は、画像解析装置に処理の順番を異ならせた点のみが異なり、各構成要素とその機能は第1の実施形態と共通しているため、共通部分については説明を省略する。図10に従って、第2の実施形態における画像解析装置の処理の流れを説明する。
まず、画像取得部41が取得された線量データに対応する放射線画像を取得し(ステップST11)、線量データ取得部42が線量データを取得すると(ステップST12)、グリッド縞検出部45が放射線画像のグリッド縞の有無を検出し、グリッド縞検出部45によってグリッド縞が検出された場合、判別部43は、グリッド縞が検出された放射線画像を静止グリッド使用画像に該当すると判別する(ステップST13:Yes)。そして、グリッド縞抑制部46が静止グリッド使用画像に対してグリッド縞抑制処理を行い(ステップST15)、画像処理部48がグリッド縞抑制処理の行われた静止グリッド使用画像に所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G1を生成する(ステップST17)。そして、表示制御部49が、放射線画像G1をディスプレイ50に表示する(ステップST18)。
また、グリッド縞検出部45によって放射線画像からグリッド縞が検出されなかった場合、判別部43は放射線画像を静止グリッド使用画像に該当しないと判断する(ステップST13、No)。この場合には、判別部43は、線量データに基づいて線量データの第1の特徴の有無を判別し、第1の特徴を有する線量データに対応する放射線画像を揺動グリッド使用画像として判別する(ステップST14、Yes)。その後、画像処理部48は揺動グリッド使用画像に所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G0を生成する(ステップST17)。そして、表示制御部49が、放射線画像G0をディスプレイ50に表示する(ステップST18)。
また、判別部43は、線量データに基づいて線量データの第1の特徴の有無を判別し、第1の特徴を有さない線量データに対応する放射線画像を揺動グリッド使用画像に該当しないと判別する(ステップST14、No)。この場合には、放射線画像は静止グリッド使用画像にも揺動グリッド使用画像にも該当しない画像であるため、判別部43は、放射線画像をグリッド不使用画像として判別する。そして、散乱線抑制部47がグリッド不使用画像に対して散乱線抑制処理を行い(ステップST16)、画像処理部48が散乱線抑制処理の行われたグリッド不使用画像に所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G2を生成する(ステップST17)。そして、表示制御部49が、放射線画像G2をディスプレイ50に表示する(ステップST18)。
第2の実施形態に示すように、揺動グリッド使用画像判別処理と、静止グリッド使用画像判別処理の順番を異ならせても、第1の実施例同様の効果を奏することができる。各システムに要求される事情に応じて、揺動グリッド使用画像判別処理と、静止グリッド使用画像判別処理の順番を決定することが好ましい。
また、判別部43は、線量データが第1の特徴を有するか否かにより揺動グリッド使用画像を判別する処理と、他の方法による揺動グリッド使用画像を判別する処理を組み合わせて用いてもよい。第1の実施形態を変形した第3の実施形態として、判別部43が、放射線画像の撮影指示を表す撮影指示情報に、放射線画像が揺動撮影用グリッドを揺動させて撮影されたことを表す揺動グリッド情報が含まれるか否か判別し、撮影指示情報に揺動グリッド情報が含まれると判別された場合に、撮影指示情報の揺動グリッド情報に基づいて揺動グリッド使用画像を判別し、撮影指示情報に揺動グリッド情報が含まれないと判別された場合に、線量データが第1の特徴を有するか否かを判別する例を説明する。
図11は第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。第3の実施形態は、判別部43が、放射線画像の撮影指示を表す撮影指示情報にグリッドを揺動させて撮影されたか否かを表す揺動グリッド情報が含まれるか否かによって揺動グリッド使用画像を判別する機能をさらに備えている点のみが第1の実施形態と異なり、判別部43のその他の機能および他の構成要素とその機能は第1の実施形態と共通しているため、共通部分については説明を省略する。図11に従って、第3の実施形態における画像解析装置の処理の流れを説明する。
「撮影指示情報」とは、医師らから撮影担当者に撮影指示のために送信される情報であり、撮影対象と撮影対象に対して行われる画像検査を特定する情報を含む情報である。このため、撮影指示情報には、グリッドを揺動させて撮影する指示が含まれている可能性がある。判別部43は、撮影指示情報がグリッドの揺動を指示する情報を含む場合には、撮影指示情報を参照することにより、揺動グリッド情報を取得することができる。例えば、撮影指示情報は、患者名、性別、年齢など撮影対象に関する基礎情報と、放射線撮影の指示、撮影すべき範囲/方向、撮影の条件などを含む。
図11に示すように、判別部43は、まず、放射線画像に対応する撮影指示情報を取得して参照することにより、放射線画像の撮影指示を表す撮影指示情報に揺動撮影用グリッドを揺動させて撮影されたか否かを表す揺動グリッド情報が含まれるか否かを判別する(ステップST21)。判別部43は、放射線画像に対応する撮影指示情報が揺動グリッド情報を有する場合には、放射線画像を揺動グリッド使用画像に該当すると判別する(ステップST21、Yes)。そして、画像処理部48は揺動グリッド使用画像に対して、揺動グリッド使用画像用の画像処理パラメータを設定して所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G0を生成する(ステップST28)。そして、表示制御部49が、放射線画像G0をディスプレイ50に表示する(ステップST29)。
一方、判別部43は、撮影指示情報に揺動グリッド情報が含まれない場合には(ステップST21、No)、第1の実施形態のST1〜8と同様の処理を行う。すなわち、画像取得部41が取得された線量データに対応する放射線画像を取得し(ステップST22)、線量データ取得部42が線量データを取得すると(ステップST23)、判別部43が線量データに基づいて線量データの第1の特徴の有無を判別し、第1の特徴を有する線量データに対応する放射線画像を揺動グリッド使用画像に該当すると判別する(ステップST24、Yes)。放射線画像が揺動グリッド使用画像に該当すると判別された場合には、画像処理部48は、揺動グリッド使用画像に対して、揺動グリッド使用画像用の画像処理パラメータを設定して所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G0を生成する(ST28)。そして、表示制御部49が、放射線画像G0をディスプレイ50に表示する(ステップST29)。
また、判別部43によって線量データが第1の特徴を有さないと判別された場合、すなわち、放射線画像が揺動グリッド使用画像に該当しないと判別された場合には(ステップST24、No)、グリッド縞検出部45が放射線画像のグリッド縞の有無を検出し、グリッド縞検出部45によってグリッド縞が検出されると、判別部43は、グリッド縞が検出された放射線画像を静止グリッド使用画像として判別する(ステップST25、Yes)。そして、グリッド縞抑制部46が静止グリッド使用画像に対してグリッド縞抑制処理を行い(ステップST27)、画像処理部48がグリッド縞抑制処理を行った静止グリッド使用画像に静止グリッド使用画像用の画像処理パラメータを設定して所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G1を生成する(ステップST28)。そして、表示制御部49が、放射線画像G1をディスプレイ50に表示する(ステップST29)。
また、グリッド縞検出部45が放射線画像のグリッド縞の有無を検出し、グリッド縞検出部45によってグリッド縞が検出されなかった場合、判別部43は、グリッド縞が検出されなかった放射線画像をグリッド不使用画像として判別する(ステップST25、No)。そして、散乱線抑制部47がグリッド不使用画像に対して散乱線抑制処理を行い(ステップST26)、画像処理部48が散乱線抑制処理を行ったグリッド不使用画像にグリッド不使用画像用の画像処理パラメータを設定して所要の画像処理を行って処理済みの放射線画像G2を生成する(ステップST28)。そして、表示制御部49が、放射線画像G2をディスプレイ50に表示する(ステップST29)。
第3の実施形態によれば、放射線画像ごとに撮影指示情報が対応づけられ、撮影指示情報が撮影対象と撮影対象に対して行われる画像検査を特定する情報を含む情報であることを利用して、撮影指示情報によって揺動グリッド情報が得られない場合にのみ、揺動グリッド使用画像を判別する処理を行うようにしたため、計算負荷の軽減と高速化を図りつつ、放射線画像が揺動グリッド使用画像であるか否かを好適に判別することができる。
また、本発明の実施の形態にかかる判別部43によって得られる放射線画像が揺動グリッド使用画像に該当するか否かを表す情報である揺動グリッド情報は、揺動グリッド情報を必要とする任意の装置の任意の処理に活用することができる。
なお、本発明の実施の形態において、グリッド縞検出部45、グリッド縞抑制部46、散乱線抑制部47、画像処理部48、表示制御部49は必須の構成ではなく、省略することもできる。また、線量データを取得する処理(例えば、図9におけるST1)と線量データに対応する放射線画像を取得する処理(例えば、図9におけるST2)は、いずれを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
また、本実施の形態において、コンソール16と放射線画像処理装置14とを、個別の装置として設けているが、これに限られず、コンソール16と放射線画像処理装置14を1つの装置に統合し、コンソール16と放射線画像処理装置14の構成要素と機能を1台のコンソールによって構成してもよい。
また、上記各実施形態においては、放射線検出器26を用いて被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影システム10において取得した放射線画像を用いて散乱線抑制処理を行っているが、特開平8−266529号公報、特開平9−24039号公報等に示される放射線検出体としての蓄積性蛍光体シートに被写体の放射線画像情報を蓄積記録し、蓄積性蛍光体シートから光電的に読み取ることにより取得した放射線画像を用いた場合においても、本発明を適用できることはもちろんである。
また、グリッドに起因する縞模様を除去する処理は、グリッドに起因する縞模様を除去可能な種々の手法によって行うことができる。例えば特開2012−203504号公報に記載された手法などが参照できる。
上記の各実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきではない。本発明の態様は、上述した個々の実施例(第1〜第3実施形態、その他の変形例および応用例)に限定されるものではなく、個々の実施例の各要素のいかなる組合せも本発明に含み、また、当業者が想到しうる種々の変形も含む。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
また、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成、ユーザインターフェースや具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。たとえば、画像解析装置の構成要素の一部または全部は、1台のワークステーションにより構成されてもよく、ネットワークを介して接続された一台以上のワークステーション、サーバ、記憶装置によって構成されてもよい。