JP2017140937A - 4輪駆動車両のトランスファ - Google Patents
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Abstract
【課題】ディスコネクト解除時に回転要素の伝達トルクのばらつきを従来に比較して抑制させる4輪駆動車両のトランスファを提供する。【解決手段】ネジ機構86は予圧された皿ばね124を介してピストン82を駆動するので、例えば電動モータ84の回転駆動によるナット部材92のナットストロークST(mm)がばらついても、ピストン82が前輪駆動用クラッチ50を押圧する際にピストン82が前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80を押圧する押圧力の反力によって皿ばね124が撓んで、ピストン82から前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80に作用される押圧力のばらつきが抑制される。これによって、ディスコネクト解除時に例えばフロントプロペラシャフト24の伝達トルクのばらつきが抑制される。【選択図】図4
Description
本発明は、4輪駆動時に副駆動輪へ駆動源からの動力を伝達する回転要素を、2輪駆動時に前記駆動源および前記副駆動輪から切り離すディスコネクト機能付きの4輪駆動車両のトランスファにおいて、前記回転要素が前記駆動源および前記副駆動輪に接続されるディスコネクト解除時にその回転要素に伝達されるトルクのばらつきを抑制させる技術に関するものである。
例えば、副駆動輪に伝達するトルクを調整するクラッチ機構を備えるトランスファが知られている。特許文献1に記載された4輪駆動車両のトランスファがそれである。特許文献1に記載された4輪駆動車両のトランスファのクラッチ機構では、モータの回転運動をネジ機構でピストンの直線運動に変換し、そのピストンの直線運動によって多板クラッチの摩擦係合要素を押圧することによって、駆動源から副駆動輪にトルクを伝達している。なお、上記クラッチ機構では、前記モータの回転駆動によって前記ネジ機構のナット部材が移動するストロークすなわち前記ナット部材に相対回転可能に設けられた前記ピストンが移動するストロークによって前記多板クラッチの伝達トルクが変化するようになっている。
ところで、上記のようなトランスファを、4輪駆動時に副駆動輪へ駆動源からの動力を伝達する回転要素を、2輪駆動時に前記駆動源および前記副駆動輪から切り離すディスコネクト機能付きの4輪駆動車両に適用させることが考えられる。このようなディスコネクト機能付きの4輪駆動車両のトランスファにおいては、前記回転要素が前記駆動源および前記副駆動輪に接続されるディスコネクト解除時に、例えばモータの回転駆動によるネジ機構のナット部材のストロークすなわち前記ピストンのストロークがばらつくと、前記クラッチ機構の多板クラッチに作用される押圧力がばらついて前記回転要素の伝達トルクがばらついてしまうという問題がある。例えば、前記回転要素の伝達トルクが比較的小さい場合には前記回転要素の回転が例えば前記副駆動輪の回転に同期するまでの時間がかかったり、また、前記回転要素の伝達トルクが比較的大きい場合には前記回転要素の急係合に起因するショックが発生したりしてしまう。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ディスコネクト解除時に回転要素の伝達トルクのばらつきを従来に比較して抑制させる4輪駆動車両のトランスファを提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、(a)4輪駆動時に副駆動輪へ駆動源からの動力を伝達する回転要素を、2輪駆動時に前記駆動源および前記副駆動輪から切り離すディスコネクト機能付きの4輪駆動車両のトランスファであって、(b)主駆動輪に前記駆動源からの動力を伝達する出力軸と、(c)前記副駆動輪に前記駆動源からの動力を伝達させる出力部材と、(d)前記出力軸の動力の一部を前記出力部材へ伝達する伝達トルクを調整する摩擦クラッチと、(e)前記摩擦クラッチを押圧するピストンと、(f)モータと、(g)前記モータの回転運動を直線運動に変換し前記ピストンを駆動するネジ機構とを、備え、(h)前記ネジ機構は、前記出力軸の軸心方向に予圧された状態で配置されたバネ部材を介して前記ピストンを駆動することにある。
前記第1発明によれば、前記主駆動輪に前記駆動源からの動力を伝達する出力軸と、前記副駆動輪に前記駆動源からの動力を伝達させる出力部材と、前記出力軸の動力の一部を前記出力部材へ伝達する伝達トルクを調整する摩擦クラッチと、前記摩擦クラッチを押圧するピストンと、モータと、前記モータの回転運動を直線運動に変換し前記ピストンを駆動するネジ機構とを、備え、前記ネジ機構は、前記出力軸の軸心方向に予圧された状態で配置されたバネ部材を介して前記ピストンを駆動する。このため、前記ネジ機構は前記予圧されたバネ部材を介して前記ピストンを駆動するので、例えば前記モータの回転駆動による前記ピストンのストロークがばらついても、前記ピストンが前記摩擦クラッチを押圧する際に前記ピストンが前記摩擦クラッチを押圧する押圧力の反力によって前記バネ部材が撓んで、前記ピストンから前記摩擦クラッチに作用される押圧力のばらつきが抑制される。これによって、ディスコネクト解除時に前記回転要素の伝達トルクのばらつきが抑制されるので、前記回転要素の伝達トルクが比較的小さく前記回転要素の回転が例えば前記副駆動輪の回転に同期するまでの時間がかかったり、また、前記回転要素の伝達トルクが比較的大きく前記回転要素の急係合に起因するショックが発生したりすることが好適に抑制される。
ここで、好適には、(a)前記ネジ機構は、前記軸心と同心に設けられたネジ軸部材と、前記ネジ軸部材に螺合され、前記モータによって回転駆動されるナット部材とを有し、(b)前記ナット部材から外周側へ突設されたフランジ部と前記ピストンとの間に、前記バネ部材と環状のワッシャとスラストベアリングとが直列に配置され、(c)前記ナット部材の前記ピストン側の端部に固設された止め輪と前記ナット部材のフランジ部との間に、前記ピストンと前記スラストベアリングと前記ワッシャと前記バネ部材とを挟み込み、前記バネ部材に予圧を与える。このため、前記モータの回転駆動による前記ナット部材のストロークがばらついても、前記ピストンが前記摩擦クラッチを押圧する際に前記ピストンが前記摩擦クラッチを押圧する押圧力の反力によって前記予圧されたバネ部材が撓んで、前記ピストンから前記摩擦クラッチに作用される押圧力のばらつきが抑制される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、駆動源としてのエンジン12、左右の前輪14L,14R(特に区別しない場合には前輪14という)、左右の後輪16L,16R(特に区別しない場合には後輪16という)、エンジン12の動力を前輪14と後輪16とへそれぞれ伝達する動力伝達装置18等を備えている。後輪16は、2輪駆動(2WD)走行中及び4輪駆動(4WD)走行中のときに共に駆動輪となる主駆動輪である。前輪14は、2WD走行中のときに従動輪となり且つ4WD走行中のときに駆動輪となる副駆動輪である。車両10は、前置エンジン後輪駆動(FR)をベースとする4輪駆動車両である。
動力伝達装置18は、エンジン12に連結された変速機(トランスミッション)20、変速機20に連結された前後輪動力分配装置である4輪駆動車両用のトランスファ22、トランスファ22にそれぞれ連結されたフロントプロペラシャフト(回転要素)24及びリヤプロペラシャフト26、フロントプロペラシャフト24に連結された前輪用差動歯車装置28、リヤプロペラシャフト26に連結された後輪用差動歯車装置30、前輪用差動歯車装置28に連結された左右の前輪車軸32L,32R(特に区別しない場合には前輪車軸32という)、後輪用差動歯車装置30に連結された左右の後輪車軸34L,34R(特に区別しない場合には後輪車軸34という)等を備えている。このように構成された動力伝達装置18において、変速機20を介してトランスファ22へ伝達されたエンジン12の動力は、トランスファ22から、リヤプロペラシャフト26、後輪用差動歯車装置30、後輪車軸34等の後輪16側の動力伝達経路を順次介して後輪16へ伝達される。また、後輪16側へ伝達されるエンジン12の動力の一部は、トランスファ22にて前輪14側へ分配されて、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28、前輪車軸32等の前輪14側の動力伝達経路を順次介して前輪14へ伝達される。
前輪用差動歯車装置28は、フロント側クラッチ36を前輪車軸32R側に(すなわち前輪用差動歯車装置28と前輪14Rとの間に)備えている。フロント側クラッチ36は、前輪用差動歯車装置28と前輪14Rとの間の動力伝達経路を選択的に接続または遮断する、電気的(電磁的)に制御される噛合式クラッチである。尚、フロント側クラッチ36において、更に、同期機構(シンクロ機構)が備えられていても構わない。
図2および図3は、トランスファ22の概略構成を説明する図であって、図2はトランスファ22の断面図であり、図3はトランスファ22の骨子図である。図2および図3において、トランスファ22は、非回転部材としてのトランスファケース40を備えている。トランスファ22は、トランスファケース40により回転可能に支持された入力軸42と、後輪16にエンジン12からの動力を伝達する後輪側出力軸(出力軸)44と、前輪14にエンジン12からの動力を伝達するすなわち後輪側出力軸44とは動力の伝達先を別にするスプロケット状のドライブギヤ(出力部材)46と、入力軸42の回転を変速して後輪側出力軸44へ伝達する副変速機としてのハイロー切替機構48と、後輪側出力軸44の動力の一部をドライブギヤ46へ伝達する伝達トルクを調整する多板の摩擦クラッチとしての前輪駆動用クラッチ50とを、共通の第1軸線(軸心)C1回りに備えている。入力軸42および後輪側出力軸44は、相互に同心でそれぞれ回転可能に一対の第1支持ベアリング71および第2支持ベアリング73を介してトランスファケース40に支持されており、ドライブギヤ46は、後輪側出力軸44に相対回転可能に同心に第3支持ベアリング75を介して支持されている。
図2および図3に示すように、トランスファ22は、トランスファケース40内において、前輪側出力軸52と、前輪側出力軸52に一体的に設けられたスプロケット状のドリブンギヤ54とを第1軸線C1に平行な共通の第2軸線C2回りに備えている。更に、トランスファ22は、ドライブギヤ46とドリブンギヤ54との間に巻き掛けられた前輪駆動用チェーン56と、後輪側出力軸44およびドライブギヤ46を一体的に連結するドグクラッチとして4WDロック機構58と、を備えている。
入力軸42は、変速機20の出力軸(不図示)に継手を介して連結されており、エンジン12から変速機20を介して入力された駆動力(トルク)によって回転駆動させられる。後輪側出力軸44は、リヤプロペラシャフト26に連結された主駆動軸である。ドライブギヤ46は、後輪側出力軸44回りに相対回転可能に設けられている。前輪側出力軸52は、フロントプロペラシャフト24に図示しない継手を介して連結された副駆動軸である。
このように構成されたトランスファ22は、ドライブギヤ46へ伝達する伝達トルクを前輪駆動用クラッチ50により調整して、変速機20から伝達された動力を後輪16のみへ伝達したり、或いは前輪14にも分配する。また、トランスファ22は、4WDロック機構58によりリヤプロペラシャフト26とフロントプロペラシャフト24との間の回転差を発生させない4WDロック状態とそれらの間の回転差を許容する4WD非ロック状態とのいずれかに切り替える。また、トランスファ22は、高速側ギヤ段H及び低速側ギヤ段Lの何れかを成立させて、変速機20からの回転を変速して後段へ伝達する。つまり、トランスファ22は、入力軸42の回転をハイロー切替機構48を介して後輪側出力軸44へ伝達すると共に、前輪駆動用クラッチ50を介した伝達トルクが零とされ且つ4WDロック機構58が解放された状態では、後輪側出力軸44から前輪側出力軸52への動力伝達は行われない一方で、前輪駆動用クラッチ50を介してトルクが伝達されるか或いは4WDロック機構58が係合された状態では、後輪側出力軸44からドライブギヤ46、前輪駆動用チェーン56、及びドリブンギヤ54を介して前輪側出力軸52への動力伝達が行われる。
具体的には、ハイロー切替機構48は、シングルピニオン型の遊星歯車装置60と、ハイロースリーブ62とを備えている。遊星歯車装置60は、入力軸42に対して第1軸線C1回りの回転不能に連結されたサンギヤSと、サンギヤSに対して略同心に配置され、トランスファケース40に第1軸線C1回りの回転不能に連結されたリングギヤRと、これらサンギヤS及びリングギヤRに噛み合う複数のピニオンギヤPを自転可能且つサンギヤS回りの公転可能に支持するキャリヤCAとを有している。このため、サンギヤSの回転速度は入力軸42に対して等速であり、キャリヤCAの回転速度は入力軸42に対して減速される。また、サンギヤSの内周面にはハイ側ギヤ歯64が固設されており、キャリヤCAにはハイ側ギヤ歯64と同径のロー側ギヤ歯66が固設されている。ハイ側ギヤ歯64は、入力軸42と等速の回転を出力する、高速側ギヤ段Hの成立に関与するスプライン歯である。ロー側ギヤ歯66は、ハイ側ギヤ歯64よりも低速側の回転を出力する、低速側ギヤ段Lの成立に関与するスプライン歯である。ハイロースリーブ62は、後輪側出力軸44に第1軸線C1と平行な方向の相対移動可能にスプライン嵌合されており、フォーク連結部62aと、フォーク連結部62aと隣接して一体的に設けられた、後輪側出力軸44の第1軸線C1と平行な方向への移動によってハイ側ギヤ歯64とロー側ギヤ歯66とにそれぞれ噛み合う外周歯62bとを有している。ハイ側ギヤ歯64と外周歯62bとが噛み合うことで、入力軸42の回転と等速の回転が後輪側出力軸44へ伝達され、ロー側ギヤ歯66と外周歯62bとが噛み合うことで、入力軸42の回転に対して減速された回転が後輪側出力軸44へ伝達される。ハイ側ギヤ歯64とハイロースリーブ62とは、高速側ギヤ段Hを形成する高速側ギヤ段用クラッチとして機能し、ロー側ギヤ歯66とハイロースリーブ62とは、低速側ギヤ段Lを形成する低速側ギヤ段用クラッチとして機能する。
4WDロック機構58は、ドライブギヤ46の内周面に固設されたロック歯68と、後輪側出力軸44に対して第1軸線C1方向の移動可能且つ相対回転不能にスプライン嵌合されて、第1軸線C1方向の移動でドライブギヤ46に形成されたロック歯68に噛み合う外周歯70aが外周面に固設されたロックスリーブ70とを有している。トランスファ22は、ロックスリーブ70の外周歯70aとロック歯68とが噛み合った4WDロック機構58の係合状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46とが一体的に回転させられて、4WDロック状態が形成される。
ハイロースリーブ62は、入力軸42に設けられた第1支持ベアリング71に対して(より具体的には遊星歯車装置60に対して)ドライブギヤ46側の空間に設けられている。ロックスリーブ70は、ハイロー切替機構48とドライブギヤ46との間の空間に、ハイロースリーブ62と隣接して別体で設けられている。トランスファ22は、ハイロースリーブ62とロックスリーブ70との間に、それぞれに当接してハイロースリーブ62とロックスリーブ70とを相互に離間させる側へ付勢する予圧状態の第1スプリング72を備えている。トランスファ22は、ドライブギヤ46とロックスリーブ70との間に、後輪側出力軸44の凸部44aとロックスリーブ70とに当接してロックスリーブ70をロック歯68から離す側へ付勢する予圧状態の第2スプリング74を備えている。第1スプリング72の付勢力は第2スプリング74よりも大きく設定されている。凸部44aは、ドライブギヤ46の径方向内側の空間においてロック歯68側に突出して設けられた後輪側出力軸44の鍔部である。ハイ側ギヤ歯64は、第1軸線C1に平行な方向に見てロー側ギヤ歯66よりもロックスリーブ70から離れた位置に設けられている。ハイロースリーブ62の外周歯62bは、ハイロースリーブ62がロックスリーブ70から離間する側(図2において左側)にてハイ側ギヤ歯64に噛み合い、ハイロースリーブ62がロックスリーブ70に接近する側(図2において右側)にてロー側ギヤ歯66に噛み合う。ロックスリーブ70の外周歯70aは、ロックスリーブ70がドライブギヤ46に接近する側(図2において右側)にてロック歯68に噛み合う。従って、ロックスリーブ70の外周歯70aは、ハイロースリーブ62がロー側ギヤ歯66と噛み合う位置にてロック歯68に噛み合う。
前輪駆動用クラッチ50は、後輪側出力軸44に相対回転不能に連結されたクラッチハブ76と、ドライブギヤ46に相対回転不能に連結されたクラッチドラム78と、クラッチハブ76とクラッチドラム78との間に介挿されこれらを選択的に断接する摩擦係合要素80と、摩擦係合要素80を押圧するピストン82と、を備える多板の摩擦クラッチである。前輪駆動用クラッチ50は、後輪側出力軸44の第1軸線C1方向で、ドライブギヤ46に対してハイロー切替機構48とは反対側に後輪側出力軸44の第1軸線C1回りに配置されて、ドライブギヤ46側に移動するピストン82によって摩擦係合要素80が押し付けられる。前輪駆動用クラッチ50は、ピストン82がドライブギヤ46から第1軸線C1に平行な方向に離れる側である非押圧側(図2において右側)に移動させられて摩擦係合要素80に当接しない状態では、解放状態となる。一方で、前輪駆動用クラッチ50は、ピストン82がドライブギヤ46に近づく向きである押圧方向(図2において左側)に移動させられて摩擦係合要素80に当接する状態では、ピストン82の押圧力すなわちそのピストン82を皿ばね124を介して押圧するネジ機構86のナット部材92の移動量(ストローク)によって伝達トルク(トルク容量)が調整され、解放状態、スリップ状態、又は係合状態となる。
トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50の解放状態且つロックスリーブ70の外周歯70aとロック歯68とが噛み合っていない4WDロック機構58の解放状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46との間の動力伝達経路が遮断されて、変速機20から伝達された動力を後輪16のみへ伝達する。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50のスリップ状態または係合状態では、変速機20から伝達された動力を前輪14及び後輪16のそれぞれに分配する。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50のスリップ状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46との間の回転差動が許容されて、差動状態(4WD非ロック状態)が形成される。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50の係合状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46とが一体的に回転させられて、4WDロック状態が形成される。前輪駆動用クラッチ50は、伝達トルクが制御されることで、前輪14と後輪16とのトルク配分を例えば0:100〜50:50の間で連続的に変更することができる。
トランスファ22は、ハイロー切替機構48、前輪駆動用クラッチ50、及び4WDロック機構58を作動させる装置として、電動モータ(モータ)84(図3参照)と、電動モータ84の回転運動を直線運動に変換しピストン82を駆動するネジ機構86と、ネジ機構86の直線および回動の運動力をハイロー切替機構48、前輪駆動用クラッチ50、及び4WDロック機構58へそれぞれ伝達する伝達機構88とを、更に備えている。
ネジ機構86は、前輪駆動用クラッチ50に対してドライブギヤ46とは反対側において後輪側出力軸44と同じ第1軸線C1回りに配置されており、トランスファ22に備えられたウォームギヤ90を介して電動モータ84に間接的に連結された回転部材としてのナット部材92と、ナット部材92に螺合するネジ軸部材94と、ネジ軸部材94を後輪側出力軸44の第1軸線C1方向に移動不能且つトランスファケース40に対して第1軸線C1回りの回動不能に後輪側出力軸44に配設するために、ネジ軸部材94のリヤ側すなわちリヤプロペラシャフト26側の端部と非回転部材であるトランスファケース40との間を連結する連結部材95とを備えている。なお、図2および図4に示すように、ネジ軸部材94のフロント側の端部すなわちネジ軸部材94のリヤプロペラシャフト26側(リヤ側)とは反対側の端部が、環状部材93を介してクラッチハブ76に当接しているので、ネジ軸部材94のリヤ側の端部が連結部材95に当接することによって、ネジ軸部材94は後輪側出力軸44の第1軸線C1方向の移動が不能となっている。また、図4に示すように、ネジ機構86のネジ軸部材94と後輪側出力軸44の間には、ニードルベアリング97が介在されており、ネジ軸部材94は後輪側出力軸44に対して相対回転可能に後輪側出力軸44に支持されている。また、ナット部材92は、複数のボール96を介してネジ軸部材94と螺合している。すなわち、ネジ軸部材94は、第1軸線C1と同心に後輪側出力軸44に設けられ、ナット部材92は、ネジ軸部材94に螺合され、電動モータ84によって回転駆動される。
このように構成されたネジ機構86では、ナット部材92がウォームギヤ90を介して電動モータ84により回転駆動させられることによって、ナット部材92が、後輪側出力軸44の第1軸線C1方向に移動する。なお、本実施例では、図2および図3に示すように、電動モータ84によってナット部材92が第1軸線C1まわり矢印F1方向に回動させられると、ナット部材92がネジ軸部材94とのネジの作用によって第1軸線方向C1において前輪駆動用クラッチ50から離間する方向すなわち矢印F2方向に移動するようになっている。また、電動モータ84によってナット部材92が第1軸線C1まわり矢印F1方向とは反対方向に回動させられると、ナット部材92がネジ軸部材94とのネジの作用によって矢印F2方向とは反対方向に移動するようになっている。
ウォームギヤ90は、電動モータ84のモータシャフトと一体的に形成されたウォーム98と、後述するドラムカム100に形成されたウォームホイール100aとを備えた歯車対である。なお、ナット部材92には、ネジ軸部材94に複数のボール96を介して螺合される円筒形状の雌ネジ部92aと、その円筒状の雌ネジ部92aのリヤ側すなわちリヤプロペラシャフト26側の端部から外周側へ突設されたフランジ状のフランジ部92bとが備えられており、ドラムカム100はナット部材92のフランジ部92bの外周部に一体的に固定されている。また、ネジ機構86は、ナット部材92に伝達された電動モータ84の回転を、そのナット部材92の直線運動に変換する。また、電動モータ84が回転駆動することによって、ナット部材92に連結すなわち固設されたドラムカム100に形成されたウォームホイール100aが後輪側出力軸44の第1軸線C1方向に移動するが、そのウォームホイール100aが移動しても、ウォームホイール100aとトランスファケース40に固定された電動モータ84のモータシャフトに形成されたウォーム98とが常時噛み合うように、ウォームホイール100aの第1軸線C1方向の幅寸法が上記モータシャフトに形成されたウォーム98の第1軸線C1方向の幅寸法より大きくなっている。また、ウォームホイール100aの外周歯が平歯に形成されている。
伝達機構88には、ネジ機構86におけるナット部材92の直線運動を前輪駆動用クラッチ50に伝達する第1伝達機構88aと、ナット部材92すなわちナット部材92に固定されたドラムカム100が第1軸線C1まわりに回動する回動運動をハイロー切替機構48に伝達する第2伝達機構88bとが備えられている。
図2および図3に示すように、ドラムカム100は、電動モータ84のモータシャフトに形成されたウォーム98と噛み合う円環状のウォームホイール100aと、ウォームホイール100aのフォークシャフト102側の端部においてウォームホイール100aからリヤプロペラシャフト26に接近する方向に突き出された突部100bと、突部100bの外周に形成されたカム溝100cとが備えられている。なお、上記突部100bは、ウォームホイール100aの円周方向の一部がリヤプロペラシャフト26に接近する方向に突き出された例えば円筒形状の一部分を示す形状である。
図5に示すように、ドラムカム100に形成されたカム溝100cは、後輪側出力軸44の第1軸線C1に対して傾斜する方向に伸びた傾斜カム溝100dと、傾斜カム溝100dのネジ機構86側に端部に形成され、第1軸線C1に対して垂直方向に伸びた第1カム溝100eと、傾斜カム溝100cのネジ機構86側とは反対側の端部に形成され、第1軸線C1に対して垂直方向に伸びた第2カム溝100fとを有している。
このように構成されたドラムカム100によれば、例えば図5の(a)に示すように、カム溝100cの第1カム溝100e内にカム係合部材103が配置された状態から、電動モータ84によってナット部材92が第1軸線C1回り矢印F1方向に回動されると共にドラムカム100が第1軸線C1回り矢印F1方向に回動させられると、傾斜カム溝100dに沿ってカム係合部材103が、ナット部材92の矢印F2方向の移動量、すなわちナット部材92がネジ軸部材94とのネジの作用よって矢印F2方向に移動する移動量より大きい移動量Dで矢印F2方向すなわちフォークシャフト102の第3軸線C3方向に移動させられる。また、例えば図5の(c)に示すように、カム溝100cの第2カム溝100f内にカム係合部材103が配置された状態から、電動モータ84によってナット部材92が第1軸線C1回り矢印F1方向とは反対方向に回動されると共にドラムカム100が第1軸線C1回り矢印F1方向とは反対方向に回動させられると、傾斜カム溝100dに沿ってカム係合部材103が、ナット部材92の矢印F2方向とは反対方向の移動量、すなわちナット部材92がネジ軸部材94とのネジの作用よって矢印F2方向とは反対方向に移動する移動量より大きい移動量Dで矢印F2方向とは反対方向に移動させられる。すなわち、電動モータ84が回転駆動しナット部材92を介してドラムカム100が後輪側出力軸44の第1軸線C1回りに回動させられると、ドラムカム100に形成されたカム溝100cによってそのカム溝100cに係合されたカム係合部材103が後輪側出力軸44の第1軸線C1と平行にトランスアクスルケース40内に配置されたフォークシャフト102の第3軸線C3方向に移動させられる。なお、図5の(b)および(c)に示されている1点鎖線の円は、図5の(a)のカム係合部材103の位置を示すものである。
図2および図4に示すように、第1伝達機構88aには、前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80を押圧するピストン82と、ピストン82とナット部材92のフランジ部92bとの間に、第1軸線C1方向に直列に配置された複数のボール120、環状のワッシャ122、皿ばね(バネ部材)124と、ピストン82のナット部材92に対する摩擦係合要素80側への移動を阻止する環状の止め輪126とが備えられている。また、ピストン82とナット部材92のフランジ部92bとの間において、皿ばね124はナット部材92のフランジ部92bの摩擦係合要素80側に隣接され、環状のワッシャ122は皿ばね124の摩擦係合要素80側に隣接され、複数のボール120は環状のワッシャ122とピストン82との間に配設されている。なお、複数のボール120は、図4に示すように、ピストン82の摩擦係合要素80側とは反対側の側面82aに環状に凹んだ第1環状凹溝82bとワッシャ122の摩擦係合要素80側の側面122aに環状に凹んだ第2環状凹溝122bとの間に、図示しない保持器によって周方向にそれぞれの間隔が均等に配置されており、スラストベアリングとして機能している。また、皿ばね124は、図4に示すように、環状のワッシャ122とナット部材の92のフランジ部92bとの間に第1軸線C1方向に予圧された状態すなわち第1軸線C1方向において圧縮された状態で配設されている。また、ナット部材92の雌ネジ部92aのピストン82側すなわちリヤプロペラシャフト26側とは反対側の端部に形成された嵌合溝92cに止め輪126が嵌められておりすなわちナット部材92の雌ネジ部92aのピストン82側の端部に止め輪126が固設されており、止め輪126とナット部材92のフランジ部92bとの間に、ピストン82と複数のボール120と環状のワッシャ122と皿ばね124とが挟み込まれることによって、皿ばね124に予圧を与えている。これによって、ネジ機構86におけるナット部材92の直線運動は、第1伝達機構88aの例えば複数のボール120、環状のワッシャ122、皿ばね124等を介してピストン82によって前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80に伝達される。つまり、ネジ機構86は、第1伝達機構88aにおいて第1軸線C1方向に予圧された状態で配置された皿ばね124を介してピストン82を駆動する。なお、第1伝達機構88aでは、電動モータ84によってナット部材92が第1軸線C1方向に移動することによりピストン82が摩擦係合要素80に当接すると、ピストン82が摩擦係合要素80を押圧する力の反力によって予圧されている皿ばね124が第1軸線C1方向に撓む(圧縮される)ようになっている。
図6は、環状のワッシャ122とナット部材92のフランジ部92bとの間の配設された皿ばね124を説明する図であり、図6の(a)は皿ばね124に外力が作用していない時の状態を示す図であり、図6の(b)はピストン82が摩擦係合要素80に当接する前における予圧された皿ばね124の状態を示す図であり、図6の(c)は電動モータ84によってナット部材92が第1軸線C1方向に移動してピストン82が摩擦係合要素80に当接した時における予圧された皿ばね124の状態を示す図である。なお、図6の(b)および(c)に示されている一点鎖線の皿ばね124は、皿ばね124に外力が作用されていない図6の(a)の皿ばね124を示す。また、図7は、環状のワッシャ122とナット部材92のフランジ部92bとの間に配設された皿ばね124が例えばワッシャ122から作用された第1軸線C1方向の荷重F(N)によって皿ばね124が撓む撓み量T(mm)を表す図である。
図7に示すように、皿ばね124では、皿ばね124の撓み量T(mm)が比例限界B0(mm)までは、皿ばね124に作用する荷重F(N)が大きくなるとその荷重F(N)の増加に対して撓み量T(mm)が略比例して大きくなっている。なお、上記比例限界B0(mm)とは、皿ばね124に作用する荷重F(N)に対する皿ばね124の撓み量T(mm)の関係が比例する状態における皿ばね124の最大の撓み量T(mm)である。また、皿ばね124では、皿ばね124の撓み量T(mm)が比例限界B0(mm)を超えると、皿ばね124に作用する荷重F(N)の増加に対する皿ばね124の撓み量T(mm)の増加の勾配が、比例限界B0(mm)までの皿ばね124に作用する荷重F(N)の増加に対する皿ばね124の撓み量T(mm)の増加の勾配θ1に比べて低下する。また、皿ばね124を比例限界B0(mm)を超えた図6の(b)に示す取付高さB1(mm)からさらに皿ばね124を図6の(c)に示す密着高さB2(mm)まで撓ませる場合には、すなわち皿ばね124をストロークB(=B2−B1)(mm)の範囲内で撓ませる場合には、皿ばね124の撓み量T(mm)に対して荷重F(N)が略一定となる。つまり、皿ばね124の撓み量TがストロークB(mm)の範囲内であれば、皿ばね124に作用する荷重F(N)の増加に対する皿ばね124の撓み量T(mm)の増加の勾配θ2が、零に近づくように平坦となる。なお、上記取付高さB1(mm)とは、ピストン82が摩擦係合要素80に当接する前において第1伝達機構88aで皿ばね124がワッシャ122とナット部材92のフランジ部92bとの間に取り付けられた時の撓み量T(mm)である。また、上記密着高さB2(mm)とは、ピストン82が摩擦係合要素80に当接して皿ばね124がワッシャ122とナット部材92のフランジ部92bとの間に略密着された時の撓み量T(mm)である。
図8は、電動モータ84によってナット部材92を摩擦係合要素80側に移動させた時においてナットストロークST(mm)に対してピストン82から前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80に作用されるピストン荷重Fp(N)の関係を表す図である。なお、図8では、第1伝達機構88aにおいて図6の(c)に示す取付高さB1(mm)まで撓ませて予圧された皿ばね124が使用されている。また、上記ナットストロークST(mm)は、ピストン82が摩擦係合要素80に接触した状態から電動モータ84によってナット部材92が摩擦係合要素80側に移動した移動量(mm)を示す。
図8に示すように、ナットストロークST(mm)が、図7で示した皿ばね124が取付高さB1から密着高さB2まで撓むストロークB(mm)の範囲では、ピストン82が摩擦係合要素80を押圧する力の反力によって皿ばね124が撓むので、ピストン82から摩擦係合要素80に作用されるピストン荷重Fp(N)すなわちピストン82が摩擦係合要素80を押圧する押圧力の上昇が比較的小さい。また、図8に示すように、ナットストロークST(mm)が、ストロークBを越えると、ピストン82が摩擦係合要素80を押圧する力の反力が作用しても皿ばね124が撓まなくなるので、ピストン荷重Fp(N)すなわちピストン82が摩擦係合要素80を押圧する押圧力の上昇が比較的大きい。つまり、電動モータ84によってナット部材92が移動するナットストロークST(mm)がストロークB(mm)の範囲であれば、ナットストロークST(mm)がばらついても皿ばね124が撓んでピストン荷重Fp(N)すなわち摩擦係合要素80を押圧する押圧力のばらつきが好適に抑制され、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクのばらつきが抑制される。
図2および図3に示すように、第2伝達機構88bには、トランスファケース40内において後輪側出力軸44と平行に配置され且つ第3軸線C3方向に移動可能に支持され、カム係合部材103が連結されたフォークシャフト102と、フォークシャフト102に固設されて、ハイロースリーブ62に連結されたフォーク104と、フォークシャフト102にカム係合部材103の第1軸線C1方向すなわち第3軸線C3方向の移動をバネ部材112を介して伝達する待ち機構106とが備えられている。なお、上記待ち機構106は、カム係合部材103に備えられている。このため、第2伝達機構88bでは、カム係合部材103の第1軸線C1方向すなわち第3軸線C3方向の移動を、待ち機構106、フォークシャフト102、及びフォーク104を介してハイロー切替機構48のハイロースリーブ62へ伝達される。これによって、例えば図5の(a)に示す状態から、ドラムカム100が回動してカム係合部材103が矢印F2方向に移動されられると、ハイロースリーブ62がドライブギヤ46側へ移動すなわちハイロースリーブ62の外周歯62bがロー側ギヤ歯66に噛み合あう位置へ移動させられる。また、例えば図5の(c)に示す状態から、ドラムカム100が回動してカム係合部材103が矢印F2方向とは反対方向に移動されられると、ハイロースリーブ62がドライブギヤ46から離れる側へ移動すなわちハイロースリーブ62の外周歯62bがハイ側ギヤ歯64に噛み合あう位置へ移動させられる。
また、伝達機構88には、ナット部材92に固定されたドラムカム100が第1軸線C1まわりに回動する回動運動を4WDロック機構58に伝達する第3伝達機構88cが備えられている。第3伝達機構88cには、第2伝達機構88bと同様に、フォークシャフト102と、フォーク104と、待ち機構106とが備えられ、更に、フォーク104に連結されたハイロースリーブ62と、ハイロースリーブ62とロックスリーブ70との間において圧縮された状態で配設された第1スプリング72と、ロックスリーブ70と後輪側出力軸44の凸部44aとの間において圧縮された状態で配設された第2スプリング74と、が備えられている。
このため、第3伝達機構88cでは、上述したようにドラムカム100が回動しカム係合部材103が矢印F2方向に移動させられてハイロースリーブ62の外周歯62bがロー側ギヤ歯66に噛み合あう位置へ移動させられると、ロックスリーブ70は、第1スプリング72を介してドライブギヤ46側へ向かうロック方向推力が作用される。これによって、ロックスリーブ70は、その外周歯70aが第1スプリング72よりも弱く設定された第2スプリング74の付勢力に抗してドライブギヤ46側へ移動させられ、ドライブギヤ46のロック歯68に噛み合わせられる。また、ハイロースリーブ62の外周歯62bがロー側ギヤ歯66に噛み合あっている状態から、ドラムカム100が回動しカム係合部材103が矢印F2方向とは反対方向に移動させられてハイロースリーブ62の外周歯62bがハイ側ギヤ歯64に噛み合あう位置へ移動させられると、ロックスリーブ70は、第2スプリング74でドライブギヤ46から離れる側へ向かう4WDロック解除方向推力が作用される。これによって、ロックスリーブ70は、その外周歯70aがドライブギヤ46のロック歯68から離れるように第2スプリング74の付勢力によってドライブギヤ46から離れる側に移動させられる。
待ち機構106には、図2および図3に示すように、第3軸線C3と平行な方向にフォークシャフト102と摺動可能に第3軸線C3回りに配置された、一端部に設けられた鍔どうしが相対する2つの鍔付円筒部材108a、108bと、2つの鍔付円筒部材108a、108bの間に介在させられた円筒状のスペーサ110と、スペーサ110の外周側に予圧状態で配置されたバネ部材112と、2つの鍔付円筒部材108a、108bを第3軸線C3と平行な方向に摺動可能に把持する把持部材114とが備えられている。把持部材114は、鍔付円筒部材108a、108bの鍔に当接することで鍔付円筒部材108a、108bをフォークシャフト102上で摺動させる。鍔付円筒部材108a、108bの鍔が共に把持部材114と当接した状態における鍔間の長さは、スペーサ110の長さよりも長くされている。従って、鍔が共に把持部材114と当接した状態は、バネ部材112の付勢力によって形成される。また、待ち機構106には、フォークシャフト102の外周面に鍔付円筒部材108a、108bの各々を第3軸線C3と平行な方向の離間不能とするストッパ118a、118bが備えられている。ストッパ118a、118bにより鍔付円筒部材108a、108bが離間不能とされることで、把持部材114に一体的に連結されたカム係合部材103の第1軸線C1方向すなわち第3軸線C3方向の直線運動力を、フォークシャフト102を介してハイロー切替機構48および4WDロック機構58へ伝達することができる。
このように構成された待ち機構106であれば、ハイロー切替機構48において高速側ギヤ段Hが成立された状態で、すなわちハイロースリーブ62の外周歯62bがハイ側ギヤ歯64に噛み合う位置で、鍔付円筒部材108a、108bの鍔間の長さを、鍔が共に把持部材114と当接した状態での長さと、スペーサ110の長さとの間で変化させることができる。このため、待ち機構106は、フォークシャフト102の位置をハイギヤ位置のままで、第1伝達機構88aのピストン82が前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80に当接する位置と前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80が第1伝達機構88aのピストン82によって押し付けられる位置との間で、ネジ機構86におけるナット部材92の第1軸線C1と平行な方向の移動を許容する。
図1に戻り、車両10には、例えば2WD状態と4WD状態とを切り替える車両10の制御装置を含む電子制御装置(ECU)200が備えられている。電子制御装置200は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置200は、エンジン12の出力制御、車両10の駆動状態の切替制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や駆動状態制御用等に分けて構成される。電子制御装置200には、図1に示すように、車両10に備えられた各種センサによる検出信号に基づく各種実際値が供給される。電子制御装置200からは、図1に示すように、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、フロント側クラッチ36の状態を切り替える為の作動指令信号Sd、電動モータ84の回転量を制御する為のモータ駆動指令信号Smなどが、エンジン12の出力制御装置、フロント側クラッチ36のアクチュエータ、電動モータ84、トランスファ22などへそれぞれ出力される。
以上のように構成された車両10では、電動モータ84の回転量が制御されることでナット部材92の移動量(ストローク)が制御される。ハイロースリーブ62の外周歯62bがハイ側ギヤ歯64に噛み合あうハイギヤ位置において、ピストン82が摩擦係合要素80に当接した位置から電動モータ84を所定の回転量だけ駆動して非押圧側に所定のストローク分だけナット部材92を移動させることで、前輪駆動用クラッチ50が解放され車両10が高速側ギヤ段Hにて後輪16のみを駆動する2輪駆動走行状態となる。また、上記2輪駆動走行状態では、フロント側クラッチ36が解放され、ドライブギヤ46から前輪用差動歯車装置28までの動力伝達経路を構成する各回転要素(ドライブギヤ46、前輪駆動用チェーン56、ドリブンギヤ54、前輪側出力軸52、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28等)が、エンジン12および前輪14から切り離される。なお、本実施例のトランスファ22は、4輪駆動時に前輪14へエンジン12からの動力を伝達する前記各回転要素を、2輪駆動時にエンジン12および前輪14から切り離すディスコネクト機能付きの4輪駆動車両のトランスファである。
また、上記2輪駆動走行状態において、前記各回転要素をエンジン12および前輪14に接続させるディスコネクト解除時には、電動モータ84によってナット部材92のナットストロークST(mm)がストロークB(mm)の範囲になるように、電動モータ84の回転量が制御されるようになっている。これによって、電動モータ84によるナット部材92のナットストロークST(mm)がばらついても第1伝達機構88aに設けられた皿ばね124が撓むことによってピストン82から前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80を押圧する押圧力のばらつきが好適に抑制され、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクのばらつきが抑制される。
上述のように、本実施例の車両10のトランスファ22によれば、後輪16にエンジン12からの動力を伝達する後輪側出力軸44と、前輪14にエンジン12からの動力を伝達させるドライブギヤ46と、後輪側出力軸44の動力の一部をドライブギヤ46へ伝達する伝達トルクを調整する前輪駆動用クラッチ50と、前輪駆動用クラッチの摩擦係合要素80を押圧するピストン82と、電動モータ84と、電動モータ84の回転運動を直線運動に変換しピストン82を駆動するネジ機構86とを、備え、ネジ機構86は、後輪側出力軸44の第1軸線C1方向に予圧された状態で配置された皿ばね124を介してピストン82を駆動する。このため、ネジ機構86は予圧された皿ばね124を介してピストン82を駆動するので、例えば電動モータ84の回転駆動によるピストン82のストロークすなわちナット部材92のナットストロークST(mm)がばらついても、ピストン82が前輪駆動用クラッチ50を押圧する際にピストン82が前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80を押圧する押圧力の反力によって皿ばね124が撓んで、ピストン82から前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80に作用される押圧力のばらつきが抑制される。これによって、ディスコネクト解除時に例えばフロントプロペラシャフト24の伝達トルクのばらつきが抑制されるので、フロントプロペラシャフト24の伝達トルクが比較的小さくフロントプロペラシャフト24の回転が例えば前輪14の回転に同期するまでの時間がかかったり、また、フロントプロペラシャフト24の伝達トルクが比較的大きくフロントプロペラシャフト24の急係合に起因するショックが発生したりすることが好適に抑制される。
また、本実施例の車両10のトランスファ22によれば、ネジ機構86は、第1軸線C1と同心に設けられたネジ軸部材94と、ネジ軸部材94に螺合され、電動モータ84によって回転駆動されるナット部材92とを有し、ナット部材92から外周側へ突設されたフランジ部92bとピストン82との間に、皿ばね124と環状のワッシャ122と複数のボール120とが直列に配置され、ナット部材92のピストン82側の端部に固設された止め輪126とナット部材92のフランジ部92bとの間に、ピストン82と複数のボール120とワッシャ122と皿ばね124とを挟み込み、皿ばね124に予圧を与える。このため、電動モータ84の回転駆動によるナット部材92のナットストロークSTがばらついても、ピストン82が前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80を押圧する際にピストン82が前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80を押圧する押圧力の反力によって予圧された皿ばね124が撓んで、ピストン82から前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80に作用される押圧力のばらつきが抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例において、ワッシャ122とナット部材92のフランジ部92bとの間には、バネ部材として皿ばね124が設けられていたが、必ずしも皿ばね124が設けられる必要はなく、皿ばね124以外のそれと同様の非線型の特性を有するバネ部材が設けられても良い。
前述の実施例において、ネジ機構86としてボールネジを例示したが、この態様に限らない。例えば、ネジ機構86は、電動モータ84の回転運動を直線運動に変換する変換機構であれば良く、直接的に相互に螺合する単純なネジ軸部材94とナット部材92とを組み合わせたような機構であっても良い。
また、前述の実施例では、ネジ機構86はウォームギヤ90を介して電動モータ84に間接的に連結されたが、この態様に限らない。例えば、ネジ機構86のナット部材92と電動モータ84とは、ウォームギヤ90を介すことなく直接的に連結されても良い。具体的には、ナット部材92と電動モータ84とは、電動モータ84のモータシャフトに設けられたピニオンとナット部材92に形成されたギヤ歯とが噛み合うように、直接的に連結されても良い。
また、前述の実施例では、トランスファ22が適用される車両10としてFRをベースとする4輪駆動車両を例示したが、これに限らない。例えば、トランスファ22が適用される車両10は、前置エンジン前輪駆動(FF)をベースとする4輪駆動車両であっても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両(4輪駆動車両)
12:エンジン(駆動源)
14:前輪(副駆動輪)
16:後輪(主駆動輪)
22:トランスファ
24:フロントプロペラシャフト(回転要素)
44:後輪側出力軸(出力軸)
46:ドライブギヤ(出力部材)
50:前輪駆動用クラッチ(摩擦クラッチ)
82:ピストン
84:電動モータ(モータ)
86:ネジ機構
92:ナット部材
92b:フランジ部
94:ネジ軸部材
120:複数のボール(スラストベアリング)
122:ワッシャ
124:皿ばね(バネ部材)
126:止め輪
C1:第1軸線(軸心)
12:エンジン(駆動源)
14:前輪(副駆動輪)
16:後輪(主駆動輪)
22:トランスファ
24:フロントプロペラシャフト(回転要素)
44:後輪側出力軸(出力軸)
46:ドライブギヤ(出力部材)
50:前輪駆動用クラッチ(摩擦クラッチ)
82:ピストン
84:電動モータ(モータ)
86:ネジ機構
92:ナット部材
92b:フランジ部
94:ネジ軸部材
120:複数のボール(スラストベアリング)
122:ワッシャ
124:皿ばね(バネ部材)
126:止め輪
C1:第1軸線(軸心)
Claims (1)
- 4輪駆動時に副駆動輪へ駆動源からの動力を伝達する回転要素を、2輪駆動時に前記駆動源および前記副駆動輪から切り離すディスコネクト機能付きの4輪駆動車両のトランスファであって、
主駆動輪に前記駆動源からの動力を伝達する出力軸と、
前記副駆動輪に前記駆動源からの動力を伝達させる出力部材と、
前記出力軸の動力の一部を前記出力部材へ伝達する伝達トルクを調整する摩擦クラッチと、
前記摩擦クラッチを押圧するピストンと、
モータと、
前記モータの回転運動を直線運動に変換し前記ピストンを駆動するネジ機構とを、備え、
前記ネジ機構は、前記出力軸の軸心方向に予圧された状態で配置されたバネ部材を介して前記ピストンを駆動することを特徴とする4輪駆動車両のトランスファ。
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JP2016023835A Pending JP2017140937A (ja) | 2016-02-10 | 2016-02-10 | 4輪駆動車両のトランスファ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017140937A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113357326A (zh) * | 2021-06-03 | 2021-09-07 | 中国第一汽车股份有限公司 | 一种两挡四驱扭矩管理系统及车辆 |
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2016
- 2016-02-10 JP JP2016023835A patent/JP2017140937A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113357326A (zh) * | 2021-06-03 | 2021-09-07 | 中国第一汽车股份有限公司 | 一种两挡四驱扭矩管理系统及车辆 |
CN113357326B (zh) * | 2021-06-03 | 2023-07-18 | 中国第一汽车股份有限公司 | 一种两挡四驱扭矩管理系统及车辆 |
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