JP2017110552A - ターボ過給機の潤滑構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】2ステージ・ターボシステムの高圧段のターボ過給機において、その逆回転による信頼性の低下を軽減する。【解決手段】HPターボのタービンシャフト8が挿通される円筒状のベアリング10にオイルを供給するための油路(オイル供給路92)が、ベアリングハウジング9に形成されて、ベアリング10の外周面に臨んで開口している。タービンシャフト8の軸心Xの方向に見て、オイル供給路92の下流側の部分が、その端部の開口からタービンシャフト8の径方向外方に向かいつつ、タービンシャフト8の回転する向きと反対側に所定角度θ以上、傾斜して延びている。【選択図】図4
Description
本発明は、エンジンなどに装備されるターボ過給機の潤滑構造に関し、特に、吸気通路において吸気の流れの上流側に低圧段のターボ過給機を配設し、その下流側には高圧段のターボ過給機を配設する場合に好適なものに係る。
従来より、車両などに搭載されるエンジンにおいて、排気エネルギを利用して吸気を過給するターボ過給機が用いられることがある。一般にターボ過給機は、排気の流れを受けて回転するタービンホイールと、このタービンホイールにタービンシャフト(回転シャフト)により連結されて一体に回転し、吸気を圧縮して過給するコンプレッサインペラと、を備えている。
そして、例えば1分間に10万回転以上という高速で回転するタービンシャフトのベアリングには、潤滑油としてエンジンオイル(単にオイルともいう)が供給されるようになっている。一例として特許文献1に記載のターボ過給機では、ベアリングに潤滑油を供給するオイル供給管(油路)が、ベアリングハウジングを貫通してタービンシャフトの径方向外方に延びている。
このオイル供給管が、タービンシャフトが挿通される円筒状のベアリングホルダの外周面と、これを取り囲むベアリングハウジングの内周面との隙間にオイルを供給して、油膜を形成する。また、その隙間からベアリングホルダの小孔を通じて、当該ベアリングホルダの内周面とタービンシャフトの外周面との隙間にもオイルが供給される。
ところで、近年、2つのターボ過給機を切り替えて動作させる、いわゆる2ステージ・ターボシステムが実用化されており、吸気通路には吸気の流れの上流側に位置する低圧段のターボ過給機と、その下流側に位置する高圧段のターボ過給機とが配設される。この場合に2つのターボ過給機のレイアウトの制約によって、両者の回転する向きが逆になることが、即ち、吸気の流れに沿って上流側から下流側に見た場合に、一方が右回り(時計回り)になり、他方が左回り(反時計回り)になることがある。
この場合には、例えば低圧段のターボ過給機が右回りに回転するようになっていると、これにより圧縮された吸気の流れには右回りの旋回成分が含まれることになり、この吸気の流れが、停止状態またはアイドリング状態になっている高圧段のターボ過給機に流入すると、これを受けてコンプレッサインペラが右回りに回転しようとすることが分かった。つまり、本来、左回りに回転するはずの高圧段のターボ過給機が逆向きに回転することになり、信頼性の低下を招くおそれがある。
かかる新規な知見に基づいて本発明の目的は、例えば2ステージ・ターボシステムの高圧段として用いられるターボ過給機において、その逆回転による信頼性の低下を抑制することにある。
前記の目的を達成するために本発明は、ターボ過給機の回転シャフト(タービンシャフト)のベアリングに供給する潤滑油の流れの向きを、回転シャフトの回転を助勢するように設定し、その流れによって回転シャフトの逆回転を抑制するようにしている。すなわち、本発明は、ターボ過給機の回転シャフトのベアリングに潤滑油を供給するための油路がベアリングハウジングに形成されている潤滑構造を対象とする。
そして、前記ベアリングが前記回転シャフトの挿通される円筒状とされ、その外周面に臨んで前記油路の下流側の端部が開口している場合に、当該回転シャフトの軸心の方向に見て、前記油路の下流側の部分が、その端部の開口から前記回転シャフトの径方向外方に向かいつつ、この回転シャフトの回転する向きと反対側に所定角度以上、傾斜して延びるように形成した。
前記の潤滑構造によれば、ターボ過給機のベアリングに潤滑油を供給する油路の下流側の部分が、回転シャフトの軸心の方向に見ると、ベアリングの外周から径方向外方に向かいつつ、回転シャフトの回転する向きと反対側に傾斜して延びている。このため、その下流側の部分を流通して、油路の下流端部の開口からベアリングの外周面に向かって供給される潤滑油の流れは、回転シャフトの周方向についてその回転する向きとなる。
よって、その潤滑油の流れを受けてベアリングの外周および内周の油膜が回転シャフトの回転する向きに流れるようになり、これにより回転シャフトの回転が助勢され、逆向きの回転は抑制される。したがって、例えばターボ過給機が2ステージ・ターボシステムの下流側のターボ過給機であって、上流側のターボ過給機からの吸気の流れに逆回転の向きの旋回成分が含まれていても、これによる回転シャフトの逆回転を抑えて、信頼性の低下を抑制できる。
そのようにしてベアリングに供給する潤滑油の流れによって、回転シャフトの回転を効果的に助勢するために好ましいのは、その潤滑油の流れの向きを、回転シャフトの径方向および周方向の中間よりも周方向に向けることである。すなわち、前記のようにベアリングに潤滑油を供給する油路の下流側の部分を、回転シャフトの軸心に沿って見て、その径方向に対し45°以上、傾斜させることが好ましい。
また、ベアリングとしては、前記のような潤滑油の流れを受けて、回転シャフトの回転する向きに回転可能なフルフローティング・タイプとすることが好ましいが、ベアリング自体の回転は規制されていても、その内外周に形成される油膜の流動によって回転シャフトの回転を助勢できるので、いわゆるセミフローティング・タイプのベアリングであってもよい。
さらに、前記のようにベアリングに潤滑油を供給する油路の下流側の部分は、回転シャフトの軸心と直交する方向から見た場合は、その軸心とほぼ直交することが好ましいが、或る程度傾斜していてもよい。また、その油路の下流側の部分は1本であってもよいが、複数本であってもよい。複数本、設ける場合は、それらを回転シャフトの軸心の方向に離間させるのが好ましく、その上さらに回転シャフトの軸心の回り、即ち周方向にも離間させるのが好ましい。
本発明に係るターボ過給機の潤滑構造によると、ターボ過給機のベアリングに供給する潤滑油の流れを利用して、回転シャフトの逆回転を抑制することができるので、例えば2ステージ・ターボシステムの下流側のターボ過給機などに適用した場合に、上流側のターボ過給機からの吸気の流れを受けても、コンプレッサインペラが逆向きに回転し難くなり、信頼性の低下を抑制できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は一例として、自動車に搭載されたエンジン1に、本発明に係るターボ過給機を装備した場合について説明する。なお、エンジン1としては例えば、筒内直接噴射式のディーゼルエンジン、筒内直接噴射式または吸気ポート噴射式のガソリンエンジンなどが挙げられる。
−エンジンの2ステージ・ターボシステム−
図1は、本実施の形態に係るエンジン1に設けられた2ステージ・ターボシステムを概略的に示しており、このシステムは、低圧段および高圧段の2つのターボ過給機2,3を直列に配置し、エンジン1の運転状態に応じて切り替えて動作させるようにしたものである。すなわち、まず、エンジン1の吸気通路11には、吸気の流れの上流側に低圧段のターボ過給機2(以下、LPターボ2ともいう)のコンプレッサインペラ21が配設され、吸気通路11を流通する吸気を圧縮するようになっている。
図1は、本実施の形態に係るエンジン1に設けられた2ステージ・ターボシステムを概略的に示しており、このシステムは、低圧段および高圧段の2つのターボ過給機2,3を直列に配置し、エンジン1の運転状態に応じて切り替えて動作させるようにしたものである。すなわち、まず、エンジン1の吸気通路11には、吸気の流れの上流側に低圧段のターボ過給機2(以下、LPターボ2ともいう)のコンプレッサインペラ21が配設され、吸気通路11を流通する吸気を圧縮するようになっている。
このLPターボ2は、中高速域で過給能力が高くなる大容量の高速型ターボ過給機であり、その下流側には比較的小容量の高圧段のターボ過給機3(以下、HPターボ3ともいう)のコンプレッサインペラ4が配設されている。HPターボ3は、エンジン1の低中速域で過給能力が高くなる低速型のターボ過給機であり、前記LPターボ2によって圧縮された吸気をさらに圧縮する。こうして圧縮されて温度の上昇した吸気を冷却するために、HPターボ3の下流側にはインタークーラ12が配設されている。
さらに、吸気通路11には、前記HPターボ3のコンプレッサインペラ4をバイパスして、その上流側から下流側に吸気を流通させる吸気バイパス通路13と、この吸気バイパス通路13を流れる吸気の流量を調整可能な吸気切替弁14とが設けられている。吸気切替弁14の開度を増加させるほど、コンプレッサインペラ4をバイパスする吸気の流量が増大し、開度を減少させるほど、バイパスする吸気の流量は減少する。
一方、エンジン1の排気通路15には、図示しない排気マニホルドよりも排気の流れの下流側に前記HPターボ3のタービンホイール5が配設されており、排気の流れを受けて回転する。また、このタービンホイール5よりも下流側の排気通路15には、LPターボ2のタービンホイール22が配設されており、前記HPターボ3を通過した排気を受けて回転し、タービンシャフト23を介してコンプレッサインペラ21を回転させる。
さらに、排気通路15には、前記HPターボ3のタービンホイール5をバイパスして、その上流側から下流側に排気を流通させる排気バイパス通路16と、この排気バイパス通路16を流れる排気の流量を調整可能な排気切替弁17とが設けられている。排気切替弁17の開度を増加させるほど、HPターボ3をバイパスする排気の流量が増大し、開度を減少させるほど、バイパスする排気の流量は減少する。なお、排気通路15には、LPターボ2のタービンホイール22をバイパスする排気バイパス通路18も設けられており、ここにはウエストゲート弁19が設けられている。
そして、エンジン1のコントローラであるECU100からの指令信号に応じて、前記の吸気切替弁14および排気切替弁17の開度がエンジン1の運転状態に基づいて制御され、LPターボ2およびHPターボ3の動作が切り替えられるようになっている。例えば、エンジン回転数が特に低い運転領域では吸気切替弁14および排気切替弁17が全閉とされ、LPターボ2およびHPターボ3の双方が吸気を過給する。なお、このときにはウエストゲート弁19も閉じられている。
そして、エンジン回転数の上昇に連れて排気切替弁17が開かれ、徐々にHPターボ3による過給の度合いが低下するとともに、LPターボ2による過給の度合いが高くなってゆく。さらにエンジン回転数またはエンジン負荷が上昇して中高回転の運転領域になると、吸気切替弁14も開かれて主にLPターボ2による過給状態に切り替わり、HPターボ3は実質、過給を行わないアイドリング状態になる。そして、高負荷高回転の所定運転領域ではウエストゲート弁19が開かれる。
−HPターボの構造−
以下、図2を参照してHPターボ3の構造を詳細に説明する。なお、詳しい説明は省略するが、LPターボ2についても概ね同じような構造である。図の左側に示すようにHPターボ3のコンプレッサインペラ4は、吸気通路11(図2には示さず)に介設されるコンプレッサハウジング6に収容されており、反対の右側に示すようにタービンホイール5は、排気通路15(図2には示さず)に介設されたタービンハウジング7に収容されている。
以下、図2を参照してHPターボ3の構造を詳細に説明する。なお、詳しい説明は省略するが、LPターボ2についても概ね同じような構造である。図の左側に示すようにHPターボ3のコンプレッサインペラ4は、吸気通路11(図2には示さず)に介設されるコンプレッサハウジング6に収容されており、反対の右側に示すようにタービンホイール5は、排気通路15(図2には示さず)に介設されたタービンハウジング7に収容されている。
前記コンプレッサインペラ4は、その中心部をタービンシャフト8の一端側が貫通し、このタービンシャフト8の一端部に螺合するナット8aによって締結されている。一方、タービンシャフト8の他端部は溶接などによってタービンホイール5に固定されており、このタービンホイール5が回転するとコンプレッサインペラ4も回転し、吸気を圧縮してエンジン1に供給するようになっている(過給)。
すなわち、タービンハウジング7には、タービンホイール5の収容室71の外周を囲んで排気の導入路72(スクロール72)が形成されて、排気通路15からの排気の流れをタービンホイール5に導入するようになっている。この排気の流れを受けてタービンホイール5が回転し、そのブレードの間を通過する際に膨張した排気の流れは、収容室71に連通する排気口73から排出される。
一方、コンプレッサハウジング6には、収容室61に収容されたコンプレッサインペラ4と対向するように吸気の吸入口62が形成され、ここから吸い込まれた空気がコンプレッサインペラ4の回転によって、その外周側に送り出されるようになっている。コンプレッサハウジング6の外周側には導出路63(スクロール63)が形成されており、前記のようにコンプレッサインペラ4から送り出される空気は圧縮され、スクロール63に沿って送り出される。
それらコンプレッサハウジング6およびタービンハウジング7の間にはベアリングハウジング9が配設されて、両者を連結一体化するとともに、ラジアルベアリング10(以下、単にベアリングともいう)によってタービンシャフト8を回転自在に支持している。そして、ベアリングハウジング9には、エンジン1の冷却水が流れるウォータジャケット91、ベアリング10を潤滑するエンジンオイルの供給路(オイル供給路92)およびそのドレン空間93などが形成されている。
−ベアリングの潤滑構造−
前記ベアリング10は、タービンシャフト8の挿通される円筒状のすべり軸受けであり、ベアリングハウジング9の概略中央に形成されたベアリング収容空間94に収容されている。一例としてベアリング10は、タービンシャフト8の周りを自由に回転可能なフルフローティング・タイプのものであり、その内周面とタービンシャフト8の外周面との間に形成される油膜に浮かせたような状態で、タービンシャフト8を回転可能に支持している。
前記ベアリング10は、タービンシャフト8の挿通される円筒状のすべり軸受けであり、ベアリングハウジング9の概略中央に形成されたベアリング収容空間94に収容されている。一例としてベアリング10は、タービンシャフト8の周りを自由に回転可能なフルフローティング・タイプのものであり、その内周面とタービンシャフト8の外周面との間に形成される油膜に浮かせたような状態で、タービンシャフト8を回転可能に支持している。
また、ベアリング10のコンプレッサインペラ4に近い側(図2の左側)に隣接して、スラストカラー95が配設され、その外周の溝部にスラストディスク96を挟みこんで、いわゆるスラストベアリングを構成している。スラストベアリングは、HPターボ3の動作中にタービンシャフト8に作用するスラスト荷重を支持するもので、スラストディスク96は、例えば自己潤滑性を有する合成樹脂材や金属材などで形成されている。
そして、前記ベアリング10には潤滑油としてエンジンオイル(以下、単にオイルという)が供給されるようになっている。すなわち、図示はしないが、エンジン1のオイルパンから汲み上げられたオイルが、オイル供給配管を介してベアリングハウジング9のオイル供給路92(ベアリング10に潤滑油を供給するための油路)に供給される。このオイル供給路92は、ベアリングハウジング9の外周部に開口する上流側の油路92aと、その下流端(図の下端)が連通するオイル溜まり92bと、を備えている。
また、オイル供給路92には、前記オイル溜まり92bのコンプレッサインペラ4寄りの端(図2の左端)からスラストカラー95に向かって延びる第1の分岐路92cと、オイル溜まり92bのタービンホイール5寄りの端(図2の右端)からベアリング10に向かって延びる第2の分岐路92d(オイル供給路92の下流側の部分)とが設けられ、それぞれスラストカラー95およびベアリング10にオイルを供給するようになっている。
前記第2の分岐路92dは、以下に図4を参照して説明するように上下方向に延びていて、その下端部(下流側の端部)がベアリング収容空間94の内周面に開口し、ベアリング10の外周面に臨んでいる。この第2の分岐路92dから供給されるオイルによって、ベアリング収容空間94の内周面とベアリング10の外周面との間に油膜が形成される。また、ベアリング10にはその径方向に貫通するオイル孔10aが複数、設けられており、これによりベアリング10の内周面とタービンシャフト8の外周面との間にもオイルが供給される。
こうして供給されるオイルによってベアリング10およびタービンシャフト8を効果的に冷却することができるとともに、ベアリング10の内外周の油膜が保持されて、タービンシャフト8の振動を抑制するダンピング効果が得られる。一方、ベアリング10から排出されるオイルは、タービンシャフト8の軸心Xの方向に流れて、ベアリング10の両端部からそれぞれドレン空間93へと落下するようになる。
−オイル供給路の第2の分岐路−
ところで、本実施の形態の2ステージ・ターボシステムでは、上述したようにエンジン1の吸気通路11において上流側にLPターボ2が配設され、その下流側にHPターボ3が配設されている。そして、それらのレイアウトの制約によってLPターボ2およびHPターボ3の回転する向きが逆になっている。即ち、吸気の流れに沿って上流側から下流側に見た場合に、例えばLPターボ2が右回り(時計回り)に回転し、一方、HPターボ3は左回り(反時計回り)に回転する。
ところで、本実施の形態の2ステージ・ターボシステムでは、上述したようにエンジン1の吸気通路11において上流側にLPターボ2が配設され、その下流側にHPターボ3が配設されている。そして、それらのレイアウトの制約によってLPターボ2およびHPターボ3の回転する向きが逆になっている。即ち、吸気の流れに沿って上流側から下流側に見た場合に、例えばLPターボ2が右回り(時計回り)に回転し、一方、HPターボ3は左回り(反時計回り)に回転する。
こうしてLPターボ2のコンプレッサインペラ21が右回りに回転すると、図3には模式的に示すように、これにより圧縮されて送り出される吸気の流れFには右回りの旋回成分Sが含まれるようになる。そして、その吸気の流れFがHPターボ3のコンプレッサハウジング6に流入すると、これを受けてコンプレッサインペラ4が右回りに回転しようとすることが分かった。
例えば、上述したようにエンジン1が中高回転の運転領域に移行し、吸気切替弁14が開かれて主にLPターボ2による過給状態に切り替わるとき、アイドリング状態になるHPターボ3のコンプレッサハウジング6には、前記のように右回りの旋回成分Sを含んだ吸気の流れFが流入する。そして、この吸気の流れFを受けたコンプレッサインペラ4は、本来の左回りとは逆向きの右回りに回転しようとする。
このようにコンプレッサインペラ4が逆回転すると、これと一体にタービンシャフト8も逆回転することになり、この場合はスラストカラー95およびスラストディスク96によってスラスト荷重を十分に支持できないことから、信頼性の低下を招くおそれがあった。そこで、本実施の形態では、以下に説明するようにHPターボ3のタービンシャフト8のベアリング10にオイル供給路92から供給するオイルの流れを利用して、タービンシャフト8の逆回転を抑制するようにしている。
具体的には図4にベアリングハウジング9を断面で示すように、タービンシャフト8の軸心Xの方向に見ると、オイル供給路92の第2の分岐路92dは、ベアリング10の外周面に臨む下端部(開口)からタービンシャフト8の径方向外方(図示の矢印Rの方向)に向かいながら、タービンシャフト8の回転する(図4では時計回りの)向きと反対側に所定角度θ(図示の例では45°)以上、傾斜して延びている。
このようにタービンシャフト8の径方向(R)に対して傾斜した第2の分岐路92dから流出し、ベアリング10の外周面に向かって供給されるオイルは、図4に矢印Oとして示すように、ベアリング10の周りをタービンシャフト8の回転する向きに流れるようになる。これによりベアリング10には、タービンシャフト8と同じ向きに回転させるような力が作用し、その内周面とタービンシャフト8の外周面との間の油膜を介してタービンシャフト8にも、その回転を助勢するような力が作用する。
特に本実施の形態では、前記第2の分岐路92dが、タービンシャフト8の径方向(R)に対して約45°以上、傾斜しているので、その下端部から流出するオイルの向きは、タービンシャフト8の径方向(R)および周方向の中間(θ=45°)から周方向寄りになる。このため、このオイルの流れによってベアリング10およびタービンシャフト8の回転を効果的に助勢することができる。
なお、図2に表れているように第2の分岐路92dは、タービンシャフト8の軸心Xと直交する横方向から見ると、その軸心Xとほぼ直交するように設けられている。つまり、第2の分岐路92dは、タービンシャフト8の軸心Xと直交する仮想平面上を延びており、ここから供給されるオイルの流れは、タービンシャフト8の軸心Xの方向の速度成分を有さない。このことは、オイルの流れによってベアリング10およびタービンシャフト8の回転を助勢する上で有利になる。
したがって、本実施の形態に係るターボ過給機の潤滑構造によると、2ステージ・ターボシステムを装備するエンジン1の吸気通路11の下流側に配置されたHPターボ3において、ベアリング10に供給するオイルの流れがタービンシャフト8の正回転を助勢するようにしたので、図3を参照して上述したように、上流側のLPターボ2からの吸気の流れFに逆向きの旋回成分Sが含まれていても、タービンシャフト8の逆回転を抑制でき、その信頼性の低下を抑制できる。
しかも、本実施の形態ではフルフローティング・タイプのベアリング10を用いており、前記のように外周面に向かって供給されるオイルの流れを受けてベアリング10自体が回転し、その内周面とタービンシャフト8の外周面との間の油膜を介して、当該タービンシャフト8の回転を助勢するようになる。このため、ベアリング10の外周面に供給するオイルの流れによって、タービンシャフト8の回転を効果的に助勢することができる。
−他の実施形態−
本発明の構成は、上述した実施の形態に限定されることなく、その他の種々の形態を包含している。すなわち、前記実施の形態ではベアリング10をフルフローティング・タイプのものとしているが、これに限らず、いわゆるセミフローティング・タイプのものとしてもよい。これは、ベアリング10自体の回転は規制されていても、その内外周に形成される油膜を介してタービンシャフト8の逆回転を抑制できるからである。
本発明の構成は、上述した実施の形態に限定されることなく、その他の種々の形態を包含している。すなわち、前記実施の形態ではベアリング10をフルフローティング・タイプのものとしているが、これに限らず、いわゆるセミフローティング・タイプのものとしてもよい。これは、ベアリング10自体の回転は規制されていても、その内外周に形成される油膜を介してタービンシャフト8の逆回転を抑制できるからである。
また、図4を参照して上述したように、前記実施の形態ではオイル供給路92の第2の分岐路92dを径方向(R)から所定角度θ(45°)以上、傾斜させているが、これは45°未満であってもよい。但し、θ≦90であれば、θが大きいほど、オイルの流れがタービンシャフト8の回転を助勢する効果が高いので、好ましくはθ≧30°、少なくともθ≧15°とするのが好ましい。
さらに、前記実施の形態ではタービンシャフト8の軸心Xと直交する方向から見ると、第2の分岐路92dが軸心Xとほぼ直交しているが、第2の分岐路92dを軸心Xの方向に或る程度、傾斜させてもよい。また、第2の分岐路92dは1本でなく、複数本であってもよい。この場合はそれらをタービンシャフト8の軸心Xの方向に離間させるのが好ましく、その上さらにタービンシャフト8の周方向にも離間させるのが好ましい。
さらにまた、前記実施の形態ではエンジン1の吸気通路11に低圧段のLPターボ2と高圧段のHPターボ3とを配設し、それらを切り替えて動作させる2ステージ・ターボシステムを例示しているが、これにも限定されず、本発明は、例えば3ステージ・ターボシステムにも適用できる。また、ターボ過給機よりも吸気の上流側にターボ過給機以外の過給機、即ち電動式或いは機械駆動式の過給機が設けられている場合にも、その下流側のターボ過給機の潤滑構造として本発明を適用することができる。
本発明は、エンジンなどに装備されるターボ過給機に適用可能であり、いわゆる2ステージ・ターボシステムの高圧段のターボ過給機に適用して、その信頼性を高める効果が高い。
1 エンジン
3 高圧段のターボ過給機(HPターボ)
8 タービンシャフト(回転シャフト)
9 ベアリングハウジング
92 オイル供給路(ベアリングに潤滑油を供給するための油路)
92d 第2の分岐路(油路の下流側の部分)
10 ベアリング
X タービンシャフトの軸心
3 高圧段のターボ過給機(HPターボ)
8 タービンシャフト(回転シャフト)
9 ベアリングハウジング
92 オイル供給路(ベアリングに潤滑油を供給するための油路)
92d 第2の分岐路(油路の下流側の部分)
10 ベアリング
X タービンシャフトの軸心
Claims (1)
- ターボ過給機の回転シャフトのベアリングに潤滑油を供給するための油路がベアリングハウジングに形成されている潤滑構造であって、
前記ベアリングが前記回転シャフトの挿通される円筒状とされ、その外周面に臨んで前記油路の下流側の端部が開口しており、
前記回転シャフトの軸心の方向に見て、前記油路の下流側の部分は、その端部の開口から当該回転シャフトの径方向外方に向かいつつ、この回転シャフトの回転する向きと反対側に所定角度以上、傾斜して延びていることを特徴とするターボ過給機の潤滑構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015245320A JP2017110552A (ja) | 2015-12-16 | 2015-12-16 | ターボ過給機の潤滑構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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ID=59079519
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