JP2017119298A - ホットワイヤー溶接システム及びホットワイヤー溶接方法 - Google Patents

ホットワイヤー溶接システム及びホットワイヤー溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源をフィラーワイヤーの加熱用電源として用いたホットワイヤー溶接システムを提供する。
【解決手段】被溶接物Sとの間でアークを発生させる非消耗電極21と、アークによって生じた被溶接物Sの溶融池に向かってシールドガスを放出するトーチノズル22とが設けられた溶接用トーチ20と、被溶接物Sの溶融池に向かってフィラーワイヤーWを送給するワイヤー送給装置30と、プラス(+)端子側をフィラーワイヤーWと電気的に接続し、且つ、マイナス(−)端子側を被溶接物Sと電気的に接続する加熱用電源41とを備え、加熱用電源41は、TIG溶接用電源装置40で使用される高周波電源であり、フィラーワイヤーWが溶融池に到達した時点で又は到達した後に、加熱用電源41からフィラーワイヤーWに高周波電流が供給される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホットワイヤー溶接システム及びホットワイヤー溶接方法に関する。
例えば、金属や非鉄金属などを母材として用いた構造物(被溶接物)の溶接には、従来よりTIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)又はプラズマアーク溶接等のGTAW(Gas Tungsten Arc welding)と呼ばれる非消耗電極式のガスシールドアーク溶接が用いられている。
また、MIG溶接(Metal Inert Gas welding)、MAG溶接(Metal Active Gas welding)又は炭酸ガスアーク溶接等のGMAW(Gas Metal Arc welding)と呼ばれる消耗電極式のガスシールドアーク溶接が用いられている。なお、消耗電極式のガスシールドアーク溶接は、消耗電極となるワイヤーの送給を自動で行いながら、溶接を手動で行うため、半自動アーク溶接とも呼ばれている。
これらの溶接方法では、一般に溶接用トーチを使用し、電極と被溶接物(母材)との間でアークを発生させて、このアークの熱により被溶接物を溶かして溶融池(プール)を形成しながら、溶接が行われる。また、溶接中は電極の周囲を囲むトーチノズルからシールドガスを放出し、このシールドガスで大気(空気)を遮断しながら溶接が行われる。
また、これらの溶接方法では、開先やすみ肉を溶接する際に、所定の脚長やのど厚を確保するため、溶加材であるフィラーワイヤーを供給して、不足する溶接金属を補うことが行われている。
例えば、TIG溶接では、アークによる母材の溶融と溶融池へのフィラーワイヤーの送給とを切り離して別々に制御することができる。これにより、タングステン電極(非消耗電極)からの安定したアークにより母材を溶かし込むことができるため、高品質の溶接を行うことが可能である。
しかしながら、TIG溶接では、上述したMIG(MAG)溶接に比べて、フィラーワイヤーの溶融速度が低いため、フィラーワイヤーの送給速度を遅くなり、その結果として、溶接効率が低下してしまうといった問題がある。
そこで、フィラーワイヤーの溶融を促進させる方法として、フィラーワイヤーに電流を流し、このフィラーワイヤーの持つ電気抵抗によりフィラーワイヤーを加熱する方法が提案されている。
この方法は、ホットワイヤー溶接法と呼ばれている。フィラーワイヤーを加熱する加熱用電源には、交流と直流の何れも用いることができる。但し、アークを発生させる溶接用電源に比べて、アークを発生させない程度に電圧を低く抑える必要である。なお、ホットワイヤー溶接法は、非消耗電極式のTIG溶接に限らず、プラズマアーク溶接や消耗電極式のMIG(MAG)溶接などにも採用されている。
また、TIG溶接では、アーク放電を用いるが、アーク放電を開始させるためには、母材と電極との間の絶縁空間(大気)に電気を流す必要がある(これを絶縁破壊という。)。したがって、絶縁破壊を生じさせるためには、あるレベル以上の電界強度を大気中に生じさせる必要がある。
TIG溶接で用いられるアーク発生方法としては、高周波発生方式と、直流高電圧印加方式と、リフトスタート(タッチスタート)方式との3つがある。このうち、高周波発生方式は、高周波放電による火花放電で絶縁破壊を起こす方法であり、母材から電極が離れていても、絶縁破壊からアークに移行させることが可能である。一方、直流高電圧印加方式は、母材と電極との間に高電圧を印加することによって、絶縁破壊を起こし、アークに移行させる方法である。一方、リフトスタート(タッチスタート)方式は、母材に電極を接触させた状態で、溶接用トーチのスイッチをONにし、溶接用電源から電圧を印加した状態のまま、溶接用トーチを引き上げ、その瞬間に母材と電極との間に高い電界が発生することによって、絶縁破壊を起こし、アークに移行させる方法である。
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、例えば下記特許文献1〜4を挙げることができる。
このうち、下記特許文献1には、フィラーワイヤーがタングステン電極に接近しているときに、アークスタート用の高周波がワイヤーと電極との間に発生し、母材と電極との間で絶縁破壊を起こすことができず、アークが点弧されない問題が開示されている。この問題を解決するため、下記特許文献1には、ワイヤー加熱電流の出力経路に開閉器を設けて、高周波発生時に開閉器を開状態とし、ワイヤー加熱電源側に高周波電流が流れないようにする方法が開示されている。
一方、下記特許文献2には、下記の問題が開示されている。すなわち、溶接アークとなるティグアークで母材が十分溶融した状態でフィラーワイヤーの送給を開始している。一方、フィラーワイヤーの送給を開始したときから高い溶着速度のTIG溶接を行う場合は、フィラーワイヤーの送給を開始した当初に、未だ加熱されていないフィラーワイヤーが送給されることになる。この場合、未加熱のフィラーワイヤーの先端が母材と衝突し、その時点から通電が開始されることになる。
しかしながら、この場合、ワイヤートーチの通電チップの通電点から母材までの間で、フィラーワイヤーの延伸部分が抵抗加熱で均一に温度上昇する間にも、後続のフィラーワイヤーが送給されてくる。このため、フィラーワイヤーの延伸部分が突っかえてしまい、ワイヤートーチと機械的に締結されて一体になっている溶接トーチを押し上げたり、加熱軟化したフィラーワイヤーが屈曲状態となるジャミング現象が発生したりする。下記特許文献2には、その防止策が開示されている。
一方、下記特許文献3には、ワイヤー加熱電力調整制御方法として、ワイヤー電圧から溶断の発生を検知し、溶断発生時にはワイヤーの加熱電力を多少下げ、そこから徐々に加熱電力を増加して、再び溶断を発生させることを繰り返すことにより、適正な溶融状態に近い状態にワイヤー加熱電力を自動的に保つように制御する方法が開示されている。
一方、下記特許文献4には、上述した下記特許文献3と同様に、フィラーワイヤーが母材を軽く突く押力を検知して、フィラーワイヤーの送給速度を遅くすることにより、アークトーチやワイヤートーチにフィラーワイヤーの押力が作用しないようにする方法が開示されている。
特開平3−210968号公報 特開2002−103040号公報 特公平5−75512号公報 特開平8−309536号公報
ところで、TIG溶接用電源装置には、アークの発生を容易にするために、溶接用電源(メイン電源)の他に、アーク点弧用の高周波発生器(高周波電源)が組み込まれている。TIG溶接では、アークの点弧時に高周波発生器の出力を溶接用電源の出力にカップリングコイルにより重畳することが行われている。
ここで、上述したフィラーワイヤーの加熱用電源に、比較的安価なTIG溶接用電源装置の高周波電源を使用することができれば、加熱用電源を別途用意する必要がなくなるため、ホットワイヤー溶接をより安価に行うことができる。
しかしながら、TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源をフィラーワイヤーの加熱用電源として用いた場合、母材にフィラーワイヤーが接触しても、母材とフィラーワイヤーとの間に高周波電流が流れないため、抵抗加熱によりフィラーワイヤーの溶融が促進されないといった問題があった。
また、上述した高周波発生方式を用いた場合、フィラーワイヤーと母材との間に高周波が発生するため、その高周波に誘発されて、非接触のフィラーワイヤーと母材との間に電流が流れることになる。この場合、フィラーワイヤーに抵抗加熱が発生し、フィラーワイヤーが母材に到達する前にフィラーワイヤーが溶けてしまうといった問題があった。
一方、上述したリフトスタート(タッチスタート)方式を用いた場合も、非消耗電極の先端を母材に一度接触した後に、溶接用トーチを引き上げる動作をする必要があるため、その動作がうまくいかないと、フィラーワイヤーと母材との間でフィラーワイヤーを加熱するための電流が流れないといった問題が発生してしまう。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源をフィラーワイヤーの加熱用電源として用いた場合でも、ホットワイヤー溶接を安定して行うことを可能としたホットワイヤー溶接システム及びホットワイヤー溶接方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1) 被溶接物との間でアークを発生させる非消耗電極と、前記アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かってシールドガスを放出するトーチノズルとが設けられた溶接用トーチと、前記被溶接物の溶融池に向かってフィラーワイヤーを送給するワイヤー送給装置と、プラス端子側を前記フィラーワイヤーと電気的に接続し、且つ、マイナス端子側を前記被溶接物と電気的に接続する加熱用電源とを備え、前記加熱用電源は、TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源であり、前記フィラーワイヤーが前記溶融池に到達した時点で又は到達した後に、前記加熱用電源から前記フィラーワイヤーに高周波電流が供給されることを特徴とするホットワイヤー溶接システム。
(2) 前記フィラーワイヤーの送給を開始した時点から前記加熱用電源が起動するまでの時間を設定するタイマーを備えることを特徴とする前記(1)に記載のホットワイヤー溶接システム。
(3) 前記タイマーは、TIG溶接用電源装置で使用されるプリフロータイマーであることを特徴とする前記(2)に記載のホットワイヤー溶接システム。
(4) 前記加熱用電源のマイナス端子側とプラス端子側との何れか一方側において電気的な開閉を行う開閉器を備え、前記フィラーワイヤーの送給を開始する前は、前記開閉器により前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間が電気的に遮断され、前記フィラーワイヤーの送給を開始した後は、前記開閉器により前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間が電気的に接続されることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一項に記載のホットワイヤー溶接システム。
(5) マイナス端子側を前記非消耗電極と電気的に接続し、且つ、プラス端子側を前記被溶接物と電気的に接続する溶接用電源を備えることを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか一項に記載のホットワイヤー溶接システム。
(6) 被溶接物との間でアークを発生させる非消耗電極と、前記アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かってシールドガスを放出するトーチノズルとが設けられた溶接用トーチを用いて、予め加熱されたフィラーワイヤーを前記被溶接物の溶融池に向かって送給しながら、前記被溶接物に対して溶接を行うホットワイヤー溶接方法であって、前記フィラーワイヤーを加熱する加熱用電源として、TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源を用い、前記フィラーワイヤーが前記溶融池に到達した時点で又は到達した後に、前記加熱用電源から前記フィラーワイヤーに高周波電流を供給することを特徴とするホットワイヤー溶接方法。
(7) 前記フィラーワイヤーの送給を開始する前は、前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間を電気的に遮断し、前記フィラーワイヤーの送給を開始した後は、前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間を電気的に接続することを特徴とする前記(6)に記載のホットワイヤー溶接方法。
以上のように、本発明によれば、TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源をフィラーワイヤーの加熱用電源として用いた場合でも、ホットワイヤー溶接を安定して行うことを可能としたホットワイヤー溶接システム及びホットワイヤー溶接方法を提供することが可能である。
本発明の一実施形態に係るホットワイヤー溶接システムの構成を示す模式図である。 図1に示すホットワイヤー溶接システムにおいて、アークの点弧時にフィラーワイヤーと被溶接物との間に電流が流れた状態を示す模式図である。 図1に示すホットワイヤー溶接システムを用いたホットワイヤー溶接方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。 図1に示すホットワイヤー溶接システムを用いたホットワイヤー溶接方法の他例を示すタイミングチャートである。
以下、本発明を適用したホットワイヤー溶接システム及びホットワイヤー溶接方法について、図面を参照して詳細に説明する。
(ホットワイヤー溶接システム)
先ず、本発明の一実施形態として図1に示すホットワイヤー溶接システム10について説明する。なお、図1は、ホットワイヤー溶接システム10の構成を示す模式図である。
ホットワイヤー溶接システム10は、図1に示すように、TIG溶接用トーチ20と、ワイヤー送給装置30と、TIG溶接用電源装置40とを概略備えている。
TIG溶接用トーチ20は、従来より一般に使用されている非接触式の溶接トーチであり、被溶接物(母材)Sとの間でアークを発生させる非消耗電極21と、アークによって生じた被溶接物Sの溶融池(プール)に向かってシールドガスを放出するトーチノズル22とを有している。
ワイヤー送給装置30は、TIG溶接用トーチ20に取り付けられたフィラーガイド31を有し、フィラーガイド31の先端から被溶接物Sの溶融池に向かってフィラーワイヤーWを送給する。
TIG溶接用電源装置40は、従来より一般に使用されている直流式及び/又は交流式の溶接用電源装置であり、TIG溶接用トーチ20とケーブル(図示せず。)を介して接続されて、TIG溶接用トーチ20への電力並びにシールドガスの供給を行う。
なお、溶接用トーチ20の冷却方式については、水冷式と空冷式の何れであってもよい。水冷式の場合は、冷却装置(チラー)を設けて、冷却水(冷却液)の循環により溶接用トーチ10を冷却することができる。
TIG溶接用電源装置40は、プラス(+)端子側をフィラーワイヤーWと電気的に接続し、且つ、マイナス(−)端子側を被溶接物Sと電気的に接続する加熱用電源41と、マイナス(−)端子側を非消耗電極21と電気的に接続し、且つ、プラス(+)端子側を被溶接物Sと電気的に接続する溶接用電源42とを有している。
このうち、加熱用電源41は、TIG溶接用電源装置40で使用される高周波電源(高周波発生器)である。TIG溶接用電源装置40では、アークの点弧時に高周波電源の出力を溶接用電源42の出力にカップリングコイルにより重畳することが行われる。
TIG溶接用電源装置40は、加熱用電源41のマイナス(−)端子側Aとプラス(+)端子側Bとの何れか一方側において電気的な開閉を行う開閉器43を備えている。開閉器43には、例えば電磁開閉器や電磁接触器などを用いることができる。
以上のような構成を有するホットワイヤー溶接システム10では、上述した高周波発生方式により、高周波放電による火花放電で絶縁破壊を起こし、アークに移行させることによって溶接が行われる。
ところで、本実施形態のホットワイヤー溶接システム10では、フィラーワイヤーWが溶融池に到達した時点で又は到達した後に、加熱用電源41からフィラーワイヤーWに高周波電流が供給されることによって、フィラーワイヤーWの加熱が開始される。
このようなタイミングでフィラーワイヤーWへの高周波電流の供給を開始するための手段として、本実施形態のホットワイヤー溶接システム10は、フィラーワイヤーWの送給を開始した時点から加熱用電源41が起動するまでの時間を設定するタイマーを備えている。タイマーには、TIG溶接用電源装置40で使用されるプリフロータイマー(図示せず。)を好適に用いることができる。
また、本実施形態のホットワイヤー溶接システム10では、フィラーワイヤーWの送給を開始する前は、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間が電気的に遮断されている(開状態という。)。一方、フィラーワイヤーの送給を開始した後は、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間が電気的に接続されている(閉状態という。)。
ここで、TIG溶接用電源装置40で使用される高周波電源(高周波発生器)をフィラーワイヤーWの加熱用電源41として用いる場合、図2中の矢印で示すように、アークの点弧時にTIG溶接用電源装置41により非消耗電極21と被溶接物Sとの間で電流Iを流すと、フィラーワイヤーWと被溶接物Sとの間に高周波が発生するため、その高周波に誘発されて、非接触電極21とフィラーワイヤーWとの間でアークarcが発生し、非接触のフィラーワイヤーWと被溶接物Sとの間で電流Iが流れることになる。この場合、フィラーワイヤーWが被溶接物Sに到達する前にフィラーワイヤーWが溶けてしまうといった問題が発生してしまう。
これに対して、本実施形態のホットワイヤー溶接システム10では、フィラーワイヤーWの送給を開始する前は、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間が電気的に遮断されているため、フィラーワイヤーWに電流Iが流れることがない。
その後、本実施形態のホットワイヤー溶接システム10では、フィラーワイヤーWの送給を開始すると同時に、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間が電気的に接続される。また、タイマー(プリフロータイマー)の設定によって、フィラーワイヤーWが溶融池に到達した時点で又は到達した後に、上述した高周波発生方式を用いて、加熱用電源41からフィラーワイヤーWに高周波電流が供給され、フィラーワイヤーWと被溶接物Sとの間で電流が流れることになる。
以上のようにして、本実施形態のホットワイヤー溶接システム10では、TIG溶接用電源装置40で使用される高周波電源(高周波発生器)をフィラーワイヤーWの加熱用電源41として用いた場合でも、ホットワイヤー溶接を安定して行うことが可能である。
また、本実施形態のホットワイヤー溶接システム10では、フィラーワイヤーWの加熱用電源41に、比較的安価なTIG溶接用電源装置40の高周波電源(高周波発生器)を使用できるため、ホットワイヤー溶接をより安価に行うことが可能である。
(ホットワイヤー溶接方法)
次に、上記図1に示すホットワイヤー溶接システム10を用いたホットワイヤー溶接方法の一例について、図3(a),(b)を参照しながら説明する。なお、図3(a),(b)は、ホットワイヤー溶接方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図3(a),(b)に示すタイミングチャートにおいて、「トーチスイッチ」は、TIG溶接用トーチ20の起動及び停止のタイミング(ON/OFF)を表している。「シールドガス」は、TIG溶接用トーチ20からのシールドガスの放出(ON)/停止(OFF)を表している。「溶接電源用高周波」は、TIG溶接用電源装置40の高周波電源(高周波発生器)からTIG溶接用トーチ20への高周波電流(溶接電流)の供給を開始するタイミング(ON/OFF)を表している。「溶接電流」は、TIG溶接用電源装置40の溶接用電源42からTIG溶接用トーチ20に出力される電流の値(相対値)を表している。「開閉器」は、開閉器43の開閉状態を表している。「ワイヤー送給速度」は、フィラーワイヤーWの送給する速度の値(相対値)を表している。「ワイヤー加熱電源用高周波」は、TIG溶接用電源装置40の加熱用電源41からフィラーワイヤーWへの高周波電流の供給を開始するタイミング(ON/OFF)を表している。「ワイヤー加熱電流」は、TIG溶接用電源装置40の加熱用電源41からフィラーワイヤーWに出力される電流の値(相対値)を表している。
本実施形態のホットワイヤー溶接方法では、図3(a),(b)に示すタイミングチャートに従って、ホットワイヤー溶接を行う。具体的には、上記ホットワイヤー溶接システム10において、フィラーワイヤーWが溶融池に到達した時点で又は到達した後に、加熱用電源41からフィラーワイヤーWに高周波電流(ワイヤー加熱電源用高周波)を供給する。
加熱用電源41からフィラーワイヤーWに高周波電流(ワイヤー加熱電源用高周波)を供給(ON)するタイミングは、フィラーワイヤーWの送給を開始した時点から加熱用電源41が起動(ON)するまでの時間tで表される。この時間tは、上述したTIG溶接用電源装置40で使用されるプリフロータイマーにより設定することができる。なお、溶接電源用高周波とワイヤー加熱電源用高周波とは、TIG溶接用電源装置40に組み込まれた1つの高周波電源(高周波発生器)で兼用できる。
本実施形態のホットワイヤー溶接方法では、フィラーワイヤーWの送給を開始する前は、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間を電気的に遮断(開)する。一方、フィラーワイヤーの送給を開始した後は、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間を電気的に接続(閉)する。
なお、図3(a)に示すタイミングチャートと、図3(b)に示すタイミングチャートでは、「開閉器」の開閉するタイミングが異なっている。このうち、図3(a)に示すタイミングチャートでは、溶接終了時に、TIG溶接用トーチ20のトーチスイッチによって停止のON信号を受けたときに、ワイヤー加熱電流を徐々に低減させる場合を例示している。一方、図3(b)に示すタイミングチャートでは、溶接終了時に、TIG溶接用トーチ20のトーチスイッチによって停止のON信号を受けたときに、ワイヤー加熱電流を直ちに停止させる場合を例示している。両者は、溶接の条件によって適宜使い分けることができる。また、それ以外は基本的に同じである。
本実施形態のホットワイヤー溶接方法では、フィラーワイヤーWの送給を開始する前は、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間を電気的に遮断(開)している。
この場合、アークの点弧時(図3(a),(b)中に示すワイヤー到達地点Tに、フィラーワイヤーWと被溶接物Sとの間に高周波が発生しても、フィラーワイヤーWにワイヤー加熱電流が流れることがないため、アークは発生せず、フィラーワイヤーWが被溶接物Sに到達する前にフィラーワイヤーWが溶けてしまうといったことを防止できる。
その後、本実施形態のホットワイヤー溶接方法では、フィラーワイヤーWの送給を開始すると同時に、開閉器43により加熱用電源41とフィラーワイヤーWとの間を電気的に接続(閉)する。また、時間tが経過した後に、すなわちフィラーワイヤーWが溶融池に到達した時点で又は到達した後に、加熱用電源41からフィラーワイヤーWに高周波電流を供給(ON)する。
以上のようにして、本実施形態のホットワイヤー溶接方法では、TIG溶接用電源装置40で使用される高周波電源(高周波発生器)をフィラーワイヤーWの加熱用電源41として用いた場合でも、ホットワイヤー溶接を安定して行うことが可能である。
また、本実施形態のホットワイヤー溶接方法では、フィラーワイヤーWの加熱用電源41に、比較的安価なTIG溶接用電源装置40の高周波電源(高周波発生器)を使用できるため、ホットワイヤー溶接をより安価に行うことが可能である。
なお、本実施形態のホットワイヤー溶接方法は、上述した図3(a),(b)に示すタイミングチャートに従う場合に必ずしも限定されるものではなく、例えば、図4(a),(b)に示すタイミングチャートに従って、ホットワイヤー溶接を行うことも可能である。
具体的に、図4(a),(b)に示すタイミングチャートは、それぞれ図3(a),(b)に示すタイミングチャートとは「ワイヤー加熱電流」の流し方が異なっている。このうち、図3(a),(b)に示すタイミングチャートでは、溶接開始時に、ワイヤー加熱電流の供給を開始するワイヤー加熱電源用高周波のON信号を受け、ワイヤー加熱電流を一旦、初期電流値とし、徐々に電流値を増加させる場合を例示している。一方、図4(a),(b)に示すタイミングチャートでは、溶接開始時に、ワイヤー加熱電流の供給を開始するワイヤー加熱電源用高周波のON信号を受け、ワイヤー加熱電流を直ちに所定の電流値で供給する場合を例示している。両者は、溶接の条件によって適宜使い分けることができる。また、それ以外は基本的に同じである。
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、フィラーワイヤーWが溶融池に到達した時点で又は到達した後に、加熱用電源41からフィラーワイヤーWへの高周波電流の供給を開始するための手段として、タイマー(プリフロータイマー)を用いる場合を例示しているが、それ以外の手段を用いて、フィラーワイヤーWが溶融池に到達した時点で又は到達した後に、加熱用電源41からフィラーワイヤーWへの高周波電流の供給を開始するようにしてもよい。
また、本発明は、上述したTIG溶接以外にも、例えば、消耗電極式溶接(マグ溶接、ミグ溶接)や、レーザー溶接、プラズマ溶接などに適用することが可能である。
10…ホットワイヤー溶接システム 20…TIG溶接用トーチ(溶接用トーチ) 30…ワイヤー送給装置 40…TIG溶接用電源装置 41…加熱用電源(高周波電源) 42…溶接用電源 43…開閉器 S…被溶接物 W…フィラーワイヤー

Claims (7)

  1. 被溶接物との間でアークを発生させる非消耗電極と、前記アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かってシールドガスを放出するトーチノズルとが設けられた溶接用トーチと、
    前記被溶接物の溶融池に向かってフィラーワイヤーを送給するワイヤー送給装置と、
    プラス端子側を前記フィラーワイヤーと電気的に接続し、且つ、マイナス端子側を前記被溶接物と電気的に接続する加熱用電源とを備え、
    前記加熱用電源は、TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源であり、
    前記フィラーワイヤーが前記溶融池に到達した時点で又は到達した後に、前記加熱用電源から前記フィラーワイヤーに高周波電流が供給されることを特徴とするホットワイヤー溶接システム。
  2. 前記フィラーワイヤーの送給を開始した時点から前記加熱用電源が起動するまでの時間を設定するタイマーを備えることを特徴とする請求項1に記載のホットワイヤー溶接システム。
  3. 前記タイマーは、TIG溶接用電源装置で使用されるプリフロータイマーであることを特徴とする請求項2に記載のホットワイヤー溶接システム。
  4. 前記加熱用電源のマイナス端子側とプラス端子側との何れか一方側において電気的な開閉を行う開閉器を備え、
    前記フィラーワイヤーの送給を開始する前は、前記開閉器により前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間が電気的に遮断され、
    前記フィラーワイヤーの送給を開始した後は、前記開閉器により前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間が電気的に接続されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のホットワイヤー溶接システム。
  5. マイナス端子側を前記非消耗電極と電気的に接続し、且つ、プラス端子側を前記被溶接物と電気的に接続する溶接用電源を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のホットワイヤー溶接システム。
  6. 被溶接物との間でアークを発生させる非消耗電極と、前記アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かってシールドガスを放出するトーチノズルとが設けられた溶接用トーチを用いて、予め加熱されたフィラーワイヤーを前記被溶接物の溶融池に向かって送給しながら、前記被溶接物に対して溶接を行うホットワイヤー溶接方法であって、
    前記フィラーワイヤーを加熱する加熱用電源として、TIG溶接用電源装置で使用される高周波電源を用い、
    前記フィラーワイヤーが前記溶融池に到達した時点で又は到達した後に、前記加熱用電源から前記フィラーワイヤーに高周波電流を供給することを特徴とするホットワイヤー溶接方法。
  7. 前記フィラーワイヤーの送給を開始する前は、前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間を電気的に遮断し、
    前記フィラーワイヤーの送給を開始した後は、前記加熱用電源と前記フィラーワイヤーとの間を電気的に接続することを特徴とする請求項6に記載のホットワイヤー溶接方法。
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