JP2017131146A - 動物用位置情報送信機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Ti-Ni系の超弾性形状記憶合金ワイヤ製の小型アンテナ7を動物の視野の外に配置する事により、アンテナ7の存在を動物が視覚的に認識しアンテナ7を破壊しようとすることを防ぐ機能を持つ事と共に、位置情報送信機を構成するGPSモジュールによって得られた位置情報をリアルタイムに送信することを特徴とし、動物に壊されにくい小型で堅牢な動物用GPS送信機1である。
【選択図】図1
Description
また、請求項2に係る発明は、前記小型アンテナを備えた前記小型の筐体の内部に、前記位置情報送信機を構成するGPSモジュールと、電源バッテリー部とを収納していることを特徴とする前記請求項1に記載の動物用位置情報送信機である。
また、請求項3に係る発明は、前記小型アンテナが、従来の金属製アンテナが有する最大0.2%程度の弾性歪みを遙かに超えて、5〜10%の弾性歪みを示し、そして指先の器用なサルが引っ張っても柔軟に撓んで、3%以下の歪みに収まり、或いは、カラスが嘴で150kg/mm2の剪断力で噛んでも食い千切ることのできない、Ti-Ni系の超弾性形状記憶合金ワイヤ製であり、その長さは15〜25cm、ワイヤ外径は0.4mm〜5mm(実施例では、外径は1.8mmを使用)の小型アンテナであることを特徴とする前記請求項1乃至請求項2の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機である。
また、請求項4に係る発明は、前記筐体に備えてある前記小型アンテナが、動物の視野の外に配置する事により、アンテナの存在を動物が視覚的に認識しアンテナを破壊しようとすることを防ぐ機能を持つ事とまた植生に接触する等動物の行動を阻害しないような適切な角度で折り曲げて高温で熱処理を施して形成した形状のアンテナであることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機である。
また、請求項5に係る発明は、前記位置情報送信機を構成する前記GPSモジュールが、GPS電波受信回路部と、該GPS電波受信回路部により受信したデータをスペクトラム拡散通信に必要な拡散コードで拡散変調された電波により送信する送信回路部と、スペクトラム拡散方式の信号処理を含む電子回路部とを備えたことを特徴とする前記請求項1乃至請求項4の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機である。
また、請求項6に係る発明は、前記GPSモジュールによって得られた位置情報をリアルタイムに送信することを特徴とする前記請求項1乃至請求項5の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機である。
動物用位置情報送信機1のアンテナ7おいては、小型で堅牢で、動物に付けても、動物が嫌がらず、その行動を制限することなく、しかも、一定の通信距離の確保と、一定期間安定的に使用できる、動物用位置情報送信機の、アンテナとGPSモジュールの実装される筐体の小型化が必要となり、形状や大きさやの検討が重要なテーマである。
本発明では、アンテナ7を長さ15〜25cm(実施例では15cm〜20cmで、筺体内部まで含めると25cm)、外径0.4mm〜5mm使用可能(実施例では外径1.8mmを採用)のTi-Ni系の超弾性形状記憶合金ワイヤとし、通信距離を20km以上確保できることを発明目標として、さらに電源バッテリー部20の容量や筺体の小型化等の実施を行った。
ところで一説によると、野生動物に適する首輪の重さは、例えば、体重の3〜4%ぐらい、熊は800g〜1kg、サルは250gくらいに抑える必要があると言われている。
Ti-Ni系の超弾性形状記憶合金ワイヤを用いた荷重―歪み特性の代表的な例として直径2.3mmの場合を図2に示す。図2を参照して、本発明で用いたTi-Ni系の超弾性形状記憶合金ワイヤの基本特性を調べるために、常温下で行った引張試験での荷重―歪み曲線を示す。荷重の増加とともに歪み3%までにはほぼ荷重―歪みの線型的な挙動を示すが、その後は応力誘起マルテンサイト変態によって見かけ上の塑性変形を起こしており、約8%歪み付近で除荷すれば、ほぼ初期の状態まで形状が回復する超弾性効果を示していることが分る。
このことから、本発明で用いたTi-Ni系の超弾性形状記憶合金ワイヤは、従来の金属材と比べて変形に対する極めて高い形状復元性と適度な強度とを有した動物用GPS送信機用アンテナ素材への適用性を確認することができた。
アンテナ7は形状や大きさにより電力の供給位置である給電点から見たときのインピーダンスが周波数により変化する。また、一般に送信回路側のインピーダンスとも異なることから、給電点に於いてはインピーダンスの不整合が発生している。そのためアンテナ7から放射される電磁波は送信回路から供給される電力の一部であり、利用可能な電力を十分に利用していない。
本発明では、142MHz帯に於いて小型化されたアンテナ7のインピーダンスの周波数特性を電磁界シミュレーションにより把握し、整合回路により電力供給の最適設計を行った後、実際にアンテナ7に適用して特性の改善を測定により確認した。
シミュレーションはモーメント法による解析ソフトであるSONNET Liteを用いて行った。解析したアンテナの形状を図3に示す。アンテナ7は断面が1mm角で25cmの棒状のモノポールアンテナとしている。シミュレーションでは解析領域を設定する必要があるが、ここでは、大きな矩形のチューブの底面にアンテナが設定されている状態を想定している。
インピーダンスはZin=47.86-j344、反射係数はΓ=0.96 ∠-16.23 である。これよりインピーダンスの不整合があり、対策を行わないとアンテナ7に給電される電力1-Γ2は送信回路の出力の約8%に過ぎないことが分かる。
また、整合回路の状態を推定するためにシミュレーションソフトMr Smithを用いた。直列のインダクタンスL=422nHを設定した場合の整合状態の様子を図5に示す。整合状態を表す中心近くに回路側から見たときのインピーダンスが変換されていることが分かる。このときの反射係数は、Γ=0.023 ∠164.1 であり送信回路の出力の99%以上がアンテナ7に供給されることが分かる。
アンテナ7(1.5mmφの超弾性形状記憶合金ワイヤ、20cm)と整合回路を首輪型送信機に組み込んだときのサル用首輪型送信機1の外観を図7に、筐体10から取り出した電子回路部13aの部分を図8に示す。首輪型送信機の試験では整合回路を介してアンテナ7に信号発振器から-20 dBmの信号を供給したときの3m離れた位置での受信電界強度を測定し、基準となるダイポールアンテナの場合と比較したときのアンテナの相対利得、及び試作アンテナ7を1回転させたときの指向性パターンの測定を群馬県立産業技術センターの小型電波暗室で行った。暗室に設定されたときのアンテナの状態を図9に示す。また、受信電界強度の測定結果を図10に示す。試作アンテナ7は基準アンテナに対して長さが短くなったために効率が7.6dB=約0.42倍に低下することが分かった。また、整合回路のない33.7dBの低下の場合と比較して大きく改善されることも分かった。
作成された動物用送信機1の通信距離を確認するために、動物用送信機1と該動物用送信機1の信号を受信・解析する受信機を用いて野外での通信実験を行った。市街地郊外の群馬県立産業技術センターから国道50号線沿いに約4.5km離れた地点でも十分に通信が可能であることを確認できた。このときの位置関係を図13に示す。
すなわち、本発明ではスペクトラム拡散方式の信号処理を含む電子回路部とを備えたことにより、周波数142MHz、放射電力2.5nW〜10mWの超微電力通信が確認された。
GPS電波受信回路部15と、該GPS電波受信回路部15により受信したデータをスペクトラム拡散通信に必要な拡散コードで拡散変調された電波により送信する送信回路部17と、スペクトラム拡散方式の信号処理を含む電子回路部13aと、電源バッテリー部20とが収納され、ベルト4に取り付けられている送信機の筐体10は、3Dプリンタ(MUTOH製3Dプリンタ)を用いてABS樹脂により作成した。ベルト4及び筐体10は、サルへの装着を考慮して、ベルト4の内径を9cm〜21cmの使用可能長さとし、筐体10の左右長さを4cm〜10cmの使用可能長さとし、(実施例では、図1に示すように、ベルト4の内径は14.5cmとし、筐体10においては、左右長さ6.3cm、高さ6cm、奥行き3cmとし、概略144cm3の大きさ)、として設計を行った。
堅牢性は、JIS規格に則って、筺体10の引張試験と圧縮試験、及び電子回路を含めた衝撃試験と振動試験を実施し、後者の試験では実施後に送信機等が正常に動作することを確認した。
ABS樹脂で作成された筺体10の強度を把握するために引張試験と圧縮試験を行った。
引張試験では首輪のベルト4に取り付けた筺体10が外れるときの強度が162Nで、筺体10とベルト4とを固定しているねじの部分が破断された。このときの引張の負荷の変化の様子を図14に示す。
また、圧縮試験では3種類の試料に対し、16kN〜20kNのときに5mm〜8mm程度の変形が発生することが分かった。このときの荷重と変位の様子を図15に示す。
電子回路を含んだサル用首輪型送信機1に衝撃や振動を加えた後、送信機の機能が正常に保たれるか試験を行った。試験条件は一般的な電子機器に対するものを想定し、JIS C60068の環境試験方法(電気・電子)規格に基づいた試験を実施した。
JIS C 60068-2-27 衝撃試験方法(Ea)
JIS C 60068-2-64 広帯域ランダム振動試験方法及び指針(Fh)
何れの試験に於いても、実施後にGPSの受信による測位及び送信機能は正常に動作することが確認された。衝撃試験で50Gの加速度を印加したときの変化の様子を図16に示す。
本発明では、特にアンテナ7の長さを15〜25cm(実施例では20cm)に小型化でき、筺体10の容積も略144cm3に小型化できた。首輪に取り付けられた筐体は、内部にGPSモジュールと、スペクトラム拡散方式の信号処理を含む電子回路部13aと、電源バッテリー部とを収納し、堅牢性に対しても一般的な電子機器に要求されるJIS C60068の環境試験方法(電気・電子)規格に基づいた衝撃、振動試験に対して形状も機能も動作上の問題も発生せず正常に動作することが確認できた。また、通信距離も市街地郊外の野外実験で4.5km以上の通信が達成できた。稼働時間は用いたバッテリーの容量から1時間間隔の送信で半年程度である。
4‥‥ベルト、
7‥‥アンテナ、
10‥‥筐体、
13‥‥GPSモジュール、
13a‥‥スペクトラム拡散方式の信号処理を含む電子回路部、
15‥‥GPS電波受信回路部、
17‥‥送信回路部、
20‥‥電源バッテリー部、
25‥‥疑似ファントム。
Claims (6)
- 動物に取付けるベルトに、小型アンテナを備えた小型の筐体を設けて成ることを特徴とする動物用位置情報送信機。
- 前記小型アンテナを備えた前記小型の筐体の内部に、前記位置情報送信機を構成するGPSモジュールと、電源バッテリー部とを収納していることを特徴とする前記請求項1に記載の動物用位置情報送信機。
- 前記小型アンテナが、従来の金属製アンテナが有する最大0.2%程度の弾性歪みを遙かに超えて、5〜10%弾性歪みを示し、そして、指先の器用なサルが引っ張っても柔軟に撓んで、その変形は3%以下の歪みに収まり、或いは、カラスが嘴で150kg/mm2の剪断力で噛んでも食い千切ることのできない、Ti-Ni系の超弾性形状記憶合金ワイヤ製であり、その長さは15〜25cm、外径は0.4mm〜5mmの小型アンテナであることを特徴とする前記請求項1乃至請求項2の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機。
- 前記筐体に備えてある前記小型アンテナを、動物の視野の外に配置する事により、アンテナの存在を動物が視覚的に認識しアンテナを破壊しようとすることを防ぐ機能を持つ事を特徴とする前記請求項1乃至請求項3の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機。
- 前記位置情報送信機を構成する前記GPSモジュールが、GPS電波受信回路部と、該GPS電波受信回路部により受信したデータをスペクトラム拡散通信に必要な拡散コードで拡散変調された電波により送信する送信回路部と、スペクトラム拡散方式の信号処理を含む電子回路部とを備えたことを特徴とする前記請求項1乃至請求項4の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機。
- 前記GPSモジュールによって得られた位置情報をリアルタイムに送信することを特徴とする前記請求項1乃至請求項5の内の何れか1項に記載の動物用位置情報送信機。
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