JP2017120843A - 遊離砥粒含有スラリーの処理方法 - Google Patents

遊離砥粒含有スラリーの処理方法 Download PDF

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【課題】本発明は、簡単な操作により、遊離砥粒用分散液の構成成分を回収可能とする、遊離砥粒含有スラリーの処理方法等を提供する。【解決手段】本発明のスラリーの処理方法は、被処理液を静置又は遠心分離の対象として、被処理液中において、相対的に重い粒子と相対的に軽い粒子とに分離し、相対的に軽い粒子が分散した軽粒子分散液を回収する第1工程と、軽粒子分散液を撹拌しながら加熱して温度をA℃にし、加熱を止めてから軽粒子分散液に水を添加して得られた混合液を、油分を主成分とする上層と、水と前記遊離砥粒と前記シリコンインゴットの切削粉末とを主成分とする下層とに分離し、前記上層を回収する第2工程とを含む。A℃は、遊離砥粒用分散液の曇点よりも低く、軽粒子分散液に水が添加されることにより得られる混合液の曇点よりも高い。【選択図】なし

Description

本発明は、遊離砥粒含有スラリーの処理方法、及び遊離砥粒用分散液の再生方法に関する。また、本発明は、遊離砥粒含有スラリーの調製に使用される遊離砥粒用分散液、遊離砥粒含有スラリーを用いたシリコンインゴット切断方法に関する。
シリコン、石英、水晶、化合物半導体、セラミックス、ガラス、金属酸化物、超硬合金、焼結合金等のいわゆる脆性材料の切削加工、研削加工、研磨加工、切断加工の際には、しばしば砥粒を遊離砥粒用分散液中に分散させた遊離砥粒含有スラリーが用いられる。加工の際には、このスラリーが切削液として加工装置の刃の部分に供給されながら作業が行われる。
一般に市販されている水溶性の遊離砥粒用分散液の多くは、親水性のグリコール類を基油とし、主に砥粒の混合・分散のための添加剤を添加することで設計されており、例えば特許文献1、2には、遊離砥粒用分散液として水−グリコール系分散液が開示されている。
近年、環境対応、経済性の向上の観点から、使用済み切削油組成物の廃棄処理について、容易化することが試みられている。また、環境性、生産性及び経済性の向上観点から、使用済み切削油組成物を再利用することが試みられている。例えば、特許文献3には、遠心分離により砥粒やインゴットの切削粉末などの分散物と切削油組成物とを分離し、切削油組成物を再利用することが開示されている。しかしながら、遠心分離だけでは再利用を繰り返すことによって、切削油組成物中に小粒径の砥粒やインゴットの切削粉末などが蓄積されてしまう。砥粒やインゴットの切削粉末などを完全に取り除く方法として切削油組成物を蒸留にて精製する方法があるが、多くのエネルギーを使用するため不経済である。一方、曇点を利用した油水分離によって砥粒やインゴットの切削粉末などの分散物を高い分離効率で切削廃液から容易に分離する方法として、特許文献4及び特許文献5には、固定砥粒ワイヤソー用切削液組成物が開示されている。
特開平10−81872号公報 特開平10−324889号公報 特開2003−340719号公報 特開2014−129495号公報 特開2015−127363号公報
しかし、例えば、特許文献4や特許文献5に記載の固定砥粒ワイヤソー用切削液組成物を遊離砥粒用分散液として利用した場合、砥粒やインゴットの切削粉末などの分散物が多く存在するために、スラリーの増粘を引き起こして切削不可能となってしまう。また、これらの文献には、遊離砥粒含有スラリーから遊離砥粒用分散液の構成成分を回収する方法については、記載も示唆もされていない。
そこで、本発明は、簡単な操作により、遊離砥粒用分散液の構成成分を回収可能とする、遊離砥粒含有スラリーの処理方法、及び当該処理方法を使用した遊離砥粒用分散液の再生方法を提供する。また、本発明は、遊離砥粒含有スラリーの調製に使用され、構成成分の回収が容易に行え、インゴットの切削最中のスラリーの増粘を抑制可能とする遊離砥粒用分散液、当該遊離砥粒用分散液を用いて調製される遊離砥粒含有スラリー、及び遊離砥粒含有スラリーを用いたシリコンインゴット切断方法を提供する。
本発明の遊離砥粒含有スラリーの処理方法は、
シリコンインゴットの切削に用いられ遊離砥粒と遊離砥粒用分散液とを含む遊離砥粒含有スラリーとシリコンインゴットの切削粉末とを含む被処理液を静置又は遠心分離の対象として、前記被処理液中において、相対的に重い粒子と相対的に軽い粒子とに分離し、相対的に軽い粒子が分散した軽粒子分散液を回収する第1工程と、
回収した軽粒子分散液を撹拌しながら加熱して温度をA℃にし、加熱を止めてから軽粒子分散液に水を添加して得られた混合液を、油分を主成分とする上層と、水と前記遊離砥粒と前記切削粉末とを主成分とする下層とに分離し、前記上層を回収する第2工程とを含み、
前記A℃は、前記遊離砥粒用分散液の曇点よりも低く、前記混合液の曇点よりも高く、
前記遊離砥粒用分散液は、
25℃の水への溶解性が5.0質量%未満の親油性液体と、
25℃の水への溶解性が50質量%以上の親水性液体と、
炭素数が12以上のアルキル基及び炭素数が12以上のアルケニル基から選ばれる少なくとも1種の原子団を含むイオン性界面活性剤、及びイオン性を有するポリマー分散剤から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる分散剤と、
水と、を含む、遊離砥粒含有スラリーの処理方法である。
本発明の遊離砥粒用分散液の再生方法は、本発明の遊離砥粒含有スラリーの処理方法により回収した前記上層に、未使用の前記遊離砥粒用分散液を基準にしたときの不足成分の一部又は全部を添加する工程を含む、遊離砥粒用分散液の再生方法である。
本発明の遊離砥粒用分散液は、
25℃の水への溶解性が5.0質量%未満の親油性液体が60質量%以上85質量%以下と、
25℃の水への溶解性が50質量%以上の親水性液体が5質量%以上15質量%以下と、
炭素数が12以上のアルキル基及び炭素数が12以上のアルケニル基から選ばれる少なくとも1種の原子団を含むイオン性界面活性剤、及びイオン性を有するポリマー分散剤から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる分散剤を0.01質量%以上5質量%以下と、
水と、を含む、遊離砥粒用分散液である。
本発明の遊離砥粒含有スラリーは、本発明の遊離砥粒用分散液と遊離砥粒とを含む遊離砥粒含有スラリーである。
本発明のシリコンインゴット切断方法は、本発明の遊離砥粒含有スラリーを、ワイヤーとシリコンインゴットの切断部位又はシリコンインゴット全体に供給しながら、前記ワイヤーでシリコンインゴットを切断する工程を含む、シリコンインゴット切断方法である。
本発明によれば、簡単な操作により、遊離砥粒用分散液の構成成分を回収可能とする、遊離砥粒含有スラリーの処理方法、及び当該処理方法を使用した遊離砥粒用分散液の再生方法を提供できる。また、本発明は、遊離砥粒含有スラリーの調製に使用され、構成成分の回収が容易に行え、インゴットの切削最中のスラリーの増粘を抑制可能とする、遊離砥粒用分散液、当該遊離砥粒用分散液を用いて調製される遊離砥粒含有スラリー、及び遊離砥粒含有スラリーを用いたシリコンインゴット切断方法を提供できる。
本発明の遊離砥粒含有スラリー(以下「スラリー」と略称する場合がある。)の処理方法では、例えば、シリコンインゴット(以下「インゴット」と略称する場合がある。)の切削に用いられたスラリーと切削粉末とを含む被処理液を、静置又は遠心分離の対象として、被処理液中において、相対的に重い粒子と相対的に軽い粒子とに分離できる。相対的に重い粒子は、被処理液に含まれる遊離砥粒やインゴットの切削粉末などの分散物のうちの比較的粒径が大きい砥粒であり、相対的に軽い粒子は、比較的粒径が小さい前記分散物(以下「微粉体」と呼ぶ場合もある。)である。比較的粒径が大きい砥粒は、再利用の対象とすることができる。
そして、被処理液から回収した前記相対的に軽い粒子が分散した液(軽粒子分散液)を、スラリーの調製に用いた遊離砥粒用分散液の曇点よりも低い温度で加熱している間は、当該軽粒子分散液は油水分離しない。その後、軽粒子分散液に水を加えることにより、軽粒子分散液は油水分離する。上層には、油相部分が含まれ、下層(廃棄物層とも言う。)には、静置又は遠心分離では分離しきれなかった前記微粉体が含まれる。故に、上層(油相部分)のみを回収し、当該油相部分に、未使用の遊離砥粒用分散液を基準にしたときの不足成分の一部又は全部を添加すれば、遊離砥粒用分散液として再利用(「再生」ともいう)できる。
このように、本発明のスラリーの処理方法の一例では、軽粒子分散液に含まれる前記微粉体の粒径が小さくても、曇点を利用した油水分離により、油相部分と微粉体とを分離できる。故に、本発明によれば、蒸留にて精製する方法よりも経済的且つ簡単な操作により高い回収率で微粉体の分離が行える。また、遠心分離装置を用いなくても油相部分と微粉体との分離が行えるので、遠心分離装置内部の羽根が、微粉体により削られ劣化することも抑制できる。
また、本発明のスラリーの処理方法では、軽粒子分散液の加熱中は、軽粒子分散液の撹拌を行っているので、軽粒子分散液の局所加熱が抑制される。また、軽粒子分散液に対する加熱を止めてから、軽粒子分散液に水を加えることにより、軽粒子分散液に水を添加して得られた混合液を油水分離させるので、微粉体を多く含む下層において局所加熱が生じる恐れが低減される。故に、本発明のスラリーの処理方法では、局所加熱に起因する水素の多量発生を確実に防止できるので、遊離砥粒用分散液の構成成分の回収において、高い安全性が確保できる。
また、本発明の遊離砥粒用分散液には、特定の分散剤が含まれているので、本発明の遊離砥粒用分散液に遊離砥粒を混合して得たスラリーをインゴットの切削に用いれば、インゴットの切削最中のスラリーの増粘を抑制できる。
次に、本発明のスラリーの処理方法に適した遊離砥粒用分散液の一例について説明する。
[遊離砥粒用分散液]
本発明の遊離砥粒用分散液の一例は、親油性液体(成分A)と、親水性液体(成分B)と、分散剤(成分C)と、水(成分D)とを含む。
(親油性液体(成分A))
親油性液体(成分A)の25℃の水への溶解性は、油水分離性の向上の観点から、5.0質量%以下であるが、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下であり、成分B及び成分Dとの混和性の向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。尚、本発明において、「親油性液体(成分A)の25℃の水への溶解性」とは、25℃の水へ徐々に添加していった時に白濁し始める時の、水(成分D)に対する親油性液体(成分A)の質量割合をいい、下記の式により求められる値である。
溶解性(質量%)=[親油性液体(成分A)の添加量/水(成分D)の添加量]×100
本発明の遊離砥粒用分散液の一例に含まれる成分Aは、曇点の微調整が容易であるという観点から、下記一般式(1)で表される化合物であると好ましい。
1−O−(CH2CHR2O)m−R3 (1)
ただし、一般式(1)において、R1は水酸基を含んでいてもよい炭素数3以上20以下の炭化水素基、R2は水素又はメチル基、R3は水素又は水酸基を含んでいてもよい炭素数3以上20以下の炭化水素基、mは、CH2CHR2Oの平均付加モル数であり0以上6以下である。
1の炭素数は、曇点の微調整が容易であるという観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。また、遊離砥粒用分散液の粘度調整の容易性の観点から、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。
3は、入手容易性の観点から、好ましくは水素又は炭素数が3以上6以下の炭化水素基、より好ましくは水素又は炭素数が3以上5以下の炭化水素基、更に好ましくは水素又は炭素数が3以上4以下の炭化水素基である。
mは、成分B及び成分Dとの混和性向上の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、遊離砥粒用分散液の粘度調整の容易性の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例における、成分Aの含有量は、再生率の向上の観点から、60質量%以上、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、曇点調整の容易さの観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例に含まれる成分Aは、上記一般式(1)で表わされる化合物のうちの1種であってもよいし、2種以上を含む混合物であってもよい。
(親水性液体(成分B))
親水性液体(成分B)の25℃の水への溶解性は、成分Aと成分Dとを良好に相溶化するという観点から、高いほど好ましいが、具体的には、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。尚、本発明において、「親水性液体(成分B)の25℃の水への溶解性」とは、25℃の水へ徐々に添加していった時に白濁し始める時の、水(成分D)に対する親油性液体(成分B)の質量割合をいい、下記の式により求められる値である。
溶解性(質量%)=[親水性液体(成分B)の添加量/水(成分D)の添加量]×100
本発明の遊離砥粒用分散液の一例に含まれる成分Bは、曇点の微調整が容易であるという観点から、下記一般式(2)で表わされる化合物であると好ましい。
4−O−(CH2CHR5O)n−H (2)
ただし、一般式(2)において、R4は水素又は水酸基を含んでいてもよい炭素数3以上20以下の炭化水素基、R5は水素又はメチル基、nは、CH2CHR5Oの平均付加モル数であり1以上20以下の数を表す。
4の炭素数は、成分Aと成分Dとを良好に相溶化するという観点から、好ましくは3以上、より好ましくは炭素数4以上である。また、遊離砥粒用分散液の粘度調整の容易性の観点から、好ましくは16以下、より好ましくは12以下が好ましい。
nは、水への溶解性の向上の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、遊離砥粒用分散液の粘度調整の容易性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例における、成分Bの含有量は、コスト低減の観点から、5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、曇点調整の容易さの観点から、好ましくは15質量%以下である。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例に含まれる成分Bは、上記一般式(2)で表わされる化合物のうちの1種であってもよいし、2種以上を含む混合物であってもよい。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例に含まれる成分Aと成分Bの質量比(成分A/成分B)は、油水分離性の向上の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上であり、成分Aと成分Dとを良好に相溶化させるという観点から、好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下である。
(分散剤(成分C))
本発明の遊離砥粒用分散液は、スラリー中に含まれる遊離砥粒とシリコン切削粉末の凝集、ゲル化を防ぎ、スラリーを適正な粘度に保つために、分散剤を含む。ここでいうスラリーの適正な粘度(25℃)とは、シリコンウエハの表面品質の向上の観点から、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは80mPa・s以上であり、インゴットから切り出されたシリコンウエハの洗浄性の向上の観点から、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは400mPa・s以下である。尚、スラリーの粘度は、B型粘度計(25℃)にて測定できる。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例に含まれる成分Cは、イオン性界面活性剤及びイオン性を有するポリマー分散剤から選ばれる少なくとも1種からなる分散剤であって、イオン性界面活性剤が、炭素数が12以上のアルキル基及び炭素数が12以上のアルケニル基から選ばれる少なくとも一種の原子団を含む。
前記イオン性界面活性剤は、切削粉末の分散性向上の観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤であり、より好ましくは、アルケニルコハク酸、ジアルキルスホコハク酸、及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。塩を形成させるための対イオンは、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン、アンモニウムイオン、及びアルキルアンモニウムイオンから選ばれる1種以上が好ましく、ナトリウムイオン及びカリウムイオンから選ばれる1種以上がより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。
前記イオン性界面活性剤において、切削粉末の分散性向上の観点から、アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは12以上あり、入手容易性の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。
前記イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、砥粒及びシリコン切削粉末の分散性向上の観点から、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、及びテトラプロペニルコハク酸ジカリウムから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
イオン性を有するポリマー分散剤は、自身の溶解性及び砥粒や切削粉末の分散性の向上の観点から、カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位を有するコポリマーであると好ましい。
成分Cが、カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位を1種以上含む場合、相溶性の向上の観点から、カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位の質量割合が50質量%以下のコポリマーが好ましく、カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位と、疎水性のアルキル(メタ)アクリレートやスチレンに由来の構成単位とを含むコポリマーがより好ましい。コポリマーの好ましい具体例としては、砥粒及びシリコン切削粉末の分散性向上の観点から、無水マレイン酸/メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート/スチレンコポリマーが挙げられる。
イオン性を有するポリマー分散剤の重量平均分子量は、遊離砥粒及びシリコン切削粉末の分散性向上の観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上であり、遊離砥粒及びシリコン切削粉末同士の架橋を抑制する観点から、好ましくは500,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。尚、イオン性を有するポリマー分散剤の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例における、成分Cの含有量は、遊離砥粒及びシリコン切削粉末の分散性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、コスト低減の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
(水(成分D))
本発明の遊離砥粒用分散液の一例は、水を含有する。前記遊離砥粒用分散液が水(成分D)を含むため遊離砥粒用分散液は曇点を有する。また、ワイヤソーによる切断時に遊離砥粒用分散液は冷却効果を発揮する。
水(成分D)は、遊離砥粒用分散液の、成分A〜Cと後述する任意成分とを除いた残部として含まれていればよいが、本発明の遊離砥粒用分散液の一例における、成分Dの含有量は、油水分離した時の下層の量を低減する観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。また、コスト低減及び曇点調整の容易さの観点から、好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例に含まれる水には、例えば、超純水、純水、イオン交換水、又は蒸留水等を用いることができるが、超純水、純水、又はイオン交換水が好ましく、超純水がより好ましく使用される。なお、純水及び超純水は、例えば、水道水を活性炭に通し、イオン交換処理し、さらに蒸留したものを、必要に応じて所定の紫外線殺菌灯を照射、又はフィルターに通すことにより得ることができる。例えば、25℃での電気伝導率は、多くの場合、純水で1μS/cm以下であり、超純水で0.1μS/cm以下を示す。
本発明の遊離砥粒用分散液の曇点は、加熱時のにごりを低減する観点から、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上である。遊離砥粒用分散液の曇点は、成分Aと成分Bの各構造、成分A、成分B及び成分Dの含有比率により調整できる。尚、本発明において遊離砥粒用分散液の曇点とは、本発明の遊離砥粒用分散液を撹拌しながら常圧で加熱した際に、透明な状態から白濁し始める温度を意味し、一例として実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の遊離砥粒用分散液の一例は、任意成分として、更に有機溶剤、増粘剤、消泡剤、成分C以外の界面活性剤(成分E)、防腐剤、pH調整剤等を配合してもよい。有機溶剤の具体例としては、炭素数が1以上4以下の一価又は多価アルコールが挙げられ、より具体的には、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。消泡剤としては、シリコーン、ポリアルキレングリコール等を含有する市販の消泡剤が使用できる。消泡剤の具体例としては、SNデフォーマー470(サンノプコ社製、ポリエーテル系消泡剤)が挙げられる。
(界面活性剤(成分E))
本発明の遊離砥粒用分散液の一例は、切削粉末の分離効率向上の観点から、ノニオン性界面活性剤(成分E)を含む。尚、切削粉末の「分離効率」は、被処理液中に含まれる切削粉末の「除去率」を意味する。
前記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられるが、中でも、油水分離性の向上観点から、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート等が挙げられる。
また、これらのノニオン性界面活性剤の中でも、成分Aを乳化する能力が低い、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
Figure 2017120843
但し、前記一般式(3)中、EOはエチレンオキシ基であり、qはエチレンオキシ基の平均付加モル数であり、qは1以上150以下であり、rはスチレン基の置換数であり、1以上3以下である。
平均付加モル数qは、切削粉末の分散性向上の観点から、1以上であるが、10以上が好ましく、30以上がより好ましく、40以上が更に好ましく、50以上が更により好ましく、60以上が更により好ましく、そして、油水分離性の向上の観点から、150以下であるが、100以下が好ましく、90以下がより好ましく、80以下が更に好ましく、70以下がより更に好ましい。
スチレン基の置換数rは、切削粉末の分散性向上の観点から、1以上3以下であるが、2が好ましく、一般式(3)で表されるノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルであると好ましい。
遊離砥粒用分散液における界面活性剤(成分E)の含有量は、切削粉末の分離効率向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、同様の観点から、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が更に好ましい。
本発明の遊離砥粒用分散液の25℃におけるpHは、装置の防錆の観点から、好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上、更に好ましくは6.0以上であり、取扱者の安全の観点から、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9.0以下である。
(遊離砥粒用分散液の調製方法)
遊離砥粒用分散液の調製方法は、成分A〜D、更に任意成分を混合することによって調製できる。遊離砥粒用分散液を調製する操作性の向上の観点から、成分Bと成分Dとの混合物に、成分Aを添加すると好ましく、成分Cは、成分Aと成分Bと成分Dの混合物に添加されると好ましい。遊離砥粒用分散液が任意成分として界面活性剤(成分E)を含む場合、成分Eは、成分Aの添加の前に、成分Bと成分Dとの混合物へ添加されると好ましい。成分Eが結晶性固体である場合は、成分Bと成分Dとの混合物への成分Eの添加後、これらを加温して成分Eを融解させてから、成分Aの添加をすると好ましい。
(シリコンインゴットの切断方法)
本発明の遊離砥粒用分散液は、インゴットの切断に使用できる。本発明のインゴットの切断方法の一例は、遊離砥粒と遊離砥粒用分散液とを含むスラリーを用いてインゴットを切断する工程を含む。
インゴットの切断は、スラリーを、ワイヤーと、インゴットの切断部位又はインゴット全体に供給しながら、且つ、ワイヤーをインゴットに押し付けながら高速で移動走行させることによって行える。
遊離砥粒としては、炭化珪素(SiC)砥粒が好ましい。炭化珪素(SiC)砥粒の砥粒径は、好ましくは8μm以上20μm以下、より好ましくは10μm以上15μm以下である。当該砥粒径の測定には、堀場製作所社製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いることができる。分散媒としてイオン交換水を用い、比屈折率は2.0とする。尚、当該砥粒径は、体積平均粒子径(メディアン径)である。
スラリー中の遊離砥粒用分散液の割合としては、遊離砥粒の種類、砥粒径によって異なる。例えば、遊離砥粒として、砥粒径10μm以上15μm以下の炭化珪素(SiC)砥粒を使用する場合、スラリー中の遊離砥粒用分散液の割合は、好ましくは40質量%以上60質量%以下、より好ましくは45質量%以上55質量%以下である。
シリコンインゴットの切断に用いられるワイヤソーには、従来から公知の装置を用いることができる。ワイヤーについても、従来から公知のワイヤー、例えば、ピアノ線を用いることができる。
ワイヤーは、例えば、ワイヤソー供給リールから供給され、メインローラー上に設けられた所定間隔の溝に巻きつけ配列される。ワイヤーはメインローラーを所定の回転速度で回転させることによって走行移動でき、通常、400m/min以上1000m/min以下程度となるように高速で走行移動する。尚、ワイヤソーは、一本のワイヤーによって切断加工を行うシングルタイプであってもよい。
スラリーの調製は、従来から公知の方法で行える。例えば、遊離砥粒と遊離砥粒用分散液とを混合した後、好ましくは5時間以上撹拌することにより行える。
(スラリーの処理方法)
本発明のスラリーの処理方法の一例は、遊離砥粒を用いたワイヤーによるインゴットの切断に使用されたスラリーの処理方法である。本発明のスラリーの処理方法の一例は、スラリーとインゴットの切削粉末とを含む被処理液を静置又は遠心分離の対象として、被処理液中において、相対的に重い粒子と相対的に軽い粒子とに分離し、相対的に軽い粒子が分散した軽粒子分散液を回収する第1工程と、回収した軽粒子分散液を撹拌しながら加熱して温度をA℃にし、加熱を止めてから軽粒子分散液に水を添加して得られた混合液を、油分を主成分とする上層と、水と遊離砥粒と切削粉末とを主成分とする下層とに分離し、前記上層を回収する第2工程と、を含む。A℃は、遊離砥粒用分散液の曇点よりも低く、軽粒子分散液に水を添加して得られた混合液の曇点よりも高い。
本発明のスラリーの処理方法は、砥粒用分散液の構成成分を回収するので、「砥粒用分散液成分の回収方法」と言うこともできる。
(第1工程)
第1工程では、被処理液を静置又は遠心分離の対象とすることにより、被処理液中において、相対的に重い粒子と相対的に軽い粒子とに分離し、軽粒子分散液を回収する。尚、以下において、被処理液から軽粒子分散液の一部又は全部を回収することにより残った残部を「重粒子含有液」と称する。この重粒子含有液は、再利用できる砥粒が高濃度で含まれるスラリーとなっている。
重粒子含有液には、砥粒の再利用性の向上の観点から、被処理液に含まれる切削粉末と遊離砥粒のうちの、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含まれ、再利用後のスラリー品質の向上の観点から、被処理液に含まれる切削粉末と遊離砥粒のうちの、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下含まれる。
軽粒子分散液には、遊離砥粒用分散液の回収性の観点から、スラリーの調製に使用された遊離砥粒用分散液のうちの、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上が含まれる。
重粒子含有液に含まれる、遊離砥粒の粒径は、再使用した場合の切削性の観点から、好ましくは8μm以上、より好ましくは9μm以上である。尚、当該砥粒径は、体積平均粒子径(メディアン径)である。
軽粒子分散液に含まれる、微粉体の粒径は、約2μm以下である。
被処理液を静置することにより相対的に重い粒子と相対的に軽い粒子とに分離する場合、静置時間は、重粒子含有液に含まれる砥粒径の観点から、好ましくは8時間以上、より好ましくは12時間以上であり、サイクルタイムの適正化の観点から、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である。
被処理液を遠心分離の対象とする場合、遠心力G(重力加速度)は、再生使用可能な砥粒を高収率(例えば90質量%程度)で回収する観点から、好ましくは100G以上であり、切削粉末の混入量抑制の観点から、好ましくは3000G以下である。また、再生使用可能な砥粒を高収率で回収する観点から、回転を停止させるのではなく、徐々に速度を落とすなど被処理液中の各成分の分離移動に急激な負荷がかからない様にすることが望ましい。
軽粒子分散液の回収方法は、例えば、デカンテーション及び濾過が挙げられる。
被処理液のpHが5.0以上10.0以下の範囲外である場合、高い分離効率で被処理液から切削粉末を容易に分離する観点から、被処理液を静置又は遠心分離の対象とする前に、被処理液のpHを、5.0以上10.0以下の範囲内に調整すると好ましく、切削粉末の分離効率向上、及び装置の腐食抑制の観点から、6.0以上が好ましく、7.0以上がより好ましい。
被処理液のpHは、pH調整剤を用いて調整することができる。pH調整剤としては、遊離砥粒用分散液の調製に用いたpH調製剤と同じであってもよい。
(第2工程)
第2工程では、曇点を利用して、軽粒子分散液から油相部分を分離し回収する。具体的には、第1工程で得られた軽粒子分散液を撹拌しながら軽粒子分散液を加熱して、軽粒子分散液の温度をA℃にする。当該A℃は、スラリーの調製に使用された遊離砥粒用分散液の曇点よりも低い。従って、この段階では、軽粒子分散液は油水分離しない。その後、軽粒子分散液の加熱を止めてから軽粒子分散液に水を添加する。すると、水が添加された軽粒子分散液は、油分(成分A)を主成分とする上層と、水と微粉体(遊離砥粒と切削粉末)とを主成分とする下層とに分離する。従って、A℃は、軽粒子分散液に水が添加されることにより得られる混合液の曇点よりも高い。その後、前記上層を回収する。
「成分Aを主成分とする」とは、上層における成分Aの含有量が、上層に含まれ得る他のいずれの成分よりも多いことを意味し、「水と微粉体とを主成分とする」とは、下層における水の含有量と微粉体の含有量の和が、下層に含まれ得る他のいずれの成分のそれよりも多いことを意味する。上層には、成分A以外に、成分Bの一部と少量の水が含まれ、遊離砥粒用分散液に含まれる任意成分のうち水に溶けにくい成分がさらに含まれる場合がある。微粉体はほとんど含まれず、好ましくは少なくとも微粉体は含まれない。一方、下層には、水、微粉体以外に、成分Bの一部が含まれ、本発明の遊離砥粒用分散液に含まれる任意成分のうち水に溶けやすい成分がさらに含まれる場合があり、成分Aが少量含まれる場合もある。
A℃は、分離しやすい曇点を形成する観点から、40℃以上が好ましく、使用エネルギー量の低減の観点から、70℃以下が好ましい。
撹拌翼の回転数は、軽粒子分散液の加熱最中に、微粉体を均一性よく分散でき、軽粒子分散液の温度を良好に均一化できれば特に制限はない。軽粒子分散液の加熱を止めた後は、軽粒子分散液に対する撹拌は、水の添加に伴い止めてもよいし、軽粒子分散液に水を添加することにより得られた混合液を均一化するために、回転数を徐徐に減じ最終的に撹拌を止めてもよい。
軽粒子分散液に添加する水の量は、曇点調整の容易さの観点から、軽粒子分散液に含まれる遊離砥粒用分散液100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、処理量低減の観点から好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。
軽粒子分散液に添加する水の温度としては、加える量にも依存するが、分離効率の観点から、40℃以上が好ましく、取り扱い性や使用エネルギー量の観点から、80℃以下が好ましい。
軽粒子分散液に水を添加することにより得られた混合液の曇点は、油水分離の容易性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上であり、加熱操作の容易性の観点から50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。混合液の曇点の温度は、軽粒子分散液に添加する水の温度の調整や、遊離砥粒用分散液に含まれる界面活性剤(成分E)の選択により調整できる。油水分離の促進の観点から、軽粒子分散液には、水に加えて、界面活性剤が添加されると好ましい。当該界面活性剤としては、離砥粒用分散液に含まれる界面活性剤(成分E)と同じであると好ましい。
水が添加された軽粒子分散液からの上層の回収方法は、例えば、上からポンプで抜き出してもよいし、下層を除いてから回収してもよい。再生された遊離砥粒用分散液の品質向上の観点から、下層のみならず、下層に隣接した上層の一部も軽粒子分散液から除去してもよい。
スラリーの調製に使用された遊離砥粒用分散液の成分の質量合計を100質量%とすると、上層の回収をすることで、スラリーの調製に使用された遊離砥粒用分散液のうちの、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上を回収できる。
(遊離砥粒用分散液の再生方法)
遊離砥粒用分散液の再生方法は、スラリーの処理方法により回収した上層に、未使用の遊離砥粒用分散液を基準にしたときの不足成分を添加する工程を含む。例えば、回収した上層に、成分Aの濃度が60質量%以上85質量%以下、成分Bの濃度が5質量%以上15質量%以下、成分Cの濃度が0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは成分Dの濃度が8質量%以上20質量%以下となるように必要に応じて、成分A、成分B、成分C及び成分Dのうちの少なくとも1成分を添加し、さらに、必要に応じて前記任意成分を添加して、遊離砥粒用分散液を得る。これを砥粒と混合すれば、再使用できるスラリーを調製できる。
前記上層への、成分A〜Dからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分の添加量は、上層中の成分A〜Dの含有量等を測定し、当該測定結果に基づき決定することが好ましい。又は、遊離砥粒用分散液と遊離砥粒とを含むスラリーを用いてワイヤーにてインゴットを切断する切断工程及び遊離砥粒用分散液の構成成分の回収等に伴う成分A〜D等の減少量を各々予め見積っておき、当該減少量と同量の成分A〜D等が、上層に補給されるようにしてもよい。成分A〜D等の含有量の測定には、例えば、滴定、NMR測定、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等を用いることができる。
[スラリー粘度評価方法]
一般に、切削中に砥粒(炭化ケイ素)が粉砕されて表面積が増すことによって、スラリー粘度が上昇する。そこで、モデル実験として、粉砕砥粒を作製してから未粉砕砥粒を混合することによって、切削後のモデルとなるスラリーを調製した。
500mL広口ポリ瓶に、炭化ケイ素砥粒((株)フジミインコーポレーテッド社製、商品名GC#1200)24g、遊離砥粒用分散液60gを測りとり、2mmφジルコニアビーズを200g添加してよく撹拌し、60℃に加熱してから、ペイントシェーカーで炭化ケイ素砥粒の体積平均粒径が3μm以下となるまで約2時間粉砕した。得られた粉砕炭化ケイ素含有スラリー56gと粉砕していない炭化ケイ素砥粒((株)フジミインコーポレーテッド社製、商品名GC#1200)24gを混合し、よく撹拌した後、B型粘度計にて粘度を測定した。ローターにはNo.2を用い、ローターの回転速度は60rpm、測定対象の温度は25℃とした。
《評価》スラリー粘度が500mPa・sを越えると、砥粒が切削箇所へ十分に供給されないため、高品質なシリコンウエハは得られない。よって、スラリー粘度が500mPa・sを越える場合は、不合格とすることとした。
[油水分離評価方法]
50mLポリ瓶に、遊離砥粒用分散液25g、5μmシリコン粉末((株)高純度化学研究所社製)5.0g、炭化ケイ素粉末((株)フジミインコーポレーテッド社製、商品名GC#10000)1.25gを測りとり、2mmφジルコニアビーズを50g添加してよく撹拌し、ペイントシェーカーで3時間粉砕した。ジルコニアビーズを取り除いた後、50mLの透明ポリ瓶に遊離砥粒用分散液とシリコン粉末と炭化ケイ素粉末の混合物を20g(このうち、遊離砥粒用分散液の重量は16g)測りとり、60℃の温浴中に静置した。1時間後に精製水4.5g(遊離砥粒用分散液に対して28質量部)と分離促進の為にエマルゲンA500(花王社製)0.3gを更に添加して良く撹拌し、30分間静置した後、油水分離の状態を観察するとともに、上層(油相)を取り出して重量を測定し、下記式より回収率を算出した。
回収率(%)=油相の重量g/16g×100
[曇点の測定]
(遊離砥粒用分散液の曇点の測定)
(1)遊離砥粒用分散液を容量100mLの試験管に50mL入れる。
(2)水浴槽に前記試験管を入れ、ガラス棒状の温度計を用いて手動で浮遊砥粒用分散液を攪拌しながら、遊離砥粒用分散液の温度を室温から2℃/minの速度で上げる。
(3)攪拌しても濁りが消えない状態になったところで遊離砥粒用分散液の温度を読み取る。
(4)試験管を水浴槽から取り出し、25℃の雰囲気下で攪拌しながら、温度を室温まで徐々に下げる。
(5)(2)〜(4)を2回繰り返し、(3)で読み取った温度の平均値を遊離砥粒用分散液の曇点とする。
(ノニオン性界面活性剤の曇点の測定)
(1)試料(ノニオン性界面活性剤)が7重量%になる様に試料に脱イオン水を加え、得られた試料水溶液を容量100mLの試験管に50mL入れる。
(2)水浴槽に前記試験管を入れ、ガラス棒状の温度計を用いて手動で、試料水溶液を撹拌しながら、試料水溶液の温度を室温から2℃/minの速度で上げる。
(3)撹拌しても濁りが消えない状態になったところでその試料水溶液の温度を読み取る。
(4)試験管を水浴槽から取り出し、25℃の雰囲気下で撹拌しながら、試料水溶液の温度を室温まで徐々に下げる。
(5)(2)〜(4)を2回繰り返し、(3)で読み取った試料水溶液の温度の平均値を曇点とする。
(遊離砥粒用分散液100質量部に対して水を28質量部添加して得た混合液の曇点)
遊離砥粒用分散液100質量部に対してイオン交換水28質量部を混合し、これらをよく撹拌した後、100mLの試験管に50mLいれた。その後は、上記(遊離砥粒用分散液の曇点の測定)の(2)〜(5)と同じ操作を行って、上記混合液の曇点を測定した。
[ポリマー分散剤Aの合成]
1Lの4つ口セパラブルフラスコに冷却管と温度計を取り付け、よく窒素置換した後にスチレンを20.25g、メトキシポリエチレングリコール(EO23モル)メタクリレート(新中村化学(株)社製、商品名:NK-TM230)を18.00g、無水マレイン酸を6.75g、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールを2.25g、エタノールを27.0g測り取った。撹拌しながら80℃へ昇温したのち、1.35g のV-65を11.25gのエタノールへ溶解させたものを投入し、続けてスチレンを182.25g、メトキシポリエチレングリコール(EO23モル)メタクリレートを162.00g、無水マレイン酸を60.75g、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールを20.25g、V-65を12.15g、エタノールを243.0g均一溶解させた溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後3時間80℃のまま撹拌を継続し、次いで室温まで冷却した後エタノールを275.25gとトルエンを556.25g投入して希釈した。最後に48μmナイロンメッシュで濾過し、分散ポリマー1を得た。NMRにて確認したところ、スチレンの転化率は71%、メトキシポリエチレングリコール(EO23モル)メタクリレートの転化率は80%、無水マレイン酸の転化率は60%であった。得られた分散ポリマー1は固形分濃度27.3%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量が4,500であった。
[実施例1]
成分Bとしてブチルトリエチレングリコール(日本乳化剤(株)社製、商品名BTG)と、成分Eとしてノニオン界面活性剤(花王(株)社製、商品名エマルゲンA500)と精製水とを表1に示した組成で配合及び混合し、これらを60℃まで加熱して均一透明液とした。次に、均一透明液を40℃まで冷却後、当該均一透明液と、成分Aとしてブチルジプロピレングリコール(日本乳化剤(株)社製、商品名BFDG)と消泡剤(サンノプコ(株)社製、商品名SNデフォーマー470)とを混合してよく撹拌した。最後に成分Cとしてアニオン性界面活性剤(商品名ラムテルASK 花王社製)を混合して均一になるまで撹拌して、実施例1の遊離砥粒用分散液を得た。尚、各成分の組成比は表1に記載の通りである。
[実施例2]
成分Cとしてアニオン性界面活性剤(商品名ペレックッスOT−P、花王社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様な手順で実施例2の遊離砥粒用分散液を調製した。
[実施例3]
各成分の組成比が異なること、成分Aとしてジエチレングリコールジブチルエーテル(日本乳化剤(株)社製)を更に添加したこと、及び成分Cとしてアニオン性界面活性剤(商品名ラテムルASK、花王社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様な手順で実施例3の遊離砥粒用分散液を調製した。
[実施例4]、
各成分の組成比が異なること、成分Cとして上記方法で合成したポリマー分散剤Aを用いたこと、及びpH調整剤として10NのKOH水溶液を適量添加したこと以外は、実施例3と同様な手順で実施例4の遊離砥粒用分散液を調製した。尚、KOHについては、極めて微量であるため各成分の含有量の計算にあたって無視した。
[比較例1]
各成分の組成比が異なること、及び成分Cとしてカオーセラ3000(花王社製)を用いたこと以外は、実施例4と同様な手順で比較例1の遊離砥粒用分散液を調製した。
[比較例2]
成分C及びその比較対象化合物を含まないこと以外は実施例4と同様な手順で比較例2の遊離砥粒用分散液を調製した。
[比較例3]
成分Cの比較対象物化合物としてノ二オン性界面活性剤(商品名ホモゲノールL-95、花王社製)を用いたこと以外は、実施例4と同様な手順で比較例3の遊離砥粒用分散液を調製した。
[比較例4]
表1に記載の組成比でジエチレングリコールと精製水を混合し、よく撹拌して、比較例4の遊離砥粒用分散液を得た。
[評価1]
実施例1〜4、比較例1〜4の遊離砥粒用分散液を用いて、上記「スラリー粘度評価方法」に従ってスラリーを調製し、粘度を測定した。表1に示されるように、比較例2以外は粘度の上昇が300mPa・s以下に抑えられていた。
Figure 2017120843
上記表1に記載の物質の詳細は下記のとおりである。
(成分A)
C4PO2:ブチルジプロピレングリコール(日本乳化剤(株)社製、商品名BFDG、25℃の水への溶解性3質量%、R1=C49、R2=CH3、R3=H、m=2)
DBDG:ジエチレングリコールジブチルエーテル(日本乳化剤(株)社製、25℃の水への溶解性0.3質量%、R1=C49、R2=H、R3=H、m=2)
(成分B)
C4EO3:ブチルトリエチレングリコール(日本乳化剤社製、商品名BTG、25℃の水への溶解性100質量%以上、R4=C49、R5=H、n=3)
(成分C及びその比較対象化合物)
カオーセラ(登録商標)3000:ポリメタクロイルオキシエチルアンモニウムクロライド(花王社製、重量平均分子量25,000)
ホモゲノール(登録商標)L−95:オレイルヒドロキシエチルイミダゾリン(花王社製)
ポリマー分散剤A:無水マレイン酸/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート/スチレンコポリマー(重量平均分子量4,500、質量比15/40/45)
ペレックッス(登録商標)OT−P:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製)
ラテムル(登録商標)ASK:テトラプロペニルコハク酸ジカリウム(花王社製)
(消泡剤)
DF470:ポリエーテル系消泡剤(サンノプコ社製、商品名:SNデフォーマー470)
(界面活性剤(成分E))
エマルゲン(登録商標)A−500:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王社製、ジスチレン化フェノール基、ポリオキシエチレンのオキシエチレン単位の平均付加モル数:50、曇点90℃以上)
[評価2]
実施例1〜2、比較例1〜4の遊離砥粒用分散液を用いて、上記[油水分離評価方法」に従って回収率(%)を算出した。表2に示されるように、成分Aと成分Bを所定量含み、特定の分散剤を含む、実施例1〜2では油水分離が良好であり、遊離砥粒用分散液の構成成分(油相)の回収率も良好であった。一方、比較例1では、60℃に加熱した際に既に油水分離が始まっていた。即ち、実生産時に100L以上のスケールで実施した時には、微粉体を多く含む下層において局所加熱が生じる恐れが想定された。
Figure 2017120843
本発明によれば、簡単な操作により微粉体の分離が行えるので、経済的且つリサイクル回数の増大に寄与し得る。

Claims (8)

  1. シリコンインゴットの切削に用いられ遊離砥粒と遊離砥粒用分散液とを含む遊離砥粒含有スラリーとシリコンインゴットの切削粉末とを含む被処理液を静置又は遠心分離の対象として、前記被処理液中において、相対的に重い粒子と相対的に軽い粒子とに分離し、相対的に軽い粒子が分散した軽粒子分散液を回収する第1工程と、
    回収した軽粒子分散液を撹拌しながら加熱して温度をA℃にし、加熱を止めてから軽粒子分散液に水を添加して得られた混合液を、油分を主成分とする上層と、水と前記遊離砥粒と前記切削粉末とを主成分とする下層とに分離し、前記上層を回収する第2工程とを含み、
    前記A℃は、前記遊離砥粒用分散液の曇点よりも低く、前記混合液の曇点よりも高く、
    前記遊離砥粒用分散液は、
    25℃の水への溶解性が5.0質量%未満の親油性液体と、
    25℃の水への溶解性が50質量%以上の親水性液体と、
    炭素数が12以上のアルキル基及び炭素数が12以上のアルケニル基から選ばれる少なくとも1種の原子団を含むイオン性界面活性剤、及びイオン性を有するポリマー分散剤から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる分散剤と、
    水と、を含む、遊離砥粒含有スラリーの処理方法。
  2. 前記第2工程において、軽粒子分散液に添加する水の量は、遊離砥粒用分散液100質量部に対して、10質量部以上40質量部以下である、請求項1に記載の遊離砥粒含有スラリーの処理方法。
  3. 請求項1又は2に記載の遊離砥粒含有スラリーの処理方法により回収した前記上層に、未使用の前記遊離砥粒用分散液を基準にしたときの不足成分の一部又は全部を添加する工程を含む、遊離砥粒用分散液の再生方法。
  4. 25℃の水への溶解性が5.0質量%未満の親油性液体が60質量%以上85質量%以下と、
    25℃の水への溶解性が50質量%以上の親水性液体が5質量%以上15質量%以下と、
    炭素数が12以上のアルキル基及び炭素数が12以上のアルケニル基から選ばれる少なくとも1種の原子団を含むイオン性界面活性剤、及びイオン性を有するポリマー分散剤から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる分散剤を0.01質量%以上5質量%以下と、
    水と、を含む、遊離砥粒用分散液。
  5. 前記親油性液体は、下記一般式(1)で表わされる化合物を含むである、請求項4に記載の遊離砥粒用分散液。
    1−O−(CH2CHR2O)m−R3 (1)
    ただし、一般式(1)において、R1は水酸基を含んでいてもよい炭素数3以上20以下の炭化水素基、R2は水素又はメチル基、R3は水素又は水酸基を含んでいてもよい炭素数3以上20以下の炭化水素基、mは、CH2CHR2Oの平均付加モル数であり、0以上5以下の数を表す。
  6. 前記親水性液体は、下記一般式(2)で表わされる化合物を含むである、請求項4又は5に記載の遊離砥粒用分散液。
    4−O−(CH2CHR5O)n−H (2)
    ただし、一般式(2)において、R4は水素又は水酸基を含んでいてもよい炭素数3以上20以下の炭化水素基、R5は水素又はメチル基、nは、CH2CHR5Oの平均付加モル数であり、1以上6以下の数を表す。
  7. 請求項4から6のいずれか一項に記載の遊離砥粒用分散液と遊離砥粒を含む遊離砥粒含有スラリー。
  8. 請求項7に記載の遊離砥粒含有スラリーを、ワイヤーとシリコンインゴットの切断部位又はシリコンインゴット全体に供給しながら、前記ワイヤーでシリコンインゴットを切断する工程を含む、シリコンインゴット切断方法。
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