JP2017113238A - 酸素供給方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 酸素ガスの無駄な消費を抑えるとともに、患者が有効に酸素ガスを吸入することができる酸素供給方法を提供する。【解決手段】 患者の吸気によって酸素ガス供給経路内に発生する陰圧を検知する圧力検知手段と、酸素ガス源から酸素ガス供給経路への酸素ガスの供給を制御するガス供給弁と、ガス供給弁を開閉制御するガス供給制御手段とを備え、ガス供給制御手段は、圧力検知手段が陰圧を検知したときに、ガス供給弁が閉状態のときには、ガス供給弁を開弁させて酸素ガスを供給するとともに、前回の陰圧検知から今回の陰圧検知までの時間を呼吸時間として記憶し、記憶した呼吸時間に基づいて次回の吸気開始時間を予測し、予測した吸気開始時間に対して呼吸データに基づいて算出された特定の早期供給時間だけ早くガス供給弁を開いて酸素ガスの供給を開始する。【選択図】 図1
Description
本発明は、酸素供給方法に関し、詳しくは、酸素療法を行っている患者に酸素ガスを供給する酸素供給方法に関する。
酸素療法は、酸素濃縮器や酸素ボンベからの酸素ガスを、酸素供給装置、酸素供給経路(チューブ)、カニューラを介して患者に所定流量で投与するもので、酸素供給装置として、患者の吸気に合わせて酸素ガスを流す呼吸同調器が知られている。この呼吸同調器は、患者の吸気開始を検出してから酸素ガスの供給を開始するため、吸気開始から酸素ガス供給までに時間差を生じるという問題がある。すなわち、吸気開始直後は、鼻腔内にとどまった呼気の一部を吸入することになり、酸素ガスを有効に吸入しているとはいえなかった。このため、酸素供給用の制御装置として、吸入器具に、患者に酸素ガスを投与するための酸素投与口と、患者の呼吸状態を検知するための呼吸検知口とを設け、呼吸検知口に配置したセンサで検知した呼吸サイクルに合わせて酸素ガスを供給するようにした制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、特許文献1に記載された制御装置は、呼吸サイクルの吸気期間では、連続的に供給可能な連続ベース流量を上回る第1流量で供給し、呼気期間では、前記連続ベース流量を下回る第2流量で供給するようにしているため、酸素ガスは連続して供給されることになり、呼気期間中に供給される酸素ガスは有効に利用されることなく、無駄に酸素ガスを消費していることになる。さらに、吸入器具であるカニューラに、酸素ガス供給用のチューブと呼吸検知用のチューブとの2本のチューブを接続しなければならないため、重量が増加したり、チューブが絡まったりするなど、患者にとって非常に煩わしいものとなる。
そこで本発明は、酸素ガスの無駄な消費を抑えるとともに、患者が有効に酸素ガスを吸入することができる酸素供給方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の酸素供給方法は、酸素ガス源からの酸素ガスを、酸素ガス供給経路を介して患者に供給する酸素供給方法において、患者の吸気によって前記酸素ガス供給経路内に発生する陰圧を検知する圧力検知手段と、前記酸素ガス源から前記酸素ガス供給経路への酸素ガスの供給を制御するガス供給弁と、該ガス供給弁を開閉制御するガス供給制御手段とを備え、該ガス供給制御手段は、前記圧力検知手段が前記陰圧を検知したときに、前記ガス供給弁が閉状態のときには、前記ガス供給弁を開弁させてあらかじめ設定された基準量の酸素ガスを供給するとともに、前回の陰圧検知から今回の陰圧検知までの時間を呼吸時間として記憶し、記憶した呼吸時間に基づいて次回の吸気開始時間を予測し、予測した吸気開始時間に対して呼吸データに基づいて算出された算出時間、又は、あらかじめ設定された設定時間のいずれか一方からなる早期供給時間だけ早く前記ガス供給弁を開いて酸素ガスの供給を開始することを特徴としている。
さらに、本発明の酸素供給方法は、前記早期供給時間中の酸素ガスの流量は、前記圧力検知手段が酸素ガス供給経路内の陰圧を検知可能な流量に設定されていること、あるいは、前記早期供給時間から前記吸気開始時間までの間に、酸素ガスの流量を減少させる流量減少期間又は酸素ガスの供給を停止する供給停止期間が設けられていることを特徴としている。
本発明の酸素供給方法によれば、患者が吸気を開始する前に酸素ガスの供給を開始するので、患者は、吸気開始直後から酸素濃度の高い酸素ガスを吸入することができる。これにより、酸素ガスが効率よく患者に取り込まれるため、酸素ガス源となる酸素ボンベに充填されている酸素ガスの消費量を低減することができ、吸入可能時間を飛躍的に延長することができる。また、1回の吸気に設定された量の酸素ガスを供給した後は、従来の呼吸同調器と同様に酸素ガスの供給を停止するので、酸素ガスが無駄になることもない。さらに、酸素ガス供給経路となるチューブやカニューラは、従来と同じものを使用できるので、患者に新たな負担を強いることはない。
本形態例に示す酸素供給方法に使用する酸素供給装置は、従来の酸素療法用酸素供給装置と同様の構成を有するものを使用することができる。すなわち、酸素ガス源と、供給ガス量制御部と、吸入器具であるカニューラと、供給ガス量制御部とカニューラとを接続する酸素ガス供給経路となるチューブ又はコネクタとを備えている。供給ガス量制御部には、患者の吸気によって前記酸素ガス供給経路内に発生する陰圧を検知する圧力検知手段と、前記酸素ガス源から前記酸素ガス供給経路への酸素ガスの供給を制御するガス供給弁と、該ガス供給弁を開閉制御するガス供給制御手段とを備えている。
図1に示すように、前記ガス供給制御手段における通常の制御手順は、電源ON後にステップ1で患者の吸気、すなわち、患者の吸気によって酸素ガス供給経路内に発生する陰圧を圧力検知手段、例えば圧力センサが吸気を検知したかを判定し、患者の吸気を検知しない場合には、非使用状態であると判断し、ガス供給弁を閉状態に保持してステップ1を繰り返す。
ステップ1で患者の吸気を検知したときは、ステップ2に進んで呼吸データとして吸気開始時間を記録するとともに、ステップ3に進み、ガス供給弁を開いて患者への酸素ガスの供給を開始する。この第1回目の酸素ガス供給動作は、従来の呼吸同調器と同じであり、あらかじめ設定されている酸素ガス供給量などの基準データに基づいて行われ、基準量の酸素ガスを供給した後、ガス供給弁を閉じて酸素ガスの供給を停止する。
酸素ガス供給後にステップ4でn回の呼吸データがあるかを確認する(nは1以上の自然数)。ここでいう呼吸データとは前回の陰圧検知と次の陰圧検知までの時間データであり、陰圧検知は呼吸の内、吸気の開始時刻を意味する。第1回目の酸素ガス供給を終えた後は、前回の呼吸データがないため、ステップ1に戻り、ステップ1〜4を繰り返す。第2回目以降の酸素ガス供給を終えた後は、前回の陰圧検知から今回の陰圧検知までの時間を呼吸時間として記録した呼吸データが得られているため、ステップ5に進み、前記呼吸データに基づいて次回の吸気開始時間を予測する。例えば、前回の陰圧検知から今回の陰圧検知までの時間が4秒だとした場合、次回の吸気開始時間は、今回の陰圧検知から4秒後と予測する。
そして、ステップ6で予測した吸気開始時間(4秒後)に対し、呼吸データに基づいて算出された早期供給時間、例えば1秒早い時間になったらステップ7に進んでガス供給弁を開き、吸気開始時間に対して1秒だけ早く酸素ガスの供給を開始する。このステップ7における酸素ガスの供給も、前記ステップ3と同様に、従来の呼吸同調器と同じ量に設定すればよい。
酸素ガス供給開始後は、ステップ8で患者の吸気開始を確認するための圧力検知を行った後、ステップ9で今回の呼吸データ、すなわち前回の陰圧検知から今回の陰圧検知までの時間を呼吸時間として記録した呼吸データを記録し、酸素ガスの供給を停止してステップ5に戻り、ステップ5〜9を繰り返す。ステップ8で吸気による陰圧の発生を検知できなかった場合や、陰圧の発生タイミングがずれていた場合は、過去n回分の呼吸データから次の呼吸開始時間を再計算して予測する。
図2は、前記制御手段によって患者に供給する酸素ガスの流量を制御したときの患者の呼吸状態と酸素供給装置からの酸素供給状態との関係の第1形態例を示すもので、患者の呼吸動作を示す曲線Aにおいて、点A10,A11は呼気から吸気への切り換わり点、すなわち吸気開始点であり、点A20,A21は吸気から呼気への切り換わる点、すなわち吸気終了点である。また、酸素ガスの供給状態を示す曲線Bにおいて、点B10,B11は酸素ガス供給開始点、点B20,B21は酸素ガス供給停止点である。
図2では、前記ステップ1〜4で記録した呼吸データによって呼吸1サイクルの時間を算出し、算出した呼吸1サイクルの時間から、今回の吸気開始点A10に対する次回の吸気開始点A11の時間を予測し(ステップ5)、次回の吸気開始点A11に対して、呼吸データに基づいて算出された特定の早期供給時間、例えば1秒前になったら、この時点を酸素ガス供給開始点B11として酸素ガスの供給を開始する。このときの酸素ガス供給開始点B11から酸素ガス供給停止点B21までの時間は、吸気を検知して酸素ガス供給を開始した前回の酸素ガス供給開始点B10から酸素ガス供給停止点B21までの時間と同じであり、1回当たりの酸素ガス供給量は、従来の呼吸同調器と同じ量に設定されている。
これにより、次の吸気開始点A11に至るまでの間に、酸素ガス供給開始点B11の時点でカニューラから鼻腔内に酸素ガスが吐出されるので、吸気開始点A11で吸気を開始する際に、鼻腔内を酸素ガスで満たしておくことができ、吸気開始直後から酸素ガスを効率よく吸い込むことができる。
図3は、本発明との比較として、従来の呼吸同調器における患者の呼吸状態と酸素供給装置からの酸素供給状態との関係を示すものである。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した呼吸状態及び酸素供給状態については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図3から明らかなように、吸気開始点A11で患者が吸気を開始して陰圧が発生したことを圧力検知手段で検知してから酸素ガスの供給を開始するので、酸素ガス供給開始点B11は、吸気開始点A11より遅くなる。このため、患者が吸気を開始した際には、前回の呼気で鼻腔内に溜まったガスを吸い込むことになるので、酸素ガスの吸込効率が低下してしまう。さらに、吸気から呼気に切り換わる切り換わり点A21を過ぎても、酸素ガス供給停止点B12まで酸素ガスの供給が続いているため、患者が吸い込まない酸素ガスが無駄に排出されていることになる。
図4は、酸素供給状態の第2形態例を示すもので、前記図2に示した酸素供給状態において、前記吸気開始点A11で陰圧の検知を十分に行えないときの対策を講じている。
図4において、酸素ガス供給開始点B11で酸素供給を開始した後、吸気開始点A11の前後で、例えばガス供給弁の制御動作により、酸素流量を最大流量より低い流量に保つ流量減少期間B22を設定し、この期間内で吸気が始まったときの陰圧の発生を、図2の場合に比べて確実に行えるようにしている。
図5は、酸素供給状態の第3形態例を示すもので、前記第2形態例と同様に、図2に示した酸素供給状態では吸気開始点A11で陰圧の検知を十分に行えないときの対策を講じている。
図5において、酸素ガス供給開始点B11で酸素供給を開始した後、吸気開始点A11の前後で酸素供給を一旦停止する期間B23を設定し、この供給停止期間内で吸気が始まったときの陰圧の発生を、図2の場合や図4の場合に比べてより確実に行えるようにしている。
各形態例に示したように、前回の陰圧検知から今回の陰圧検知(吸気開始点A10)までの時間に基づいて予測した次回の吸気開始時間(吸気開始点A11)に対して呼吸データに基づいて算出された特定の早期供給時間だけ早い酸素ガス供給開始点B11になったときに酸素ガスの供給を開始することにより、患者の酸素吸入効率を大幅に向上できるとともに、酸素ガスが無駄に消費されることを抑えることができる。
なお、早期供給時間は、患者の呼吸状態や酸素ガスの供給量などの条件に応じて呼吸データから適宜算出して設定してもよく、あらかじめ一定の時間を設定してもよい。早期供給時間をあらかじめ設定する場合、患者の呼吸状態などの条件によるが、例えば0.3秒〜2.5秒に設定することができる。また、酸素ガス源は、通常使用されている酸素濃縮器や酸素ボンベなどを使用することができ、酸素ガスの流量調整も、一般的なガス用の圧力調節器や流量調節器、自動開閉弁などを使用することができる。さらに、前記ステップ8を設けずに、あらかじめ設定された回数、あるいは、あらかじめ設定された時間を超えたときに、呼吸データをクリアしてステップ1に戻るようにすることもできる。
A10,A11…吸気開始点、A20…吸気から呼気への切り換わり点、B11…酸素ガス供給開始点、B21…酸素ガス供給停止点
Claims (3)
- 酸素ガス源からの酸素ガスを、酸素ガス供給経路を介して患者に供給する酸素供給方法において、患者の吸気によって前記酸素ガス供給経路内に発生する陰圧を検知する圧力検知手段と、前記酸素ガス源から前記酸素ガス供給経路への酸素ガスの供給を制御するガス供給弁と、該ガス供給弁を開閉制御するガス供給制御手段とを備え、該ガス供給制御手段は、前記圧力検知手段が前記陰圧を検知したときに、前記ガス供給弁が閉状態のときには、前記ガス供給弁を開弁させてあらかじめ設定された基準量の酸素ガスを供給するとともに、前回の陰圧検知から今回の陰圧検知までの時間を呼吸時間として記憶し、記憶した呼吸時間に基づいて次回の吸気開始時間を予測し、予測した吸気開始時間に対して呼吸データに基づいて算出された算出時間、又は、あらかじめ設定された設定時間のいずれか一方からなる早期供給時間だけ早く前記ガス供給弁を開いて酸素ガスの供給を開始することを特徴とする酸素供給方法。
- 前記早期供給時間中の酸素ガスの流量は、前記圧力検知手段が酸素ガス供給経路内の陰圧を検知可能な流量に設定されていることを特徴とする請求項1記載の酸素供給方法。
- 前記早期供給時間から前記吸気開始時間までの間に、酸素ガスの流量を減少させる流量減少期間又は酸素ガスの供給を停止する供給停止期間が設けられていることを特徴とする請求項1記載の酸素供給方法。
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