JP2017129669A - 現像装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】粒子芯材の表面に樹脂コート層を被覆したキャリアによってトナーを確実に長期間に渡って良好に帯電させることができる現像装置6を提供する。【解決手段】トナーとキャリアとを含有する現像剤を循環搬送するための供給回収搬送路53a及び撹拌搬送路54aからなる循環搬送路と、循環搬送路内で現像剤を搬送するスクリュー(53、54)と、供給回収搬送路53q内の現像剤を自らの表面に担持した後、自らの表面移動に伴って感光体1との対向位置に搬送して感光体1上の静電潜像を現像する現像ローラ50とを有する現像装置6であって、キャリアとして、電気陰性度が1.4以下である物質からなる微粒子を分散させた樹脂コート層を粒子芯材の表面上に被覆したものを用い、初期から4万頁分の画像を現像するまでの期間内に、キャリアの表面における微粒子の存在比率を初期よりも増加させるストレスをキャリアに付与する。【選択図】図2

Description

本発明は現像装置及び画像形成装置に関するものである。
従来より、循環搬送路内の現像剤を搬送する搬送体と、循環搬送路から供給される現像剤を自らの表面に担持した後、自らの表面移動に伴って潜像担持体との対向位置に搬送して潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体とを有する現像装置が知られている。
例えば、特許文献1に記載の現像装置は、搬送体たるスクリュー部材の回転駆動に伴って現像剤を搬送する二つの搬送路の間で、トナー及びキャリアを含有する現像剤を循環搬送する循環搬送路を有している。そして、循環搬送路における一方の搬送路から現像剤担持体たる現像スリーブに供給した現像剤を、現像スリーブの表面に担持した後、現像スリーブの回転に伴って潜像担持体たる感光体との対向位置に搬送して感光体上の潜像を現像してトナー像を得る。
現像剤中に含まれるキャリアとしては、特許文献2に記載のものが知られている。このキャリアは、粒子芯材の表面に樹脂コート層が被覆されたものであり、この樹脂コート層は、硫酸バリウムからなる微粒子が分散されたシリコン樹脂からなるものである。硫酸バリウムからなる微粒子はシリコン樹脂よりも硬いことから、摩擦による樹脂コート層の削れを抑えたり、トナーの帯電を助長したりして、長期間に渡ってトナーを良好に帯電させることができるとされている。
しかしながら、かかるキャリアを用いたとしても、現像装置の構成によっては、キャリアの使用期間がそれほど長期に渡っていないにもかかわらず、トナーの帯電不良を引き起こしてしまうことが本発明者らの実験によって判明した。
上述した課題を解決するために、本発明は、トナーとキャリアとを含有する現像剤を循環搬送するための循環搬送路と、前記循環搬送路内で現像剤を搬送する搬送体と、前記循環搬送路から供給される現像剤を自らの表面に担持した後、自らの表面移動に伴って潜像担持体との対向位置に搬送して前記潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体とを有する現像装置であって、前記キャリアとして、電気陰性度が1.4以下である物質からなる微粒子を分散させた樹脂コート層を粒子芯材の表面上に被覆したものを用い、初期から4万頁分の画像を現像するまでの期間内に、前記キャリアの表面における前記微粒子の存在比率を初期よりも増加させるストレスを前記キャリアに付与することを特徴とするものである。
本発明によれば、現像装置内において、粒子芯材の表面に樹脂コート層を被覆したキャリアによってトナーを確実に長期間に渡って良好に帯電させることができるという優れた効果がある。
実施形態に係る複写機を示す概略構成図。 同複写機におけるY,M,C,K用の作像ユニットのうち、何れか一つを中間転写ベルトや一次転写バイアスローラとともに示す拡大構成図。 同作像ユニットを示す斜視図。 同作像ユニットの現像装置を示す拡大構成図。 従来の低ストレス現像装置の第1例を示す構成図。 従来の低ストレス現像装置の第2例を示す構成図。 同作像ユニットの現像装置(実施形態に係る現像装置)にセットされる初期状態の磁性キャリアを部分的に示す拡大断面図。 ポーリングの電気陰性度表を示す図。 同現像装置にセットして、ある程度の期間に渡って使用したキャリア表面を模式的に示した図。 第1例の低ストレス現像装置にセットして、ある程度の期間に渡って使用したキャリア表面を模式的に示した図。 プリンタ試験機として株式会社リコー社製のMPC8002を用い、低温定着性のトナーBを使ってテスト画像を連続プリントした場合におけるトナー帯電量(Q/M)の経時変化を示すグラフ。 プリンタ試験機として株式会社リコー社製のMPC4502を用い、低温定着性のトナーBを使ってテスト画像を連続プリントした場合におけるトナー帯電量(Q/M)の経時変化を示すグラフ。 プリンタ試験機として株式会社リコー社製のMPC4503を用い、低温定着性のトナーBを使ってテスト画像を連続プリントした場合におけるトナー帯電量(Q/M)の経時変化を示すグラフ。 第一実験におけるトナー帯電量の経時変化を示すグラフ。 キャリア表面における帯電性微粒子Ca1(第一実験では硫酸バリウム)の存在比率をXPSによって測定した結果を示すグラフ。 第一実施例に係る複写機の現像装置を示す拡大構成図。 第二実施例に係る複写機における供給回収スクリューを示す部分斜視図。 第三実施例に係る現像装置を示す構成図。
以下、本発明を適用した画像形成装置として、タンデム型カラー複写機(以下、複写機500という)の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る複写機500を示す概略構成図である。複写機500は、プリンタ部100、原稿読取部4、原稿搬送部3、給紙部7等を備えている。給紙部7の上に、プリンタ部100、原稿読取部4、原稿搬送部3が順に積み重ねられている。
原稿搬送部3は、原稿読取部4に原稿を搬送し、原稿読取部4は搬送されてきた原稿の画像情報を読み込む。 給紙部7は、記録媒体である記録シートPを収容する記録媒体収容部であり、記録シートPが複数枚重ねて収容される給紙カセット26と、給紙カセット26内の記録シートPをプリンタ部100に向けて送り出す給紙ローラ27とを備えている。図中の一点鎖線は、複写機500内での記録シートPの搬送経路を示している。
プリンタ部100の上部は、出力画像が形成された記録シートPが積載される排紙トレイ30が配設されている。プリンタ部100は、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像を作像する四つの作像ユニット6(Y,M,C,K)と、中間転写ユニット10とを備えている。
作像ユニット6(Y,M,C,K)は、各色トナー像が形成される像担持体としてのドラム状の感光体1(Y,M,C,K)、及び、感光体(Y,M,C,K)の表面上に形成された静電潜像を現像する現像装置5(Y,M,C,K)を備えている。
中間転写ユニット10は、複数の張架ローラによって張架された中間転写ベルト8や一次転写バイアスローラ9(Y,M,C,K)を備えている。中間転写ベルト8は、感光体1Y,1M,1C,1Kの表面上に形成されたY,M,C,Kのトナー像が重ねて一次転写されて、カラートナー像を担持する。一次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kには、トナーの正規帯電極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。これにより、感光体1Y,1M,1C,1Kと、一次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kとの間には、それぞれ一次転写電界が形成される。この一次転写電界や、一次転写ニップ圧の作用により、感光体1Y,1M,1C,1K上のY,M,C,Kのトナー像が中間転写ベルト8に一次転写される。
作像ユニット6Y,6M,6C,6Kは、中間転写ユニット10の中間転写ベルト8に対向しつつ、ベルト移動方向においてY,M,C,Kの順で一次転写がなされるように配設されている。
中間転写ベルト8の図中右側方には、二次転写バイアスローラ19が配設されており、中間転写ベルト8の周方向における二次転写対向ローラに対する掛け回し箇所に対してベルトおもて面側から当接して二次転写ニップを形成している。この二次転写ニップには、所定のタイミングで記録シートPが送り込まれる。具体的には、給紙ローラ27によって給紙カセット26内から送りだされた記録シートPは、給紙路を通ってレジストローラ対28のレジストニップに突き当たる。レジストローラ対28は、所定のタイミングでローラを回転駆動させて記録シートPを二次転写ニップに向けて送り込む。これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト8上のカラートナー像と、記録シートPとが同期して、両者が密着する。そして、二次転写バイアスローラ19に印加される二次転写バイアスによって形成される二次転写電界や、二次転写ニップ圧の作用により、中間転写ベルト8上のカラートナー像が記録シートPの表面に二次転写される。
二次転写ニップを通過した後の記録シートPは、定着装置20内に送り込まれ、定着ニップを通過する際に加圧されたり、加熱されたりすることで、表面上の未定着トナー像が定着せしめられる。
プリンタ部100内の排紙トレイ30の下方であって、且つ中間転写ユニット10の上方には、トナー容器11Y,11M,11C,11Kが配置されている。現像装置5Y,5M,5C,5Kに供給するためのY,M,C,Kのトナーを収容しているトナー容器11Y,11M,11C,11Kは、プリンタ部100に対して着脱可能に構成されている。
プリンタ部100内にける作像ユニット6Y,6M,6C,6Kの下方には、感光体1Y,1M,1C,1Kの表面上にレーザー光Lを照射して静電潜像を形成する潜像形成手段たる露光装置12が配設されている。
図2は、Y,M,C,K用の作像ユニット6(Y,M,C,K)のうち、何れか一つを中間転写ベルト8や一次転写バイアスローラ9とともに示す拡大構成図である。なお、同図においては、各部材の符号の末尾に付されるY,M,C,Kという添字を省略している。以下の説明文においても、適宜、添字を省略する。使用するトナーの色が異なる点の他は、各色の作像ユニットの構成は互いに同様になっている。
図3は、作像ユニット6を示す斜視図である。作像ユニット6は、感光体1、現像装置5、クリーニング装置2、帯電装置40、及び除電手段を共通の保持体に保持してそれらを一体的なユニットにする構造になっている。これにより、感光体1、現像装置5、感光体クリーニング装置2、及び帯電装置40の交換性を容易にして、複写機500のメンテナンス性が向上させている。
感光体クリーニング装置2は、クリーニングブレード2aによって感光体1上の転写残トナーを感光体1から除去するものである。また、帯電装置40は、帯電バイアスが印加される帯電ローラ4aと感光体1との間に放電を生じせしめて感光体1を一様に帯電せしめるものである。なお、除電手段は、クリーニング後の感光体1の表面の残留電荷を除電するものである。
図1において、原稿搬送部3の原稿台に原稿がセットされた状態で、スタートボタンが押されると、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって原稿台から搬送されて、原稿読取部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読取部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
詳しくは、原稿読取部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサーに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサーにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理が施される。これにより、Y,M,C,K用の色分解画像情報が生成される。
Y,M,C,K用の色分解画像情報は、露光装置12を駆動するための書込制御部に送られる。書込制御部は、それらの色分解画像情報に基づいて露光装置12を駆動して、露光装置12からY,M,C,K用のレーザー光Lを発振させ、これによって感光体1Y,1M,1C,1Kを光走査する。
一方、感光体1Y,1M,1C,1Kは、駆動モータによって、図1や図2中の時計回り方向に回転駆動する。そして、感光体1Y,1M,1C,1Kの表面は、帯電装置40の帯電ローラ4aとの対向部で一様に帯電される(帯電工程)。その後、帯電された感光体1Y,1M,1C,1Kの表面は、レーザー光Lが照射される位置に達する。露光装置12において、四つの光源から画像信号に対応したレーザー光LがY,M,C,Kに対応してそれぞれ射出される。Y,M,C,K用のレーザ光ーLは、色成分ごとに別の光路を通過して、感光体1Y,1M,1C,1Kの表面に照射される(露光工程)。
Y成分に対応したレーザー光Lは、図1中の紙面左側から一番目のY用の感光体1Yの表面に照射される。このとき、Y用の作像ユニット6Yの下方に配置された露光装置12からY用の色分解画像情報に基づいて発振されたY成分のレーザー光Lは、高速回転するポリゴンミラーにより、Y用の感光体1Yの回転軸方向(主走査方向)に偏向される。このようにレーザー光Lが偏向されながら、複数の光学素子を介してY用の感光体1Yに照射されることで、帯電装置40によって帯電された後のY用の感光体1Yの表面上には、Y成分に対応したY用の静電潜像が形成される。
同様に、M成分に対応したレーザー光Lは、図1中の紙面左から二番目のM用の感光体1Mの表面に照射されて、M成分に対応した静電潜像を形成する。また、C成分のレーザー光Lは、図1中の紙面左から三番目のC用の感光体1Cの表面に照射されて、C用の静電潜像を形成する。また、K成分のレーザー光Lは、図1中の紙面左から四番目のK用の感光体1Kの表面に照射されて、K用の静電潜像を形成する。
その後、Y,M,C,K用の静電潜像が形成された感光体1Y,1M,1C,1Kの表面は、現像装置5Y,5M,5C,5Kとの対向位置に達する。そして、トナーとキャリアとを含有するY,M,C,K用の現像剤を収容する現像装置5Y,5M,5C,5Kから感光体1Y,1M,1C,1K上の静電潜像にY,M,C,Kトナーが供給されて、Y,M,C,Kのトナー像が形成される(現像工程)。
現像装置5Y,5M,5C,5Kとの対向位置ある現像領域を通過した後の感光体1Y,1M,1C,1K表面は、Y,M,C,K用の一次転写ニップに進入して、中間転写ベルト8の表面に一次転写される(一次転写工程)。Y,M,C,K用の一次転写ニップを通過した後の感光体1Y,1M,1C,1Kの表面上には、転写残トナーが付着している。これらは、Y,M,C,K用の感光体クリーニング装置2のクリーニングブレード2aによって感光体1Y,1M,1C,1Kの表面上から掻き取られる(感光体クリーニング工程)。
感光体クリーニング装置2との対向部を通過した感光体1の表面は、除電手段と対向する除電部を通過して残留電荷が除電され、感光体1における一連の作像プロセスが終了し、次の作像動作に備える。
Y,M,C,Kのトナー像の重ね合わせ転写によってカラートナー像を担持した中間転写ベルト8は、図1中の反時計周り方向に表面移動して、二次転写ニップに進入する。そして、上述のようにして二次転写ニップ内に送り込まれた記録シートPと二次転写ニップ内で同期する。中間転写ベルト8上のカラートナー像は二次転写ニップ内で記録シートPの表面上に二次転写される(二次転写工程)。
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト8表面には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。二次転写ニップを通過した中間転写ベルト8表面は、中間転写ベルトクリーニング装置との対向部に達する。この対向部で、中間転写ベルト8上に付着した転写残トナーが中間転写ベルトクリーニング装置に回収されて、中間転写ベルト8における一連の転写プロセスが終了する。
二次転写ニップでカラートナー像が二次転写された記録シートPは、定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ローラと加圧ローラとによって形成される定着ニップにて、熱と圧力とによってカラー画像が記録シートP上に定着される(定着工程)。
定着装置20を通過した記録シートPは、排紙ローラ対25によってプリンタ部100の外に出力画像として排出されて、排紙トレイ30上にスタックされる。
図4は、現像装置5を示す拡大構成図である。現像装置5は、現像ローラ収容部62内に現像ローラ50を収容している。この現像ローラ50は、非磁性パイプからなる回転可能な現像スリーブ51と、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラ55とを具備している。マグネットローラ55は、ローラ周方向に並ぶ、第一磁極P1(S極)、第二磁極P2(N極)、第三磁極P3(S極)、第四磁極P4(N極)、及び、第五磁極P5(N極)を具備しており、これらの磁極により、現像スリーブ51の周囲には複数の磁界が形成されている。
同図において、P1〜P5は、各磁極によって形成される磁場の現像スリーブ51の表面上における法線方向磁束密度(絶対値)の分布を点線で示すものである。第一磁極P1の現像スリーブ51表面上における磁束密度は110[mT]である。また、第二磁極P2の磁束密度は70[mT]、第三磁極密度P3の磁束密度は62[mT]、第四磁極密度P4の磁束密度は42[mT]、第五磁極P5の磁束密度は72[mT]である。
現像ローラ収容部62内において、現像剤に与えるストレスは、第五磁極P5の磁力(前述した磁束密度)や、P5周りのケーシングやドクタの形状によって大きく左右される。第五磁極P5の磁力が小さくなるほど、現像剤に付与されるストレスが小さくなる。また第五磁極P5の磁力の及ぶ範囲に存在する現像剤の量が少なくなるほど、現像剤に付与されるストレスが小さくなる。
現像スリーブ51の表面は、現像剤を良好に担持できるように、回転軸方向の現像有効領域にブラスト処理が施されている。現像スリーブ51の表面の一部は、現像ローラ収容部62を形成するケーシング60の開口部61から部分的に露出している。その露出部分と、感光体1とが対向する領域が現像領域であり、この現像領域で現像が行われる。
現像装置5は、現像スリーブ51の周方向における全域のうち、後述する供給回収搬送路53aとの対向位置を通過した後、現像領域に進入する前の箇所に対し、所定の間隙(ドクターギャップ)を介して対向するドクターブレード51を有している。このドクターブレード51は、現像スリーブ51の表面上に形成されて現像領域に進入する前の現像剤層の層厚を所定の厚みに規制する。
また、ドクターブレード52の現像スリーブ51の表面移動方向上流側に隣接して磁性板58が設けられている。この磁性板58の基底部は、ドクターブレード52の上流側側面に固定されている。また、磁性板58の先端部は、基底部から折れ曲がっており、ドクターブレード52よりもスリーブ回転方向の上流側で現像スリーブ51の表面と対向する対向面58aを具備している。
現像ローラ収容部62の下方には、磁性キャリア(以下、単にキャリアとも言う)とトナーとを含有する現像剤Gを搬送する供給回収搬送路53aが配設されている。また、供給回収搬送路53aの図中左側方には、現像剤Gを搬送する撹拌搬送路54aが配設されている。撹拌搬送路54aは、その上方に形成された開口部を介してトナー補給口(図3の64)に連通している。現像スリーブ51側の供給回収搬送路53aと、トナー補給口64側の撹拌搬送路54aとは、仕切壁57によって仕切られている。但し、両搬送路の長手方向(図の紙面に直交する方向)の両端部は、それぞれ仕切壁57に設けられた開口により、両搬送路が互いに連通している。
現像スリーブ51側の供給回収搬送路53aは、現像ローラ収容部62との連通口59を有している。また、供給回収搬送路53a内には、回転駆動に伴って現像剤Gを撹拌しながら回転軸線方向に搬送する供給回収スクリュー53が配設されている。また、撹拌搬送路54a内には、回転駆動に伴って現像剤Gを撹拌しながら回転軸線方向に搬送する供給回収スクリュー53が配設されている。これら二つのスクリューは、互いに回転軸線方向において逆方向に現像剤を搬送する。
供給回収搬送路53a内では、供給回収スクリュー53の回転駆動に伴って、現像剤Gが回転軸線方向の一端側から他端側に向けて搬送され、他端付近において、供給回収搬送路53aから撹拌搬送路54aに受け渡される。そして、撹拌搬送路54a内では、撹拌搬送スクリュー54の回転駆動に伴って、現像剤Gが回転軸線方向の他端側から一端側に向けて搬送され、一端付近において、撹拌搬送路54aから供給回収搬送路53aに受け渡される。このように、現像剤Gは、撹拌搬送路54aと供給回収搬送路53aとの間で循環搬送される。即ち、現像装置5においては、撹拌搬送路54a及び供給回収搬送路53aの組み合わせが、現像剤を循環搬送する循環搬送路として機能している。
現像装置5内の現像剤Gは、現像剤中のトナーの割合(トナー濃度)が所定の範囲内になるように調整される。詳しくは、現像に伴う現像剤のトナー濃度の低下に応じて、トナー補給装置が駆動され、トナー容器11(図1参照)に収容されているトナーが、トナー補給装置を介して撹拌搬送路54a内に適量補給される。撹拌搬送路54aの底面には、現像剤のトナー濃度を検知するための濃度検知センサー56が設けられている。この濃度検知センサー56が循環搬送路内の現像剤のトナー濃度不足を検知すると、トナー補給装置が駆動され、トナー容器11(図1参照)からトナー補給口64を介して撹拌搬送路54a内にトナーが補給される。
供給回収搬送路53a内では、供給回収スクリュー53の回転駆動に伴って攪拌搬送される現像剤Gのうち、マグネットローラ55の第五磁極P5の磁力によって現像スリーブ51に引き寄せられた現像剤Gが連通口59を通って現像スリーブ51上に担持される。このとき第五磁極P5によって受けるストレスが、現像剤に対して付与されるストレスの中で比較的強い。現像装置5内で現像剤のキャリアに付与するストレスを一定以上に調整するためには、第五磁極P5の磁力を比較的大きくし、第五磁極P5の磁力影響範囲に現像剤を多く存在させるようにするとよい。
第五磁極P5の磁極によって引き寄せられた現像剤Gは、現像スリーブ51表面上の供給位置である汲み上げ部511に担持される。現像剤G中のキャリアは、現像スリーブ51に内包されるマグネットローラ55の磁力により現像スリーブ51にひきつけられ、現像スリーブ51上に担持される。 また、現像剤G中のトナーは現像剤Gが攪拌されることでキャリアとの摩擦帯電により、キャリアとは逆極性に帯電し、キャリアとの間には静電力が働くため、キャリアに吸着してキャリアとともに現像スリーブ51上に担持される。そして、現像スリーブ51に担持された現像剤Gは、現像スリーブ51の回転に伴い、現像ローラ50の周りを移動する。
現像スリーブ51に担持された現像剤Gは、現像スリーブ51の回転に伴い、図2中の反時計回り方向に搬送され、ドクターブレード52と現像スリーブ51の表面とが対向する位置に到達する。そして、現像スリーブ51上の現像剤Gは、この位置でドクターブレード52と現像スリーブ51の表面との間の隙間(ドクターギャップ)を通過することで層厚が規制されて現像剤量が適量化される。ドクターブレード52の上流側には、磁性板58の対向面58aが現像スリーブ51に対向するよう設けられている。この対向面58aの作用により、ドクターブレード52部における現像剤の攪拌機能を向上させることができる。
ドクターブレード52を通過した現像スリーブ51上の現像剤Gは、感光体1と対向する現像領域に搬送されると、マグネットローラ55の磁力によって現像スリーブ51上で穂立ちした状態になる。現像スリーブ51は、現像領域において感光体1の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像スリーブ51上に穂立ちしたキャリアは、感光体1の表面を摺擦しながら、キャリア表面に付着したトナーを感光体1の表面に供給する。現像スリーブ51には、電源から現像バイアスが印加されていることから、現像領域には現像電界が形成されている。
感光体1上の静電潜像と現像スリーブ51との間では、現像スリーブ51上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働く。これにより、現像スリーブ51上のトナーは、感光体1上の静電潜像に付着する。この付着により、感光体1上の静電潜像は現像されてトナー像になる。その後、現像スリーブ51上のトナーが消費された現像剤Gは、回転に伴って現像ローラ収容部62の上方に達して、この位置で現像スリーブ51表面から離脱する。
現像スリーブ51の表面上の現像剤Gは、互いに隣り合う同極性(N極)の磁極である第四磁極P4と第五磁極P5とによって構成される剤離れ磁極となる変極点512における磁力による作用によって現像スリーブ51の表面上から離脱する。
実施形態に係る複写機では、現像剤に補給されるトナーとして、低温定着トナーを用いるようになっている。低温定着トナーは、比較的低い加熱温度で軟化して定着されることから、定着温度を低くして低コスト化を図ることができる。省エネルギー化が進められる近年において、好んで用いられるトナーである。
なお、複写機や現像装置5が、特定の「トナーを用いる」態様は、例えば、複写機や現像装置5が特定のトナーを収容した状態で出荷されるなどする態様のことを意味する。取扱説明書において、セットするトナーとして、特定のトナーの商品名や商品番号が記載されている態様も、その特定の「トナーを用いる」態様に該当する。複写機や現像装置5が、特定の「キャリアを用いる」態様も、同様である。
低温定着性に優れた低温定着トナーを製造する方法としては、トナーバインダーとして、ウレタン変性されたポリエステルの伸長反応物からトナーを製造する方法が開示されている(例えば特開平11−133665号公報)。また、小粒径トナーとした場合の粉体流動性及び転写性に優れると共に、耐熱保存性、低温定着性及び耐高温オフセット性のいずれにも優れたトナーの製造方法も開示されている(例えば特開2002−287400号公報や特開2002−351143号公報)。また、安定した分子量分布のトナーバインダーを製造し、低温定着性及び耐高温オフセット性を両立させるための、熟成工程を有するトナーの製造方法も開示されている(例えば特許第2579150号公報や特開2001−158819号公報)。また、良好な低温定着性を得る目的で、結晶性ポリエステル樹脂を含む樹脂、及び離型剤を含有し、樹脂とワックスが互いに非相溶で海島状の相分離構造を有するトナーも開示されている(例えば特開2004−46095号公報)。また、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤及びグラフト重合体を含有するトナーも提案されている(例えば特開2007−271789号公報)。これらの技術は、結晶性ポリエステル樹脂が非晶質ポリエステル樹脂に比べて急速に溶融することから、低温定着化を実現することが可能である。しかし、海島状の相分離構造における島にあたる結晶性ポリエステル樹脂が融解しても、大部分の海にあたる非晶質ポリエステル樹脂は未だ融解しない。そうすると、結晶性ポリエステル樹脂、及び非晶質ポリエステル樹脂の双方がある程度融解しないと定着しないため、これらの技術は、近年更に高まっている高いレベルの低温定着性を満足するものでない。
更に高いレベルの低温定着性を得る目的で、ガラス転移温度が非常に低い分岐構造を有する反応性前駆体と硬化剤との反応によって得られる非晶質ポリエステルを含むトナーとしては、例えば特許第5408210号公報に記載のものが知られている。このトナーは、ガラス転移温度が非常に低いポリエステル樹脂が低温で変形する性質を利用し、定着時の加熱、及び加圧に対して変形し、より低温で紙などの記録媒体に接着し易く性質を利用して高いレベルの低温定着性を実現している。また、反応性前駆体が非線状であることから、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが、流動しないというゴム的な性質を有する。このため、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性の保持が可能となる。
実施形態に係る複写機は、母材樹脂成分のスペント層がキャリア表面に発生し易くなる低温定着トナーを用いても、キャリアのトナー帯電性能を長期間に渡って安定して良好に維持するための特徴的な構成(詳細は後述する)を備えている。但し、低温定着性をもたないトナーであっても、トナーに流動性を付与するなどの目的で、シリカや酸化チタンなどに代表される多量の外添剤を入れた結果、外添剤がキャリアにスペントしてしまうようなものにおいても、同様の効果がある。また、低温定着化による母材樹脂の耐ストレス性低下をカバーするために、シリカや酸化チタンなどに代表される多量の外添剤を添加したトナーは、母材樹脂のスペントを抑制することができる代わりに、外添剤のスペントを起こし易くなる。このようなトナーを用いる場合にも、同様の効果を発揮することができる。
実施形態に係る複写機に用いられるトナーは、非晶質性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、さらに必要に応じて着色剤などのその他の成分を含有している。低温定着性を向上させるために、ポリエステル樹脂(例えば、非晶質ポリエステル樹脂)を結晶性ポリエステル樹脂と共に溶融するように、ガラス転移温度を低くしたり、分子量を小さくしたりすることが考えられる。しかし、単純にポリエステル樹脂のガラス転移温度を低くしたり、分子量を小さくしたりすると、溶融粘性を低下させたときに、トナーの耐熱保存性、及び定着時の高温オフセット性を悪化させる可能性が高い。これに対し、実施形態に係る複写機に用いられるトナーの母材樹脂に使用されるポリエステル樹脂は、後述する非晶質ポリエステル樹脂A、非晶質ポリエステル樹脂B、及び結晶性ポリエステル樹脂Cを含有している。
後述する非晶質ポリエステル樹脂Aは、ガラス転移温度が非常に低いため、低温で変形する性質を有し、定着時の過熱、および加圧に対して変形し、より低温で紙などの記録媒体に接着し易くなる性質を有する。また、反応性前駆体が非線状であることから、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが、流動しないというゴム的な性質を有する。これらの結果、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性の保持が容易に可能となる。なお、前記非晶質ポリエステル樹脂Aが凝集エネルギーの高いウレタン結合またはウレア結合を有する場合は、紙などの記録媒体への接着性がより優れる。また、ウレタン結合またはウレア結合は擬似架橋点のような挙動を示すことから、ゴム的性質はより強くなり、結果トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性に優れる。即ち、実施形態に係る複写機に用いられるトナーは、ガラス転移温度が超低音領域に存在するが、溶融粘性が高く流動しづらい非晶質ポリエステル樹脂Aと、非晶質ポリエステル樹脂B及び結晶性ポリエステル樹脂Cとを含有していることで、従来よりもガラス転移温度を低く設定しても、耐熱保存性、耐高温オフセット性を保持することが可能となる。
上述した非晶質ポリエステル樹脂Aは、非線状の反応性前駆体と硬化剤との反応により得られ、且つガラス転移温度が−60[℃]以上、0℃未満になっている。非晶質ポリエステル樹脂Aは、紙などの記録シートへの接着性がより優れる点から、ウレタン結合およびウレア結合の少なくとも何れかを含有している。非晶質ポリエステル樹脂Aがウレタン結合及びウレア結合の少なくとも何れか一方を含有することにより、ウレタン結合またはウレア結合が擬似架橋点のような挙動を示し、非晶質ポリエステル樹脂Aのゴム的性質を強くする。これにより、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性を向上させる。このような非晶質ポリエステル樹脂Aの詳細については、特開2013−225096号公報などに記載されている。
ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度Tgを低くし、低温で変形する性質を付与し易くするために、ポリエステル樹脂Aには、ジオール成分を含有させることが望ましい。このジオール成分は、炭素数が3以上、12以下の脂肪族ジオールを含有することが好ましく、炭素数は4以上であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂Aは、炭素数3〜12の脂肪族ジオールを50[mol%]以上含有することが好ましく、含有率は、80[mol%]以上であることがより好ましく、90mol[%以上]以上であることが更に好ましい。炭素数3〜12の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどを例示することができる。また、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどであってもよい。
ポリエステル樹脂Aに含まれる前記ジオール成分は、炭素数4以上、12以下の脂肪族ジオールであって、ジオール成分の主鎖となる部分の炭素数が、奇数であり、アルキル基を側鎖に有するものであることが好ましい。主鎖となる部分の炭素数が奇数であり、アルキル基を側鎖に有する炭素数4〜12の脂肪族ジオールとしては、「HO−(CR1R2)−OH」という化学式で表される脂肪族ジオールを例示することができる。この化学式において、R1、R2は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。nは、3〜9の奇数を表す。n個の繰り返し単位において、R1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、n個の繰り返し単位において、R2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度Tgを低くし、低温で変形する性質を付与し易くするために、ポリエステル樹脂Aには、全アルコール成分中に炭素数3以上、12以下の脂肪族ジオールを50[mol%]以上含有させることが好ましい。また、炭素数4以上、12以下の脂肪族ジカルボン酸を30[mol%]以上含有させることが好ましい。炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などを例示することができる。
ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどを例示することができる。また、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどであってもよい。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどであってもよい。また、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール(脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの)であってもよい。また、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物であってもよい。そのブスフェノール類は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものである。これらの中でも、炭素数4〜12の脂肪族ジオールが好ましい。これらのジオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、これらの無水物を用いてもよいし、低級(炭素数1〜3)アルキルエステル化物を用いてもよいし、ハロゲン化物を用いてもよい。前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。前記炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。これらのジカルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前述した3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。また、前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。また、前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネートなどが挙げられる。前記ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。また、前記3価以上のイソシアネートとしては、例えばリジントリイソシアネート、又は3価以上のアルコールをジイソシアネートで反応させたもの、ポリイソシアネートを反応させ、イソシアヌレート化させたものなどが挙げられる。中でも、より強い架橋点として作用し、耐熱保存性、耐高温オフセット性に更に優れることから、イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネートを使用することが好ましい。3価のイソシアネート成分は、前記トナーのTHF不溶分中の樹脂組成分に対して0.2[mol]%以上、1.0mol[%]以下の含有率であることが好ましい。3価のイソシアネート成分により架橋構造を形成すると、架橋点におけるウレタンまたはウレア結合による擬似架橋により分子鎖の凝集力が高くなることにより、少ない架橋密度でも良好な耐熱保存性を発揮して、低温定着性を高いレベルで達成することができる。3価のイソシアネート成分が0.2[mol%]未満であると、分岐構造の形成が不十分になり、網目構造が不均一になる部分が起点となることにより耐熱保存性、耐フィルミング性が悪化することがある。また、3価のイソシアネート成分が1.0[mol]%より大きいと、緻密な架橋構造を形成することによって低温定着性が悪化することがある。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどを例示することができる。また、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどでもよい。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。また、前記芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニルなどを例示することができる。また、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエーテルなどでもよい。
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、前記イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化剤としては、ポリエステルプレポリマーと反応し、前記ポリエステル樹脂Aを生成できる硬化剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、活性水素基含有化合物などが挙げられる。
前記活性水素基含有化合物における活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウレア結合を形成可能な点で、アミン類が好ましい。また、前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。また、前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。また、前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。また、前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。また、前記3価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。また、前記アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。また、前記アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。また、前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。また、前記アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度Tgは、−60[℃]以上、0[℃]以下であることが好ましく、−40[℃]以上、−20[℃]以下でああることがより好ましい。前記ガラス転移温度Tgが、−60[℃]未満であると、低温でのトナーの流動が抑制できずに、耐熱保存性が悪化したり、耐フィルミング性が悪化したりすることがある。また、前記ガラス転移温度Tgが、0[℃]を超えると、定着時の加熱及び加圧によるトナーが十分に変形できずに、低温定着性が不十分であることがある。
ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、20,000以上、1,000,000以下が好ましい。その重量平均分子量は、前記反応性前駆体と前記硬化剤とを反応させた反応生成物の分子量である。この重量平均分子量が、20,000未満であると、トナーが低温で流動し易くなり、耐熱保存性に劣ることがある。また溶融時の粘性が低くなり、高温オフセット性が低下することがある。
上述した非晶質ポリエステル樹脂Bは、ガラス転移温度Tgが40[℃]以上、70[℃]以下のポリエステル樹脂であることが好ましい。そして、ジオール成分及びジカルボン酸成分を含む。また、前記他のポリエステル樹脂は、線状のポリエステル樹脂であることが好ましい。
また、前記他のポリエステル樹脂としては、未変性ポリエステル樹脂であることが好ましい。未変性ポリエステル樹脂は、次のようなポリエステル樹脂である。即ち、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られ、且つイソシアネート化合物などによって変性されていないポリエステル樹脂である。このようなポリエステル樹脂の詳細については、特開2013−225096などに記載されている。
前記多価アルコールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。前記ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物などを例示することができる。ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物である。ビスフェノールAとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。前記ジカルボン酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸;ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸価や水酸基価を調整する目的で、前記他のポリエステル樹脂には、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び3価以上のアルコールの少なくとも何れかを含有させてもよい。前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。また、前記3価以上のアルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂Bの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、分子量が低すぎる場合、トナーの耐熱保存性、現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量が高すぎる場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣ることがある。このため、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、重量平均分子量(Mw)3,000〜10,000であることが好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、1,000〜4,000であることが好ましい。また、Mw/Mnは、1.0〜4.0であることが好ましい。また、前記重量平均分子量(Mw)は、4,000〜7,000であることがより好ましい。また、前記数平均分子量(Mn)は、1,500〜3,000であることがより好ましい。また、前記Mw/Mnは、1.0〜3.5であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂Bの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、1[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが好ましく、5[mgKOH/g]〜30[mgKOH/g]であることがより好ましい。前記酸価が、1[mgKOH/g]以上であることにより、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。前記酸価が、50[mgKOH/g]を超えると、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することがある。
ポリエステル樹脂Bの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5[mgKOH/g]以上であることが好ましい。
ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度Tgは、40[℃]以上、70[℃]以下であることが好ましく、50[℃]以上、60[℃]以下であることがより好ましい。前記ガラス転移温度Tgが、40[℃]未満であると、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が劣り、耐フィルミング性が悪化することがある。また、前記ガラス転移温度Tgが、70[℃]を超えると、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が十分ではなく、低温定着性が不十分になることがある。
ポリエステル樹脂Aやポリエステル樹脂Bの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などによって確認することができる。
ポリエステル樹脂Aやポリエステル樹脂Bの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。トナー100質量部に対して、ポリエステル樹脂Aを、5質量部〜25質量部含有させることが好ましく、10質量部〜20質量部であることがより好ましい。前記含有量が、5質量部未満であると、低温定着性、及び耐高温オフセット性が悪化することがある。また、25質量部を超えると、耐熱保存性の悪化、及び定着後に得られる画像の光沢度が低下することがある。前記含有量が、前述したような、より好ましい範囲内であると、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性の全てに優れる点で有利である。
一方、トナー100質量部に対して、ポリエステル樹脂Bを、50質量部〜90質量部の割合で含有させることが好ましく、60質量部〜80質量部であることがより好ましい。前記含有量が、50質量部未満であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化し、画像のかぶり、乱れを生じやすくなることがある。また、90質量部を超えると、ポリエステル樹脂Aの含有量が少なくなるため、低温定着性に劣ることがある。前記含有量が、前述したような、より好ましい範囲であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
上述した結晶性ポリエステル樹脂Cは、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。このような特性を有する結晶性ポリエステル樹脂Cを前記ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bとともに含めることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性を向上させる。そして、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下(シャープメルト)を誘発させ、それに伴い前記ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで定着する。よって、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
結晶性ポリエステル樹脂Cは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものである。ポリエステル樹脂を変性させたもの、例えば、前記プレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
結晶性ポリエステル樹脂Cの詳細については、特開2013−225096号公報などに記載されている。
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の有無については、結晶解析X線回折装置(例えばX’Pert Pro MRD フィリッップス社)によって確認することができる。具体的には、まず、対象試料を乳鉢によりすり潰し試料粉体を作成し、得られた試料粉体を試料ホルダーに均一に塗布する。その後、回折装置内に試料ホルダーをセットして、回折スペクトルを測定する。測定結果において、回折ピークに対して20°<2θ<25°の範囲に得られた複数のピークのうち、最もピーク強度が大きいピークのピーク半値幅が2.0以下である場合には、結晶性を有すると判断していよい。結晶性ポリエステル樹脂に対し、前述のような結晶性を有さないポリエステル樹脂が、非晶質ポリエステル樹脂である。
X線回折の具体的な測定条件としては、例えば次の通りである。
・Tension kV:45kV
・Current:40mA
・MPSS
・Upper
・Gonio
・Scanmode:continuos
・Start angle:3°
・End angle:35°
・Angle Step:0.02°
・Lucident beam optics
・Divergence slit:Div slit 1/2
・Difflection beam optics
・Anti scatter slit:As Fixed 1/2
・Receiving slit:Prog rec slit
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上、12以下である直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。炭素数としては12以下であることがより好ましい。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオールなどを例示することができる。また、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどでもよい。また、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどでも良い。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、次のものが好ましい。即ち、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。前記2価のカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸などを例示することができる。また、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などでもよい。また、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸などでもよい。また、それらの無水物や低級(炭素数1〜3)アルキルエステルであってもよい。
前記3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1〜3)アルキルエステルなどが挙げられる。また、前記多価カルボン酸としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸が含まれていてもよい。更に、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸を含有してもよい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂Cは、炭素数4以上、12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上、12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されるものであることが好ましい。即ち、炭素数4以上、12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上、12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有するものであることが好ましい。このような結晶性ポリエステル樹脂Cは、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮することができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60[℃]以上、80[℃]以下であることが好ましい。前記融点が、60[℃]未満であると、結晶性ポリエステル樹脂Cが低温で溶融し易く、トナーの耐熱保存性が低下することがある。また、80[℃]を超えると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下することがある。
結晶性ポリエステル樹脂Cの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が低下するという観点から、次のような分子量であることが好ましい。即ち、オルトジクロロベンゼンの可溶分のGPC測定において、重量平均分子量(Mw)が3,000〜30,000であり、数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000であり、Mw/Mnが1.0〜10であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が5,000〜15,000、数平均分子量(Mn)が2,000〜10,000、Mw/Mnが1.0〜5.0であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Cの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5[mgKOH/g]以上であることが好ましく、10[mgKOH/g]以上であることがより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45[mgKOH/g]以下であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Cの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。所望の温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが好ましく、5[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Cの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などによって確認することができる。簡易的には、赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm−1又は990±10cm−1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法を用いることができる。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、3質量部〜20質量部であることが好ましく、5質量部〜15質量部であることがより好ましい。前記含有量が、3質量部未満であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が不十分なため低温定着性に劣ることがある。また、20質量部を超えると、耐熱保存性が低下したり、画像のかぶりが生じ易くなったりすることがある。前記含有量が、前述した、より好ましい範囲内であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
前記その他の成分としては、例えば、離型剤(離型促進剤)、着色剤、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤などが挙げられる。
前記離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。ロウ類及びワックス類の離型剤としては、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン等の天然ワックスを例示することができる。また、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックスなどの天然ワックスでもよい。これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックスなどでもよい。また、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、次のような結晶性高分子でもよい。即ち、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)など、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子である。これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60[℃]以上、80[℃]以下であることが好ましい。前記融点が、60[℃]未満であると、低温で離型剤が溶融し易くなり、耐熱保存性が劣ることがある。また、前記融点が、80℃を超えると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合でも、離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じ、画像の欠損を生じることがある。
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、2質量部〜10質量部であることが好ましく、3質量部〜8質量部であることがより好ましい。前記含有量が、2質量部未満であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性に劣ることがある。また、10質量部を超えると、耐熱保存性が低下したり、画像のかぶりなどが生じ易くなったりすることがある。前記含有量が、前述した、より好ましい範囲内であると、高画質化、及び定着安定性を向上させる点で有利である。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエローなどを例示することができる。また、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキなどでも良い。また、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッドなどでもよい。また、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)などでも良い。また、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーンなどでも良い。また、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドBなどでも良い。また、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルーなどでも良い。また、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青などでもよい。また、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアンなどでも良い。また、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどでもよい。
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、1質量部〜15質量部であることが好ましく、3質量部〜10質量部であることがより好ましい。
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、前記他のポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができる。このため、乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)などを例示することができる。また、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩などでもよい。商品名として、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89等である。これらは何れも、オリエント化学工業株式会社によって発売されている。また、保土谷化学工業株式会社によって発売されている第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415などでもよい。また、日本カーリット社によって発売されているLRA−901、ホウ素錯体であるLR−147などでもよい。また、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などでもよい。
前記帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部であることが好ましく、0.2質量部〜5質量部であることがより好ましい。前記含有量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後固定化させてもよい。
前記外添剤としては、酸化物微粒子の他に、無機微粒子や疎水化処理無機微粒子を併用することができるが、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が1[nm]〜100[nm]であることが好ましい。平均粒径が5[nm]〜70[nm]の無機微粒子であることがより好ましい。また、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20[nm]以下である無機微粒子を、1種類以上含み、かつ平均粒径が30[nm]以上である無機微粒子を1種類以上含むものであることが好ましい。また、BET法による比表面積が、20[m/g〜500m/g]であることが好ましい。
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、金属酸化物(例えばチタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等)、フルオロポリマーなどを例示することができる。
好適な添加剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナ微粒子などが挙げられる。シリカ微粒子としては、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(何れも日本アエロジル社製)などが挙げられる。また、チタニア微粒子としては、P−25(日本アエロジル社製)、STT−30、STT−65C−S(何れもチタン工業株式会社製)などを例示することができる。また、TAF−140(富士チタン工業株式会社製)、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−150A(何れもテイカ株式会社製)などでもよい。
疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、T−805(日本アエロジル株式会社製)、STT−30A、STT−65S−S(何れもチタン工業株式会社製)、TAF−500T、TAF−1500T(何れも富士チタン工業株式会社製)等が挙げられる。また、MT−100S、MT−100T(何れもテイカ株式会社製)、IT−S(石原産業株式会社製)などでもよい。
疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理されたチタニア微粒子、疎水化処理されたアルミナ微粒子は、例えば、次のようにして得ることが可能である。即ち、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で処理して得ることができる。またシリコーンオイルを必要ならば熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。
前記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。また、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイルなどでもよい。また、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイルなどでもよい。
前記無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土等が挙げられる。また、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などでもよい。これらの中でも、シリカや二酸化チタンが特に好ましい。
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部であることが好ましく、0.3質量部〜3質量部であることがより好ましい。
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100[nm]以下であることが好ましく、3[nm]以上、70[nm]以下であることがより好ましい。この範囲よりも小さいと、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮され難くなる。また前述した範囲より大きいと、感光体表面を不均一に傷つけるので、好ましくない。
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤によって表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用することが特に好ましい。
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01[μm]〜1[μm]であるものが好適である。
実施形態に係る複写機に用いられるトナーは、示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)が、20[℃]以上、50[℃]以下であることが好ましい。一般的なトナーでは、ガラス転移温度Tgが50[℃]以下程度になると、夏場や熱帯地方を想定したトナーの輸送時、及び保管環境での温度変化によりトナーの凝集が発生し易くなる。その結果、トナーボトル中での固化、及び現像機内でのトナーの固着が発生する。また、トナー容器内でのトナー詰りによる補給不良、及び現像機内でのトナー固着による画像異常が発生し易くなる。
また、前記トナーは、低Tg成分であるポリエステル樹脂が非線状であるため、耐熱保存性を保持することができる。特に、上述した化学式表される構造を有するポリエステル樹脂が凝集力の高いウレタン結合又はウレア結合を有する場合には、耐熱保存性を保持する効果がより顕著になる。
昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)が、20[℃]未満であると、耐熱保存性の低下、現像機内でのブロッキング、及び感光体へのフィルミングが発生し易くなる。また、50[℃]を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
前記トナーにおいて、示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目のガラス転移温度(Tg1st)と昇温2回目のガラス転移温度(Tg2nd)との差(Tg1st−Tg2nd)は、目的に応じて適宜選択することができる。但し、10[℃]以上であることがより好ましい。前記差の上限は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記差(Tg1st−Tg2nd)は、50[℃]以下であることが好ましい。
前記差が10[℃]以上であると、より低温定着性に優れる点で有利である。また、前記差が10[℃]以上であることは、加熱前(昇温1回目の前)には非相溶状態で存在していた前記結晶性ポリエステル樹脂と、前記ポリエステル樹脂とが、加熱後(昇温1回目の後)には相溶状態になることを意味する。なお、加熱後の相溶状態は、完全な相溶状態である必要はない。
前記トナーの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60[℃]以上、80[℃]以下であることが好ましい。
前記トナーは、50[℃]の貯蔵弾性率が1.0×10[Pa]以上であることが望ましい。また、80[℃]の損失弾性率が8.0×10[Pa]以上、5.0×10[Pa]以下であることが望ましい。また、160[℃]の損失弾性率が2.0×10[Pa]以上、3.0×10[Pa]以下であることが望ましい。
貯蔵弾性率の50[℃]という温度は、連続画像形成動作を行った画像形成装置において、現像剤担持体、感光体、及びそれらの周辺部材の表面温度が達する一般的な温度であり、トナーはこの温度域で現像工程に供されるのが一般的である。50[℃]の環境下で変形し易いトナーであると、現像部でトナー同士を凝集させたり、現像剤担持体に固着したりして、画像上にトナー凝集物由来の点状の汚れや、トナーの感光体への供給異常による白抜けが発生する。また、耐熱保存性が低下する。従って、トナーには、50[℃]において、変形し難いという特性が望まれるので、50[℃]での貯蔵弾性率は1.0×10[Pa]以上であることが望まれるのである。
なお、ガラス転移温度Tgの高い樹脂を母材樹脂として用いたり、弾性の低い結晶性樹脂の量を制御したりことで、トナーの50[℃]の貯蔵弾性率を1.0×10[Pa]以上にすることができる。
一方、優れた低温定着性を達成するためには、トナーの損失弾性率を比較的低くすることが望まれる。このため、トナーの80[℃]の損失弾性率は、8.0×10[Pa]以上、5.0×10[Pa]以下であることが望まれる。優れた低温定着性を達成するためには、トナーの溶融する温度を下げる必要がある。80[℃]という温度は、高温高湿環境で連続画像形成動作を実行した際の現像剤担持体、感光体、及びそれらの周辺部材の表面温度が達する温度である。このため、80[℃]の損失弾性率が5.0×10[Pa]未満である比較的柔らかいトナーでは、母体樹脂がスペントし易くなり、キャリアの経時帯電低下を引き起こすことがある。
トナーの母材樹脂が、非晶質ポリエステル樹脂Aと、ガラス転移温度が40[℃]以上、70[℃]以下である非晶質ポリエステル樹脂Bとを含有することで、良好な低温定着を実現することができる。また、非晶質ポリエステル樹脂Aと非晶質ポリエステル樹脂Bとは、相溶することが好ましい。また、非晶質ポリエステル樹脂Aにおける、分子量、ガラス転移温度などの特性値や配合量を制御したり、結晶性ポリエステル樹脂Cの融点などの特性値や配合量を制御したりすることにより、次のことが可能になる。即ち、トナーの80[℃]の損失弾性率を8.0×10[Pa]以上、5.0×10[Pa]以下にすることができる。
トナーの80[℃]の損失弾性率が、8.0×10[Pa]未満であると、耐熱保存性が不十分で保管後のトナーの流動性や、マシン(画像形成装置)の中で熱がかかった際に固化し搬送不良が起きる原因となる。
高い耐高温オフセット性、十分に広い定着温度幅、及び定着温度領域で十分に高いトナーの延展性を確保し優れた色再現性を得るためには、トナーの160[℃]の損失弾性率が2.0×10[Pa]以上、3.0×10[Pa]以下であることが望ましい。なお、一般に、定着時は、紙などの記録媒体に熱を奪われるため定着温度より20[℃]くらい低い温度がトナーにかかると考えられる。160[℃]の損失弾性率が、2.0×10[Pa]以上、3.0×10[Pa]以下であるトナーは、例えば、ガラス転移温度が超低音領域にあり、且つ溶融粘性が高く流動し難い非晶質ポリエステル樹脂Aを用いることにより好適に実現できる。
160[℃]の損失弾性率が2.0×10[Pa]未満であると、高温オフセットが起きる温度が下がるので十分な定着温度幅を確保できなくなる。また、160[℃]の損失弾性率が3.0×10[Pa]を超えると、定着温度幅を広く確保できる一方で、トナーの延展性が乏しくなるので、結果として定着時のトナーの色再現域が狭くなる(即ち、色再現性が低下する)。160[℃]の損失弾性率は、1.0×10[Pa]以下であることが特に好ましい。
トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3[μm]以上、7[μm]以下であることが好ましい。また、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は1.2以下であることが好ましい。また、体積平均粒径が2[μm]以下である成分を1[個数%]以上、10[個数%]以下含有することが好ましい。
前記ポリエステル樹脂、前記結晶性ポリエステル樹脂、及び離型剤のSP値、ガラス転移温度Tg、酸価、水酸基価、分子量、及び融点は、それぞれ、それ自体を測定してもよいが、次のようにして算出してもよい。即ち、実際のトナーからゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等によって各成分を分離し、得られた各成分について後述の分析手法を採ることで、SP値、Tg、分子量、融点、構成成分の質量比を算出してもよい。
GPCによる各成分の分離は、例えば、次のようにして行うことができる。即ち、THF(テトラヒドロフラン)を移動相としたGPC測定において、溶出液についてフラクションコレクターなどにより分取を行い、溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめる。まとめた溶出液を、エバポレーターなどにより濃縮及び乾燥した後、固形分を重クロロホルム又は重THFなどの重溶媒に溶解させ、1H−NMR測定を行い、各元素の積分比率から、溶出成分における樹脂の構成モノマー比率を算出する。
他の手法としては、溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウムなどにより加水分解を行い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析することで構成モノマー比率を算出する方法を挙げることができる。なお、トナーの製造方法が、前記非線状の反応性前駆体と前記硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応によりポリエステル樹脂を生成しながら、トナー母体粒子を形成するものである場合には、次のようにしてもよい。即ち、実際のトナーからGPC等によって各成分を分離し、分離後のポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgなどを求めてもよい。あるいは、別途、前記非線状の反応性前駆体と前記硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応によりポリエステル樹脂を合成し、その合成したポリエステル樹脂からガラス転移温度Tgなどを測定してもよい。
トナーを分析する際の各成分の分離方法としては、次のような方法を例示することができる。即ち、まず、トナー1[g]を100[ml]のTHF中に投入し、25[℃]の条件下で、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。これを目開き0.2[μm]のメンブランフィルターでろ過し、トナー中のTHF可溶分を得る。次いで、これをTHFに溶解してGPC測定用の試料とし、前述の各樹脂の分子量測定に用いるGPCに注入する。一方、GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置して、所定のカウントごとに溶出液を分取しておき、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得る。次いで、各溶出分について、1[ml]の重クロロホルムに30[mg]のサンプルを溶解させ、基準物質として0.05[体積%]のテトラメチルシラン(TMS)を添加する。溶液を5[mm]径のNMR測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製JNM−AL400)を用い、23[℃]〜25[℃]の温度下、128回の積算を行い、スペクトルを得る。トナーに含まれるポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂などのモノマー組成、及び構成比率は得られたスペクトルのピーク積分比率から、各種の数値を求めることができる。
具体的には、次のようにピークの帰属を行い、それぞれの積分比から構成モノマーの成分比率を求めればよい。即ち、ピークの帰属については、例えば、次のようにする。
・8.25[ppm]付近:トリメリット酸のベンゼン環由来(水素1個分)
・8.07[ppm]〜8.10[ppm]付近:テレフタル酸のベンゼン環由来(水素4個分)
・7.1[ppm]〜7.25[ppm]付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)
・6.8[ppm]付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)及びフマル酸の二重結合由来(水素2個分)
・5.2[ppm]〜5.4[ppm]付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチン由来(水素1個分)
・3.7[ppm]〜4.7[ppm]付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素2個分)及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素4個分)
・1.6[ppm付近]:ビスフェノールAのメチル基由来(水素6個分)
これらの結果から、例えば、上述した化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂が90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を同化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂として扱うことができる。また、同様に前記他のポリエステル樹脂が90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を前記他のポリエステル樹脂として扱うことができる。また、前記結晶性ポリエステル樹脂が90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を前記結晶性ポリエステル樹脂として扱うことができる。
トナーのTHF不溶分の抽出は、例えば、次のようにして行うことができる。即ち、40重量部のTHFに対して1重量部のトナーを添加し6時間還流した後に、遠心分離機により不溶成分を沈降させて、不溶成分と上澄み液とを分離する。前記不溶成分を40[℃]、20時間乾燥させて、THF不溶分を得る。前記THF不溶分は、非線状のポリエステル樹脂に該当する。従って、前記THF不溶分には、3価のイソシアネートに由来する構造部分が複数存在する。
THF不溶分中の組成は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより分析することができる。簡易的には、メチル化反応試薬を用いた熱分解同時メチル化GC−MS法により、例えば以下の条件で分析することができる。
・装置名:島津製作所 QP2010 フロンティアラボPy2020D
・データ解析ソフト:島津製作所製 GCMSsolution
・加熱温度:280℃
・反応熱分解温度:300℃
・カラム名:Ultra ALLOY−5 L=30[m]、ID=0.25[mm]、Film=0.25[μm]
・恒温槽温度:50℃(保持1分)〜10℃/min〜330℃(保持11分)
・キャリアガス:53.6[kPa]で一定、He 1.0[ml/min]
・注入モード:Split(1:100)
・イオン化法:EI法(70eV)
・測定モード:スキャンモード
・ライブラリー:NIST 20 MASS SPECTRAL
樹脂の水酸基価は、JIS K0070−1966に準拠した方法を用いて測定することができる。具体的には、まず、試料0.5[g]を100[ml]のメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5[ml]を加える。次に、100±5℃の温浴中で1時間〜2時間加熱した後、フラスコを温浴から取り出して放冷する。更に、水を加えて振り動かして無水酢酸を分解する。次に、無水酢酸を完全に分解させるために、再びフラスコを温浴中で10分間以上加熱して放冷した後、有機溶剤でフラスコの壁を十分に洗う。更に、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113−SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23[℃]で水酸基価を測定する。そして、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120[ml]とエタノール30[ml]との混合溶媒を用いる。このとき、測定条件は、以下の通りである。
・Stir Speed:25[%]
・Time:15[s]
・EQP titration Titrant/Sensor Titrant CH3ONa
・Concentration:0.1[mol/l]
・Sensor DG115
・Unit of measurement mV
・Predispensing to volume:1.0[ml]
・Wait time[s] 0
・Titrant addition Dynamic
・dE(set):8.0[mV]
・dV(min):0.03[mL]
・dV(max)[mL] 0.5
・Measure mode Equilibrium controlled
・dE[mV] 0.5
・dt[s] 1.0
・t(min)[s] 2.0
・t(max)[s] 20.0
・Recognition Threshold 100.0
・Steepest jump only No
・Range No
・Tendency None
・Termination at maximum volume[mL] 10.0
・at potential No
・at slope No
・after number EQPs Yes n=1
・comb.termination conditions No
・Evaluation Procedure Standard
・Potential1 No
・Potential2 No
・Stop for reevaluation No
また、酸価については、JIS K0070−1992に準拠した方法を用いて測定することができる。具体的には、まず、試料0.5[g](酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120[ml]に添加して、23℃で約10時間撹拌することにより溶解させる。次に、エタノール30[ml]を添加して試料溶液とする。なお、試料が溶解しない場合は、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いる。さらに、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113−SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23[℃]で酸価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120[ml]とエタノール30[ml]の混合溶媒を用いる。このとき、測定条件は、上記した水酸基価の場合と同様である。
なお、予め標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、酸価[mgKOH/g]=滴定量[mL]×N×56.1[mg/mL]/試料[g](Nは0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクター)により酸価を算出する。
物質の融点やガラス転移温度Tgは、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q−200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度Tgは、次のように測定する。まず、対象試料約5.0[mg]をアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、−80[℃]から昇温速度10[℃/min]にて150[℃]まで加熱する(昇温1回目)。その後、150[℃]から降温速度10[℃/min]にて−80[℃]まで冷却させ、更に昇温速度10[℃/min]にて150[℃]まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q−200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。得られるDSC曲線から、Q−200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
また、得られるDSC曲線から、Q−200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。
対象試料としてトナーを用いた際の、1回目昇温時におけるガラス転移温度をTg1st、2回目昇温時におけるガラス転移温度をTg2ndとする。また、ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤等のその他構成成分のガラス転移温度Tgや融点については、特筆しない場合には、2回目昇温時における吸熱ピークトップ温度、ガラス転移温度を各対象試料の融点、ガラス転移温度Tgとする。
トナーの体積平均粒径(D4)、個数平均粒径(Dn)、及び両者の比(D4/Dn)については、例えば、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザーII(何れもコールター社製)等を用いて測定することができる。本発明では、コールターマルチサイザーIIを使用した値を体積平均粒径(D4)や個数平均粒径(Dn)とする。それらの測定方法は、次の通りである。まず、電解水溶液100[ml]〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性の界面活性剤))を0.1[ml]〜5[ml]加える。電解水溶液は、1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製したものであり、例えばISOTON−II(コールター社製)を使用することができる。測定試料を2[mg]〜20[mg]加える。試料を懸濁した電解水溶液は、超音波分散器で約1分間〜3分間だけ分散処理を施す。その後、上述した測定装置により、100[μm]のアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布とを算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(D4)、個数平均粒径(Dn)を算出する。チャンネルとしては、次に列記するものを対象とする。
・2.00μm以上、2.52μm未満
・2.52μm以上、3.17μm未満
・3.17μm以上、4.00μm未満
・4.00μm以上、5.04μm未満
・5.04μm以上、6.35μm未満
・6.35μm以上、8.00μm未満
・8.00μm以上、10.08μm未満
・10.08μm以上、12.70μm未満
・12.70μm以上、16.00μm未満
・16.00μm以上、20.20μm未満
・20.20μm以上、25.40μm未満
・25.40μm以上、32.00μm未満
・32.00μm以上、40.30μm未満
の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上、40.30μm未満の粒子を対象とする。
トナーの各構成成分の分子量は、例えば、次のようにして測定することができる。
測定条件は次に列記する通りである。
・ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC−8220GPC(東ソー社製)
・カラム:TSKgel SuperHZM−H 15cm 3連(東ソー社製)
温度:40[℃]
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:0.35[ml/min]
・試料:0.15[質量%]の試料を0.4[ml]注入
・試料の前処理:トナーをテトラヒドロフランTHF(安定剤含有和光純薬製)に0.15[質量%]で溶解後、0.2[μm]フィルターで濾過した濾液
前記THF試料溶液を100[μl]注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製ShowdexSTANDARDのStd.No S−7300、S−210、S−390、S−875、S−1980、S−10.9、S−629、S−3.0、S−0.580を用いる。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
トナーの前記貯蔵弾性率(G’)や、損失弾性率(G’’)については、例えば、動的粘弾性測定装置(ARES、TAインスツルメント社製)を用いて測定することが可能である。測定の際の周波数は1[Hz]である。測定試料を、直径8[mm]、厚み1[mm]〜2[mm]のペレット状に成型し、直径8[mm]のパラレルプレートに固定する。そして、40[℃]で安定させた状態から、周波数1Hz(6.28rad/s)、歪み量0.1%(歪み量制御モード)にて200[℃]まで昇温速度2.0[℃/分間]で昇温させて、貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定する。
なお、40〜50[℃]の低温領域では、トナーと装置との密着が不十分で、測定開始時に滑ってしまい、弾性率が本来よりも低く測定されることがある。このような場合、見かけ上温度を上げるほど弾性率が高くなっているように見えることがあるが正確な値ではない。よって、低温領域の弾性率は、55〜60[℃]まで温度を上げて、トナーと測定装置とを良好に密着させてから、測定開始温度まで温度下げて測定する必要がある。
トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーは、ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを含有するものである。更に必要に応じて、前記離型剤、前記着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。特にポリエステル樹脂が、上述した化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂と、前記他のポリエステル樹脂との2種類のポリエステル樹脂を含んでいることがより好ましい。また、トナーは、ポリエステル樹脂として、前記ポリエステルプレポリマー(上記化学式のR2のポリエステル部と前記ポリイソシアネートとの反応生成物、つまり硬化剤と反応させる反応前駆体をいう)を含むことが好ましい。更には、ポリエステル樹脂として、ウレタン結合及びウレア結合を有しない前記他のポリエステル樹脂を含むことが好ましい。更に必要に応じて、前記硬化剤、前記離型剤、前記着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。
このようなトナーの製造方法としては、公知の溶解懸濁法が挙げられる。トナーの製造方法の一例として、前記ポリエステルプレポリマーと前記硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応によって上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂を生成しながら、母材粒子を形成する方法について説明する。このような方法においては、水系媒体の調製、トナー材料を含有する油相の調製、トナー材料の乳化乃至分散、及び有機溶媒の除去を行う。
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。前記樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水系媒体100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部であることが好ましい。
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
前記水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類などが挙げられる。前記アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。また、前記低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
前記トナー材料を含有する油相の調製については、次のようにして行うことが可能である。即ち、前記ポリエステルプレポリマーと、前記他のポリエステル樹脂と、前記結晶性ポリエステル樹脂とを少なくとも含み、更に必要に応じて前記硬化剤、前記離型剤、前記着色剤などを含むトナー材料を、有機溶媒中に溶解又は分散させる。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150[℃]未満であるの有機溶媒が好ましい。前記沸点が150[℃]未満である有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼンなどを例示することができる。、あた、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどでもよい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
前記トナー材料の乳化又は分散は、前記トナー材料を含有する油相を、前記水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、前記トナー材料を乳化又は分散させる際に、前記硬化剤と前記ポリエステルプレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂を生成する。上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂は、例えば、次に掲げる(1)〜(3)の何れかの方法によって生成することができる。
(1)前記ポリエステルプレポリマーと前記硬化剤とを含む油相を、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で前記硬化剤と前記ポリエステルプレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させる。これにより、上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂を生成する。
(2)前記ポリエステルプレポリマーを含む油相を、予め前記硬化剤を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で前記硬化剤と前記ポリエステルプレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させる。これにより、上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂を生成する。
(3)前記ポリエステルプレポリマーを含む油相を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、水系媒体中に前記硬化剤を添加し、水系媒体中で粒子界面から前記硬化剤と前記ポリエステルプレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させる。これにより、上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂を生成する。
なお、粒子界面から前記硬化剤と前記ポリエステルプレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的に上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂が形成される。これにより、トナー中に上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂の濃度勾配を設けることもできる。
上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂を生成するための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、前記硬化剤と、前記ポリエステルプレポリマーとの組み合わせに応じて、適宜選択することができる。また、前記反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。また、前記反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0[℃]〜150[℃]が好ましく、40[℃]〜98[℃]がより好ましい。
前記水系媒体中において、前記ポリエステルプレポリマーを含有する分散液を安定に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。また、前記分散のための分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられる。これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2[μm]〜20[μm]に制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。この高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。前記回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000[rpm]〜30,000[rpm]が好ましく、5,000[rpm]〜20,000[rpm]がより好ましい。また、前記分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合には、0.1分間〜5分間が好ましい。また、前記分散温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0[℃]〜150[℃]が好ましく、40[℃]〜98[℃]がより好ましい。なお、一般に、前記分散温度が高温である方が分散は容易である。
前記トナー材料を乳化又は分散させる際の、水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。トナー材料100質量部に対して、50質量部〜2,000質量部であることが好ましく、100質量部〜1,000質量部であることがより好ましい。前記水系媒体の使用量が、50質量部未満であると、前記トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことがある。また、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
前記トナー材料を含有する油相を乳化又は分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。また、前記陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
上記化学式で表される構造を有するポリエステル樹脂を生成させる際の伸長反応及び/又は架橋反応には、触媒を用いることができる。前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどが挙げられる。
前記乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法などが挙げられる。前記有機溶媒が除去されると、トナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことで行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。得られたトナー母体粒子は、前記外添剤、前記帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面から前記外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。これらの方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
以上のようなトナー(低温定着トナー)を用いると、キャリアの表面上でトナーのスペント層が形成、成長し、これによってキャリアのトナー帯電性能が経時的に低下していき易くなる。このため、従来、低温定着トナーを用いる現像装置では、できるだけキャリアに付与するストレスを小さくする工夫を施すことが一般的であった。
図5は、実施形態に係る複写機とは異なり、内部のキャリアに対して比較的弱いストレスしか付与しないようにした第1例の低ストレス現像装置5’を示す構成図である。この低ストレス現像装置5’は、ドクターブレード51の近傍であって且つドクターブレード51よりもスリーブ回転方向上流側の位置に形成される空間の容積をかなり小さくするように、ケーシング60における前記位置の形状が工夫されている。前記位置では、ドクターブレード51によって規制された現像剤がスリーブに連れ回って勢い良く回転しながら滞留することから、キャリアに対して強いストレスを付与する。このように強いストレスが付与される現像剤の量をかなり少なくするために、前記位置の空間の容積をかなり小さくしているのである。
図6は、実施形態に係る複写機とは異なり、内部のキャリアに対して比較的弱いストレスしか付与しないようにした第2例の低ストレス現像装置5”を示す構成図である。この低ストレス現像装置5”は、第5磁極P5として、磁力のかなり弱いものを用いることで、現像剤に付与するストレスを低減している。実施形態に係る複写機における第5磁極P5の磁力が72[mT]であるのに対し、低ストレス現像装置5”における第5磁極P5の磁力は55[mT]である。
これらの低ストレス現像装置では、キャリア表面に対する低温定着トナーのスペントをある程度まで抑えることが可能であるが、それでも、連続画像形成動作時に機内温度が高温になると、低温定着トナーのスペントを引き起こす。このため、キャリア表面に対する低温定着トナーのスペントによるキャリアのトナー帯電性能の経時低下を確実に抑えることはできない。
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。同複写機に用いられるキャリアは、電気陰性度が1.4以下である物質からなる微粒子を分散させた樹脂コート層を粒子芯材の表面上に被覆したものである。
図7は、現像装置5内にセットされる初期状態の磁性キャリアを部分的に示す拡大断面図である。芯材Ca1の表面には、樹脂コート層Ca2が被覆され、樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3が分散されている。キャリア表面の大部分は樹脂コート層Ca2となっており、帯電性微粒子Ca3はほとんど表面に出ていない。このため、樹脂コート層Ca2の帯電性が主にトナーの帯電性に寄与している。
帯電性微粒子Ca3として用いられる元素は、「日本画像学会(2008),「ケミカルトナー」(シリーズ「デジタルプリンタ技術」)p77−78,東京電機大学出版局」に記載のように、電気陰性度が小さくなるほどプラス帯電性が高くなる傾向にある。電気陰性度には、ポーリングの電気陰性度、オールレッドロコウの電気陰性度、マリケンの電気陰性度などがあるが、本明細書では、ポーリングの電気陰性度を用いて帯電性微粒子Ca3の帯電性について検討する。ポーリングの電気陰性度の詳細は、次の文献に詳しい説明が記載されている。L.Pauling,“The Nature of the Chemical Bond”, Cornell University Press(1960);小泉正夫訳,“化学結合論”,共立出版(1962)。
図8は、ポーリングの電気陰性度表を示すものである。ここで、トナーの添加剤に多く用いられているのはシリカや酸化チタンであるが、これらに含まれるケイ素は電気陰性度1.8であり、チタンは電気陰性度1.5である。トナーの母材樹脂として一般的に用いられる樹脂材料も、電気陰性度は一般的に1.5以上である。これに対し、反転現像方式では、一般にトナーをマイナスに摩擦帯電させることが多い。よって、キャリアとしてはトナーの母材樹脂や添加剤に対して正帯電性を持つ必要があるため、帯電性微粒子Ca3として、電気陰性度1.4が以下である物質からなるものを用いている。かかる物質としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、ルビジウム、ストロンチウムなどを例示することができる。また、イットリウム、ジルコニウム、セシウム、バリウム、ハフニウム、フランシウム、ラジウム、各種ランタノイド、各種アクチノイドなどでもよい。これらによって帯電性微粒子Ca3を構成することで、帯電性微粒子Ca3との摩擦によってトナーをマイナス極性に摩擦帯電させることが可能になっている。
前述した物質からなる帯電性微粒子Ca3のうち、環境安全性や入手しやすさ(コスト・物量など)の観点から、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、マグネシウムを含む化合物(ハイドロタルサイト)からなるものが好適である。それらの何れにおいても、トナーを良好に帯電させることができる。環境安定性の観点からすると、ハイドロタルサイトや硫酸バリウムが特に好適である。
帯電性微粒子Ca3については、そのまま用いても良いが、樹脂コート層Ca2の下に導電層を設けて、電気抵抗を調整したものを用いてもよい。導電層を構成する物質としては、酸化インジウムスズ(ITO)やリンドープスズ(PTO)、タングステンドープスズ(WTO)などを用いることができる。リンドープスズ(PTO)の場合には、所望の抵抗値を得るために、酸化インジウムスズ(ITO)やタングステンドープスズ(WTO)に対して導電層を厚くしなければならないため、帯電性微粒子を表面に露出させるために必要なストレスが比較的大きくなる。よって、酸化インジウムスズ(ITO)またはタングステンドープスズ(WTO)が好ましい。さらに、コスト・入手しやすさ(レアメタルレス)から、タングステンドープスズ(WTO)がもっとも好ましい。
これらのスズの塩水和物層を均一に沈着させる方法としては、たとえばWTOであれば、次のようにすればよい。まず、タングステンの塩(塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸など)を用意する。また、スズ塩(塩化スズ、硫酸スズ、硝酸スズなどのスズ塩、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウムなどのスズ酸塩、スズアルコキシドなどの有機スズ化合物)も用意する。そして、それらの塩を溶解した酸性水溶液と、滴下されたタングステンおよびスズを水和物の形で顔料粒子表面上に析出・沈着させるためのpH調整剤(塩基性水溶液)とを、帯電性微粒子を分散した水溶液中に同時に滴下する。これにより、酸またはアルカリによる帯電性微粒子の溶解や表面変質を防ぎつつ遂行することができる。酸化インジウムスズ(ITO)、リンドープスズ(PTO)を用いる場合には、上述したタングステンをリン・インジウムに置き換えればよい。もちろん導電性をもたせることができれば、これらの処理方法に限らない。
キャリアの電気抵抗を調整する別の方法として、帯電性微粒子Ca3の他に、導電性微粒子を被膜樹脂中に分散させる方法を採用しても良い。具体的には、低抵抗材料を被膜樹脂中に分散させればよい。低抵抗材料としてはカーボン、リンドープスズ(PTO)、タングステンドープスズ(WTO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛、ポリアニリンなどの導電性高分子が挙げられる。このうち、経時帯電を阻害しないという点から、タングステンドープスズ(WTO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズが好ましい。さらにコストや入手安定性(レアメタルレス)の観点から、タングステンドープスズ(WTO)または酸化スズが好ましい。
帯電性微粒子Ca3表面に導電層を設けて抵抗を調整しても良い。この場合、無機微粒子を構成する物質としては酸化チタン、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛などが上げられ、特にアルミナが好適である。前記導電層を構成する物質としては、酸化インジウムスズ(ITO)、タングステンドープスズ(WTO)、リンドープスズ(PTO)を用いることができる。コスト・入手しやすさの面からタングステンドープスズ(WTO)、またはリンドープスズ(PTO)が好ましい。無機微粒子に導電層を設ける方法としては、前述の帯電性微粒子表面に導電層を設ける方法と同様の手法を用いることができる。2種類以上の帯電性微粒子Ca3を併用しても良い。
帯電性微粒子Ca3の粒径は、300[nm]以上、900[nm]以下であることが好ましい。帯電性微粒子Ca3を部分的に樹脂コート層Ca2の表面上に突出させて露出させるためには、帯電性微粒子Ca3の粒径を、樹脂コート層Ca2の厚みよりも大きくするか、小さくするにしても厚みに近い値にする必要がある。後者の場合には、初期では、帯電性微粒子Ca3がキャリア表面上に殆ど露出していないが、樹脂コート層Ca2の削れに伴って、帯電性微粒子Ca3の露出率が高くなっていく。
帯電性微粒子Ca3の粒径が300[nm]未満であると、樹脂コート層Ca2の表面から露出する微粒子部分の高さが十分でなくなり、現像装置内でキャリアに強いストレスを与えても、帯電性微粒子Ca3がキャリア表面に露出し難くなる。これにより、キャリアのトナー帯電性能の経時低下を十分に抑えることができなくなる。また、前記高さが十分でないことにより、キャリア全体がトナーのスペント層に覆われてしまうこともある。
帯電性微粒子Ca3の粒径が900[nm]を超えると、キャリアの平均粒子径(20〜50μm)に対して帯電性微粒子Ca3の平均粒径が大きくなり過ぎてしまい、帯電性微粒子Ca3がキャリアから離脱し易くなる。この結果、キャリアのトナー帯電性能の経時低下を十分に抑えることが困難になってしまう。
帯電性微粒子Ca3の粒径は、次のようにして測定することができる。まず、キャリアを包埋樹脂(Devcon社製、2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂)に混ぜ込み、一晩以上置いて硬化させ、機械研磨により大まかな断面試料を作製する。これにクロスセクションポリッシャー(JEOL製 SM−09010)を用い、加速電圧5.0[kV]、ビーム電流120[μA]の条件で断面の仕上げを行う。その後、走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss製 Merlin)を用いて、加速電圧0.8[kV]、倍率30000倍の条件で撮影する。撮影した画像をTIFF形式で取り込み、Media Cybernetics社製のImage−Pro Plusを用いて、100粒の帯電性微粒子Ca3の円相当径を測定し、その平均値を求める。その結果を帯電性微粒子Ca3の粒径とする。
初期状態のキャリアにおける帯電性の調整や、帯電性微粒子Ca3の安定分散のために、樹脂コート層Ca2の樹脂材料中には、アミノシランカップリング剤を含有させることが望ましい。初期の帯電性(削れやスペントの発生していない状態での帯電)については、アミノシランカップリング剤の量で調整することができるからである。アミノシランカップリング剤の添加量は、樹脂コート層Ca2の重量に対して0.1〜10[重量%]が望ましい。
アミノシランカップリング剤の種類は特に限定されない。例えば、r−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、r−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、r−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−r−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、r−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、r−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどでもよい。また、ビニルトリアセトキシシラン、r−クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、r−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどでもよい。また、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、r−クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシランなどでもよい。また、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザンなどでもよい。また、メタクリルオキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドなどでもよい。これらは、二種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、AY43−059、SR6020、SZ6023、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43−310M、SZ6030、SH6040、AY43−026などを例示することができる。また、AY43−031、sh6062、Z−6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z−6721、AY43−004、Z−6187、AY43−021、AY43−043などでもよい。また、AY43−040、AY43−047、Z−6265、AY43−204M、AY43−048、Z−6403、AY43−206M、AY43−206E、Z6341、AY43−210MC、AY43−083、AY43−101などでもよい。また、AY43−013、AY43−158E、Z−6920、Z−6940などでもよい。何れも、東レ・シリコーン社製のものである。
キャリアの体積平均粒径は、20[μm]〜50[μm]であることが好ましい。キャリアの体積平均粒径が20[μm]未満であると、一粒子あたりの磁化が弱くなるためにキャリア付着が発生することがある。また、50[μm]を超えると、高解像度な画像が得られ難くなる。キャリアの体積平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装社製)のSRAタイプを用いて測定することができる。0.7[μm]以上、125[μm]以下のレンジ設定で行ったものを用いることができる。また、分散液にはメタノールを使用し、メタノールの屈折率を1.33、キャリアおよび芯材の屈折率を2.42に設定する。
樹脂コート層Ca2中の帯電性微粒子Ca3の含有比率は樹脂コート層Ca2の重量に対して20重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。含有比率が20重量%未満であると、帯電性微粒子Ca3の量が不足してトナースペント時に十分な帯電能力を得ることができなくなる。また、帯電性微粒子Ca3の含有量が70重量%を超えると、樹脂コート層Ca2中の帯電性微粒子Ca3が過剰になる。この結果、十分な結着力が得られず、帯電性微粒子Ca3が剥離し易くなることから、感光体1に対するキャリア付着を引き起こし易くなる。
樹脂コート層Ca2は、次の化1で表される繰り返し単位(A部分)と、次の化2で表される繰り返し単位(B部分)とを含み、ラジカル共重合して得られるアクリル系共重合体を加熱処理して得られる樹脂であることが望ましい。
Figure 2017129669
式中で、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。また、mは1〜8の整数を示し、Xは10〜90モル%を示す。
Figure 2017129669
式中で、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、R3は炭素原子数1〜8のアルキル基、または炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、mは1〜8の整数を示し、Yは10〜90モル%を示す。
A部分は、化2で表される繰り返し単位を生成するモノマー成分(モノマーA成分)を含む。また、B部分は、化2で表される繰り返し単位を生成するモノマー成分(モノマーB成分)を含む。A部分(およびモノマーA成分)において、Xは、10〜90[モル%]であり、より好ましくは30〜70[モル%]である。また、B部分(およびモノマーA成分)において、X=10〜90[モル%]であり、より好ましくは30〜70[モル%]である。
A部分(モノマーA成分)は、側鎖にメチル基が多数存在する原子団;トリス(トリメチルシロキシ)シランを有している。そして、樹脂全体に対してA部分(モノマーA成分)の比率が高くなると、キャリア芯材(芯材粒子)上の被覆層の表面エネルギーが小さくなり、トナーの樹脂成分、ワックス成分などの付着が少なくなる。A部分(モノマーA成分)が10[モル%]未満であると、十分な表面エネルギーの減少効果が得られず、トナー成分の付着が急増する。一方、A部分(モノマーA成分)が90[モル%]よりも多くなると、B部分(モノマーB成分)の効果による強靭性が不足すると共に、芯材粒子と被覆層の接着性が低下し、キャリア被膜(被覆層)の耐久性が悪くなる。
化1、化2の式中のR2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、このようなA部分を生じるモノマーA成分としては、限定されるものではないが、例えば、次に列記する化学式で示されるトリス(トリアルキルシロキシ)シラン化合物を例示することができる。なお、式中で、Meはメチル基であり、Etはエチル基であり、Prはプロピル基である。
・CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
・CH=CH−COO−C−Si(OSiMe
・CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
・CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
・CH=CH−COO−C−Si(OSiEt
・CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
・CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
・CH=CH−COO−C−Si(OSiPr
・CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
A部分を生成するためのモノマー成分Aの製造方法は特に限定されないが、例えば、トリス(トリアルキルシロキシ)シランを白金触媒の存在下にアリルアクリレートまたはアリルメタクリレートと反応させる方法を例示することができる。また、特開平11−217389号公報に記載されている、カルボン酸と酸触媒の存在下で、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとヘキサアルキルジシロキサンとを反応させる方法などでもよい。
B部分を生成するためのモノマーB成分(前駆体を含む)は、ラジカル重合性の2官能性[化2の式中でR3がアルキル基の場合]、または3官能性[化2の式中でR3がアルコキシ基の場合]のシラン化合物であり、Y=10〜90[モル%]である。B成分が10[モル%]以上あれば、強靭さが十分得られる。また、90[モル%]以下であれば、被膜は固くて脆くなり、膜削れが発生し易くなるという問題を防ぐことができる。また、環境特性の悪化も防ぐことができる。加水分解した架橋成分がシラノール基として多数残ると、環境特性(湿度依存性)を悪化させていることも考えられるからである。
モノマーB成分としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどを例示することができる。また、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリトキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シランなどでもよい。
モノマーA成分とモノマーB成分とをラジカル共重合して得られる、次の化3の式で表される共重合体を加水分解し、シラノール基を生成し、触媒を用いて縮合することにより得られる架橋物を、芯材に被覆した後、加熱処理して樹脂層を形成するのが好ましい。
Figure 2017129669
式中で、R1、m、R2、R3、X、Yは、それぞれ上述したものと同じ。
A成分及びB成分に、C成分としてアクリル系化合物(モノマー)を加えてもよい。このようなモノマーC成分(C成分ともいう)を加えたものとして、次の化4の式で表される共重合体が挙げられる。
Figure 2017129669
式中において、R1、m、R2、R3、X、Yは、それぞれ上述したものと同じ。
前記式の共重合体において、X=10[モル%]〜40[モル%]であり、Y=10[モル%]〜40[モル%]であり、Z=30[モル%]〜80[モル%]であり、かつ、「60[モル%]<Y+Z<90[モル%]」である。
C成分は、次の化5で表される。
Figure 2017129669
式中で、R1、R2は上述したものと同じである。
C成分は、被膜層に可撓性を付与し、かつ、芯材と被膜層との接着性を良好にするものであるが、C成分が30[モル%]以上であれば、十分な接着性が得られる。また、80[モル%]以下であれば、前記A成分及び前記B成分の何れかが10[モル%]以下となることを防ぎ、キャリア被膜の撥水性、硬さと可撓性(膜削れ)を両立させることできる。
C成分のアクリル系化合物(モノマー)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。具体的には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートなどを例示することができる。また、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートなどでもよい。これらのうち、アルキルメタクリレートがより好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。また、これらの化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
樹脂コート層Ca2の架橋による高耐久化技術としては、特許第3691115号公報に記載の技術を用いることが可能である。少なくとも末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびイミド基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するラジカル共重合性単量体との共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂により、磁性粒子表面を被覆する技術である。但し、この技術では、樹脂コート層Ca2の剥がれや過剰な削れに対して十分な耐久性が得られなくなるおそれがある。その理由は明らかになっていないが、前述の共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂の場合には、次のように考えられる。即ち、共重合体樹脂中のイソシアネート化合物と反応(架橋)する単位重量当りの官能基(アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキル基、メルカプト基等の活性水素含有基)が少なく、架橋点において、二次元、あるいは三次元的な緻密な架橋構造を形成することができない。このため、長時間使用すると、被膜剥がれや過剰な削れなどが生じ易く(被膜層の耐摩耗性が小さい)、十分な耐久性が得られてないと推察される。
樹脂コート層Ca2の剥がれや過剰な削れが生じると、キャリア抵抗低下による画像品質の変化や、キャリア付着が起こる。また、現像剤の流動性が低下して、現像剤のスリーブによる汲み上げ量低下を引き起こし、画像濃度低下、トナー濃度過剰による地汚れ、トナー飛散などの原因になる。
そこで、実施形態に係る複写機に用いられるキャリアは、樹脂コート層Ca2が、樹脂単位重量当たりで、二官能、あるいは三官能の架橋可能な官能基(点)を多数(単位重量当り、2倍〜3倍多い)有した共重合樹脂からなる。更に、かかる樹脂を、縮重合により架橋させて形成された樹脂からなることから、樹脂コート層Ca2を極めて強靭なものにして、樹脂コート層Ca2の剥がれや過剰な削れを防止している。また、その樹脂は、イソシアネート化合物による架橋よりも、シロキサン結合による架橋による結合エネルギーの方が大きく、熱ストレスに対しても安定しているため、樹脂コート層Ca2の経時安定性を向上させることが可能になっている。
前記共重合体を加水分解し、シラノール基を生成させ、縮重合させて樹脂コート層Caを形成することが、好ましいが。その縮重合の際に使用する触媒としては、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒等が挙げられる。これら触媒のなかでは、チタン系触媒を用いることが好ましく、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を用いることが特に好ましい。これは、シラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活し難いと考えられる。
樹脂コート層Ca2を形成する樹脂としては、上記した樹脂の他に、シリコン樹脂、アクリル樹脂、または、これらを併用することができる。アクリル樹脂は接着性が強く脆性が低いので耐磨耗性に非常に優れた性質を持つが、その反面、表面エネルギーが高いため、スペントし易いトナーとの組み合わせでは、トナー成分スペントが蓄積することによる帯電量低下など不具合が生じることがある。この場合、表面エネルギーが低いことから、トナー成分のスペントを発生させ難くなる。樹脂コート層Ca2を摩耗させてキャリア表面にトナーのスペント層を形成させ難くする効果が得られ易いシリコン樹脂を併用することで、前述の不具合を防止することができる。一方、シリコン樹脂は接着性が弱く脆性が高いので、耐磨耗性に劣るという面がある。そこで、2種以上の樹脂を併用する場合には、スペントし難く、耐摩耗性を有する樹脂コート層Ca2が形成できるよう、それぞれの樹脂のバランスを考慮するとよい。
前記シリコン樹脂としては、一般的に知られているシリコン樹脂全般を用いることが可能である。例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコンや、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコン樹脂などが挙げられる。市販品としてのストレートシリコン樹脂としては、例えば、信越化学製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2400、SR2406、SR2410等が挙げられる。これらをシリコン樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。さらに、変性シリコン樹脂としては、信越化学製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)などが挙げられる。また、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)などでもよい。
樹脂コート層Ca2の形成方法としては、例えば、次の方法を用いることができる。即ち、前記共重合体に前記硫酸バリウムの微粒子と、シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂と、触媒とを加える。また、必要に応じてシラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂以外の樹脂、溶媒等を含む被覆層用組成物を加える。得られた樹脂を用いて樹脂コート層Ca2を形成する。具体的には、前記樹脂で芯材Ca1を被覆しながら、シラノール基を縮合させることによって形成してもよいし、前記樹脂で芯材Ca1を被覆した後に、シラノール基を縮合させることによって形成してもよい。前記樹脂で芯材Ca1を被覆しながら、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、熱、光等を付与しながら、前記樹脂で芯材Ca1を被覆する方法が挙げられる。また、前記樹脂で芯材Ca1を被覆した後に、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、前記樹脂で芯材Ca1を被覆した後に、加熱する方法が挙げられる。
樹脂コート層Ca2は、膜の欠損箇所がないものであり、その平均膜厚は0.30〜1.50[μm]であることが好ましい。平均膜厚が0.30[μm]以上であると、帯電性微粒子Ca3を十分に保持することができるため、樹脂コート層Ca2からの帯電性微粒子Ca3の離脱を防ぐことができる。また、平均膜厚が1.50[μm]以下であると、樹脂コート層Ca2の中に帯電性微粒子Ca3が取り込まれて十分な帯電能力を発揮することが困難にあるという不具合を防ぐことができる。
芯材Ca1としては、磁性体であれば、特に限定されないが、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金や化合物;これらの磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子等が挙げられる。 中でも、環境面への配慮から、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Srフェライトが好ましい。
トナーとキャリアとを含有する現像剤において、トナーは、モノクロトナーまたはカラートナーの何れであってもよい。
図9は、実施形態に係る複写機の現像装置5にセットして、ある程度の期間に渡って使用したキャリア表面を模式的に示した図である。現像装置5内でストレスを受けて、樹脂コート層Ca2の削れが進み、コート層の表面上に露出する帯電性微粒子Ca3の割合が初期に比べて増加している。一方、樹脂コート層Ca2は、削れと同時にトナーのスペント層Spが固着する。これにより、樹脂コート層Ca2部分のトナー帯電性能は低下するが、代わりに帯電性微粒子Ca3の露出量が多くなることで、キャリア全体としては十分なトナー帯電性能を発揮する。
図10は、低ストレス現像装置5’にセットして、ある程度の期間に渡って使用したキャリア表面を模式的に示した図である。低ストレス現像装置5’によってキャリアに付与されるストレスが弱いため、樹脂コート層Ca2が削れず、帯電性微粒子Ca3が表面に露出してこない。一方、樹脂コート層Ca2に対するトナーのスペント層Spの固着が進行することから、キャリア表面の大部分がスペント層Spで覆われて、キャリア全体として十分なトナー帯電性能を発揮することができなくなる。これにより、トナー飛散、転写不良、地肌汚れ(カブリ)などといったトナー帯電量不足に起因する種々の不具合が発生してしまう。
そこで、実施形態に係る複写機の現像装置5は、キャリアの樹脂コート層Ca2を経時的い確実に削っていくような、比較的強いストレスをキャリアに付与するようになっている。
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
上述のような比較的強いストレスをキャリアに付与するためには、少なくとも初期から40,000頁分のプリントを終える期間で、樹脂コート層Ca2の削れによってキャリア表面における帯電性微粒子Ca3の存在比率を増加させる必要がある。40,000枚という枚数は、本発明らが行った種々の実験結果から、トナーのスペントによるキャリアのトナー帯電性能の低下は、おおむね40,000枚以下で飽和することが分かっているからである。
図11は、プリンタ試験機として株式会社リコー社製のMPC8002を用い、後述する低温定着性のトナーBを使ってテスト画像を連続プリントした場合におけるトナー帯電量(Q/M)の経時変化を示すグラフである。連続プリント条件としては、A4用紙に画像面積率=40%の各色トナー像を、1000[page/Job]で連続プリントする条件を採用している。各色の現像装置5には、実施形態に係る複写機とは異なり、樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3を含んでいないキャリアをセットしている(MPC8002に標準でセットされるキャリア)ものを使用している。よって、樹脂コート層Ca2が経時的に摩耗しても、それに伴ってキャリアのトナー帯電性能が増加することはない。図示のように、20000枚を連続プリントするまでの期間は、プリント枚数の増加に対して、トナー帯電量が急激に低下していく。ところが、プリント枚数が20000枚を超えると、プリント枚数が増加しても、トナー帯電量はそれほど低下しなくなる。そして、プリント枚数が40000枚に達すると(図中の点の位置)、その後はプリと枚数が増加しても、トナー帯電量は一定に維持されている。
図12は、プリンタ試験機として株式会社リコー社製のMPC4502を用い、後述する低温定着性のトナーBを使ってテスト画像を連続プリントした場合におけるトナー帯電量(Q/M)の経時変化を示すグラフである。連続プリント条件としては、A4用紙に画像面積率=20%の各色トナー像を、1000[page/Job]で連続プリントする条件を採用している。各色の現像装置5には、実施形態に係る複写機とは異なり、樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3を含んでいないキャリアをセットしているもの(MPC4502に標準でセットされるキャリア)を使用している。よって、樹脂コート層Ca2が経時的に摩耗しても、それに伴ってキャリアのトナー帯電性能が増加することはない。図示のように、40000枚を連続プリントするまで(図中点線の位置)の期間は、プリント枚数の増加に対して、トナー帯電量が急激に低下していく。ところが、プリント枚数が40000枚を超えると、プリント枚数が増加しても、トナー帯電量はそれほど低下しなくなる。そして、プリント枚数が40000枚に達すると(図中の点の位置)、その後はプリと枚数が増加しても、トナー帯電量は低下しなくなる。
図13は、プリンタ試験機として株式会社リコー社製のMPC4503を用い、後述する低温定着性のトナーBを使ってテスト画像を連続プリントした場合におけるトナー帯電量(Q/M)の経時変化を示すグラフである。連続プリント条件としては、A4用紙に画像面積率=20%の各色トナー像を、1000[page/Job]で連続プリントする条件を採用している。各色の現像装置5には、実施形態に係る複写機とは異なり、樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3を含んでいないキャリアをセットしているもの(MPC4503に標準でセットされるキャリア)を使用している。よって、樹脂コート層Ca2が経時的に摩耗しても、それに伴ってキャリアのトナー帯電性能が増加することはない。図示のように、40000枚を連続プリントするまで(図中点線の位置)の期間は、プリント枚数の増加に対して、トナー帯電量が急激に低下していく。ところが、プリント枚数が40000枚を超えると、プリント枚数が増加しても、トナー帯電量はそれほど低下しなくなる。そして、プリント枚数が40000枚に達すると(図中の点の位置)、その後はプリと枚数が増加しても、トナー帯電量は低下しなくなる。
これらの実験結果により、帯電性微粒子Ca3を含有していないキャリアと低温定着トナーとを組み合わせて使用した場合、トナーのスペントによるキャリアのトナー帯電性能の低下は、この帯電低下は40,000枚以下のプリントで飽和して安定することが解る。
現像装置5内でキャリアに付与するストレスの強さを調整する方法としては、第5磁極P5の磁束密度を調整する方法や、第5磁極P5の磁力影響範囲に存在する現像剤の量を調整する方法が挙げられる。これらの方法を用いて、少なくとも40,000枚のプリントを終えるまでに、XPSを用いて測定した帯電性微粒子Ca3の存在比率を、初期と比較して増加させるように、現像装置5によるキャリアへのストレス付与量を調整している。換言すると、帯電性微粒子Ca3の表面露出量が、40000枚プリント時では初期に比較して増加しているのである。特に、初期と40000枚プリント時とを比較して、前記存在比率を0.2[atomic%]以上増加させるようにすることが望ましい。
なお、40000枚以下の枚数で、XPSを用いて測定したキャリア表面における帯電性微粒子Ca3の存在比率が初期キャリアと比較して増加していることが確認できれば、必ずしも40,000枚のプリントを行って確認する必要はない。
前記存在比率を測定する際の画像出力モードとしては、現像装置5内のトナーの入れ替わり、すなわちトナー消費量が多いほど、トナーのスペントが進みやすいため、高画像面積の画像を出力することが望ましい。ユーザーにおける出力態様の統計をとったところ、ほとんどのユーザーが51[cpm]以上の高速機では画像面積率=40%以下、50[cpmtn平以下の低速機では画像面積率20%以下で使用していることがわかった。このため、51[cpm]以上の高速機では画像面積率=40%、50[cpm]以下の低速機では画像面積率=20%の画像で出力を行うことにする。
キャリア表面の帯電性微粒子Ca3(電気陰性度1.4以下の元素からなる)の存在比率については、次のようにして測定することが可能である。即ち、現像装置5内からキャリアを回収し、795メッシュを使ってキャリア表面に付着しているトナーをエアブローする。得られたエアブロー後のキャリアをX線電子分光(XPS)に投入し、次の条件で表面の前記元素の存在比率を求める。
・測定装置:サーモサイエンティフィック株式会社 K−Alpha
・測定光源:Al(モノクロメータ)
・測定領域スポット径:400[μm]
・パスエネルギー:50[eV]
・エネルギーステップ:0.1[eV]
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、キャリアを製造した。具体的には、撹拌機付きフラスコにトルエン300[g]を投入して、窒素ガス気流下で90[℃]まで昇温した。これに、次に列記する物質の混合からなる混合物を1時間かけて滴下した。
・CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe[式中、Meはメチル基]で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを84.4g(200ミリモル:サイラプレーン、TM−0701T/チッソ株式会社製)
・3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランを39g(150ミリモル)
・メタクリル酸メチルを65.0g(650ミリモル)
・2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルを0.58g(3ミリモル)
滴下終了後、さらに、次の溶液を加えて、90〜100[℃]で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体1を得た。即ち、0.06[g](0.3ミリモル)の2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルを、15[g]のトルエンに溶解した溶液(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64[g](3.3ミリモル))である。
得られた重量平均分子量=35,000のメタクリル系共重合体[固形分100質量%]を20重量部に対し、次の物質を混合した。
・シリコン樹脂溶液(東レダウコーニングシリコーン社製SR2410)[固形分20質量%]を100重量部
・アミノシラン[固形分100質量%]を3.0重量部
・帯電性微粒子Ca3(硫酸バリウム粒子 堺化学製B55)を36重量部
・導電性微粒子(酸素欠損型スズ 三井金属製一次粒子径30nm)を60重量部
・触媒(チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)TC750 マツモトファインケミカル社製)を2重量部
混合物をトルエンで希釈して、固形分=20質量%の樹脂溶液を得た。芯材Ca1として、重量平均粒径=35[μm]のMnフェライト粒子を用いて、流動床型コーティング装置に微粒化ノズルを使用して芯材Ca1表面に前記樹脂溶液を塗布した。樹脂コート層Ca2の平均膜厚が1.00[μm]になるように、前記樹脂溶液を塗布し、流動槽内の温度を60[℃]に制御しながら、塗布や、塗布した膜の乾燥を行った。得られたキャリアを電気炉中にて210℃/1時間焼成した。冷却後、得られた乾燥体を目開き63[μm]の篩を用いて解砕して、粒経35[μm]のキャリアを得た。以下、このキャリアをキャリアAという。
現像装置としては、図2に示される実施形態に係る現像装置5と、図5に示した低ストレス現像装置5’とを使用した。それぞれに、得られたキャリアAとトナーとの混合によるトナー濃度=7%の現像剤を作成し、それをそれぞれの現像装置(何れもM用として使用)に240g投入した。トナーとしては、株式会社リコー社製のMPC2503用のMagentaトナーを使用した。プリンタ試験機としては、株式会社リコー社製のMPC2503を使用し、画像面積=20[%]のMテスト画像を100枚連続でプリントするジョブを、300秒ごとに繰り返し、累積で40000枚のプリントを実施した。各ジョブを終える毎に、現像装置内から適量のMトナーを採取して、その帯電量を測定した。実験室環境は、温度23[℃]、相対湿度50[%]である。
図14は、この第一実験におけるトナー帯電量の経時変化を示すグラフである。初期のトナー帯電量は、実施形態(現像装置5)と、低ストレス現像(低ストレス現像装置5’)とで有意差が認められない。しかし、40000枚プリント時には、実施形態ではトナー帯電量が初期と大差ないのに対し、低ストレス現像ではトナー帯電量が初期よりもかなり低い値になっている。低ストレス現像では、キャリアの樹脂コート層Ca2が摩耗せずに、キャリア表面上でトナーのスペント層Spが経時的に成長してしまうからである。
図15は、キャリア表面における帯電性微粒子Ca1(第一実験では硫酸バリウム)の存在比率をXPSによって測定した結果を示すグラフである。図示のように、実施形態では、現像装置5がキャリアに比較的強いストレスを付与してキャリアの樹脂コート層Ca2を経時的に摩耗させていくことから、40000枚プリント時の帯電性微粒子Ca3の存在比率Baが初期に比べて0.25[atomic%]増えている。これに対し、低ストレス現像では、樹脂コート層Ca2の削れがそれほど進行せず、キャリア表面にトナーのスペント層Spが形成されることから、40000枚プリント時の帯電性微粒子Ca3の存在比率Baが初期よりも0.08[atomic%]減少している。
このように、帯電性微粒子Ca3が樹脂コート層Ca2中に分散されたキャリアでは、比較的強いストレスを付与する現像装置5と組み合わせることで、40000枚プリント時の帯電性微粒子Ca3の存在比率Baを初期よりも増加させることができる。これにより、長期間に渡って、キャリアのトナー帯電性能を良好に維持することができる。
次に、本発明者らが行った第二実験について説明する。
比較キャリアとして、株式会社リコー社製のProC901用のキャリア(BR1603キャリア)を用意した。この比較キャリアは、実施形態に係る複写機に用いられるキャリア(例えばキャリアA)とは異なり、樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3を含有していない。よって、樹脂コート層Ca2の摩耗に伴ってトナー帯電性能を低下させていく。
XPSにより、キャリア表面の硫酸バリウム(キャリアAの帯電性微粒子Ca3)の存在比率を測定したところ、キャリアAでは0.15[atomic%]であったのに対し(初期)、比較キャリアでは0[atomic%]であった。
各種のトナーを作成した。まず、ケチミンを合成した。具体的には、撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、170重量部のイソホロンジアミン170と、75重量部のメチルエチルケトン75部とを仕込み、50[℃]で5時間反応させて、[ケチミン化合物]を得た。この[ケチミン化合物]のアミン価は418であった。
次に、プレポリマーAを合成した。具体的には、冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、テレフタル酸、アジピン酸、及びチタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)を投入した。このとき、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHを1.15にし、ジオール成分における3−メチル−1,5−ペンタンジオールを100[mol%]にし、且つジカルボン酸成分におけるテレフタル酸を40[mol%]にした。更に、ジカルボン酸成分におけるアジピン酸を60[mol]にした。その後、4時間程度で200[℃]まで徐々に昇温した後、2時間かけて230[℃]まで更に昇温し、流出水がなくなるまで反応させた。その後、10[mmHg]〜15[mmHg]の減圧下で6時間反応させて、中間体ポリエステルA’を得た。得られた中間体ポリエステルA’のガラス転移温度Tgは−50[℃]、Mwは18,000、Mw/Mnは2.0であった。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体ポリエステルA’とヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型トリイソシアネート((株)DIC社製 バーノックDN−901S)とを投入した。このとき、モル比(DN−901Sのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)については、0.1に調整した。酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100[℃]で5時間反応させて、中間体ポリエステルA溶液を得た。得られた中間体ポリエステルAのガラス転移温度Tgは−45[℃]、Mwは22,000、Mw/Mnは2.2であった。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体ポリエステルA−10溶液とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)1.5にするように投入した。そして、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈した後、100[℃]で5時間反応させ、プレポリマーA溶液を得た。
次に、ポリエステル樹脂Aを合成した。具体的には、前述したプレポリマーAを加熱装置、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中で撹拌した。更に、プレポリマーA中のイソシアネート量に対して[ケチミン化合物]のアミン量を等モルにする量で、[ケチミン化合物]を反応容器に滴下していき、45[℃]で10時間撹拌後にプレポリマー伸長物を取り出した。得られたプレポリマー伸長物を残酢酸エチル量を100[ppm]以下にする50[℃]で減圧乾燥させて、非晶質のポリエステル樹脂Aを得た。
次に、ポリエステル樹脂Bを合成した。具体的には、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物、イソフタル酸、及びアジピン酸を仕込んだ。このとき、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物とビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物とのモル比を85/15に調整した。前記モル比は、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物である。また、テレフタル酸とアジピン酸とのモル比(テレフタル酸/アジピン酸)を80/20に調整した。また、水酸基とカルボキシル基とのモル比(OH/COOH)を1.2に調整した。次に、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)とともに、常圧、且つ230[℃]で8時間反応させた後、10[mmHg]〜15[mmHg]の減圧で4時間反応させた。その後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1[mol%]になるよう入れた後、180[℃]、常圧で3時間反応させて、非晶質のポリエステル樹脂Bを得た。
次に、結晶性ポリエステル樹脂Cを合成した。具体的には、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ドデカン二酸、1,6−ヘキサンジオール、及びチタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)を仕込んだ。このとき、水酸基とカルボキシル基とのモル比(OH/COOH9を0.9に調整した。そして、180[℃]で10時間反応させた後、200[℃]に昇温して3時間反応させ、更に8.3[kPa]の圧力にて2時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂Cを得た。
次に、マスターバッチ(MB)を作製した。具体的には、まず、1,200重量部の水に、500重量部のカーボンブラック(Printex35デクサ製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕、及び500重量部のポリエステル樹脂Bを加えた。そして、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)によってそれらを混合し、混合物を2本ロールによって150[℃]30分間の条件で混練した後、圧延冷却した。その後、混練物をパルペライザーで粉砕して、[マスターバッチ]を得た。
次に、WAX分散液を作製した。具体的には、まず、撹拌棒、及び温度計をセットした容器に、離型剤として、50重量部のパラフィンワックス50部(日本精鑞株式会社製、HNP−9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)、及び450重量部の酢酸エチル450部を仕込んだ。そして、撹拌しながら80[℃]まで昇温し、80[℃]のままで5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。そして、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、分散処理を施して、[WAX分散液]を得た。このとき、分散条件としては、送液速度1[kg/hr]、ディスク周速度6[m/秒]、直径0.5[mm]ジルコニアビーズを80体積%充填、3パスという条件を採用した。
次に、結晶性ポリエステル樹脂分散液を作製した。具体的には、撹拌棒、及び温度計をセットした容器に。50重量部の結晶性ポリエステル樹脂C、及び450重量部の酢酸エチル450部を仕込んだ。そして、撹拌しながら80[℃]まで昇温し、80[℃]のまま5時間保持した後、1時間で30[℃]まで冷却した。そして、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて分散処理を施して[結晶性ポリエステル樹脂分散液]を得た。このとき、分散条件としては、送液速度1[kg/hr]、ディスク周速度6[m/秒]、直径0.5[mm]ジルコニアビーズを80体積%充填、3パスという条件を採用した。
次に、油相を作製した。具体的には、次の物質を容器に入れた。
・[WAX分散液]500重量部
・[プレポリマーA]200重量部
・[結晶性ポリエステル樹脂分散液]500重量部
・[ポリエステル樹脂B]750重量部
・[マスターバッチ]100重量部
・硬化剤たる[ケチミン化合物]2重量部
そして、それらをTKホモミキサー(特殊機化製)によって5,000[rpm]の速度で60分間混合して[油相]を得た。
次に、有機微粒子エマルション(微粒子分散液)を合成した。具体的には、撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器に、次の物質を仕込んだ。
・水683重量部
・メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業株式会社製)11重量部
・スチレン138重量部
・メタクリル酸138重量部
・過硫酸アンモニウム1重量部
これらを400[回転/分]の速度で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度を75[℃]まで昇温して、5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液を30重量部加えた後、75[℃]で5時間熟成した。これにより、ビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液からなる[微粒子分散液]を得た。この[微粒子分散液]の微粒子の体積平均粒径をLA−920(HORIBA社製)によって測定したところ、0.14[μm]であった。[微粒子分散液]の一部を乾燥させて樹脂分を単離した。
次に、水相を作製した。具体的には、次の物質を混合した。
・水990重量部
・[微粒子分散液]83重量部
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業株式会社製)37重量部
・酢酸エチル90重量部。
これらを撹拌して、乳白色の液体からなる[水相]を得た。
次に、乳化・脱溶剤を作製した。具体的には、[油相]が入った容器に、[水相]を1,200重量部を加えた。そして、TKホモミキサーにより、回転数13,000[rpm]の速度で20分間混合して[乳化スラリー]を得た。次に、撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー]を投入し、30[℃]で8時間脱溶剤した後、45[℃]で4時間熟成を行って、[分散スラリー]を得た。
100重量部の[分散スラリー]を減圧濾過した。
(1)濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2)、上記(1)の濾過ケーキに、100重量部の10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3)、上記(2)の濾過ケーキに、100重量部の10%塩酸を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後に、濾過した。
(4)、上記(3)の濾過ケーキに、300重量部のイオン交換水を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
上記(1)〜(4)の操作を2回繰り返して、[濾過ケーキ]を得た。この[濾過ケーキ]を循風乾燥機にて45[℃]の温度で48時間乾燥させ、目開き75[μm]のメッシュで篩って[トナー母体粒子]を得た。
次に、外添処理を行った。具体的には、100重量部の[トナー母体粒子]に対して、0.6重量部の疎水性シリカ(平均粒径=100nm)と、1.0重量部の酸化チタン(平均粒径20nm)と、0.8重量部の疎水性シリカ微粉体(平均粒径15nm)と加えた。そして、これらをヘンシェルミキサーにて混合して、トナーAを得た。このトナーAは、低温定着トナーである。
低温定着トナーとして、トナーAの他に、株式会社リコー社製のMPC2503用トナー(SPR−F2トナー)を用意した。また、低温定着ではない比較トナーとして、株式会社リコー社製のProC901用トナー(SPR−γトナー)を用意した。
各種の現像剤を作製した。ボールミルを用いて、7重量部のトナー(トナーA、トナーB、又は比較トナー)と、93重量部のキャリア(キャリアA又は比較キャリア)とを混合し、現像剤を作製した。
各種の現像剤を用いて、トナーの低温定着性を評価した。具体的には、プリンタ試験機として、株式会社リコー社製のimageo MP C5002の定着部改造機を用意した。このプリンタ試験機により、タイプ6200紙(株式会社リコー製)に対してテスト画像をプリントする際のトナー定着性を評価した。具体的には、定着温度を変化させながら、画像の定着性を確認することで、コールドオフセット温度(定着下限温度)及び高温オフセット温度(定着上限温度)を調べた。定着下限温度の評価条件については、紙送りの線速度=200[mm/秒]、面圧=1.0[kgf/cm]、定着ニップ幅=7[mm]とした。
次の表1に、各種トナーの特性を示す。
Figure 2017129669
表1に示されるように、トナーBでも比較トナーよりも優れた低温定着性を発揮するが、トナーAはさらに優れた低温定着性を発揮している。
各種の現像剤を用いて、プリントテストを実施した。現像装置としては、実施形態に係る現像装置5と、低ストレス現像装置5’とをそれぞれ用いた。それぞれの現像装置に、上述した各種の現像剤を240[g]セットした。
プリンタ試験機として、株式会社リコー社製のMPC2503を用意した。画像面積=20%のテスト画像を100枚連続でプリントするジョブを300秒ごとに繰り返し、40000枚までプリントを実施した。トナー濃度については、7[%]を維持するようにトナー補給制御を実施した。初期のトナー帯電量と、40000枚プリント時のトナー帯電量とを測定し、両者の変化率を算出した。この結果を、次の表2に示す。
Figure 2017129669
表2において、トナー帯電量の変動率は、次のようにして求められたものである。まず、100枚プリント時、500枚プリント時、1000枚プリント時、2000枚プリント時、3000枚プリント時のトナー帯電量をブローオフ装置によって測定し、それらの平均値を、トナー帯電量の初期値とした。次に、38000枚プリント時、39000枚プリント時、40000枚プリント時のトナー帯電量をブローオフ装置によって測定し、それらの平均値をトナー帯電量の経時値とした。そして、「(経時値−初期値)÷初期値」の解を、トナー帯電量の変動率として求めた。変動率が±20[%]以下である場合を帯電が安定しているとみなして、表2中に○を表記した。また、変動率が20[%]以上である場合を帯電が安定していないとみなして、表2中に×を表記した。
XPSによる存在比率Baの変動率については、次のようにして求めた。まず、初期のキャリアの表面における帯電性微粒子Ca3の存在比率Ba[atomic%]をXPSによって測定した。次に、40000枚のプリントを実施した後のキャリアの表面における帯電性微粒子Ca3の存在比率Ba[atomic%]をXPSによって測定した。そして、後者の存在比率Baから前者の存在比率Baを差し引いた値を、存在比率の変動率とした。XPSによる測定は、0.05[atomic%]の誤差が生ずることから、0.05[atomic%]以下の変動率は、変動があるとは言えない。
表2において、実験番号1、2では、低温定着性のあるトナーAやトナーBを使用していることから、十分な低温定着性が得られている。また、樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3が分散しているキャリアAを、実施形態に係る現像装置5(高ストレス)と組み合わせたことで、存在比率Baの変動率がプラスになっている。これは、存在比率Baが初期よりも増加していることを示している。トナー帯電量の変動率は±20%の範囲内に収まっていることから、長期間に渡ってキャリアのトナー帯電性能を良好に維持することができている。よって、優れた低温定着性と、キャリアのトナー帯電性能の長期安定性とを両立させることができている。
実験番号3では、低温定着性のあるトナーAを使用していることで、優れた低温定着性が得られているが、トナー帯電量の変動率がかなり高く、40000枚プリント時には初期に比べてトナー帯電量が大きく低下した。これは、キャリアの樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3が存在していないことから、樹脂コート層Ca2が摩耗したり、樹脂コート層Ca2の上にトナーのスペント層Spが形成されたりして、キャリアのトナー帯電性能が経時的に低下したからである。よって、優れた低温定着性と、キャリアのトナー帯電性能の長期安定性とを両立させることができていない。
実験番号4では、低温定着性のあるトナーAを使用していることで、良好な低温定着性は得られている。しかしながら、現像装置が低ストレス現像装置5’であることから、キャリアAの樹脂コート層Ca2が経時的に削られていかずに、樹脂コート層Ca2の上にトナーのスペント層Spが形成されていく。これにより、40000枚プリント時の存在比率Bが初期よりも低下している。この結果、トナー帯電量の変動率が高くなって、40000枚プリント時におけるトナー帯電量を不足させてしまう。よって、優れた低温定着性と、キャリアのトナー帯電性能の長期安定性とを両立させることができていない。
実験番号5では、低温定着性を発揮しない比較トナーを用いていることから、トナーのスペントを発生させ難い。このため、キャリアAの樹脂コート層Ca2を経時的に摩耗させて、存在比率Baを増加させることから、トナー帯電量の変動率を大きく増加させてしまう。また、低温定着性を実現することができていない。よって、優れた低温定着性と、キャリアのトナー帯電性能の長期安定性とを両立させることができていない。
よって、実験番号6では、比較トナーを用いていることから、低温定着性を実現することができていない。軟化し難い比較トナーと、低ストレス現像装置5’との組み合わせを採用していることから、キャリアAの表面では、トナーのスペント層Spの成長が抑制されて、長期間に渡ってキャリアのトナー帯電性能を良好に維持することができている。しかしながら、低温定着性を実現できないことから、優れた低温定着性と、キャリアのトナー帯電性能の長期安定性とを両立させることができていない。
以上の実験結果に鑑みて、実施形態に係る複写機では、実験番号1又は実験番号2の条件を採用している。
次に、各実施例に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係る複写機の構成は、実施形態と同様である。
[第一実施例]
図16は、第一実施例に係る複写機の現像装置5を示す拡大構成図である。現像装置5においては、供給回収搬送路53aの内壁である底面に、突起70aが形成されている。これらの突起70aは、撹拌搬送スクリュー54の回転軸線方向に延在している。また、撹拌搬送路54aの底面に、3本の突起70bが形成されている。これらの突起70bは、供給回収スクリュー53の回転軸線方向に延在している。
突起70aや突起70bは、キャリアと摺擦することで、樹脂コート層Ca2の摩耗を促す。樹脂コート層Ca2の摩耗を促すことができれば、突起70aや突起70bの本数、配設位置、形状は特に限定されない。また、必ずしも供給回収搬送路53a及び撹拌搬送路54aの良好に突起に設ける必要はなく、何れか一方のみに突起を設けてもよい。なお、突起70aや突起70bを金属材料で構成すると、キャリアへのストレス付与量をより多くして、樹脂コート層Ca2の摩耗をより助長することができる。
また、撹拌搬送路54aの壁面に凸状部を設けた場合、通常の循環搬送路のような滑らかな壁面と比べて剤を攪拌する力が増加するので補給直後のトナーを効率よく帯電させるという効果が得られる。すなわち、通常の構成よりも良好な帯電状態で現像剤を現像スリーブに供給することが可能となる。
図示のように、供給回収搬送路53aの底面に突起70aを設けた構成では、通常の供給回収搬送路53aに比べて現像剤を攪拌する能力が高まる。これにより、現像によってトナー濃度を低下させた現像剤と、撹拌搬送路54aから送られてくる現像剤とを効率よく混合して、現像剤におけるトナー濃度ムラを低減することができる。よって、通常の構成に比べて、トナー濃度ムラを低減して、高質画質化を実現することができる。
[第二実施例]
図17は、第二実施例に係る複写機における供給回収スクリュー53を示す部分斜視図である。供給回収スクリュー53は、現像スリーブ51の回転軸方向に延在する搬送回転軸であるスクリュー軸53b中心に、搬送羽部であるスクリュー羽部53cが回転することによって供給回収搬送路53a内の現像剤Gを搬送する。
供給回収スクリュー53は、その羽部53cの外周部分53dが金属でできている。そして、外周部分が金属で出来ていない構成に比べて、キャリアの樹脂コート層Ca2の摩耗を促す。なお、第二実施例に係る複写機の突起70aと組み合わせると、樹脂コート層Ca2の摩耗を更に促すことができる。また、撹拌搬送スクリュー54も、供給回収スクリュー53と同様に、羽部の外周部分(先端部)を金属で構成してもよい。
[第三実施例]
図18は、第三実施例に係る現像装置5を示す構成図である。現像領域をから現像スリーブ51の表面移動方向上流側には、第一層厚規制部材たるドクターブレード52の他に、第二層厚規制部材82を有している。この第二層厚規制部材82は、現像スリーブ51の周方向における全域のうち、現像領域を通過した後、供給回収搬送路53aとの対向位置に進入する前の箇所に対して、所定の間隙(以下、第二規制ギャップという)を介して対向している。この第二規制ギャップは、ドクターブレード52によるドクターギャップよりも狭くなっている。
第二規制ギャップを通過する現像剤は、その直前の現像に伴ってトナー濃度を低下させていることから、第二層厚規制部材82との摩擦や、キャリア同士の摩擦により、樹脂コート層Ca2を効率良く摩耗させる。トナーのスペントを進行させ易い高画像面積の画像の現像を行っているときには、現像剤のトナー濃度がかなり低下している。この場合、スペントを進行させ易い高画像面積の画像を出力しているが、トナー濃度がかなり低下していて、樹脂コート層Ca2を摩耗させる作用をより強める。よって、高画像面積の画像を出力する場合であっても、トナーのスペントを良好に抑えることができる。
なお、第二層厚規制部材82を第三磁極P3の現像スリーブ表面の法線方向磁束密度が最大になる方向と略同一に設けたが、設置位置はこれに限るものではない。また、現像剤へのストレスをさらに強化する必要がある場合は間隙形成部材の設置個数を増やせばよい。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
トナーとキャリアとを含有する現像剤を循環搬送するための循環搬送路(例えば供給回収搬送路53a及び撹拌搬送路54aの組み合わせ)と、前記循環搬送路内で現像剤を搬送する搬送体(例えば供給回収スクリュー53や撹拌搬送スクリュー54)と、前記循環搬送路から供給される現像剤を自らの表面に担持した後、自らの表面移動に伴って潜像担持体との対向位置に搬送して前記潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体(例えば現像スリーブ51)とを有する現像装置(例えば現像装置5)であって、前記キャリアとして、電気陰性度が1.4以下である物質からなる微粒子を分散させた樹脂コート層(例えば樹脂コート層Ca2)を粒子芯材(例えば芯材Ca1)の表面上に被覆したものを用い、初期から4万頁分の画像を現像するまでの期間内に、前記キャリアの表面における前記微粒子の存在比率(例えば存在比率Ba)を初期よりも増加させるストレスを前記キャリアに付与することを特徴とするものである。
かかる構成において、樹脂コート層に分散せしめられた微粒子は、樹脂コート層の表面から露出した状態で、一般的な樹脂製のトナーと摺擦することで、トナーを反転現像方式で一般的に採用される極性であるマイナス極性に帯電させる。樹脂コート層中に分散している微粒子は、樹脂に比べて硬度が高い。そして、分散している微粒子のうち、樹脂コート層の表面から露出している微粒子と、搬送体(例えば供給回収スクリュー)や他のキャリアとの間では、強い摩擦力が作用することから、その微粒子の表面には、トナーのスペントが生じ難い。樹脂コート層の無垢の表面は、硬度が比較的低くて弾性があることから、トナーのスペントが固着してスペント層を形成することもある。このスペント層が、樹脂コート層の表面から露出している微粒子よりも突出するほどまで成長すると、微粒子の表面とスペント層との間に段差が生じることで、スペント層の突出部に対して側方から摩擦力が作用するようになる。この側方からの摩擦力により、スペント層が樹脂コート層の無垢の表面から剥離される。更に、樹脂コート層の表面から自らの一部を突出させている微粒子の突出部に対して側方から摩擦力が作用するようになったり、樹脂コート層の無垢の表面に対して搬送体などが直接摺擦するようになったりする。これにより、樹脂コート層の表面から突出している微粒子や、樹脂コート層の無垢の表面が削られて、樹脂コート層が経時的に摩耗していく。そして、その摩耗に伴って、それまで樹脂コート層の表面に露出していなかった微粒子が新たに露出するようになったり、既に露出していた微粒子の摩耗後の断面積が増加したりして、キャリア表面における微粒子の存在比率が初期よりも増加する。態様Aでは、初期から4万頁分の画像を現像するまでの期間内に、このようにキャリア表面における微粒子の存在比率を初期よりも増加させるストレスを現像装置内のキャリアに付与する。かかる構成では、実施形態で示した実験結果のように、樹脂コート層が摩耗に伴ってその厚みを低下させても、樹脂コート層に分散された微粒子とトナーとの摩擦により、トナーを長期間に渡って安定して帯電させることができる。よって、現像装置内において、粒子芯材の表面に樹脂コート層を被覆したキャリアによってトナーを確実に長期間に渡って良好に帯電させることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記キャリアとして、体積平均粒径が300[nm]以上、900[nm]以下であるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、樹脂コート層の表面からの微粒子突出高さ不足によるキャリアのトナー帯電性能の不足を抑えることができる。また、微粒子突出高さ不足によるキャリア全体に対するトナーのスペント層の形成を抑えることもできる。また、微粒子の体積平均粒径が大きすぎることによる微粒子の樹脂コート層からの離脱を抑えることもできる。
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、前記キャリアとして、前記樹脂コート層がアミノシランカップリング剤を含有する樹脂材料からなるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、初期状態のキャリアのトナー帯電性能をアミノシランカップリング剤の量で調整することができる。
[態様D]
態様Dは、態様A〜C何れかにおいて、前記トナーとして、80[℃]における貯蔵弾性率が1.9×10[Pa]以下であるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、トナーの低温定着性を良好に実現しつつ、キャリアのトナー帯電性能の経時低下を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、前記トナーとして、50[℃]における貯蔵弾性率が1.0×10[Pa]以上であり、且つ160[℃]における貯蔵弾性率が2.1×10[Pa]以下であるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、トナーの50[℃]における貯蔵弾性率が1.0×10[Pa]以上であることで、トナーに対して良好な耐熱保存性を発揮させることができる。加えて、トナーの160[℃]における貯蔵弾性率が2.1×10[Pa]以下であることで、トナーに対して、良好な耐オフセット性(定着ローラなどにトナーを転移させることを防止する)を発揮させることができる。
[態様F]
態様Fは、態様D又はEにおいて、前記トナーとして、トナー粒子が非晶質性高分子樹脂及び結晶性高分子樹脂を含有する材料からなるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、トナーに結晶性高分子を含有させることで、トナーに対して良好な低温定着性を発揮させることができる。また、トナーに結晶性高分子を含有させていることに起因して、キャリアに対してトナーのスペント層を付着させても、非晶質性高分子樹脂の作用で、スペント付着によるキャリアのトナー帯電性能の低下を抑えることができる。
[態様G]
態様Gは、態様Fにおいて、前記トナーとして、トナー粒子の示差走査熱量測定における昇温一回目のガラス転移温度と昇温二回目のガラス転移温度との差が10[℃]以上であるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、トナーに対して、良好な低温定着性、シャープメルト性、及び耐熱保存性を発揮させることができる。
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記トナーとして、トナー粒子が非晶質性ポリエステル樹脂を含有する材料からなり、前記非晶質性ポリエステル樹脂が分岐構造を有し、且つ、前記非晶質性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−60[℃]以上、0[℃]以下であるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、トナーに対して態様Gよりも更に良好な低温定着性及び耐熱保存性を発揮させることができる。
[態様I]
態様Iは、態様Hにおいて、前記トナーとして、前記トナー粒子が前記非晶質性ポリエステル樹脂たる第一非晶質性ポリエステル樹脂の他に、第二非晶質性ポリエステル樹脂を含有する材料からなり、前記第二非晶質性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が40[℃]以上、70[℃]以下であり、且つ、前記トナー粒子の示差走査熱量測定における昇温一回目のガラス転移温度が20[℃]以上、50[℃]以下であるものを用いることを特徴とするものである。かかる構成では、トナーに対して態様Hよりも更に良好な低温定着性及び耐熱保存性を発揮させることができる。
[態様J]
態様Jは、態様A〜Iの何れかにおいて、前記循環搬送路の内壁に複数の突起を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、複数の突起によってキャリアの樹脂コート層を良好に経時摩耗させることができる。
[態様K]
態様Kは、態様Jにおいて、前記搬送体として、自らの回転に伴って現像剤を回転軸線方向に搬送するスクリュー部材を用い、且つ、前記スクリュー部材における螺旋羽根の少なくとも羽根先端部を金属材料で構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、スクリュー部材の羽根先端部によってキャリアの樹脂コート層を良好に経時摩耗させることができる。
[態様L]
態様Lは、態様A〜Kの何れかにおいて、前記現像剤担持体の周面における全域のうち、表面移動に伴って前記循環搬送路との対向位置を通過した後、前記潜像担持体との対向位置に進入する前の領域に対して所定の間隙を介して対向して前記現像剤担持体上の現像剤の層厚を規制する第一層厚規制部材と、前記全域のうち、表面移動に伴って前記潜像担持体との対向位置を通過した後、前記循環搬送路との対向位置に進入する前の領域に対して前記間隙よりも狭い間隙を介して対向して前記現像剤担持体上の現像剤の層厚を規制する第二層厚規制部材とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、第二層厚規制部材の作用によってキャリアへのストレス付与を促進することで、キャリアの樹脂コート層を良好に経時摩耗させることができる。
[態様M]
態様Mは、潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像を現像する現像装置と、前記潜像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電後の前記潜像担持体の表面に潜像を書き込む潜像書込手段とのうち、前記現像装置と、前記潜像担持体、前記帯電手段、及び前記潜像書込手段における少なくとも1つとを1つのユニットとして共通の保持体に保持した作像ユニットにおいて、前記現像装置として、態様A〜Lの何れかを用いたことを特徴とするものである。
[態様N]
態様Nは、潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像を現像する現像装置と、前記潜像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電後の前記潜像担持体の表面に潜像を書き込む潜像書込手段とを備える画像形成装置において、前記現像装置として、態様A〜Lの何れかを用いたことを特徴とするものである。
[態様O]
態様Oは、潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像を現像する現像装置と、前記潜像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電後の前記潜像担持体の表面に潜像を書き込む潜像書込手段とを備え、且つ、トナー及びキャリアを含有する現像剤を循環搬送するための循環搬送路と、前記循環搬送路内で現像剤を搬送する搬送体と、前記循環搬送路から供給される現像剤を自らの表面に担持した後、自らの表面移動に伴って潜像担持体との対向位置に搬送して前記潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体とを前記現像装置に有する画像形成装置であって、前記キャリアとして、電気陰性度が1.4以下である物質からなる微粒子を分散させた樹脂コート層を粒子芯材の表面上に被覆したものを用い、
初期から4万頁分の画像を現像するまでの期間内に、前記現像装置内の前記キャリアの表面における前記微粒子の存在比率を初期よりも増加させるストレスを前記キャリアに付与することを特徴とするものである。
1Y,1M,1C,1K:感光体(潜像担持体)
5:現像装置
12:露光装置(潜像書込手段)
51:現像スリーブ(現像剤担持体)
53:供給回収スクリュー(搬送体)
53a:供給回収搬送路(循環搬送路の一部)
54:撹拌搬送スクリュー(搬送体)
54a:撹拌搬送路(循環搬送路の一部)
a1:芯材(粒子芯材)
a2:樹脂コート層
特開2009−47886号公報 特許第5534409号

Claims (15)

  1. トナーとキャリアとを含有する現像剤を循環搬送するための循環搬送路と、前記循環搬送路内で現像剤を搬送する搬送体と、前記循環搬送路から供給される現像剤を自らの表面に担持した後、自らの表面移動に伴って潜像担持体との対向位置に搬送して前記潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体とを有する現像装置であって、
    前記キャリアとして、電気陰性度が1.4以下である物質からなる微粒子を分散させた樹脂コート層を粒子芯材の表面上に被覆したものを用い、
    初期から4万頁分の画像を現像するまでの期間内に、前記キャリアの表面における前記微粒子の存在比率を初期よりも増加させるストレスを前記キャリアに付与することを特徴とする現像装置。
  2. 請求項1の現像装置において、
    前記キャリアとして、体積平均粒径が300[nm]以上、900[nm]以下であるものを用いることを特徴とする現像装置。
  3. 請求項1又は2の現像装置において、
    前記キャリアとして、前記樹脂コート層がアミノシランカップリング剤を含有する樹脂材料からなるものを用いることを特徴とする現像装置。
  4. 請求項1乃至3の何れかの現像装置において、
    前記トナーとして、80[℃]における損失弾性率が1.9×10[Pa]以下であるものを用いることを特徴とする現像装置。
  5. 請求項4の現像装置において、
    前記トナーとして、50[℃]における貯蔵弾性率が1.0×10[Pa]以上であり、且つ160[℃]における損失弾性率が2.1×10[Pa]以下であるものを用いることを特徴とする現像装置。
  6. 請求項4又は5の現像装置において、
    前記トナーとして、トナー粒子が非晶質性高分子樹脂及び結晶性高分子樹脂を含有する材料からなるものを用いることを特徴とする現像装置。
  7. 請求項6の現像装置において、
    前記トナーとして、トナー粒子の示差走査熱量測定における昇温一回目のガラス転移温度と昇温二回目のガラス転移温度との差が10[℃]以上であるものを用いることを特徴とする現像装置。
  8. 請求項7の現像装置において、
    前記トナーとして、トナー粒子が非晶質性ポリエステル樹脂を含有する材料からなり、前記非晶質性ポリエステル樹脂が分岐構造を有し、且つ、前記非晶質性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−60[℃]以上、0[℃]以下であるものを用いることを特徴とする現像装置。
  9. 請求項8の現像装置において、
    前記トナーとして、前記トナー粒子が前記非晶質性ポリエステル樹脂たる第一非晶質性ポリエステル樹脂の他に、第二非晶質性ポリエステル樹脂を含有する材料からなり、前記第二非晶質性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が40[℃]以上、70[℃]以下であり、且つ、前記トナー粒子の示差走査熱量測定における昇温一回目のガラス転移温度が20[℃]以上、50[℃]以下であるものを用いることを特徴とする現像装置。
  10. 請求項1乃至9の何れかの現像装置において、
    前記循環搬送路の内壁に複数の突起を設けたことを特徴とする現像装置。
  11. 請求項10の現像装置において、
    前記搬送体として、自らの回転に伴って現像剤を回転軸線方向に搬送するスクリュー部材を用い、且つ、前記スクリュー部材における螺旋羽根の少なくとも羽根先端部を金属材料で構成したことを特徴とする現像装置。
  12. 請求項1乃至11の何れかの現像装置において、
    前記現像剤担持体の周面における全域のうち、表面移動に伴って前記循環搬送路との対向位置を通過した後、前記潜像担持体との対向位置に進入する前の領域に対して所定の間隙を介して対向して前記現像剤担持体上の現像剤の層厚を規制する第一層厚規制部材と、前記全域のうち、表面移動に伴って前記潜像担持体との対向位置を通過した後、前記循環搬送路との対向位置に進入する前の領域に対して前記間隙よりも狭い間隙を介して対向して前記現像剤担持体上の現像剤の層厚を規制する第二層厚規制部材とを設けたことを特徴とする現像装置。
  13. 潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像を現像する現像装置と、前記潜像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電後の前記潜像担持体の表面に潜像を書き込む潜像書込手段とのうち、前記現像装置と、前記潜像担持体、前記帯電手段、及び前記潜像書込手段における少なくとも1つとを1つのユニットとして共通の保持体に保持した作像ユニットにおいて、
    前記現像装置として、請求項1乃至12の何れかの現像装置を用いたことを特徴とする作像ユニット。
  14. 潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像を現像する現像装置と、前記潜像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電後の前記潜像担持体の表面に潜像を書き込む潜像書込手段とを備える画像形成装置において、
    前記現像装置として、請求項1乃至12の何れかの現像装置を用いたことを特徴とする作像ユニット。
  15. 潜像を担持する潜像担持体と、前記潜像を現像する現像装置と、前記潜像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電後の前記潜像担持体の表面に潜像を書き込む潜像書込手段とを備え、且つ、トナー及びキャリアを含有する現像剤を循環搬送するための循環搬送路と、前記循環搬送路内で現像剤を搬送する搬送体と、前記循環搬送路から供給される現像剤を自らの表面に担持した後、自らの表面移動に伴って潜像担持体との対向位置に搬送して前記潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体とを前記現像装置に有する画像形成装置であって、
    前記キャリアのキャリアとして、電気陰性度が1.4以下である物質からなる微粒子を分散させた樹脂コート層を粒子芯材の表面上に被覆したものを用い、
    初期から4万頁分の画像を現像するまでの期間内に、前記現像装置内の前記キャリアの表面における前記微粒子の存在比率を初期よりも増加させるストレスを前記キャリア粒子に付与することを特徴とする画像形成装置。
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