JP2017112184A - プリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的安価で時間経過によるベースフィルムと金属層との密着性の低下が比較的小さいプリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様のプリント配線板用基板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層とを備えるプリント配線板用基板であって、ベースフィルムにおける金属層との界面から厚さ方向に1μmの表層領域にコバルト原子を含有し、このコバルト原子の含有率が1atomic%以上15atomic%以下である。本発明の別の態様のプリント配線板用基板の製造方法は、ベースフィルムの少なくとも一方の面をアルカリ処理する工程と、アルカリ処理工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面にコバルトイオン含有水溶液を接触させる工程と、接触工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面に金属層を積層する工程とを備える。【選択図】図3

Description

本発明は、プリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法に関する。
例えば樹脂等で形成される絶縁性のベースフィルムの少なくとも一方の面に、例えば金属等で形成される金属層が積層され、この金属層をエッチングすることで導電パターンを形成してプリント配線板を得るためのプリント配線板用基板が広く使用されている。
このようなプリント配線板用基板を使用して形成したプリント配線板に曲げ応力が作用した際に、ベースフィルムから金属層が剥離しないよう、ベースフィルムと金属層との剥離強度が大きいプリント配線板用基板が求められている。
また、近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、プリント配線板の高密度化が要求されている。高密度化されたプリント配線板は、導電パターンの微細化に伴って導電パターンがベースフィルムから剥離し易くなる。そのため、このような高密度化の要求を満たすプリント配線板用基板として、微細な導電パターンが形成できると共に金属層及びベースフィルム間の密着性に優れたプリント配線板用基板が求められている。
このような要求に対し、ベースフィルムの少なくとも一方の面に、例えばスパッタリング法等を用いて銅薄膜層を形成し、その上に電気めっき法を用いて銅厚膜層を形成することで、金属層とベースフィルムとの間の密着力を大きくする技術が公知である。しかし、ベースフィルムに金属層を直接積層した場合、時間経過と共に、金属層の金属原子がベースフィルム中に拡散し、金属層とベースフィルムとの間の密着性を低下させることが知られている。
そこで、銅箔のベースフィルムに対する接合面にスパッタリングによってクロムの薄膜を蒸着し、ベースフィルムに対して熱圧着する技術が提案されている(特開2000−340911号公報参照)。このように、金属層とベースフィルムとの界面に金属層の主金属とは異なる種類の金属の薄膜を介在させることによって、金属層の主金属のベースフィルムへの移動を阻害し、金属層の金属原子のベースフィルムへの拡散による金属層とベースフィルムとの間の密着性の低下を抑制する効果が得られる。
特開2000−340911号公報
上記公報に記載される構成では、銅箔の一方の面にスパッタリング法を用いてクロムの薄膜を形成しているので、真空設備を必要とし、設備の建設、維持、運転等におけるコストが高くなる。また設備面において、基板のサイズを大きくすることに限界がある。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、比較的安価で時間経過によるベースフィルムと金属層との密着性の低下が比較的小さいプリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係るプリント配線板用基板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層とを備えるプリント配線板用基板であって、上記ベースフィルムにおける金属層との界面から厚さ方向に1μmの表層領域にコバルト原子を含有し、このコバルト原子の含有率が1atomic%以上15atomic%以下である。
また、上記課題を解決するためになされた本発明の別の態様に係るプリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層とを備えるプリント配線板用基板の製造方法であって、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面をアルカリ処理する工程と、上記アルカリ処理工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面にコバルトイオン含有水溶液を接触させる工程と、上記接触工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面に金属層を積層する工程とを備える。
本発明の一態様に係るプリント配線板用基板及び本発明の別の態様に係るプリント配線板用基板の製造方法によって得られるプリント配線板用基板は、比較的安価で時間経過によるベースフィルムと金属層との密着性の低下が比較的小さい。
図1は、本発明の一実施形態のプリント配線板用基板を示す模式的断面図である。 図2は、図1のプリント配線板用基板の詳細な模式的断面図である。 図3は、図1のプリント配線板用基板の製造方法の手順を示すフローチャートである。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るプリント配線板用基板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層とを備えるプリント配線板用基板であって、上記ベースフィルムにおける金属層との界面から厚さ方向に1μmの表層領域にコバルト原子を含有し、このコバルト原子の含有率が1atomic%以上15atomic%以下である。
当該プリント配線板用基板は、ベースフィルムにおける金属層との界面から厚さ方向に1μmまでの表層領域に、上記含有率範囲内のコバルト原子を含有するので、このコバルト原子が金属層の金属原子のベースフィルムへの拡散を抑制できる。ベースフィルムにコバルト原子を含有させる処理は、例えばベースフィルムへのコバルトイオン含有水溶液の接触等によって比較的容易に行うことができる。このため、当該プリント配線板用基板は、比較的安価でありながら、経時変化によるベースフィルムと金属層との密着性の低下が比較的小さい。
上記金属層が金属粒子の焼結体層を含むとよい。このように、上記金属層が金属粒子の焼結体層を含むことによって、比較的安価に金属層を形成できる。
上記金属層がめっき層を含むとよい。このように、上記金属層がめっき層を含むことによって、金属層を比較的緻密で導電性に優れるものとすることができる。
上記コバルト原子がベースフィルムを構成するポリマーに化学結合しているとよい。このように、上記コバルト原子がベースフィルムを構成するポリマーに化学結合していることによって、金属層の金属原子がベースフィルムを構成するポリマーの官能基と反応してポリマー中に取り込まれることを抑制できるので、金属層の金属原子がベースフィルム中に拡散することをより確実に防止して、ベースフィルムと金属層との密着性の低下をより確実に抑制できる。
本発明の別の態様に係るプリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層とを備えるプリント配線板用基板の製造方法であって、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面をアルカリ処理する工程と、上記アルカリ処理工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面にコバルトイオン含有水溶液を接触させる工程と、上記接触工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面に金属層を積層する工程とを備える。
当該プリント配線板用基板の製造方法は、アルカリ処理工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面にコバルトイオン含有水溶液を接触させる工程を備えるので、アルカリ処理によってベースフィルムを構成するポリマーに形成される比較的反応性に富んだ官能基と水溶液中のコバルトイオンとが反応してベースフィルムを構成するポリマーにコバルトが化学結合すると考えられる。これにより、ベースフィルムの表層領域にコバルト原子を含有させることができ、このコバルト原子によって金属層の金属原子がベースフィルム中に拡散することを抑制できる。このため、当該プリント配線板用基板の製造方法によって得られるプリント配線板用基板は、比較的安価でありながら、経時変化によるベースフィルムと金属層との密着性の低下が比較的小さい。
上記コバルトイオン含有水溶液が酢酸コバルト水溶液であるとよい。このように、上記コバルトイオン含有水溶液が酢酸コバルト水溶液であることによって、比較的効率よくベースフィルムの表層領域にコバルト原子を含有させることができるので、経時変化によるベースフィルムと金属層との密着性の低下をより効果的に抑制できる。
上記金属層積層工程が、ベースフィルムの少なくとも一方の面への金属粒子分散液の塗布及び加熱を行う工程を有するとよい。このように、上記金属層積層工程が、ベースフィルムの少なくとも一方の面への金属粒子分散液の塗布及び加熱を行う工程を有することによって、大規模な設備を必要とせず、比較的簡単かつ安価にベースフィルムの少なくとも一方の面に金属層を積層することができる。
ここで、「原子の含有率」とは、例えばX線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis又はXPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy又はEDS:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)、電子プローブマイクロアナリシス法(EPMA:Electron Probe Micro Analysis)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS:Time Of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)、オージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)等により測定することができる。X線光電子分光法による場合は、測定条件として、X線源をアルミニウム金属のKアルファ線、ビーム径を50μm、分析する面に対するX線入射角度を45°とし、断面を走査することによって測定することができる。測定装置としては、例えばULVAC−Phi社製の走査型X線光電子分光分析装置「Quantera」等を使うことができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係るプリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法の各実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
[プリント配線板用基板]
本発明の一実施形態のプリント配線板用基板は、図1に示すように、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の一方の面(表面)に積層される金属層2とを備える。
<ベースフィルム>
当該プリント配線板用基板のベースフィルム1は、金属層2との界面から厚さ方向に1μmの表層領域Aにコバルト原子を含有する。ベースフィルム1の表層領域Aに含有されるコバルト原子は、金属層2を構成する金属原子がベースフィルム1に拡散することを阻害する。また、ベースフィルム1の表層領域Aにコバルト原子を含有させる処理は比較的容易であるため、当該プリント配線板用基板は比較的安価に提供できる。従って、当該プリント配線板用基板は、比較的安価でありながら、経時変化によるベースフィルム1と金属層2との密着性の低下が比較的小さい。
この表層領域Aにおけるコバルト原子の含有率の下限としては、1atomic%であり、2atomic%が好ましく、5%がより好ましい。一方、表層領域Aにおけるコバルト原子の含有率の上限としては、15atomic%であり、13atomic%が好ましく、12%がより好ましい。表層領域Aにおけるコバルト原子の含有率が上記下限に満たない場合、金属層2の金属原子のベースフィルム1への拡散を十分に防止できず、経時変化によるベースフィルム1と金属層2との密着性の低下を十分に抑制できないおそれがある。逆に、表層領域Aにおけるコバルト原子の含有率が上記上限を超える場合、初期段階(当該プリント配線板用基板製造直後)におけるベースフィルム1と金属層2との密着性が不十分となるおそれがある。
ベースフィルム1の厚さは、当該プリント配線板用基板を利用するプリント配線板によって設定されるものであり特に限定されないが、例えばベースフィルム1の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。一方、ベースフィルム1の平均厚さの上限としては、2mmが好ましく、1.6mmがより好ましい。ベースフィルム1の平均厚さが上記下限に満たない場合、ベースフィルム1ひいては当該プリント配線板用基板の強度が不十分となるおそれがある。逆に、ベースフィルム1の平均厚さが上記上限を超える場合、プリント配線板用基板が不必要に厚くなるおそれがある。
ベースフィルム1の材質としては、例えばポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材などを用いることが可能である。これらの中でも、金属酸化物等との結合力が大きく、絶縁性及び機械的強度に優れることから、ポリイミドを主成分とするポリマーが特に好ましい。
このように、ベースフィルム1がポリマーによって構成される場合、上記コバルト原子は、ベースフィルム1を構成するポリマーに化学結合していることが好ましい。コバルト原子がベースフィルム1を構成するポリマーに化学結合していることによって、金属層2の金属原子がベースフィルム1を構成するポリマーの官能基と反応してポリマー中に取り込まれることを抑制できる。これにより、金属層2の金属原子がベースフィルム1中に拡散することをより確実に防止して、ベースフィルムと金属層との密着性の低下をより確実に抑制できる。
(ポリイミド)
ベースフィルム1の主成分とされるポリイミドとしては、熱硬化性ポリイミド(縮合型ポリイミドともいう)又は熱可塑性ポリイミドを用いることができる。この中でも、耐熱性、引張強度、引張弾性率等の観点から熱硬化性ポリイミドが好ましい。
上記ポリイミドは、1種の構造単位からなる単独重合体であっても2種以上の構造単位からなる共重合体であってもよいし、2種類以上の単独重合体をブレンドしたものであっても良いが、下記式(1)で表される構造単位を有するものが好ましい。
Figure 2017112184
上記式(1)で表される構造単位は、例えばピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを用いてポリイミド前駆体であるポリアミド酸を合成し、これを加熱等によりイミド化することで得られる。
上記構造単位の含有量の下限としては、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、18質量%がさらに好ましい。一方、上記構造単位の含有量の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましい。上記構造単位の含有量が上記下限に満たない場合、当該プリント配線板用基板ひいては当該プリント配線板用基板を用いて形成されるプリント配線板の強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記構造単位の含有量が上記上限を超える場合、当該プリント配線板用基板の可撓性が不十分となるおそれがある。
ポリイミドを主成分とするベースフィルム1は、少なくとも金属層2との界面が改質されて、ポリイミドのイミド環の一部が開環していることが好ましい。このような改質は、例えばアルカリ処理、プラズマ処理等の公知の処理方法によって行うことができる。
ベースフィルム1の金属層2との界面のイミド環の開環率の下限としては、3%が好ましく、15%がより好ましい。一方、ベースフィルム1の金属層2との界面のイミド環の開環率の上限としては、70%が好ましく、60%がより好ましい。ベースフィルム1の金属層2との界面のイミド環の開環率が上記下限に満たない場合、初期段階におけるベースフィルム1と金属層2との密着力が不十分となるおそれがある。逆に、ベースフィルム1の金属層2との界面のイミド環の開環率が上記上限を超える場合、ベースフィルム1の強度が不足し、基材破壊による金属層2の剥離が生じやすくなるおそれがある。
なお、ベースフィルム1と金属層2との界面のイミド環の開環率は、例えば赤外吸収分析(infrared absorption spectrometry)により得られる吸収強度スペクトルにおけるイミド環を示すピーク強度から算出することができる。より詳しくは、ダイヤモンドプリズムを用いた1回反射ATR(Attenuated Total Reflection)測定装置を用いた赤外全反射吸収測定法により、ベースフィルム1と金属層2との界面のイミド環の開環率を測定することができる。
赤外全反射吸収測定法による入射角45°での吸収強度スペクトルにおいて、波数1494cm−1のピーク強度は、ベンゼン環の数を示すピーク強度であり、ポリイミドのイミド環を開環した場合にも変化しない値である。一方、上記吸収強度スペクトルにおける波数1705cm−1のピーク強度は、イミド結合のカルボニル基の数を示すピーク強度であり、ポリイミドのイミド環が開環されることによって減少する値である。従って、上記吸収強度スペクトルにおける波数1494cm−1のピーク強度に対する波数1705cm−1のピーク強度の比からポリイミドのイミド環の開環率を概算することができる。具体的には、ポリイミドのイミド環の開環率は、上記吸収強度スペクトルにおける波数1494cm−1のピーク強度に対する波数1705cm−1のピーク強度の比に比例し、開環率が0%の場合に上記ピーク強度の比は約1.1となる。
また、ベースフィルム1と金属層2との界面の赤外吸収分析は、酸性溶液を用いたエッチングにより金属層2を除去することによって可能となる。
金属層2を除去するためのエッチングに用いる酸性溶液としては、一般的に金属層除去に用いられる酸性のエッチング液を使用でき、例えば塩化銅溶液、塩酸、硫酸、王水等が挙げられる。
エッチング時の上記エッチング液の温度の下限としては、10℃が好ましく、20℃がより好ましい。一方、上記エッチング液の温度の上限としては、90℃が好ましく、70℃がより好ましい。上記エッチング液の温度が上記下限に満たない場合、エッチングに要する時間が長くなり、作業性が低下するおそれがある。逆に、上記エッチング液の温度が上記上限を超える場合、温度調節のためのエネルギーコストが不必要に増加するおそれがある。
上記エッチング時間の下限としては、1分が好ましく、10分がより好ましい。一方、上記エッチング時間の上限としては、60分が好ましく、30分がより好ましい。上記エッチング時間が上記下限に満たない場合、エッチング液の濃度が高くなり取り扱い難くなるおそれがある。逆に、上記エッチング時間が上記上限を超える場合、作業性が低下するおそれがある。
<金属層>
当該プリント配線板用基板において、金属層2は、金属粒子の焼結体層を含んでもよい。金属粒子の焼結体層は、真空設備等の大がかりな装置を必要とせず、比較的容易かつ安価に形成することができるので、金属粒子の焼結体層を設けることで当該プリント配線板用基板の製造コストを抑制することができる。
また、金属層2は、めっき(無電解めっき又は電気めっき)による金属の積層により形成されるめっき層を含んでもよい。めっき層を設けることで金属層2を比較的安価で緻密かつ導電性に優れるものとすることが容易となる。
具体的には、金属層2は、例えば図2に示すように、複数の金属粒子を焼結することによって、ベースフィルム1の表面に積層される焼結体層3と、この焼結体層3の表面に無電解めっきにより積層される無電解めっき層4と、この無電解めっき層4の表面に電気めっきによりさらに積層される電気めっき層5とを有する構成とすることができる。
金属層2の主金属としては、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀等を用いることができる。この中でも、導電性がよく、ベースフィルム1との密着性に優れると共に、エッチングによるパターニングが容易で比較的安価な金属として、銅が好適に使用される。また、金属層2の主金属が銅である場合、ベースフィルム1の表層領域Aにコバルト原子を含有させることによる金属層2との密着性低下抑制効果が顕著となる。
(焼結体層)
焼結体層3は、ベースフィルム1の改質された面への上記金属層2の主金属となる金属を主成分とする複数の金属粒子を含む金属粒子分散液(インク)の塗工及び焼成によって、ベースフィルム1の表面に積層することができる。このように、金属粒子分散液を用いることで、ベースフィルム1の表面に容易かつ安価に金属層2を形成することができる。
焼結体層3を形成する金属粒子の平均粒子径の下限としては、1nmが好ましく、30nmがより好ましい。一方、上記金属粒子の平均粒子径の上限としては、500nmが好ましく、100nmがより好ましい。上記金属粒子の平均粒子径が上記下限に満たない場合、例えば上記金属粒子分散液中での金属粒子の分散性及び安定性が低下することにより、ベースフィルム1の表面に均一に積層することが容易でなくなるおそれがある。逆に、上記金属粒子の平均粒子径が上記上限を超える場合、金属粒子間の隙間が大きくなり、焼結体層3の空隙率を小さくすることが容易でなくなるおそれがある。なお、「平均粒子径」とは、レーザー回折法により測定される粒子径の分布において体積積算値が50%となる粒子径を意味する。
焼結体層3の平均厚さの下限としては、50nmが好ましく、100nmがより好ましい。一方、焼結体層3の平均厚さの上限としては、2μmが好ましく、1.5μmがより好ましい。焼結体層3の平均厚さが上記下限に満たない場合、平面視で金属粒子が存在しない部分が多くなり導電性が低下するおそれがある。逆に、焼結体層3の平均厚さが上記上限を超える場合、焼結体層3の空隙率を十分低下させることが困難となるおそれや、金属層2が不必要に厚くなるおそれがある。
(無電解めっき層)
無電解めっき層4は、焼結体層3の外面に無電解めっきを施すことにより、焼結体層3を形成する金属粒子の主金属と同一の金属を積層して形成される。また、無電解めっき層4は、焼結体層3の内部に含浸するよう形成されている。つまり、焼結体層3を形成する金属粒子間の隙間に無電解めっきにより主金属が充填されることにより、焼結体層3の内部の空隙を減少させている。このように、無電解めっき金属が金属粒子間の隙間に充填されることによって、金属粒子間の空隙を減少させることで、空隙が破壊起点となって焼結体層3がベースフィルム1から剥離することを抑制できる。
無電解めっき層4は、無電解めっきの条件によっては焼結体層3の内部にのみ形成される場合もある。一般論としては、焼結体層3の外面に形成される無電解めっき層4の平均厚さ(焼結体層3の内部のめっき金属の厚さを含まない)の下限としては、0.2μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。一方、焼結体層3の外面に形成される無電解めっき層4の平均厚さの上限としては、1μmが好ましく、0.7μmがより好ましい。焼結体層3の外面に形成される無電解めっき層4の平均厚さが上記下限に満たない場合、無電解めっき層4が焼結体層3の金属粒子の隙間に十分に充填されず、空隙率を十分に低減できないことからベースフィルム1と金属層2との剥離強度が不十分となるおそれがある。逆に、焼結体層3の外面に形成される無電解めっき層4の平均厚さが上記上限を超える場合、無電解めっきに要する時間が長くなり製造コストが不必要に増大するおそれがある。
(電気めっき層)
電気めっき層5は、焼結体層3の外面側、つまり無電解めっき層4の外面に電気めっきにより上記主金属をさらに積層することで形成される。この電気めっき層5によって、金属層2の厚さを容易かつ正確に調節することができる。また、電気めっきを用いることにより、金属層2の厚さを短時間で大きくすることが可能である。
電気めっき層5の厚さは、当該プリント配線板用基板を用いて形成するプリント配線板に必要とされる導電パターンの種類や厚さに応じて設定されるものであって、特に限定されない。一般的には、電気めっき層5の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、電気めっき層5の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。電気めっき層5の平均厚さが上記下限に満たない場合、金属層2が損傷し易くなるおそれがある。逆に、電気めっき層5の平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板用基板が不必要に厚くなるおそれや、当該プリント配線板用基板の可撓性が不十分となるおそれがある。
[プリント配線板用基板の製造方法]
当該プリント配線板用基板は、具体例として、図3に示すように、ベースフィルム1の表面をアルカリ処理する工程(ステップS1:アルカリ処理工程)と、アルカリ処理工程後のベースフィルム1の表面にコバルトイオン含有水溶液を接触させる工程(ステップS2:接触工程)と、接触工程後のベースフィルム1の表面に金属層2を積層する工程(ステップS3:積層工程)とを備える方法によって製造することができる。
<アルカリ処理工程>
ステップS1のアルカリ処理工程では、ベースフィルム1の少なくとも金属層2を積層する予定の面にアルカリ液を接触させることによって、ベースフィルム1を構成するポリマーの結合を弱めて反応性を付与することで、後述する接触工程でベースフィルム1中にコバルト原子を含有させやすくする。典型的には、ポリイミドを主成分とするベースフィルム1のイミド環の一部を開環する。アルカリ処理工程では、ベースフィルム1全体をアルカリ液に浸漬してもよい。
このアルカリ処理工程で用いるアルカリ液としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられ、一般的には水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。
アルカリ処理工程で用いるアルカリ液のpHとしては、例えば12以上15以下とすることができる。また、ベースフィルム1のアルカリ液との接触時間としては、例えば15秒以上10分以下とすることができる。アルカリ液の温度としては、例えば10℃以上70℃以下とすることができる。
また、アルカリ処理工程は、ベースフィルム1を水洗いする水洗工程を有することが好ましい。この水洗工程では、ベースフィルム1を水洗いして、ベースフィルム1の表面に付着しているアルカリ液を除去する。また、アルカリ処理工程は、水洗工程後に洗浄水を乾燥する乾燥工程を有することがさらに好ましい。ベースフィルム1中の水分を蒸発させることによって、ベースフィルム1内のイオンを金属や金属酸化物として析出させたり、ベースフィルム1の樹脂成分等と結合させることによって、ベースフィルム1の品質を安定化することができる。
<接触工程>
ステップS2の接触工程では、ベースフィルム1のアルカリ処理した面にコバルトイオン含有水溶液を接触させることにより、ベースフィルム1の表層領域Aにコバルト原子を導入する。具体的には、ベースフィルム1を構成するポリマーにアルカリ処理によって形成される比較的反応性に富んだ官能基とコバルトイオンとが反応し、ベースフィルム1を構成するポリマーにコバルト原子が化学結合することによって、ベースフィルム1の表層領域Aにコバルト原子が取り込まれると考えられる。この接触工程では、ベースフィルム1全体をコバルトイオン含有水溶液に浸漬してもよい。
上記コバルトイオン含有水溶液としては、例えば酢酸コバルト水溶液、臭化コバルト水溶液、塩化コバルト水溶液、安息香酸コバルト水溶液、硝酸コバルト水溶液等が挙げられ、入手及び取り扱いが比較的容易な酢酸コバルト水溶液が好適に用いられる。また、これらの水溶液は、コバルト化合物又はその水和物を水に溶解することによって調製することができる。
コバルトイオン含有水溶液のコバルトイオン濃度の下限としては、0.05mol/Lが好ましく、0.1mol/Lがより好ましい。一方、コバルトイオン含有水溶液のコバルトイオン濃度の上限としては、2mol/Lが好ましく、1mol/Lがより好ましい。コバルトイオン含有水溶液のコバルトイオン濃度が上記下限に満たない場合、処理時間が長くなることで当該プリント配線板用基板の生産性が不十分となるおそれがある。逆に、コバルトイオン含有水溶液のコバルトイオン濃度が上記上限を超える場合、コバルト原子含有率の調整が容易ではなくなるおそれがある。
コバルトイオン含有水溶液の温度の下限としては、5℃が好ましく、10℃がより好ましい。一方、コバルトイオン含有水溶液の温度の上限としては、60℃が好ましく、45℃がより好ましい。コバルトイオン含有水溶液の温度が上記下限に満たない場合、処理時間が長くなることで当該プリント配線板用基板の生産性が不十分となるおそれがある。逆に、コバルトイオン含有水溶液の温度が上記上限を超える場合、コバルト原子含有率の調整が容易ではなくなるおそれや、温度調節のためのエネルギーコストが不必要に増大するおそれがある。
ベースフィルム1へのコバルトイオン含有水溶液の接触時間の下限としては、0.5分が好ましく、1分がより好ましい。一方、ベースフィルム1へのコバルトイオン含有水溶液の接触時間の上限としては、10分が好ましく、5分がより好ましい。ベースフィルム1へのコバルトイオン含有水溶液の接触時間が上記下限に満たない場合、コバルトイオン含有水溶液の濃度を高くする必要があるので取り扱いが容易ではなくなるおそれがある。逆に、ベースフィルム1へのコバルトイオン含有水溶液の接触時間が上記上限を超える場合、当該プリント配線板用基板の生産性が不十分となるおそれがある。
上記コバルトイオン含有水溶液のコバルトイオン濃度、温度及びベースフィルム1への最適な接触時間は、相互に影響し合うと共に、上記アルカリ処理の条件によっても異なるが、ベースフィルム1の表層領域Aにおける上述のコバルト原子含有率を達成できるよう適宜選択すればよい。
<積層工程>
ステップS3の積層工程は、複数の金属粒子を含む金属粒子分散液の塗布及び加熱を行うことにより焼結体層3を形成する工程を有することが、比較的安価に金属層を形成できる点で好ましい。また、積層工程は、無電解めっきにより無電解めっき層4を形成する工程と、電気めっきにより電気めっき層5を形成する工程とを有することが好ましい。
(焼結体層形成工程)
この焼結体層形成工程で用いる金属粒子分散液としては、金属粒子の分散媒と、この分散媒中に金属粒子を均一に分散させる分散剤とを含むものが好適に使用される。このように均一に金属粒子が分散する金属粒子分散液を用いることで、ベースフィルム1の表面に金属粒子を均一に付着させることができ、ベースフィルム1の表面に均一な焼結体層3を形成することができる。
上記金属粒子分散液に含まれる金属粒子は、高温処理法、液相還元法、気相法等で製造することができるが、粒子径が均一な粒子を比較的安価に製造できる液相還元法により製造されるものを使用することが好ましい。
上記金属粒子分散液に含まれる分散剤としては、特に限定されないが、分子量が2,000以上300,000以下の高分子分散剤を用いることが好ましい。このように、分子量が上記範囲の高分子分散剤を用いることで、金属粒子を分散媒中に良好に分散させることができ、得られる焼結体層3の膜質を緻密でかつ欠陥のないものにすることができる。上記分散剤の分子量が上記下限に満たない場合、金属粒子の凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがあり、その結果、ベースフィルム1に積層される焼結体層3を緻密で欠陥の少ないものにできないおそれがある。逆に、上記分散剤の分子量が上記上限を超える場合、分散剤の嵩が大き過ぎ、金属粒子分散液の塗布後に行う加熱時に、金属粒子同士の焼結を阻害してボイドを生じさせるおそれがある。また、分散剤の嵩が大き過ぎると、焼結体層3の膜質の緻密さが低下したり、分散剤の分解残渣が導電性を低下させるおそれがある。
上記分散剤は、部品の劣化防止の観点より、硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン及びアルカリを含まないものが好ましい。好ましい分散剤としては、分子量が上記範囲にあるもので、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、あるいは1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤等を挙げることができる。
上記分散剤は、水又は水溶性有機溶媒に溶解した溶液の状態で反応系に添加することもできる。分散剤の含有割合としては、金属粒子100質量部当たり1質量部以上60質量部以下が好ましい。分散剤が金属粒子を取り囲むことで凝集を防止して金属粒子を良好に分散させるが、上記分散剤の含有割合が上記下限に満たない場合、この凝集防止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記分散剤の含有割合が上記上限を超える場合、金属粒子分散液の塗布後の加熱工程において、過剰の分散剤が金属粒子の焼結を阻害してボイドが発生するおそれがあり、また、高分子分散剤の分解残渣が不純物として焼結体層3中に残存して導電性を低下させるおそれがある。
金属粒子分散液における分散媒となる水の含有割合としては、金属粒子100質量部当たり20質量部以上1900質量部以下が好ましい。分散媒の水は、分散剤を十分に膨潤させて分散剤で囲まれた金属粒子を良好に分散させるが、上記水の含有割合が上記下限に満たない場合、水によるこの分散剤の膨潤効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記水の含有割合が上記上限を超える場合、金属粒子分散液中の金属粒子割合が少なくなり、ベースフィルム1の表面に必要な厚さと密度とを有する良好な焼結体層3を形成できないおそれがある。
上記金属粒子分散液に必要に応じて配合する有機溶媒として、水溶性である種々の有機溶媒が使用可能である。その具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールやその他のエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
金属粒子分散液における水溶性の有機溶媒の含有割合としては、金属粒子100質量部当たり30質量部以上900質量部以下が好ましい。上記水溶性の有機溶媒の含有割合が上記下限に満たない場合、上記有機溶媒による分散液の粘度調整及び蒸気圧調整の効果が十分に得られないおそれがある。逆に、上記水溶性の有機溶媒の含有割合が上記上限を超える場合、水による分散剤の膨潤効果が不十分となり、金属粒子分散液中で金属粒子の凝集が生じるおそれがある。
ベースフィルム1に金属粒子分散液を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗布方法を用いることができる。また、例えばスクリーン印刷、ディスペンサ等によりベースフィルム1の表面の一部のみに金属粒子分散液を塗布するようにしてもよい。
そして、金属粒子分散液をベースフィルム1に塗布した金属粒子分散液の塗膜を加熱する。これにより、金属粒子分散液の溶媒分散剤が蒸発又は熱分解し、残る金属粒子が焼結されてベースフィルム1の表面に固着された焼結体層3が得られる。なお、上記加熱の前に金属粒子分散液の塗膜を乾燥させることが好ましい。
上記焼結は、一定量の酸素が含まれる雰囲気下で行うことが好ましい。焼結時の雰囲気の酸素濃度の下限としては、1体積ppmが好ましく、10体積ppmがより好ましい。一方、上記酸素濃度の上限としては、10,000体積ppmが好ましく、1,000体積ppmがより好ましい。上記酸素濃度が上記下限に満たない場合、焼結体層3の界面近傍における金属酸化物の生成量が少なくなり、ベースフィルム1と焼結体層3との密着力を十分に向上できないおそれがある。逆に、上記酸素濃度が上記上限を超える場合、金属粒子が過剰に酸化してしまい焼結体層3の導電性が低下するおそれがある。
上記焼結温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、上記焼結温度の上限としては、500℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記焼結温度が上記下限に満たない場合、金属粒子間を接続できず、次の無電解めっき層4の形成時に焼結体層3が崩壊するおそれがある。逆に、上記焼結温度が上記上限を超える場合、ベースフィルム1が変形するおそれがある。
(無電解めっき層形成工程)
上記無電解めっき層形成工程では、上記焼結体層形成工程でベースフィルム1の表面に積層した焼結体層3の表面に、無電解めっきを施すことにより無電解めっき層4を形成する。
なお上記無電解めっきは、例えばクリーナ工程、水洗工程、酸処理工程、水洗工程、プレディップ工程、アクチベーター工程、水洗工程、還元工程、水洗工程等の処理と共に行うことが好ましい。
また、無電解めっきにより無電解めっき層4を形成した後、さらに熱処理を行うことが好ましい。無電解めっき層4形成後に熱処理を施すと、焼結体層3のベースフィルム1との界面近傍の金属酸化物等がさらに増加し、ベースフィルム1と焼結体層3との間の密着力がさらに大きくなる。この無電解めっき後の熱処理の温度及び酸素濃度としては、上記焼結体層形成工程における加熱温度及び酸素濃度と同様とすることができる。
(電気めっき層形成工程)
電気めっき層形成工程では、無電解めっき層4の外面に、電気めっきによって電気めっき層5を積層する。この電気めっき層形成工程において、金属層3全体の厚さを所望の厚さまで増大させる。
この電気めっきは、例えば銅、ニッケル、銀等のめっきする金属に応じた従来公知の電気めっき浴を用いて、かつ適切な条件を選んで、所望の厚さの金属層3が欠陥なく速やかに形成されるように行うことができる。
<利点>
上述のように、当該プリント配線板用基板は、ベースフィルム1における金属層2との界面から厚さ方向に1μmの表層領域Aに、上記含有率範囲内のコバルト原子を含有するので、このコバルト原子が金属層2の金属原子のベースフィルム1への拡散を抑制する。ベースフィルム2にコバルト原子を含有させるための上述の接触工程は比較的容易に行うことができるため、当該プリント配線板用基板は、比較的安価でありながら、経時変化によるベースフィルム1と金属層2との密着性の低下が比較的小さい。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
当該プリント配線板用基板は、図3に示す当該プリント配線板の製造方法とは異なる方法で製造されてもよい。例えば、当該プリント配線板用基板は、アルカリ処理工程を省略して製造されたものであってもよく、アルカリ処理に代えて例えばプラズマ処理等によってベースフィルムの表面が改質されているものであってもよい。
さらに、当該プリント配線板用基板における金属層の詳細構造や積層方法は任意である。具体的には、当該プリント配線板用基板の金属層は、焼結体層、無電解めっき層及び電気めっき層の一又は複数を有しないものであってもよく、ベースフィルムに金属板を熱圧着したものであってもよい。
また、当該プリント配線板用基板は、ベースフィルの両面に金属層を積層した両面基板や複数のベースフィルム又は絶縁層と3層以上の金属層とを備える多層基板であってもよい。複数の金属層を備える場合、当該プリント配線板用基板は、ベースフィルムの表層領域のいずれかがコバルト原子の含有率が上記範囲内である構成を有していればよい。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
以下の要領で、ポリイミド製ベースフィルムの表面をアルカリ処理してから表層領域にコバルト原子を含有させた後、金属層を積層したプリント配線板用基板の試作品No.1〜No.14を作製した。これらのプリント配線板用基板の試作品No.1〜No.14の作製課程において、アルカリ処理後のベースフィルムの表面のイミド環の開環率と、コバルト原子を含有させた後のベースフィルムの表面から厚さ方向に1μmの表層領域におけるコバルト原子の含有率とを測定した。また、プリント配線板用基板の試作品No.1〜No.14の作製直後のベースフィルムと金属層との剥離強度を測定すると共に、温度150℃で7日間保持する耐熱性試験に供した後のベースフィルムと金属層との剥離強度を測定した。
(試作品No.1)
ベースフィルムとして、東レデュポン社のポリイミドフィルム「カプトンEN−S」(平均厚さ25μm)を使用し、先ず、温度40℃、濃度100g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に90秒浸漬した後、10秒の水洗を3回行って乾燥させた。次に、酢酸コバルト四水和物を37.0g/Lの割合で水に溶解した温度25℃のコバルトイオン含有水溶液(コバルトイオンのモル濃度に換算して0.15mol/L)に上記アルカリ処理したベースフィルムを90秒浸漬して表層領域にコバルト原子を含有させた後、10秒の水洗を3回行ってから乾燥させた。さらに、このコバルト原子を含有させたベースフィルムの表面に、銅粒子の焼結体層、無電解めっき層及び電気めっき層をこの順番に積層することにより金属層を形成することで、プリント配線板用基板の試作品No.1を得た。
上記焼結体層は、ベースフィルムの表面に、平均粒子径が70nmの銅粒子を水に分散させた銅濃度が26質量%の銅粒子分散液を塗布し、酸素濃度が100体積ppmの窒素雰囲気中で温度350℃に30分間加熱することにより形成し、その平均厚さが0.15μmであった。この焼結体層の上から無電解銅めっきを行うことにより無電解めっき層を形成し、焼結体層と無電解めっき層との合計平均厚さは0.45μmとなった。さらにこの無電解めっき層の上に電気銅めっきを行うことにより平均厚さ18μmの電気めっき層を積層して、三層構造の金属層を形成した。
(試作品No.2〜7)
水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ処理時間、コバルトイオン含有水溶液の酢酸コバルト四水和物溶解量(溶解後のコバルトイオン濃度)及び浸漬時間、並びに焼結体層を形成する銅粒子の平均粒子径を変更して、他は試作品No.1と同じ条件でプリント配線板用基板の試作品No.2〜7を得た。なお、銅粒子の平均粒子径を異ならせることに起因して無電解めっき後の金属層の平均厚さ(焼結体層と無電解めっき層の合計平均厚さ)も異なるものとなった。これらの条件の違いは、表1にまとめて示す。
(試作品No.8〜14)
さらに、ベースフィルムとして、カネカ社のポリイミドフィルム「アピカルNPI」(平均厚さ25μm)を使用し、水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ処理時間、コバルトイオン含有水溶液の酢酸コバルト四水和物溶解量及び浸漬時間、並びに焼結体層を形成する銅粒子の平均粒子径(及びこれに伴う無電解めっき後の金属層の平均厚さ)を変更して、他は同じ条件でプリント配線板用基板の試作品No.8〜14を得た。これらの条件も、表1にまとめて示す。
(イミド開環率)
ポリイミドのイミド環の開環率は、サーモフィッシャー社の赤外全反射吸収測定(FT−IR)装置「Nicolet8700」を用い、SensIR社の1回反射ATRアクセサリ「Dura Scope」(ダイヤモンドプリズム)を使用して、入射角45°での測定波数4000〜650cm−1の範囲における吸収強度スペクトルを積算回数(スキャン回数)16回としてそれぞれ、分解能を4cm−1に設定して測定し、得られた吸収強度スペクトルから、波数1494cm−1のピーク強度に対する波数1705cm−1のピーク強度の比を算出し、表面処理をしていないベースフィルムのピーク強度の比を100%として換算した。このイミド開環率は、表1に合わせて示す。
(コバルト含有率)
ベースフィルムの表層領域におけるコバルト原子の含有率は、ULVAC−Phi社製の走査型X線光電子分光分析装置「Quantera」を用い、X線源をアルミニウム金属のKアルファ線、ビーム径を50μm、分析表面に対するX線入射角度を45°として測定した。このコバルト原子の含有率は、表1に合わせて示す。
(剥離強度)
剥離強度は、樹脂フィルムをたわみ性被着材としてJIS−K−6854−2(1999)「接着剤−はく離接着強さ試験方法−2部:180度はく離」に準じた方法により測定した。この剥離強度は、表1に合わせて示す。
Figure 2017112184
以上のように、ベースフィルムの表層領域に、1atomic%以上15atomic%以下のコバルト原子を含有する試作品No.1〜3及びNo.8〜10は、耐熱性試験の前後で共に比較的大きい剥離強度を有し、かつ耐熱性試験の前後での剥離強度の変化が小さく、時間経過によるベースフィルムと金属層との密着性の低下が比較的小さいことが確認された。一方、ベースフィルムの表層領域のコバルト原子含有率が15atomic%よりも大きい試作品No.4及びNo.11は、耐熱性試験の前後での剥離強度の低下は小さいが、耐熱性試験前の剥離強度が不十分であった。また、ベースフィルムの表層領域にコバルト元素を含有しない試作品No.5〜7及びNo.12〜14は、耐熱性試験前の剥離強度は十分であるものの、耐熱性試験による剥離強度の低下が比較的大きく、時間経過によるベースフィルムと金属層との密着性の低下が比較的大きかった。
本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法は、プリント配線板を製造するために広く利用することができる。
1 ベースフィルム
2 金属層
3 焼結体層
4 無電解めっき層
5 電気めっき層
A 表層領域
S1 アルカリ処理工程
S2 接触工程
S3 積層工程

Claims (7)

  1. 絶縁性を有するベースフィルムと、
    このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層と
    を備えるプリント配線板用基板であって、
    上記ベースフィルムにおける金属層との界面から厚さ方向に1μmの表層領域にコバルト原子を含有し、
    このコバルト原子の含有率が1atomic%以上15atomic%以下であるプリント配線板用基板。
  2. 上記金属層が金属粒子の焼結体層を含む請求項1に記載のプリント配線板用基板。
  3. 上記金属層がめっき層を含む請求項1又は請求項2に記載のプリント配線板用基板。
  4. 上記コバルト原子がベースフィルムを構成するポリマーに化学結合している請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプリント配線板用基板。
  5. 絶縁性を有するベースフィルムと、
    このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層と
    を備えるプリント配線板用基板の製造方法であって、
    上記ベースフィルムの少なくとも一方の面をアルカリ処理する工程と、
    上記アルカリ処理工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面にコバルトイオン含有水溶液を接触させる工程と、
    上記接触工程後のベースフィルムの少なくとも一方の面に金属層を積層する工程と
    を備えるプリント配線板用基板の製造方法。
  6. 上記コバルトイオン含有水溶液が酢酸コバルト水溶液である請求項5に記載のプリント配線板用基板の製造方法。
  7. 上記金属層積層工程が、ベースフィルムの少なくとも一方の面への金属粒子分散液の塗布及び加熱を行う工程を有する請求項5又は請求項6に記載のプリント配線板用基板の製造方法。
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