〔第1の実施形態〕
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は空調システムが設けられた建物の構成を示す概略縦断面図である。
図1に示すように、住宅等の建物10には、屋内空間として、居室11と、衣類を乾燥するための乾燥室12と、空調装置41の設置された機械室13とが設けられている。居室11は乾燥室12と隣接しており、間仕切壁15により乾燥室12と仕切られている。間仕切壁15には、居室11と乾燥室12との間を出入りするための出入口16が設けられている。出入口16には、開き戸からなるドア17が設けられている。ドア17は、下端部がアンダーカットされており、そのドア17の下端と床面18との間には居室11と乾燥室12とを連通する通気部19が設けられている。
乾燥室12には、衣類K(詳しくは、衣類が掛けられたハンガー)を吊り下げるための吊下げ棒21が設けられている。乾燥室12にて衣類Kの乾燥を行う際には、この吊下げ棒21に衣類Kを吊り下げた状態で乾燥を行う。吊下げ棒21は、上下に複数(具体的には2つ)設けられ、乾燥室12を挟んで対向する壁部の間に架け渡されている。詳しくは、吊下げ棒21は、間仕切壁15とその間仕切壁15に対向する外壁部22との間に架け渡されている。なお、吊下げ棒21が衣類支持部に相当する。
ちなみに、乾燥室12では、後述するように、空調システムを利用して衣類Kの乾燥が行われるものとなっている。そのため、乾燥室12には乾燥機等の乾燥用機器が何も設置されていない。
機械室13は居室11と隣接しており、間仕切壁25により居室11と仕切られている。間仕切壁25には、居室11と機械室13との間を出入りするための出入口26が設けられている。出入口26には、開き戸からなるドア27が設けられている。ドア27は、下端部がアンダーカットされており、そのドア27の下端と床面18との間には居室11と機械室13とを連通する通気部29が設けられている。
居室11の天井部には、天井面材として、下側天井面材31と上側天井面材32とが設けられている。下側天井面材31と上側天井面材32とはいずれも石膏ボードを有して形成されている。下側天井面材31は、上側天井面材32よりも低い位置に配置され、その下側天井面材31の下面により居室11の天井面が形成されている。また、下側天井面材31と上側天井面材32との間には天井裏空間33が形成されている。
乾燥室12及び機械室13の天井部には、天井面材として、上側天井面材32が設けられている一方、下側天井面材31が設けられていない。そのため、乾燥室12及び機械室13では上側天井面材32の下面により天井面が形成されている。上側天井面材32の上方には陸屋根からなる屋根部35が設けられている。この屋根部35と上側天井面材32との間には屋根裏空間36が形成されている。
建物10には、屋内空間の空調を行う空調システム40が設けられている。空調システム40は、共通の空調装置41を用いて複数の屋内空間の空調を行う全館空調システムとして構築されている。以下、かかる空調システムの構成について説明する。
空調システム40は、空調空気(暖気及び冷気)を生成する空調装置41と、空調装置41に接続された空調ダクト42と、空調ダクト42に接続された吹出チャンバ43とを備える。空調装置41は、機械室13に設置された室内機として構成されている。空調装置41は、機械室13の空気を取り込み、その取り込んだ空気を温度調整することで空調空気を生成する。
空調ダクト42は、機械室13において空調装置41から上方へ延びており、その上端部において居室11上方の天井裏空間33に入り込んでいる。空調ダクト42は、天井裏空間33を通じて乾燥室12に向けて延びており、その先端部には吹出チャンバ43が接続されている。
吹出チャンバ43は、乾燥室12に面して設けられ、その乾燥室12に開口する吹出口44を有している。空調装置41により生成された空調空気は空調ダクト42を介して吹出チャンバ43へ供給され、その供給された空調空気が吹出口44より乾燥室12へ吹き出されるようになっている。そして、本実施形態では、この乾燥室12に吹き出される空調空気を利用して、乾燥室12において衣類Kの乾燥を行うこととしている。本実施形態では、この点に特徴を有しており、以下においてはかかる特徴的構成について図1に加え図2を用いながら説明する。なお、図2は吹出チャンバ43周辺の構成を拡大して示す縦断面図であり、図1のA−A線断面図に相当する。また、図2において(a)が空調空気が第1向きで吹き出している状態を示し、(b)が空調空気が第2向きで吹き出している状態を示している。
図1及び図2に示すように、吹出チャンバ43は、乾燥室12に面して設けられた間仕切壁45に取り付けられている。間仕切壁45は、互いに対向する間仕切壁15及び外壁部22を繋ぐように設けられ、その幅方向が吊下げ棒21の長手方向と同方向となっている。間仕切壁45の天井付近には開口部46が形成されている。その開口部46には吹出チャンバ43が配設されている。この場合、吹出チャンバ43は、その吹出口44が乾燥室12の天井付近に設定され、詳しくはその吹出口44が各吊下げ棒21よりも高い位置に設定されている。また、吹出チャンバ43(吹出口44)は、間仕切壁45において幅方向の中央部に配置され、換言すると吊下げ棒21の長手方向において当該吊下げ棒21の略中央に位置するよう配置されている。
吹出チャンバ43は、空調ダクト42の側面部に接続されている。空調ダクト42の側面部には開口部42aが形成され、その開口部42aを介して空調ダクト42の内部と吹出チャンバ43の内部とが互いに連通されている。これにより、空調ダクト42を流れる空調空気が開口部42aを通じて吹出チャンバ43に供給されるようになっている。
吹出チャンバ43に供給される空調空気は上述したように吹出口44から乾燥室12に吹き出される。この場合、その空調空気を利用して、吊下げ棒21に支持された衣類Kを乾燥させることができる。また、乾燥室12に吹き出された空調空気は、乾燥室12からドア17下の通気部19を通じて居室11に流れ込む。これにより、その流れ込んだ空調空気により居室11の空調(冷房又は暖房)が行われる。
なお、居室11が空調対象となる「居室空間」に相当し、通気部19が「通気口」及び「通気路」に相当する。また、通気部19は間仕切壁15(乾燥室12を区画する「壁部」に相当)に形成された出入口16の一部により構成され、間仕切壁15の幅方向において吊下げ棒21よりも反吹出口44側に配置されている。
居室11に流れ込んだ空調空気は、その後、居室11から機械室13にドア27下の通気部29を通じて流れ込む(還流する)。そして、空調装置41は、その機械室13に流れ込んだ空気を取り込み空調空気を生成する。このように、本空調システム40は、空調装置41により生成された空調空気が乾燥室12に吹き出された後、その空調空気が通気部19→居室11→通気部29→機械室13を経由して再び空調装置41へと還流する循環式の空調システムとなっている。なお、この場合、各通気部19,29と居室11と機械室13とを含んで還流経路が構成されている。
ところで、本空調システム40では、乾燥室12から居室11に流れ込む空調空気が乾燥室12において衣類Kの乾燥に用いられた空気であるため、その空気は衣類Kの水分を吸って湿気を帯びた空気になっている。このため、本空調システム40では、居室11に流れ込む空調空気により、居室11の冷暖房だけでなく居室11の加湿を行うことが可能となっている。この点が、本空調システム40のもう1つの特徴となっており、以下においてはかかる本空調システム40の加湿に関する構成について説明する。
吹出チャンバ43の内部には、横長板状のスラット48が上下に複数並設されている。これらのスラット48はいずれも吹出チャンバ43に回動可能に軸支され、その回動によりスラット角度の調整が可能とされている。この場合、各スラット48のスラット角度が調整されることで、吹出口44から吹き出される空調空気の向きが調整されるようになっている。
上記の各スラット48はスラット駆動部49により回動駆動される。スラット駆動部49は電動モータ等を有して構成されている。この場合、スラット駆動部49の回動駆動により各スラット48のスラット角度が調整され、ひいては吹出口44から吹き出される空調空気の向きが調整されるようになっている。なお、この場合、各スラット48とスラット駆動部49とを含んで調整手段が構成されている。
具体的には、各スラット48はスラット角度が調整されることにより、各スラット48が下方傾斜する向きとなる第1状態(図2(a)参照)と、各スラット48が水平の向きとなる第2状態(図2(b)参照)とに少なくとも移行することが可能となっている。各スラット48が第1状態にある場合には、吹出口44から空調空気が衣類Kに向けて吹き出される。以下においては、この場合の空調空気の吹出向きを「第1向き」ともいう。一方、各スラット48が第2状態にある場合には、吹出口44から空調空気が衣類Kよりも上方に向けて吹き出され、ひいては衣類Kとは異なる場所に向けて吹き出される。以下においては、この場合の空調空気の吹出向きを「第2向き」ともいう。
図2(a)に示すように、各スラット48が第1状態にある場合には、空調空気が衣類Kに向けて吹き出される(すなわち、第1向きに吹き出される)ため、その吹き出された空調空気は衣類Kに当たることになる。そのため、その空調空気は衣類Kの水分を比較的多く吸って多くの湿気を帯びることとなる。したがって、この場合には、乾燥室12から居室11に流れ込む空調空気に比較的多くの湿気が含まれることになり、その結果居室11に対する加湿量を比較的大きくすることが可能となる。
一方、図2(b)に示すように、各スラット48が第2状態にある場合には、空調空気が衣類Kとは異なる場所に向けて吹き出される(すなわち、第2向きに吹き出される)ため、その吹き出された空調空気は衣類Kから比較的離れたところ(詳しくは衣類Kの上方)を流れることになる。そのため、その空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量は比較的少なくなる。したがって、この場合には、乾燥室12から居室11に流れ込む空調空気に含まれる湿気の量が少なくなり、その結果居室11に対する加湿量を比較的小さくすることが可能となる。
このように、本空調システム40では、各スラット48を第1状態と第2状態とに切り替えることにより、つまり吹出口44から吹き出す空調空気の向きを第1向きと第2向きとに切り替える(調整する)ことにより、居室11に対する加湿量を調整することが可能となっている。
続いて、本空調システム40の電気的構成について説明する。なお、図2(a)に本空調システム40の電気的構成を示す。
図2(a)に示すように、空調システム40は、制御手段としてのコントローラ50を備える。コントローラ50は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されており、例えば居室11の壁面に設けられている。
コントローラ50には、湿度検知手段としての湿度センサ51が接続されている。湿度センサ51は、居室11の湿度を検知するセンサであり、例えば居室11の壁面に設けられている。コントローラ50には、湿度センサ51から逐次検知結果が入力される。
また、コントローラ50には、スラット駆動部49が接続されている。コントローラ50は、湿度センサ51からの検知結果に基づいて、スラット駆動部49を駆動制御する。
ここで、コントローラ50により実行される加湿量調整処理について説明する。なお、本処理は、空調システム40(空調装置41)の運転時において、所定の周期で繰り返し実行される。
コントローラ50は、湿度センサ51により検知された居室11の湿度に基づいて、居室11の湿度が所定の閾値よりも高いか否かを判定する。コントローラ50は、居室11の湿度が所定の閾値以下であると判定した場合には、スラット駆動部49に第1駆動信号を出力し、同駆動部49により各スラット48を第1状態(図2(a)参照)とする。これにより、居室11の湿度が比較的低い場合には、吹出口44から吹き出す空調空気の向きが第1向きとされるため、居室11に対する加湿量が大きくされる。
一方、コントローラ50は、居室11の湿度が所定の閾値よりも高いと判定した場合には、スラット駆動部49に第2駆動信号を出力し、同駆動部49により各スラット48を第2状態(図2(b)参照)とする。これにより、居室11の湿度が比較的高い場合には、吹出口44から吹き出す空調空気の向きが第2向きとされるため、居室11に対する加湿量が小さくされる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
乾燥室12に吹出チャンバ43の吹出口44を設定し、その吹出口44より空調空気を乾燥室12に吹き出すようにしたため、その空調空気を利用して衣類Kを乾燥させることができる。また、衣類Kの乾燥に用いられて湿気を帯びた空調空気を通気部19を通じて居室11に導くようにしたため、その空調空気により居室11の加湿を行うことができる。よって、この場合、空調システム40を利用して衣類Kの乾燥を行うことができるとともに、その衣類乾燥に用いた空気を利用して居室11の加湿を行うことができる。
吹出口44から吹き出された空調空気が還流経路を通じて空調装置41へ還流する循環式の空調システム40では、建物内を同じ空気が循環するため建物内が乾燥し易い。この点、上記の実施形態では、還流経路上の居室11に乾燥室12にて衣類乾燥に用いた空気を導くようにしたため、かかる還流経路上の居室11が乾燥するのを好適に抑制することができる。
吹出口44を、吊下げ棒21に吊り下げられた衣類Kに向けて空調空気を吹き出し可能な位置に配置した。この場合、吹出口44から吹き出される空調空気が衣類Kに当たるため、衣類Kの乾燥を促進させることができる。また、空調空気が衣類Kに当たることで湿気を帯びた空調空気を好適に生成することができる。そのため、その空気による居室11の加湿を好適に行うことができる。
吹出口44を乾燥室12の天井側、通気部19を乾燥室12の床側に設けたため、吹出口44から吹き出された空調空気が乾燥室12を上下に横断するように通気部19へと流れる。この場合、空調空気が衣類K周辺を上下に通過するように流れるため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を多くすることができる。そのため、居室11の加湿を好適に行うことができる。
吹出チャンバ43に設けたスラット48の角度(スラット角度)を調整することで、吹出口44から吹き出す空調空気の向き(吹出向き)を調整可能とした。具体的には、空調空気の吹出向きを、空調空気が衣類Kに向けて吹き出す第1向きと、空調空気が衣類Kとは異なる場所に向けて吹き出す第2向きとに調整可能(切替可能)とした。この場合、空調空気が衣類Kから吸収する湿気(水分)の量を調整することが可能となり、ひいてはその空調空気により居室11を加湿する際の加湿量の調整を行うことが可能となる。
湿度センサ51により検知された居室11の湿度に基づいて、吹出口44から吹き出す空調空気の向き(吹出向き)を調整するようにした。具体的には、居室11の湿度が所定の閾値以下である場合には、吹出口44から吹き出す空調空気の向きを第1向きとして、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を多くし、一方居室11の湿度が所定の閾値よりも高い場合には、吹出口44から吹き出す空調空気の向きを第2向きとして、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を少なくした。これにより、居室11の湿度に応じて、空調空気が吸収する湿気の量を好適に調整することができ、ひいては居室11に対する加湿量を好適に調整することが可能となる。
〔第2の実施形態〕
本実施形態の空調システムでは、居室11を加湿する際の加湿量の調整に関する構成が上記第1の実施形態と相違している。以下、かかる本実施形態の構成について図3に基づいて説明する。図3は、空調システムが設けられた建物の構成を示す概略縦断面図である。
図3に示すように、本実施形態の建物60には、屋内空間として、居室61と乾燥室62とが設けられている一方、機械室が設けられていない。居室61と乾燥室62とは互いに隣接しており、間仕切壁64により相互に仕切られている。間仕切壁64には、居室61と乾燥室62との間を出入りするための出入口65が設けられている。出入口65には開き戸からなるドア66が設けられている。ドア66は下端部がアンダーカットされ、ドア66の下端と床面67との間には居室61と乾燥室62とを連通する通気部68が設けられている。また、乾燥室62には、衣類Kを吊り下げるための吊下げ棒69が設けられている。
居室61及び乾燥室62の天井部には天井面材71が設けられている。天井面材71は石膏ボードを含んで構成され、この天井面材71により居室61及び乾燥室62の天井面が形成されている。天井面材71の上方には屋根部72が設けられている。屋根部72は寄せ棟式の屋根となっており、その屋根部72と天井面材71との間には屋根裏空間73が形成されている。
建物60には、全館空調システムからなる空調システム75が設けられている。空調システム75は、空調装置76と、空調装置76に接続された空調ダクト77と、空調ダクト77に接続された吹出グリル78とを備える。空調装置76と空調ダクト77とはいずれも屋根裏空間73に設置され、吹出グリル78は乾燥室62の天井部、詳しくは天井面材71に取り付けられている。吹出グリル78は吊下げ棒69の上方詳しくは真上に配置されている。また、吹出グリル78は吊下げ棒69の長手方向において当該吊下げ棒69の略中央に位置するように配置されている。なお、吹出グリル78が吹出口に相当する。
上記の構成では、空調装置76により生成された空調空気が空調ダクト77を介して吹出グリル78に供給されると、その吹出グリル78より空調空気が乾燥室12に吹き出される。この場合、空調空気は吹出グリル78より吊下げ棒69に吊り下げられた衣類Kに向けて吹き出される。そのため、その空調空気を利用して衣類Kの乾燥を行うことができる。また、乾燥室62に吹き出された空調空気は通気部68を通じて居室61に流れ込む。これにより、その流れ込んだ空調空気により居室61の空調(冷房又は暖房)が行われる。また、この場合にも、衣類Kの乾燥に用いられて湿気を帯びた空調空気が居室61に流れ込むため、その空調空気により居室61の加湿を行うことが可能となる。なお、この場合、居室61が空調対象となる「居室空間」に相当する。
居室61に流れ込んだ空調空気は、その後、居室61の天井部詳しくは天井面材71に取り付けられた取込ダクト79を通じて空調装置76に取り込まれる(還流する)。そして、空調装置76は、その取り込んだ空気をもとに空調空気を生成する。つまり、本空調システム75も、空調装置76により生成された空調空気が乾燥室62に吹き出された後、その空調空気が通気部68→居室61→取込ダクト79を経由して再び空調装置76に還流する循環式の空調システムとなっている。なお、この場合、通気部68と居室61と取込ダクト79とを含んで還流経路が構成されている。
次に、本空調システム75において居室61に対する加湿量の調整を行うための構成について図3に加え図4を用いながら説明する。なお、図4は、図3と同様、空調システム75が設けられた建物60の構成を示す概略縦断面図であり、図3が第1通気状態における建物60の構成を示しているのに対し、図4が第2通気状態における建物60の構成を示している。
図3及び図4に示すように、ドア66には、通気部68を開閉可能な開閉部材86が設けられている。開閉部材86は、金属製又は樹脂製の板材からなる。開閉部材86は、ドア66に対して上下移動可能に設けられ、その上下移動により通気部68が開閉されるようになっている。また、開閉部材86は、電動モータ等からなる開閉駆動部87により開閉駆動されるようになっている。
なお、この場合、通気部68が「床側に設けられた通気口」及び「通気路」に相当する。また、通気部68は間仕切壁64(乾燥室62を区画する「壁部」に相当)に形成された出入口65の一部により構成されている。また、開閉部材86及び開閉駆動部87により開閉手段が構成されている。
間仕切壁64には、その天井付近に居室61と乾燥室62とを連通する開口部81が設けられている。開口部81は、ドア66(出入口65)の上方に設けられ、吊下げ棒69よりも高い位置に配置されている。この場合、開口部81は、上下方向においてドア66を挟んで通気部68とは反対側に配置されている。
開口部81には、当該開口部81を開閉可能な通気ガラリ82が配設されている。通気ガラリ82は、上下に並設された複数のスラット83を有している。これらのスラット83はいずれも回動可能に軸支され、それら各スラット83が回動されることで開口部81が開閉されるようになっている。また、これらのスラット83は電動モータ等からなるスラット駆動部84により回動駆動される。
なお、この場合、開口部81が「天井側に設けられた通気口」及び「通気路」に相当する。また、各スラット83(ひいては通気ガラリ82)及びスラット駆動部84により開閉手段が構成されている。
続いて、上記の構成により居室61に対する加湿量の調整を行う際の作用について説明する。
図3に示すように、開閉部材86が開状態とされることで通気部68が開放され、かつ、通気ガラリ82の各スラット83が閉状態とされることで開口部81が閉鎖されている状態では、吹出グリル78より乾燥室62に吹き出された空調空気が通気部68を通じて居室61に流れ込む。この場合、天井側の吹出グリル78から吹き出された空調空気は乾燥室62を上下に横断するように床側の通気部68へと流れ、その後通気部68を通じて居室61に導かれることになる。つまり、この場合、空調空気が衣類Kを上下に通過するように流れることになるため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を比較的多くすることができる。そのため、その空調空気により居室61の加湿を行うに際し加湿量を多くすることができる。
なお、以下においては、吹出グリル78から吹き出された空調空気が通気部68を通じて居室61に流れ込む上記の通気状態を「第1通気状態」ともいう。
一方、図4に示すように、通気ガラリ82の各スラット83が開状態とされることで開口部81が開放され、かつ、開閉部材86が閉状態とされることで通気部68が閉鎖されている状態では、吹出グリル78より乾燥室62に吹き出された空調空気が開口部81を通じて居室61に流れ込む。この場合、天井側の吹出グリル78より吹き出された空調空気は同じ天井側にある開口部81に向けてショートカットするように流れ、その後開口部81を通じて居室61に導かれることになる。つまり、この場合、空調空気が衣類Kの上部周辺のみを通過して流れることになるため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を比較的少なくすることができる。そのため、その空調空気により居室61の加湿を行うに際し加湿量を少なくすることができる。
なお、以下においては、吹出グリル78から吹き出された空調空気が開口部81を通じて居室61に流れ込む上記の通気状態を「第2通気状態」ともいう。
ちなみに、第2通気状態においては、空調空気が乾燥室62に吹き出された後、その空調空気が開口部81→居室61→取込ダクト79を経由して空調装置76に還流する。したがって、この場合には、開口部81と居室61と取込ダクト79とを含んで還流経路が構成されている。
続いて、本空調システム75の電気的構成について説明する。なお、図3に本空調システム75の電気的構成を示す。また、図4では、かかる電気的構成の図示を省略している。
図3に示すように、空調システム75は、開閉制御手段としてのコントローラ88を備える。コントローラ88は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されており、例えば居室61の壁面に設けられている。
コントローラ88には、湿度検知手段としての湿度センサ89が接続されている。湿度センサ89は、居室61の湿度を検知するセンサであり、例えば居室61の壁面に設けられている。コントローラ88には、湿度センサ89から逐次検知結果が入力される。
コントローラ88には、開閉駆動部87及びスラット駆動部84が接続されている。コントローラ88は、湿度センサ89からの検知結果に基づいて、これらの駆動部84,87を駆動制御する。
ここで、コントローラ88により実行される加湿量調整処理について説明する。なお、本処理は、空調システム75(空調装置76)の運転時において、所定の周期で繰り返し実行される。
コントローラ88は、湿度センサ89により検知された居室61の湿度に基づいて、居室61の湿度が所定の閾値よりも高いか否かを判定する。コントローラ88は、居室61の湿度が所定の閾値以下であると判定した場合には、第1通気処理を実行する。この第1通気処理では、コントローラ88が、開閉駆動部87に開信号を出力し同駆動部87により開閉部材86を開状態とするとともに、スラット駆動部84に閉信号を出力し同駆動部84により各スラット83を閉状態とする。これにより、通気部68が開放されるとともに、開口部81が閉鎖される。そのため、吹出グリル78から吹き出された空調空気が通気部68を通じて居室61に流れ込む第1通気状態(図3に示す状態)となる。したがって、居室61の湿度が比較的低い場合には、居室61に対する加湿量を多くすることができる。
一方、コントローラ88は、居室61の湿度が所定の閾値よりも高いと判定した場合には、第2通気処理を実行する。この第2通気処理では、コントローラ88が、開閉駆動部87に閉信号を出力し同駆動部87により開閉部材86を閉状態とするとともに、スラット駆動部84に開信号を出力し同駆動部84により各スラット83を開状態とする。これにより、通気部68が閉鎖されるとともに、開口部81が開放される。そのため、吹出グリル78から吹き出された空調空気が開口部81を通じて居室61に流れ込む第2通気状態(図4に示す状態)となる。したがって、居室61の湿度が比較的高い場合には、居室61に対する加湿量を少なくすることができる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
乾燥室62に吹出グリル78を設け、その吹出グリル78より空調空気を乾燥室62に吹き出すようにしたため、その空調空気を利用して衣類Kを乾燥させることができる。また、衣類Kの乾燥に用いられて湿気を帯びた空調空気を通気部68又は開口部81を通じて居室61に導くようにしたため、その空調空気により居室61の加湿を行うことができる。よって、この場合、空調システム75を利用して衣類Kの乾燥を行うことができるとともに、その衣類乾燥に用いた空気を利用して居室61の加湿を行うことができる。
吹出グリル78を乾燥室62の天井側、通気部68を床側に設けたため、吹出グリル78から吹き出された空調空気が乾燥室62を上下に横断するように通気部68へと流れる。この場合、空調空気が衣類K周辺を上下に通過するように流れるため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を多くすることができる。そのため、居室61の加湿を好適に行うことができる。
乾燥室62と居室61とを仕切る間仕切壁64において、床側に通気部68を設け、天井側に開口部81を設けた。そして、通気部68を開閉部材86等(開閉手段)により開閉可能とするとともに、開口部81を各スラット83等(開閉手段)により開閉可能とした。この場合、通気部68を開放させかつ開口部81を閉鎖させることで、吹出グリル78より乾燥室62に吹き出された空調空気が通気部68を通じて居室61に流れ込む第1通気状態(図3参照)とすることができる。この場合、空調空気が衣類Kを上下に通過するようにして(床側の)通気部68へと流れるため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を比較的多くすることができる。
一方、通気部68を閉鎖しかつ開口部81を開放させることで、吹出グリル78より吹き出された空調空気が開口部81を通じて居室61に流れ込む第2通気状態(図4参照)とすることができる。この場合、空調空気が衣類Kの上部周辺のみを通過するように近くの(天井側の)開口部81に向けてショートカットして流れるため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を比較的少なくすることができる。よって、この場合、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を調整することが可能となり、その結果その空調空気により居室61を加湿する際の加湿量を調整することが可能となる。
湿度センサ89により検知された居室61の湿度に基づいて、通気部68及び開口部81のうちいずれかを開放させるようにした。つまり、居室61の湿度に基づいて、第1通気状態と第2通気状態とのうちいずれかの通気状態となるようにした。この場合、居室61の湿度に応じて、吹出グリル78から吹き出される空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を調整することが可能となり、ひいては居室61を加湿する際の加湿量を調整することが可能となる。
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記各実施形態ではいずれも、乾燥室12(62)への空調空気の吹出口が天井側に設けられていたが、かかる吹出口は床側に設けられていてもよい。その場合の具体例を図5に示す。図5に示す建物90には、居室91、乾燥室92及び機械室93が設けられている。居室91と乾燥室92とは間仕切壁95により仕切られており、その間仕切壁95には出入口96が設けられている。出入口96には引き戸からなるドア97が設けられている。この場合、ドアが開き戸とされていた上記各実施形態の場合と異なり、ドア97下に通気部が設けられていない。
間仕切壁95(乾燥室92を区画する「壁部」に相当)には、その天井付近に居室91と乾燥室92とを連通する開口部98が設けられている。その開口部98には通気ガラリ99が設けられ、その通気ガラリ99(ひいては開口部98)を通じて居室91と乾燥室92との間の通気が可能となっている。また、居室91、乾燥室92及び機械室93の床部には床面材105が設けられており、この床面材105の下方には床下空間106が形成されている。
建物90には、空調システム100(全館空調システム)が設けられている。空調システム100は、機械室93に設置された空調装置101と、空調装置101に接続された空調ダクト102と、空調ダクト102に接続された吹出グリル103とを備える。空調ダクト102は、床下空間106に配設され、その空調ダクト102に接続された吹出グリル103は乾燥室92の床部詳しくは床面材105に取り付けられている。なお、吹出グリル103が吹出口に相当する。
上記の構成では、空調装置101より空調空気が空調ダクト102を介して吹出グリル103に供給され、その吹出グリル103より空調空気が乾燥室92に吹き出される。この場合、空調空気は吹出グリル103より吊下げ棒108に吊り下げられた衣類Kに向けて吹き出される。そのため、その空調空気を利用して衣類Kの乾燥を行うことができる。また、乾燥室92に吹き出された空調空気は通気ガラリ99を通じて居室91に取り込まれ、その取り込まれた空調空気により居室91の空調(冷房又は暖房)が行われる。また、この場合にも、衣類Kの乾燥に用いられて湿気を帯びた空調空気が居室91に流れ込むため、その空調空気により居室91の加湿を行うことが可能となる。なお、この場合、居室91が空調対象となる「居室空間」に相当し、開口部98が「通気口」及び「通気路」に相当する。
また、上記の構成では、吹出グリル103が乾燥室92の床側、開口部98(通気ガラリ99)が天井側に設けられているため、吹出グリル103から吹き出された空調空気が乾燥室92を上下に横断するように通気ガラリ99へと流れる。したがって、この場合にも、空調空気が衣類K周辺を上下に通過するように流れるため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を多くすることができる。そのため、居室91の加湿を好適に行うことができる。
(2)上記各実施形態では、ドア17(66)下の通気部19(68)を床側の通気口として用いたが、これを変更して、ドア17(66)の下部(床側)に通気用の開口部を設け、その開口部を床側の通気口として用いてもよい。なお、この場合、開口部に通気ガラリを配設することが考えられる。また、間仕切壁15(64)の下部(床側)に開口部を設けて、それを床側の通気口としてもよい。これらの場合にも、通気口が天井側の吹出口44(吹出グリル78)とは上下方向にて反対側に設けられるため、吹出口44(吹出グリル78)から吹き出される空調空気が乾燥室12(62)を上下に横断するように(床側の)通気口に向けて流れることになる。このため、空調空気が衣類Kから吸収する湿気の量を多くすることができ、居室11(61)の加湿を好適に行うことが可能となる。
(3)上記各実施形態では、吹出口44(吹出グリル78)を、吊下げ棒21(69)に吊り下げられた衣類Kに向けて空調空気を吹き出し可能な位置に配置したが、空調空気は必ずしも衣類Kに向けて吹き出す必要はない。例えば、上記第2の実施形態の構成において、吹出グリル78を吊下げ棒69の上方位置(真上位置)とは異なる位置に配置して、吹出グリル78から空調空気を衣類Kとは異なる場所に向けて吹き出すようにすることが考えられる。その場合にも、その空調空気の吹出により乾燥室62において空気の流れを生じさせる等することで、衣類Kの乾燥を行うことができるとともに、その衣類乾燥に用いた空気により居室61の加湿を行うことができる。
(4)上記第1の実施形態では、湿度センサ51により検知された居室11の湿度に基づいて、吹出口44から吹き出す空調空気の向きを第1向きと第2向きとに調整する(切り替える)ようにしたが、これを変更してもよい。例えば、湿度センサ51により検知された居室11の湿度に基づいて、吹出口44から吹き出す空調空気の向きを第1向きと第2向きとの間で連続的に調整するようにしてもよい。具体的には、湿度センサ51(89)により検知された居室11の湿度が低いほど、空調空気の吹出向きが第1向き側となるように吹出向きを調整することが考えられる。これは、居室11の湿度が低いほど、各スラット48を第1状態側に移行(傾斜)させることにより実現できる。この場合、居室11の湿度に応じた加湿量の調整をより好適に行うことができる。
(5)上記第1の実施形態において、各スラット48を固定式にする等して、吹出口44から吹き出す空調空気の向きを調整不能にしてもよい。この場合、衣類Kの乾燥と居室11の加湿とを好適に行う観点からすると、各スラット48を第1状態の位置に固定し、吹出口44から空調空気が衣類Kに向けて吹き出すようにするのが望ましい。
(6)上記各実施形態では、湿度センサ51(89)により検知された居室11(61)の湿度に基づいて、コントローラ50(88)により居室11(61)に対する加湿量の調整を行うようにしたが、これを変更して、かかる加湿量の調整を手動操作により行うようにしてもよい。例えば、空調システム40(75)の運転操作部(操作リモコン等)に、加湿量調整を行う操作キーを設けることが考えられる。
(7)上記各実施形態では、乾燥室12,62に隣接する居室11,61を空調対象として空調を行ったが、例えば乾燥室12,62に隣接しない居室を空調対象として空調を行ってもよい。その場合の例を図6に示す。
図6に示す建物110は、上記第1の実施形態における建物10において、居室11と乾燥室12との間に廊下111が設けられた構成となっている。すなわち、本例の建物110では、乾燥室12に隣接して廊下111が設けられ、その廊下111に隣接して居室11が設けられている。乾燥室12と廊下111との間の間仕切壁113には出入口114が設けられ、その出入口114には開き戸からなるドア115が設けられている。ドア115下はアンダーカットされて通気部116が形成されている。
廊下111と居室11との間の間仕切壁118には出入口119が設けられ、その出入口119には開き戸からなるドア121が設けられている。ドア121下はアンダーカットされて通気部122が形成されている。
かかる構成では、吹出口44から乾燥室12に吹き出された空調空気が通気部116を通じて廊下111に流れ込み、その後、廊下111から通気部122を通じて居室11に流れ込む。そして、その流れ込んだ空調空気により居室11の空調(冷房又は暖房)が行われるとともに、居室11の加湿が行われる。したがって、この場合にも、空調システム40を利用して衣類Kの乾燥を行うことができるとともに、その衣類乾燥に用いた空気を利用して居室11の加湿を行うことができる。
なお、上記の構成では、通気部116が「通気口」に相当し、各通気部116,122と廊下111とにより「通気路」が構成されている。
ちなみに、上記の場合と同様に、上記第2の実施形態における建物60において、居室61と乾燥室62との間に廊下が設けられた構成を採用してもよい。
(8)上記各実施形態では、共通の空調装置41,76により複数の屋内空間の空調を行う全館空調システム40に本発明を適用したが、空調装置により一の屋内空間の空調を行う空調システムに本発明を適用してもよい。
また、上記各実施形態では、吹出口44(吹出グリル78)から乾燥室12(62)に吹き出された空調空気が還流経路を経由して空調装置41,76へと還流する循環式の空調システム40(75)に本発明を適用したが、循環式でない空調システムに本発明を適用してもよい。すなわち、建物においては還流経路が設けられていない場合があり、そのような構成に本発明の空調システムを適用してもよい。