従来、主に低容量のインバータにおいて、電力変換用ブリッジ回路を構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのスイッチング素子をゲート駆動させる半導体装置として、高耐圧集積回路装置(HVIC:High Voltage Integrated Circuit)が公知である。一般的なHVICの接続例について説明する。図10は、一般的な高耐圧集積回路装置の接続例を示す回路図である。図10には、電力変換用ブリッジ回路300の一相分を構成する直列接続された2つのIGBT301,302のうちの高電位側(ハイサイド側)のIGBT(以下、上アームのIGBTとする)301を駆動するHVIC200を示す。上アームのIGBTのコレクタ端子は電源電位VDに接続されている。電源電位VDは例えば400Vである。
図10に示すように、HVIC200は、マイコン等からIN端子に入力された入力信号VINに応じて、上アームのIGBT301をゲート駆動するための信号をOUT端子から出力する。HVIC200のOUT端子から出力された信号は、上アームのIGBT301のゲートに入力される。HVIC200からのゲート信号を受けて上アームのIGBT301が動作し、上アームのIGBT301と低電位側(ローサイド側)のIGBT(以下、下アームのIGBTとする)302との接続点(出力点)303のVOUT端子から出力された信号がモータなどの誘電負荷に出力される。HVIC200のVB端子およびGND端子は、それぞれ、HVIC200の最高電位(ハイサイド電源電位)VB、および、HVIC200の最低電位である接地電位GNDに接続されている。
HVIC200のVS端子およびVCC端子は、それぞれ、HVIC200のハイサイド回路部(不図示)の基準電位VSおよびローサイド回路部(不図示)の電源電位VCCに接続されている。最高電位VBは、ノイズの影響を受けない通常状態では、ブートストラップコンデンサ等によりハイサイド回路部の基準電位VSよりも15V程度高電位に保たれている。ハイサイド回路部の基準電位VSは、上アームのIGBT301と下アームのIGBT302との接続点303の電位であり、電力変換の過程で0Vから数百V(電源電位VD)の間で変化する。HVIC200には、IGBT301,302の動作によって生じる様々なノイズが入力される。このため、HVIC200は、IGBT301,302の動作によって生じるノイズに対する耐性を有し、誤動作や破壊を起こさないように設計される。
このようなHVICでは、同一の半導体チップに設けた高電位側領域と低電位側領域とを、これらの領域の間に設けた高耐圧接合終端領域(HVJT:High Voltage Junction Termination region)で電気的に分離する高耐圧接合を利用したpn接合分離技術が知られている。HVJTには、レベルシフタとして機能する高耐圧のnチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、以下、HVNMOSとする)やpチャネル型MOSFET(以下、HVPMOSとする)が配置されている。このレベルシフタを介して高電位領域と低電位領域との間の信号伝達が行われる。従来のHVIC200の構造について説明する。
図18は、従来の高耐圧集積回路装置のHVNMOSの構造の概略を示す断面図である。図19は、従来の高耐圧集積回路装置のHVJTの構造の概略を示す断面図である。図20は、図18,19の等価回路を示す回路図である。図18〜20に示す従来のHVIC200は、同一のp-型半導体基板211上に高電位側領域201および低電位側領域202を備え、これらの領域間をHVJT203で電気的に分離した構成を有する。高電位側領域201は、p-型半導体基板211に設けられたn型領域212である。n型領域212は、VB端子に電気的に接続されている。n型領域212の内部に選択的に設けられたp型領域222は、VS端子に電気的に接続されている。n型領域212には、ハイサイド回路部204やレベルシフト抵抗206が配置される。
ハイサイド回路部204は、最高電位VBを電源電位とし、基準電位VSで動作し、ローサイド回路部205からの信号に基づいてHVIC200のOUT端子から出力される信号を生成する。HVJT203は、n型領域212の周囲を囲むn-型領域213と、n-型領域213の周囲を囲むp型分離領域214との間のpn接合で形成される寄生ダイオード208で構成される。p型分離領域214の内部に設けられたp+型コンタクト領域224は、コンタクト電極225および第2配線(金属配線)232を介してGND端子に電気的に接続されている。HVIC200の最高電位VBやハイサイド回路部204の基準電位VSが数百Vの高電位になったとしても、HVJT203により高電位側領域201と低電位側領域202とが電気的に分離される。
HVJT203の一部(以下、HVNMOS領域とする)203bには、レベルシフタとして機能するHVNMOS207が配置されている。HVNMOS207は、n-型領域213をドリフト領域とし、p型分離領域214をベース領域とする横型MOSFETである。HVNMOS207は、n-型領域213を深さ方向に貫通するp型分離領域217によりハイサイド回路部204と電気的に分離されている。p型分離領域214のp+型コンタクト領域224およびコンタクト電極225は、それぞれ、HVNMOS207のベースコンタクト領域およびベースピックアップ電極として機能する。HVNMOS207のn+型ソース領域241には、ソース電極244が接する。
HVNMOS207のソース電極244およびベースピックアップ電極は、第1配線(金属配線)231を介してGND端子に電気的に接続されている。HVNMOS207のn+型ドレイン領域242には、ドレイン電極245が接する。HVNMOS207のドレイン電極245は、レベルシフト抵抗206を介してVB端子に電気的に接続されている。HVNMOS207のゲート電極243には、HVNMOS207をゲート駆動するための制御回路234が接続されている。符号209,246は、それぞれ層間絶縁膜およびHVNMOS207のゲート絶縁膜である。符号208a,208bは、それぞれ、HVJT203のHVNMOS領域203b以外の部分(以下、HVJT領域とする)203aの寄生ダイオード208、および、HVNMOS領域203bの寄生ダイオード208である。
低電位側領域202は、p-型半導体基板211の、p型分離領域214よりも外側の部分である。以降の説明においては、チップおもて面に平行な方向に、n型領域212側を内側とし、n型領域212に対して反対側を外側とする。低電位側領域202に選択的に設けられたn型領域216は、VCC端子に電気的に接続されている。n型領域216の内部に選択的に設けられたp型領域226は、GND端子に電気的に接続されている。n型領域216には、ローサイド回路部205が配置される。ローサイド回路部205は、最高電位VBよりも低い電源電位VCCで、接地電位GNDを基準電位として動作する。p型分離領域214とn型領域216との間には、GND端子に電気的に接続されたp型領域(以下、GNDピックアップ領域とする)215が選択的に設けられている。
しかしながら、図18〜20に示す従来のHVIC200では、上アームのIGBT301がオンからオフに変わった直後に、ハイサイド回路部の基準電位VSが接地電位GNDよりも低電位(マイナス電位)になる場合があることが知られている。これによってハイサイド回路部が誤動作したり、破壊に至る虞がある。このため、ハイサイド回路部の基準電位VSが接地電位GNDよりも低電位になる場合にVS端子に印加された負電圧を一種のノイズとみなし、負電圧サージと呼ぶこととする。負電圧サージの絶対値は、上アームのIGBT301に流れる電流が大きいほど大きくなる。このため、大電流の流れる上アームのIGBT301にHVIC200を対応させるには、HVIC200の負電圧サージ耐量(耐圧)を向上させる必要がある。
負電圧サージによりハイサイド回路部204の誤動作や破壊が起きるのは、pn接合分離技術を用いたHVIC200には、HVJT203に寄生ダイオード208が存在するからである(図18,19参照)。負電圧サージの絶対値が大きい場合、寄生ダイオード208がオン(順方向に通電)する。これによって、GND端子から第1,2配線231,232、コンタクト電極225、p+型コンタクト領域224およびp型分離領域214の経路(以下、第1電流経路とする)251で流れる電流が大きくなる。また、GND端子からGNDピックアップ領域215、基板抵抗233およびp型分離領域214の経路(以下、第2電流経路とする)252で流れる電流が大きくなる。基板抵抗233とは、p-型半導体基板211の裏面側の、他の領域が形成されないことでp-型領域210として残っている部分の抵抗である。
この第1,2電流経路251,252を流れる電流が大きいと、ハイサイド回路部204に形成される寄生トランジスタや寄生サイリスタがオンし、ハイサイド回路部204の誤動作や局所的な破壊が生じる虞がある。また、第1,2電流経路251,252を流れる電流がローサイド回路部205に流れ込み、ローサイド回路部205の誤動作や局所的な破壊が生じる虞がある。したがって、HVIC200の負電圧サージ耐量を向上させる方法として、HVIC200の各部のレイアウトを工夫する方法がある。具体的には、ハイサイド回路部204をHVJT203から離して配置したり、HVJT203とローサイド回路部205との間にGNDピックアップ領域215を配置するなどが挙げられる。
また、負電圧サージ耐量を向上させたHVICとして、レベルシフタに属するスイッチング素子のドレイン電極と、ハイサイド回路部を構成する増幅器に属するMOSトランジスタのゲート電極との間に、ダイオードを配置した装置が提案されている(例えば、下記特許文献1(第0048〜0049段落)参照。)。下記特許文献1では、HVJTを構成する寄生ダイオードを通じて流れる電流を、スイッチング素子とハイサイド回路部との間に配置したダイオードによって阻止している。また、下記特許文献1では、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いることで、半導体基板の積層構造に基づく寄生ダイオードが形成されることを防止している。
また、別のHVICとして、HVJTの幅を中間電位領域に対向する部分で他の部分よりも広げた装置が提案されている(例えば、下記特許文献2(第0105段落、第7図)参照。)。下記特許文献2では、HVJTを構成する寄生ダイオードのカソード抵抗を中間電位領域付近で相対的に高くすることで、負電圧サージ入力時に正孔の注入が局部的に少ない領域をHVJTの内部に選択的に形成している。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる高耐圧集積回路装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる高耐圧集積回路装置(HVIC)の構造について、電力変換用ブリッジ回路の上アームのIGBTを駆動する場合を例に図1〜4,10を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1にかかる高耐圧集積回路装置の平面レイアウトを示す平面図である。例えば、図1に示す実施の形態1にかかるHVIC100が、電力変換用ブリッジ回路300の一相分を構成するIGBT301,302のうちの高電位側(ハイサイド側)のIGBT(上アームのIGBT)301を駆動する場合を例に説明する。すなわち、実施の形態1にかかるHVIC100の接続例は、図10の符号200を符号100に代えた構成である。
図1に示す実施の形態1にかかるHVIC100は、同一のp-型半導体基板(半導体チップ)1上に高電位側領域101および低電位側領域102を備え、これらの領域間を高耐圧接合終端領域(HVJT)103で電気的に分離した構成を有する。高電位側領域101は、その周囲をHVJT103で囲まれており、HVIC100の最高電位VBやハイサイド回路部(高電位側回路)104の基準電位VSが数百Vの高電位になったとしても、HVJT103により低電位側領域102と電気的に分離される。高電位側領域101は、略矩形状の平面レイアウトに配置したn型領域(第1半導体領域)2である。以降の説明においては、チップおもて面に平行な方向に、n型領域2側を内側とし、n型領域2に対して反対側を外側とする。
n型領域2は、HVIC100のVB端子に電気的に接続されている。n型領域2には、例えば、後述するハイサイド回路部104やレベルシフト抵抗106(図2〜4参照)などが配置される。ハイサイド回路部104は、HVIC100の最高電位(ハイサイド電源電位)VBを電源電位とし、基準電位VSで動作し、後述するローサイド回路部(低電位側回路)105(図2,3参照)からの信号に基づいてHVIC100のOUT端子から出力される信号を生成する例えばCMOS(Complementary MOS:相補型MOS)回路である。ハイサイド回路部104の基準電位VSは、上アームのIGBT301と下アームのIGBT302との接続点303の電位である。
HVJT103は、p型分離領域(第3半導体領域)4とn-型領域(第2半導体領域)3の間のpn接合で形成される寄生ダイオード108(図2〜4参照)で構成される。n-型領域3は、n型領域2の周囲を囲む略環状の平面レイアウトに配置されている。p型分離領域4は、n-型領域3の周囲を囲む略環状の平面レイアウトに配置されている。図1では、n-型領域3とp型分離領域4との境界を図示省略する。HVJT103の一部(以下、HVNMOS領域とする)103bには、後述するnチャネル型MOSFET(HVNMOS)107(図2〜4参照)が配置されている。符号103aは、HVJT103のHVNMOS領域103b以外の部分(以下、HVJT領域とする)である。
低電位側領域102は、p-型の半導体基板1の、p型分離領域4よりも外側の部分である。低電位側領域102に配置されたn型領域(第10半導体領域)6は、HVIC100のVCC端子に電気的に接続されている。n型領域6には、例えば、ローサイド回路部105が配置される。ローサイド回路部105は、電源電位VCCが供給され、接地電位(最低電位)GNDを基準電位として動作するCMOS回路である。電源電位VCCと接地電位GNDとの差は例えば15Vである。p型分離領域4とn型領域6との間には、例えば略直線状の平面レイアウトにp型領域(第4半導体領域)5が配置されている。p型領域(GNDピックアップ領域)5は、HVIC100のGND端子に電気的に接続されている。
GNDピックアップ領域5は、負電圧サージ発生時に後述する第1,2電流経路141,142を流れる電流のローサイド回路部105への流れ込みを防止する機能を有する。p型分離領域4とGNDピックアップ領域5との間には、n-型領域(第8半導体領域)8が配置されている。p型分離領域4とGNDピックアップ領域5との間の寄生抵抗が確保されていれば、低電位側領域102の、p型分離領域4とGNDピックアップ領域5との間以外の部分にn-型領域8が配置されていてもよい。このn-型領域8を用いて後述するダイオード109が構成される。図1では、n型領域6およびn-型領域8の輪郭線を図示省略する。HVIC100のVB端子およびGND端子は、それぞれ、HVIC100の最高電位VB、および、HVIC100の最低電位である接地電位GNDに接続されている。HVIC100のVS端子およびVCC端子は、それぞれ、ハイサイド回路部104の基準電位VSおよびローサイド回路部105の電源電位VCCに接続されている。
HVIC100の最高電位VBは、ノイズの影響を受けない通常状態では、ブートストラップコンデンサ等によりハイサイド回路部104の基準電位VSよりも例えば15V程度高電位に保たれている。図10に示すように、IGBT301がオン状態でIGBT302がオフ状態の時に最高電位VBが最も高い電位になる。IGBT301がオフ状態でIGBT302がオン状態の時に最高電位VBは15V程度となる。HVIC100のOUT端子は、上アームのIGBT301のゲートに接続され、上アームのIGBT301にゲート信号を供給する。HVIC100のIN端子は、HVIC100を制御するための例えばマイコンなどの制御回路134に接続されている。HVIC100は、制御回路134から制御信号の入力を受けて、上アームのIGBT301のゲート信号を生成する。上アームのIGBT301は、HVIC100からのゲート信号によりオン・オフ制御される。
次に、実施の形態1にかかるHVIC100の断面構造について説明する。図2Aは、図1の切断線A−A’における断面構造を示す断面図である。図2Bは、図1の切断線A−A’における断面構造の別の一例を示す断面図である。図3は、図1の切断線B−B’における断面構造を示す断面図である。図2A,2Bには、レベルシフタとして機能する高耐圧のHVNMOS107の構造の概略を示す。図3には、HVJT103の構造の概略を示す。図4は、図2,3の等価回路を示す回路図である。p-型の半導体基板1のおもて面の表面層には、上述したように所定の配置で、n型領域2、n-型領域3、p型分離領域4、GNDピックアップ領域5、n型領域6およびn-型領域8がそれぞれ選択的に設けられている。
n型領域2の内部には、p型領域21が選択的に設けられている。p型領域21の内部には、p+型コンタクト領域22が設けられている。p+型コンタクト領域22は、コンタクト電極23を介してHVIC100のVS端子に電気的に接続されている。また、n型領域2の内部には、p型領域21と離してn+型コンタクト領域24が選択的に設けられている。n+型コンタクト領域24は、コンタクト電極25を介してHVIC100のVB端子に電気的に接続されている。n型領域2には、例えばハイサイド回路部104(CMOS回路)を構成する横型nチャネル型MOSFET(不図示)が配置される。
p型領域21には、例えばハイサイド回路部104を構成する横型pチャネル型MOSFET(不図示)が配置される。n-型領域3は、n型領域2よりも外側に配置され、n型領域2に接する。n-型領域3の深さは、n型領域2よりも浅くてもよい。p型分離領域4は、n-型領域3よりも外側に配置され、n-型領域3に接する。p型分離領域4の深さは、n-型領域3の深さよりも深い。p型分離領域4とn-型領域3とのpn接合で寄生ダイオード108が形成されている。p型分離領域4の内部には、p+型コンタクト領域41が選択的に設けられている。
p+型コンタクト領域41は、n-型領域3と離して、n-型領域3の周囲を囲む略環状の平面レイアウトに配置されている。コンタクト電極42は、p+型コンタクト領域41に接する。n-型領域3およびp型分離領域4の一部(HVNMOS領域103b)には、HVNMOS107が配置されている。HVNMOS107は、n-型領域3をドリフト領域とし、p型分離領域4をベース領域とする横型MOSFETである。HVNMOS107は、HVNMOS領域103bにおいてn-型領域3を深さ方向に貫通するp型分離領域(分離半導体領域)7によりハイサイド回路部104と電気的に分離されている。
具体的には、HVNMOS107は、n-型領域3、n+型ドレイン領域(第7半導体領域)31、ドレイン電極32、p型分離領域4、p+型コンタクト領域41、コンタクト電極42、n+型ソース領域(第5半導体領域)43、ソース電極44、ゲート絶縁膜46およびゲート電極45を備える。n+型ドレイン領域31は、HVNMOS領域103bにおいて、n-型領域3の内部に選択的に設けられている。また、n+型ドレイン領域31は、p型分離領域7よりも外側に、p型分離領域7と離して配置されている。ドレイン電極32は、n+型ドレイン領域31に接し、かつレベルシフト抵抗106を介してHVIC100のVB端子に電気的に接続されている。
p+型コンタクト領域41およびコンタクト電極42は、HVNMOS領域103bにおいて、それぞれHVNMOS107のベースコンタクト領域およびベースピックアップ電極として機能する。n+型ソース領域43は、p型分離領域4の内部に選択的に設けられている。n+型ソース領域43は、p+型コンタクト領域41よりも内側に配置され、p+型コンタクト領域41に接する。n+型ソース領域43とp+型コンタクト領域41とを短絡(ショート)させることで、バックゲート(p型分離領域4)の電位VSUBがHVNMOS107のソース電位よりも持ち上がりにくくなる。このため、n+型ソース領域43、p型分離領域4およびn-型領域3からなる寄生npnバイポーラトランジスタの動作を抑制することができる。
ソース電極44は、n+型ソース領域43に接する。ソース電極44およびベースピックアップ電極(コンタクト電極42)は電気的に接続されている。ゲート電極45は、p型分離領域4の、n+型ソース領域43とn-型領域3とに挟まれた部分の表面上にゲート絶縁膜46を介して設けられている。ゲート電極45には、HVNMOS107をゲート駆動するための制御回路134が接続されている。p型分離領域7は、n+型ドレイン領域31とハイサイド回路部104(n+型コンタクト領域24)との間を電気的に分離する機能を有する。よって、p型分離領域7は、n+型ドレイン領域31とハイサイド回路部104(n+型コンタクト領域24)との間に配置されていればよく、基板裏面側のp-型領域10につながるようにn型領域2またはn-型領域3に設けられている。基板裏面側のp-型領域10とは、p-型の半導体基板1の、n型領域2,6、n-型領域3,8、p型分離領域4,7およびGNDピックアップ領域5よりも基板おもて面から深い部分に、これらの領域が形成されないことでp型領域として残っている部分である。n+型ドレイン領域31とハイサイド回路部104(n+型コンタクト領域24)との距離を長く形成して十分電気的に分離することができる場合には、p型分離領域7を形成しなくてもよい。
また、p型分離領域7は、n型領域2の周囲を囲むようにHVJT領域103aからHVNMOS領域103bにわたって平面形状が環状になるように配置されていてもよいし、HVNMOS領域103bのみに設けられていてもよい。さらに、p型分離領域7は、その両端がp型分離領域4に接してHVNMOS領域103bを囲むように設けられてもよい。また、図2Bのように、p-型分離領域7は、基板裏面側のp型領域10から基板おもて面に露出するようにスリット状に残るp-型の半導体基板1の一部であってもよい。図2Bでは、基板おもて面に露出するp-型分離領域7となるスリット状のp型の半導体基板1の一部をn-型領域3の一部に配置しているが、n型領域2とn-型領域3との間に配置してもよいし、n型領域2の一部に配置してもよい。符号108a,108bは、それぞれ、HVJT領域103aの寄生ダイオード108、および、HVNMOS領域103bの寄生ダイオード108である。図2Bの符号9a,9bは、それぞれ、LOCOS(Local Oxidation of Silicon:局所酸化)膜および層間絶縁膜である。
n型領域6は、p型分離領域4よりも外側に、p型分離領域4と離して配置されている。n型領域6の内部には、p型領域61が選択的に設けられている。p型領域61の内部には、p+型コンタクト領域62が設けられている。p+型コンタクト領域62は、コンタクト電極63を介してHVIC100のGND端子に電気的に接続されている。また、n型領域6の内部には、p型領域61と離してn+型コンタクト領域64が選択的に設けられている。n+型コンタクト領域64は、コンタクト電極65を介してHVIC100のVCC端子に電気的に接続されている。n型領域6には、ローサイド回路部105(CMOS回路)を構成する横型nチャネル型MOSFET(不図示)が配置される。p型領域61には、ローサイド回路部105を構成する横型pチャネル型MOSFET(不図示)が配置される。
GNDピックアップ領域5は、p型分離領域4とn型領域6との間に、p型分離領域4およびn型領域6と離して選択的に設けられている。GNDピックアップ領域5の深さは、p型分離領域4の深さと同程度であってもよい。GNDピックアップ領域5の内部には、p+型コンタクト領域51が選択的に設けられている。p+型コンタクト領域51は、コンタクト電極(以下、GNDピックアップ電極とする)52を介してHVIC100のGND端子に電気的に接続されている。
n-型領域8は、p型分離領域4とGNDピックアップ領域5との間に選択的に設けられている。n-型領域8は、p型分離領域4と離して、かつGNDピックアップ領域5に接して配置されている。n-型領域8の深さは、p型分離領域4およびGNDピックアップ領域5の深さと同程度であってもよい。n-型領域8の内部には、p+型アノード領域(第9半導体領域)81およびn+型カソードコンタクト領域82がそれぞれ選択的に設けられている。p+型アノード領域81とn-型領域(カソード領域)8との間のpn接合でダイオード109が形成されている。
アノード電極83は、p+型アノード領域81に接する。また、アノード電極83は、HVJT領域103aにおいて、第2配線132を介してp型分離領域4のコンタクト電極42に接続されている。かつ、アノード電極83は、HVNMOS領域103bにおいて、第1配線131を介してHVNMOS107のソース電極44およびベースピックアップ電極(コンタクト電極42)に電気的に接続されている。カソード電極84は、n+型カソードコンタクト領域82に接する。また、カソード電極84は、HVIC100のGND端子に電気的に接続されている。
すなわち、ダイオード109は、HVJT103の寄生ダイオード108(108a,108b)に逆接続されている。かつ、ダイオード109は、p型分離領域4のコンタクト電極42とGND端子との間に配線接続されている。これによって、HVJT103の接地電位GND側(p型分離領域4)は、GND端子に直接接続されずに、ダイオード109を介してGND端子に電気的に接続される。HVNMOS107のn+型ソース領域43およびベース領域(p型分離領域4)は、GND端子に直接接続されずに、ダイオード109を介してGND端子に電気的に接続される。
このダイオード109は、HVIC100の通常動作時に順方向にバイアスされ、HVJT103のアノード領域、HVNMOS107のn+型ソース領域43およびベース領域の電位を固定(ダイオード109のpn接合面のビルトイン電圧程度)する。また、ダイオード109(以下、第1電流経路遮断用ダイオードとする)は、負電圧サージ発生時に逆方向にバイアスされ、第1,2配線131,132を経由してHVJT103の寄生ダイオード108を流れる電流の経路(後述する第1電流経路141)を遮断する機能を有する。
半導体基板1のおもて面は、各電極(コンタクト電極25,42,63,65、ドレイン電極32、ソース電極44、アノード電極83、カソード電極84およびGNDピックアップ電極52)とのコンタクトとなる部分を除いて絶縁層9で覆われている。絶縁層9は、例えば、LOCOS膜および層間絶縁膜を順に積層してなる積層膜であってもよい。半導体基板1のおもて面と絶縁層9との間に、HVNMOS107のゲート絶縁膜46が残っていてもよい。
p-型の半導体基板1の裏面には、半導体基板1を裏面から接地電位GNDに接続しない構成が施されている。好ましくは、半導体基板1の裏面全体にわたって、半導体基板1の裏面の電位VSUBがフローティング電位となっていることが好ましい。具体的には、例えば、半導体基板1の裏面全体を絶縁性接着剤で覆うことで半導体基板1の裏面の電位VSUBをフローティング電位にしてもよいし、半導体基板1の裏面全体が接触するリードフレームをフローティング電位にしてもよい。
仮に、半導体基板1の裏面全体を接地電位GNDに接続した場合、半導体基板1の裏面に平行(横方向)な後述する第2電流経路142の基板抵抗133よりも、半導体基板1の裏面に垂直(縦方向)な縦方向電流経路(不図示)の基板抵抗135(図4参照)が低くなる。これによって、第1電流経路遮断用ダイオード109付近の第2電流経路142よりも、ハイサイド回路部104付近の縦方向電流経路に電流が流れやすくなり、HVIC100の負電圧サージ耐量が低減されるため、好ましくない。
基板抵抗133,135とは、基板裏面側のp-型領域10による抵抗である。縦方向電流経路とは、n型領域2またはn-型領域3と基板裏面側のp-型領域10との間のpn接合で形成される寄生ダイオード136(図4参照)のオン時に、n型領域2またはn-型領域3から基板裏面側のp-型領域10へ向う方向に流れる電流の経路である。
上述したHVIC100の各構成要素は、同一の半導体基板1に一般的なCMOS製造プロセスにより形成すればよい。HVIC100の各構成要素とは、HVJT103、ハイサイド回路部104、ローサイド回路部105、レベルシフト抵抗106、HVNMOS107およびダイオード109などCMOS製造プロセスにより製造される能動素子および受動素子である。
次に、実施の形態1にかかるHVIC100の負電圧サージ発生時の動作について、図2〜4を参照しながら説明する。ハイサイド回路部104の基準電位VSが接地電位GNDよりも低電位になり、HVIC100のVS端子に印加される負電圧(負電圧サージ)の絶対値が大きい場合に、HVJT103の寄生ダイオード108がオン(順方向に通電)する。このとき、第1電流経路遮断用ダイオード109が逆方向にバイアスされ、GND端子から第1,2配線(金属配線)131,132を経由してp型分離領域4へ向う電流経路(第1電流経路)141が遮断される。
第1電流経路141が遮断されることで、HVJT103の寄生ダイオード108を流れる電流の経路は、GND端子からGNDピックアップ領域5および基板裏面側のp-型領域10を経由してp型分離領域4へ向う経路(第2電流経路)142のみとなる。第2電流経路142は、基板抵抗133を経由する経路であるため、第1電流経路141に比べて高抵抗である。この高抵抗の基板抵抗133によってHVJT103の寄生ダイオード108を流れる電流が小さくなる。このため、ハイサイド回路部104に流れ込む電流が小さくなり、ハイサイド回路部104の誤作動や破壊が抑制される。
なお、縦方向電流経路に電流を流す寄生ダイオード136には、基板抵抗135が直列に接続されているため、HVJT103の寄生ダイオード108よりも負電圧サージの悪影響が小さい。
(本発明の構成に至った経緯)
次に、実施の形態1にかかるHVIC100の負電圧サージ耐量について検証する。負電圧サージによりHVJTの寄生ダイオードがオンしたときに、ハイサイド回路部の誤動作や破壊を低減するには、HVJTの寄生ダイオードを流れる電流を低減することが挙げられる。例えば、従来のHVIC200(図18〜20参照)において第1電流経路251の抵抗値を高くするには、GND端子とp型分離領域214とを電気的に接続する低抵抗の金属配線(第1,2配線231,232)を配置しない構成とすればよい。この第1,2配線231,232を配置しない構成のHVIC260(以下、第1比較例とする)を図5〜7に示す。図5は、第1比較例のHVNMOSの構造の概略を示す断面図である。図6は、第1比較例のHVJTの構造の概略を示す断面図である。図7は、図5,6の等価回路を示す回路図である。
図5〜7に示すように、第1比較例では、p型分離領域214とGND端子とが金属配線で接続されない。このため、HVJT領域203aにおけるp型分離領域214に、p+型コンタクト領域224およびコンタクト電極225は配置されていない。なお、HVNMOS207のベースコンタクト領域およびベースピックアップ電極(HVNMOS領域203bにおけるp+型コンタクト領域224およびコンタクト電極225)は配置されるが、GND端子との金属配線接続はされない。HVNMOS207のベースコンタクト領域はn+型ソース領域241と短絡させて、上述したように寄生npnバイポーラトランジスタ動作を抑制している。図7の符号261は、HVNMOS207のバックゲート(p型分離領域214)と、HVJT領域203aの寄生ダイオード108aのアノード領域(p型分離領域214)と、が拡散領域(p型分離領域214)で接続されることで生じる拡散抵抗である(図9においても同様)。
このような第1比較例では、従来のHVIC200において負電圧サージ発生時に形成される第1,2電流経路251,252のうち、金属配線を経由する第1電流経路251は形成されない。図5,6には、第1電流経路251が形成されないことを×印で示す。したがって、負電圧サージ発生時にHVJT203の寄生ダイオード208を流れる電流は、基板抵抗233を経由する第2電流経路252のみを通り、高抵抗の基板抵抗233によって減少する。しかしながら、HVNMOS207のn+型ソース領域241をGND端子に接続していないため、第1比較例の通常動作時におけるHVNMOS207の飽和ドレイン電流Isatが小さくなるという新たな問題(以下、第1の問題とする)が発生する。HVNMOS207の飽和ドレイン電流Isatが小さい場合、上アームのIGBT301への信号伝達時間の遅延が発生したり、上アームのIGBT301がオンしなくなったりする虞がある。
第1比較例の負電圧サージ耐量と飽和ドレイン電流Isatとの関係を図8に示す。図8は、第1比較例の負電圧サージ耐量と飽和ドレイン電流との関係を示す特性図である。図8の横軸は第2電流経路252の基板抵抗233の抵抗値であり、縦軸は負電圧サージ耐量および飽和ドレイン電流Isatである。第2電流経路252の基板抵抗233は、例えば、HVNMOS207のn+型ソース領域241からGNDピックアップ領域215までの長さを長くするなどにより高くすることができる。図8に示すように、第2電流経路252の基板抵抗233の抵抗値を高くするほど、負電圧サージ耐圧を向上させることができるが(符号271で示す直線)、HVNMOS207の飽和ドレイン電流Isatは小さくなることがわかる(符号272で示す直線)。
第1の問題を解消するには、従来のHVIC200(図18〜20参照)において、第1配線231を残してHVNMOS207のn+型ソース領域241とGND端子とを電気的に接続し、第2配線232のみを配置しない構成とすればよい。この第1配線231を残し、かつ第2配線232を配置しない構成のHVIC280(以下、第2比較例とする)を図9に示す。図9は、第2比較例の回路構成を示す回路図である。第2比較例のHVJT領域203a付近の断面構造は、第1比較例と同様である(図6参照)。第2比較例のHVNMOS領域203b付近の断面構造は、従来のHVIC200と同様である(図18参照)。図9,6,18に示すように、第2比較例では、HVNMOS207のn+型ソース領域241およびベースコンタクト領域は、第1配線231を介してGND端子と電気的に接続されている。
HVJT領域203aにおけるp型分離領域214には、第1比較例と同様にp+型コンタクト領域224およびコンタクト電極225は配置されておらず、HVJT領域203aにおけるp型分離領域214とGND端子とは金属配線接続されていない。したがって、負電圧サージ発生時に寄生ダイオード208aを流れる電流281aは、高電位側領域201の周囲を囲むHVJT203の大部分を占めるHVJT領域203aで第2電流経路252を通り、高抵抗の基板抵抗233によって減少する。しかしながら、負電圧サージ発生時に、HVNMOS207のソース配線である第1配線231に流れる電流が増大し、第1配線231が破壊に至るという新たな問題(以下、第2の問題とする)が生じる。第2の問題が生じる理由は、次の通りである。
負電圧サージ発生時にHVJT領域203aの寄生ダイオード208aを流れる電流281は、HVNMOS領域203bから離れた部分では基板抵抗233を通る(符号281aで示す破線)。しかしながら、HVJT領域203aとHVNMOS領域203bとの境界付近では、負電圧サージ発生時にHVJT領域203aの寄生ダイオード208aを流れる電流281は基板抵抗233よりも低抵抗な第1配線231を通る。このため、負電圧サージ発生時、第1配線231には、HVNMOS領域203bの寄生ダイオード208bを流れる電流282に加えて、HVJT領域203aの寄生ダイオード208aを流れる電流281の一部281bも流れてしまうからである(図9参照)。
この第2の問題を解消するには、第1配線231の直径を太くして高抵抗化する必要があり、チップサイズの増大につながる。また、第2比較例では、HVNMOS領域203bの寄生ダイオード208bを流れる電流282,281bは、上述したように第1配線231を経由する第1電流経路251を通るため、低減させることができない。したがって、誤動作しやすい回路をHVNMOS207から離して配置する必要があり、レイアウト上の制約が生じる。
本発明は、このような知見と理論考察に基づいて見出したものであり、上記第1,2の問題を生じさせることなく、負電圧サージ発生時にHVJT103の寄生ダイオード108を流れる電流を低減させることができる。具体的には、本発明においては、HVNMOS107のn+型ソース領域43とGNDピックアップ領域5との間に配置した第1電流経路遮断用ダイオード109により、負電圧サージ発生時に第1配線131を経由する第1電流経路141が遮断される(図2参照)。かつ、HVJT領域103aにおいてp型分離領域4とGNDピックアップ領域5との間にも第1電流経路遮断用ダイオード109が配置され、負電圧サージ発生時に第2配線132を経由する第1電流経路141が遮断される(図3参照)。これによって、負電圧サージ発生時に寄生ダイオード108を流れる電流の経路が基板抵抗133を経由する第2電流経路142のみに切り替えられる。このため、負電圧サージ発生時に寄生ダイオード108を流れる電流を基板抵抗133によって低減させることができる。
また、本発明においては、HVNMOS107のn+型ソース領域43とGND端子とが第1電流経路遮断用ダイオード109を介して電気的に接続されているため、上記第1の問題が生じることを抑制することができる。HVIC100の通常動作時、第1電流経路遮断用ダイオード109のオン電圧(約0.6V)が発生し、HVNMOS107の飽和ドレイン電流Isatが若干小さくなるが、上記第1の問題のように飽和ドレイン電流が大幅に小さくなることはない。また、HVNMOS107のn+型ソース領域43とGND端子との間に第1電流経路遮断用ダイオード109が配置されることで、負電圧サージ発生時にHVNMOS領域103bの寄生ダイオード108bを流れる電流も基板抵抗133を経由する。これにより、HVNMOS107のソース配線である第1配線131への電流集中は生じないため、上記第2の問題も生じない。
以上、説明したように、実施の形態1によれば、HVJTの寄生ダイオードに逆接続されたダイオードを介してHVJTのp型分離領域とGND端子とを配線接続することで、負電圧サージ発生時にHVJTのp型分離領域とGND端子との間の低抵抗な配線を経由する第1電流経路を遮断することができる。これにより、負電圧サージ発生時にHVJTの寄生ダイオードを流れる電流の経路が高抵抗な基板抵抗を経由する第2電流経路のみとなる。この高抵抗な基板抵抗により、負電圧サージ発生時にHVJTの寄生ダイオードを流れる電流が小さくなるため、ハイサイド回路部に流れ込む電流を低減させることができる。これによって、ハイサイド回路部の誤動作や破壊を抑制することができ、HVICの負電圧サージ耐量を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、第1電流経路遮断用ダイオード(HVJTの寄生ダイオードに逆接続されたダイオード)を介してHVJTの接地電位側およびHVNMOSのソースがGND端子に電気的に接続される。このため、HVJTおよびHVNMOSともに負電圧サージ耐量を向上させることができる。また、実施の形態1によれば、SOI基板を用いないため、HVICを安価に作製(製造)可能である。また、SOI基板を用いて1200Vクラス以上の高耐圧集積回路装置を作製する場合、SOI基板を構成する絶縁層の厚さを厚くする必要があるため、SOI基板の形成時間が増大しかつ反りが大きくなり高耐圧集積回路装置の作製が困難であるが、実施の形態1によれば、SOI基板を用いないため、1200Vクラス以上の高耐圧化も可能である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる高耐圧集積回路装置の構造について説明する。図11は、実施の形態2にかかる高耐圧集積回路装置の構造を示す断面図である。実施の形態2は、実施の形態1の変形例である。図11には、図1の切断線A−A’における断面構造のHVNMOS107付近を示す。実施の形態2にかかる高耐圧集積回路装置が実施の形態1にかかる高耐圧集積回路装置と異なる点は、半導体基板1として、p型支持基板120の上にn-型半導体層(以下、n-型エピ層とする)123をエピタキシャル成長させてなるエピタキシャル基板を用いている点である。
具体的には、図11に示すように、p型支持基板120のおもて面上にn-型エピ層123が設けられている。ハイサイド回路部104を配置するn型拡散領域122は、n-型エピ層123の、p型支持基板120側に対して反対側の表面層に選択的に設けられている。n型拡散領域122は、深さ方向にn-型エピ層123を貫通してp型支持基板120に達する深さで設けられていることが好ましい。p型支持基板120とn-型エピ層123との界面において、p型支持基板120とn型拡散領域122との間に、n型拡散領域122に接するようにn+型埋め込み層121が設けられていてもよい。すなわち、ハイサイド回路部104を配置するn型拡散領域を、n+型埋め込み層121とn型拡散領域122との2層構造としてもよい。
p-型分離領域(分離半導体領域)124は、n-型エピ層123を深さ方向に貫通してp型支持基板120に達する。n-型エピ層123の、p-型分離領域124よりも外側の部分にHVNMOS107が配置され、p-型分離領域124によりハイサイド回路部104とHVNMOS107とが電気的に分離されている。第2p-型分離領域4は、p-型分離領域124よりも外側において深さ方向にn-型エピ層123を貫通してp型支持基板120に達する。第2p-型分離領域4とn-型エピ層123との間のpn接合でHVJT103の寄生ダイオード108が形成される。第2p-型分離領域4は、例えばp-型分離領域124と同一のイオン注入工程で形成されてもよい。
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる高耐圧集積回路装置の構造について説明する。図12は、実施の形態3にかかる高耐圧集積回路装置の構造を示す断面図である。実施の形態3は、実施の形態1の変形例である。図12には、図1の切断線A−A’における断面構造のHVNMOS107付近を示す。実施の形態3にかかる高耐圧集積回路装置が実施の形態1にかかる高耐圧集積回路装置と異なる点は、半導体基板1として、p型支持基板120の上にp-型半導体層(以下、p-型エピ層とする)154をエピタキシャル成長させてなるエピタキシャル基板を用いている点である。
具体的には、図12に示すように、p型支持基板120のおもて面上にp-型エピ層154が設けられている。ハイサイド回路部104を配置するn型拡散領域122は、p-型エピ層154の、p型支持基板120側に対して反対側の表面層に選択的に設けられている。n型拡散領域122は、深さ方向にp-型エピ層154を貫通してp型支持基板120に達する深さで設けられていることが好ましい。p型支持基板120とp-型エピ層154との界面において、p型支持基板120とn型拡散領域122との間に、n型拡散領域122に接するようにn+型埋め込み層121が設けられていてもよい。すなわち、ハイサイド回路部104を配置するn型拡散領域を、n+型埋め込み層121とn型拡散領域122との2層構造としてもよい。
また、n-型拡散領域153は、深さ方向にp-型エピ層154を貫通してp型支持基板120に達する。n-型拡散領域153は、n型拡散領域122よりも外側に、かつn型拡散領域122と離して配置されている。p-型エピ層154の、n型拡散領域122とn-型拡散領域153とに挟まれた部分でp-型分離領域(分離半導体領域)154aが構成される。p-型分離領域154aは、半導体基板1のおもて面に露出され、かつp型支持基板120に接して配置されている。n-型拡散領域153、およびp-型エピ層154の、n-型拡散領域153よりも外側の部分にHVNMOS107が配置され、p-型分離領域154aによりハイサイド回路部104とHVNMOS107とが電気的に分離されている。
p-型分離領域154aは、n型拡散領域122の一部で基板おもて面に露出するスリット状に配置されていてもよいし、n-型拡散領域153の一部で基板おもて面に露出するスリット状に配置されていてもよい。また、p-型分離領域154aは、深さ方向にp-型エピ層154を貫通してp型支持基板120に達する拡散領域であってもよい。p-型エピ層154の、n-型拡散領域153よりも外側の部分で第2p-型分離領域154bが構成される。p-型エピ層154(第2p-型分離領域154b)とn-型拡散領域153との間のpn接合でHVJT103の寄生ダイオード108が形成される。第2p-型分離領域154bは、深さ方向にp-型エピ層154を貫通してp型支持基板120に達する拡散領域であってもよい。
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる高耐圧集積回路装置の構造について説明する。図13は、実施の形態4にかかる高耐圧集積回路装置の平面レイアウトを示す平面図である。図14は、図13の切断線C−C’における断面構造を示す断面図である。図15は、図13の切断線E−E’における断面構造を示す断面図である。実施の形態4にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、HVNMOS107を低電位側領域102に配置した点である。図13には、HVNMOS107の各半導体領域のうちn型オフセット領域163cおよびp-型領域162のみを点線で示す。
具体的には、高電位側領域101には、例えば、上アームのIGBT301のゲートドライバ、負荷抵抗165、VBパッドおよびOUTパッドなどが設けられている。VBパッドは、図10の補助直流電源E1の正極側に配線接続されている(不図示)。IGBT−GATEパッドは、図10のHVIC200のOUT端子に相当しIGBT301のゲートに配線接続されている(不図示)。OUTパッドは、図10のVOUT端子および補助直流電源E1の負極側に配線接続されている(不図示)。高電位側領域101の周囲は、n-型領域3およびp型分離領域4で構成されたHVJT103で囲まれている。
HVJT103のp型分離領域4は、p+型コンタクト領域41(図13〜15には不図示、図2A,3参照)を介してコンタクト電極42が接続されている。また、HVJT103のp型分離領域4は、コンタクト電極42および第1金属配線層171を介して、HVNMOS107のソース電極44に電気的に接続されている。コンタクト電極42は、第1金属配線層171を介してHVIC100のGND端子に接続され、接地電位GNDに固定されている。HVNMOS107は、低電位側領域102(p-型の半導体基板1の、p型分離領域4よりも外側の部分)に選択的に設けられたn-型領域163に配置されている。
n-型領域163は、例えば略円形状の平面形状を有する。図13には、2つのn-型領域163にそれぞれHVNMOS107を配置した場合を示す(図16,17Aにおいても同様)。n-型領域163の周囲を囲むリング状の平面レイアウトにp型分離領域164が配置されている。p型分離領域164は、第1金属配線層171を介してHVIC100のGND端子に電気的に接続されている。p型分離領域164は、HVNMOS107と他の素子とを分離する分離領域である。p型分離領域164は、HVJT103のp型分離領域4に接していてもよいし、p型分離領域4を延在させた部分で構成されていてもよい。
このn-型領域163をドリフト領域とし、p型分離領域164をベース領域としてHVNMOS107が構成され、実施の形態1と同様にHVNMOS107のMOSゲート構造を構成する各領域が設けられている。すなわち、HVNMOS107は、n-型領域163、n+型ドレイン領域31、ドレイン電極32、p型分離領域164、p+型コンタクト領域161、n+型ソース領域43、ソース電極44、ゲート絶縁膜46およびゲート電極45を備える。n-型領域163を深さ方向に貫通して基板裏面側のp-型領域10に達するp-型領域162を設けることで、n-型領域163が2つに分断されていてもよい(以下、n-型領域163a,163bとする)。
p-型領域162は、例えば、円形状の平面形状を有するn-型領域163の中心を通るようにp型分離領域164からp型分離領域164まで延在して、かつ、横方向(基板おもて面に平行な方向)においてp-型半導体基板1とも接して形成する。すなわち、p-型領域162は、円形状に設けられたHVNMOS107の例えば中心を通り、かつ一方向に長い直線状の平面形状を有し、その端部のみがp型分離領域164に接する(図13,15参照)。また、p-型領域162は、前記一方向に延在する直線状の他端を除き、p型分離領域164と離して配置されている(図14参照)。p型分離領域164は、n-型領域163の表面層に相対的に浅い深さで延在する。
p型分離領域164の、n-型領域163の表面層に延在する深さの浅い部分は、HVNMOS107のオン時にチャネル(n型の反転層)が形成されるp型ベース領域164aである。このp型ベース領域164aの内部に、p+型コンタクト領域161およびn+型ソース領域43がそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域43は、例えばn-型領域163aに設けられたp型ベース領域164aにのみ設けられている。また、n+型ソース領域43は、p-型領域162に接しないように設けられている(図13,14参照)。n+型ドレイン領域31は、n-型領域163aの表面層に選択的に設けられている。
n+型ドレイン領域31は、p型ベース領域164aおよびp-型領域162に接しないように設けられている。また、n+型ドレイン領域31は、n-型領域163aにのみ設けられている(図13,14参照)。n+型ドレイン領域31は、例えば円形状の平面形状を有する。n型オフセット領域163cは、n+型ドレイン領域31を囲み、かつn+型ドレイン領域31の下側(基板裏面側のp-型領域10側)を覆う。また、n型オフセット領域163cは、n-型領域163bに接しないように設けられている。すなわち、n型オフセット領域163cは、n-型領域163aにのみ設けられている(図13,14参照)。
ゲート電極45は、p型ベース領域164aの、n+型ソース領域43とn-型領域163aとに挟まれた部分の表面上にゲート絶縁膜46を介して設けられている。また、ゲート電極45は、n+型ソース領域43とn+型ドレイン領域31との間でn-型領域163aを覆うLOCOS膜9a上に延在する。ドレイン電極32は、n+型ドレイン領域31と接続される。また、ドレイン電極32は、例えばボンディングワイヤ166により高電圧(HV)配線に接続される。ソース電極44は、p+型コンタクト領域161およびn+型ソース領域43に接続される。また、ソース電極44は、第1金属配線層171を介してHVJT103のコンタクト電極42に電気的に接続されている。符号9cは、パッシベーション膜である。
p型分離領域164とローサイド回路部105(低電位側領域102のn型領域6)との間には、GNDピックアップ領域5が配置されている。また、低電位側領域102には、実施の形態1と同様に、n-型領域8、p+型アノード領域81(図13〜15には不図示)、n+型カソードコンタクト領域82(図13〜15には不図示)、アノード電極83およびカソード電極84からなるダイオード109が配置されている(図16,17Aにおいても同様)。ダイオード109は、GNDピックアップ領域5とHVJT103のp型分離領域4との間、および、GNDピックアップ領域5とHVNMOS107のp型分離領域164との間に、実施の形態1と同様に配置される。
アノード電極83は、第2金属配線層172を介してHVNMOS107のソース電極44に電気的に接続されている。第2金属配線層172は、図4の第1配線131に相当する。ソース電極44を介して電気的に接続された第1,2金属配線層171,172が、図4の第2配線132に相当する。カソード電極84は、第3金属配線層173を介して接地電位GNDのGNDピックアップ電極52に電気的に接続されている。第1〜3金属配線層171〜173は、例えば層間絶縁膜9b上に設けられ、対応する各電極同士を接続可能な所定の平面レイアウトに延在している。
以上、説明したように、実施の形態4によれば、HVNMOSを低電位側領域に配置した場合においても、HVJTの寄生ダイオードに逆接続されたダイオードを介してHVJTのp型分離領域とGND端子とを配線接続することで実施の形態1〜3と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる高耐圧集積回路装置の構造について説明する。図16Aは、実施の形態5にかかる高耐圧集積回路装置の平面レイアウトを示す平面図である。図16Bは、図16Aの等価回路を示す回路図である。図16Aの切断線C−C’および切断線E−E’における断面構造は、それぞれ図14および図15と同様である。実施の形態5にかかる高耐圧集積回路装置が実施の形態4にかかる高耐圧集積回路装置と異なる点は、HVJT103のp型分離領域4とGNDピックアップ領域5との間にのみダイオード109(n-型領域8)を配置した点である。すなわち、ダイオード109は、GNDピックアップ領域5とHVNMOS107のp型分離領域164との間には設けられていない。
具体的には、図16Aに示すように、ダイオード109のアノード電極83は、第4金属配線層174を介してHVJT103のコンタクト電極42にのみ電気的に接続され、低電位側領域102に配置したHVNMOS107のソース電極44には接続されない。符号175は、2つのHVNMOS107のソース電極44同士を共通電位点COM(例えば接地電位GND)の電極パッド176に電気的に接続する第5金属配線層である。第4,5金属配線層174,175は、例えば層間絶縁膜9b上に設けられ、対応する各電極同士を接続可能な所定の平面レイアウトに延在している。
このように、HVJT103のコンタクト電極42とHVNMOS107のソース電極44とを接続しないことで、実施の形態5にかかる高耐圧集積回路装置は、HVNMOS107のソース電極44に図4の第2配線132を接続しない構成と等価な構成となっている(図16B)。これによって、上述した第2比較例で負電圧サージ発生時にHVJT103の寄生ダイオード208aを流れる電流281の一部218b(図9参照)がHVNMOS107に流れ込むことを防止することができる。
以上、説明したように、実施の形態5によれば、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6にかかる高耐圧集積回路装置の構造について説明する。図17Aは、実施の形態6にかかる高耐圧集積回路装置の平面レイアウトを示す平面図である。図17Bは、図17Aの等価回路を示す回路図である。図17Aの切断線C−C’および切断線E−E’における断面構造は、それぞれ図14および図15と同様である。実施の形態6にかかる高耐圧集積回路装置が実施の形態4にかかる高耐圧集積回路装置と異なる点は、GNDピックアップ領域5とHVNMOS107のp型分離領域164との間のみダイオード109(n-型領域8)を配置した点である。すなわち、ダイオード109は、HVJT103のp型分離領域4とGNDピックアップ領域5との間に設けられていない。
具体的には、図17Aに示すように、HVJT103のコンタクト電極42とHVNMOS107のソース電極44とを接続する金属配線層(図13の符号171に相当)が設けられていない。これによって、実施の形態6にかかる高耐圧集積回路装置は、図4の第2配線132を設けない構成と等価な構成となっている(図17B)。このため、上述した第2比較例で負電圧サージ発生時にHVJT103の寄生ダイオード208aを流れる電流281の一部218b(図9参照)がHVNMOS107に流れ込むことを防止することができる。かつHVNMOS107に逆接続されたダイオード109により、実施の形態1と同様に、上述した第2比較例でHVNMOS領域203bの寄生ダイオード208bを流れる電流282を小さくすることができる。
以上、説明したように、実施の形態6によれば、実施の形態1〜5と同様の効果を得ることができる。
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、拡散領域を用いて第1電流経路遮断用ダイオードを構成した場合を例に説明しているが、p-型半導体基板上に堆積したポリシリコン(Poly−Si)層を用いたダイオードや、ショットキーダイオードを第1電流経路遮断用ダイオードとした場合においても同様の効果を奏する。