以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態では、吸気弁側に適用したものである。
〔第1実施形態〕
このバルブタイミング制御装置は、図1及び図2に示すように、内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動する駆動回転体であるタイミングスプロケット1と、シリンダヘッド01上に軸受02を介して回転自在に支持され、前記タイミングスプロケット1から伝達された回転力によって回転するカムシャフト2と、タイミングスプロケット1の前方位置に配置されたチェーンカバー5に固定されたカバー部材3と、タイミングスプロケット1とカムシャフト2の間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構4と、を備えている。
前記タイミングスプロケット1は、全体が鉄系金属によって環状一体に形成され、内周面が段差径状のスプロケット本体1aと、該スプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、巻回された図外のタイミングチェーンを介してクランクシャフトからの回転力を受ける歯車部1bと、前記スプロケット本体1aの前端側に一体に設けられた内歯構成部6と、から構成されている。
また、このタイミングスプロケット1は、スプロケット本体1aと前記カムシャフト2の前端部に設けられた後述する従動部材17との間に、1つの大径ボールベアリング7が介装されており、この大径ボールベアリング7によって、タイミングスプロケット1と前記カムシャフト2が相対回転自在に支持されている。
前記大径ボールベアリング7は、外輪7aがスプロケット本体1aの内周側に固定されているのに対して内輪7bが従動部材17の外周側に固定されている。
前記スプロケット本体1aは、内周側に、前記カムシャフト2側に開口した円環溝状の外輪固定部1cが切欠形成されている。
この外輪固定部1cは、段差径状に形成されて、前記大径ボールベアリング7の外輪7aが軸方向から圧入されると共に、該外輪7aの軸方向一方側の位置決めをするようになっている。
前記内歯構成部6は、前記スプロケット本体1aの前端部外周側に一体に設けられ、位相変更機構4の前方へ延出した円筒状に形成されていると共に、内周には波形状の複数の内歯6aが形成されている。
また、前記内歯構成部6の前端側には、後述するモータハウジング18の後端面が当接配置されており、このモータハウジング18の後端面外周側には、6本のボルト10が螺着する6つの雌ねじ孔18dが円周方向の等間隔位置に設けられている。
さらに、スプロケット本体1aの歯車部1b側の前端面には、円環状の保持プレート8が配置されている。この保持プレート8は、金属板材によって一体に形成され、図1に示すように、外径が前記スプロケット本体1aの外径とほぼ同一に設定されている。また、保持プレート8は、内径が前記大径ボールベアリング7の外輪7aの内径よりも小さい径に設定されて、内周部8aが前記外輪7aの軸方向の外端面に当接配置されている。また、前記内周部8aの内周縁所定位置には、径方向内側、つまり中心軸方向に向かって突出したストッパ凸部8bが一体に設けられている。
このストッパ凸部8bは、図1及び図4に示すように、ほぼ扇状に形成されて、先端縁が後述するストッパ溝2bの円弧状内周面に沿った円弧状に形成されている。さらに、前記保持プレート8の外周部には、6つのボルト10が挿通する6つのボルト挿通孔8cが周方向の等間隔位置に貫通形成されている。
前記スプロケット本体1a(内歯構成部6)及び保持プレート8の各外周部には、それぞれボルト挿通孔1c、8cが周方向のほぼ等間隔位置に6つ貫通形成されている。また、これらボルト挿通孔1c、8cに挿通した前記各ボルト10が前記雌ねじ孔18dに締結することによって前記タイミングスプロケット1と保持プレート8及びモータモータハウジング18が軸方向から共締め固定されている。
なお、前記スプロケット本体1aと内歯構成部6は、後述する減速機構14のケーシングとして構成されている。
前記チェーンカバー5は、図1に示すように、機関本体であるシリンダヘッド01と図外のシリンダブロックの前端側に前記タイミングスプロケット1に巻回されたタイミングチェーンを覆うよう上下方向に沿って配置固定されている。また、前記位相変更機構4に対応した位置に形成された開口部を構成する環状壁5aの円周方向の4箇所に、ボス部5bが一体に形成されていると共に、環状壁5aから各ボス部5bの内部に亘って雌ねじ孔5cがそれぞれ形成されている。
前記カバー部材3は、図1、図2に示すように、アルミニウム合金材よってカップ状に一体に形成されて、モータハウジング18の前端部を覆うように配置され、膨出状のカバー本体3aと、該カバー本体3aの開口側の外周縁に一体に形成された円環状の取付フランジ3bと、を備えている。また、このカバー部材3の内面とモータハウジング18の前端部外面との間には、カップ状の空間部Cが画成されている。
前記カバー本体3aは、外周部側の所定位置に円筒壁3cが軸方向に沿って一体に突設され、この円筒壁3cの内部軸方向に保持用孔が貫通形成されている。
また、カバー本体3aの前記円筒壁3cの下部側には、円筒部3dが前記円筒壁3cと平行かつ軸方向に沿って突設されている。この円筒部3dは、上端部が前記円筒壁3cの下端部と一体に結合されて、内部軸方向に前記カバー本体3aの外側(外気)と前記空間部Cとの間を連通する連通孔3eが貫通形成されていると共に、この連通孔3eの先端側には、外端側内部にシールキャップ60が圧入固定されている。
前記連通孔3eは、前記カバー部材3をチェーンカバー5に組み付けた後に、後述のモータ出力軸19と前記カバー部材3との相対位置を調整するための位置決め作業用孔として機能するものである。
前記シールキャップ60は、図1に示すように、合成樹脂材によって縦断面ほぼコ字形状に形成され、内部に円形状の通気用フィルタ61を有している。
前記取付フランジ3bは、周方向のほぼ等間隔位置(約90°位置)に設けられた4つのボス部に、前記チェーンカバー5の各雌ねじ孔5cに螺着するボルト11が挿通するボルト挿通孔3fがそれぞれ貫通形成されて、前記各ボルト11によってカバー部材3がチェーンカバー5に固定されている。
また、前記カバー本体3aの外周側の段差部内周面と前記モータハウジング18の外周面との間には、大径なオイルシール12が介装されている。この大径オイルシール12は、一般的なものであって、前記空間部Cを液密的に封止して、主として前記タイミングスプロケット1の回転駆動に伴って飛散した潤滑油の前記空間部C内への侵入を阻止するようになっている。
前記カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの同じカムプロフィールの駆動カムを有していると共に、前端部に前記フランジ部2aが一体に設けられている。
このフランジ部2aは、図1に示すように、外径が後述する従動部材17の固定端部17aの外径よりも僅かに大きく設定されて、各構成部品の組み付け後に、前端面の外周部が前記大径ボールベアリング7の内輪7bの軸方向外端面に当接配置されるようになっている。また、フランジ部2aの前端面が、従動部材17に軸方向から当接した状態でカムボルト15によって軸方向から結合されている。
また、前記フランジ部2aの外周には、図4に示すように、前記保持プレート8のストッパ凸部8bが係入するストッパ凹溝2bが円周方向に沿って形成されている。このストッパ凹溝2bは、円周方向へ所定長さの円弧状に形成されて、この長さ範囲で回動したストッパ凸部8bの両端縁が周方向の対向縁2c、2dにそれぞれ当接することによって、タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の最大進角側あるいは最大遅角側の相対回転位置を規制するようになっている。
前記カムボルト15は、図1に示すように、頭部15aの端面が軸受部材である小径ボールベアリング16の内輪を軸方向から支持していると共に、軸部15bの外周に前記カムシャフト2の端部から内部軸方向に形成された雌ねじに螺着する雄ねじ15cが形成されている。
前記従動部材17は、鉄系金属によって一体に形成され、図1に示すように、後端側(カムシャフト2側)に形成された円板状の固定端部17aと、該固定端部17aの内周前端面から軸方向へ突出した円筒部17bと、を備えている。
また、固定端部17aの外周部には、後述する減速機構14の一部を構成する複数のローラ39を保持する円筒状の保持器40が一体に設けられている。
前記固定端部17aは、後端面が前記カムシャフト2のフランジ部2aの前端面に当接配置されて、前記カムボルト15の軸力によってフランジ部2aに軸方向から圧接固定されている。
前記円筒部17bは、図1に示すように、中央に前記カムボルト15の軸部15bが挿通される挿通孔17dを有していると共に、外周側には軸受部材であるニードルベアリング36が設けられている。
前記位相変更機構4は、前記従動部材17の円筒部17bの前端側に配置された前記電動モータ13と、該電動モータ13の回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機構14と、から主として構成されている。
前記電動モータ13は、図1及び図2に示すように、ブラシ付きのDCモータであって、前記タイミングスプロケット1と一体に回転するヨークである前記モータハウジング18と、該モータハウジング18の内部に回転自在に設けられたモータ出力軸19と、モータハウジング18の内周面に固定されたステータである半円弧状の一対の永久磁石20と、モータハウジング18の前端側を封止する前記給電プレート21と、を備えている。
前記モータハウジング18は、鉄系金属材をプレス成形によって有底筒状に形成されていると共に、後端側に円板状の隔壁18aを有し、該隔壁18aのほぼ中央に後述する偏心軸部23挿通される大径な軸挿通孔18bが形成されている。また、前記軸挿通孔18bの孔縁には、カムシャフト2の軸方向へ突出した円筒状の延出部18cが一体に設けられている。また、前記隔壁18aの前端面外周側には、前記雌ねじ孔18dが一体に設けられている。
前記モータ出力軸19は、段差円筒状に形成されてアーマチュアとして機能し、軸方向のほぼ中央位置に形成された段差部を介してカムシャフト2側の大径部19aと、その反対側の小径部19bと、から構成されている。前記大径部19aは、外周に鉄心ロータ22が固定されていると共に、後端側に減速機構14の一部を構成する偏心軸部23が一体に形成されている。
一方、前記小径部19bは、図1、図7及び図8に示すように、外周面にいわゆるナーリング加工部19fが形成されていると共に、該ナーリング加工部19fの軸方向ほぼ中央位置に円環状のナーリング溝19cが形成されていると共に、このナーリング溝19cを含むナーリング加工部19fの上を覆う形でコミュテータ24が圧入固定されている。
前記永久磁石20は、全体が円筒状に形成されて円周方向に複数の磁極を有していると共に、その軸方向の位置が前記鉄心ロータ22の軸方向の中心に対して前記給電プレート21側にオフセット配置されている。
前記鉄心ロータ22は、複数の磁極を持つ磁性材によって形成され、外周側がコイル25のコイル線を巻回させるスロットを有するボビンとして構成されている。
前記コミュテータ24は、前記小径部19b(ナーリング溝19c)の外周面に圧入される樹脂製の円環部材24aと、該円環部材24aの外周面に一体的に固定された円環状の導電材24bと、から構成されている。このコミュテータ24は、その外径が前記大径部19aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、軸方向の長さが小径部19bよりも僅かに短く設定されている。前記導電材24bは、前記鉄心ロータ22の極数と同数に分割された各セグメントに前記コイル25の引き出されたコイル線の端末が電気的に接続されている。
前記給電プレート21は、図5にも示すように、鉄系金属材からなる円盤状の剛性プレート部21aと、該剛性プレート部21aの前後両側面にモールドされた円板状の樹脂部21bと、から構成されている。
前記剛性プレート部21aは、図1に示すように、前記樹脂部21bに覆われていない外周部が前記モータハウジング18の前端部内周に形成された円環状の段差状の凹溝にかしめによって位置決め固定されていると共に、中央部にはモータ出力軸19の一端部などが挿通される軸挿通孔21cが貫通形成されている。また、剛性プレート21aは、前記軸挿通孔21cの内周縁に連続した所定の位置に異形状の2つの保持孔21d、21eが打ち抜きにより形成されており、この各保持孔21d、21eには、後述するブラシホルダ27a、27bが嵌入保持されるようになっている。
また、前記給電プレート21は、図1、図5に示すように、前記剛性プレート21aの各保持孔21d、21eの内側に配置されて、前記樹脂部21bの前端部に複数のリベット26により固定された銅製の一対のブラシホルダ27a、27bと、該各ブラシホルダ27a、27bの内部に径方向に沿って摺動自在に収容配置されて、コイルスプリング28a、28bのばね力で円弧状の各先端面が前記コミュテータ24の導電材24bの外周面に径方向から弾接する整流子である一対の切換用ブラシ29a、29bと、前記樹脂部21bの前端部側に、それぞれの外側面を露出した状態でモールド固定された内外二重の給電用スリップリング30a,30bと、前記各切換用ブラシ29a、29bと各スリップリング30a,30bを電気的に接続するハーネス31a、31bと、が設けられている。
前記カバー部材3のカバー本体3aには、合成樹脂材によって一体的にモールドされた保持体32が固定されている。この保持体32は、図1、図2に示すように、側面視ほぼクランク形状に形成され、前記カバー部材3の保持用孔に挿入されるほぼ有底円筒状のブラシ保持部32aと、該ブラシ保持部32aと反対側に有するコネクタ部32bと、前記ブラシ保持部32aの一側面に一体に突設されて、前記カバー本体3aにボルト固定されるボス部32cと、内部に一部が埋設された一対の給電用端子片33と、から主として構成されている。
前記ブラシ保持部32aは、図1及び図2に示すように、ほぼ水平方向(軸方向)に延設されて、内部の上下位置に平行に形成された一対の角柱状の固定用孔内に一対の角筒状のブラシホルダがそれぞれ圧入固定されている。この各ブラシホルダの内部に給電用ブラシ34a、34bが軸方向へそれぞれ摺動自在に保持されている。
また、このブラシ保持部32aは、図1及び図6に示すように、基部側外周に形成された円環状の嵌着溝内に前記保持用孔の内周面に弾接する前記環状シール部材33が嵌着保持されている。この環状シール部材33によって、前記空間部Cとカバー部材3の外部との間を液密的に封止するようになっている。
前記各ブラシホルダは、前後端に開口部が形成されて、前端側の開口部から前記各給電用ブラシ34a、34bの先端部が進退自在になっていると共に、各後端側の開口部を介して図外のピグテールハーネスの一端部が前記各給電用ブラシ34a、34bの後端に半田付けによって接続されている。
前記各給電用ブラシ34a、34bは、角柱状に形成されて所定の軸方向長さに設定されていると共に、平坦な各先端面が前記各スリップリング30a,30bに軸方向からそれぞれ当接するようになっている。
また、前記ブラシ保持部28の各ブラシホルダの内部後端側には、前記各給電用ブラシ34a、34bを各スリップリング30a,30b方向へ付勢する一対のコイルばね35a,35bが設けられている。
前記一対の給電用端子片31は、図1に示すように、上下方向に沿って平行かつほぼクランク状に形成されて、一方側(下端側)の各端子が露出状態に配置され、他方側(上端側)の各端子が前記コネクタ部32bの雌型嵌合溝32c内に突設されている。前記一方側の各端子は、それぞれが底壁28fの上面に当接配置されていると共に、図外の一対のピグテールハーネスの他端部が半田付けによって接続されている。
前記コネクタ部32bは、上端部に図外の雄型端子が挿入される前述の嵌合溝28dに臨む前記他方側端子31b、31bが雄型端子を介して図外のコントロールユニットに電気的に接続されている。
前記モータ出力軸19と偏心軸部23は、前記従動部材17の円筒部17bの外周面に設けられた前記小径ボールベアリング16と、該小径ボールベアリング16の軸方向側部に配置された前記ニードルベアリング36とによって回転自在に支持されている。
前記小径ボールベアリング16は、内輪が前記従動部材17の円筒部17bの前端縁とカムボルト15の頭部10aとの間に挟持状態に固定されている一方、外輪が前記偏心軸部23の段差拡径状の内周面に圧入固定されていると共に、前記内周面に形成された段差縁に当接して軸方向の位置決めがなされている。
また、前記モータ出力軸19(偏心軸部23)の外周面と前記モータハウジング18の延出部18cの内周面との間には、減速機構14の内部から電動モータ13内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシール37が設けられている。このオイルシール37は、電動モータ13と減速機構14とを、シール機能をもって隔成するものである。
前記コントロールユニットは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類から情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出し、これに基づいて機関制御を行うと共に、前記給電用ブラシ34a、34bや各スリップリング30a,30b、切換用ブラシ29a、29b、コミュテータ24などを介してコイル25に通電してモータ出力軸19の回転制御を行い、減速機構14によってカムシャフト2のタイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
前記減速機構14は、図1〜図3に示すように、前記モータ出力軸19の大径部19aの後端に一体に設けられて、偏心回転運動を行う偏心軸部23と、該偏心軸部23の外周に設けられた中径ボールベアリング38と、該中径ボールベアリング38の外周に設けられた前記ローラ39と、該ローラ39を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する前記保持器40と、該保持器40と一体の前記従動部材17と、から主として構成されている。
前記偏心軸部23は、外周面に形成されたカム面23aの軸心Yがモータ出力軸19の軸心Xから径方向へ僅かに偏心している。
前記中径ボールベアリング38は、前記ニードルベアリング36の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置され、内輪38aと外輪38b及び該両輪38a、38bとの間に介装されたボール38cとから構成されている。前記内輪38aは、前記偏心軸部23の外周面に圧入固定されているのに対して、前記外輪38bは、軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。つまり、この外輪38bは、軸方向の電動モータ13側の一端面がどの部位にも接触せず、また軸方向の他端面がこれに対向する保持器40の内側面との間に微小な第1隙間が形成されてフリーな状態になっている。また、この外輪38bの外周面には、前記各ローラ39の外周面が転動自在に当接していると共に、この外輪38bの外周側には、円環状の第2隙間が形成されて、この第2隙間によって中径ボールベアリング38全体が前記偏心軸部23の偏心回転に伴って径方向へ移動可能、つまり偏心動可能になっている。
前記保持器40は、図1に示すように、前記固定端部17aの外周部前端から前方へ断面ほぼL字形状に折曲されて、前記円筒部17bと同方向へ突出した有底円筒状に形成されている。
この保持器40の筒状先端部40aは、前記モータハウジング18の隔壁18a方向へ延出していると共に、周方向のほぼ等間隔位置には、図1及び図2に示すように、前記複数のローラ39をそれぞれ転動自在に保持するほぼ長方形状の複数のローラ保持孔40bが周方向の等間隔位置に形成されている。このローラ保持孔40b(ローラ39)は、その全体の数が前記内歯構成部6の内歯6aの全体の歯数よりも少なくなっている。これによって、減速比を得るようになっている。
前記各ローラ39は、鉄系金属によって形成され、前記中径ボールベアリング38の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ前記内歯構成部6の内歯6aに嵌入すると共に、保持器40のローラ保持孔40bの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向に揺動運動させるようになっている。
前記減速機構14の内部には、潤滑油供給手段によって潤滑油が供給されるようになっている。この潤滑油供給手段は、前記シリンダヘッド01の軸受02の内部に形成されて、図外のメインオイルギャラリーから潤滑油が供給される油供給通路41と、前記カムシャフト2の内部軸方向に形成されて、前記油供給通路41にグルーブ溝を介して連通した油供給孔42と、前記従動部材17の内部軸方向に貫通形成されて、一端が該油供給孔42に開口し、他端が前記ニードルベアリング36と中径ボールベアリング38の付近に開口した前記小径な油孔43と、同じく従動部材17に貫通形成された図外の油排出孔と、から構成されている。前記油供給通路41と油供給孔42及び油孔43によって油路が構成されている。
この潤滑油供給手段によって、前記減速機構14内に潤滑油が供給されて滞留し、ここから中径ボールベアリング38や各ローラ39を潤滑すると共に、さらには偏心軸部23とモータ出力軸19の内部に流入してニードルベアリング36や小径ボールベアリング16などの可動部の潤滑に供されるようになっている。
前記減速機構14内に滞留した潤滑油は、前記小径オイルシール37によってモータハウジング18内へのリークが抑制されている。
また、前記モータ出力軸19の内部に流入した潤滑油は、小径部19bの内周面19dに圧入固定されたシール栓体44によって、前記カバー部材3とモータハウジング18の前端部との間の空間部C方向へのリークが抑制されるようになっている。
前記シール栓体44は、図1、図6、図8に示すように、縦断面コ字形状に形成されて、弾性部材である合成ゴムによって有底円筒状に形成された本体45と、該本体45の内部に埋設された金属製の芯材46と、から構成されて、モータ出力軸19の小径部19bの先端開口部19eから圧入されて軸方向のほぼ中央位置に保持されている。
前記本体45は、平坦な円盤状に形成された底壁部45aと、該底壁部45aの外周縁に一体に形成された円筒部45bと、から構成されている。
前記円筒部45bは、外周面45cが前記小径部19bの内周面19dに弾接すると共に、前記外周面45cの外径が前記小径部19bの内径よりも僅かに大きく形成されて圧入代が確保されている。
前記芯材46は、本体45の形状を保持すると共に、補強するものであって、本体45の形状とほぼ同じ断面ほぼ有底円筒状の相似形状に形成されて、全体が本体45内の中央に埋設されている。また芯材46の底壁46aのほぼ中央位置には、シール栓体44を治具によって取り出す際に、治具を引っ掛けるための円形孔46bが形成されている。なお、この円形孔46b内にも前記本体45の合成ゴムが充填されている。
また、前記小径部19bの内周面19dの前記シール栓体44が保持される位置には、図6及び図7に示すように、規制機構の一部である円環状の規制溝47が形成されている。
この規制溝47は、拡大した図6に示すように、全体が断面ほぼ横し字形状に形成されており、溝底面からカバー部材3側の一方の内側面が横断面ほぼ円弧状に形成された円弧部47aと、溝底面、つまり前記円弧部47aのカムボルト15側の底部端縁から延びたテーパ面47bとから構成されている。
前記円弧部47aは、その曲率半径が比較的小さく形成されている一方、前記テーパ面47bは、円弧部47aの底部側からカムボルト14方向へ所定の角度でもって立ち上がり傾斜状に形成されている。
そして、前記シール栓体44を所定の治具によって小径部19b内に外側(先端開口部19e)から内部へ合成ゴムの反力に抗して押し込むと、図6に示すように、円筒部45の外周面45cが内方へ僅かに圧縮変形しつつ該外周面45cが小径部19bの内周面19dに摺接しながら前記内周面19dの規制溝47の位置に到達する。
そうすると、円筒部45の外周面45cの前記規制溝47に位置する部位が自身の弾性変形によって径方向外側へ弾性復帰して膨出し、この膨出部45dが規制溝47内に嵌入係止する。これによって、前記シール栓体44は、規制溝47によって強固に固定されることになる。この規制溝47と前記円筒部45の膨出部45dによって規制機構が構成されている。
また、前記小径部19bの内周面19dの前記規制溝47より奥には、図6〜図8に示すように、円環状の嵌着溝48が形成されている。この嵌着溝48は、拡縮変形可能な金属製のストッパリング49が嵌着固定されている。このストッパリング49は、前記シール栓体44を小径部19bの内部に圧入する前に予め自身の弾性変形作用によって前記嵌着溝47内に嵌着固定しておいて、その後、前記シール栓体44を所定に治具で小径部19内に圧入した際に、過度な圧入移動を規制するものである。
そして、前記小径部19bの外周面に形成された前記ナーリング溝19cは、前記規制溝47と嵌着溝48との間のほぼ中間位置に形成されている。
〔本実施形態の作動〕
以下、本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の作動を簡単に説明する。
まず、機関のクランクシャフトの回転駆動に伴ってタイミングチェーンを介してタイミングスプロケット1が回転すると、この回転力が内歯構成部6を介してモータハウジング18に伝達されて、該モータハウジング18が同期回転する。一方、前記内歯構成部6の回転力が、各ローラ39から保持器40及び従動部材17を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2の各駆動カムが各吸気弁を開閉作動させる。
そして、機関始動後の所定の機関運転時には、前記コントロールユニットから各端子片31と各ピグテールハーネス及び給電用ブラシ34a、34bや各スリップリング30a,30bなどを介して電動モータ13のコイル25に通電される。これによって、モータ出力軸19が回転駆動され、この回転力が減速機構14を介してカムシャフト2に減速された回転力が伝達される。
すなわち、前記モータ出力軸19の回転に伴い偏心軸部23が偏心回転すると、各ローラ39がモータ出力軸19の1回転毎に保持器40の各ローラ保持孔40bで径方向へガイドされながら前記内歯構成部6の一つの内歯6aを乗り越えて隣接する他の内歯6aに転動しながら移動し、これを順次繰り返しながら円周方向へ転接する。この各ローラ39の転接によって前記モータ出力軸19の回転が減速されつつ前記従動部材17に回転力が伝達される。このときの減速比は、前記内歯6aの数とローラ39の数の差によって任意に設定することが可能である。
これにより、カムシャフト2がタイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換されて、吸気弁の開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御するのである。
なお、前記タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の正逆相対回転の最大位置規制(角度位置規制)は、前記ストッパ凸部8bの各側面が前記ストッパ凹溝2bの各対向面2c、2dのいずれか一方に当接することによって行われる。
このように、機関運転状態に応じて、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ最大に変換されることによって、機関の燃費や出力の向上を図ることができる。
そして、本実施形態では、前記モータ出力軸19の小径部19bの内周面19dに規制溝47を覆う形で圧入されたシール栓体44は、図6にも示すように、圧入後において、本体45の円筒部45b自身の弾性変形を利用して外周面45cの軸方向ほぼ中央の部位が規制溝47内で徐々に膨張変形して膨出部45dとなり、この膨出部45dが前記規制溝47に嵌入係止された状態になる。このため、前記シール栓体44は、円筒部45bの外周面45cのほぼ全体が内周面19dに圧接しつつ規制溝47に膨出部45dが嵌合係止することによって小径部19bの内周面に強固に結合されることになる。
このため、たとえ機関の冷間始動時において、前記モータ出力軸19の内部に供給された潤滑油の粘度が高く前記シール栓体44にモータ出力軸19の高い内圧によって先端開口部19e方向への圧力が作用したとしても、シール栓体44は、先端開口部19e方向へ不用意に移動することがない。この結果、シール栓体44のモータ出力軸19内から先端開口部19eから空間部C内への脱落を抑制することができる。
特に、前記規制溝47は、カバー部材3側が比較的曲率半径が小さい円弧部47aになっていることから、前記モータ出力軸19の内圧がシール栓体44に作用すると、前記膨出部45dの前端部が、図6の矢印で示すように、円弧部47aに斜めから圧接して規制されることになる。
したがって、前記膨出部45dによる係止力が大きくなって、前記シール栓体44の先端開口部19e方向への不用意な移動を充分に抑制することができる。
なお、規制溝47のテーパ面47bは、圧入された前記シール栓体44の小径ボールベアリング16方向への圧入移動を妨げることなく、比較的スムーズに移動案内するようになっている。
また、前記シール栓体44を小径部19bの内周面19dに治具によって圧入する際に、予め嵌着溝48に嵌着固定されている前記ストッパリング49によって小径ボールベアリング16方向への過度な移動を規制することができる。
また、前記シール栓体44や大径オイルシール12のそれぞれのシール効果によって前記空間部C内が密閉状態となるが、前記カバー部材3の円筒部3d内にシールキャップ60を設けたことから、前記装置の駆動中に、前記各スリップリング30a,30bに各給電用ブラシ34a、34bが摺動してこの摩擦熱などにより前記空間部C内の温度が上昇しても、この空間部C内の空気を、通気用フィルタ61を通して速やかに排出することができる。これにより、前記空間部Cの内圧の上昇を効果的に抑制することが可能になる。これによって、例えば、前記大径オイルシール12やシール栓体44などの部品の変形や脱落を十分に抑制することができる。
しかも、前記通気用フィルタ59は、空間部C内の空気やカバー部材3外の外気を透過させるものの、カバー部材3の外からの水や塵芥などの透過を抑制することができるので、空間部C内への水や塵芥の侵入を抑制することができる。
さらに、前記ナーリング溝19cは、前記規制溝47と嵌着溝48の軸方向の中間位置に形成されていることから、モータ出力軸19の小径部1bの剛性の低下を抑制できる。つまり、前記ナーリング溝19cと例えば規制溝47を小径部19bの軸方向の同一の位置に形成した場合は、この両者19c、47が形成された部位では薄肉なってしまうことから、剛性の低下を招くが、本実施形態では、互いに軸方向で異なる位置に形成されていることから剛性の低下を抑制できる。
また、規制機構は、外周面の一部シール栓体44の弾性反力と、小径部19cに内周面に形成されて、該シール栓体44を嵌着固定された規制する該規制溝47とによって構成したことから、構造の簡素化が図れると共に、コストの上昇も抑制できる。
〔第2実施形態〕
図9は本発明の第2実施形態を示し、前記規制機構の一部として第1実施形態では規制溝47としたが、この実施形態では規制突部50によって構成されている
前記規制突起50は、小径部19bの内周面の前記規制溝が形成された位置に円環状に形成されていると共に、断面形状がほぼ円弧状に形成されている。つまり、この規制突部50は、前記規制溝とは逆にボールベアリング16側が曲率半径の比較的小さな円弧部50aに形成されていると共に、この円弧部50aからカバー部材3側が下り傾斜状のテーパ面50bに形成されている。
一方、前記シール栓体44は、第1実施形態と同じ構造であって、弾性変形可能な合成ゴムの本体45と、該本体45の内部に埋設された鉄系金属の芯材46と、から構成されている。
そして、前記シール栓体44を所定の治具によって小径部19b内に外側(先端開口部19e)から内部へ合成ゴムの反力に抗して押し込むと、円筒部45の外周面45cが内方へ僅かに圧縮変形しつつ該外周面45cが小径部19bの内周面19dに摺接しながら前記内周面19dの規制突部50の位置に到達する。
この状態から、シール栓体44をさらに押し込むと、図9に示すように、本体45の外周部の端縁が規制突起50のテーパ面50bを乗り越えながら軸方向のほぼ中央位置に移動してここで位置決めされる。そうすると、本体45の外周面45cは、規制突部50の外面全体を覆う形で自身の弾性変形によって径方向外側へ弾性復帰しようとすることから、前記外周面45cの一部が圧縮変形しながら規制突部50に係止する。これによって、前記シール栓体44は、規制突部50によって強固に固定されることになる。
特に、シール栓体44は、本体45の外周面45cのテーパ面50bによって軸方向内部へスムーズに移動できる一方、一旦、規制突部50を乗り上げた後は、円弧部50aに引っ掛かった状態になる。この引っ掛け力によって、シール栓体44にモータ出力軸19内部の圧力に先端開口部19eよりカバー部材3方向(空間室C)へ比較的大きな抜けだし方向の力が作用しても十分に対抗することが可能になる。
なお、前記シール栓体44を所定に治具で小径部19内に圧入した際に、ストッパリング49によって過度な圧入移動が規制されることは第1実施形態と同じである。他の構成は第1実施形態と同様である。
〔第3実施形態〕
図10は第3実施形態を示し、規制機構の構造を変更したもので、小径部19bの先端開口19eの近傍に円環状のリング溝51が形成されていると共に、該リング溝51に規制リング52が嵌着固定されている。この規制リング52は、ばね力を有する例えばピアノ線などによっていわゆるCリングとして形成されて、前記リング溝51内に自身の拡径方向の弾性反力によって固定されている。
したがって、前記シール栓体44を小径部19bの内部に自身の弾性変形を利用して圧入して規制機構により固定した後に、前記リング溝51内に規制リング52を嵌着固定する。これによって、シール栓体44にモータ出力軸19の内部から抜けだし方向への圧力が作用したとしても、シール栓体44は規制リング52によってそれ以上の移動が規制されることから、先端開口部19eから空間部C内への不用意な脱落を十分に抑制することができる。
この実施形態では、規制機構として、リング溝51と規制リング52のみによって構成したことから、さらに構造の簡素化と、コストの低減化が図れる。
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、規制機構として、前記シール栓体の外周面に弾性突部を一体に設けることも可能である。
また、第1実施形態におけるシール栓体の外周面に前記規制溝に嵌合する嵌合突部を設けることや、第2実施形態におけるシール栓体の外周面に規制突部に嵌合する嵌合溝を設けて規制機構を構成することも可能である。
以上説明した実施形態に基づく内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、バルブタイミング制御装置は、クランクシャフトから回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトに固定された従動回転体と、前記駆動回転体と一体的に設けられたハウジング及び該ハウジング内に回転自在に設けられた円筒状のモータ出力軸と、を有し、前記モータ出力軸を回転駆動することによって前記駆動回転体に対して従動回転体を相対回転させる電動モータと、前記ハウジングの前端部に対向配置されたカバー部材と、前記モータ出力軸の内部に潤滑油を供給する油路と、前記モータ出力軸の内部に挿入された前記従動回転体の一部の外周面と前記モータ出力軸の内周面との間に設けられた軸受部材と、前記モータ出力軸の前記軸受部材よりも前記カバー部材側寄りの内周面に設けられて、前記軸受部材側からカバー部材方向への潤滑油の流出を阻止するシール栓体と、前記モータ出力軸とシール栓体との間に設けられて、該シール栓体の前記カバー部材方向への移動を規制する規制機構と、を備えている。
好ましくは、前記規制機構は、前記モータ出力軸の内周面に形成された円環状の規制溝によって構成されている。
さらに好ましくは、前記規制溝は、横断面が溝底面側から前記軸受部材側の一方の内側面がテーパ面に形成されていると共に、前記溝底面から他方の内側面が円弧状に形成されている。
さらに好ましくは、前記シール栓体は、前記モータ出力軸の内周面に弾接する外周部の外周面が、前記規制溝内に自身の弾性変形によって嵌入保持されている。
さらに好ましくは、前記モータ出力軸の内周面の前記栓体と軸受部材との間に、ストッパ部材が設けられている。
さらに好ましくは、前記モータ出力軸の先端部外周面に、電動モータのコイルに電気を供給するコミュテータが圧入固定されると共に、該圧入範囲における外周面の前記規制溝を軸方向で避けた位置に、前記コミュテータの内周面が圧接する円環状のナーリング溝が形成されている。
別の構成としては、前記モータ出力軸の内周面に、前記ストッパ部材の外周部が嵌着する円環状の嵌着溝が形成されていると共に、該嵌着溝と前記規制溝との間に前記ナーリング溝が形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
好ましくは、前記シール栓体は、内部に芯材が埋設された弾性材によって有底円筒状に形成されて、円盤状の底壁と該底壁の外周縁に一体に設けられた円筒部とから構成されている。
さらに好ましくは、前記シール栓体の円筒部の外周面が、前記規制溝の形成位置に配置されると共に、前記外周面の一部が変形して前記規制溝内に嵌入される。
さらに好ましくは、前記油路を介して前記モータ出力軸の内部に供給された潤滑油は、前記軸受部材の内部隙間内に流入して潤滑する。
本発明の別の構成として、前記規制機構は、前記モータ出力軸の内周面に形成された円環状の規制突部によって構成されると共に、前記シール栓体の外周部の外周面が前記規制突部を乗り上げた状態で弾性変形して保持される。
さらに好ましい構成として、前記規制機構は、前記モータ出力軸の内周面における前記シール栓体よりも前記カバー部材側よりに設けられた規制リングによって構成されている。