JP2017133438A - 内燃機関の燃料噴射制御装置及び燃料噴射システム - Google Patents
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Abstract
【課題】高精度に要求空燃比を満足できる内燃機関の燃料噴射制御装置及び燃料噴射システムを提供すること。
【解決手段】1サイクル中の複数回の燃料噴射の各回で燃料噴射弁105に供給される予測燃料圧力を算出し、当該算出した各回の予測燃料圧力に基づいて各回の第1開弁時間を算出する処理と、燃料噴射弁105に供給される実燃料圧力に基づいて各回の第2開弁時間を算出する処理と、負荷指標値が閾値未満の噴射回では第2開弁時間を燃料噴射弁105の開弁時間として設定し、負荷指標値が閾値以上の噴射回では第1開弁時間を燃料噴射弁105の開弁時間として設定する処理とをECU109により実行する。
【選択図】 図13
【解決手段】1サイクル中の複数回の燃料噴射の各回で燃料噴射弁105に供給される予測燃料圧力を算出し、当該算出した各回の予測燃料圧力に基づいて各回の第1開弁時間を算出する処理と、燃料噴射弁105に供給される実燃料圧力に基づいて各回の第2開弁時間を算出する処理と、負荷指標値が閾値未満の噴射回では第2開弁時間を燃料噴射弁105の開弁時間として設定し、負荷指標値が閾値以上の噴射回では第1開弁時間を燃料噴射弁105の開弁時間として設定する処理とをECU109により実行する。
【選択図】 図13
Description
本発明は内燃機関の燃料噴射制御装置及び燃料噴射システムに関する。
燃料噴射弁で燃料を筒内に直接噴射する内燃機関(以下、直噴エンジンと称する)において、噴射燃料の気化促進および混合気の冷却、シリンダやピストンへの燃料付着の低減等の目的で、或る気筒内に1サイクル中に噴射すべき総燃料噴射量(要求総噴射量)を1サイクル中で複数回に分割して燃料噴射する、多段階の燃料噴射を実施する場合がある(以下、多段噴射と称することがある)。
燃料噴射弁による燃料噴射の特徴として、同じ量の燃料を噴射する場合には、燃料噴射弁に供給される燃料圧力(以下、燃圧と略することがある)に応じて、燃料噴射パルス幅(燃料噴射弁の開弁時間)を補正する必要がある。多段噴射により複数回に分けて噴射する時にも、所望の空燃比を精度良く制御する必要がある。
多段噴射制御では、1サイクル中の要求総噴射量を各噴射に振りわける分割比を、内燃機関の運転状態等に基づいて決定することで、空燃比に対する精度を保証しつつ、燃焼要求に対する最適化が可能である。特開2014−101762号公報の制御では、筒内直接噴射式内燃機関の燃料噴射制御として、機関の負荷及び機関の回転速度に応じた燃料噴射回数及び燃料圧力を予めマップとして設定しておき、当該マップを運転状態により検索して実行している。
ところで、上記のような燃料噴射制御では、内燃機関の運転状態が変化する過渡状態において、実際の燃料圧力(実燃圧)と、マップ検索により設定した燃料圧力設定値(予測燃圧)との間に乖離が生じることがある。また、燃料ポンプの燃料圧力保持性能のバラツキや劣化、また燃料性状や燃料温度の影響により、上記の乖離が大きくなるおそれがある。その結果、実際の燃料噴射量が想定値から乖離し、所望の空燃比を精度良く制御することができないという問題がある。
本発明は、上記課題に対して、高精度に要求空燃比を満足することができる内燃機関の燃料噴射制御装置及び燃料噴射システムを提供することにある。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、1サイクル中に複数回の燃料噴射が実行可能な筒内直接噴射式の燃料噴射弁を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記燃料噴射制御装置は、前記複数回の燃料噴射の各回で前記燃料噴射弁に供給される予測燃料圧力を前記内燃機関の運転状態を基に算出し、当該算出した各回の予測燃料圧力に基づいて各回の開弁時間を算出し、前記複数回の燃料噴射のうち各回の噴射開始タイミング以前に取得した前記燃料噴射弁に供給される実燃料圧力に基づいて各回の開弁時間を算出し、前記複数回の燃料噴射のうち前記内燃機関及び/又は前記燃料噴射制御装置の負荷を示す負荷指標値が閾値未満の回では前記実燃料圧力に基づいて算出した開弁時間を前記燃料噴射弁の開弁時間として設定し、前記負荷指標値が前記閾値以上の回では前記予測燃料圧力に基づいて算出した開弁時間を前記燃料噴射弁の開弁時間として設定するものとする。
本発明によれば,1サイクル中に噴射すべき総噴射量を所望の複数回に分けて各噴射量に振り分ける多段噴射において、実燃圧が予測燃圧と乖離する場合であっても、予測燃圧または実燃圧に応じて燃料噴射弁の開弁時間を補正できるため、燃料噴射量のばらつきを抑えられ、所望の空燃比に精度良く制御できる。
以下、本発明に係る内燃機関の燃料噴射システムの実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の燃料噴射システムの基本構成を示している。図1の燃料噴射システムは、内燃機関(エンジン)101と、燃料噴射弁(インジェクタ)105と、燃料噴射弁105による燃料噴射をはじめとする内燃機関の制御全般を司るコンピュータ(電子計算機)であるECU(Engine Control Unit)109を備えている。
図1において、内燃機関101に吸入される空気は、空気流量計(AFM: Air Flow Meter)120を通過し、スロットル弁119、コレクタ115の順に吸入にされ、その後、各気筒に備わる吸気管110、吸気弁103を介して燃焼室121に供給される。
一方、燃料は、燃料タンク123から低圧燃料ポンプ124により、内燃機関101に備わる高圧燃料ポンプ125へ送られる。高圧燃料ポンプ125は、ECU109からの制御指令値に基づき、燃料圧を所望の圧力に制御する。これにより高圧化された燃料は、高圧燃料配管128を介して、燃料噴射弁105へ送られる。燃料噴射弁105は、内燃機関101への燃料噴射を1サイクル中に複数回に分けて実行可能な筒内直接噴射式のものである。燃料噴射弁105は、ECU109に内蔵された燃料噴射制御装置127又はECU109自身からの指令(噴射パルス)を受け、当該指令で指定された時間だけ開弁することで燃料を燃焼室121へ噴射する。1サイクル中に噴射される燃料の総量(総燃料噴射量)は予め決定可能であり、複数回行われる燃料噴射の燃料噴射量のぞれぞれの値(各回の噴射量)も予め決定可能である。
内燃機関101には、高圧燃料ポンプ125を制御するため、高圧燃料配管128内の圧力(当該圧力は燃料噴射弁105に供給される実際の燃料圧力(実燃圧)である)を計測する燃料圧力センサ(圧力検出器)126が備わっている。ECU109は、このセンサ126の値(センサ値)に基づき、高圧燃料配管内128の燃料圧力を所望の圧力に制御する。当該制御には、所謂フィードバック制御が利用されることが一般的である。
内燃機関101には、点火コイル107、点火プラグ106が備わる。ECU109により、所望のタイミングで点火コイル107への通電制御と点火プラグ106による点火制御が行われる仕組みとなっている。
これにより、燃焼室121内で吸入空気と燃料は、点火プラグ106から放たれる火花により燃焼する。燃焼により生じた排気ガスは、排気弁104を介して、排気管111に排出され、排気管111上には、この排気ガスを浄化するための三元触媒112が備えられている。
ECU109には、内燃機関101のクランク軸(図示せず)角度を計測するクランク角度センサ116、吸入空気量を示すAFM120、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ113、運転者が操作するアクセルの開度を示すアクセル開度センサ122、燃料圧力センサ126等の信号が入力される。
各センサから入力された信号について更に述べると、ECU109は、アクセル開度センサ122信号から、内燃機関101の要求トルクを算出するとともに、アイドル状態であるか否かの判定等を行う。また、クランク角度センサ116の信号を基に内燃機関の回転速度(以下、エンジン回転数)を演算する回転数検出部と、水温センサ108から得られる内燃機関101の冷却水温と内燃機関始動後の経過時間等から三元触媒112が暖機された状態であるか否かを判断する暖機状態判定部などが備えられている。
また、ECU109は、上述の要求トルクなどから、内燃機関101に必要な吸入空気量を算出し、それに見合った開度信号をスロットル弁119に出力し、燃料噴射制御装置127は吸入空気量に応じた燃料量を算出して燃料噴射弁105に燃料噴射信号(噴射パルス)を出力し、更に点火コイル107に点火信号を出力する。
図2に制御装置たるECU109の構成の一例を示す。この図において、ECU109は、A/D変換器を含むI/O及びLSI9a、CPU9b、メモリ(図示せず)等から構成される。ECU109には、イグニッションON、スターターONを示すキースイッチ200の信号、図1のクランク角度センサ116の信号、図1のAFM120の空気量信号、排気ガス中の酸素濃度を検出する図1のA/Fセンサ113の信号、図1のアクセル開度センサ122のアクセル開度、図1の燃料圧力センサ126の信号、スロットルセンサ201等の信号が入力される。ECU9は、所定の演算処理を実行し、演算結果として算出された各種の制御信号を出力し、アクチュエータである電子制御スロットル(電制スロットル)18、図1の低圧燃料ポンプ124、図1の高圧ポンプソレノイド125、図1の点火コイル107、図1の燃料噴射弁105に所定の制御信号を供給する。また、ECU109には、クランク角度センサ116の信号からエンジン回転数を演算する回転数検出部と、図1の水温センサ108から得られる内燃機関の水温とエンジン始動後の経過時間等から図1の三元触媒112が暖機された状態であるかを判断する部分が備えられている。なお、吸気ポート噴射式の場合、燃料噴射弁105は吸気管110部分に装着される。
上記のシステムにより、内燃機関の燃焼に必要な燃料噴射弁105の駆動制御及び燃料噴射量(開弁時間)を最適に制御する。
次に上記のECU109(燃料噴射制御装置127)が行う燃料噴射制御処理の一例について図12,13を用いて説明する。ここでは1サイクル中にN回燃料噴射をするものとする。Nは2以上の整数とする。N回全ての燃料噴射量およびその総燃料噴射量は予め決まっているものとする。また、図12,図13の説明に関して主語が省略される場合があるが、その場合の主語はECU109とする。
図12は、N回のうちの初回(1回目)の燃料噴射開始タイミング以前に行われる処理(すなわち1サイクルに1回行われる処理)のフローチャートであり、内燃機関の運転状態を基に推定した予測燃料圧力(予測燃圧)を基にN回分の燃料噴射弁105の開弁時間(以下、「第1開弁時間」と称することがある)を算出している。図13は、N回の燃料噴射開始タイミングの都度に行われる処理(すなわち1サイクルにN回行われる処理)のフローチャートであり、燃料圧力センサ126から取得した実燃料圧力(実燃圧)を基に当該回の開弁時間(以下、「第2開弁時間」と称することがある)を算出し、内燃機関101及び/又はECU109の負荷指標値、1サイクル中の燃料の噴射残量、当該回の第1開弁時間と第2開弁時間、および最小開弁時間等を基に当該回の開弁時間(噴射パルス幅)を決定している。
まず、図12について説明する。図12の処理はECU109により1サイクル中に1度実行され、その開始タイミングは、1サイクル中でN回の噴射が開始される以前、つまり1回目の噴射開始タイミング以前であれば良く、例えば、内燃機関のクランク角度が所定値に達したタイミング、1回目の噴射開始タイミング、燃料噴射制御を実施する基準となる所定のタイミング、及び筒内での点火タイミングのいずれも選択可能である。ここでは1回目の噴射開始タイミングで処理を開始したものとして説明を続ける。
S1201では、ECU109は、図1及び図2に示した各種センサ情報をはじめとする内燃機関101の運転状態に関するデータ(運転状態関連データ)を取得する。そして、その運転状態関連データを基にN回分の予測燃圧をそれぞれ算出し(S1202)、その各回の予測燃圧及び各回の燃料噴射量を基に各回の開弁時間(第1開弁時間)をそれぞれ算出する(S1203)。つまり第1開弁時間はS1203でN個算出される。
なお、S1202の予測燃圧算出の基となり得る運転状態関連データとしては、例えば、1回目の噴射開始タイミングでの燃料圧力センサ126の圧力値、1サイクル中の燃料噴射回数(N回)、各噴射時の燃料圧力降下量・降下時間(噴射時間)、各噴射後の燃料圧力復帰時間がある。
S1204では、S1203で算出したN回分の第1開弁時間がそれぞれ最小開弁時間Tmin以上であるか否かを判定する。「最小開弁時間Tmin」とは、開弁時間(噴射パルス幅)と噴射量の間に比例関係が成立し得る開弁時間の下限値であり、開弁時間を最小開弁時間Tmin以上に維持すれば開弁時間制御(噴射パルス幅制御)に基づく噴射量制御を高精度化できる。なお、開弁時間と噴射量に比例関係が成立する範囲では、最小開弁時間Tmin(後述の最小噴射パルス幅Qmin)は後述の最小噴射量と対を成す。
S1204で、N回分すべての第1開弁時間が最小開弁時間Tmin以上であることが確認できたら、S1203で算出したN個の第1開弁時間を記憶して処理を終了する。一方、N回分の第1開弁時間のなかに最小開弁時間Tminより短いものが存在する場合には、S1205に進む。
S1205では、S1203で算出したN回分の噴射量を合計した総燃料噴射量(総噴射量とも称する)Isumは維持しつつ、S1204で発見した最小開弁時間Tminより短い開弁時間を最小開弁時間Tmin以上の値に補正することで、N回分の開弁時間全てを最小開弁時間Tmin以上の値に設定する。A:総噴射量Isumは維持することと、B:N回分の開弁時間が全てTmin以上であること、という2つの条件A、Bを満たす補正処理であれば、S1205の補正処理に特に限定は無い。例えば、最小開弁時間Tminより短い開弁時間がi回目の噴射に設定されており、その開弁時間をTiとすると、開弁時間Tiによる噴射量Iiと最小開弁時間Tminによる噴射量Iminとの差分(Imin−Ii)を、他の回の噴射量から減算して総噴射量Isumを維持する方法がある。このとき、Imin−Iiを減算しても噴射量がImin以上となる回が他に存在する場合には、単純に当該回の噴射量からImin−Iiを減算した噴射量を基に当該回の開弁時間を決定しても良いし、Imin−Iiを適宜分割した値を他の複数回の噴射量から適宜減算し、その減算後の噴射量を基に当該他の複数回の開弁時間を決定しても良い。また、Imin−Iiを減算すると噴射量がImin以上となる回が存在しない場合には、Imin−Iiを適宜分割して他の複数回の噴射量を減算して開弁時間を決定することとなる。また、最小開弁時間Tminより短い開弁時間が複数存在する場合も考え方は同様で、上記条件A,Bが満たされる補正処理であれば特に限定は無い。
S1205の処理が終了したら、S1205で算出したN個の第1開弁時間を記憶して処理を終了する。
図13について説明する。図13の処理はECU109によりN回の噴射ごとに(つまり1サイクル中にN回)実行され、その開始タイミングはN回ある噴射の各噴射開始タイミング以前であれば適宜選択可能である。ただし、第2開弁時間の算出精度を高く維持する観点からは、1サイクルにN回ある開始タイミングはN回の噴射開始タイミングに一致させることが好ましい。そこで、ここではN回ある噴射のそれぞれの噴射開始タイミングで処理を開始するものとして説明する。また、N回ある噴射のうちk回目(kは、1以上かつN以下の整数)の噴射開始タイミングで図13の処理を開始したものとして説明する。
図13の処理がk回目の噴射開始タイミングで開始されると、ECU109は、k回目の噴射開始タイミングの実燃圧を燃料圧力センサ126から取得し(S1301)、k−1回目以前の噴射により溜まった噴射残量(以下、噴射残と称することもある。なお、k=1のときの噴射残は0とする)を取得する(S1302)。図13のフローでは後述のS1314で噴射が中止される場合があるが、噴射残量は、その中止された噴射の噴射量の累計である。噴射残量が後続の噴射に加算された場合や、N回全ての噴射が完了した際には、噴射残量は0にリセットされる。
S1303では、予め定められているk回目の噴射量にS1302で取得した噴射残を加算し、その噴射残加算後の噴射量をS1301で取得した実燃圧で噴射可能な開弁時間をk回目の噴射の第2開弁時間として算出する。
S1304では、内燃機関101及び/又はECU109の負荷を示す負荷指標値を取得し、その負荷指標値が所定の閾値以上か否かの判定を行う。負荷指標値の基となる情報としては、例えば、スロットルセンサ201の出力から算出可能な内燃機関101の負荷(エンジン負荷)、クランク角度センサ116の出力から算出可能な内燃機関101の回転数(エンジン回転数)、ECU109の演算負荷(CPU9bの使用率)が選択可能である。これらの情報を基に負荷指標値およびその閾値を決定し、S1304の処理で利用する。後述の図11の例では、エンジン負荷とエンジン回転数を負荷指標値とし、その閾値をグラフ上で定義している。S1304時点のエンジン負荷とエンジン回転数で定義される座標が領域Aにあるときは負荷指標値が閾値未満(低負荷)と判定され、領域Bにあるときは負荷指標値が閾値以上(高負荷)と判定される。
S1304で負荷指標値が閾値以上であると判定されたらS1306に進み、図12のS1203又はS1205で算出したk回目の第1開弁時間をk回目の開弁時間に決定する。S1313では、それまでの処理で決定した開弁時間(この場合はk回目の第1開弁時間)を基に燃料噴射弁105を制御してk回目の燃料噴射を行う。燃料噴射が終了したら、k=Nのときはkをゼロにリセットし、k≠Nのときはkに1を加えて、次回の燃料噴射開始タイミングまで待機する。
一方、S1304で負荷指標値が閾値未満であると判定されたらS1308に進み、S1303で算出したk回目の第2開弁時間は最小開弁時間Tmin以上か否かを判定する。
S1308で第2開弁時間が最小開弁時間Tmin以上であると判定された場合にはS1309に進み、S1303で算出した第2開弁時間をk回目の開弁時間に決定する。S1303で算出した第2開弁時間にはk−1回目の噴射終了時の噴射残が考慮されているので、S1312で噴射残をゼロにリセットしてS1313に進む。S1313及びそれ以後の処理は既述の通りであるので説明は省略する。
一方、S1308で第2開弁時間が最小開弁時間Tmin未満であると判定された場合にはS1310に進み、k回目が最終回(すなわちN回目)であるか否かの判定を行う。
S1310でk=Nと判定された場合にはS1311に進み、最小開弁時間Tminをk回目の開弁時間に決定する(すなわち第2噴射時間を最小開弁時間Tminまで引き上げる)。この場合N回全ての噴射が完了することになるので、S1312で噴射残をゼロにリセットしてS1313に進む。
一方、S1310でk≠Nと判定された場合にはS1314に進み、k回目の燃料噴射を中止する。S1315では、S1303で算出したk回目の噴射量(第2開弁時間の基となった噴射量)を噴射残に加算する。噴射残の加算が完了したら、kに1を加えて次回の燃料噴射開始タイミングまで待機する。
なお、上記フローチャートにおいて、S1303で算出された第2開弁時間にS1302の噴射残が考慮されており、さらに当該第2開弁時間が最小開弁時間以上であってS1309で実際の開弁時間に決定されたあかつきには、k−1回目までに溜まっていた噴射残が精算されることになる。図13のフローチャートは、噴射残が必ず精算されることを保証していないが、噴射残がある場合に負荷指標値が閾値未満となった場合には、通常はS1308で第2開弁時間が最小開弁時間以上となるはずなので、かなりの高確率で噴射残は精算され得る。
以上説明したように、上記の実施形態では、内燃機関101への燃料噴射を1サイクル中に複数回(N回)に分けて実行する筒内直接噴射式の燃料噴射弁105と、複数回の燃料噴射における燃料噴射弁105の開弁時間を制御するECU(制御装置)109とを内燃機関の燃料噴射システムに備えた。そして、ECU109によって、(1)複数回の燃料噴射のうち初回の噴射開始タイミング以前に、複数回の燃料噴射の各回で燃料噴射弁105に供給される予測燃料圧力を内燃機関101の運転状態を基に算出し、当該算出した各回の予測燃料圧力に基づいて各回の開弁時間(第1開弁時間)を算出する処理と、(2)複数回の燃料噴射のうち各回の噴射開始タイミング以前に取得した実燃料圧力に基づいて各回の開弁時間(第2開弁時間)を算出する処理と、(3)複数回の燃料噴射のうち負荷指標値(内燃機関101及び/又はECU109の負荷を示す値)が閾値未満の回では第2開弁時間を燃料噴射弁105の開弁時間として設定し、負荷指標値が閾値以上の回では第1開弁時間を燃料噴射弁105の開弁時間として設定する処理と、が実行されるようにシステムを構成した。
このように構成したシステム又はECU(制御装置)109によれば、1サイクル中にN回の燃料噴射(多段噴射)が行われる内燃機関において、負荷指標値が閾値以上の回(すなわち高負荷の燃料噴射時)には予測燃圧に基づく開弁時間(第1開弁時間)が設定されるので噴射量精度をある程度維持できる一方で、負荷指標値が閾値未満の回(すなわち低負荷の燃料噴射時)には実燃圧に基づく開弁時間(第2開弁時間)が設定されるので噴射量精度を向上できる。そのため、N回の噴射をトータルで評価した場合に噴射量精度を向上することができる。これにより多段噴射での燃料噴射量のバラツキが抑えられ、所望の空燃比に高精度で制御可能となる。
また、上記の実施の形態では、上記(1)の処理結果、各回の予測燃料圧力に基づいて算出された各回の第1開弁時間のなかに最小開弁時間より短い開弁時間が存在する場合には、(4)1サイクルでの総燃料噴射量を維持することと、各回の第1開弁時間が全て最小開弁時間以上であることの2つの条件が満たされるように、上記(1)の処理により算出された各回の第1開弁時間を補正する処理がECU109によって実行されるようにシステムを構成した。
このように構成したシステム又はECU(制御装置)109によれば、N回の噴射のうち第1開弁時間が開弁時間として利用される場合に当該開弁時間が最小開弁時間を下回ることが無くなるので噴射量精度を向上でき、空燃比を高精度に制御可能となる。
また、上記の実施形態では、上記(2)の処理で各回の実燃料圧力に基づいて算出された第2開弁時間が設定された或る回(k回目)の噴射において、そのk回目の第2開弁時間が最小開弁時間より短い場合であって、(5)そのk回目が最終回でないとき(k≠N)には、k回目の燃料噴射を中止しつつ、そのk回目の燃料噴射量をk+1回目以後のいずれかの燃料噴射量に加算する処理がECU109によって実行され、一方、(6)そのk回目が最終回のとき(k=N)には、k回目の開弁時間を最小開弁時間に設定する処理(すなわちk回目の開弁時間が最小開弁時間まで引き上げる処理)がECU109によって実行されるようにシステムを構成した。
このように構成したシステム又はECU(制御装置)109によれば、k≠Nで第2開弁時間が開弁時間として利用される場合(すなわち上記(5)が実行される場合)に当該開弁時間が最小開弁時間を下回ることが無くなるので噴射量精度を向上でき、また、k=Nで第2開弁時間が開弁時間として利用される場合(すなわち上記(6)が実行される場合)には総噴射量が当初目標よりも増加するものの噴射回数が維持されるので内燃機関の搭載された機械の運転性能維持が可能となる。なお、上記(5)又は(6)の処理を上記(4)の処理と併用すれば、噴射量精度の向上又は運転性能維持が可能となる。
なお、上記の図13の説明では、S1301、1302、1303の3つの処理をS1304の前に実行したが、S1304でNOと判定された直後に当該3つの処理を実行するようにフローチャートを変更することも可能である。この場合には、S1304で負荷大と判定されるときに開弁時間が第1開弁時間に決定するまでの所要時間を図13のフローよりも短縮できる。
また、S1304に係る負荷判定処理は、図13のフローチャートから分離独立することもできる。例えば、各噴射開始タイミングの前の所定のタイミングで負荷判定処理を実行し、その結果をECU109に記憶しておき、直後の噴射開始タイミング時にS1304で当該結果を参照することも可能である。
また、S1304の負荷判定に代えて、図12のS1202で予測したk回目の予測燃圧と、S1301で取得した実燃圧とを比較し、両者の差分が所定の閾値以上か否かを判定する処理を実行することも可能である。この場合差分が閾値以上の場合にS1308に進み、差分が閾値未満の場合にS1306に進む。このようにしてもN回分の燃料噴射量の精度を向上できる。なお、予測燃圧と実燃圧の比較処理も図13のフローチャートから分離独立することもできる。
また、上記ではECU109単独で図12及び図13に示す処理を実行する場合について説明したが、複数のコンピュータまたは複数のCPUにより図12及び図13に示した処理を分散処理することも可能である。
次に他の実施形態について説明する。本実施形態は、先に説明した図1及び図2の構成を備えており、燃料噴射弁105への燃料噴射パルス幅を制御することで燃料噴射(開弁時間)を制御している。
図3は燃料噴射制御装置127の機能ブロック図の一例である。この図において燃料噴射制御装置127は、燃料噴射タイミング演算部301と、燃圧予測部302と、予測燃圧補正量算出部303と、基本制御値算出部304と、燃料噴射パルス幅演算部305と、実燃圧補正量算出部306と、燃料噴射弁駆動部307を備えている。
燃料噴射タイミング演算部301は、燃料噴射タイミングを演算するブロックである。エンジン回転数や、エンジン水温、噴射行程情報などの条件により、気筒毎に噴射タイミングを算出する。
燃圧予測部302は、予測燃圧を算出するブロックである。気筒毎の燃料噴射タイミング、モニタする燃料圧力を起点として、燃料圧力の推定を行い、予測燃圧(燃料圧力推定値)を算出する。予測燃圧の算出方法については後述する。
予測燃圧補正量算出部303では、燃圧予測部302の予測燃圧を基に、燃料圧力降下に伴う燃料噴射量のばらつきを抑えるよう補正量を算出する。
基本制御値算出部304では、エンジン回転数、負荷、エンジン水温などの条件により噴射パルス幅の基本制御値を算出する。基本制御値は1サイクル中の総燃料噴射量に対応する値であり、これに分割比を乗じたものが各回の噴射パルス幅(燃料噴射量)となる。分割比は各噴射回について決定されており、全ての噴射回の分割比を合計すると1になる。
実燃圧補正量算出部306では、各噴射時に燃圧センサで126実際の燃料圧力を検出し、その実際の燃料圧力に基づいて、燃料補正量を反映し、噴射パルス幅を演算する。多段噴射を実行する際は、多段噴射回数や分割比に応じて各噴射のパルス幅を演算する。
燃料噴射パルス幅演算部305では、基本制御値算出部304の基本制御値に対して、予測燃圧補正量算出部303の燃料補正量または実燃圧補正量算出部306の燃料補正量を反映し、噴射パルス幅を演算する。
燃料噴射弁駆動部307は、燃料噴射タイミングと、燃料噴射パルス幅演算部305の噴射パルス幅に応じて、燃料噴射弁105に対して駆動電流(噴射パルス)を出力して燃料噴射を実行する。
図4に本発明の多段噴射の噴射回数算出の一例を示す。図中には示していないが、各気筒の吸気行程の開始から排気行程の終了までである1燃焼サイクル中に噴射する噴射回数は、内燃機関のエンジン回転数や要求トルク等のエンジンの運転状態に基づいて設定を行う。噴射回数は、内燃機関の性能向上からの要求と燃料噴射弁が精度良く噴射できる最小噴射パルス幅及び燃料噴射制御装置の性能から決定する。
ここで、図5を用いて最小噴射パルス幅について説明する。なお、噴射パルス幅は開弁時間に対応するため、最小噴射パルス幅は先述の実施形態における最小開弁時間に対応する。
図5は、燃料圧力一定とした場合の、噴射パルス幅と噴射量の関係を示す。噴射パルス幅と噴射量は概ね比例関係にあるが、噴射パルス幅が小さい領域では比例関係が成立しない。また、噴射パルス幅が小さくなるほど噴射量バラツキが大きくなるという特性を有する。そこで、ここでは噴射量と噴射パルス幅に比例関係が成立する下限の噴射パルス幅を最小噴射パルス幅Qminとする。
図6は、内燃機関101の燃料圧力が変化したときの所望量の燃料を噴くために必要な噴射パルス幅を示したタイムチャートの1例である。図6の線600は、所望量の燃料を噴くために必要な噴射パルス幅を示し、線601は当該所望量の燃料を噴くために必要な燃料圧力を示している。燃料圧力601が上がると噴射パルス幅600は減少する。このように、燃料噴射弁の特徴として、同じ量の燃料を噴射する場合においても、燃料噴射弁に供給される燃料圧力により、要求噴射パルス幅を補正する必要がある。図6の時間T602において、噴射パルス幅を604の値、噴射を開始するタイミングとして時間T603を設定した場合、時間T603で噴射パルス幅を出力するときには、実際に必要な噴射パルス幅605の値と大きな差異が出てしまい、要求空燃比を満たすことができなく、多段噴射の各噴射量を正確に制御する為にも、同様に燃料圧力の変動を考慮した制御を実施する必要がある。
図7は、多段噴射時の燃料噴射弁105への要求動作の一例を示すチャートである。チャートは上から順に、燃料圧力、噴射パルス幅を表しており、180deg所定期間(707〜708)の間に同一気筒で多段噴射(3回)を行う場合を例として説明する。燃料圧力は、システムに電源が投入されると、基準燃料圧力701まで昇圧され、基準燃料圧力701で一定となるよう保持される。
また、燃料圧力の実線702で示す通り、噴射1回目703、噴射2回目704、噴射3回目705のタイミングで噴射1回あたり所定量、燃料圧力が降下し、その後は基準燃圧701に向けて昇圧される。噴射2回目704のタイミングのように、燃料圧力が基準燃料圧力701まで復帰していれば、安定した燃料噴射量を噴射できる。しかし、噴射3回目705のタイミングのように、燃料圧力が基準燃料圧力701まで復帰完了する前に次の噴射を行うと、燃料圧力低下によって噴射量ばらつきが大きくなってしまう。特に低噴射パルス域ではこの影響が大きく、燃料圧力低下による噴射量のばらつきを抑える補正制御が必要である。また、多段噴射時に2つの噴射タイミングが近接するような噴射を実行する場合、燃料圧力のチャージ時間を確保するために噴射タイミングを遅らせると、エンジン出力、排気ガスの浄化、燃費向上を高い次元で両立させることを目的とした要求噴射タイミングを設定しているのに、所望のタイミングで燃料噴射を実行できないことになる。
そのため、本実施形態では、噴射3回目705のタイミングのように燃料圧力が基準燃料圧力701まで復帰完了する前に次の噴射を行う場合に対応するため、1サイクル中の所定期間707〜708中に燃料噴射を複数回する場合に、最初の燃料噴射弁の駆動前(図4の707のBTDC10deg)のタイミングで、複数回分全ての燃料圧力の降下および噴射時点での燃料圧力を推定した。推定した燃料圧力に基づき、斜線部706に示すように噴射パルス幅の延長を行う。燃料圧力の推定方法詳細については後述するが、本実施形態は、燃料圧力の復帰が間に合わないような短期間の噴射が求められた場合に、所望の噴射タイミングの要求を満たすことができ、燃料圧力が復帰中に噴射することによる燃料噴射量ばらつきを抑えることができる。
図8は、燃料圧力と燃料圧復帰時間の関係を示したチャートである。
ΔPは燃料1回噴射あたりの燃料圧力降下量であり、使用燃圧などに応じて予め設定しておく。燃料噴射弁を2本同時に噴射した場合、燃料圧力降下量ΔPも2倍となる。
図8では、燃料噴射弁1回噴射あたりの燃料圧力降下量ΔP(801)と降下時間ΔT(802)を示した。また、燃料圧力の上昇(復帰)量と燃料圧力復帰時間dtc(803)を示した。
<予測燃圧(燃料圧力推定値)の算出>
次に予測燃圧(燃料圧力推定値)の算出方法の一例について詳細を説明する。本実施形態では、燃圧センサ126から入力される実燃圧を所定期間の前(図7では707のタイミング)に、A/D変換(アナログ信号からデジタル信号変換)して気筒毎に取り込む。実燃圧のモニタ値は、下記で「燃圧TDC AD値」と称されることがある。
次に予測燃圧(燃料圧力推定値)の算出方法の一例について詳細を説明する。本実施形態では、燃圧センサ126から入力される実燃圧を所定期間の前(図7では707のタイミング)に、A/D変換(アナログ信号からデジタル信号変換)して気筒毎に取り込む。実燃圧のモニタ値は、下記で「燃圧TDC AD値」と称されることがある。
本実施形態では、1サイクル中の多段噴射の前に、所定期間(図7では707〜708)の全ての燃料噴射回数と、供給燃圧量と、消費燃圧量から、噴射時点の燃料圧力(燃料圧力推定値)を推定する。予測燃圧である燃料圧力推定値は下式により算出可能である。
燃料圧力推定値=燃圧TDC AD値−燃料圧力降下量×噴射回数+燃料圧力降下量×噴射回数×(燃料圧力復帰時間−ΔT(802))/((復帰基準時間−ΔT(802))×噴射回数)
但し、燃料圧力推定値の最大値は基準燃料圧力を上限とする。本実施例における基準燃圧は、車両用電源(バッテリ)の初回電源投入後かつ燃料噴射前にモニタした燃料圧力とし、燃料噴射制御装置127に記憶しておくこととする。
但し、燃料圧力推定値の最大値は基準燃料圧力を上限とする。本実施例における基準燃圧は、車両用電源(バッテリ)の初回電源投入後かつ燃料噴射前にモニタした燃料圧力とし、燃料噴射制御装置127に記憶しておくこととする。
上記燃料圧力推定値の算出式において、燃料圧力復帰時間は下式により算出可能である。下記燃料圧力復帰時間の算出式は、多段噴射回数を最大5回とした場合を想定しているが、多段噴射の最大回数に応じて算出式は変更可能である。
燃料圧力復帰時間=(噴射2回目の噴射タイミング−噴射1回目の噴射タイミング)+(噴射3回目の噴射タイミング−噴射2回目の噴射タイミング)+(噴射4回目の噴射タイミング−噴射3回目の噴射タイミング)+(噴射5回目の噴射タイミング−噴射4回目の噴射タイミング)
ここまで説明した手段により、予測燃圧である燃料圧力推定値を求めることができる。
ここまで説明した手段により、予測燃圧である燃料圧力推定値を求めることができる。
<予定噴射パルス幅の算出>
次に、燃料圧力推定値に基づく噴射パルス幅(予定噴射パルス幅)の算出について説明する。ここでは予定噴射パルス幅の算出に際して、燃料圧力推定値を基に燃料圧力推定補正値という値を算出している。燃料圧力推定値が想定より低い場合には燃料圧力推定補正値によりパルス幅が長くなる方向に補正が働き(すなわち燃料圧力推定補正値は相対的に大きい値となる)、高い場合にはパルス幅が短くなる方向に補正が働く(すなわち燃料圧力推定補正値は相対的に小さい値となる)。燃料圧力推定補正値は、前記所定期間の前のタイミングで所定期間内の全ての燃料噴射回数に対して個別に算出する。予定噴射パルス幅は下式により算出可能である。下記式の「無効パルス幅」は指令と実際の弁動作のズレを予定噴射パルス幅に含めるための補正値であり、正と負の双方になり得る。
次に、燃料圧力推定値に基づく噴射パルス幅(予定噴射パルス幅)の算出について説明する。ここでは予定噴射パルス幅の算出に際して、燃料圧力推定値を基に燃料圧力推定補正値という値を算出している。燃料圧力推定値が想定より低い場合には燃料圧力推定補正値によりパルス幅が長くなる方向に補正が働き(すなわち燃料圧力推定補正値は相対的に大きい値となる)、高い場合にはパルス幅が短くなる方向に補正が働く(すなわち燃料圧力推定補正値は相対的に小さい値となる)。燃料圧力推定補正値は、前記所定期間の前のタイミングで所定期間内の全ての燃料噴射回数に対して個別に算出する。予定噴射パルス幅は下式により算出可能である。下記式の「無効パルス幅」は指令と実際の弁動作のズレを予定噴射パルス幅に含めるための補正値であり、正と負の双方になり得る。
予定噴射パルス幅=基本制御値(304)×分割比×燃料圧力推定補正値+無効パルス幅
燃料圧力推定補正値は、1行程(180deg)内の燃料圧力推定補正量(多段噴射の最大噴射回数分)を噴射気筒(各気筒の噴射タイミング)と噴射回数の情報をもとに分配した補正量となる。燃料圧力が復帰中に噴射することによる燃料圧力の降下量が大きくなるのに伴い、燃料噴射量の低下量も大きくなることから、燃料噴射量の低下を抑えるように設定する。
燃料圧力推定補正値は、1行程(180deg)内の燃料圧力推定補正量(多段噴射の最大噴射回数分)を噴射気筒(各気筒の噴射タイミング)と噴射回数の情報をもとに分配した補正量となる。燃料圧力が復帰中に噴射することによる燃料圧力の降下量が大きくなるのに伴い、燃料噴射量の低下量も大きくなることから、燃料噴射量の低下を抑えるように設定する。
但し、分割比の制限を行うと、多段噴射分割比の総和が1を超えて、要求する空燃比が確保できない。従って、分割比が制限された場合は、分割比の総和が1となるような調整が必要となる。複数回の噴射においてQmin以下の噴射が発生した場合、Qminより大きい噴射からQmin以下の噴射へ噴射量が移動するように分割比を調整する。この時、分割比の総和=1を保つようにする。
算出された噴射パルス幅がQmin(最小燃料噴射量)より小さい場合には、最小燃料噴射量に引き上げられ、総噴射量を守るため、前記引き上げられた燃料噴射量は1行程(180deg)内のその他の噴射の噴射量から減算する。
これにより燃料噴射量がQmin以下とならないように分割比の最小値を制限することと、要求空燃比を満足させるため分割比の総和が1となることが実現される。
図10は、燃料噴射制御装置127が実行する予定噴射パルス幅に基づく燃料噴射ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、所定のクランク角度(例えばBTDC10deg)毎の割込みで演算する。
ステップS1001では、前述した基準燃圧、昇圧燃圧TDC AD値等の入力パラメータを取り込む。ステップS1002では、1行程(180deg)内全ての燃料噴射回数に対する噴射タイミングを取り込む。次にステップS1003で昇圧燃圧の初回降下時補正量算出要否を判断する。「昇圧燃圧TDC AD値≒基準燃圧」の条件が成立すれば、ステップS1006へ進む。ステップS1003の条件不成立時は、ステップS1004に進み、「昇圧燃圧TDC AD値 < 基準燃圧」の条件成立時は、ステップS1005で昇圧燃圧値の初回降下時補正量を算出し、ステップS1004の条件不成立時(昇圧燃圧TDC AD値>基準燃圧)は、ステップS1007へ進む。ステップS1006では、昇圧燃圧TDC AD値、噴射タイミング、初回降下時補正量により昇圧燃圧推定値を算出する。昇圧燃圧推定値の算出にあたっては、燃料ポンプ125の周辺温度より昇圧燃圧の復帰基準時間を設定する。次に、ステップS1007では、昇圧燃圧推定値または、昇圧燃圧TDC AD値により、燃料圧力推定補正値を算出する。ステップS1008では燃料圧力推定補正値を反映して基本制御値を基に予定噴射パルス幅を算出する。次にステップS1009では算出した予定噴射パルス幅と燃料噴射タイミングを噴射ドライバにセットし、噴射ドライバは駆動電流を出力して燃料噴射弁105を制御する構成となっている。
<実際噴射パルス幅の算出>
運転状態(内燃機関及び/又はECU109の負荷)が変化する過渡状態において、実際の燃料圧力(実燃圧)と予測燃圧とに乖離が生じることがある。また、燃料ポンプの燃圧保持性能のバラツキや劣化、また燃料性状や燃料温度の影響により、上記の乖離が大きくなるおそれがある。多段噴射時の燃料噴射量のばらつきを正しく補正するには、燃料圧力の降下量をリアルタイムに把握する必要がある。そのため、ここでは、燃圧センサ126による実燃圧を、各噴射開始タイミング(図7の703、704、705)に、A/D変換して気筒毎に取り込む。実燃圧のモニタ値は、下記で「燃圧REF AD値」と称されることがある。
運転状態(内燃機関及び/又はECU109の負荷)が変化する過渡状態において、実際の燃料圧力(実燃圧)と予測燃圧とに乖離が生じることがある。また、燃料ポンプの燃圧保持性能のバラツキや劣化、また燃料性状や燃料温度の影響により、上記の乖離が大きくなるおそれがある。多段噴射時の燃料噴射量のばらつきを正しく補正するには、燃料圧力の降下量をリアルタイムに把握する必要がある。そのため、ここでは、燃圧センサ126による実燃圧を、各噴射開始タイミング(図7の703、704、705)に、A/D変換して気筒毎に取り込む。実燃圧のモニタ値は、下記で「燃圧REF AD値」と称されることがある。
次に、実燃圧に基づく噴射パルス幅(実際噴射パルス幅)の算出について説明する。ここでは実際噴射パルス幅の算出に際して、実燃圧を基に実燃料圧力補正値という値を算出している。実燃圧が想定より低い場合には実燃料圧力補正値によりパルス幅が長くなる方向に補正が働き(すなわち実燃料圧力補正値は相対的に大きい値となる)、高い場合にはパルス幅が短くなる方向に補正が働く(すなわち実燃料圧力補正値は相対的に小さい値となる)。実燃料圧力補正値は各噴射開始タイミングで噴射個別に算出する。実際噴射パルス幅は下式により算出可能である。下記式の「噴射残補正値」は、前回以前の噴射が中止されて蓄積した噴射残量を今回の噴射量に含めるための補正値であり、噴射残量を噴射するために必要な噴射パルス幅に相当する。
実際噴射パルス幅=基本制御値(304)×分割比×実燃料圧力補正値+噴射残補正値+無効パルス幅
上記を基に算出した実際噴射パルス幅がQmin以下となった噴射回では、該当噴射回の燃料噴射を中止する。総噴射量を守るため、中止した噴射量は1行程(180deg)内の該当噴射回より後の燃料噴射の燃料噴射量に加算する。一方、1行程(180deg)内の該当噴射回より後の燃料噴射がない場合には、該当噴射回の噴射パルス幅をQminに引き上げる。
上記を基に算出した実際噴射パルス幅がQmin以下となった噴射回では、該当噴射回の燃料噴射を中止する。総噴射量を守るため、中止した噴射量は1行程(180deg)内の該当噴射回より後の燃料噴射の燃料噴射量に加算する。一方、1行程(180deg)内の該当噴射回より後の燃料噴射がない場合には、該当噴射回の噴射パルス幅をQminに引き上げる。
図9は、燃料噴射制御装置127が実行する実際噴射パルス幅に基づく燃料噴射ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、各燃料噴射開始割り込みタイミングで実行される。
ステップS901では、前述した燃圧REF ADにより実燃料圧力補正値を演算する。ステップS902では、噴射残を基に噴射残補正値を演算する。噴射残がない場合、噴射残補正値は0とする。次に、ステップS903では、実際噴射パルス幅を上記式(実際噴射パルス幅=基本制御値(304)×分割比×実燃料圧力補正+噴射残補正+無効パルス幅)に基づき算出とする。次に、ステップS904に進み、この時点での最小噴射パルス幅Qminを算出する。
実際噴射パルス幅がQmin以下かつ該当燃料噴射が1行程(180deg)内の最後の噴射の場合、ステップS905に進み、該当噴射のパルス幅をQminに引き上げる。そして、ステップS906では、噴射残をクリアし、該当噴射を行う。一方、実際噴射パルス幅がQmin以下かつ該当燃料噴射は1行程(180deg)内の最後の噴射ではない場合、ステップS907に進み、該当噴射を中止し、該当噴射の噴射量を噴射残に加算する。
実際噴射パルス幅がQmin以上の場合、ステップS906に進み、噴射残をクリアし、該当噴射を行う。
<予定噴射パルス幅と実際噴射パルス幅の切り替え>
ところで、実際噴射パルス幅の算出は、各噴射開始タイミング時にリアルタイムに実燃圧をモニタすることを要求するため、ECU(マイコン)109の演算負荷が増大する。そのため、実際噴射パルス幅の算出は負荷が小さい場合に行うことが好ましい。つまり、内燃機関101の負荷または内燃機関101の回転速度またはECU109の演算負荷が相対的に小さい場合に、予定噴射パルス幅に代えて実際噴射パルス幅を実際の噴射パルス幅として設定し、負荷が相対的に大きい場合には予定噴射パルス幅を設定することが好ましい。そこで本実施形態では図11のマップに基づいて負荷の大小を判定し、負荷大のときに予定噴射パルス幅を利用し、負荷小のときに実際噴射パルス幅を利用している。
ところで、実際噴射パルス幅の算出は、各噴射開始タイミング時にリアルタイムに実燃圧をモニタすることを要求するため、ECU(マイコン)109の演算負荷が増大する。そのため、実際噴射パルス幅の算出は負荷が小さい場合に行うことが好ましい。つまり、内燃機関101の負荷または内燃機関101の回転速度またはECU109の演算負荷が相対的に小さい場合に、予定噴射パルス幅に代えて実際噴射パルス幅を実際の噴射パルス幅として設定し、負荷が相対的に大きい場合には予定噴射パルス幅を設定することが好ましい。そこで本実施形態では図11のマップに基づいて負荷の大小を判定し、負荷大のときに予定噴射パルス幅を利用し、負荷小のときに実際噴射パルス幅を利用している。
図11は縦軸がエンジン負荷、横軸がエンジン回転速度である。なお、高負荷とは、機関負荷上限値の概ね半分以上の領域とし、高回転とは、回転速度上限値の概ね半分以上の領域とした。高負荷の領域Bは前記図10示したように、予測した燃料圧力に基づいて1サイクル中の燃料噴射量を設定する領域である。低負荷の領域Aは前記図9示したように、実際燃料圧力に基づいて、燃料噴射量を設定する領域である。エンジンの負荷またはエンジンの回転速度を基に、図11に示すように領域Aと領域Bで制御を切り替える構成となっている。
<付記>
なお、上記では燃料噴射制御装置127はECU109に内蔵されていると説明したが、ECU109自体に燃料噴射弁105の制御機能を搭載して良いし、ECU109とは別体で燃料噴射制御装置127を設けても良い。
なお、上記では燃料噴射制御装置127はECU109に内蔵されていると説明したが、ECU109自体に燃料噴射弁105の制御機能を搭載して良いし、ECU109とは別体で燃料噴射制御装置127を設けても良い。
また、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
また、上記のECU(コンピュータ)109に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記のECU109に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該ECUの構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
また、上記の各実施の形態の説明では、制御線や情報線は、各実施の形態の説明に必要と解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
101…内燃機関(エンジン)、105…燃料噴射弁、109…ECU、116…クランク角度センサ、126…燃料圧力センサ、127…燃料噴射制御装置
Claims (5)
- 1サイクル中に複数回の燃料噴射が実行可能な筒内直接噴射式の燃料噴射弁を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記燃料噴射制御装置は、
前記複数回の燃料噴射の各回で前記燃料噴射弁に供給される予測燃料圧力を前記内燃機関の運転状態を基に算出し、当該算出した各回の予測燃料圧力に基づいて各回の開弁時間を算出し、
前記複数回の燃料噴射のうち各回の噴射開始タイミング以前に取得した前記燃料噴射弁に供給される実燃料圧力に基づいて各回の開弁時間を算出し、
前記複数回の燃料噴射のうち前記内燃機関及び/又は前記燃料噴射制御装置の負荷を示す負荷指標値が閾値未満の回では前記実燃料圧力に基づいて算出した開弁時間を前記燃料噴射弁の開弁時間として設定し、前記負荷指標値が前記閾値以上の回では前記予測燃料圧力に基づいて算出した開弁時間を前記燃料噴射弁の開弁時間として設定する
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射制御装置が前記各回の予測燃料圧力を算出するタイミングは、前記内燃機関のクランク角度が所定値に達したタイミング、前記複数回の燃料噴射のうち初回の噴射開始タイミング、燃料噴射制御を実施する基準となる所定のタイミング、及び前記筒内での点火タイミングの何れかであり、
前記燃料噴射制御装置が前記実燃料圧力を取得するタイミングは、前記複数回の燃料噴射のそれぞれの噴射開始タイミングである
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射制御装置は、
前記各回の予測燃料圧力に基づいて算出された前記各回の開弁時間のなかに最小開弁時間より短い開弁時間が存在する場合には、
前記1サイクルでの総燃料噴射量を維持することと、前記各回の予測燃料圧力に基づいて算出された前記各回の開弁時間が全て最小開弁時間以上であることの2つの条件が満たされるように、前記各回の予測燃料圧力に基づいて算出された前記各回の開弁時間を補正する
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射制御装置は、
前記複数回の燃料噴射のうち前記各回の実燃料圧力に基づいて算出された開弁時間が設定された或る回において、その設定開弁時間が最小開弁時間より短い場合、
前記或る回が最終回でないときには、当該或る回の燃料噴射を中止しつつ、当該或る回の燃料噴射量を当該或る回の後のいずれかの回の燃料噴射量に加算し、
前記或る回が最終回のときには、当該或る回の開弁時間を前記最小開弁時間に設定する
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 内燃機関への燃料噴射を1サイクル中に複数回に分けて実行する筒内直接噴射式の燃料噴射弁と、
前記複数回の燃料噴射における前記燃料噴射弁の開弁時間を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数回の燃料噴射の各回で前記燃料噴射弁に供給される予測燃料圧力を前記内燃機関の運転状態を基に算出し、当該算出した各回の予測燃料圧力に基づいて各回の開弁時間を算出し、
前記複数回の燃料噴射のうち各回の噴射開始タイミング以前に取得した前記燃料噴射弁に供給される実燃料圧力に基づいて各回の開弁時間を算出し、
前記複数回の燃料噴射のうち前記内燃機関及び/又は前記制御装置の負荷を示す負荷指標値が閾値未満の回では前記実燃料圧力に基づいて算出した開弁時間を前記燃料噴射弁の開弁時間として設定し、前記負荷指標値が前記閾値以上の回では前記予測燃料圧力に基づいて算出した開弁時間を前記燃料噴射弁の開弁時間として設定する
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射システム。
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JP2019152144A (ja) * | 2018-03-02 | 2019-09-12 | 株式会社デンソー | 噴射制御装置 |
WO2021187234A1 (ja) * | 2020-03-16 | 2021-09-23 | 日立Astemo株式会社 | 内燃機関の燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御方法 |
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