JP2017117541A - 正極活物質評価用非水系電解質二次電池、および正極抵抗の測定方法 - Google Patents

正極活物質評価用非水系電解質二次電池、および正極抵抗の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】正極抵抗を精度良く測定することを可能とした正極活物質評価用非水系電解質二次電池と、その非水系電解質二次電池を用いた即応性そしてコスト的に優れた正極抵抗の測定方法を提供する。【解決手段】電池筐体内部に、正極膜と負極膜とがセパレーターを介し対向配置した電極部と、非水系電解液とを備えるコイン型非水系電解質二次電池であって、セパレーターが、ガラス繊維で形成され、JIS P 3801に規定される保留粒子径が0.2〜1.0μmであり、膜厚が200〜500μmであり、JIS Z 8901に規定される捕集効率が99%以上であり、正極中に含まれる正極活物質が3〜30mg/cm2の範囲である正極活物質評価用非水系電解質二次電池を用いて、正極抵抗を測定する。【選択図】図3

Description

本発明は、正極活物質評価用の非水系電解質二次電池、および該非水系電解質二次電池を用いた正極抵抗の測定方法に関するものである。
非水系電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度をもつため、近年小型化や軽量化を要求される携帯電話やノートパソコンのような携帯電子機器に広く使用されている。また、自動車用途ではクリーンなエネルギー源として開発が盛んであり、小型、軽量、高容量、高出力などの高性能化や低コスト化が求められている。
非水系電解質二次電池に使用される各材料に対する要求、とりわけ正極活物質、例えばLiCoO2、LiNiO2、またはLiMn24などに対する高性能化の開発要求は、ますます高まっている。これらの開発を迅速かつ低コストで進めるためには、評価手段が重要な一つであり、非水系電解質二次電池正極活物質の開発における評価方法の重要性は益々高まっている。
正極活物質の開発において用いられる具体的な評価方法としては、組成分析やX線回折法、電子顕微鏡観察におけるエネルギー分散型X線分光法、X線光電子分光法など、所謂、分析評価方法がある。しかしながら、非水系電解質二次電池においては、充放電容量特性と電流出力特性は重要であり、特に車載用電池では出力特性の評価は不可欠である。このため、電池を実際に作製し、電池特性の評価を行うことは不可欠となっている。
電池の出力特性の評価方法には、直流法と交流法がある。直流法としては、電池に大電流を印可し、その際の電圧の降下量と印可した電流の大きさから抵抗を求める方法があり、交流法としては、微小な電流を重畳印可し、周波数を変化させることで抵抗を分離する方法(交流インピーダンス法)などが用いられている。直流法は、電池全体の抵抗(出力)評価となり、電池メーカーなどで用いられることが多い。一方、交流インピーダンス法は、周波数を変えることで各抵抗成分の分離ができることから、正極活物質や負極活物質の解析に用いられ、研究機関や、正極材料、負極材料、あるいは電解液のメーカーなどで用いられている。
非水系電解質二次電池は、通常、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とがセパレーターを介し対向配置した電極部と、前記電極部に含浸される非水系電解液から構成されている。
セパレーターには、厚み数十ミクロンのポリプロプレン、あるいはポリエチレン製多孔膜を用いることが一般的である。例えば、特許文献1には、特定の分子量分布を有するポリエチレンと特定範囲の重量平均分子量を有するポリプロピレンとの混合物を用いることにより、微細な孔からなる均質な三次元の多孔構造を有し、渦巻型リチウム一次電池及び二次電池、あるいは、有機電解液を用いるその他の一次電池及び二次電池に有用なセパレーターが提案されている。このセパレーターは、電池を外部短絡させた場合、短絡電池によるジュール熱で電池が発熱して温度上昇し、その際、電池のセパレーターが温度上昇により変形し、該多孔膜の孔径が小さくなって電気抵抗が増大し、あるいは、さらに溶融無孔化してイオンの流れを阻止し、電池内温度の上昇を防止することができ、発火事故等を未然に防げるとしている。
しかしながら、これらのセパレーターは、安全性の面ではメリットがあるものの、電解液の保液性や濡れ性が悪く、評価用の電池に用いた場合には、電極間の電解液量が安定せず、測定再現性が不安定になるという問題がある。特にセルの小さな抵抗変化に敏感に反応する交流インピーダンス法においては、測定再現性の面で評価用セル用として用いるのは難しい。
また、特許文献2には、ガラスクロスを基材とし、該基材の表裏に電解液に膨潤しこれを保持する有機高分子からなる層が電解液を担持した状態もしくは担持していない状態で一体化されたリチウムイオン二次電池用セパレーターが提案されている。従来のポリオレフィン微多孔膜と比較して、同等以上の機械物性及びイオン透過性を有し、熱的寸法安定性に格段に優れ、ポリオレフィン微多孔膜にはない過充電防止機能を有することから、格段にリチウムイオン二次電池の安全性を高めるものであるとされている。
しかしながら、高い性能が期待できるものの、セパレーターの準備や電池を組み立てる際の工数が多いため、組み立て精度上が悪くなり、評価用電池に用いると測定精度が低下するという問題が生じる可能性がある。また、迅速にかつ安価に多種の正極活物質の特性評価を行うことを目的とした場合、コストとハンドリング性の観点からリーズナブルであるとは言えない。
このように、従来の電池では、正極活物質の高性能化の開発に対応するため、電池評価における、さらなる精度向上が求められている。また、開発のための評価を目的とした場合、安定性、作業性、即応性そしてコスト的に優れているとは言い難く、その改善が求められている。
特開平5−234578号公報 特開2004−253380号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、正極抵抗を精度良く測定することを可能とした正極活物質評価用非水系電解質二次電池と、その非水系電解質二次電池を用いた即応性そしてコスト的に優れた正極抵抗の測定方法を提供する。
本発明者は、上記課題を解決するために、電池の正極抵抗の測定精度に構成材が及ぼす影響について鋭意研究した結果、ガラス繊維で形成された特定の物性を有するセパレーターを用いるとともに、正極中の正極活物量を最適化することで、正極抵抗の測定精度の向上が可能であるとの知見を得て、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の正極活物質評価用非水系電解質二次電池は、電池筐体を構成する正極缶と負極缶が形成する電池筐体内部に、正極を構成する正極活物質を含む正極膜と、負極を構成する負極活物質を含む負極膜とがセパレーターを介し対向配置した電極部と、前記電極部に含浸される非水系電解液とを備えるコイン型非水系電解質二次電池であって、 前記セパレーターは、ガラス繊維で形成され、JIS P 3801に規定される保留粒子径が0.2〜1.0μmであり、膜厚が200〜500μmであり、JIS Z 8901に規定される捕集効率が99.99%以上であり、正極中に含まれる正極活物質が3〜30mg/cm2の範囲であることを特徴とする。
前記電池筐体内において、前記電極部を加圧し、かつ、正極と正極缶、および負極と負極缶の間で電気導通性を有する機構を備えることが好ましく、前記電極部は、電池筐体と電極部の間に挿入された金属バネによって加圧され、該金属バネが接する面の裏面で電極部が電池筐体と密着していることが好ましい。
また、前記正極活物質がリチウム遷移金属複合酸化物であり、前記負極活物質が金属リチウムまたはリチウムを主成分とする金属であることが好ましい。
本発明の正極抵抗の測定方法は、上記正極活物質評価用非水系電解質二次電池を用いて、正極抵抗を測定することを特徴とする。前記正極抵抗を、交流インピーダンス法を用いて評価することが好ましい。
前記正極活物質評価用非水系電解質二次電池を作製する際に、正極膜を構成する材料を乾式混合し、得られた混合物を用いて正極集電体上に正極膜を形成して正極を得ることが好ましい。
また、前記正極活物質評価用非水系電解質二次電池を作製する際に、正極膜を構成する材料を溶媒とともに湿式混合してスラリー化し、得られたスラリーを正極集電体上に塗工し乾燥して正極膜を形成し、正極を得ることが好ましい。
本発明によれば、非水系電解質二次電池に正極活物質を用いた際の正極抵抗を精度良く測定することができる。また、その測定方法は、即応性そしてコスト的に優れたものである。
さらに、正極抵抗の測定によって得られた測定結果は、正極活物質の開発に有用なものであり、その工業的価値は極めて大きい。
実施例で用いた評価用2032型コイン電池を示す断面図である。 交流インピーダンス法測定において得られるコールコールプロットの模擬図と解析に使用した等価回路の概略説明図である。 実施例1の交流インピーダンス法測定において得られたコールコールプロットである。 比較例1の交流インピーダンス法測定において得られたコールコールプロットである。
本発明の正極活物質評価用非水系電解質二次電池は、電池筐体を構成する正極缶と負極缶が形成する電池筐体内部に、正極を構成する正極活物質を含む正極膜と、負極を構成する負極活物質を含む負極膜とがセパレーターを介し対向配置した電極部と、前記電極部に含浸される非水系電解液とを備えるコイン型非水系電解質二次電池であって、前記セパレーターは、ガラス繊維で形成され、JIS P 3801に規定される保留粒子径が0.2〜1.0μmであり、膜厚が200〜500μmであり、JIS Z 8901に規定される捕集効率が99.99%以上であり、正極中に含まれる正極活物質が3〜30mg/cm2の範囲であることを特徴とするものである。
本発明の正極活物質評価用非水系電解質二次電池(以下、単に「評価用電池」という。)は、セパレーターに特徴があり、以下、評価用電池の特徴について説明する。
評価用電池に用いるセパレーターは、ガラス繊維で形成され、ガラス繊維としてはシリカ(SiO2)が主成分であるものが好ましい。このようなセパレーターは入手が容易であり、セパレーターを用いて電池の作製も容易にできることから、正極抵抗の測定を簡易かつ迅速にすることができ、即応性およびコスト的に優れた測定となる。
一般的にコイン型電池のセパレーターにポリエチレンやポリプロピレンを用いた場合、負極側の加圧部品により、セパレーターを介して圧力を与えることで、負極からリチウムのデントライトの生成を抑制している。しかしながら、デントライト生成を完全に抑制することは困難であり、デントライトの生成状態により、正極抵抗が不安定となり、抵抗測定の精度が低下する。
これに対して、ガラス繊維で用いたセパレーターは、多孔質の膜であり、負極からリチウムのデントライトが生成しやすいが、セパレーター内にデンドライトを積極的に発生させることで、デントライトの生成状態の均一化が図られる。また、十分な量の電解液を保持しやすい。したがって、デントライトの生成状態の均一化と電解液の保液量の確保が両立でき、安定的に正極抵抗を評価することが可能となる。
また、セパレーターは、JIS P 3801に規定される保留粒子径が0.2〜1.0μmであり、JIS Z 8901に規定される捕集効率が99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上である。このため、セパレーター内は空隙が多く存在し、かつ空隙が小さく毛管現象が作用するため、セパレーター内に十分な量の電解液を保持することができる。また、デントライトの生成状態の均一化が可能となる。そのため、電極電解液に十分に、かつ安定的に湿潤されるとともに、デントライトの生成状態も安定し、精度の高い正極測定が可能となる。
保留粒子径が1.0μmを超えるか、あるいは捕集効率が99%未満になると、セパレーターの空隙が大きくなり、デンドライトが過度に生成して短絡の原因となる。一方、保留粒子径が0.2μm未満になると、セパレーター保持できる電解液の量自体が少なくなり過ぎるとともに、デンドライトを均一に生成できなくなる。
セパレーターの膜厚は200〜500μmであり、これにより、正極と負極の間隔を、正極抵抗を増加させない範囲で、十分な量の電解液を保持することが可能である。また、デンドライトが生成しても短絡を防止できる。膜厚が200μmになると、十分な量の電解液を保持することができない。また、膜厚が500μmを超えると、リチウムイオンの移動が阻害され、正極抵抗が増加する。
さらに、正極中に含まれる正極活物質が3〜30mg/cm2の範囲である。これにより、セパレーターに保持された電解液を介して、リチウムイオンの挿入離脱が効率よく行われる。正極活物質が3mg/cm2未満になると、正極抵抗が変動しやすくなり、測定精度が低下する。また、正極活物質が30mg/cm2を超えると、電解液との接触が不足して正極抵抗が増加する。
前記電池筐体内においては、前記電極部を加圧し、かつ、正極と正極缶、および負極と負極缶の間で電気導通性を有する機構を備えることが好ましい。電極部を加圧することで、デンドライトの生成を安定化して、正極抵抗の測定精度をさらに向上させることができる。また、加圧により、正極と正極缶、および負極と負極缶の間で、十分な電気導通性が確保され、正極抵抗をより安定させることができる。
前記電極部の加圧は、電池筐体と電極部の間に挿入された金属バネによって行われ、該金属バネが接する面の裏面で電池筐体と密着していることが好ましい。金属バネを用いることで、電極部の加圧と、電極部と電池筐体との間の電気導通性を同時に確保することができる。前記金属バネは、負極と電池筐体との間に挿入することが好ましい。これにより、正極と電池筐体の密着面積を大きくして正極抵抗を安定的に低くすることが可能であり、接触抵抗などの正極活物質以外の要因を排除し、測定精度をさらに高めることができる。
非水系電解質二次電池においては、負極活物質としてカーボンが用いられることが多いが、金属リチウム、もしくはリチウムを主成分とする金属のシートを用いることが、簡易かつ迅速であり好ましい。このようなシートは、所望のサイズに抜いて用いることができる。
一方で、金属リチウム、もしくはリチウムを主成分とする金属を負極に用いた場合、充電の際に負極表面にデントライトが発生し、このデンドライトが成長して対極に到達すると短絡となり、電池として機能しなくなるといった問題がある。また、電極にかかる圧力や電極間の電解液量、正極と負極のサイズ、両極間のサイズ比などにより、デンドライトの生成状態が変化することから、電池の状態に特に過敏に反応する交流インピーダンス法などでは、再現性のあるデーターを得にくいといった問題もある。
本発明においては、上述のように、ガラス繊維で形成されたセパレーターを用いることから、デンドライトの生成状態を安定化させることができ、金属リチウム、もしくはリチウムを主成分とする金属を負極に用いて、簡易かつ迅速に正極抵抗を評価することができる。
また、本発明では、コイン型電池の形態を採用しているため、少量の正極活物質でも容易かつ迅速に作製可能であり、評価用電池として好適である。コイン型電池には、種々の形状があるが、作製の容易と測定精度の観点から、2032型コイン電池とすることが好ましい。
本発明の評価用電池に係る構成を説明したが、上記以外の構成については、通常のコイン型電池と同様の構成要素により構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(a)正極
本発明の評価用電池では、評価に用いる正極活物質は、その正極活物質の態様に従って、調製されたものを用いる。例えば、成分組成、粒度、表面などの正極活物質の特性に影響する各因子を考慮して作製した正極活物質を用いる。
正極は、正極活物質の他に、導電材やバインダー(結着剤)などから構成され、これらを混合して正極合材として用いられる。電池を評価する場合にも、これらの構成材料の影響を受けることから適正なものを用いて評価用電池を作製する。
導電材は、正極活物質粒子間の電気伝導性を高め、正極の充放電反応を効率的に行うためのものであり、一般的な非水系電解質二次電池で使用されている導電材であればよく、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)やアセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料などの炭素材料を単体、もしくは複合して用いることができる。
バインダー(結着剤)は、正極活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、一般的な非水系電解質二次電池で使用されているものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱加塑性樹脂、エチレンプロプレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
正極の作製方法として、例えば、塗工法、あるいはシート法を用いることができる。
シート法は、正極活物質を導電材、結着剤とともに乾式混合し、得られた混合物を正極集電体とともにロールプレスなどを用い、集電体上正極膜が形成されたシートを作製した後、所望のサイズに打ち抜いて正極を得るものである。シート法では、塗工法による電極作製法と比べ、正極を迅速に作製できるメリットがある。また、電極が厚くなることから、印可する電流が微小な交流インピーダンス法による抵抗評価に好適である。
また、塗工法は、正極活物質を導電材、結着剤、溶媒とともに湿式混合し混練してスラリー化し、得られたスラリーを正極集電体上に塗布し乾燥して正極膜を形成した後、所望のサイズに打ち抜いて正極を得るものである。塗工法は、塗工厚みを薄くすることが可能である。リチウムイオンの拡散が律速となるリチウムイオン二次電池において、塗工厚みを薄くしてリチウムの拡散距離を短くすることで、高レートでの充放電が可能となり、直流法による抵抗評価に好適な評価用電池を得ることができる。また、塗工膜の厚みの影響を少なくできるため、正極活物質自体の特性を精度よく評価できる。
乾式および湿式の混合は、乾式混合方式であれば、乾式ボールミル、乾式ビーズミル、ブレード遊星運動型の混合機、容器回転型の遊星運動混合機、攪拌機、ホモジナイザーなどが利用できるが、特に容器回転型の遊星運動混合機を用いると均質な正極膜が得られやすい。
(b)負極
負極には、金属リチウム、もしくはリチウムを主成分とする金属以外に、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる物質、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を負極活物質として用いることができる。
金属リチウム、もしくはリチウムを主成分とする金属は、シート状にした後、所望のサイズに抜いて用いることができる。この場合、負極膜が電気導電性を有するため、集電体を用いなくてもよい。一方、粉末状の負極活物質は、結着剤を混合し、溶剤を加え、正極と同様に、湿式混合し混練してスラリー化した後、銅等の金属箔集電体の表面に塗工し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを所望のサイズに抜いて用いることができる
(c)セパレーター
正極と負極との間には、セパレーターを挟み込んで配置する。セパレーターは、正極と負極とを分離し、電解液を保持するものであり、上述のように、ガラス繊維で形成されたものを用いる。
(d)電解液
電解液(非水系電解液)は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22等、およびそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
(e)電池の形状、構成
以上のように説明してきた正極、負極、セパレーターおよび非水系電解液を用いて本発明の評価用電池を構成する。
正極および負極を、セパレーターを介して積層させて電極部とし、得られた電極部に、非水系電解液を含浸させ、電池筐体内に密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
(f)正極抵抗の測定方法
本発明の正極抵抗の測定方法は、上述した評価用電池を用いて、正極活物質による正極抵抗を測定するものである。正極抵抗の測定方法としては、直流法と交流インピーダンス法があるが、正極による抵抗を分離して評価が可能な交流インピーダンス法が好ましい。
交流インピーダンス法による正極抵抗の測定方法を例示すれば、次のようになる。電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うと、溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、および正極抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図(コールコールプロット)が得られる。
電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極、正極の並列回路を直列に接続した等価回路で表される。この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。正極抵抗は、得られるナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。
以上のことから、作製される正極について、交流インピーダンス測定を行い、得られたナイキスト線図に対し等価回路でフィッティング計算することで、正極抵抗を見積もることができる。
(実施例1)
正極活物質として、Li0.98Ni0.82Co0.15Al0.032で表されるリチウムニッケル複合物の粉末(粒径10μm)を75質量%と、導電材としてカーボン粉末のアセチレンブラック粉末と結着剤であるポリテトラフルオロエチレンとを2対1で混ぜ合わせたものを25質量%とを、直径3mmのジルコニアボール15gと共に、PP容器に入れ、容器回転型遊星運動混合機の所定位置に配置した後、公転周期1500rpm、自転周期600rpmで、60秒間の遊星撹拌による混合を行い、正極合材を得た。
その正極合材を75mg採取し、正極膜径:11.0mmになるように金型プレス成型を行い、実施例1に係る正極膜を作製した。作製した正極膜の活物質重量は52.5mg相当である。
負極として、金属リチウム箔(厚み1mm)を、直径14.0mmに打ち抜いた負極膜を用いた。
セパレーターは、JIS P 3801に規定される保留粒子径が0.3μm、JIS Z 8901に規定される捕集効率が99.999%以上、厚さ300〜500μmであり、主成分をSiO2とするガラス繊維製のフィルターを直径16mmに切り取ったものを用いた。
電解液には電解質LiClO4を1モル/Lが含有するエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(容積比でEC/DEC=3/7)を用いた。
これらの各構成部材を用いて、露点−30℃未満のグローブボックス中で、図1に示す2032型コイン電池(電池)を2個作製した。図1において、1は正極、2はLi金属負極、3はセパレーター、4はガスケット、5はウェーブワッシャー、6は正極缶、7は負極缶、8は電極部である。
[評価]
作製した電池を用いて、交流インピーダンス法により、正規極抵抗を測定した。
インピーダンス測定は、0.4mAの定電流で4.3Vまで充電を行い、1時間の休止の後、0.4mAの定電流で3.0Vまで放電するサイクルを1サイクル行ってコンディショニングした。その後、1時間休止し、1.6mAで4.0Vまで定電流充電し、4.0Vに到達後に4.0Vで定電圧充電(電流値が0.2mAで充電終了)をした後、交流インピーダンス法による測定を行った。交流インピーダンス法におけるコールコールプロットにて得られた曲線に対し、図2に示す等価回路を用いて正極の界面抵抗(正極抵抗)を計算した。
その結果、電池2個の正極の界面抵抗のばらつきは±1.5%であり、ばらつきのない安定した正極抵抗の評価結果が得られ、精度の高い評価が可能であることを確認した。実施例1におけるコールコールプロットを図3に示す。
(比較例1)
実施例1の電池構成で、セパレーターを一般的に用いられる厚さ20μmのポリプロピレン製セパレーターとした以外は、実施例1と同様にしてコイン電池を作製するとともに正極抵抗を測定した。
その結果、電池2個の正極の界面抵抗のばらつきは±9.5%であり、ばらつきが大きく、正極抵抗の評価として適さないことを確認した。比較例1におけるコールコールプロットを図4に示す。
1 正極
2 Li金属負極
3 セパレーター
4 ガスケット
5 ウェーブワッシャー
6 正極缶
7 負極缶
8 電極部

Claims (8)

  1. 電池筐体を構成する正極缶と負極缶が形成する電池筐体内部に、正極を構成する正極活物質を含む正極膜と、負極を構成する負極活物質を含む負極膜とがセパレーターを介し対向配置した電極部と、前記電極部に含浸される非水系電解液とを備えるコイン型非水系電解質二次電池であって、
    前記セパレーターは、ガラス繊維で形成され、JIS P 3801に規定される保留粒子径が0.2〜1.0μmであり、膜厚が200〜500μmであり、JIS Z 8901に規定される捕集効率が99%以上であり、正極中に含まれる正極活物質が3〜30mg/cm2の範囲であることを特徴とする正極活物質評価用非水系電解質二次電池。
  2. 前記電池筐体内において、前記電極部を加圧し、かつ、正極と正極缶、および負極と負極缶の間で電気導通性を有する機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質評価用非水系電解質二次電池。
  3. 前記電極部は、電池筐体と電極部の間に挿入された金属バネによって加圧され、該金属バネが接する面の裏面で電極部が電池筐体と密着していることを特徴とする請求項2に記載の正極活物質評価用非水系電解質二次電池。
  4. 前記正極活物質がリチウム遷移金属複合酸化物であり、前記負極活物質が金属リチウムまたはリチウムを主成分とする金属であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の正極活物質評価用非水系電解質二次電池。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の正極活物質評価用非水系電解質二次電池を用いて、正極抵抗を測定することを特徴とする正極抵抗の測定方法。
  6. 前記正極抵抗を、交流インピーダンス法を用いて評価することを特徴とする請求項5に記載の正極抵抗の測定方法。
  7. 前記正極活物質評価用非水系電解質二次電池を作製する際に、正極膜を構成する材料を乾式混合し、得られた混合物を用いて正極集電体上に正極膜を形成して正極を得ることを特徴とする請求項5または6に記載の正極抵抗の測定方法。
  8. 前記正極活物質評価用非水系電解質二次電池を作製する際に、正極膜を構成する材料を溶媒とともに湿式混合してスラリー化し、得られたスラリーを正極集電体上に塗工し乾燥して正極膜を形成し、正極を得ることを特徴とする請求項5または6に記載の正極抵抗の測定方法。
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