JP2017132878A - プリプレグの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた機械特性と厚さ方向の導電性を兼ね備える繊維強化複合材料を与えるプリプレグの製造方法。
【解決手段】マトリクス樹脂に不溶な粒子を含むマトリクス樹脂組成物を導電性繊維基材2に一体化させるプリプレグの製造方法であって、樹脂フィルムの一部に導電材6を局在配置した導電材局在樹脂フィルムであり、導電材6が、樹脂フィルムの厚み方向に前記マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径以上の高さで配置された導電材局在樹脂フィルムを導電性繊維基材に積層し一体化させるプリプレグの製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、機械特性及び導電性に優れる繊維強化複合材料を与えるプリプレグの製造方法に関する。
強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料は、軽量、高強度、高弾性率等の特長を有し、航空機、スポーツ・レジャー、一般産業に広く応用されている。この繊維強化複合材料は、予め強化繊維とマトリクス樹脂とが一体化されているプリプレグを経由して製造されることが多い。
強化繊維にマトリクス樹脂が含浸されて成るプリプレグを積層成形して製造される繊維強化複合材料は、一般的に、積層された各繊維層の層間に、マトリクス樹脂からなる樹脂層を備えている。通常、繊維強化複合材料に使用されるマトリクス樹脂は導電性が低いため、たとえ強化繊維に導電性のある繊維を用いたとしても、繊維層間の樹脂層により繊維強化複合材料の厚み方向の導電性が大きく損なわれるという問題がある。
層間の導電性を向上させる方法として、プリプレグを構成する樹脂組成物に金属粒子を配合する方法(特許文献1参照)や、カーボン粒子を配合する方法(特許文献2参照)が提案されている。これらの方法においては、導電性を向上させるために、大量の導電材粒子が添加される。しかし、これらの導電材粒子は樹脂との接着性が低いため、得られる繊維強化複合材料において、破壊の起点となりやすく、複合材料の機械特性が低下する。また、これらの導電材粒子は、プリプレグ製造の際に、強化繊維に含浸させる樹脂組成物を大きく増粘させる。そのため、プリプレグの製造性や複合材料の成型性が大きく損なわれ、この様なプリプレグを用いて製造する複合材料は、ボイド等の種々の欠陥を内在しているので、耐衝撃性などの機械特性が著しく低下する問題がある。
耐衝撃性と導電性を両立させる方法として、例えば特許文献3には、繊維強化複合材料の樹脂層に、樹脂層の厚みと同等の径の導電性粒子を部分的に配合させる方法が提案されている。ところが、この方法においては導電性粒子の配合量が少ないため、導電性向上に制限がある。更に、導電性粒子が不均一に分散されるため、導電性の指標である体積抵抗率にばらつきが生じるという問題がある。
特開平6−344519号公報 特開平8−34864号公報 特開2008−231395号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、優れた機械特性と導電性とを兼ね備える繊維強化複合材料を与えるプリプレグの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決する本発明のプリプレグの製造方法は、マトリクス樹脂に不溶な粒子を含むマトリクス樹脂組成物を導電性繊維基材に一体化させるプリプレグの製造方法であって、樹脂フィルムの一部に導電材を局在配置した導電材局在樹脂フィルムであり、前記導電材が、樹脂フィルムの厚み方向に前記マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径以上の高さで配置された導電材局在樹脂フィルムを導電性繊維基材に積層し一体化させるプリプレグの製造方法である。本発明において、導電材局在樹脂フィルムが、マトリクス樹脂からなるフィルムの表面に導電材を配置した導電材局在樹脂フィルムであることが好ましく、支持体に導電材を配置した後、マトリクス樹脂からなるフィルムに導電材を転写した導電材局在樹脂フィルムであることも好ましい。
また、前記導電材を、分散材に導電材が分散した導電材ペーストとして配置することが好ましい。
本発明のプリプレグの製造方法によれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた繊維強化複合材料を与えるプリプレグを得ることができる。
本発明で得られるプリプレグの1形態を示す概念図である。 本発明で得られるプリプレグの導電領域の1形態をより詳細に示す概念図である。
本発明のプリプレグの製造方法は、マトリクス樹脂に不溶な粒子を含むマトリクス樹脂組成物を導電性繊維基材に一体化させるプリプレグの製造方法であって、樹脂フィルムの一部に導電材を局在配置した導電材局在樹脂フィルムであり、前記導電材が、樹脂フィルムの厚み方向に前記マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径以上の高さで配置された導電材局在樹脂フィルムを導電性繊維基材に積層し一体化させるプリプレグの製造方法である。
このような本発明のプリプレグの製造方法を用いて得られるプリプレグは、導電材局在樹脂フィルムに局在配置された導電材が、プリプレグの一部(局在箇所)に、樹脂中に多数の導電材が高密度に分散した導電領域を形成する。このようなプリプレグを成形して得られる繊維強化複合材料は、導電材が分散した導電領域が、導電パスを形成するため、厚み方向に優れた導電性を示す。本発明において、導電領域には多数の導電材が高密度に局在化し、互いに近接しているため、通電効率が高く、プリプレグ全体にしめる導電材の添加量がわずかでも高い導電性を示す。
さらに、本発明のプリプレグの製造方法では、導電材局在樹脂フィルムとして、樹脂フィルムの厚み方向に、マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径以上の高さで導電材が配置された導電材局在樹脂フィルムを用いる。マトリクス樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂に不溶な粒子は繊維強化複合材料を成形した際に、繊維層間に形成される樹脂層の厚みを律する。導電材が、樹脂フィルム中で、マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径より高く配置されていると、プリプレグの製造中、または、繊維強化複合材料を成形する際に負荷される圧力により導電材の分散した導電領域が変形し、導電性繊維層と導電領域の接触面積が大きくなるため、より高い通電効果を得ることができる。
導電材を配置する高さは、マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径の1.2倍以上であることが好ましく、1.5〜10倍であることがより好ましい。
以下、本発明の実施形態に付き、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明のプリプレグの製造方法により得られるプリプレグの好ましい1形態を示す概念図である。図1中、[1]はプリプレグで、導電性繊維にマトリクス樹脂が含浸した導電性繊維層[2]と、導電性繊維層の表面に配置されたマトリクス樹脂からなる樹脂層[3]とから構成され、樹脂層にはマトリクス樹脂に不要な粒子[5]が存在している。図1においては、導電性繊維は、複数の単繊維が一方向に引き揃えられたシート状に形成されている。
図1中の[4]は、導電材局在樹脂フィルムに配置された導電材によって形成される導電領域[4]を示している。かかる導電領域[4]は、図2に示されるように樹脂に導電材[6]が分散してなる領域である。本発明により得られるプリプレグは、導電領域に導電材が高密度に局在化しているため、通電効率が高く、プリプレグ全体にしめる導電材の添加量がわずかでも高い導電性を示す。
本発明では、導電材局在樹脂フィルムとして、樹脂フィルムの厚み方向に前記マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径以上の高さで導電材が配置された導電材局在樹脂フィルムを用いているため、導電材が分散した導電領域が、少なくとも樹脂層に厚み方向に連続して存在するプリプレグを得ることができる。導電領域が厚み方向に連続して存在すると、導電領域がプリプレグ表面と導電性繊維層間、または対面のプリプレグ表面との間の導電パスをより効果的に形成するため、厚み方向に特に優れた導電性を示す。導電領域は、導電性繊維層に存在していてもよい。
本発明のプリプレグの製造方法において、マトリクス樹脂組成物と導電性繊維基材を一体化させる方法は、特に制限が無く、従来公知のいかなる方法も採用できる。具体的には、ホットメルト法や、溶剤法が好適に採用でき、中でもホットメルト法を用いることが好ましい。
ホットメルト法は、離型紙の上に、上記マトリクス樹脂組成物を薄いフィルム状に塗布して樹脂組成物フィルムを形成し、次いで形成したフィルムを離型紙から剥離して樹脂組成物フィルムを得、その後導電性繊維基材に樹脂組成物フィルムを積層して加圧下に加熱することにより樹脂組成物を導電性繊維基材に含浸させる方法である。
樹脂組成物を樹脂組成物フィルムにする方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いることもできる。具体的には、ダイ押し出し、アプリケーター、リバースロールコーター、コンマコーターなどを利用し、離型紙、フィルムなどの支持体上に樹脂組成物を流延、キャストをすることにより得ることが出来る。フィルムを製造する際の樹脂温度としては、フィルムを製造する樹脂の組成、粘度に応じて適宜決定する。フィルムを製造する際の樹脂温度としては、10〜160℃の範囲が例示できる。160℃を超える場合は、樹脂組成物の熱劣化や、部分的な硬化反応が開始し、プリプレグの保存安定性が低下する場合がある。10℃より低い場合は、樹脂組成物の粘度が高く、フィルムの製造が困難となる場合がある。好ましくは20〜130℃であり、更に好ましくは30〜110℃の範囲である。
樹脂組成物フィルムを用いて導電性繊維基材へマトリクス樹脂組成物を含浸させる際の含浸圧力は、その樹脂組成物の粘度・樹脂フローなどを勘案し、適宜決定する。含浸は1回ではなく、複数回に分けて任意の圧力と温度にて、多段的に行うこともできる。
マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用い、エポキシ樹脂組成物フィルムをホットメルト法で導電性繊維基材に含浸させる場合の含浸温度は、50〜150℃の範囲が好ましい。含浸温度は60〜145℃がより好ましく、70〜140℃が特に好ましい。
本発明のプリプレグの製造方法では、樹脂に導電材が分散してなる導電領域を形成方法するため、樹脂フィルムの一部に導電材を局在配置した導電材局在樹脂フィルムを、導電性繊維基材と一体化させる。
導電材局在樹脂フィルムは、マトリクス樹脂と導電性繊維基材をホットメルト法で一体化させる場合に用いるマトリクス樹脂組成物フィルムとして導電性繊維基材に積層し一体化させることができる。また、導電材局在樹脂フィルムを、マトリクス樹脂組成物が含浸された導電性繊維基材にさらに積層し一体化しても良い。
導電材局在樹脂フィルムを構成する樹脂フィルムは、マトリクス樹脂からなる樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムに導電材を局在配置する箇所としては、特に制限はないが、樹脂フィルムの表面に導電材を配置した導電材局在樹脂フィルムであることが好ましい。
樹脂フィルムに導電材を局在配置する方法としては、離型紙などの支持体上に導電材を直接、または導電材を樹脂などの分散材に分散した導電材ペーストとして配置した後、樹脂を流延し樹脂フィルムを形成する方法、支持体上に樹脂を流延し、樹脂フィルムを作製した後、かかるフィルム上に導電材を直接、または導電材を分散材に分散した導電材ペーストとして配置する方法、導電材または導電材ペーストを表面に配置したフィルムを樹脂フィルムに貼り合わせる方法、支持体の上に配置した導電材ペーストを樹脂フィルムに転写する方法などがあげられる。なかでも、支持体に導電材を配置した後、樹脂フィルムに導電材を転写した導電材局在樹脂フィルムが、局在させる導電材の形状を制御しやすいため好ましい。また、取り扱い性の点から、導電材を分散材に導電材が分散した導電材ペーストとして配置することが好ましい。
樹脂フィルム上または、支持体やフィルム上に導電材または導電材ペーストを配置する場合、これらのフィルム上に、スクリーン印刷やインクジェット印刷、ディスペンサーによる塗布などの方法で配置しても良いし、これらのフィルムを穿孔し、導電材または導電材ペーストを充填しても良い。
導電材又は導電材ペーストを樹脂フィルムや支持体上に配置する場合、その形状は、その高さがマトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径より高ければ、所望する導電領域の形状、大きさに応じて適宜決定すればよい。導電材又は導電材ペーストの配置パターンとしては、例えば線状や格子状などの連続配置や、点状、島状などの不連続配置が挙げられ、不連続に配置される場合には、個々の点や島が、格子状や千鳥状、円状などの規則を持って配置されていても良く、ランダムに配置されていても良い。
導電材又は導電材ペーストが連続的に配置されている場合、その幅は底面において1μm〜5mmであることが好ましく、10μm〜1mmであることがより好ましい。不連続に配置されている場合、その底面の形状に特に制限はなく円形、楕円形、方形、多角形、星形、不定形等任意の形状とすることができる。また、その大きさは、底面において外接円の直径が0.1μm〜5mmであることが好ましく、1μm〜1mmがよりに好ましく、10〜500μmがさらに好ましい。また、底面の面積は、0.01〜500,000μmであることが好ましく、0.1〜100,000μmであることがより好ましく、1〜10,000μmであることがより好ましい。
配置される導電材又は導電材ペーストの高さは、マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径より高ければ、プリプレグまたは樹脂層の厚みに応じて適宜調整すればよいが、樹脂層の厚みの80%以上の厚みであることが好ましく、導電領域が導電性繊維層を貫通するように配置する場合、プリプレグの厚みの90%以上の厚みであることが好ましい。また、配置された導電材又は導電材ペーストの高さは、1〜3000μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。配置された導電材又は導電材ペーストの立体的な形状は、特に制限がなく、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状、半球状、半楕円体状など任意の形状を採用することができる。プリプレグや繊維強化複合材料とした際に、底面と上面の繊維層との接触面積の差が小さくなることから、円柱状、角柱状、半球状、半楕円体状であることが好ましい。導電材又は導電材ペーストを連続的に配置する場合は、幅方向の断面が方形状、台形状、円状、半円状、または半楕円状となるよう配置することが好ましい。
導電材を、分散材に分散した導電材ペーストとして使用する場合、導電材を分散させる分散材としては、溶媒や樹脂を用いることができ、マトリクス樹脂と相溶性のある樹脂を用いることが好ましく、マトリクス樹脂と同一の樹脂を用いることがより好ましい。マトリクス樹脂と相溶性のある樹脂を用いると、導電領域の樹脂が、樹脂層のマトリクス樹脂と連続相を形成することができる。導電性領域の樹脂が樹脂層のマトリクス樹脂と連続相を形成することで、導電領域と樹脂層の境界領域での破壊が抑制されるため、繊維強化複合材料の機械特性が向上する。
分散材として溶媒を使用する場合は、導電材ペーストを配置した後、溶媒を除去することが好ましい。また、分散材として樹脂を使用する場合、熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂等、硬化可能な樹脂を用いることが好ましい。
また、導電材ペーストの分散材として、硬化性樹脂を用いる場合には、硬化性樹脂を半硬化(B−ステージ)の状態としてプリプレグに配置することも好ましい。B−ステージの樹脂に導電材が分散した状態で導電領域をプリプレグに形成することで、導電材が導電領域周辺の樹脂層内に拡散することを防ぐことができるため、より精密に導電領域を設計することができる。さらに、B−ステージの樹脂組成物は、繊維強化複合材料を製造する際に、周囲のマトリクス樹脂と反応することができるため、導電領域の樹脂と樹脂層のマトリクス樹脂が一体化した連続相を形成することができる。
転写により導電体を配置させる場合、転写の支持体は特に限定されるものではないが、シリコーン系離型剤などの離型剤を含んだ離型紙や、フッ素樹脂フィルムなどの離形フィルムなど、離形性を有する面状体でることが好ましい。
導電材局在樹脂フィルムの導電材が局在配置された箇所の体積固有抵抗は、マトリクス樹脂組成物の体積固有抵抗の1000分の1以下であることが好ましい。また、導電材局在樹脂フィルムの導電材が局在配置された箇所の体積固有抵抗は10Ωcm〜10−9Ωcmであることが好ましく、1Ωcm〜10−9Ωcmであることがより好ましく、10−2Ωcm〜10−9Ωcmであることがさらに好ましい。導電材局在樹脂フィルムの導電材が局在配置された箇所の体積固有抵抗は、導電材をフィルム中の局在箇所と同じ体積占有率となるよう樹脂に分散した樹脂片(導電材ペーストを用いる場合は導電材ペーストを単独で硬化させた樹脂片)の体積固有抵抗を測定することで求められる。マトリクス樹脂組成物の体積固有抵抗は、マトリクス樹脂組成物を硬化させた樹脂の体積固有抵抗を測定することで求められる。
また、導電材は、導電材局在樹脂フィルムの導電材が局在配置された箇所の体積占有率が20〜95体積%となるよう樹脂中に分散されていることが好ましい。プリプレグ全体に占める導電材の添加量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。プリプレグ全体に占める導電材の添加量の下限は、特に限定されないが、得られる複合材料の導電性の観点から、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましい。
導電材がプリプレグのマトリクス樹脂に占める体積占有率は、繊維強化複合材料の機械特性の観点から、50体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることがより好ましい。体積占有率の下限は、特に限定されないが、得られる複合材料の導電性の観点から、0.0001体積%以上であることが好ましく、0.0005体積%以上であることがより好ましく、0.001体積%以上であることがさらに好ましく、0.01体積%以上であることが特に好ましい。本発明で得られるプリプレグは、導電材が高密度に局在化し通電効率が高いため、体積占有率が低くても、厚み方向に良好な導電性を示すことができる。また、一つの導電領域の体積は、0.1μm〜1mmであると、複合材料の導電性と機械強度を両立しやすくなるため好ましく、0.5μm〜0.5mmであることがより好ましく、1μm〜0.1mmであることがさらに好ましい。
上記方法を用いて得られるプリプレグによれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明のプリプレグの製造方法で用いる各成分を以下に説明する。
(1)導電性繊維
導電性繊維として用いられる繊維としては、導電性を有する繊維であれば特に制限はなく、例えば、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維が挙げられる。また、繊維表面が、例えば金属メッキ処理などの方法により、導電性物質で被覆された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維などの強化繊維を用いることもできる。
これらの導電性繊維の中でも、比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られる点で、炭素繊維がより好ましい。引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が特に好ましい。
PAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は、100〜600GPaであることが好ましく、より好ましくは200〜500GPaであり、230〜450GPaであることが特に好ましい。また、引張強度は2000MPa〜10000MPa、好ましくは3000〜8000MPaである。炭素繊維の直径は4〜20μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。このような炭素繊維を用いることにより、得られる複合材料の機械的性質を向上できる。
導電性繊維はシート状の基材に形成して用いることが好ましい。導電性繊維基材シートとしては、例えば、多数本の繊維を一方向に引き揃えたシートや、平織や綾織などの二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組紐、導電性繊維を抄紙した紙などを挙げることができる。
シート状の導電性繊維基材の厚さは、0.01〜3mmが好ましく、0.1〜1.5mmがより好ましい。これらの導電性繊維基材シートは、公知のサイズ剤を公知の含有量で含んでいても良い。
(2)導電材
本発明で用いる導電材としては、電気的に良好な導体として機能する導電物質であれば良く、導体のみに限定されない。好ましくは体積固有抵抗が100〜10−9Ωcmであり、より好ましくは10〜10−9Ωcmであり、さらに好ましくは1〜10−9Ωcmであり、特に好ましくは10−1〜10−9Ωcmである導電物質である。体積固有抵抗が低い方が、得られる繊維強化複合材料の導電性をより効率よく向上させることができる。
本発明で用いる導電材としては、その最小径が用いる導電性繊維の繊維径よりも小さい導電材であることが好ましい。導電材の最小径が用いる導電性繊維の繊維径よりも小さいと、導電材が導電性繊維の単繊維間に入り込みやすくなり、導電領域を導電性繊維層に密接させやすくなるため、得られる複合材料の導電性をより高めることができる。本発明で用いる導電材としては、その最小径が1nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることがより好ましく、10nm〜0.5μmであることがさらに好ましい。
導電材としては、例えば、金属材料、炭素材料、導電性高分子、無機材料又は有機材料のコア材を導電性物質で被覆した物質などを使用することができる。また、本発明において、プリプレグに使用される導電材料としては、複合材料に成形された後に導電性を電気的に良好な導体として機能する導電物質であれば良く、複合材料の成形温度で導体に転換される物質でもよい。複合材料の成形温度は、一般的に、80〜300℃であり、このような温度で導体に転換される物質としては、例えば有機金属化合物や有機金属錯体などが挙げられる。
上記の導電材の中でも、高い導電性及び安定性を示すことから、金属材料、炭素材料が好ましい。
金属材料としては、金属材料と炭素繊維との電位差により生じる腐食を防ぐことができるので、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウム、又はこれらを主成分とする合金等が好ましい。更には、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム・錫(ITO)等も好ましい。これらの中でも、高い導電性及び化学的安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン又はこれらを主成分とする合金が特に好ましい。
本発明で用いる導電材の形態は、特に制限はなく、フィラーや連続体状の導電材などを用いる事が出来る。本発明において、導電材の形態は、導電領域の形成のしやすさからフィラーであることが好ましい。
本発明においてフィラーとは、不連続体状の形態を指し、好ましくはそのアスペクト比が1〜1000の導電材である。フィラー状の導電材としては、例えば、粒子状、繊維状、星形状の導電材を用いることができる。粒子状のフィラーを用いる場合、その平均粒子径は、プリプレグのマトリクス樹脂内に充填できる大きさであれば限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜3μmがより好ましく、0.01〜1μmがさらに好ましく、0.05〜0.5μmが特に好ましい。
繊維状のフィラーを用いる場合、その長さは0.1〜500μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。直径は、0.001〜100μmが好ましく、0.005〜5μmがより好ましく、0.01〜1μmがさらに好ましく、0.05〜0.5μmが特に好ましい。
導電性フィラーとしては、例えば、金属材料では、金属粒子、金属ファイバー、有機金属粒子、有機金属錯体粒子、金属ナノ粒子、金属ナノファイバー、有機金属ナノ粒子などが挙げられ、炭素材料では、例えば、黒鉛粒子、炭素粒子、カーボンミルドファイバー、カーボンブラック、カーボン・ナノチューブ、気相成長法炭素繊維(VGCF)を含むカーボン・ナノファイバーから成る群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができ、これらを2種類以上ブレンドしたカーボンブラックも好適に用いられる。
連続体の導電材としては、例えば、長繊維状、フィルム状の導電材を用いることが出来る。連続体の導電材としては、例えば、炭素長繊維、金属長繊維、グラファイトフィルム、金属箔、カーボンナノコイル、金属ナノワイヤなどが挙げられる。
また、導電材の配合量は、導電領域において体積占有率が、20〜95体積%となるように配合することが好ましい。プリプレグ全体に占める導電材の添加量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。プリプレグ全体に占める導電材の添加量の下限は、特に限定されないが、得られる複合材料の導電性の観点から、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましい。
(3)マトリクス樹脂
本発明で用いるマトリクス樹脂には特に制限はなく、例えば硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。
マトリクス樹脂として硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂は、高い耐熱性を有する繊維強化複合材料を製造できるので、好ましい。熱硬化性樹脂としては、耐熱性および機械特性の観点から、熱により架橋反応が進行して、少なくとも部分的に三次元架橋構造を形成する熱硬化性樹脂が好ましい。
マトリクス樹脂として用いる硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。更に、これらの変性体および2種類以上のブレンド樹脂なども用いることができる。これらの硬化性樹脂は、加熱により自己硬化するものであっても良いし、硬化剤や硬化促進剤などを配合することにより硬化する樹脂であっても良い。
これらの硬化性樹脂の中でも、耐熱性、機械特性および炭素繊維との接着性のバランスに優れているエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂が好ましく、機械特性の面からはエポキシ樹脂がさらに好ましく、耐熱性の面からはビスマレイミド樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂や、ノボラック型エポキシ樹脂であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
更には、フェノール型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。また更に、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などの各種変性エポキシ樹脂も用いることができる。
中でも、分子内に芳香族基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましく、グリシジルアミン構造、グリシジルエーテル構造の何れかを有するエポキシ樹脂がより好ましい。また、脂環族エポキシ樹脂も好適に用いることができる。
グリシジルアミン構造を有するエポキシ樹脂としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−3−メチル−4−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体などが例示される。
グリシジルエーテル構造を有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が例示される。
これらのエポキシ樹脂は、必要に応じて、芳香族環構造などに非反応性置換基を有していても良い。非反応性置換基としては、メチル、エチル、イソプロピルなどのアルキル基、フェニルなどの芳香族基、アルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などのハロゲン基などが例示される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールAD型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等が挙げられる。具体的にはジャパンエポキシレジン社製jER815(商品名)、jER828(商品名)、jER834(商品名)、jER1001(商品名)、jER807(商品名)、三井石油化学製エポミックR−710(商品名)、大日本インキ化学工業製EXA1514(商品名)等が例示される。
脂環型エポキシ樹脂としては、ハンツマン社製社製アラルダイトCY−179(商品名)、CY−178(商品名)、CY−182(商品名)、CY−183(商品名)等が例示される。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン社製jER152(商品名)、jER154(商品名)、ダウケミカル社製DEN431(商品名)、DEN485(商品名)、DEN438(商品名)、DIC社製エピクロンN740(商品名)等、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、ハンツマン社製社製アラルダイトECN1235(商品名)、ECN1273(商品名)、ECN1280(商品名)、日本化薬製EOCN102(商品名)、EOCN103(商品名)、EOCN104(商品名)等が例示される。
各種変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性ビスフェノールAエポキシ樹脂として旭電化製アデカレジンEPU−6(商品名)、EPU−4(商品名)等が例示される。
これらのエポキシ樹脂は、適宜選択して1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。この中で、ビスフェノール型に代表される2官能エポキシ樹脂は、分子量の違いにより液状から固形まで種々のグレードの樹脂がある。従って、これらの樹脂はプリプレグ用マトリクス樹脂の粘度調整を行う目的で配合すると好都合である。
マトリクス樹脂として用いる熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、およびその共重合体やブレンド物であるポリオレフィン系樹脂、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド系樹脂、酸成分として芳香族成分を有する半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等)、あるいは、ポリ乳酸系などの脂肪族ポリエステル系樹脂などを挙げることができる。
(4)マトリクス樹脂組成物のその他の添加物
[マトリクス樹脂に不溶な粒子]
本発明のマトリクス樹脂組成物には、マトリクス樹脂に不溶な粒子が含まれている。マトリクス樹脂に不溶な粒子は、プリプレグを製造する際、導電性繊維シート表面に残留し、層間粒子となりやすい。この層間粒子は、FRPが受ける衝撃の伝播を抑制する。その結果、得られるFRPの耐衝撃性が向上する。マトリクス樹脂に不溶な粒子としては、無機粒子、ゴム粒子、樹脂粒子などが挙げられる。繊維強化複合材料の機械特性の観点から、後述のマトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂からなる粒子であることが好ましい。
マトリクス樹脂に不溶な粒子平均粒子径は、1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。
[硬化剤]
マトリクス樹脂として硬化性樹脂を用いる場合は、必要に応じて樹脂を硬化させる硬化剤がマトリクス樹脂組成物に配合されていてもよい。硬化剤としては、マトリクス樹脂を硬化させる公知の硬化剤が用いられる。
例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合に使用される硬化剤としては、ジシアンジアミド、芳香族アミン系硬化剤の各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が挙げられる。ジシアンジアミドは、プリプレグの保存安定性に優れるため好ましい。また、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン化合物及びそれらの非反応性置換基を有する誘導体は、耐熱性の良好な硬化物を与えるという観点から特に好ましい。ここで、非反応性置換基は、エポキシ樹脂の説明において述べた非反応性置換基と同様である。
アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエートやネオペンチルグリコールジ−p−アミノベンゾエートが好ましく用いられる。これらを用いて硬化させた複合材料は、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体と比較して耐熱性は劣るが、引張伸度に優れる。そのため、複合材料の用途に応じて、使用する硬化剤の種類は適宜選択される。
マトリクス樹脂組成物に含まれる硬化剤の量は、少なくとも樹脂組成物に配合されているマトリクス樹脂を硬化させるのに適する量を、用いるマトリクス樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜調節すればよい。配合量は、硬化剤・硬化促進剤の有無と添加量、硬化性樹脂との化学反応量論及び組成物の硬化速度などを考慮して、適宜、所望の配合量で用いることができる。保存安定性の観点から、樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂100質量部に対して、硬化剤を30〜100質量部配合することが好ましく、30〜70質量部がより好ましい。
硬化剤として、コート剤によりマイクロカプセル化されたDDS(例えば、DDSコート10(松本油脂社製))を用いることも可能である。マイクロカプセル化されたDDSは室温状態において未硬化のエポキシ樹脂と反応することを防止するため、物理的、化学的な結合によりDDS粒子の表層をエポキシ樹脂と反応性の少ない物質、具体的には、ポリアミド、変性尿素樹脂、変性メラミン樹脂、ポリオレフィン、ポリパラフィン(変性品も含む)等のコート剤によりコートしたものである。 これらのコート剤は、単独使用又は併用してもよく、また、前記以外の種々のコート剤によりマイクロカプセル化されたDDSを用いることもできる。
[熱可塑性樹脂]
マトリクス樹脂として、低粘度の樹脂を用いる場合、樹脂組成物に適切な粘度を与えるために、熱可塑性樹脂を配合してもよい。この樹脂組成物に粘度調節のために配合する熱可塑性樹脂には、最終的に得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性などの機械特性を向上させる効果もある。
マトリクス樹脂組成物に配合する上記熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物に用いるマトリクス樹脂の種類に応じて異なり、樹脂組成物の粘度が後述する適切な値になるように適宜調節すればよい。通常、樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂100質量部に対して、熱可塑性樹脂は5〜100質量部となるように配合することが好ましい。
マトリクス樹脂組成物の好ましい粘度は、80℃におけるその最低粘度が10〜450Poiseであり、より好ましくは最低粘度が50〜400Poiseである。樹脂組成物の最低粘度が10Poise以上ある場合、導電領域の導電材の流出を抑制し、導電材をプリプレグの所望の位置に局在化させる効果が高くなる。なお、粘度は、レオメーターを用いて測定される温度−粘度曲線から得られる粘度をいう。マトリクス樹脂の粘度は、熱可塑性樹脂、特に後述するマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の添加量により調整することができる。
熱可塑性樹脂としては、マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂とマトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂とが挙げられる。マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂とは、マトリクス樹脂に一部又は全部が加熱等により溶解し得る熱可塑性樹脂である。一方、マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂とは、FRPを成形する温度又はそれ以下の温度において、マトリクス樹脂に実質的に溶解しない熱可塑性樹脂をいう。即ち、FRPを成形する温度において、樹脂粒子をマトリクス樹脂中に投入して攪拌した際に、粒子の大きさが変化しない熱可塑性樹脂をいう。なお、一般的に、FRPを成形する温度は100〜190℃である。
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂が完全に溶解していない場合は、マトリクス樹脂組成物の硬化過程で加熱されることによりマトリクス樹脂に溶解し、マトリクス樹脂組成物の粘度を増加させることができる。これにより、硬化過程における粘度低下に起因するマトリクス樹脂組成物のフロー(プリプレグ内から樹脂組成物が流出する現象)を防止することができる。
[マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂]
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、マトリクス樹脂の硬化温度においてマトリクス樹脂に80質量%以上溶解する樹脂が好ましい。
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の具体的例としては、例えば、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。マトリクス樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、重量平均分子量(Mw)が8000〜40000の範囲のポリエーテルスルホン、ポリスルホンが特に好ましい。マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の分子量分布は均一であることが好ましい。特に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1〜10の範囲であることが好ましく、1.1〜5の範囲であることがより好ましい。
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、マトリクス樹脂と反応性を有する反応基又は水素結合を形成する官能基を有していることが好ましい。このようなマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、マトリクス樹脂の硬化過程中における溶解安定性を向上させることができる。また、硬化後に得られるFRPに靭性、耐薬品性、耐熱性及び耐湿熱性を付与することができる。
マトリクス樹脂との反応性を有する反応基としては、例えば、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、水酸基、カルボン酸基、イミノ基、アミノ基などが好ましい。水酸基末端のポリエーテルスルホンを用いると、得られるFRPの耐衝撃性、破壊靭性及び耐溶剤性が特に優れるためより好ましい。
マトリクス樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の含有量は、マトリクス樹脂の粘度に応じて適宜調整される。プリプレグの加工性の観点から、マトリクス樹脂100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、10〜40質量部がさらに好ましい。
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましい。粒子状のマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中に均一に配合することができる。また、得られるプリプレグの成形性が高い。マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の平均粒子径は、1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。
[マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂]
マトリクス樹脂組成物には、マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の他に、マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂を含有していても良い。本発明において、マトリクス樹脂組成物はマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂及びマトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂の両者を含有していることが好ましい。
マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂やマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の一部(硬化後のマトリクス樹脂において溶解せずに残存したエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂)は、その粒子がFRPのマトリクス樹脂中に分散する状態となる(以下、この分散している粒子を「層間粒子」ともいう)。この層間粒子は、FRPが受ける衝撃の伝播を抑制する。その結果、得られるFRPの耐衝撃性が向上する。
マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂としては、例えば、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾールが例示される。これらの中でも、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドは、靭性及び耐熱性が高いため好ましい。ポリアミドやポリイミドは、FRPに対する靭性向上効果が特に優れている。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。また、これらの共重合体を用いることもできる。
特に、非晶性ポリイミドや、ナイロン6(登録商標)(カプロラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド)、ナイロン12(ラウリルラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド)、非晶性のナイロン(透明ナイロンとも呼ばれ、ポリマーの結晶化が起こらないか、ポリマーの結晶化速度が極めて遅いナイロン)のようなポリアミドを使用することにより、得られるFRPの耐熱性を特に向上させることができる。
マトリクス樹脂組成物中のマトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂の含有量は、マトリクス樹脂組成物の粘度に応じて適宜調整される。プリプレグの加工性の観点から、マトリクス樹脂100質量部に対して、5〜60質量部であることが好ましく、15〜40質量部であることがより好ましい。マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂の好ましい平均粒子径や形態は、マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂と同様である。
[他の導電材]
マトリクス樹脂組成物は、必要に応じて、導電領域に存在する導電材以外の導電材を含んでいても良い。導電材としては、前述の導電材と同じものを用いることができる。導電材の配合量は、マトリクス樹脂組成物に含まれる主剤樹脂100質量部に対して、0.0001〜20質量部となるように配合することが好ましく、0.0005〜10質量部がより好ましく、0.001〜5質量部が特に好ましい。
[その他の添加剤]
マトリクス樹脂組成物は、上記成分以外に、本発明の目的・効果を阻害しない限り、必要に応じて、適宜、酸無水物、ルイス酸、ジシアンジアミド(DICY)やイミダゾール類の如く塩基性硬化剤、尿素化合物、有機金属塩、反応希釈剤、充填剤、酸化防止剤、難燃剤、顔料などの各種添加剤を含むことができる。
具体的には、酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、無水ピロメリット酸等が例示される。ルイス酸としては、三フッ化ホウ素塩類が例示され、更に詳細には、BFモノエチルアミン、BFベンジルアミン等が例示される。イミダゾール類としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールが例示される。また、尿素化合物である3−[3,4−ジクロロフェニル]−1,1−ジメチル尿素(DCMU)等や、有機金属塩であるCo[III]アセチルアセトネート等を例示することができる。反応性希釈剤としては、例えば、ポリプロピレンジグリコール・ジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の反応性希釈剤が例示される。
(5)マトリクス樹脂組成物の製造方法
マトリクス樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合は、樹脂組成物製造時に適用される混練温度としては、10〜160℃の範囲が例示できる。160℃を超える場合は、エポキシ樹脂の熱劣化や、部分的に硬化反応が開始し、得られる樹脂組成物並びにそれを用いて製造されるプリプレグの保存安定性が低下する場合がある。10℃より低い場合は、エポキシ樹脂組成物の粘度が高く、実質的に混練が困難となる場合がある。好ましくは20〜130℃であり、更に好ましくは30〜110℃の範囲である。
混練機械装置としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な例としては、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を供えた混合容器、横型混合槽などが挙げられる。各成分の混練は、大気中又は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混練が行われる場合は、温度、湿度管理された雰囲気が好ましい。特に限定されるものではないが、例えば、30℃以下の一定温度に管理された温度や、相対湿度50%RH以下の低湿度雰囲気で混練することが好ましい。
(6)プリプレグ
本発明の製造方法により得られるプリプレグは、マトリクス樹脂組成物を、導電性繊維基材を構成する各繊維基材の間隙に含浸させてなる。
マトリクス樹脂組成物の含有率は、プリプレグの全質量を基準として、15〜60質量%であることが好ましい。含有率が15質量%よりも少ない場合は、得られる複合材料に空隙などが発生し、機械特性を低下させる場合がある。含有率が60質量%を超える場合は、強化繊維による補強効果が不十分となり、実質的に質量対比機械特性が低いものになる場合がある。好ましくは、含有率は、20〜50量%であり、より好ましくは25〜50質量%である。
ここで、マトリクス樹脂がエポキシ樹脂の場合は、組成物の含有率は、プリプレグを硫酸に浸漬し、必要により加熱し、エポキシ樹脂が分解して質量を減少させるために生じる質量変化量から算出される割合を樹脂組成物の含有量として求めることが出来る。
具体的には、先ず、プリプレグを100mm×100mmに切り出して試験片を作製し、その質量を測定する。次いで、このプリプレグの試験片を硫酸中で浸漬または煮沸を行い、樹脂分を分解して溶出させる。その後、残った繊維をろ別し、硫酸で洗浄し、乾燥し、乾燥繊維の質量を測定する。最後に、硫酸分解操作の前後の質量変化からエポキシ樹脂組成物の含有率を算出する。
プリプレグの形態は、導電性繊維基材に、マトリクス樹脂組成物が含浸されている形状であれば、特に制限はないが、導電性繊維と、前記導電性繊維間に含浸されたマトリクス樹脂組成物とからなる導電性繊維層と、前記導電性繊維層の表面に被覆された樹脂層とからなるプリプレグであることが好ましい。樹脂層の厚みは2〜100μmが好ましい。樹脂層の厚みは、5〜50μmがより好ましく、10〜40μmが特に好ましい。
上記方法を用いて得られるプリプレグは、目的に応じて積層され、成形並びに硬化されて繊維強化複合材料が製造される。この製造方法自体は公知である。本発明を用いて得られるプリプレグによれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた繊維強化複合材料を得ることができる。
繊維強化複合材料は、プリプレグを目的に応じて積層し、成形並びに硬化させることで、従来公知の方法により製造することができる。繊維強化複合材料の製造方法としては、例えば、マニュアルレイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、自動繊維配置、真空バギング、オートクレーブ硬化、オートクレーブ以外の硬化、流体援用加工、圧力支援プロセス、マッチモールドプロセス、単純プレス硬化、プレスクレーブ硬化、又は連続バンドプレスを使用する方法が適用される。
このようにして得られる繊維強化複合材料は、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えているため、電磁遮蔽、静電気保護、電流リターン、及び導電性の改善が必要な多くの用途に適用できる。特に、航空宇宙部品、風力タービン、圧力容器、建物、船舶、列車、自動車、燃料タンク及びその他の分野において、電磁気的な諸問題を解決するために使用することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本実施例、比較例において使用する成分や試験方法を以下に記載する。
〔成分〕
(導電性繊維基材)
・使用した東邦テナックス社製の炭素繊維ストランド(テナックス IMS60(商品名))の引張強度と弾性率は下記の通りである。
・引張強度:5800MPa
・弾性率:290GPa
[エポキシ樹脂組成物]
(エポキシ樹脂)
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂(3官能基)[ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製アラルダイトMY0600(商品名)](MY0600)
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂(4官能基)[ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製アラルダイトMY721(商品名)](MY721)
(エポキシ樹脂硬化剤)
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン[和歌山精化社製の芳香族アミン系硬化剤](4,4’−DDS)
(熱可塑性樹脂)
・熱可塑性樹脂A
平均粒子径20μmのポリエーテルスルホン[住友化学工業(株)製PES−5003P(商品名)](エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂)
・熱可塑性樹脂B
平均粒子径20μmのグリルアミド[エムスケミージャパン社製TR−55(商品名)](エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂)
[導電材料]
(導電材ペースト)
・銀ペースト
サンユレック株式会社製エレクトロニクス用導電性接着剤 GA−6278(商品名)
(導電材:銀微粒子(平均粒子径:2μm)、分散材:エポキシ樹脂 電気抵抗値:5×10−4Ω・cm 導電材含有率:75wt%)
[支持体]
・フッ素系離型フィルム(FEPフィルム)[日本エアーテック株式会社製 A4000R Red Release Film(商品名)]
[測定方法]
(1)平均粒子径
導電材ペーストに含まれる導電材の平均粒子径は、導電材ペーストを有機溶媒で希釈した後、走査型電子顕微鏡にて粒子を10000倍に拡大して写真撮影し、無作為に30個の粒子を選定し、その粒子径を測定し平均値を求めた。
(2)Z方向体積抵抗率測定
本発明において、複合材料の導電性は、Z方向(厚さ方向)の体積抵抗率を用いて評価した。体積抵抗率とは、所与の材料の固有抵抗である。三次元材料の導電率の測定の単位はオーム−cm(Ω・cm)である。材料のZ方向体積抵抗率ρは、通常下式により定義される。
ρ=RA/L
R:試験片の電気抵抗値(デジタルオームメーターで測定)
L:試験片の厚さ(m)
A:試験片の断面積(m
本発明においては、体積抵抗はZ方向にのみ(複合材料の厚み方向)測定する。計算においては厚みが常に考慮されるので、すべての場合において、この値は「体積」抵抗率となる。
(Z方向体積抵抗率測定用試料の作製方法)
プリプレグをカット、積層し、積層構成[+45/0/−45/90]2Sの積層体を得た。真空オートクレーブ成形法を用い、0.49MPaの圧力下、180℃で120分間成形した。得られた成形物を幅40mm×長さ40mmの寸法に切断し、サンドペーパーを用いて、成形物の表面を炭素繊維が露出するまで研磨した。最後に、2000番のサンドペーパーを用いて表面仕上げを行い、試験片を得た。得られた試験片を、幅50mm×長さ50mmの金メッキを施した2枚の電極間に挟んだ。
両電極間に0.06MPaの荷重をかけた状態で、デジタルオームメーター(ADEX社製 AX−114N)でZ方向の試験片の抵抗値を測定し、上式から体積抵抗率を求めた。10枚の試験片について抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出し、その平均値を用いて評価した。
(実施例1)
直径200μmのドット(円)を幅方向、長さ方向それぞれ5mm間隔で格子状に配置させたスクリーン印刷版を用意した。FEPフィルム上にサンユレック株式会社製真空印刷機VPES−HAIVを使用し、導電材ペーストを印刷した。印刷時の圧力は100KPa、クリアランスは1mmであった。印刷後、120℃で120分間乾燥した。印刷後の導電材ペーストの形状は直径140μm、高さ45μmの半球状であった。
混練装置で、エポキシ樹脂である50質量部のMY0600と50質量部のMY721に、可溶性熱可塑性樹脂である10質量部のポリエーテルスルホン5003P(熱可塑性樹脂A)を添加し、120℃で30分間攪拌機を用いて撹拌し、熱可塑性樹脂Aを完全溶解させエポキシ樹脂組成物を調製した。次いで、調製したエポキシ樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型フィルム上に塗布し、表層用樹脂フィルム(樹脂目付:10g/m)を得た。得られた表層用樹脂フィルムの表面に、導電材ペーストをスクリーン印刷したFEPフィルムを、印刷面がエポキシ樹脂組成物に接するようにして貼り合わせた。その後、FEPフィルムを剥がし、導電材ペーストを表層用樹脂フィルムに転写させた。転写後の導電材ペーストは半球体の形態を保っていた。
ついで、あらたに、50質量部のMY600と50質量部のMY721に、10質量部の熱可塑性樹脂Aを添加し、120℃で30分間攪拌機を用いて撹拌し、熱可塑性樹脂Aを完全溶解させた後、樹脂温度を80℃以下に冷ました。その後、30質量部の熱可塑性樹脂Bを混練し、さらに4,4’−DDSを45質量部混練して、エポキシ樹脂組成物を調製した。調製した樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して40g/mの含浸用樹脂フィルムを作製した。
導電性繊維基材の両面に、含浸用樹脂フィルムを貼り合わせ、ホットメルト法により、樹脂組成物を導電性繊維基材に含浸させ一次プリプレグを作製した。得られた一次プリプレグの両面に、導電材ペーストを転写させた表層用樹脂フィルムを、導電材ペーストが導電性繊維基材と接するように貼り合わせプリプレグを作製した。導電材ペーストの形状から算出した、このプリプレグ中の導電材の配合量は0.038wt.%であった。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、180Ω・cmを示した。
維強化複合材料の断面を電子顕微鏡で観察したところ、炭素繊維層のそれぞれの層間の樹脂層に、マトリクス樹脂に分散した導電材が高濃度に局在化し存在している領域が、樹脂層を厚み方向に横断し、炭素繊維層に接触して存在していた。また、導電材を高密度に含む領域のマトリクス樹脂と、他の領域のマトリクス樹脂は一体化し連続相を成していた。
(比較例1)
スクリーン印刷版を、直径100μmのドット(円)を、幅方向、長さ方向それぞれ2mm間隔で格子状に配置させたスクリーン印刷版に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。スクリーン印刷後の導電材ペーストの形状は直径94μm、高さ17μmの半球状であった。プリプレグ中の導電材の配合量は0.041wt.%であった。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、600Ω・cmを示し、実施例1と比較して導電性が不十分であった。
維強化複合材料の断面を電子顕微鏡で観察したところ、炭素繊維層のそれぞれの層間の樹脂層に、マトリクス樹脂に分散した導電材が高濃度に局在化し存在している領域が、形成されていたものの、マトリクス樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子の近傍では、導電材の局在領域が樹脂層を厚み方向に横断できず、炭素繊維層に十分接触していなかった。
(実施例2)
スクリーン印刷版を、直径150μmのドット(円)を、幅方向、長さ方向それぞれ3mm間隔で格子状に配置させたスクリーン印刷版に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。スクリーン印刷後の導電材ペーストの形状は直径108μm、高さ24μmの半球状であった。プリプレグ中の導電材の配合量は0.036wt.%であった。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、350Ω・cmを示した。
維強化複合材料の断面を電子顕微鏡で観察したところ、炭素繊維層のそれぞれの層間の樹脂層に、マトリクス樹脂に分散した導電材が高濃度に局在化し存在している領域が、樹脂層を厚み方向に横断し、炭素繊維層に接触して存在していた。また、導電材を高密度に含む領域のマトリクス樹脂と、他の領域のマトリクス樹脂は一体化し連続相を成していた。
(実施例3)
スクリーン印刷版を、直径300μmのドット(円)を、幅方向、長さ方向それぞれ7mm間隔で格子状に配置させたスクリーン印刷版に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。スクリーン印刷後の導電材ペーストの形状は直径168μm、高さ58μmの半球状であった。プリプレグ中の導電材の配合量は0.036wt.%であった。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、180Ω・cmを示した。
維強化複合材料の断面を電子顕微鏡で観察したところ、炭素繊維層のそれぞれの層間の樹脂層に、マトリクス樹脂に分散した導電材が高濃度に局在化し存在している領域が、樹脂層を厚み方向に横断し、炭素繊維層に接触して存在していた。また、導電材を高密度に含む領域のマトリクス樹脂と、他の領域のマトリクス樹脂は一体化し連続相を成していた。
(実施例4)
スクリーン印刷版を、直径500μmのドット(円)を、幅方向、長さ方向それぞれ10mm間隔で格子状に配置させたスクリーン印刷版に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。スクリーン印刷後の導電材ペーストの形状は直径246μm、高さ100μmの半球状であった。プリプレグ中の導電材の配合量は0.044wt.%であった。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、180Ω・cmを示した。
維強化複合材料の断面を電子顕微鏡で観察したところ、炭素繊維層のそれぞれの層間の樹脂層に、マトリクス樹脂に分散した導電材が高濃度に局在化し存在している領域が、樹脂層を厚み方向に横断し、炭素繊維層に接触して存在していた。また、導電材を高密度に含む領域のマトリクス樹脂と、他の領域のマトリクス樹脂は一体化し連続相を成していた。
1 プリプレグ
2 導電性繊維層
3 樹脂層
4 導電領域
5 導電材

Claims (5)

  1. マトリクス樹脂に不溶な粒子を含むマトリクス樹脂組成物を導電性繊維基材に一体化させるプリプレグの製造方法であって、
    樹脂フィルムの一部に導電材を局在配置した導電材局在樹脂フィルムであり、
    前記導電材が、樹脂フィルムの厚み方向に前記マトリクス樹脂に不溶な粒子の平均粒子径以上の高さで配置された導電材局在樹脂フィルムを導電性繊維基材に積層し一体化させることを特徴とするプリプレグの製造方法。
  2. 導電材局在樹脂フィルムが、マトリクス樹脂からなるフィルムの表面に導電材を配置してた導電材局在樹脂フィルムである請求項1に記載のプリプレグの製造方法。
  3. 導電材局在樹脂フィルムが、支持体に導電材を配置した後、マトリクス樹脂からなるフィルムに導電材を転写した導電材局在樹脂フィルムである請求項1または2に記載のプリプレグの製造方法。
  4. 前記導電材を、分散材に導電材が分散した導電材ペーストとして配置する請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
  5. 前記分散材が、マトリクス樹脂と相溶性のある樹脂である請求項4に記載のプリプレグの製造方法。
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