JP2017135192A - ファイバレーザシステム、製造方法、及び加工方法 - Google Patents

ファイバレーザシステム、製造方法、及び加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反射耐性の高いファイバレーザを実現する。【解決手段】各ファイバレーザ(FL2)の個別光路上の各点において、前進ストークス光(SF)のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光(SB)のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光(SF)のパワーの半値半幅と後進ストークス光(SB)のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという条件を満たすように、光ファイバMMFの長さを設定する。【選択図】図1

Description

本発明は、複数のファイバレーザを備えたファイバレーザシステムに関する。また、そのようなフィアバレーザシステムを製造する製造方法に関する。また、そのようなファイバレーザシステムを用いて対象物を加工する加工方法に関する。
材料加工の分野では、近年、kW級の出力を有するレーザ装置が求められている。しかしながら、このようなレーザ装置を単一のファイバレーザにより実現することは困難である。そこで、複数のファイバレーザと、各ファイバレーザから出力されたレーザ光を合波するコンバイナとを備えたファイバレーザシステムが、材料加工の分野で用いられ始めている。
このようなファイバレーザシステムにおいては、加工対象物にて反射されたレーザ光がファイバレーザシステムに再入射することによって、ファイバレーザシステムに不具合を生じさせることがある。
例えば、ファイバレーザシステム内を順方向に伝播する前進レーザ光に、加工対象物にて反射された後、ファイバレーザシステム内を逆方向に伝播する後進レーザ光が加わると、ファイバレーザシステムの各点に入射するレーザ光のパワーが著しく高くなる。そうすると、ファイバレーザシステムの各点において誘導ラマン散乱が促進され、場合によってはストークス光の発振が起こる。ファイバレーザシステムにおいてストークスの発振が起こると、各ファイバレーザにおけるレーザ発振が不安定になったり、各ファイバレーザが故障したりすることが知られている(特許文献1参照)。
特開2015−95641号公報(2015年5月18日公開)
ところで、ファイバレーザでは、励起光源を点灯した直後にレーザ光のパワーが極大値を取るという性質がある(この性質は、励起光のパワーを立ち上げる時間を短くするほど顕著になる)。このため、ファイバレーザシステムを順方向に伝播する前進レーザ光のパワーは、各ファイバレーザにおいて励起光源を点灯した直後に極大値を取る。このとき、加工対象物にて反射されたレーザ光がファイバレーザシステムに再入射すると、前進レーザ光のパワーのピークと後進レーザ光のパワーのピークとが重なり、ファイバレーザシステムの各部に入射するレーザ光のパワーが特異的に高くなることがある。
ストークス光のパワーについても同様のことが言える。すなわち、ファイバレーザシステムを順方向に伝播する前進ストークス光のパワーは、前進レーザ光のパワーが極大値を取った直後に極大値を取る。このとき、加工対象物にて反射されたストークス光がファイバレーザシステムに再入射すると、前進ストークス光のパワーのピークと後進ストークス光のパワーのピークとが重なり、ファイバレーザシステムの各部に入射するストークス光のパワーが特異的に高くなることがある。
以上のように、ファイバレーザシステムにおいては、各ファイバレーザにおいて励起光源を点灯した直後に、ファイバレーザシステムの各部に入射するレーザ光及びストークス光のパワーが特異的に高くなる場合がある。この場合、ストーク光の発振が生じる確率が上昇し、これにより、ファイバレーザシステムの信頼性が低下する。したがって、信頼性の高いファイバレーザシステムを実現するためには、各ファイバレーザにおいて励起光源を点灯した直後にレーザ光及びストークス光のパワーが特異的に高くなることを避け、もってストークス光の発振が生じる確率を低下させることが肝要である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも信頼性の高いファイバレーザシステム、特に、各ファイバレーザにおいて励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率が従来よりも低いファイバレーザシステムを実現することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係るファイバレーザシステムは、レーザ光を生成する複数のファイバレーザと、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光を合波するコンバイナと、上記コンバイナにて合波されたレーザ光を、入力端に接続された上記コンバイナから出射端に接続された出力部まで導く光ファイバと、を備えたファイバレーザシステムであって、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波される前の個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第1の条件が満たされるように、該ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波された後の共通光路の光路長が設定されている、ことを特徴とする。
上記の構成によれば、上記個別光路上の各点に入射するストークス光のパワーが、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後に後進ストークス光の存在により上昇することを回避できる。これにより、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率を低下させることができる。
本発明係るファイバレーザシステムにおいては、上記個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進レーザ光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第2の条件を更に満たすように、上記共通光路の光路長が設定されている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記個別光路上の各点に入射する前進ストークス光のパワーと後進レーザ光のパワーとの積が、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後に後進レーザ光の存在により上昇することを回避できる。これにより、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率を低下させることができる。
本発明係るファイバレーザシステムにおいては、上記個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進レーザ光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第3の条件を更に満たすように、上記共通光路の光路長が設定されている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記個別光路上の各点に入射する前進レーザ光のパワーと後進ストークス光のパワーとの積が、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後に後進ストークス光の存在により上昇することを回避できる。これにより、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率を低下させることができる。
本発明係るファイバレーザシステムにおいては、上記個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに、前進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻と後進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進レーザ光のパワーの半値半幅と後進レーザ光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第4の条件を更に満たすように、上記共通光路の光路長が設定されている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記個別光路上の各点に入射するレーザ光のパワーが、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後に後進レーザ光の存在により上昇することを回避できる。これにより、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率を低下させることができる。
上記課題を解決するために、本発明に係るファイバレーザシステムの製造方法は、ファイバレーザシステムを製造する製造方法であって、上記ファイバレーザシステムは、レーザ光を生成する複数のファイバレーザと、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光を合波するコンバイナと、上記コンバイナにて合波されたレーザ光を、入力端に接続された上記コンバイナから出射端に接続された出力部まで導く光ファイバと、を備えており、当該製造方法は、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波される前の個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第1の条件が満たされるように、該ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波された後の共通光路の光路長を設定する工程を含んでいる、ことを特徴とする。
上記の構成によれば、上記個別光路上の各点に入射するストークス光のパワーが、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後に後進ストークス光の存在により上昇することを回避できる。これにより、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率を低下させることができる。
上記課題を解決するために、本発明に係る加工方法は、ファイバレーザシステムを用いて対象物を加工する加工方法において、上記ファイバレーザシステムは、レーザ光を生成する複数のファイバレーザと、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光を合波するコンバイナと、上記コンバイナにて合波されたレーザ光を、入力端に接続された上記コンバイナから出射端に接続された出力部まで導く光ファイバと、を備えており、当該加工方法は、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波される前の個別光路上の各点において、前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第1の条件を満たすように、上記出力部から上記対象物までの距離を設定する工程を含んでいる、ことを特徴とする。
上記の構成によれば、上記個別光路上の各点に入射するストークス光のパワーが、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後に後進ストークス光の存在により上昇することを回避できる。これにより、各ファイバレーザの励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率を低下させることができる。
本発明によれば、各ファイバレーザにおいて励起光源を点灯した直後にストークス光の発振が生じる確率が従来よりも低いファイバレーザシステムを実現することができる。
本発明の一実施形態に係るファイバレーザシステムの構成を示すブロック図である。 図1に示すファイバレーザシステムに関し、注目光路上の点における前進レーザ光(LF)、後進レーザ光(LB)、前進ストークス光(SF)、及び後進ストークス光(SB)のパワーの時間変化を模式的に示すグラフである。
(ファイバレーザシステムの構成)
本発明の一実施形態に係るファイバレーザシステムFLSの構成について、図1を参照して説明する。図1は、ファイバレーザシステムFLSの構成を示すブロック図である。
ファイバレーザシステムFLSは、図1に示すように、n個のファイバレーザFL1〜FLn、レーザコンバイナLC、光ファイバMMF、及び出力部Cを備えている。図1には、n=3の場合の構成を例示しているが、ファイバレーザFL1〜FLnの個数nは任意である。
各ファイバレーザFLiは、レーザ光を生成するレーザ光源として機能する(i=1,2,…,n)。各ファイバレーザFLiは、レーザコンバイナLCの入力ポートの何れかに接続されており、各ファイバレーザFLiにて生成されたレーザ光は、この入力ポートを介してレーザコンバイナLCに入力される。
レーザコンバイナLCは、ファイバレーザFL1〜FLnの各々にて生成されたレーザ光を合波する。レーザコンバイナLCの出力ポートは、光ファイバMMFの入力端に接続されており、レーザコンバイナLCにて合波されたレーザ光は、光ファイバMMFのコアに入力される。
光ファイバMMFは、レーザコンバイナLCにて合波されたレーザ光を導波する。光ファイバMMFの出射端は、出力部Cに接続されており、光ファイバMMFを導波された光は、出力部Cを介して外部に出力される。
なお、本実施形態においては、光ファイバMMFとして、マルチモードファイバを用いる。これにより、高出力レーザ光を導波する過程で生じ得る各種非線形効果を抑制することができる。また、本実施形態においては、出力部Cとして、コリメータを用いる。これにより、出力部Cを介して外部に出力されるレーザ光を、コリメートされた状態で加工対象物Wに照射することができる。
上述したファイバレーザシステムFLSを構成する各ファイバレーザFLiは、図1に示すように、m個のレーザダイオードLD1〜LDm、ポンプコンバイナPC、高反射ファイバブラッググレーティングFBG1、増幅用光ファイバDCF、及び低反射ファイバブラッググレーティングFBG2により構成することができる。図1には、m=3の場合の構成を例示しているが、レーザダイオードLD1〜LDmの個数mは任意である。
各レーザダイオードLDjは、ポンプ光を生成するポンプ光源として機能する(j=1,2,…,m)。各レーザダイオードLDjは、ポンプコンバイナPCの入力ポートに接続されている。各レーザダイオードLDjにて生成されたポンプ光は、この入力ポートを介してポンプコンバイナPCに入力される。
ポンプコンバイナPCは、レーザダイオードLD1〜LDmの各々にて生成されたポンプ光を合波する。ポンプコンバイナPCの出力ポートは、高反射ファイバブラッググレーティングFBG1を介して増幅用光ファイバDCFに接続されている。ポンプコンバイナPCにて合波されたポンプ光は、この高反射ファイバブラッググレーティングFBG1を透過し、増幅用光ファイバDCFのインナークラッドに入力される。
増幅用光ファイバDCFは、コアに希土類元素が添加されたダブルクラッドファイバであり、入力端に接続された高反射ファイバブラッググレーティングFBG1及び出射端に接続された低反射ファイバブラッググレーティングFBG2と共にレーザ発振器を構成する。増幅用光ファイバDCFの出射端は、低反射ファイバブラッググレーティングFBG2を介してレーザコンバイナLCの入力ポートに接続されている。増幅用光ファイバDCFにて生成されたレーザ光のうち、低反射ファイバブラッググレーティングFBG2を透過したレーザ光は、レーザコンバイナLCに入力される。
(ファイバレーザシステムの特徴)
以下、或るファイバレーザFLiにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザFLk(k≠i)にて生成されたレーザ光と合波されるまでの個別光路に注目する。図1に示す構成を採用した場合には、そのファイバレーザFLiの増幅用光フィアバDCFと、そのファイバレーザFLiに接続された、レーザコンバイナLCの入力ポートとが当該光路を構成する。ファイバレーザFLiとレーザコンバイナLCの入力ポートとの間に伝送用光ファイバを介在させる場合には、この伝送用光ファイバも当該光路に含まれる。当該個別光路のことを、以下、「注目光路」と記載する。
注目光路上の各点においては、誘導ラマン散乱が生じ得る。ここで、誘導ラマン散乱とは、注目光路の構成媒質である石英ガラスの格子振動との相互作用によって、レーザ光がストークス光(レーザ光よりも波長の長い散乱光)に変換される現象のことを指す。注目光路上の各点において誘導ラマン散乱により生じるストークス光のパワーPは、その点に入射するレーザ光LのパワーPとその点に入射するストークス光SのパワーPとの積P×Pに比例する。
ここで、注目光路上の各点に入射するレーザ光LのパワーPには、順方向(レーザダイオードLDiから出力部Cに向かう方向)に伝播する前進レーザ光LFのパワーPLFのみならず、逆方向(出力部CからレーザダイオードLDiに向かう方向)に伝播する後進レーザ光LBのパワーPLBも含まれる。同様に、注目光路上の各点に入射するストークス光SのパワーPには、順方向に伝播する前進ストークス光SFのパワーPSFのみならず、逆方向に伝播する後進ストークス光SBのパワーPSBも含まれる。したがって、注目光路上の各点において誘導ラマン散乱により生じるストークス光のパワーPは、P×P=(PLF+PLB)×(PSF+PSB)に比例することになる。なお、後進レーザ光LB及び後進ストークス光SBは、主に、前進レーザ光LF及び前進ストークス光SFが加工対象物Wにおいて反射されることにより生じる。
図1においては、ファイバレーザFL2の個別光路上の点、より具体的には、ファイバレーザFL2に接続された、レーザコンバイナLCの入力ポート上の点Pに入射する前進レーザ光LF、前進ストークス光SF、後進レーザ光LB、及び後進ストークス光SBを模式的に示している。
ところで、注目光路上の各点に入射する前進レーザ光LFのパワーPLF及び前進ストークス光SFのパワーPSFは、レーザダイオードLD1〜LDNを点灯した直後に極大値を取り、その後、同点に入射する後進レーザLB(前進レーザ光LFの反射光)のパワーPLB及び後進ストークス光SB(前進ストークス光SBの反射光)のパワーPSBが極大値を取る。このため、生成されるストークス光のパワー(入射するストークス光SのパワーPと入射するレーザ光LのパワーPとの積に比例)が増大する時間帯、すなわち、ストークス光の発振に至る確率(以下、「ストークス発振確率」と記載)の高い時間帯は、レーザダイオードLD1〜LDNを点灯した直後である。
特に、前進ストークス光SFのパワーPSFが極大値を取る時刻tSFと後進ストークス光SBのパワーPSBが極大値を取る時刻tSBとの時間差Δt=tSB−tSFが、前進ストークス光SFのパワーPSFのピークの半値半幅WSF/2と後進ストークス光SBのパワーPSBのピークの半値半幅WSB/2との和(WSF+WSB)/2以下となる場合、ストークス光SのパワーPs=PSF+PSBの極大値が前進ストークス光SFのパワーPSFの極大値よりも大きくなり得る。これは、後進ストークス光SBの存在(加工対象物Wにおける反射の存在)により、ストークス発振確率が上昇することを意味する。
同様に、前進レーザ光LFのパワーPLFが極大値を取る時刻tLFと後進レーザ光LBのパワーPLBが極大値を取る時刻tLBとの時間差Δt=tLB−tLFが、前進レーザ光LFのパワーPLFのピークの半値半幅WLF/2と後進レーザ光LBのパワーPLBのピークの半値半幅WLB/2との和(WLF+WLB)/2以下となる場合、全レーザ光LのパワーPL=PLF+PLBの極大値が前進レーザ光LFのパワーPLFの極大値よりも大きくなり得る。これは、後進レーザ光LBの存在(加工対象物Wにおける反射の存在)により、ストークス発振確率が上昇することを意味する。
更に、(1)前進ストークス光SFのパワーPSFが極大値を取る時刻tSFから後進レーザ光LBのパワーPLBが極大値を取る時刻tLBまでの時間差ΔtSL=tLB−tSFが、前進ストークス光SFのパワーPSFのピークの半値半幅WSF/2と後進レーザ光LBのパワーPLBのピークの半値半幅WLB/2との和(WSF+WLB)/2以下になる場合、及び、(2)前進レーザ光LFのパワーPLFが極大値を取る時刻tLFから後進ストークス光SBのパワーPSBが極大値を取る時刻tSBまでの時間差ΔtLS=tSB−tLFが、前進レーザ光LFのパワーPLFのピークの半値半幅WLF/2と後進ストークス光SBのパワーPSBのピークの半値半幅WSB/2との和(WLF+WSB)/2以下になる場合にも、ストークス発振確率が上昇する。これは、誘導ラマン散乱により生じるストークス光のパワーPは、P×P=(PLF+PLB)×(PSF+PSB)に比例するためである。
以上のように、前進ストークス光SF又は前進レーザ光LFのパワーPLF,PSFのピークと、後進ストークス光SB又は後進レーザ光LBのパワーPLB,PSBのピークとが、時間軸上で有意に重なり合う場合、ストークス発振確率が上昇する。そこで、本実施形態に係るファイバレーザシステムFLSにおいては、加工対象物W等の反射体を出力部Cの出射面に接触させたときに、注目光路上の各点Pにおいて下記条件1〜4を満たすように、光ファイバMMFの長さ(共通光路の光路長)を設定する。
条件1:前進ストークス光SFのパワーPSFが極大値を取る時刻tSFと後進ストークス光SBのパワーPSBが極大値を取る時刻tSBとの時間差Δt=tSB−tSFが、前進ストークス光SFのパワーのピークの半値半幅WSF/2と後進ストークス光SBのパワーのピークの半値半幅WSB/2との和(WSF+WSB)/2よりも大きくなる。
条件2:前進ストークス光SFのパワーPSFが極大値を取る時刻tSFから後進レーザ光LBのパワーPLBが極大値を取る時刻tLBまでの時間差ΔtSL=tLB−tSFが、前進ストークス光SFのパワーのピークの半値半幅WSF/2と後進レーザ光LBのパワーのピークの半値半幅WLB/2との和(WSF+WLB)/2よりも大きくなる。
条件3:前進レーザ光LFのパワーPLFが極大値を取る時刻tLFから後進ストークス光SBのパワーPSBが極大値を取る時刻tSBまでの時間差ΔtLS=tSB−tLFが、前進レーザ光LFのパワーのピークの半値半幅WLF/2と後進ストークス光SBのパワーのピークの半値半幅WSB/2との和(WLF+WSB)/2よりも大きくなる。
条件4:前進レーザ光LFのパワーPLFが極大値を取る時刻tLFと後進レーザ光LBのパワーPLBが極大値を取る時刻tLBとの時間差Δt=tLB−tLFが、前進レーザ光LFのパワーPLFのピークの半値半幅WLF/2と後進レーザ光LBのパワーPLBのピークの半値半幅WLB/2との和(WLF+WLB)/2よりも大きくなる。
図2は、上記条件1〜4の全てを満たす点Pにおける、前進レーザ光LF、後進レーザ光LB、前進ストークス光SF、及び後進ストークス光SBのパワーPLF,PLB,PSF,PSBの時間変化を模式的に示すグラフである。
上記条件1〜4を満たす点Pにおいては、図2に示すように、前進ストークス光SF又は前進レーザ光LFのパワーPLF,PSFのピークと、後進ストークス光SB又は後進レーザ光LBのパワーPLB,PSBのピークとが、時間軸上で互いに分離される。したがって、上記条件1〜4を満たす点Pにおいては、生成されるストークス光のパワーが後進ストークス光SB又は後進レーザ光LBにより増大することを回避できる。
注目光路上の各点Pにおいて上記条件1〜4が満たされていることにより、注目光路上にて生成されるストークス光のパワーが後進ストークス光SB又は後進レーザ光LBにより増大することを回避できる。これにより、レーザダイオードLD1〜LDnを点灯した直後に生じ得るストークス発振確率の上昇を抑え込むことができる。すなわち、従来よりも耐反射性の高いファイバレーザシステムを実現することができる。
なお、加工対象物Wが出力部Cの出射面に接触している場合に注目光路上の点Pにおいて上記条件1〜4が満たされていれば、加工対象物Wが出力部Cの出射面に接触していない場合にも該点Pにおいて上記条件1〜4が自動的に満たされる。なぜなら、前者の場合よりも後者の場合の方が、該点Pから加工対象物Wまでの光路長が長くなり、その結果、上記各時間差Δt,Δt,ΔtLS,Δtが大きくなるためである。したがって、上述したとおり、加工対象物Wが出力部Cの出射面に接触している場合に注目光路上の各点Pにおいて上記条件1〜4が満たされるように光ファイバMMFの長さを設定しておけば、その使用方法に何らの制限を課すことなく、従来よりも耐反射性の高いファイバレーザシステムFLSを実現することができる。
また、前進レーザ光LFのピークの半値幅WLFは、前進ストークス光SFのパワーのピークの半値幅WSFよりも広く、前進レーザ光LFが極大値を取る時刻tLFと前進ストークス光SFが極大値を取る時刻tSFとの時間差tSF−tLFは、これらの半値幅WLF,WSFと比べて無視できる程度に小さい(図2参照)。同様に、後進レーザ光LBのピークの半値幅WLBは、後進ストークス光SBのパワーのピークの半値幅WSBよりも広く、後進レーザ光LBが極大値を取る時刻tLBと後進ストークス光SBが極大値を取る時刻tSBとの時間差tSB−tLBは、これらの半値幅WLB,WSBと比べて無視できる程度に小さい(図2参照)。このため、上記条件4が満たされていれば、上記条件1〜3が自動的に満たされ、上記条件2又は上記条件3が満たされていれば、上記条件1が自動的に満たされる。したがって、(a)上記条件1〜4が全て満たされる場合、(b)上記条件1〜3のみが満たされる場合、(c)上記条件1、2のみが満たされる場合、(d)上記条件1、3のみが満たされる場合、(e)上記条件1のみが満たされる場合の5通りの場合が考えられる。最も高い耐反射性を得られるのが(a)の場合であり、その次に高い耐反射性を得られるのが(b)の場合であり、その次に高い反射耐性を得られるのが(c)又は(d)の場合であり、その次に高い反射耐性を得られるのが(e)の場合である。ただし、(e)の場合であっても、上記条件1が満たされない場合(従来技術)よりも高い反射耐性が得られる点に変わりはない。
なお、本実施形態においては、加工対象物W等の反射体を出力部Cの出射面に接触させたときに注目光路上の各点Pにおいて上記条件1〜4を満たすよう、製造時に光ファイバMMFの長さが設定されたファイバレーザシステムFLSについて説明した。しかしながら、注目光路上の各点において上記条件1〜4を満たすよう、使用時に出力部Cから加工対象物Wまでの距離を設定することによっても、注目光路上の各点において上記条件1〜4を満たすよう、製造時に光ファイバMMFの長さを設定することによって得られる効果と同等の効果を得ることができる。すなわち、ファイバレーザシステムFLSを用いて加工対象部Wを加工する加工方法であって、注目光路上の各点において上記条件1〜4を満たすよう、出力部Cから加工対象物Wまでの距離を設定する工程を含む加工方法を実施ことによっても、注目光路上の各点において上記条件1〜4を満たすよう、光ファイバMMFの長さを設定する工程を含む製造方法を実施することによって得られる効果と同等の効果を得ることができる。
(実施例)
ここで、前進ストークス光SFのパワーPSFのピークの半値幅WSF及び後進ストークス光SBのパワーPSBのピークの半値幅WSBがそれぞれ300nsである場合を例に、上記条件1を満たすために必要なファイバレーザシステムFLSの具体例について簡単に説明する。
前進ストークス光SFのパワーPSFが極大値を取る時刻tSFと後進ストークス光SBのパワーPSBが極大値を取る時刻tSBとの時間差tSB−tSFをΔtとして、条件1は、(WSF+WSB)/2<Δtと表現することができる。注目光路上の点Pにおいて条件1を満たすためには、点Pから出力部Cまでの光路長をx[m]として、(WSF+WSB)/2<2x/vを満たせばよい。ここで、v[m/s]は、ファイバレーザシステムFLS内を伝播する光の速度である。
ここで、WSF=WSB=300ns、v=2.0×10m/sとすると、上記条件1は、最終的にx>30mと書き換えられる。したがって、例えば、光ファイバMMFの長さを30mに設定すれば、注目光路上の任意の点Pから出力部Cまでの光路長xは30mよりも大きくなるので、上記条件1を満たす。これにより、従来よりも耐反射性の高いファイバレーザシステムFLSを実現できることについては、上述したとおりである。
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
FLS ファイバレーザシステム
FL1〜FLn ファイバレーザ
LC レーザコンバイナ(コンバイナ)
MMF 光ファイバ
C 出力部
LD1〜LDN レーザダイオード
PC ポンプコンバイナ
FBG1 高反射ファイバブラッググレーティング
DCF 増幅用光フィアバ
FBG2 低反射ファイバブラッググレーティング
W 加工対象物(反射体)

Claims (6)

  1. レーザ光を生成する複数のファイバレーザと、
    各ファイバレーザにて生成されたレーザ光を合波するコンバイナと、
    上記コンバイナにて合波されたレーザ光を、入力端に接続された上記コンバイナから出射端に接続された出力部まで導く光ファイバと、を備えたファイバレーザシステムであって、
    各ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波される前の個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第1の条件が満たされるように、該ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波された後の共通光路の光路長が設定されている、
    ことを特徴とするファイバレーザシステム。
  2. 上記個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進レーザ光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第2の条件を更に満たすように、上記共通光路の光路長が設定されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のファイバレーザシステム。
  3. 上記個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進レーザ光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第3の条件を更に満たすように、上記共通光路の光路長が設定されている、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバレーザシステム。
  4. 上記個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに、前進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻と後進レーザ光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進レーザ光のパワーの半値半幅と後進レーザ光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第4の条件を更に満たすように、上記共通光路の光路長が設定されている、
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のファイバレーザシステム。
  5. ファイバレーザシステムを製造する製造方法であって、
    上記ファイバレーザシステムは、レーザ光を生成する複数のファイバレーザと、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光を合波するコンバイナと、上記コンバイナにて合波されたレーザ光を、入力端に接続された上記コンバイナから出射端に接続された出力部まで導く光ファイバと、を備えており、
    当該製造方法は、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波される前の個別光路上の各点において、反射体を上記出力部の出射面に接触させたときに前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第1の条件が満たされるように、該ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波された後の共通光路の光路長を設定する工程を含んでいる、
    ことを特徴とする製造方法。
  6. ファイバレーザシステムを用いて対象物を加工する加工方法において、
    上記ファイバレーザシステムは、レーザ光を生成する複数のファイバレーザと、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光を合波するコンバイナと、上記コンバイナにて合波されたレーザ光を、入力端に接続された上記コンバイナから出射端に接続された出力部まで導く光ファイバと、を備えており、
    当該加工方法は、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光の、他のファイバレーザにて生成されたレーザ光と合波される前の個別光路上の各点において、前進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻と後進ストークス光のパワーが極大値を取る時刻との差が前進ストークス光のパワーの半値半幅と後進ストークス光のパワーの半値半幅との和よりも大きくなるという第1の条件を満たすように、上記出力部から上記対象物までの距離を設定する工程を含んでいる、
    ことを特徴とする加工方法。
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