JP2017143204A - 熱伝導性樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高熱伝導性且つ電気絶縁性の樹脂成形体の製造方法を提供する。【解決手段】熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、MはPt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを混合して無機充填剤の無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を付着させ、更にバインダー樹脂及び分散媒を添加し、混合して組成物を調製した後に、該組成物を所定形状に成形した状態で磁場を印加して上記無機充填剤における無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きを一定方向に配向させながら、その組成物を硬化させて熱伝導性樹脂成形体を得る。【選択図】なし
Description
本発明は、高熱伝導性で且つ電気絶縁性の樹脂成形体及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは磁場配向により所定方向に無機充填剤を配向させて得られる高熱伝導性で且つ電気絶縁性の板状の熱伝導性樹脂成形体とその製造方法に関する。
近年、半導体デバイスや各種の電気製品は益々、小型化、高容量化が進み、その放熱が大きな問題となっている。この放熱を効率良く行うために、より高熱伝導で電気絶縁性の板状(即ち、シート状やフイルム状)などの成形体が望まれている。中でもコスト面や馴染み性から高分子系の樹脂成形体が特に好まれている。
従来、これらの高熱伝導性で且つ電気絶縁性の成形体は高熱伝導率で且つ電気絶縁体の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素などの無機物の粉体を充填した樹脂シート或いは樹脂フイルム等が利用されている。しかし、より高性能を要求するときには更にこれらの組成物やプレ成形体を延伸力や電場、或いは磁場を印加してその原料組成物やプレ成形体において無機物の粉体を一定方向、例えば厚み方向に配向させつつ成形した成形体が用いられている(例えば、特開2002−80617号公報(特許文献1)参照。)。
これらの中でも最も効果的と言われている磁場配向による方法では、
(1)バインダー樹脂、扁平状反磁性フィラーと、例えば、チタン酸カリウムなどの様な針状反磁性フィラーより成る組成物を極低温下で超伝導磁石の高磁場の下に配向させる方法(特開2009−10296号公報(特許文献2))、或いは
(2)極めて特殊な平面構造を持ったグラフェンを磁場配向剤として無機充填剤に被覆した後、常温、静磁場に依る低磁場での配向する方法(「低磁場かつ静磁場中成形によるc軸配向Si3N4セラミックスの作製」、高橋拓実ら、公益社団法人日本セラミックス協会2015年年会講演予稿集、3L02 (2015)(非特許文献1))
などが提案されている。
(1)バインダー樹脂、扁平状反磁性フィラーと、例えば、チタン酸カリウムなどの様な針状反磁性フィラーより成る組成物を極低温下で超伝導磁石の高磁場の下に配向させる方法(特開2009−10296号公報(特許文献2))、或いは
(2)極めて特殊な平面構造を持ったグラフェンを磁場配向剤として無機充填剤に被覆した後、常温、静磁場に依る低磁場での配向する方法(「低磁場かつ静磁場中成形によるc軸配向Si3N4セラミックスの作製」、高橋拓実ら、公益社団法人日本セラミックス協会2015年年会講演予稿集、3L02 (2015)(非特許文献1))
などが提案されている。
「低磁場かつ静磁場中成形によるc軸配向Si3N4セラミックスの作製」、高橋拓実ら、公益社団法人日本セラミックス協会2015年年会講演予稿集、3L02 (2015)
しかしながら、上記(1)の方法では極低温に用いる装置は高価で大型化が難しいこと、上記(2)の方法では磁場配向剤のグラフェンは高価な上に導電性のため、得られる成形体は必然的にコスト高になり、その上、電気絶縁性の成形体が得られないこと、などの欠点が有る。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、より安価で簡便に高熱伝導性で電気絶縁性の熱伝導性樹脂成形体並びにその製造方法を提供することにある。より具体的には磁場配向により得られる高熱伝導性且つ電気絶縁性の樹脂成形体並びにその製造方法に関するものであり、更に詳しくは磁場配向により得られる高熱伝導性で且つ電気絶縁性の樹脂系の板形状(シート状又はフイルム状)の成形体とその製造方法を提供するものである。
本発明は、上記目的を達成するため、下記の熱伝導性樹脂成形体及びその製造方法を提供する。
〔1〕 バインダー樹脂中に、熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、Mは、Pt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを含み、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが一定方向に配向していることを特徴とする熱伝導性樹脂成形体。
〔2〕上記無機充填剤における無機粉体の表面の少なくとも一部が上記磁場配向剤である鉄酸化物粒子で被覆されていることを特徴とする〔1〕記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔3〕 上記バインダー樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔4〕 上記無機充填剤は、窒化アルミニウム、窒化珪素及び窒化ホウ素の中から選ばれる少なくとも1種の電気絶縁体であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔5〕 樹脂バインダー100質量部に対して上記無機充填剤を10〜500質量部含むことを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔6〕 上記磁場配向剤の平均一次粒子径が7.5〜50nmであることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔7〕 板形状の成形体であって、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが成形体の厚み方向に配向していることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔8〕 熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、MはPt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを混合して無機充填剤の無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を付着させ、更にバインダー樹脂及び分散媒を添加し、混合して組成物を調製した後に、該組成物を所定形状に成形した状態で磁場を印加して上記無機充填剤における無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きを一定方向に配向させながら、その組成物を硬化させて成形体を得ることを特徴とする熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
〔9〕上記無機充填剤と磁場配向剤とを混合した段階で、該無機充填剤における無機粉体の表面の少なくとも一部を磁場配向剤である鉄酸化物粒子で被覆することを特徴とする〔8〕記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
〔10〕 上記バインダー樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とする〔8〕又は〔9〕記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
〔11〕 上記磁場の印加がパルス磁気コイルを用いて所定方向に磁束密度0.1〜10テスラの磁場を印加するものであることを特徴とする〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
〔1〕 バインダー樹脂中に、熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、Mは、Pt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを含み、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが一定方向に配向していることを特徴とする熱伝導性樹脂成形体。
〔2〕上記無機充填剤における無機粉体の表面の少なくとも一部が上記磁場配向剤である鉄酸化物粒子で被覆されていることを特徴とする〔1〕記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔3〕 上記バインダー樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔4〕 上記無機充填剤は、窒化アルミニウム、窒化珪素及び窒化ホウ素の中から選ばれる少なくとも1種の電気絶縁体であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔5〕 樹脂バインダー100質量部に対して上記無機充填剤を10〜500質量部含むことを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔6〕 上記磁場配向剤の平均一次粒子径が7.5〜50nmであることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔7〕 板形状の成形体であって、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが成形体の厚み方向に配向していることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
〔8〕 熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、MはPt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを混合して無機充填剤の無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を付着させ、更にバインダー樹脂及び分散媒を添加し、混合して組成物を調製した後に、該組成物を所定形状に成形した状態で磁場を印加して上記無機充填剤における無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きを一定方向に配向させながら、その組成物を硬化させて成形体を得ることを特徴とする熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
〔9〕上記無機充填剤と磁場配向剤とを混合した段階で、該無機充填剤における無機粉体の表面の少なくとも一部を磁場配向剤である鉄酸化物粒子で被覆することを特徴とする〔8〕記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
〔10〕 上記バインダー樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とする〔8〕又は〔9〕記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
〔11〕 上記磁場の印加がパルス磁気コイルを用いて所定方向に磁束密度0.1〜10テスラの磁場を印加するものであることを特徴とする〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
本発明によれば、無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが一定方向に配向していることにより、高熱伝導性で且つ電気絶縁性の樹脂成形体を提供することができる。
以下に、本発明に係る熱伝導性樹脂成形体の製造方法について説明する。なお、数値範囲として「a〜b」と表記した場合、特に断らない限り、「a以上b以下」を意味する。
[熱伝導性樹脂成形体]
本発明に係る熱伝導性樹脂成形体は、バインダー樹脂中に、熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、Mは、Pt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを含み、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが一定方向に配向していることを特徴とするものである。
本発明に係る熱伝導性樹脂成形体は、バインダー樹脂中に、熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、Mは、Pt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを含み、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが一定方向に配向していることを特徴とするものである。
ここで、バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂の各種エラストマーや非エラストマーの樹脂が挙げられ、特に限定されるものではないが、後述する製造方法で利用する磁場配向により一定方向に配向させた無機充填剤をできる限り速やかに固定化する必要から、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂及び/又はウレタン不飽和ポリエステル等の光硬化性樹脂であることが好ましい。
また、無機充填剤としては、アルミナ、シリカ等の金属酸化物や窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素等の窒化物のいずれでもよいが、熱伝導異方性を有する無機粉体であることが好ましく、高熱伝導性で粒形状が配向させ易い針状や扁平状の形を持つ窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素等の電気絶縁性無機粉から選ぶことがより好ましい。これらの無機粉体を少なくとも1種或いは2種以上混合して使用する。
なお、熱伝導異方性を有するとは、その無機粉体の向きによって熱伝導率が異なることを意味する。
なお、熱伝導異方性を有するとは、その無機粉体の向きによって熱伝導率が異なることを意味する。
無機充填剤の無機粉体の平均一次粒径は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.3〜50μmであることがより好ましい。この無機粉体の平均一次粒径は、TEM(透過型電子顕微鏡)像より画像処理して算出される。詳しくは、画像処理法で100個の粒子の最長径と最短径を測定して(最長径+最短径)/2を求め、その平均値を平均一次粒子径とした。
無機充填剤の使用量は、バインダー樹脂100質量部に対して10〜500質量部の範囲が好適である。無機充填剤が10質量部未満であると熱伝導性が悪くなり、500質量部より多いと組成物とした場合の粘度が著しく高くなり、磁場配向が困難となるおそれがある。
磁場配向剤としては、各種の高磁気異方性(高保磁力)の物質(材料)が考えられるが、その主成分がCo、Ni、Cr等の希少金属では高価となり、経済的でない。一方、磁性材料として極めて一般的に知られているα、β、γ型のFe2O3は安価で、経済的であるが、何れも磁気異方性が低く(低保磁力)、無機充填剤の無機粉体を磁場配向させる能力が低く、効果的でない。そこで、本発明者等は鋭意、調査検討した結果、これまでα、β、γ型のFe2O3と同様に磁気特性上、適用困難と考えられ、又、その合成の困難さから、磁場配向剤の俎上には全く上がらなかったε型Fe2O3結晶(ε型Fe2O3のFeサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を磁性相にもつ鉄酸化物粒子が意外にも磁場配向剤として高特性である事を知得した。中でも、保磁力5000(Oe)以上のε型Fe2O3結晶(ε型Fe2O3のFeサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を磁性相にもつ鉄酸化物粒子を磁場配向剤として用いると、比較的容易に無機充填剤の無機粉体を一定方向に配向させることが可能であり、此れは従来のα、β、γ型のFe2O3ではなし得ないものであった。
また、磁場配向剤である前記ε型Fe2O3結晶(ε型Fe2O3のFeサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を磁気相にもつ鉄酸化物粒子の平均一次粒子径が7.5〜50nmであることが好ましい。平均一次粒子径は本来、小さければ小さい程、無機充填剤の無機粉体との馴染みがよく、好適であるが、ε型Fe2O3結晶(ε型Fe2O3のFeサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)の特徴として、その鉄酸化物粒子の平均一次粒子径が7.5nmより小さいと磁気異方性(保磁力)が急激に低下し、無機充填剤を配向させる能力が著しく劣ってしまう場合がある。一方、平均一次粒子径が50nm超では高磁気異方性(高保磁力)ではあるが一定値に飽和してしまい、最早それ以上の磁気特性の向上は期待できず、合成時間も長くなり経済的でない。
なお、この鉄酸化物粒子の平均一次粒子径は、無機粉体と同様にTEM(透過型電子顕微鏡)像より画像処理して算出される。詳しくは、画像処理法で100個の粒子の最長径と最短径を測定して(最長径+最短径)/2を求め、その平均値を平均一次粒子径とした。
なお、この鉄酸化物粒子の平均一次粒子径は、無機粉体と同様にTEM(透過型電子顕微鏡)像より画像処理して算出される。詳しくは、画像処理法で100個の粒子の最長径と最短径を測定して(最長径+最短径)/2を求め、その平均値を平均一次粒子径とした。
なお、本発明では、ε型Fe2O3結晶においてFeサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含むことができる。特に、金属元素Mが白金族元素、例えばPt、Rhなどを用いると更なる高保磁力が得られ、高い磁場配向が可能となるのでコストよりも特性重視の場合には上記の置換されたものが好適とされる。また、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1であるが、その置換量に応じてε型Fe2O3結晶の保磁力を向上させることができる。
これらのε型Fe2O3結晶(ε型Fe2O3のFeサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を磁気相にもつ鉄酸化物粒子が磁場配向剤として特に有効に働く理由は明確ではないが、本発明に用いる平均一次粒子径7.5〜50nmのε型Fe2O3結晶(ε型Fe2O3のFeサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を磁気相にもつ鉄酸化物の一次粒子は球状、ロッド状、扁平状など、各種の形状であるが、通常の存在形態は、個々の一次粒子が多数集まった凝集粒として存在し、平面的な動きをしている。この凝集粒は一般的に「いびつ」で、平面的には非対称であり、直交する2軸(X軸、Y軸)方向の径として長短を有する。このことにより、成形体製造用の組成物を調製する際に無機充填剤と良く混合しながら摺動して(互いに擦り合わせるようにして)馴染ませたとき、その摺動応力で無機充填剤の無機粉体の長手方向に沿って凝集粒の長手もその方向に揃い易いと推定され、その結果、磁場配向を助長するものと考えられる。
磁場配向剤の使用量は、質量部の比率として(磁場配向剤)/(無機充填剤+磁場配向剤)が0.01以上1未満であるときが経済的にも特性的にも好ましく、0.01以上0.9以下がより好ましく、0.1以上0.8以下が更に好ましい。これは、(磁場配向剤)/(無機充填剤+磁場配向剤)が0.01未満であると磁場配向剤としての効果が弱過ぎ、1近傍になると熱伝導性が劣り好ましくないからである。
また、上記無機充填剤(無機粉体)の表面に上記磁場配向剤(鉄酸化物粒子)が付着しており、該無機充填剤(無機粉体)表面の少なくとも一部が上記磁場配向剤(鉄酸化物粒子)で被覆されていることが好ましい。
本発明における熱伝導性樹脂成形体の形状は、板形状であることが製造上、磁場配向が行い易く無機充填剤の配向が高くなり熱伝導率の向上効果も大きいものが得られ易いため好ましい。なお、用途に応じてその厚みを調整してシート状(例えば、厚さ0.25mm以上のもの)、或いはフイルム状(例えば、厚さ0.25mm未満のもの)にするとよい。
本発明の熱伝導性樹脂成形体では、成形体内に含まれる無機充填剤である無機粉体においてより大きな熱伝導率を示す向きが一定方向に揃って配向していることから、成形体の特定方向に高い熱伝導性を有する。無機充填剤である無機粉体においてより大きな熱伝導率を示す向きとは、その材料や形状によって異なるが、例えば、微粒子の柱状の窒化珪素の場合、その長手方向(c軸方向)であり、六方晶窒化ホウ素(h−BN)の場合、a軸方向である。即ち、本発明では高い熱伝導率を示す方向に無機充填剤の粉体の向きが揃った状態で成形体内で充填されている。
[熱伝導性樹脂成形体の製造方法]
本発明に係る熱伝導性樹脂成形体の製造方法は、熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、MはPt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを混合して無機充填剤の無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を付着させ、更にバインダー樹脂及び分散媒を添加し、混合して組成物を調製した後に、該組成物を所定形状に成形した状態で磁場を印加して上記無機充填剤における無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きを一定方向に配向させながら、その組成物を硬化させて上記本発明の成形体を得るものである。
詳しくは、以下のように行なうとよい。
本発明に係る熱伝導性樹脂成形体の製造方法は、熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、MはPt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを混合して無機充填剤の無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を付着させ、更にバインダー樹脂及び分散媒を添加し、混合して組成物を調製した後に、該組成物を所定形状に成形した状態で磁場を印加して上記無機充填剤における無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きを一定方向に配向させながら、その組成物を硬化させて上記本発明の成形体を得るものである。
詳しくは、以下のように行なうとよい。
まず、上述した無機充填剤と磁場配向剤とを準備し、両者を十分に混合摺動しつつ、無機充填剤である無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を十分に付着させ、馴染ませる。このとき、無機充填剤(無機粉体)の表面の少なくとも一部を磁場配向剤(鉄酸化物粒子)で被覆することが好ましく、無機充填剤(無機粉体)の表面の50%以上を磁場配向剤(鉄酸化物粒子)で被覆することがより好ましい。これにより、組成物に磁場を印加するとその作用を受けた磁場配向剤(鉄酸化物粒子)と共に無機充填剤を粉体ごとに特定の方向に揃えて配向させることが可能となる。
詳しくは、熱伝導異方性を有する無機粉体では、その熱伝導異方性に対応して形状異方性を有する。形状異方性を有する無機粉体の表面を磁場配向剤(鉄酸化物粒子)で被覆した状態で磁場を印加すると、その無機粉体の長手方向が磁場の磁束方向に揃うようになる。本発明では、熱伝導異方性及び形状異方性を有する無機粉体の表面に磁場配向剤(鉄酸化物粒子)を付着(被覆)させた状態とし、磁場を印加してその無機粉体の長手方向が特定方向に向くように配向させることにより、該無機粉体の熱伝導率のより大きな向きが所望の方向に揃うようにするものである。例えば、微粒子の柱状の窒化珪素の場合、その長手方向(c軸方向)が熱伝導率がより大きな向きであり、鱗片状の六方晶窒化ホウ素(h−BN)の場合、面方向(a軸方向)が熱伝導率がより大きな向きであり、それぞれその熱伝導率がより大きな方向が板形状の成形体において厚み方向となるように配向させることができるようになる。
なお、無機充填剤である無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を付着させる方法は、例えばニーダーやプラネタリーミキサー或いは乾式粒子複合化装置などを用いて無機粉体と鉄酸化物粒子を十分に混合摺動すれば(混合しながら互いに擦り合わせれば)よい。これにより、無機充填剤である無機粉体の表面を磁場配向剤である鉄酸化物粒子で被覆することができる。
次に、この混合物に上述したバインダー樹脂及び分散媒を添加し、混合して組成物を調製する。分散媒として、使用する樹脂バインダーに適した各種の分散媒を用いるとよく、例えば水、エタノール、酢酸エチル、トルエンなどを用いるとよい。この分散媒の使用量を無機充填剤(無機粉体)を磁場配向し易くなる程度の粘度となるように調整する。また、必要に応じて種々の界面活性剤などの添加剤を加えてもよい。
次いで、調製した組成物を所定形状に成形する(組成物成形体)。このとき、板形状に成形することが好ましい。このとき、厚みのある成形体の場合には型に入れるとよく、薄い成形体の場合には平板上に塗布するとよい。
続いて、この組成物成形体について磁場を印加して組成物成形体中の無機充填剤(無機粉体)においてより大きな熱伝導率を示す向きを一定方向に揃えて配向させる。
このとき、磁場を印加する装置(手段)としては、静磁場(永久磁石)、超電導磁石、パルス着磁コイルなどが挙げられるが、前記の組成物中の無機充填剤(無機粉体)をその熱伝導率のより大きな方向を一定方向に揃えて配向させるにはある程度の強さの磁場の発生が必要であり、例えば組成物成形体の厚み方向に好ましくは磁束密度0.1〜10テスラの磁場を印加させることが選択される。磁場強度が0.1テスラ未満であると上記配向が十分にできず、10テスラ超では配向効果は大きいが装置が膨大となり、経済的ではない。
また、これに加えて大型形状の組成物成型体の磁場配向やその後の硬化工程など、種々の工程の実施のし易さを考えると磁場発生装置としてはパルス着磁コイルが最も好ましい。静磁場では保磁力が小さく、無機充填剤(無機粉体)の配向が不良となるおそれがあり、超電導磁石では超電導を発生させる為、極低温装置が不可欠であり、その維持にも大きなコストが掛かるためである。更に装置の大型化も難しく、大型の成型体作成には不向きである。これに対して、パルス着磁コイルは比較的コンパクトな装置サイズも磁束密度0.1〜10テスラの磁場を発生でき、最適である。この装置を用いれば高磁場下で無機充填剤を磁場配向できるので、成型体は高熱伝導性のものが得られる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例では無機充填剤(無機粉体)の配向度を後述する方法により参考値として求めた。即ち、無磁場でプレス成型し作成した1mm厚シートの厚み方向の熱伝導率を1.0とし、各々の実施例ではそれぞれ記載の磁場下で配向させ、硬化させた後に1mm厚のシートを作製し、上記と同一条件下で熱伝導率を求め、その比を取って無機充填剤(無機粉体)の配向度(参考値)とした。また、磁場配向剤(鉄酸化物粒子)であるε−Fe2O3結晶粉の保磁力は常温での磁気ヒステリシスループを測定して求めた。なお、磁気ヒステリシスループの測定はDigtal Measurement Systems社製の振動試料型磁力計を用いて行った。
なお、実施例及び比較例では無機充填剤(無機粉体)の配向度を後述する方法により参考値として求めた。即ち、無磁場でプレス成型し作成した1mm厚シートの厚み方向の熱伝導率を1.0とし、各々の実施例ではそれぞれ記載の磁場下で配向させ、硬化させた後に1mm厚のシートを作製し、上記と同一条件下で熱伝導率を求め、その比を取って無機充填剤(無機粉体)の配向度(参考値)とした。また、磁場配向剤(鉄酸化物粒子)であるε−Fe2O3結晶粉の保磁力は常温での磁気ヒステリシスループを測定して求めた。なお、磁気ヒステリシスループの測定はDigtal Measurement Systems社製の振動試料型磁力計を用いて行った。
[実施例1]
β−Si3N4柱状粉(c軸の熱伝導率;182W/mK、a軸の熱伝導率;70W/mK、平均短軸長;0.8μm、平均長軸長;7μm)400質量部と、ε−Fe2O3結晶粉(平均一次粒子径;10nm、保磁力;6600(Oe))2質量部を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン(株)製)に入れ、十分に混合してβ−Si3N4柱状粉にε−Fe2O3結晶粉を付着させた後、液状エポキシ樹脂100質量部とアミン触媒5質量部を加え、更に十分混合した後にその組成物をポリエチレン容器に1mm厚シートになる様に注ぎ、その厚み方向にN極とS極とを対向させたパルス着磁コイルにより磁束密度0.2テスラの磁場を15分間印加してβ−Si3N4柱状粉を十分に配向させた。このとき、β−Si3N4柱状粉のc軸方向が組成物成形体の厚み方向に揃うように配向させた。その後、この組成物成形体を100℃×5時間の条件で加熱して完全に硬化させて厚さ1mmの成形体を得た。
また、比較例1−1として、実施例1と同じ混合組成物を用いて、磁場を印加しない条件で成形し、その他は実施例1と同一条件で厚さ1mmの成形体を作製した。更に、比較例1−2として、実施例1の組成物中でε−Fe2O3結晶粉を添加せず、その他は実施例1と同一条件(即ち、組成物成形体に磁場印加して加熱硬化させる条件)で厚さ1mmの成形体を作製した。
以上のようにして得られた成形体の熱伝導率を測定した。なお、成形体サンプルの熱伝導率の測定は迅速熱伝導率計(京都電子工業(株)社製、QTM−500)で測定した(以下、同じ)。
その結果、実施例1と比較例1−1の熱伝導率の比(実施例1/比較例1−1)は約3.5となった。また、比較例1−1と比較例1−2の熱伝導率の比(比較例1−1/比較例1−2)は1.1となった。
以上の結果より、ε−Fe2O3結晶粉は磁場配向剤としてβ−Si3N4柱状粉に添加混合した組成物を磁場雰囲気下に置くことでβ−Si3N4柱状粉をそのc軸方向が成形体の厚み方向に揃うように十分に配向することができ、成形体の熱伝導率向上に効果が大きいことが分かった。
β−Si3N4柱状粉(c軸の熱伝導率;182W/mK、a軸の熱伝導率;70W/mK、平均短軸長;0.8μm、平均長軸長;7μm)400質量部と、ε−Fe2O3結晶粉(平均一次粒子径;10nm、保磁力;6600(Oe))2質量部を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン(株)製)に入れ、十分に混合してβ−Si3N4柱状粉にε−Fe2O3結晶粉を付着させた後、液状エポキシ樹脂100質量部とアミン触媒5質量部を加え、更に十分混合した後にその組成物をポリエチレン容器に1mm厚シートになる様に注ぎ、その厚み方向にN極とS極とを対向させたパルス着磁コイルにより磁束密度0.2テスラの磁場を15分間印加してβ−Si3N4柱状粉を十分に配向させた。このとき、β−Si3N4柱状粉のc軸方向が組成物成形体の厚み方向に揃うように配向させた。その後、この組成物成形体を100℃×5時間の条件で加熱して完全に硬化させて厚さ1mmの成形体を得た。
また、比較例1−1として、実施例1と同じ混合組成物を用いて、磁場を印加しない条件で成形し、その他は実施例1と同一条件で厚さ1mmの成形体を作製した。更に、比較例1−2として、実施例1の組成物中でε−Fe2O3結晶粉を添加せず、その他は実施例1と同一条件(即ち、組成物成形体に磁場印加して加熱硬化させる条件)で厚さ1mmの成形体を作製した。
以上のようにして得られた成形体の熱伝導率を測定した。なお、成形体サンプルの熱伝導率の測定は迅速熱伝導率計(京都電子工業(株)社製、QTM−500)で測定した(以下、同じ)。
その結果、実施例1と比較例1−1の熱伝導率の比(実施例1/比較例1−1)は約3.5となった。また、比較例1−1と比較例1−2の熱伝導率の比(比較例1−1/比較例1−2)は1.1となった。
以上の結果より、ε−Fe2O3結晶粉は磁場配向剤としてβ−Si3N4柱状粉に添加混合した組成物を磁場雰囲気下に置くことでβ−Si3N4柱状粉をそのc軸方向が成形体の厚み方向に揃うように十分に配向することができ、成形体の熱伝導率向上に効果が大きいことが分かった。
[実施例2]
先ず六方晶窒化ホウ素粉体(鱗片形状、面方向の熱伝導率;110W/mK、厚さ方向の熱伝導率;2W/mK、平均粒子径;10μm)200質量部と、ε−Fe2O3結晶粉(平均一次粒子径;35nm、保磁力;21500(Oe))48質量部をプラネタリーミキサー((株)井上製作所製)で十分に混合して六方晶窒化ホウ素粉体にε−Fe2O3結晶粉を付着させた。この混合物の中に平均重合度4000のオルガノポリシロキサン(メチルビニルシロキサン単位0.15mol%含有)100質量部、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン 3質量部をトルエン 600質量部に分散混合して組成物を調製した。この組成物をベルトコンベヤー方式でPETセパレーター上に10分間の間隔で間歇的に移動しながらドクターブレード法でコーテングしつつ、コート面方向に垂直に磁束が通るようにパルス着磁コイルによって磁束密度9.5テスラの磁場を印加し、引き続き80℃の赤外線ランプでトルエン除去乾操し、更に180℃の加熱炉で樹脂硬化を行い、厚さ100μmのフイルム成形体を得た(10分の間歇連続法)。このとき、六方晶窒化ホウ素粉体の面方向が組成物成形体の厚み方向に揃うように配向していた。
また、比較例2として上記実施例2の組成物中のε−Fe2O3結晶粉に替えてε−Fe2O3結晶粉(平均一次粒子径;6.5nm、保磁力;2100(Oe))とした以外は実施例2と同一条件で厚さ100μmのフイルム成形体を作製した。実施例1と同様にして(実施例2)/(比較例3)の熱伝導率比を求めた結果、3.8であった。これより本発明の効果が非常に大きいことが分かる。
先ず六方晶窒化ホウ素粉体(鱗片形状、面方向の熱伝導率;110W/mK、厚さ方向の熱伝導率;2W/mK、平均粒子径;10μm)200質量部と、ε−Fe2O3結晶粉(平均一次粒子径;35nm、保磁力;21500(Oe))48質量部をプラネタリーミキサー((株)井上製作所製)で十分に混合して六方晶窒化ホウ素粉体にε−Fe2O3結晶粉を付着させた。この混合物の中に平均重合度4000のオルガノポリシロキサン(メチルビニルシロキサン単位0.15mol%含有)100質量部、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン 3質量部をトルエン 600質量部に分散混合して組成物を調製した。この組成物をベルトコンベヤー方式でPETセパレーター上に10分間の間隔で間歇的に移動しながらドクターブレード法でコーテングしつつ、コート面方向に垂直に磁束が通るようにパルス着磁コイルによって磁束密度9.5テスラの磁場を印加し、引き続き80℃の赤外線ランプでトルエン除去乾操し、更に180℃の加熱炉で樹脂硬化を行い、厚さ100μmのフイルム成形体を得た(10分の間歇連続法)。このとき、六方晶窒化ホウ素粉体の面方向が組成物成形体の厚み方向に揃うように配向していた。
また、比較例2として上記実施例2の組成物中のε−Fe2O3結晶粉に替えてε−Fe2O3結晶粉(平均一次粒子径;6.5nm、保磁力;2100(Oe))とした以外は実施例2と同一条件で厚さ100μmのフイルム成形体を作製した。実施例1と同様にして(実施例2)/(比較例3)の熱伝導率比を求めた結果、3.8であった。これより本発明の効果が非常に大きいことが分かる。
なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
Claims (11)
- バインダー樹脂中に、熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、Mは、Pt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを含み、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが一定方向に配向していることを特徴とする熱伝導性樹脂成形体。
- 上記無機充填剤における無機粉体の表面の少なくとも一部が上記磁場配向剤である鉄酸化物粒子で被覆されていることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性樹脂成形体。
- 上記バインダー樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導性樹脂成形体。
- 上記無機充填剤は、窒化アルミニウム、窒化珪素及び窒化ホウ素の中から選ばれる少なくとも1種の電気絶縁体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂成形体。
- 樹脂バインダー100質量部に対して上記無機充填剤を10〜500質量部含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂成形体。
- 上記磁場配向剤の平均一次粒子径が7.5〜50nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂成形体。
- 板形状の成形体であって、上記無機充填剤において無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きが成形体の厚み方向に配向していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂成形体。
- 熱伝導異方性を有する無機粉体からなる無機充填剤と、ε型Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む。ただし、MはPt及び/又はRhであり、MとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。)を磁性相にもつ保磁力5000(Oe)以上の鉄酸化物粒子からなる磁場配向剤とを混合して無機充填剤の無機粉体に磁場配向剤である鉄酸化物粒子を付着させ、更にバインダー樹脂及び分散媒を添加し、混合して組成物を調製した後に、該組成物を所定形状に成形した状態で磁場を印加して上記無機充填剤における無機粉体のより大きな熱伝導率を示す向きを一定方向に配向させながら、その組成物を硬化させて成形体を得ることを特徴とする熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
- 上記無機充填剤と磁場配向剤とを混合した段階で、該無機充填剤における無機粉体の表面の少なくとも一部を磁場配向剤である鉄酸化物粒子で被覆することを特徴とする請求項8記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
- 上記バインダー樹脂は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項8又は9記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
- 上記磁場の印加がパルス磁気コイルを用いて所定方向に磁束密度0.1〜10テスラの磁場を印加するものであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
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---|---|---|---|---|
CN109467883A (zh) * | 2018-11-06 | 2019-03-15 | 哈尔滨理工大学 | 一种基于电场诱导排序的环氧/无机纳米复合高导热绝缘材料及其制备方法 |
CN109825010A (zh) * | 2019-02-22 | 2019-05-31 | 安徽大学 | 一种利用磁场取向制备砖-泥结构导热聚合物复合材料的方法 |
WO2022176854A1 (ja) * | 2021-02-18 | 2022-08-25 | デクセリアルズ株式会社 | 熱伝導性シートの製造方法及び熱伝導性シート |
-
2016
- 2016-02-12 JP JP2016024522A patent/JP2017143204A/ja active Pending
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