以下、第1の実施形態の構成を、図面を参照して説明する。
図1(a)および図1(b)において、11は電気掃除機であり、この電気掃除機11は、この電気掃除機11の充電用の基地部となる基地装置としての図示しない充電装置(充電台)などとともに電気掃除装置(電気掃除システム)を構成するものである。そして、この電気掃除機11は、本実施形態において、走行面としての被掃除面である床面F上を自律走行(自走)しつつ床面Fを掃除する、いわゆる自走式のロボットクリーナ(掃除ロボット)である。
また、この電気掃除機11は、中空状の本体ケース20と、この本体ケース20を床面F上で走行させる走行部21と、床面Fなどの塵埃を掃除する図2に示す掃除部22と、充電装置を含む外部装置と通信する通信部23と、画像を撮像する撮像部25と、センサ部26と、走行部21、掃除部22、通信部23、および、撮像部25などを制御するコントローラである制御手段(制御部)27と、これら走行部21、掃除部22、通信部23、撮像部25、センサ部26および制御手段27などに給電する二次電池28とを備えている。なお、以下、電気掃除機11(本体ケース20(図2))の走行方向に沿った方向を前後方向(図2に示す矢印FR,RR方向)とし、この前後方向に対して交差(直交)する左右方向(両側方向)を幅方向として説明する。
図2に示す本体ケース20は、例えば合成樹脂などにより扁平な円柱状(円盤状)などに形成されている。また、本体ケース20には、集塵口である吸込口31などが開口されている。さらに、本体ケース20には、可動部材としてのバンパ32が設けられている。
吸込口31は、本体ケース20の床面F(図1(a))に対向する下部に開口されている。この吸込口31は、例えば幅方向に沿って長手状に形成されている。
バンパ32は、障害物などとの接触(衝突)時の衝撃を弾性的に緩和するものであり、例えば剛性を有する合成樹脂(剛体)、あるいは可撓性を有する合成樹脂により形成され、本体ケース20の両側から前側に亘る部分、すなわち本体ケース20の略前半分の外周面(外郭)を覆う円筒面状(半円弧状)に湾曲して形成されている。このバンパ32は、図示しないが、リンク機構を介して本体ケース20に取り付けられ、本体ケース20の径方向に沿って往復移動可能となっているとともに、バンパ32と本体ケース20との中心線が略一致するようにセンタリングされ、バンパ32が通常位置に維持される方向に常時付勢されるようになっている。また、このバンパ32は、本体ケース20の両側から前側に亘る外縁部に対して所定の間隙を介して径方向に離間されており、この間隙が、バンパ32が往復移動可能な最大ストロークとなっている。さらに、このバンパ32は、本体ケース20に対して、上下方向に移動可能、すなわち上下動可能に取り付けられている。なお、この上下動としては、例えば回動により上下動する構成なども含む。このバンパ32は、図1(a)に示すように、最大に上方に位置した状態で、下部が本体ケース20の下部と略面一な位置となる(退避状態)とともに、図1(b)に示すように、最大に下方に移動した状態で、下部が本体ケース20の下部に対して下方に突出する位置となる(進出状態)ように、上下方向のストロークおよび位置が設定されている。したがって、このバンパ32は、上下動により本体ケース20の下部に対して床面F側に進退するように構成されている。ここで、このバンパ32は、床面Fに対して所定の高さとなる位置まで下方へと移動可能となっている。この高さ(床面Fとバンパ32の下端部との間隔)が大きすぎると、障害物Oを押すことができず、小さすぎると床面Fの塵埃をも押してしまうので、バンパ32は、下端部が床面Fに対して例えば5mm程度上方となる位置まで下方に移動可能とすることが好ましい。そして、このバンパ32は、上下駆動手段(上下駆動部)としてのアクチュエータ33(図3)により上下動されるように構成されている。なお、このバンパ32の下端部には、床面Fと接触する接触部材を設けていてもよい。この接触部材としては、床面Fとの接触抵抗がバンパ32よりも小さいものが好適であり、例えば起毛布あるいはブラシ毛などを用いてもよいし、床面Fに沿って回転するローラを用いてもよいし、櫛歯状の部材を用いてもよい。
図2に示すように、走行部21は、複数(一対)の駆動部としての駆動輪34,34、これら駆動輪34,34を駆動させる動作部としての駆動手段であるモータ35,35、および、旋回用の旋回輪36などを備えている。
各駆動輪34は、電気掃除機11(本体ケース20)を床面F(図1(a))上で走行(自律走行)させる、すなわち走行用のものであり、左右幅方向に沿って図示しない回転軸を有し、幅方向に対称に配置されている。これら駆動輪34は、本体ケース20の下部にて吸込口31の両側にそれぞれ位置している。また、これら駆動輪34は、図示しない懸架手段(サスペンション)によって下方に向けて付勢されている。そして、これら駆動輪34は、図1(a)に示すように、電気掃除機11を床面Fに載置した状態で床面Fとの接触により懸架手段の付勢に抗して本体ケース20の内部に上側が入り込み、下側のみが本体ケース20の下部から下方に突出して、本体ケース20の下部が床面Fに対して上方に離間した位置となるように本体ケース20を支持することで本体ケース20の下部と床面Fとの間に所定の隙間Gを形成するように構成されている。この隙間Gは、床面F上の例えば敷居の段差や敷マットの段差などの、比較的小さい起伏や凹凸を乗り越えて電気掃除機11(本体ケース20)を走行させるために予め設定されている。なお、これら駆動輪34に代えて、駆動部としての無限軌道などを用いることもできる。
図2に戻って、各モータ35は、例えば駆動輪34のそれぞれに対応して配置されており、各駆動輪34を独立して駆動させることが可能となっている。
旋回輪36は、本体ケース20の下部の幅方向の略中央部で、かつ、前部に位置しており、床面F(図1(a))に沿って旋回可能な従動輪である。この旋回輪36は、図1(a)に示すように、駆動輪34とともに、床面Fとの接触により本体ケース20の下部と床面Fとの間に所定の隙間Gを形成するように構成されている。
図2に示す掃除部22は、例えば本体ケース20内に位置して塵埃を吸込口31から空気とともに吸い込み排気口から排気する電動送風機41、吸込口31に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き上げる回転清掃体としての回転ブラシ42およびこの回転ブラシ42を回転駆動させるブラシモータ43(図3)、および、吸込口31と連通して塵埃を溜める集塵部46などを備えている。なお、電動送風機41と、回転ブラシ42およびブラシモータ43(図3)とは、少なくともいずれかを備えていればよい。
図3に示す通信部23は、インターネットなどの(外部)ネットワークを介して外部装置と無線通信をするための無線通信手段(無線通信部)および掃除機信号受信手段(掃除機信号受信部)としての報知手段である無線LANデバイス47、充電装置などへと無線信号(赤外線信号)を送信する例えば赤外線発光素子などの図示しない送信手段(送信部)、および、充電装置や図示しないリモコンなどからの無線信号(赤外線信号)を受信する例えばフォトトランジスタなどのなどの図示しない受信手段(受信部)などを備えている。
撮像部25は、(一方および他方の)撮像手段(撮像部本体)としてのカメラ51,51、および、これらカメラ51,51に照明を付与する照明手段(照明部)としてのLEDなどのランプ53を備えている。
図2に示すように、カメラ51,51は、本体ケース20の前部にてバンパ32の左右方向の中央部を挟む両側に配置されている。本実施形態では、カメラ51,51は、バンパ32において、電気掃除機11(本体ケース20)の幅方向の中心線に対して、左右方向に略等しい所定角度(鋭角)傾斜した位置にそれぞれ配置されている。また、これらカメラ51,51は、本体ケース20の走行方向である前方を、それぞれ所定の水平画角(例えば105°など)でデジタルの画像を所定時間毎、例えば数十ミリ秒毎などの微小時間毎、あるいは数秒毎などに撮像するデジタルカメラである。さらに、これらカメラ51,51は、互いの視野が重なっており、これらカメラ51,51により撮像される(一方および他方の)画像は、その撮像領域が電気掃除機11(本体ケース20)の幅方向の中心線を延長した前方の位置を含む領域で左右方向にラップしている。本実施形態では、これらカメラ51,51は、例えば可視光領域の画像を撮像するものとする。なお、これらカメラ51,51により撮像した画像は、例えば図示しない画像処理回路などにより所定のデータ形式に圧縮することもできる。
ランプ53は、カメラ51,51により画像を撮像する際の照明用の光を出力するもので、カメラ51,51の中間位置、すなわちバンパ32の幅方向の中心線上の位置に配置されている。すなわち、ランプ53は、カメラ51,51からの距離が略等しくなっている。また、このランプ53は、カメラ51,51と上下方向に略等しい位置、すなわち略等しい高さ位置に配置されている。したがって、このランプ53は、カメラ51,51の幅方向の略中央部に配置されている。本実施形態では、このランプ53は、可視光領域を含む光を照明するようになっている。
図3に示すセンサ部26は、障害物を接触による反発力によって検出する接触センサ55、および、障害物の温度を検出する温度検出手段(温度検出部)としての温度センサ56などを備えている。また、このセンサ部26には、例えば各駆動輪34(各モータ35)の回転数を検出することで電気掃除機11(本体ケース20(図2))の旋回角度や進行距離を検出する光エンコーダなどの回転数センサなどをさらに備えていてもよい。
接触センサ55は、図2に示すバンパ32の障害物との接触による退避方向への移動によって、この接触により生じる衝撃、すなわち反発力(応力)を検出することにより、この反発力(応力)の大小に基づいて、障害物を検出するものである。したがって、バンパ32は、接触センサ55の接触子である。
図3に示す温度センサ56は、例えば非接触の赤外線温度センサであり、電気掃除機11(本体ケース20(図2))の前方などの所定範囲に位置する物体の温度を検出可能となっている。
制御手段27は、例えば制御手段本体(制御部本体)であるCPU、このCPUによって読み出されるプログラムなどの固定的なデータを格納した格納部であるROM、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの各種メモリエリアを動的に形成するエリア格納部であるRAM(それぞれ図示せず)などを備えるマイコンである。この制御手段27は、さらに、例えばカメラ51,51で撮像した画像のデータなどを記憶する記憶手段(記憶部)としてのメモリ61、カメラ51,51で撮像した画像に基づいてカメラ51,51からの物体の深度を計算する計算手段(計算部)としての深度計算部62、この深度計算部62により計算した深度に基づいて障害物を判定する障害物判定手段(障害物判定部)としての判定部63、この判定部63にて判定された障害物の高さを検出する高さ検出手段である高さ検出部64、判定部63にて判定された障害物の縦横比を検出する縦横比検出手段である縦横比検出部65、判定部63にて判定された障害物の移動を検出する移動検出手段である移動検出部66、および、後述する走行モードの切り換えを判定するモード判定部67などを備えている。また、この制御手段27は、走行部21のモータ35,35(駆動輪34,34)の動作を制御する走行制御部71、掃除部22の電動送風機41およびブラシモータ43の動作を制御する掃除制御部72、アクチュエータ33の動作を制御することでバンパ32の上下動を制御する可動制御部73、撮像部25のカメラ51,51を制御する撮像制御部74、および、撮像部25のランプ53を制御する照明制御部75などを備えている。そして、この制御手段27は、例えば駆動輪34,34(モータ35,35)を駆動して電気掃除機11(本体ケース20(図2))を自律走行させる走行モードと、充電装置を介して二次電池28を充電する充電モードと、動作待機中の待機モードとを有している。この制御手段27の走行モードには、図1(a)に示すようにバンパ32を本体ケース20の下部に対して退避させた状態(最大に上方へと移動させた状態)で例えば直線状、あるいは曲線状などに前進する通常走行モード、バンパ32を本体ケース20の下部に対して退避させた状態(最大に上方へと移動させた状態)で障害物を回避するように本体ケース20を走行させる回避走行モード、および、図1(b)に示すようにバンパ32を本体ケース20の下部に対して床面F側である下側に進出させた状態(最大に下方へと移動させた状態)でこのバンパ32を進行方向側(前側)として本体ケース20を走行させる、すなわち本実施形態では本体ケース20を前進させる押し走行モードが少なくとも設定されている。また、押し走行モードについては、例えば所有者がリモコンや直接入力などによって、使用するか否かを選択できるようにすることが好ましい。
図3に戻って、メモリ61は、電気掃除機11の電源のオンオフに拘らず記憶した各種データを保持する、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリである。
深度計算部62は、カメラ51,51により撮像した画像と、カメラ51,51間の距離とに基づいてカメラ51,51により撮像した物体の深度を計算する、既知の方法が用いられる。すなわち、深度計算部62は、三角測量を応用し、カメラ51,51により撮像した各画像中から同一位置を示す画素ドットを検出し、この画素ドットの上下方向および左右方向の角度を計算して、これら角度とカメラ51,51間の距離とからその位置のカメラ51,51からの深度を計算する。したがって、カメラ51,51により撮像する画像は、可能な限り範囲が重なって(ラップして)いることが好ましい。
判定部63は、深度計算部62により計算した物体の深度に基づいて、物体が障害物であるかどうかを判定する。すなわち、この判定部63は、深度計算部62により計算した深度から、所定の範囲を抽出し、この範囲中の物体の深度を、予め設定された、あるいは可変設定された閾値である設定距離と比較し、この設定距離以下の深度(電気掃除機11(本体ケース20(図2))からの距離)に位置する物体を障害物であると判定する。したがって、この判定部63とカメラ51,51とにより、障害物を非接触に検出する非接触センサである障害物検出手段(障害物検出部)としての障害物センサ77が構成されている。
高さ検出部64は、判定部63により判定された障害物の床面F(図1(a))からの高さを検出する。
縦横比検出部65は、判定部63により判定された障害物の床面F(図1(a))からの高さと、障害物の最大幅寸法との比率((高さ)/(最大幅))を計算する。
移動検出部66は、判定部63により判定された障害物の位置の時間変化を検出することで、対象となる障害物の移動を検出する。すなわち、この移動検出部66は、所定時間(所定短時間)内における対象となる障害物との距離の変化から、電気掃除機11(本体ケース20(図2))の移動分を差し引くことで、電気掃除機11(本体ケース20(図2))に対する障害物の相対的な距離の変化を検出する。
モード判定部67は、接触センサ55および障害物センサ77による障害物の検出、温度センサ56による温度の検出、高さ検出部64、縦横比検出部65および移動検出部66によるそれぞれの検出に基づいて、走行モードのうち、いずれの走行モードを設定するかを決定する。
走行制御部71は、モード判定部67により決定された走行モードにしたがって、モータ35,35に流れる電流の大きさおよび向きを制御することにより、モータ35,35を正転、あるいは逆転させることで、モータ35,35の駆動を制御し、これらモータ35,35の駆動を制御することで駆動輪34,34の駆動を制御している。
掃除制御部72は、電動送風機41およびブラシモータ43をそれぞれ別個に導通角制御することで、これら電動送風機41およびブラシモータ43(回転ブラシ42)の駆動を制御している。なお、これら電動送風機41およびブラシモータ43のそれぞれに対応して制御部を別個に設けてもよい。
可動制御部73は、アクチュエータ33の駆動を制御することでバンパ32の上下動を制御している。
撮像制御部74は、カメラ51,51のシャッタの動作を制御する制御回路を備え、このシャッタを所定時間毎に動作させることで、所定時間毎にカメラ51,51により画像を撮像させるように制御する。
照明制御部75は、スイッチなどを介してランプ53のオンオフを制御している。この照明制御部75は、本実施形態では、電気掃除機11の周囲の明るさを検出するセンサを備えており、このセンサにより検出した明るさが所定以下の場合にランプ53を点灯させ、その他のときにはランプ53を点灯させないようにするものである。
また、二次電池28は、例えば本体ケース20(図2)の下部や後部などに設けられる図示しない接続部としての充電端子と電気的に接続されており、これら充電端子が充電装置側と電気的および機械的に接続されることで、充電装置を介して充電されるように構成されている。
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
一般に、電気掃除装置は、電気掃除機11によって掃除をする掃除作業と、充電装置によって二次電池28を充電する充電作業とに大別される。充電作業は、充電装置に内蔵された定電流回路などの充電回路を用いる既知の方法が用いられるため、掃除作業についてのみ説明する。また、外部装置などからの指令に応じてカメラ51,51の少なくともいずれかにより所定の対象物を撮像する撮像作業を別途備えていてもよい。
図1(a)に示すように、電気掃除機11を床面F上に載置すると、駆動輪34,34が床面Fに接触して、電気掃除機11の自重により駆動輪34,34が懸架手段の付勢に抗して本体ケース20内へと、旋回輪36が床面Fに接触する位置まで沈み込み、本体ケース20の下部と床面Fとの間に所定の隙間Gが形成される。そして、この電気掃除機11は、例えば予め設定された掃除開始時刻となったときや、リモコンまたは外部装置によって送信された掃除開始の指令信号を受信したときなどのタイミングで、図3に示す制御手段27が待機モードから走行モードに切り換わり、この制御手段27(走行制御部71)がモータ35,35(駆動輪34,34(図2))を駆動させ充電装置から離脱して、掃除領域内の床面F(図1(a))上を自律走行しつつ掃除をする。
この自律走行の際には、概略として、電気掃除機11は、通常走行モードで走行しつつ、障害物センサ77により走行方向である前方に障害物を検出すると、接触センサ55、温度センサ56、高さ検出部64、縦横比検出部65、移動検出部66の少なくともいずれかの検出に基づいて、障害物が、押してもよいものであるか、あるいは押すことができるものであるかを判定する。そして、障害物が押すことが好ましくないものであると判定した場合、あるいは押すことができないものであると判定した場合には、制御手段27が押し走行モード以外の走行モード、例えば回避走行モードに切り換わって障害物を回避する。また、障害物が押してもよいものであると判定した場合、あるいは押すことができるものであると判定した場合には、制御手段27が押し走行モードに切り換わって、図1(b)に示すように、本体ケース20の下部に対して下方に進出したバンパ32により障害物Oを押して移動させ(押し退け)、障害物Oが位置していた床面F上の位置を掃除する。この障害物を押して移動させる際には、例えば所定距離、または、所定時間移動させるものとする。そして、障害物を回避した後、あるいは、障害物を押して移動した後は、制御手段27が通常走行モードに切り換わる。
具体的に、図3に示す障害物センサ77により電気掃除機11(本体ケース20(図2))の走行方向である前方に障害物を検出すると、制御手段27(モード判定部67)は、温度センサ56により検出した温度が所定以上である場合、高さ検出部64により検出した障害物の高さが所定以上である場合、縦横比検出部65により検出した障害物の縦横比において、縦の寸法が横の寸法に対して所定の割合以上である場合、あるいは、移動検出部66によって障害物が移動していることを検出した場合の少なくともいずれかの場合、障害物は押すことが好ましくないものであると判定し、回避走行モードに切り換わって、図1(a)に示すように、バンパ32を本体ケース20の下部に対して退避させて、図3に示すモータ35,35(駆動輪34,34(図2))の駆動を制御して、障害物を回避するように電気掃除機11(本体ケース20(図2))を走行させる。そして、障害物を回避した後は、モード判定部67の判定により、制御手段27が通常走行モードに切り換わる。
一方、制御手段27(モード判定部67)は、温度センサ56により検出した温度が所定未満である場合、高さ検出部64により検出した障害物の高さが所定未満である場合、縦横比検出部65により検出した障害物の縦横比において、縦の寸法が横の寸法に対して所定の割合未満である場合、あるいは、移動検出部66によって障害物が移動していることを検出しない場合の少なくともいずれかの場合、障害物は押してもよいものであると判定し、押し走行モードに切り換わって、図1(b)に示すように、バンパ32を本体ケース20の下部に対して床面F側である下方へと進出させて本体ケース20と床面Fとの隙間G(図1(a))を埋め、図3に示すモータ35,35(駆動輪34,34(図2))の駆動を制御して、図1(b)に示すバンパ32の方向に電気掃除機11(本体ケース20)を前進させ、障害物Oを押す。また、この押し走行モード時に、バンパ32が障害物Oに接触することで接触センサ55により検出した反発力が所定未満である場合には、制御手段27(モード判定部67(図3))は、障害物Oが押すことができるものであると判定し、接触センサ55の検出を無視して押し走行モードを継続する。なお、この押し走行モード時に、バンパ32が障害物Oに接触することで接触センサ55により検出した反発力が所定以上である場合には、制御手段27(モード判定部67(図3))は、障害物Oが押すことができないものであると判定し、回避走行モードに切り換わる。そして、障害物Oを所定距離、または、所定時間押して移動させた場合には、図3に示すモード判定部67の判定により、制御手段27が通常走行モードに切り換わり、バンパ32を本体ケース20の下部に対して上方に退避させる(図1(a))。なお、この所定距離、あるいは所定時間は、予め設定された一定距離、あるいは一定時間でもよいし、ランダムでもよいし、所定のテーブルデータに基づいて設定してもよい。
これらの動作および判定を、図1(a)、図1(b)、図2および図3を参照しながらより詳細に説明すると、電気掃除機11は、自律走行の際に制御手段27が通常走行モードとなっており、まず、制御手段27(撮像制御部74)により駆動させたカメラ51,51により走行方向前方を撮像する。これら撮像した画像の少なくともいずれかは、メモリ61に記憶することができる。次に、これらカメラ51,51により撮像した画像と、カメラ51,51との間の距離に基づき、深度計算部62により物体などの深度を検出して、障害物センサ77を構成する判定部63がこの物体の深度と所定の閾値とを比較し、その閾値以下に物体があるかどうかを判定する。そして、所定の設定距離以下でない、すなわち深度が大きいと判定した場合には、そのまま通常走行モードを継続し、所定の設定距離よりも遠くない、換言すれば所定の設定距離以下であると判定した場合には、制御手段27(モード判定部67)が、物体が走行の邪魔になる障害物であると判定して、制御手段27が押し走行モード、または、回避走行モードに切り換わる。
このとき、制御手段27(モード判定部67)は、温度センサ56により検出した温度と所定の閾値とを比較して、温度が所定以上となる物体が、障害物センサ77(判定部63)により検出した障害物である場合には、障害物が押すことが好ましくないものであると判定し、温度が所定以上となる物体が、障害物センサ77(判定部63)により検出した障害物でない場合、あるいは、温度センサ56により検出した温度が所定未満の物体が障害物センサ77(判定部63)により検出した障害物である場合には、障害物が押してもよいものであると判定する。具体的に、温度センサ56により検出した温度が所定以上となる物体は、例えばストーブや燭台に設置された蝋燭の炎、あるいは香炉に立てた線香などの熱源、または、人やペットなどであると想定されるので、これらが障害物センサ77により障害物として検出された場合、これらは押すことが好ましくない障害物である。そして、温度が所定未満の押してもよい障害物であると判定した場合には、制御手段27が押し走行モードに切り換わり、温度が所定以上の押すことが好ましくない障害物であると判定した場合には、制御手段27が回避走行モードに切り換わる。
また、制御手段27(モード判定部67)は、高さ検出部64が、障害物センサ77により検出した障害物の高さと所定の閾値とを比較して、高さが所定高さ未満である場合には、障害物が押してもよいものであると判定し、高さが所定高さ以上である場合には、障害物が押すことが好ましくないものであると判定する。具体的に、図4に示すように、床面Fから所定高さH未満の障害物O1,O2,O3は、例えば本、電源コード、あるいはアクセサリなどの小物であると想定されるので、これらは本体ケース20の下部と床面Fとの隙間が通常の場合(隙間G(図1(a))には乗り越えることができないものの押してもよい(押すことができる)障害物であり、所定高さH以上の障害物O4,O5は、例えば電気スタンド、あるいは机や椅子などの脚部または壁面などであると想定され、これらは押すことが好ましくない(押すことができない)障害物である。そして、高さが所定高さ未満の押してもよい障害物であると判定した場合には、制御手段27が押し走行モードに切り換わり、高さが所定高さ以上の押すことが好ましくない障害物であると判定した場合には、制御手段27が回避走行モードに切り換わる。
さらに、制御手段27(モード判定部67)は、縦横比検出部65が、障害物センサ77により検出した障害物の縦横比を所定の閾値と比較し、縦横比にて縦の寸法の横の寸法に対する比率が所定未満である場合には、障害物が押してもよいものであると判定し、この比率が所定以上である場合には、障害物が押すことが好ましくないものであると判定する。具体的に、図5(a)および図5(b)に示すように、横(最大幅)の寸法WI1,WI2に対して縦(高さ)の寸法HI1,HI2が所定以上の比率である障害物O6,O7は、例えばコップ、花瓶や置物などの、上下に細長くて安定感に乏しく、押したときに倒れ易いものと想定されるので、これらは押すことが好ましくない障害物である。一方、横(最大幅)の寸法に対して縦(高さ)の寸法が所定未満の比率である障害物は、縦長でない、比較的安定感があるものと想定されるので、これらは押してもよい障害物である。そして、縦横比の横に対する縦の比率が所定未満の押してもよい障害物であると判定した場合には、制御手段27が押し走行モードに切り換わり、縦横比の横に対する縦の比率が所定以上の押すことが好ましくない障害物であると判定した場合には、制御手段27が回避走行モードに切り換わる。
また、制御手段27(モード判定部67)は、移動検出部66が、障害物センサ77により検出した障害物の電気掃除機11(本体ケース20)に対する所定時間以内の移動を検出した場合には、障害物が押すことが好ましくないものであると判定し、移動を検出しない場合には、障害物が押してもよいものであると判定する。具体的に、移動検出部66が移動を検出した障害物は、例えば掃除領域内にいる人やペットなどと想定されるので、これらは押すことが好ましくない障害物である。そして、自律移動しない、押してもよい障害物であると判定した場合には、制御手段27が押し走行モードに切り換わり、自律移動する、押すことが好ましくない障害物であると判定した場合には、制御手段27が回避走行モードに切り換わる。
押し走行モードでは、制御手段27(可動制御部73)がアクチュエータ33の駆動を制御してバンパ32を下方へと移動させて本体ケース20の下部に対して床面F側である下方へと進出させる。そして、制御手段27(走行制御部71)がモータ35,35(駆動輪34,34)の駆動を制御して電気掃除機11(本体ケース20)を障害物に向かって走行させることで、バンパ32によって障害物を押して床面Fで移動させる。このとき、障害物を所定距離、または、所定時間押して移動させると、制御手段27(走行制御部71)がモータ35,35(駆動輪34,34)の駆動を制御して本体ケース20(電気掃除機11)を停止させ、その位置、あるいは所定距離後退した位置で走行方向を変えるように旋回させる。なお、この押し走行モード時に、バンパ32が障害物Oに接触することで接触センサ55により検出した反発力が所定以上である場合には、例えば壁面や重量物を押している場合、あるいは小物の障害物を壁面まで押し切ってしまっているものと想定されるので、制御手段27(モード判定部67は、障害物が押すことができないものであると判定し、回避走行モードに切り換わる。
また、回避走行モードでは、制御手段27がアクチュエータ33の駆動を制御してバンパ32を上方へと移動させて本体ケース20の下部に対して退避してこの下部と略面一な状態とする。この回避走行モードとしては、様々な制御方法があるが、例えば制御手段27(走行制御部71)がモータ35,35(駆動輪34,34)の駆動を制御して、電気掃除機11(本体ケース20)を停止させ、その位置、あるいは所定距離後退した位置で走行方向を変えるように旋回させる。
そして、押し走行モード、あるいは回避走行モードの後、制御手段27は通常走行モードに切り換わり、電気掃除機11(本体ケース20)が走行を継続する。
このため、例えば図6(a)ないし図6(e)に示すように、電気掃除機11は、押し走行モードで障害物Oを所定距離、あるいは所定時間押した後(図6(a)および図6(b))、その位置を掃除して通常走行モードに切り換わり(図6(c))、掃除を継続する中で、異なる角度から障害物Oを再度検出すると、再度押し走行モードで障害物Oを所定距離、あるいは所定時間押す(図6(d)および図6(e))。したがって、電気掃除機11は、障害物Oを様々な角度から所定距離、または、所定時間ずつ押して移動させることとなり、一定の方向に押し続けて移動させることがなく、障害物Oを壁面などに押し付けにくい。
このように、電気掃除機11(本体ケース20)は、掃除領域内の床面F上を、障害物を押したり回避したりしながら隅々まで自律走行しつつ掃除部22を制御手段27(掃除制御部72)により動作させて床面Fの塵埃を掃除する。すなわち、電気掃除機11は、障害物を検出しても掃除作業を継続するなど、継続した次の動作を行う。
掃除部22では、制御手段27(掃除制御部72)により駆動された電動送風機41、あるいは回転ブラシ42(ブラシモータ43)により床面Fの塵埃を、吸込口31を介して集塵部46へと捕集する。
そして、掃除領域の掃除が完了した場合、あるいは掃除作業中に二次電池28の容量が所定量まで低下して掃除や撮像を完了させるのに不足している(二次電池28の電圧が放電終止電圧近傍まで低下している)などの所定条件時には、電気掃除機11では、充電装置に帰還するように制御手段27(走行制御部71)によってモータ35,35(駆動輪34,34)の動作を制御する。この後、充電端子と充電装置の充電用端子とが接続されると、掃除作業を終了し、制御手段27が待機モード、あるいは充電モードに移行する。
なお、押し走行モードにより障害物を押して移動させた場合には、例えば電気掃除機11が充電装置に帰還したとき(掃除を終了したとき)、押し走行モード中、あるいは押し走行モードからその他の走行モードに切り換わったときなどに、無線LANデバイス47を介して直接、またはインターネットなどの外部ネットワークを経由して外部装置に電子メールなどによって、障害物を押して移動させたことを報知する。このとき、電子メールにカメラ51,51によって撮像されメモリ61に記憶された障害物の画像を添付することで、どの障害物が移動されたかを所有者に報知できる。なお、送信が終了したデータは、メモリ61から消去、あるいは新たなデータを記憶する際に上書きすることで、メモリ61の容量を効率よく使用できる。
上述したように、上記第1の実施形態によれば、可動部材を、本体ケース20の側部に位置し、障害物との接触による衝撃を緩和するバンパ32とすることにより、既存のバンパ32を用いて、機構を共通化することで構造を簡素化できる。特に、このバンパ32は、障害物との接触による反発力によって障害物を検出する接触センサ55の接触子であることにより、衝突時の応力検知機構を共通化して使用できるため、バンパ32を本体ケース20の下部に対して下方に進出させた状態でも、通常のバンパ32による接触センサ55の接触検出機構をそのまま利用して、床面F上の障害物との接触による反発力を検出でき、接触センサ55をも簡素化できる。
なお、上記第1の実施形態において、バンパ32の下部に、床面F側へと伸縮することで上下動する別途の可動部材を構成してもよい。
次に、第2の実施形態を図7および図8を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第2の実施形態は、上記第1の実施形態において、旋回清掃部としての補助掃除手段(補助掃除部)であるサイドブラシ81を備えるものである。
サイドブラシ81は、本体ケース20の下部の前側などの両側に旋回可能に取り付けられて塵埃を掻き集めるもので、サイドブラシモータ82により駆動される。これらサイドブラシ81およびサイドブラシモータ82は、掃除部22に備えられている。
サイドブラシモータ82は、例えば制御手段27の掃除制御部72により導通角制御されることで駆動が制御される。なお、このサイドブラシモータ82専用の制御部を別個に設けてもよい。
そして、掃除部22では、制御手段27(掃除制御部72)により、通常走行モードおよび回避走行モードにおいて駆動された電動送風機41、回転ブラシ42(ブラシモータ43)、あるいはサイドブラシ81(サイドブラシモータ82)により床面の塵埃を、吸込口31を介して集塵部46へと捕集する。また、掃除部22は、制御手段27(掃除制御部72)により、押し走行モードにおいてサイドブラシ81(サイドブラシモータ82)を停止させる。この結果、サイドブラシ81に対して電源コードなどの障害物が絡まりにくくなる。
次に、第3の実施形態を図9および図10を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第3の実施形態は、上記第2の実施形態において、サイドブラシ81が、押し走行モード時にはサイドブラシモータ82とともにバンパ32に対して進行方向後側に位置するものである。
具体的に、本実施形態では、サイドブラシ81が、通常走行モードおよび回避走行モードにおいては、バンパ32よりも前側の塵埃を掻き集める位置に配置されているとともに、押し走行モードとなってバンパ32が本体ケース20の下部に対して下方に進出した状態では、サイドブラシ81がサイドブラシモータ82とともに移動して、バンパ32よりも進行方向後側に位置するものである。これらサイドブラシ81とサイドブラシモータ82とは、前後方向に沿って移動可能に設けられており、例えばサイドブラシ移動手段としてのアクチュエータ83により移動されるように構成されている。このアクチュエータ83は、例えば制御手段27の可動制御部73により、アクチュエータ33と連動して駆動が制御されることで、サイドブラシ81およびサイドブラシモータ82の移動を制御することができるが、他の制御部により駆動が制御されていてもよい。
そして、掃除部22では、制御手段27(掃除制御部72)により、通常走行モードおよび回避走行モードにおいて駆動された電動送風機41、回転ブラシ42(ブラシモータ43)、あるいはサイドブラシ81(サイドブラシモータ82)により床面の塵埃を、吸込口31を介して集塵部46へと捕集する。また、掃除部22は、制御手段27(可動制御部73)により、押し走行モードにおいてアクチュエータ83の駆動を制御してサイドブラシ81(サイドブラシモータ82)をバンパ32に対して移動させて進行方向後側に位置させる。この結果、サイドブラシ81に対して電源コードなどの障害物が絡まりにくくなるとともに、サイドブラシ81の旋回を停止させないので、サイドブラシ81による塵埃の掻き集めを継続できる。
なお、上記第3の実施形態において、サイドブラシ81は予めバンパ32の後側に配置していても同様の作用効果を奏することができる。
また、サイドブラシ81(サイドブラシモータ82)は、押し走行モードにおいて停止させてもよい。この場合には、サイドブラシ81に対して、電源コードなどの障害物がより絡まりにくくなる。
そして、以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、接触センサ55により検出した反発力が所定未満である場合には検出を無視して押し走行モードとなり、反発力が所定以上である場合には回避走行モードとなる。すなわち、押し走行モード時においては、接触センサ55により反発力を検出する毎に障害物を回避するように回避走行モードに切り換わるのでは、バンパ32によって障害物を押すことができないため、接触センサ55により検出した反発力が所定未満である、障害物が押すことができるものである場合には押し走行モードによって押して移動させることができ、例えば壁面まで障害物を押しきった場合や、電気掃除機11の駆動力では押して移動させることが困難な重量物など接触センサ55により検出した反発力が所定以上となる障害物については、回避走行モードに切り換わって障害物を回避することで、重くて動かない(動きにくい)障害物を無理に移動させることなども回避できる。
次に、第4の実施形態を図11(a)、図11(b)および図12を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第4の実施形態は、上記第1の実施形態のバンパ32が本体ケース20に対して上下動しないとともに、本体ケース20に対して上下動する可動部材84を本体ケース20の下部、すなわちバンパ32と異なる位置に備えるものである。
可動部材84は、上下動により本体ケース20の下部に対して床面F側に進退するように構成されている。なお、この上下動としては、例えば回動により上下動する構成なども含む。この可動部材84は、本体ケース20の下部にて例えば駆動輪34,34および旋回輪36の前方に位置し、幅方向に長手状に延びている。また、この可動部材84は、アクチュエータ33によって上下動されるように構成されている。
そして、障害物センサ77により電気掃除機11(本体ケース20)の走行方向である前方に障害物を検出すると、制御手段27(モード判定部67)は、温度センサ56により検出した温度が所定以上である場合、高さ検出部64により検出した障害物の高さが所定以上である場合、縦横比検出部65により検出した障害物の縦横比において、縦の寸法が横の寸法に対して所定の割合以上である場合、あるいは、移動検出部66によって障害物が移動していることを検出した場合の少なくともいずれかの場合、障害物は押すことが好ましくないものであると判定し、回避走行モードに切り換わって、図11(a)に示すように、可動部材84を本体ケース20の下部に対して退避させて、モータ35,35(駆動輪34,34)の駆動を制御して、障害物を回避するように電気掃除機11(本体ケース20)を走行させる。そして、障害物を回避した後は、モード判定部67の判定により、制御手段27が通常走行モードに切り換わる。
一方、制御手段27(モード判定部67)は、温度センサ56により検出した温度が所定未満である場合、高さ検出部64により検出した障害物の高さが所定未満である場合、縦横比検出部65により検出した障害物の縦横比において、縦の寸法が横の寸法に対して所定の割合未満である場合、あるいは、移動検出部66によって障害物が移動していることを検出しない場合の少なくともいずれかの場合、障害物は押してもよいものであると判定し、押し走行モードに切り換わって、図11(b)に示すように、可動部材84を本体ケース20の下部に対して床面F側である下方へと進出させて本体ケース20と床面Fとの隙間G(図11(a))を埋め、モータ35,35(駆動輪34,34)の駆動を制御して、図11(b)に示す可動部材84の方向に電気掃除機11(本体ケース20)を前進させ、障害物Oを押す。
このように、可動部材84は、下降させる可動部を構成するための構造スペースが必要である一方で、自走式の電気掃除機11の場合には、バンパ32が配置されている前側面において、進行方向の障害物や接触などを検出するためのセンサ部26(接触センサ55、温度センサ56)やカメラ51,51およびランプ53などの機構が集まっており、構造物が集中しているため、新たな機構を構成するスペースが乏しい場合がある。そのため、上記第4の実施形態によれば、可動部材84を本体ケース20の前側の側部に位置するバンパ32と異なる位置である本体ケース20の下部に配置することにより、進行方向前方に配置された各種構造物を避けることができるので、可動部材84を比較的構成スペースに余裕のある位置に配置でき、構成が容易となる。
次に、第5の実施形態を図13(a)、図13(b)および図14を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第5の実施形態は、上記第1の実施形態のバンパ32が本体ケース20に対して上下動しないとともに、本体ケース20に対して上下動する可動部材84を本体ケース20の後部、すなわちバンパ32と異なる位置に別途備えるものである。
この可動部材84は、本体ケース20の下部にて例えば駆動輪34,34の後方に位置し、幅方向に長手状に延びている。また、この可動部材84は、例えばアクチュエータ33によって上下動されるように構成されている。
そして、障害物センサ77により電気掃除機11(本体ケース20)の走行方向である前方に障害物を検出すると、制御手段27(モード判定部67)は、温度センサ56により検出した温度が所定以上である場合、高さ検出部64により検出した障害物の高さが所定以上である場合、縦横比検出部65により検出した障害物の縦横比において、縦の寸法が横の寸法に対して所定の割合以上である場合、あるいは、移動検出部66によって障害物が移動していることを検出した場合の少なくともいずれかの場合、障害物は押すことが好ましくないものであると判定し、回避走行モードに切り換わって、図13(a)に示すように、可動部材84を本体ケース20の下部に対して退避させて、モータ35,35(駆動輪34,34)の駆動を制御して、障害物を回避するように電気掃除機11(本体ケース20)を走行させる。そして、障害物を回避した後は、モード判定部67の判定により、制御手段27が通常走行モードに切り換わる。
一方、制御手段27(モード判定部67)は、温度センサ56により検出した温度が所定未満である場合、高さ検出部64により検出した障害物の高さが所定未満である場合、縦横比検出部65により検出した障害物の縦横比において、縦の寸法が横の寸法に対して所定の割合未満である場合、あるいは、移動検出部66によって障害物が移動していることを検出しない場合の少なくともいずれかの場合、障害物は押してもよいものであると判定し、押し走行モードに切り換わって、図13(b)に示すように、可動部材84を本体ケース20の下部に対して床面F側である下方へと進出させて本体ケース20と床面Fとの隙間G(図13(a))を埋め、モータ35,35(駆動輪34,34)の駆動を制御して電気掃除機11(本体ケース20)を180°旋回させて向きを変え、図13(b)に示す可動部材84の方向に電気掃除機11(本体ケース20)を走行させ、障害物Oを押す。
このように、第5の実施形態によれば、可動部材84を本体ケース20の前側の側部に位置するバンパ32と異なる位置である本体ケース20の後部に配置することにより、進行方向前方に配置された各種構造物を避けることができるので、可動部材84を比較的構成スペースに余裕のある位置に配置でき、構成が容易となる。特に、自走式の電気掃除機11の後部は、前部と比較して構成スペースにより余裕があるため、この電気掃除機11(本体ケース20)の後部に可動部材84を配置することで、可動部材84およびアクチュエータ33などの配置スペースをより大きく取ることができる。
なお、上記第5の実施形態において、可動部材84は、例えばバンパ32と同様に、本体ケース20の両側から後側に亘る部分、すなわち本体ケース20の略後半分の外周面(外郭)を覆う円筒面状(半円弧状)に湾曲して形成してもよい。
また、上記第2および第3の実施形態のサイドブラシ81を、上記第4および第5の実施形態にそれぞれ適用してもよい。すなわち、サイドブラシ81を押し走行モード時に停止させる構成としてもよいし、サイドブラシ81を可動部材84の進行方向後側に移動する構成、あるいは可動部材84に対して押し走行モード時の進行方向後側に予め配置された構成としてもよい。
なお、上記各実施形態において、深度計算部62、判定部63、高さ検出部64、縦横比検出部65、移動検出部66、掃除制御部72、撮像制御部74および照明制御部75はそれぞれ制御手段27中に備えたが、それぞれ互いに別構成としてもよいし、いずれか2つ以上を任意に組み合わせてもよい。
また、温度センサ56、高さ検出部64、縦横比検出部65、移動検出部66は、それぞれ必須の構成ではなく、少なくともいずれか一つを備えている構成や、いずれか複数を備えている構成などとすることもできる。
さらに、障害物センサ(障害物検出手段)77を、カメラ51,51により撮像した画像処理を用いたものとしたが、例えば超音波や赤外線などを用いるセンサとすることもできる。この場合には、例えば障害物センサを上下に複数配置したり、左右に複数配置したりすることで、障害物の高さや縦横比の検出が可能になる。
また、バンパ32は、障害物との衝突による反発力によって障害物を検出する接触センサ55の接触子としたが、反発力以外でも、例えば障害物との衝突によるバンパ32の移動や変形によって障害物を検出する接触センサの接触子としてもよいし、障害物との衝突による衝撃を緩和する単なるバンパでもよい。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、本体ケース20にバンパ32あるいは可動部材84を本体ケース20の下部に対して進退可能に設け、制御手段27が、バンパ32あるいは可動部材84を本体ケース20の下部に対して床面F側に進出させた状態でこのバンパ32あるいは可動部材84を進行方向側として本体ケース20を走行させる押し走行モードを備えることにより、この押し走行モードによってバンパ32あるいは可動部材84で障害物を押して移動させ、その位置の床面Fの掃除が可能となる。したがって、床面F上の小物などの障害物を所有者が予め片付けておく作業を必要とすることなく、障害物を巻き込まずに電気掃除機11自ら移動させながら掃除ができるので、所有者の手間を低減するとともに、掃除可能な領域を拡大でき、使い勝手を向上できる。また、小物を誤って吸い込む不具合を回避できるとともに、電源コードなどに絡まって、電気掃除機11がスタックするなどの不具合を回避できる。
さらに、通常走行モード時には、バンパ32あるいは可動部材84が本体ケース20の下部に対して床面F側に突出しないので、床面Fの段差などを乗り越えるなどの通常走行が可能となる。
また、制御手段27が、非接触センサである障害物センサ77により障害物を検出したときに、押し走行モードとなることにより、床面F上に障害物があるときには確実に押し走行モードに切り換わり、障害物に絡まったり障害物を巻き込んだりすることをより確実に抑制できる。
さらに、障害物センサ77が、カメラ51によって撮像した画像を処理することで障害物を検出することにより、撮像した画像を適宜処理することで、障害物を容易に検出できるとともに、障害物の形状なども詳細に検出できる。
また、カメラ51によって撮像した画像に基づいて障害物を検出する障害物センサ77を用いているため、移動検出部66によって障害物の移動を容易に検出でき、この障害物の移動を移動検出部66によって検出したときに、制御手段27が押し走行モード以外の走行モード(例えば回避走行モード)となることにより、例えば自ら移動する人やペット(猫など)を障害物と判断して電気掃除機11がバンパ32あるいは可動部材84によって押して進む不具合を回避できる。すなわち、人やペット、あるいは他の自走式の電気掃除機など動くものに対して電気掃除機11によって押す動作をすることは不要であるばかりか、人やペットを押すと不快感を与えるおそれがあり、自ら移動するものは押さないようにすることが有効である。
さらに、制御手段27が、障害物センサ77により検出した障害物の縦横比が所定以上であることを縦横比検出部65によって検出したときに押し走行モード以外の走行モード(例えば回避走行モード)となることにより、床面F上に載置されたコップ、花瓶あるいは置物など、高さ方向に長く倒れやすいものに対しては、押す動作を行わないことで、これらを倒してしまうなどの不具合を回避できる。
また、高さが高い障害物を押して移動させる場合には、倒したり、上に載置した物を揺らして落としたりなどの不具合が想定される。そのため、制御手段27が、障害物センサ77により検出した障害物の高さが所定未満であることを高さ検出部64によって検出したときに押し走行モードとなることにより、所定高さ未満の障害物に対してのみバンパ32あるいは可動部材84によって押して進む動作を行い、例えば電気スタンドの支柱や、机の脚など、押すことで倒したり、机の上の物を揺らして落したりするなどの不具合を回避できるとともに、壁面を不必要に押す動作をも回避できる。
さらに、例えばストーブなど熱源となるものを押すことは好ましくないため、制御手段27が、温度センサ56により検出した温度が所定以上の物体が障害物であるときに押し走行モード以外の走行モードとなることにより、熱源となる障害物を押す不具合を回避できるとともに、人やペットなど、体温を有するものに対して押す動作をも回避できる。
したがって、電気掃除機11が、倒れ易いものや高温のもの、押す必要のないもの、あるいは押すことができないものなどを押して進むことを抑制でき、信頼性を確保できる。
また、障害物を押す動作において、壁面まで押しきる動作をおこなってもよいが、掃除後において、障害物がすべて壁面付近に押しつけられ、さらには、掃除の順番によっても変わってくるが、未掃除の壁面部分に障害物を押して移動させた場合に、障害物を壁面に沿って、さらに押して進む動作が入らないと、その部分が掃除できない可能性がある。さらには、障害物を長距離押す可能性があり、障害物を床面F上で引き摺って不具合が発生したり、ベッドの下などの狭所に障害物を押して移動させたりするおそれがある。上記の電気掃除機11の場合、障害物のある位置の床面を掃除するために障害物を移動させることができればよいので、障害物を長い距離に亘って移動させる必要はない。そこで、制御手段27が、押し走行モードにより障害物を所定距離または所定時間押した後、回避走行モードに切り換わることにより、障害物のあった位置の床面Fを掃除するという目的を達成しつつ、障害物を過剰に移動させることにより生じる特段の不具合を抑制できる。さらには、障害物の元あった場所からの移動範囲を最小限にとどめることができるため、掃除後に障害物の配置が大きく変わって所有者が戸惑ったり、障害物を探し回ったりするなどの不具合を回避できる。
さらに、押し走行モードにより障害物をバンパ32あるいは可動部材84で押したことを、無線LANデバイス47を介して電子メールなどにより報知することにより、電気掃除機11により障害物を押して進む動作が行われたことを所有者が認識できるので、例えば障害物が元あった場所から移動していても所有者が不審に思うことがない。また、報知するための電子メールには、カメラ51で撮像した画像を添付することにより、どの障害物がどこに押されたかを認識でき、仮にベッドの下などに障害物を押し込んだ場合でも、所有者が電子メールに添付された画像を参照することで容易に障害物の場所を認識でき、より一層の安心感を得ることができる。
そして、押し走行モードを使用するか否かを選択できることにより、例えば床面F上に壊れ易いものなど、押して進むことが好ましくない障害物がある掃除領域を掃除する場合に、押し走行モードを選択しないことで、障害物の破損などを防止できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。