以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示す車両制御装置100は、乗用車等の車両Mに搭載されている。車両制御装置100は、車両Mの種々の走行制御を実行することができる。図1に示すように、車両制御装置100は、外部センサ1、内部センサ2、GPS[Global Positioning System]受信部3、地図データベース4、方向指示器センサ5、ECU[Electronic Control Unit]6、アクチュエータ7、及びHMI8を備えている。
外部センサ1は、車両Mの周辺の状況を検出する検出機器である。外部センサ1は、単眼カメラ、及びレーダー[Radar]を含んでいる。
単眼カメラは、車両Mの外部状況を撮像する撮像機器である。単眼カメラは、車両Mのフロントガラスの裏側に設けられている。単眼カメラは、車両Mの前方の道路を撮像する。単眼カメラは、撮像した撮像情報をECU6へ送信する。
レーダーは、電波(例えばミリ波)を利用して車両Mの外部の障害物を検出する。レーダーは、電波を車両Mの周囲に送信し、障害物で反射された電波を受信することで障害物を検出する。レーダーは、検出した障害物情報をECU6へ送信する。
内部センサ2は、車両Mの走行状態を検出する検出機器である。内部センサ2は、車速センサ、ヨーレートセンサ、及び操舵センサを含んでいる。
車速センサは、車両Mの速度を検出する検出器である。車速センサとしては、車両Mの車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフト等に対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。車速センサは、検出した車速情報をECU6に送信する。
ヨーレートセンサは、車両Mの重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、ジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した車両Mのヨーレート情報をECU6へ送信する。
操舵センサは、車両Mのステアリングシャフトに対して設けられ、運転者によるステアリングホイールの操舵量を検出する。操舵センサは、検出した操舵量情報をECU6へ送信する。
GPS受信部3は、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、車両Mの位置(例えば車両Mの緯度及び経度)を測定する。GPS受信部3は、測定した車両Mの位置情報をECU6へ送信する。
地図データベース4は、地図情報を備えたデータベースである。地図データベースは、車両に搭載された記憶部内に形成されている。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブ、直線部の種別、カーブ半径等)、交差点及び分岐点の位置情報、及び建物の位置情報等が含まれる。なお、地図データベースは、車両Mと通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータに記憶されていてもよい。
方向指示器センサ5は、例えば、車両Mのウインカレバーに対して設けられ、運転者によるウインカレバーの操作を検出する。方向指示器センサ5は、運転者によるウインカレバーの操作が右ウインカーの操作であるか左ウインカーの操作であるか検出する。方向指示器センサ5は、検出した方向指示器操作情報をECU6へ送信する。
アクチュエータ7は、車両Mの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ7は、エンジンアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。エンジンアクチュエータは、ECU6からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量を変更(例えばスロットル開度を変更)することで、車両Mの駆動力を制御する。なお、エンジンアクチュエータは、車両Mがハイブリッド車又は電気自動車である場合には、動力源としてのモータの駆動力を制御する。
ブレーキアクチュエータは、ECU6からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両Mの車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU6からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、車両の操舵トルクを制御する。
HMI8は、運転者と車両制御装置100との間で情報の出力及び入力をするためのインターフェイスである。HMI8は、例えば、運転者等に画像情報を表示するためのディスプレイ、音声出力のためのスピーカ、及び運転者が入力操作を行うための操作ボタン又はタッチパネル等を備えている。HMI8には、運転者が各種の走行制御の開始又は終了を指示するためのボタンが設けられている。
次に、ECU6について説明する。ECU6は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。ECU6は、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。ECU6は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
ECU6は、機能的には、障害物認識部11、車両横位置認識部12、車線維持変更判定部13、衝突回避判定部14、横滑り検出部15、走行制御部16、及び優先条件記憶部17を有している。
障害物認識部11は、外部センサ1のレーダーが検出した障害物情報に基づいて、車両Mの周囲の障害物を認識する。障害物には、車両M以外の他車両、自転車、歩行者、及び、ガードレール等の構造物がある。障害物認識部11は、周知の手法により、車両Mの周囲の障害物の位置、車両Mに対する障害物の相対的な移動方向、車両Mに対する障害物の相対的な移動速度等を認識する。なお、障害物認識部11は、外部センサ1の単眼カメラが撮像した撮像情報に基づいて、車両Mの周囲の障害物を認識しても良い。
車両横位置認識部12は、外部センサ1の単眼カメラの撮像情報に基づいて、走行車線における車両Mの横位置を認識する。車両横位置認識部12は、単眼カメラにより撮像された車両Mの前方の撮像画像(白線の画像)に基づいて、周知の画像処理手法により、車両Mの横位置を認識してもよい。例えば、外部センサ1の単眼カメラは、車両Mにおける搭載位置が決まっており、この搭載位置から当該単眼カメラが撮像する範囲も決まっている。また、単眼カメラの搭載位置と車両Mの中心位置との位置関係(平面視における位置関係)は決まっている。このため、車両横位置認識部12は、単眼カメラの撮像画像上における左右二本の白線の位置から、車線幅方向における車両Mの中心位置を車両Mの横位置として求めることができる。
車線維持変更判定部13は、車線維持制御を実行するための車線維持制御の作動条件が成立したか否かを判定する。車線維持制御の作動条件は、車線維持制御の実行の可否を判定するために予め設定された条件である。車線維持制御の作動条件は、例えば、外部センサ1の単眼カメラによって車両Mの走行車線の白線が検出され、且つ、内部センサ2の車速センサによって車両Mの速度が一定値以上であることが検出された場合に成立する。
また、車線維持変更判定部13は、車線変更制御を実行するための車線変更制御の作動条件が成立したか否かを判定する。車線変更制御の作動条件は、車線変更制御の実行の可否を判定するために予め設定された条件である。車線変更制御の作動条件は、例えば、外部センサ1の単眼カメラによって走行車線に隣接する隣接車線が検出され、且つ、車両Mの周囲に他車両が存在しない場合に成立する。車線維持変更判定部13は、外部センサ1の単眼カメラによって検出された走行車線と車線変更先の隣接車線の車線境界線が黄色線である場合、車線変更制御の作動条件が成立しないと判定してもよい。
衝突回避判定部14は、障害物認識部11による障害物の認識結果に基づいて、衝突回避制御を実行するための衝突回避条件が成立したか否かを判定する。衝突回避条件は、衝突回避制御の実行の要否を判定するために予め設定された条件である。衝突回避判定部14は、例えば、車両Mに接近する障害物と車両Mとの衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)が一定時間以下になった場合に、衝突回避条件が成立したと判定する。
横滑り検出部15は、内部センサ2のヨーレートセンサで検出されたヨーレート、及び内部センサ2の操舵センサで検出された操舵量に基づいて、車両Mの横滑りの発生の有無を検出する。横滑り検出部15は、例えば、操舵センサで検出された操舵量から求められる車両Mのヨーレートと、ヨーレートセンサで検出された実際の車両Mのヨーレートとが異なる場合に、横滑りが生じていると検出する。
走行制御部16は、アクチュエータ7に制御信号を送信することにより、車両Mの各種の走行制御を実行する。本実施形態において車両制御装置100は、車線維持制御、車線変更制御、クルーズ制御、スピードマネジメント制御、衝突回避制御、及び横滑り抑制制御を実行する。
車線維持制御とは、車両Mを走行車線に沿って走行させる走行制御である。走行制御部16は、車線維持変更判定部13によって車線維持制御の作動条件が成立したと判定された状態で、運転者によって車線維持制御の実行の指示がされた場合に、車線維持制御の実行を開始する。運転者による車線維持制御の実行の指示は、例えば、HMI8に設けられたスイッチを通じて行うことができる。走行制御部16は、車両横位置認識部12による車両Mの横位置の認識結果に基づいて、車両Mが走行車線の中央を走行するように、周知の手法により、車線維持制御を実行する。
車線変更制御とは、車両Mの走行する走行車線から隣接車線へ車両Mを車線変更させる走行制御である。走行制御部16は、車線維持変更判定部13により車線変更制御の作動条件が成立したと判定された状態で、運転者によってウインカレバーが操作されることによって車線変更制御の実行が指示された場合に、車線変更制御の実行を開始する。走行制御部16は、方向指示器センサ5の検出結果に基づいてウインカレバーの操作の有無を判定することができる。走行制御部16は、車両横位置認識部12による車両Mの横位置の認識結果、及び外部センサ1の単眼カメラによって検出された車線等に基づいて、周知の手法により、車線変更制御を実行する。
クルーズ制御とは、車両Mを予め設定された速度で走行させる、又は先行車両に追従して車両Mを走行させる走行制御である。走行制御部16は、運転者によってクルーズ制御の実行の指示がされた場合に、クルーズ制御の実行を開始する。運転者によるクルーズ制御の実行の指示は、例えば、HMI8に設けられたスイッチを通じて行うことができる。走行制御部16は、内部センサ2の車速センサによる車両Mの速度、障害物認識部11による先行車両の認識結果等に基づいて、周知の手法により、クルーズ制御を実行する。
スピードマネジメント制御とは、車両Mの前方のカーブ半径に基づいて車両Mを加減速させる走行制御である。走行制御部16は、運転者によってスピードマネジメント制御の実行の指示がされている状態で、車両Mの前方にカーブが存在する場合、前方のカーブのカーブ半径に応じて設定された速度でカーブを通過するように車両Mを加減速させる。走行制御部16は、車両Mの前方のカーブの有無、及びカーブ半径を、GPS受信部3で測定された車両Mの位置、及び地図データベース4に記憶された地図情報に基づいて取得することができる。運転者によるスピードマネジメント制御の実行の指示は、例えば、HMI8に設けられたスイッチを通じて行うことができる。
衝突回避制御とは、車両Mと障害物との衝突を回避するように車両Mを走行させる走行制御である。走行制御部16は、衝突回避判定部14により衝突回避条件が成立したと判定された場合、衝突回避制御を実行する。走行制御部16は、障害物認識部11による障害物の認識結果に基づいて、アクチュエータ7のブレーキアクチュエータ等を制御することによって、周知の手法により、衝突回避制御を実行する。
横滑り抑制制御とは、車両の横滑りを抑制する走行制御である。走行制御部16は、横滑り検出部15によって横滑りが検出された場合、アクチュエータ7のブレーキアクチュエータ及びエンジンアクチュエータ等を制御することによって、周知の手法により、横滑り抑制制御を実行する。
優先条件記憶部17は、走行制御部16が各種の走行制御を実行する際に用いる優先条件を記憶する。優先条件は、走行制御の開始の条件が同時期に成立したことによって実行すべき走行制御が複数存在することとなった場合に、走行制御部16が優先して実行すべき走行制御を示している。
図2は、走行制御部16が優先して実行すべき走行制御を示す優先条件の表である。本実施形態では、優先条件を図2に示すように表形式としているが、優先条件のデータ形式は表以外の形式であってもよい。
図2の表において、「○」印は、A欄に記載された走行制御とB欄に記載された走行制御とが同時期に実行すべき状態となった場合に、A欄に記載された走行制御がB欄に記載された走行制御に対して優先して実行されることを示している。なお、優先して実行することとは、優先すべき走行制御のみを実行することをいう。また、優先すべき走行制御のみを実行することとは、優先すべき走行制御以外の走行制御が実行中である場合、優先すべき走行制御以外の走行制御の実行を停止して、優先すべき走行制御のみを実行することを含む。
図2において「×」印は、A欄に記載された走行制御とB欄に記載された走行制御とが同時期に実行すべき状態となった場合に、A欄に記載された走行制御がB欄に記載された走行制御に対して優先して実行されないことを示している。図2において「両方作動可能」とは、A欄に記載された走行制御とB欄に記載された走行制御とが同時期に実行すべき状態となった場合に、A欄に記載された走行制御及びB欄に記載された走行制御の両方、又はいずれか一方が実行されることを示している。
例えば、枠R1における「○」印は、車線変更制御と車線維持制御とが同時期に実行すべき状態となった場合において、A欄の車線変更制御がB欄の車線維持制御よりも優先して実行されることを示している。例えば、枠R2における「両方作動可能」の表記は、スピードマネジメント制御と車線変更制御とが同時期に実行すべき状態となった場合において、A欄のスピードマネジメント制御及びB欄の車線変更制御の両方が実行される、又はいずれか一方が実行されることを示している。
複数の走行制御が同時期に実行可能となった場合に、走行制御部16が実行する走行制御の全パターンについて具体的に説明する。走行制御部16は、A欄に記載された横滑り抑制制御と、B欄に記載された車線維持制御、車線変更制御、クルーズ制御、スピードマネジメント制御、及び衝突回避制御の少なくともいずれかの走行制御とが同時期に実行可能となった場合、A欄に記載された横滑り抑制制御を他の走行制御よりも優先して実行する。
走行制御部16は、A欄に記載された衝突回避制御と、B欄に記載された車線維持制御、車線変更制御、クルーズ制御、及びスピードマネジメント制御の少なくともいずれかの走行制御とが同時期に実行可能となった場合、A欄に記載された衝突回避制御を他の走行制御よりも優先して実行する。
走行制御部16は、A欄に記載されたスピードマネジメント制御と、B欄に記載された車線維持制御とが同時期に実行可能となった場合、スピードマネジメント制御及び車線維持制御の両方を実行する、又は、いずれか一方の走行制御を他方の走行制御よりも優先して実行する。走行制御部16は、A欄に記載されたスピードマネジメント制御と、B欄に記載された車線変更制御とが同時期に実行可能となった場合、枠R2に示すようにスピードマネジメント制御及び車線変更制御の両方を実行する、又は、いずれか一方の走行制御を他方の走行制御よりも優先して実行する。走行制御部16は、A欄に記載されたスピードマネジメント制御と、B欄に記載されたクルーズ制御とが同時期に実行可能となった場合、スピードマネジメント制御を優先して実行する。
走行制御部16は、A欄に記載されたクルーズ制御と、B欄に記載された車線維持制御とが同時期に実行可能となった場合、クルーズ制御及び車線維持制御の両方を実行する、又は、いずれか一方の走行制御を他方の走行制御よりも優先して実行する。走行制御部16は、A欄に記載されたクルーズ制御と、B欄に記載された車線変更制御とが同時期に実行可能となった場合、クルーズ制御及び車線変更制御の両方を実行する、又は、いずれか一方の走行制御を他方の走行制御よりも優先して実行する。
走行制御部16は、A欄に記載された車線変更制御と、B欄に記載された車線維持制御とが同時期に実行可能となった場合、枠R1に示すように車線変更制御を優先して実行する。
本実施形態は以上のように構成され、走行制御部16は、実行すべき走行制御が同時期に複数存在する場合には、優先条件記憶部17が記憶する優先条件に基づいて、実行すべき走行制御のうち少なくともいずれかを実行する。このため、車両制御装置100は、複数の走行制御の機能が搭載された車両Mにおいて、適切な走行制御を実行することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、外部センサ1は、レーダーに代えてライダー[LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging]を備えていてもよい。ライダーは、光を利用して車両Mの外部の障害物を検出する。ライダーは、検出した障害物情報をECU6へ送信する。また、外部センサ1は、ステレオカメラを備えていてもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有している。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれている。障害物認識部11は、ステレオカメラの撮像情報に基づいて、周知の画像処理を行うことによって、車両Mの周囲の障害物を検出してもよい。