JP2017139975A - 単核球培養用無血清培地 - Google Patents

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Abstract

【課題】新たな単核球培養用無血清培地及び培養物の提供。
【解決手段】幹細胞因子、γ−セクレターゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド及びトロンボポエチンを含有する単核球培養用無血清培地を用いて単核球を培養する培養方法、及び無血清培地中の単核球培養物を有効成分とする虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤。また虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤が、難治性潰瘍、虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症、バージャー病及び全身の虚血性疾患から選ばれる疾患の治療剤、組織再生療法剤である請求項3記載の虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、難治性潰瘍等の虚血性疾患の治療に有用な単核球培養用無血清培地及びその利用に関する。
難治性潰瘍、虚血性心疾患等の虚血性疾患に対する再生医療の一つとして、骨髄や末梢血由来の単核球を培養して得られる血管内皮前駆細胞(Endothelial progenitor cell:EPC)を用いた細胞移植治療法が検討されている。そのためには、EPCを大量に培養する技術の開発が望まれている。
そのような技術として、CD34及び/又はCD133陽性細胞から血管内皮前駆細胞の生体増殖法(特許文献1)、血管内皮細胞分化動態解析方法による内皮細胞様大コロニー(分化型EPCコロニー)形成細胞と内皮細胞様小コロニー(未分化型EPCコロニー)形成細胞の作製法(特許文献2)、骨髄単核球からCD34及び/又はCD133陽性細胞の増幅方法(特許文献3)が報告されている。さらに、本発明者らは、単核球から血管新生に寄与する細胞群へと分化、増殖し得る培養条件として、単核球を幹細胞因子、インターロイキン6、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、トロンボポエチン及び血管内皮細胞増殖因子の5種の因子を含有する無血清培地中で培養する方法を開発した(特許文献4)。
国際公開第2006/090882号 国際公開第2006/090886号 国際公開第2006/093172号 国際公開第2014/051154号
しかしながら、前記5種の因子を含有する無血清培地を用いて、糖尿病患者由来の単核球を培養して得られた細胞群を用いて糖尿病患者に試験したところ、細胞数の減少、血管再生機能不良等の問題が生じることが判明した。
従って、本発明の課題は、虚血性疾患、組織再生、特に難治性潰瘍の治療に有効な十分量のEPCが増幅可能な新たな無血清培地を提供することにある。
そこで本発明者は、前記特許文献4記載の培地成分である5種の因子について種々検討したところ、インターロイキン6(IL−6)をγ−セクレターゼ阻害剤に変更すれば、単核球から少なくとも血管内皮前駆細胞が十分に富化した細胞群が効率良く得られ、糖尿病患者においても血管内皮前駆細胞の増加が確認できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔7〕を提供するものである。
〔1〕幹細胞因子、γ−セクレターゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド及びトロンボポエチンを含有する単核球培養用無血清培地。
〔2〕〔1〕記載の無血清培地中で単核球を培養することを特徴とする、少なくとも血管内皮前駆細胞が富化した細胞群の製造法。
〔3〕〔1〕記載の無血清培地中の単核球培養物を有効成分とする虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤。
〔4〕虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤が、難治性潰瘍、虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症、バージャー病及び全身の虚血性疾患から選ばれる疾患の治療剤、組織再生療法剤である〔3〕記載の虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法。
〔5〕〔1〕記載の無血清培地中の単核球培養物を投与することを特徴とする虚血性疾患治療方法及び/又は組織再生療法。
〔6〕難治性潰瘍、虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症、バージャー病及び全身の虚血性疾患から選ばれる疾患の治療方法、組織再生療法である〔5〕記載の治療方法。
本発明の無血清培地を用いれば、単核球から少なくとも血管内皮前駆細胞(EPC)が十分量富化された細胞群が効率良く得られる。従って、本発明の無血清培地を用いて単核球を培養して得られた培養物を用いれば、難治性潰瘍、虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症、バージャー病、慢性と急性を含む全身の虚血性疾患(脳、腎臓、消化管等)等の虚血性疾患の治療、さらに創傷、乳房再建等の組織再生療法に有効である。
末梢血単核球(Peripheral blood mononuclear cell;以下PBMNC)を2×106細胞で播種し、本発明の無血清培地で7日間培養した細胞(Restoration Culture Cell;以下RCC)の細胞数と培養開始時の細胞数の比較を示す。***は図に示された対象に対する有意差(P<0.0001)を示す。 PBMNCとRCCをフローサイトメトリー解析し細胞の散布図をそれぞれ、細胞サイズにより3つの集団(即ち、リンパ球サイズ、単球サイズ、大型細胞サイズ)にゲートしたものである。 PBMNCとRCCにおけるCD34陽性細胞の発現をフローサイトメーターによって計測しその発現割合(%)を示したものである。*は図に示された対象に対する有意差(P<0.05)を示す。 PBMNCとRCCにおけるCD206陽性細胞の発現をフローサイトメーターによって計測しその発現割合(%)を示したものである。*は図に示された対象に対する有意差(P<0.05)を示す。 左に未分化型EPCコロニーを、右に分化型EPCコロニーを示す。スケールは500μmである。 PBMNCとRCCを播種した後の未分化型EPCコロニー(青枠)と分化型EPCコロニー(赤枠)数を計測したものを示す。*は図に示された対象に対する有意差(P<0.05)を示す。 糖尿病患者のPBMNCを、前記特許文献4記載の培地成分(特4)と本発明の培地成分で培養後、EPCコロニーアッセイにて比較したものを示す。*は図に示された対象に対する有意差(P<0.05)を示す。 図8は糖尿病患者と健常人のPBMNCとRCCから得られた各コロニー数について、RCCをPBMNCで比較した際の割合を示す。未分化型EPCコロニー(Primitive−CFU:青枠)、分化型EPCコロニー(Definitive−CFU:赤枠)、総コロニー(total−CFU:灰色枠)を示す。
本発明の単核球培養用無血清培地は、(a)幹細胞因子(Stem cell factor;SCF)、(b)γ−セクレターゼ阻害剤(γ−secretase inhibitor)、(c)血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor;VEGF)、(d)FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FL)及び(e)トロンボポエチンを含有する。
本発明に用いられる(a)幹細胞因子(SCF)は、248個のアミノ酸からなる分子量約30,000の糖タンパク質である。選択的スプライシングにより可溶型と膜結合型が存在するが、本発明に用いるSCFはEPC等の富化に有用である限りいずれのタイプのSCFでもよい。好ましくは可溶型である。SCFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。
無血清培地中のSCFの濃度は、用いるSCFの種類によっても異なるが、ヒト組換えSCFの場合であれば、好ましくは10〜1000ng/mL、より好ましくは50〜500ng/mL、さらに好ましくは約100ng/mLである。
本発明に用いられる(b)γ−セクレターゼ阻害剤としては、γ−セクレターゼ阻害作用を有する物質であればよいが、例えば次の化合物が挙げられる。
本発明に用いられるγ−セクレターゼ阻害剤は、Notchシグナルの伝達物質であるγセクレターゼの切断を阻害し、Notch伝達経路を制御する化合物である。Notchシグナルは血管新生において正常脈管形成やリモデリングに必須なシグナルであるが、過剰な活性は逆に異常血管形成や血管機能障害を来すことが知られている。
無血清培地中のγ−セクレターゼ阻害剤の濃度は、用いるγ−セクレターゼ阻害剤の種類によっても異なるが、0.001〜10μMが好ましく、0.1〜5μMがより好ましく、PF−03084014の場合であれば1μMが好ましい。
本発明に用いられる(c)血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、EPCに特異的に作用する増殖因子であり、主に血管周囲の細胞で産生されることが知られている。選択的スプライシングによってサイズの異なる数種のVEGFタンパク質が産生されるが、本発明に用いるVEGFはEPCのコロニー形成を可能にする限りいずれのタイプのVEGFでもよい。好ましくはVEGF165である。VEGFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。
無血清培地中のVEGFの濃度は、用いるVEGFの種類によっても異なるが、ヒト組換えVEGF165の場合であれば、好ましくは5〜500ng/mL、より好ましくは約20〜100ng/mL、さらに好ましくは50ng/mLである。
本発明に用いられるFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FL)は、初期造血制御において重要な役目を担う受容体型チロシンキナーゼのリガンドとして知られている。いくつかの選択的スプライシングによる産物が知られているが、造血系幹細胞の増殖を刺激するという報告がある。本発明に用いられるFLは、EPC等の富化に有用である限り、いずれのタイプのFLであってもよい。
無血清培地中のFLの濃度は、用いるFLの種類によっても異なるが、ヒト組換えFlt−3リガンドの場合であれば、好ましくは10〜1000ng/mL、より好ましくは50〜500ng/mL、さらに好ましくは100ng/mLである。
本発明に用いられるトロンボポエチン(TPO)は、造血系サイトカインの一種であり、造血幹細胞から巨核球が作られる過程に特異的に作用し、巨核球の産生を促進することが知られている。本発明に用いるTPOの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。
無血清培地中のTPOの濃度は、用いるTPOの種類によっても異なるが、ヒト組換えTPOの場合であれば、好ましくは1〜500ng/mL、より好ましくは5〜100ng/mL、さらに好ましくは20ng/mLである。
本発明の無血清培地に添加される各種因子はまた、単核球が由来する動物と同種の動物に由来する因子で統一することが好ましい。このように単核球及び各種因子の由来を統一することで、同種異系移植等の同種移植に好適な細胞培養物が得られる。また、細胞移植が意図される個体由来の単核球を用いることで、同種同系移植に好適な細胞培養物を得ることも可能である。このように異種動物由来の成分を一切含有しない環境でEPC等を含む細胞群の培養が可能であるため、得られる細胞培養物は、移植等に際して感染リスク・拒絶反応を回避できるという利点を有する。
上記した各成分は無血清培地で所定の濃度に溶解するか、あるいはあらかじめ各成分の濃縮液(ストック溶液)を調製し、無血清培地で所定の濃度に希釈することによって本発明の無血清培地を調製することができる。例えば市販の無血清培地に必要な成分を所定の濃度となるように溶解した後、濾過滅菌等により滅菌するか、あるいは濾過滅菌等により減菌したストック溶液を無菌的に市販の無血清培地に添加、希釈することによって本発明の無血清培地を調製することができる。濾過滅菌は当分野で通常実施されている方法に準じて行うことができ、例えば0.22μmや0.45μmのミリポアフィルター等を用いて行う。
本発明で用いられる「無血清培地」は、当分野で通常用いられている培地を利用することができ、例えば造血幹細胞の増殖用培地として知られている無血清培地を用いることができる。無血清培地として用いられる基礎培地としては、例えばDMEM、MEM、IMDM等が挙げられる。
本発明で用いられる単核球とは、末梢血、骨髄または臍帯血等に含まれる円形核を持つ細胞の総称で、リンパ球、単球、マクロファージ、血管内皮前駆細胞、造血幹細胞等が含まれる。単核球はさらにCD34および/またはCD133陽性細胞を含んでいる。動物から骨髄、臍帯血または末梢血を採取し、それを例えば密度勾配遠心法に付して該分画を抽出することにより単核球が得られる。好ましくは末梢血由来である。密度勾配遠心法としては、単核球分画が形成されれば特に限定されないが好ましくはHistopaque−1077(Sigma−Aldrich)が用いられる。
本発明で用いられる単核球は、CD34および/またはCD133陽性細胞の選別(陽性選別)を行うことなく、取得した単核球をそのまま細胞培養に用いることができる。
本発明で用いられる細胞が由来する動物種は、虚血性疾患等の疾患に対する細胞移植療法が適用されるヒトを含む哺乳動物一般を意味するが、臨床応用を考慮すれば、好ましくはヒトである。
本発明の無血清培地中での単核球の培養は、単核球を含有する細胞懸濁液を、本発明の無血清培地に添加することにより行われる。細胞懸濁液としてはまた、単核球を含有する体液自体(例えば、骨髄液、臍帯血、末梢血)を用いることもできる。単核球の培養条件は特に限定されず、通常当分野で実施される条件で実施することができる。例えば、5%CO2雰囲気下、37℃で7日間以上(例えば10日間以上)培養される。単核球の無血清培地中の濃度は、EPC等の富化を可能とする限り特に限定されないが、好ましくは0.5〜10×105細胞/mL、より好ましくは1〜5×105細胞/mL、最も好ましくは3〜4×105細胞/mLである。
本発明の無血清培地中で単核球を培養すると、特許文献4の5成分を含有する無血清培地で単核球を培養した場合に比べてCD34陽性細胞及びCD206陽性細胞が顕著に増加する。また、EPCコロニー形成アッセイでは、健常者においても糖尿病患者でも分化型EPCコロニー形成細胞が顕著に増加していた。また、糖尿病患者におけるEPCコロニー生産能も増加していた。
従って、本発明の無血清培地は、特許文献4記載の無血清培地に比べて、CD34陽性細胞及びCD206陽性細胞の増加、分化型EPCコロニー形成細胞の増加により、優れた血管内皮前駆細胞富化能に優れており、血管新生を必要とする虚血性疾患治療用の培地あるいは組織再生療法用の培地として優れている。そのような虚血性疾患としては、難治性潰瘍(例えば糖尿病性潰瘍)、虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症、バージャー病、慢性と急性を含む全身の虚血性疾患(脳、腎臓、消化管等)等が挙げられる。組織再生療法の対象としては、創傷、乳房再建等が挙げられる。
次に糖尿病患者に対して行った実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
(1)SCF、γ−セクレターゼ阻害剤、VEGF、FL及びTPO含有無血清培地の調製
培地に用いる無血清培地(Restoration culture ; 以下RC)は、stemlineTMII Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium (Sigma-Aldrich, Cat No. S0192)を用いて表1に示す組成に基づいて作成した。即ち、表1に示す各成分を、所定の最終濃度となるように無血清培地に無菌的に添加した。
表1中、「h」はヒト由来であることを示す。「r」は組み換え体であることを示す。それ以外の略語は上述の通りである。
(2)各培地中での単核球の培養
1.単核球の入手
20〜80歳の糖尿病(DM)患者から、翼付採血セットを用いて末梢血を40〜65mL、EDTA−2NA入り真空採血管へ採取した。採取は順天堂大学医学部医学調査委員会の承認の下で行い、得られた末梢血サンプルの取り扱いはヒトサンプルに対する生物学的ガイドラインに沿って行った。末梢血からの単核球(PBMNC)単離は、末梢血を遠心後、バッフィーコート層を採取しHistopaque−1077(Sigma-Aldrich, #10771)を用いた密度勾配遠心分離法にて単離した。単離されたPBMNCはPBS−EDTAで洗浄し、緩衝液中に懸濁し、細胞懸濁液を調整した。単離されたPBMNCにおいて得られる細胞数は末梢血1mLあたり約0.82×106個細胞、CD34陽性率は0.06±0.04%、CD133陽性率は0.04±0.02%であった。
2.培養条件
上記方法により単離されたPBMNCを、Primaria Tissue culture plate(6well PrimariaTM tissue culture plate, BD Falcon, #353846)を用い、1ウェル当たり2×10細胞/2mL RC培地の条件下、(1)で調整された無血清培地中で7日間培養した。
3.培養細胞の種々の測定法
・RC細胞数
培養の結果、培養開始前のPBMNCに対する上記培養後の細胞(以下、RCCといい、上記培養法をRCCという場合がある)の数は、全ての糖尿病被験者において減少していた(平均で0.56倍;図1)。血液100mLの末梢血に換算すると、血液100mLから平均で約4.6×10個のRC細胞が得られた。
・フローサイトメトリー
上記培養条件により得られたRCCの特徴をより明らかにするため、フローサイトメトリーにより、血液血管系の幹細胞、血液系細胞、または血管系細胞の細胞表面マーカーの発現を調べた。フローサイトメトリー解析は下記の通りに行った。
MACS buffer中に懸濁した細胞(1.5×10細胞/300μL−MACS buffer)にFCブロッキング試薬を10μL添加し4℃で30分間培養する。その後染色反応用チューブに等量ずつ分注した(100μL/チューブ×3チューブ)。各アリコートに各一次抗体を2μL添加し4℃で20分間培養した。その後1mLのMACS bufferで2回洗浄し、染色した細胞をMACS buffer中に懸濁した(5×10細胞/200〜300μL−MACS buffer)。フローサイトメトリー計測はFACSAriaTMIIIセルソーター(BD)を用いて行った。なお、抗体はいずれも市販のものを使用した。
計測された細胞の解析はFlowJoTMソフトウェア(Tomy Digital Biology)を用いて行った。PBMNCまたはRCCの散布図をそれぞれ、細胞サイズにより3つの集団、即ちリンパ球サイズ(Lymph gate)、単球サイズ(Mono gate)、および大型細胞サイズ(Large gate)にゲートした(図2)。先ずPBMNCまたはRCC各々の生存細胞率を各ゲートにおいて推定する。次に、3つの細胞サイズ領域ごとに各細胞表面マーカー陽性細胞を測定し、ゲートした細胞集団中の生存細胞分画における陽性率(%)を計算した。
また、上記3集団にゲートした細胞の合計を100%とした場合の陽性率を算出し、さらにこの場合のRCC前後の細胞全体における各マーカー発現細胞の%変化も算出した。
解析の結果、CD34陽性幹細胞の比率が、PBMNCでは約0.06%であるのに対してRCCでは約1.02%となり、RCC前後で比較するとCD34陽性細胞の割合は17倍と大幅に増加していた(図3)。内皮系細胞マーカーの陽性率はCD31で0.93倍となりわずかに減少がみられた。
更に、抗炎症性M2型マクロファージのパラメーターであるCD206は、PBMNCでは1.31%、RCCでは22.91%で、RCC前後比較は17.4倍に増加していた。CD34陽性細胞の増加と同程度に増加していた(図4)。
この結果は上記3集団にゲートした細胞の合計を100%とした場合の陽性率でも同様の傾向であった。
・EPCコロニー形成アッセイ
PBMNCおよびRCCの血管形成能を調べるため、EPCコロニー形成アッセイ(EPC−CFA)によりEPCコロニーを定量した。EPC−CFAは、Masuda H.et al.,Circulation research,109:20−37(2011)に記載される方法を元に実施した。具体的には、35mm PrimariaTM dish(BD Falcon)中、表2に示す組成に基づいて作製した半固形培地中でPBMNC/RCCを培養し(2×10細胞/1ディッシュ)、培養開始から16日前後に位相差光学顕微鏡(Eclipse Ti−U,Nikon)下にて、1ディッシュあたりのEPCコロニー数を測定した。形成されるEPCコロニーの種類として未分化型EPCコロニー(PEPC−CFU(primitive EPC colony forming unit);図5左)と、分化型EPCコロニー(DEPC−CFU(definitive EPC colony forming unit);図5右)があり、これらをそれぞれカウントした。
EPC−CFAの結果、PBMNCと比較してRCCでは、ディッシュあたりの形成されたEPCコロニーの総コロニー(total−CFU)数、および特に分化型EPCコロニー(DEPC−CFU)数について優位な増加が観察された(図6)。分化型EPCコロニーは未分化型EPCコロニーよりも更に強力な血管形成活性を持ち、また未分化型EPCコロニー(PEPC−CFU)数も増加傾向にあることで総コロニー数が更に増幅し血管再生能を持つ細胞数の増加を示している。この結果はPBMNCに対してRCCは顕著に優れた血管再生能を有する細胞集団であることを実証している。EPCコロニー形成細胞分化度(総コロニー数に占めるPEPC−CFUとDEPC−CFUの割合(%))についても、PBMNCではEPCコロニー形成細胞全体のうち未分化型コロニー形成細胞が87.1%、分化型コロニー形成細胞が12.9%であったのに対し、RCCでは未分化型コロニー形成細胞が35.0%、分化型コロニー形成細胞が65.0%と、分化型コロニー形成細胞の比率が大きく増加していた。
更に本発明のRC培養(本RC)と前記特許文献4記載の培地成分を元にした培養(特4)を行ったRCCをEPCコロニー形成アッセイにて比較したところ、特4に比べ本RCCはDEPC−CFU及びtotal−CFUが優位に増加した(図7)。
以上のことから、本発明のRC培養は、血管形成能を有する細胞が量的にも機能的(質的)にも大いに向上することが実証された。
(3)健常人との比較
本発明のRC培養が虚血性疾患(この場合、特に糖尿病患者を示す)に対してより有効であるのを示すため、糖尿病患者と健常者のPBMNCおよびRCCでEPCコロニー形成アッセイ(EPC−CFA)を行いEPCコロニーを定量し血管形成能を比較した。
その結果、RCCにおけるEPCコロニー形成頻度はPBMNCに対して、各コロニーいずれにおいても健常者(Healthy)より糖尿病患者(DM)で増加していた(図8)。(PEPC−CFUはDM:1.57倍、Healthy:1.08倍、DEPC−CFUはDM:23.32倍、Healthy:18.91倍、total−CFUはDM:7.43倍、Healthy:5.29倍。)。
故に、本発明のRC培養が健常者よりもむしろ糖尿病患者においてより優れた効果を発揮することを示している。EPC機能障害の生じている各疾患由来の血液からでも血管形成能を高めた細胞集団を培養することが可能である。

Claims (6)

  1. 幹細胞因子、γ−セクレターゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド及びトロンボポエチンを含有する単核球培養用無血清培地。
  2. 請求項1記載の無血清培地中で単核球を培養することを特徴とする、少なくとも血管内皮前駆細胞が富化した細胞群の製造法。
  3. 請求項1記載の無血清培地中の単核球培養物を有効成分とする虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤。
  4. 虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤が、難治性潰瘍、虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症、バージャー病及び全身の虚血性疾患から選ばれる疾患の治療剤、組織再生療法剤である請求項3記載の虚血性疾患治療剤及び/又は組織再生療法剤。
  5. 請求項1記載の無血清培地中の単核球培養物を投与することを特徴とする虚血性疾患治療方法及び/又は創傷の組織再生療法。
  6. 難治性潰瘍、虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症、バージャー病、全身の虚血性疾患から選ばれる疾患の治療法、組織再生療法である請求項5記載の治療方法。
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