(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態の車両用フードについて、図1および図2を参照しながら概説する。
車両用フードは、車両を構成する部材である。車両用フードは、当該車両用フードが搭載される車両の前後方向におけるフロントガラスの前側において、当該車両の内蔵物を車幅方向の全体に亘って覆うように配置される。なお、本実施形態では、車両用フードが搭載される車両における「前後方向」にD2の符号を付するとともに、「車幅方向」にD1の符号を付する。
車両用フードは、図1および図2に示されるように、アウタパネル10と、アウタパネル10の下方に配置されるインナパネル20と、を有している。なお、図1では、アウタパネル10の図示は省略し、インナパネル20のみ図示する。アウタパネル10及びインナパネル20は、車幅方向D1の中央を通りかつ車幅方向D1と直交する平面を基準として、当該車幅方向D1に対称な形状に形成されている。
アウタパネル10は、アルミニウム系材料により比較的平坦な形状に形成されている。アウタパネル10の強度は、0。2%耐力で175MPa以上に設定されることが好ましい。このようにすれば、耐デント性が確保される。
インナパネル20は、アルミニウム系材料により形成されている。インナパネル20は、アウタパネル10と同一材質により形成されてもよいし、異なる材質により形成されてもよい。本実施形態では、歩行者保護性能を向上する観点から、インナパネル20は、アウタパネル10よりも強度が小さくなるように当該アウタパネル10とは異なる材質により形成されている。具体的に、インナパネル20の強度は、0。2%耐力で70MPa以上、かつ、150MPa以下(さらに好ましくは125MPa以下)に設定されることが好ましい。このようにすれば、フードとして必要な強度を確保した上で、インナパネル20の車両本体の内蔵物(エンジン等)への衝突時において、当該インナパネル20が潰れながら衝突エネルギーを効率よく吸収することができる。
インナパネル20は、車幅方向D1の両端に位置する左端部20Aおよび右端部20Bと、当該左端部20Aと右端部20Bとの間に位置する中央部20Cと、を有している。本実施形態では、インナパネル20を車幅方向D1に3等分した場合における最も左側の部位が左端部20Aであり、最も右側の部位が右端部20Bであり、中央の部位が中央部20Cである。
インナパネル20は、図1および図2に示すように、アウタパネル10に接合される接合面210と、当該アウタパネル10の反対側に凹んだビード部220と、を有している。このビード部220は、アルミニウムからなる板状部材をプレス成形することにより形成される。
接合面210は、アウタパネル10の裏面に接合される領域を含む面である。接合面210は、外縁接合面211と、内側接合面212と、を含んでいる。
外縁接合面211は、インナパネル20における最外周部分である。具体的には、外縁接合面211は、車両用フードにおける最外周部分として環状に形成されるインナパネル20の最外周部分である。この外縁接合面211は、構造用接着剤を用いてアウタパネル10の裏面に接着される、特に、本実施形態では、図2,図4に示すように、アウタパネル10の最外周部分をヘム加工(折り返し加工)することによって、接合面210がアウタパネル10に強固に固着されている。これにより、アウタパネル10とインナパネル20との間において、外縁接合面211よりも内側の空間が略密閉状態となっている。
内側接合面212は、外縁接合面211の内側に位置している。この内側接合面212は、マスチックを介してアウタパネル10の裏面に接合されている。本実施形態では、内側接合面212は、車幅方向D1に延びるとともに前後方向D2に沿って間欠的にかつ等間隔で並ぶ4つの内側ビード部222を取り囲むように枠状に形成されている。
ビード部220は、接合面210に連続するとともに、アウタパネル10の反対側に凹んでいる。これにより、接合面210がアウタパネル10の裏面に接合された状態において、ビード部220が空間を介してアウタパネル10とは離間している。ビード部220は、外側ビード部221と、複数の内側ビード部222と、を含んでいる。
外側ビード部221は、外縁接合面211の内側に位置するとともに、内側接合面212の枠部を取り囲んでいる。具体的には、外側ビード部221は、外縁接合面211と内側接合面212の枠部との間に位置するとともに、当該外縁接合面211および内側接合面212の枠部に連続している。外側ビード部221は、図1および図2に示すように、ビード底面223と、ビード底面223よりも外側において当該ビード底面223に隣接する外側ビード側面224と、ビード底面223よりも内側に当該ビード底面223に隣接する内側ビード側面225と、を含んでいる。
ビード底面223は、外縁接合面211と同様に環状に形成されている。ビード底面223は、接合面210よりもアウタパネル10から遠い側に位置している。
外側ビード側面224は、外縁接合面211とビード底面223とを繋いでいる。本実施形態では、外側ビード側面224と外縁接合面211との境界となる稜線を稜線R1と称し、外側ビード側面224とビード底面223との境界となる稜線をビード稜線R2と称する。稜線R1およびビード稜線R2は、それぞれ環状に形成されている。そして、図1に示すように、稜線R1は、ビード稜線R2よりも外側に位置している。すなわち、本実施形態では、外側ビード部221は、車幅方向D1および前後方向D2に直交する方向に対して傾斜している。
なお、ビード底面223は、棚部を含んでいてもよい。この場合、ビード底面223は、棚面と、当該棚面よりも下方に位置する最底面と、棚面と最底面とを繋ぐ繋面と、を含むことになる。
ビード稜線R2は、外側ビード側面224と棚部との境界となる。
内側ビード側面225は、ビード底面223と内側接合面212の枠部とを繋いでいる。内側ビード側面225は、車幅方向D1および前後方向D2に直交する方向に対して外側ビード側面224とは反対側に傾斜している。
各内側ビード部222は、前述のとおり車幅方向D1に延びるとともに前後方向D2に沿って間欠的にかつ等間隔で4つ並んで設けられている。各内側ビード部222は、内側接合面212に連続しており、当該内側接合面212に取り囲まれている。
ここで、車両用フードは、当該車両用フードの取り付け部の剛性および強度確保のために、2つのヒンジ補強材21とストライカ補強部材23をさらに備えている。また、車両用フードは、張り剛性や歩行者保護性能を向上させる目的で、デント補強部材24をさらに備えている。また、車両用フードは、当該車両用フードの前後方向の前側を支持するクッションゴム座面22と、車両同士の衝突の際に車両用フードの折れ起点になる2つのクラッシュビード25と、をさらに備えている。以下、各部材および各部位(21〜25)について説明する。
各ヒンジ補強材21は、車両用フードを車両本体に連結するヒンジ(図示しない)とインナパネル20を介して接合される。各ヒンジ補強材21は、インナパネル20のうち左端部20Aと右端部20Bとのそれぞれに設けられている。具体的には、各ヒンジ補強材21は、外側ビード部221のビード底面223のうち、前後方向D2の後方において車幅方向D1に延びる部位の両端に設けられている。
各クッションゴム座面22は、アウタパネル10とインナパネル20との間において、アウタパネル10を支持するとともに、当該アウタパネル10に加わった衝撃の一部を吸収する役割を有する。各クッションゴム座面22は、インナパネル20を下側から支持するクッションゴムと接触する部分に設けられている。各クッションゴム座面22は、インナパネル20のうち左端部20Aと右端部20Bとのそれぞれに位置している。具体的には、各クッションゴム座面22は、外側ビード部221のビード底面223のうち、前後方向D2の前方において車幅方向D1に延びる部位の両端に位置している。
ストライカ補強部材23およびデント補強部材24は、インナパネル20のうち中央部20Cに設けられている。具体的には、ストライカ補強部材23およびデント補強部材24は、車幅方向D1において2つのクッションゴム座面22の間に設けられている。ストライカ補強部材23は、図2に示されるように、ビード底面223上に配置されている。デント補強部材24は、図2に示されるように、アウタパネル10の裏面のうちストライカ補強部材23と対向する部位に配置されている。
各クラッシュビード25は、インナパネル20のうち左端部20Aと右端部20Bとのそれぞれに設けられている。具体的には、各クラッシュビード25は、車幅方向D1の左方および右方のそれぞれにおいて、外側ビード側面224と内側ビード側面225とを繋いで車幅方向D1に延びるように、ビード底面223上に設けられている。
このように、本実施形態の車両用フードでは、アウタパネル10に対して、ビード部220を形成したインナパネル20が接合されることにより、当該車両用フードにおける衝突初期段階での衝突エネルギーの吸収量が増え、これによって歩行者保護性能の向上が可能となっている。
ところで、本実施形態の車両用フードでは、図1および図2に加えて図3〜図5に示すように、外縁接合面211と外側ビード側面224との境界となる稜線R1の一部が屈曲することにより、歩行者保護性能を確保しつつ当該車両用フードの剛性の向上が可能となっている。具体的には、以下のとおりである。
外縁接合面211は、図1に示すように、後側接合面213と、前側接合面214と、左側接合面215と、右側接合面216と、を含んでいる。後側,前側接合面213,214は、インナパネル20のうち前後方向D2における最も後側,前側に位置しており、車幅方向D1に延びている。左側,右側接合面215,216は、インナパネル20の車幅方向D1における最も左側,右側に位置しており、前後方向D2に延びている。後側接合面213、左側接合面215、前側接合面214、および右側接合面216は、この順に連続している。
外側ビード側面224は、図1に示すように、後側接合面213に連続する後側側面226と、前側接合面214に連続する前側側面227と、左側接合面215に連続する左側側面228と、右側接合面216に連続する右側側面229と、を含んでいる。本実施形態では、後側接合面213と後側側面226との境界となる稜線R1を後側稜線R11と称し、左側接合面215と左側側面228との境界となる稜線R1を左側稜線R12と称し、右側接合面216と右側側面229との境界となる稜線R1を右側稜線R13と称する。
ここで、図1、図3、および図4に示すように、後側側面226は、前後方向D2の前方に突出する複数の後側突出部226bと、車幅方向D1に延びるとともに複数の後側突出部226bに連続する後側平坦面226aと、を含んでいる。これにより、左端部20Aから右端部20Bに亘って延びる後側稜線R11は、その一部が前後方向D2の前方に屈曲する曲線状となる。具体的には、以下のとおりである。
図1および図3に示すように、複数の後側突出部226bは、インナパネル20の中央部20Cにおいて後側平坦面226aよりも前後方向D2の前側に突出している。本実施形態では、中央部20Cにおいて3つの後側突出部226bが車幅方向D1に間隔を空けて設けられている。特に、3つの後側突出部226bのうち車幅方向D1において真ん中に配置された後側突出部226bは、インナパネル20のうち車幅方向D1における丁度中央に位置している。
各後側突出部226bは、後側側面226とビード底面223との境界となるビード稜線R2よりも上方に設けられている。具体的には、各後側突出部226bは、逆三角錐形状をなしており、後側側面226とビード底面223との境界となるビード稜線R2上において、後側平坦面226aに対する各後側突出部226bの高さが0に設定されている。これにより、後側側面226とビード底面223との境界となるビード稜線R2は、左端部20Aから右端部20Bに亘って車幅方向D1に滑らかに延びている。
図3および図4に示すように、各後側突出部226bのうち最も高い部位である頂点T1は、後側稜線R11に含まれており、後側接合面213と同一の高さに設定されている。これにより、後側稜線R11は、各後側突出部226bに連続するように中央部20Cにおいて前後方向D2の前方に突出する複数の後側屈曲線R14と、各後側屈曲線R14に連続するとともに右端部20A,20Bにおいて車幅方向D1に延びる後側本線R15と、を含む曲線状をなす。本実施形態では、後側稜線R11は、中央部20Cにおいて3つの後側突出部226bに対応して3つの後側屈曲線R14を含んでいる。
また、図1および図5に示すように、右側側面229は、車幅方向D1の左側に突出する複数の右側突出部229bと、車幅方向D1に延びるとともに複数の右側突出部229bに連続する右側平坦面229aと、を含んでいる。本実施形態では、2つの右側突出部229bが、インナパネル20のうち前後方向D2における中間部分において、当該前後方向D2に並んで設けられている。
図5に示すように、各右側突出部229bのうち、最も高い部位である頂点T2は、右側稜線R13に含まれており、右側接合面216と同一の高さに設定されている。これにより、右側稜線R13は、その一部分が各右側突出部229bに連続するように車幅方向D1の左側に屈曲する曲線状をなす。また、図5に示すように、各右側突出部229bのうち、最も低い部位である頂点T3は、ビード稜線R2に含まれており、ビード底面223と同一の高さに設定されている。これにより、右側側面229とビード底面223との境界になるビード稜線R2は、その一部分が各右側突出部229bに連続するように車幅方向D1の左側に屈曲する曲線状をなす。
左側側面228は、複数の左側突出部228bと、左側平坦面228aと、を含んでいる。左側突出部228bおよび左側平坦面228aの形状については、上述した右側突出部229bおよび右側平坦面229aと同様である。このため、左側稜線R12は、その一部分が各左側突出部228bに連続するように車幅方向D1の右側に屈曲する曲線状をなすとともに、左側側面228とビード底面223との境界になるビード稜線R2は、その一部分が各左側突出部228bに連続するように車幅方向D1の右側に屈曲する曲線状をなす。
このように、本実施形態の車両用フードでは、後側接合面213とビード部220における外側ビード部221との境界となる後側稜線R11が、車幅方向D1に延びる後側本線R15と前後方向D2の前方に屈曲した後側屈曲線R14とを含んでおり、当該後側屈曲線R14がインナパネル20の中央部20Cに位置しているため、歩行者保護性能を確保しつつ剛性を向上させることができる。具体的には、以下のとおりである。
一般的に、車両用フードは、車幅方向D1における右端部20A,20Bにおいて車両の本体に固定されるため、当該車幅方向D1における中央部20Cにおいて変形が生じやすい。特に、走行中の車両においては、風圧によってアウタパネル10の表面側が負圧となり、前後方向D2における車両用フードの後端部分において当該車両用フードを上方へ引き剥がすような圧力が加わる傾向にある。このため、車両用フードのうち車幅方向D1における中央部20Cで且つ前後方向D2における後端部分は、他の部分に比べて車両の走行中に変形が生じやすい。そこで、本実施形態の車両用フードでは、インナパネル20のうち前後方向D2において最も後側に位置する後側接合面213と当該後側接合面213に連続する外側ビード部221との境界となる後側稜線R11が、車幅方向D1に延びる後側本線R15と前後方向D2の前側に屈曲した後側屈曲線R14とを含んでいる。このため、本実施形態の車両用フードでは、インナパネル20のうち前後方向D2における後側の部位は、後側稜線R11の全体が車幅方向D1に沿って滑らかに延びる場合に比して、変形が生じにくい。しかも、後側稜線R11のうち後側屈曲線R14がインナパネル20の中央部20Cに位置しているため、車両の走行時において特に変形が生じやすい当該中央部20Cの剛性がより向上する。このように、本実施形態の車両用フードでは、例えばインナパネル20においてビード部220を深く形成しなくとも、当該インナパネル20のうち特に変形が生じやすい部位の剛性を向上させることができる。このため、歩行者保護性能を確保しつつ剛性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の車両用フードでは、稜線R1のうち、後側稜線R11のみならず、左側稜線R12および右側稜線R13の一部分もそれぞれ前後方向における中間部分において屈曲することにより、当該中間部分における剛性の向上を可能にしている。このため、歩行者保護性能を確保しつつより剛性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の車両用フードでは、外側ビード側面224のうち後側側面226の一部分が前後方向D2の前側に突出して後側突出部226bが形成されることによって、後側稜線R11の一部が屈曲している。
さらに、本実施形態の車両用フードでは、後側突出部226bが後側側面226とビード底面223との境界となるビード稜線R2よりも上側に位置することにより当該ビード稜線R2が車幅方向D1に滑らかに延びる線として形成され、これによって歩行者保護性能を確保しつつ剛性を向上することが可能となっている。具体的には、以下のとおりである。
歩行者が車両用フードに衝突した際に当該車両用フードに加わる荷重は、車両の走行時において風圧により車両用フードに加わる荷重に比べてはるかに大きい。このため、歩行者保護性能の向上に影響するインナパネル20の変形抵抗は、車両の走行時における風圧によるインナパネル20の変形抵抗とは異なり、外縁接合面211の近傍の狭い領域のみならずビード部220のビード底面223の近傍も含む広い領域における変形抵抗であると考えられる。このような考えから、本発明者は、この広い領域における変形抵抗については、稜線R1よりも外縁接合面211から遠い側に位置するビード稜線R2の変形抵抗が大きく影響していることを明らかにした。これを踏まえて、本実施形態の車両用フードでは、車両の走行時における風圧により変形が生じやすい部位の剛性を向上させるために後側稜線R11のうち中央部20Cに位置する部位が後側屈曲線R14とされ、歩行者が衝突した際にインナパネル20が変形しやすくなるようにビード稜線R2が左端部20Aから右端部20Bに亘って車幅方向D1に滑らかに延びている。
なお、本実施形態では、ビード稜線R2のうち、左側側面228に連続する線および右側側面229に連続する線は、その一部が車幅方向D1に屈曲する曲線状をなしているが、これに限らず、全体として前後方向D2に延びる直線状をなしていてもよい。
さらに、本実施形態の車両用フードでは、後側平坦面226aに対する後側突出部226bの高さが後側稜線R11からビード稜線R2に向かうにつれて0に近づくように連続的に変化するため、歩行者が衝突した際に後側突出部226bの一部に荷重が集中することを抑止でき、これにより安定した変形形態を得ることができる。
さらに、本実施形態の車両用フードでは、後側側面226の各後側突出部226bが前後方向D2における前方に突出しており、これにより各後側屈曲線R14が前後方向の前方に屈曲しているため、後側接合面213とアウタパネル10との接合面積を十分確保することができる。特に、各後側突出部226bの上側の領域にマスチックを塗布してインナパネル20とアウタパネルとを接合した場合、ビード底面223上におけるアウタパネル10の面の支持間隔を短くすることが可能になる。この場合、ビード底面223上におけるアウタパネル10の面の張り剛性が向上するという効果も得られる。
さらに、本実施形態の車両用フードでは、複数の後側屈曲線R14が形成されており、そのうちの1つが車幅方向D1においてインナパネル20の中央に位置しているため、インナパネル20のうち走行中の車両において風圧が加わりやすい部位の剛性をより高めることができる。なお、後側屈曲線R14は、1つであってもよく、インナパネル20を車幅方向D1に3等分した場合における左端部20A,右端部20B,および中央部20Cのうち、中央部20Cに形成されていればよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の車両用フードについて、図6を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
本実施形態では、後側側面226とビード底面223とがなすビード稜線R2は、その一部が前後方向D2の前方に屈曲した曲線状をなしている。具体的には、第2の実施形態では、後側側面226の各後側突出部226bは、後側平坦面226aよりも前後方向D2の前方に突出した三角柱形状をなしており、その一部がビード稜線R2に含まれている。これにより、後側側面226とビード底面223との境界となるビード稜線R2は、車幅方向D1に沿って延びるビード本線R21と、前後方向D2の前方に屈曲した複数のビード屈曲線R22と、を含んでいる。
本実施形態のように、後側稜線R11のみならず、後側側面226とビード底面223とがなすビード稜線R2も中央部20Cにおいてその一部が屈曲している場合であっても、インナパネル20のうち走行中の車両において風圧が加わりやすい部位の剛性をより高めることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の車両用フードについて、図7を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第2実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
本実施形態に係る車両用フードは、ビード底面223に棚部が設けられている点において、第2実施形態とは異なる。
具体的には、本実施形態では、ビード底面223は、棚面S1と、棚面S1よりも下方に位置する最底面S2と、棚面S1と最底面S2とを繋ぐ繋面S3と、を含んでいる。
棚面S1は、後側側面226に連続する面であって、当該後側側面226に対して傾斜している。本実施形態では、棚面S1は、後側接合面213と略平行な面である。また、本実施形態では、ビード稜線R2は、後側側面226と棚面S1とがなす稜線であって、後側側面226の各後側突出部226bの一部が当該ビード稜線R2に含まれている。
最底面S2は、棚面S1よりも下方に凹むように位置している。本実施形態では、最底面S2は、棚面S1と略平行な面である。最底面S2のうち、前後方向D1における前端は、内側ビード側面225に繋がっており、前後方向D2における後端は、後述する繋S3に繋がっている。
繋面S3は、前後方向D2における棚面S1の前端と最底面S2の後端とを繋いでいる。本実施形態では、繋面S3は、水平面に対して傾斜するように棚面S1と最底面S2とを繋いでいる。
ここで、本実施形態では、繋面S3と最底面S2との境界となる稜線を底稜線R3と称する。繋面S3および最底面S2は、略平坦な面であるため、繋面S3と最底面S2とがなす底稜線R3は、左端部20A、中央部20C、および右端部20Bに亘って、車幅方向D1に沿って延びる直線あるいは滑らかな曲線となる。すなわち、本実施形態では、底稜線R3は、中央部20Cにおいて前後方向D2の前方あるいは後方に屈曲するような屈曲線を含んでいない。
このように、本実施形態では、後側稜線R11のみならず、後側側面226とビード底面223とがなすビード稜線R2も中央部20Cにおいてその一部が屈曲しているため、インナパネル20のうち走行中の車両において風圧が加わりやすい部位の剛性をより高めることができる。しかも、繋面S3と最底面S2とがなす底稜線R3が中央部20Cにおいて車幅方向D1に沿って滑らかに延びているため、歩行者頭部衝突の際には変形しやすくなり、歩行者保護性能を向上することが可能である。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態の車両用フードについて、図8を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
本実施形態では、後側稜線R11の各後側屈曲線R14は、第1実施形態とは異なり前後方向D2の後方に屈曲している。具体的には、本実施形態では、後側側面226の各後側突出部226bは、後側側面226に対して前後方向の後方に突出しており、これにより各後側屈曲線R14が前後方向D2の後方に屈曲している。
本実施形態のように、各後側屈曲線R14が前後方向D2の後方に屈曲する場合であっても、当該後側屈曲線R14が中央部20Cに設けられていれば、車両用フードの歩行者保護性能を確保しつつ剛性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、後側側面226の各後側突出部226bは、後側平坦面226aより突出した三角錐形状、あるいは三角柱形状のように、断面が三角形状となっているが、これに限らない。後側稜線R11が屈曲しているのであれば、当該断面が台形形状などであっても同様の効果が得られる。
次に、第1実施形態の車両用フードにおける剛性の評価について、比較例とともに説明する。
本実施例では、第1の実施形態の車両用フードと同形状の試験フードNo.3と、当該試験フードNo.3の比較例としての試験フードNo.1,2を準備した。
図9は、試験フードNo.1〜3における後側突出部226bの個数、アウタパネル10の板厚、インナパネル20の板厚、および総重量の測定結果をそれぞれ示している。
図9に示すように、試験フードNo.1,2は、第1の実施形態の車両用フードである試験フードNo.1とは異なり、後側側面226に後側突出部226bが形成されていない。このため、試験フードNo.1,2は、後側稜線R11の全体が車幅方向D1に沿って滑らかに延びる直線状をなしているものである。
また、図9に示すように、試験フードNo.1は、試験フードNo.2,3に比べてアウタパネル10の板厚およびインナパネル20の板厚が大きく、それ故に試験フードNo.2,3に比べて総重量が重くなっている。
本実施例では、上記の試験フードNo.1〜3に対して、剛性評価試験を行った。具体的には、試験フードNo.1〜3のそれぞれに対して、4隅を支持しつつ、車幅方向D1の中央における後端に同様の荷重Pを加え、当該試験フードNo.1〜3の荷重点の変位Sを計測することにより剛性評価を行った。
図10は、試験フードNo.1〜3のそれぞれの総重量と剛性評価結果P/Sとの関係を示している。
図10に示すように、第1実施形態の車両用フードである試験フードNo.3は、当該試験フードNo.3とほぼ同じ総重量である試験フードNo2に比べて、剛性評価結果P/Sが高く、これにより後側稜線R11に後側屈曲線R14を形成することにより車両用フードの剛性が向上することが確認された。
また、図10に示すように、第1実施形態の車両用フードである試験フードNo.3は、当該試験フードNo.3よりも総重量が1.0kg以上大きい試験フードNo.1に比べても、剛性評価結果P/Sが高く、これにより後側稜線R11に後側屈曲線R14を形成することによる車両用フードの剛性向上効果が高いことが確認された。