JP2017109420A - 水性インキ組成物および紫外線硬化型ワニス組成物を用いた平版印刷方法及び印刷物 - Google Patents
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Description
本適用例に係る水性インキ組成物および紫外線硬化型ワニス組成物を用いた印刷方法は、基材上に水性インキ組成物を用いて水なし平版印刷方法で印刷層を形成する印刷工程と、印刷層上に紫外線硬化型ワニス組成物を塗布する被覆工程と、印刷層上に塗布した紫外線硬化型ワニス組成物を硬化させてオーバーコート層を形成する紫外線照射工程と、を備えることを特徴とする。
上記適用例に係る印刷方法において、水性インキ組成物は、顔料と、水溶性または水分散性樹脂と、沸点が140℃以上の水溶性有機溶媒と、水とを含み、水性インキ組成物中における水溶性または水分散性樹脂の質量を(A)、水溶性有機溶媒の質量を(B)、水の質量を(C)としたときに、〔(A)/(B)〕が0.8〜2.2であり、〔(B)/(C)〕が0.8〜2.5であることが好ましい。
(適用例3)
上記適用例に係る印刷方法において、水性インキ組成物は、20℃において水の溶解度が5質量%以上80質量%以下である有機溶媒を含むことが好ましい。
上記適用例に係る印刷方法において、被覆工程は、平版印刷ユニットを用いる方式、ロール式、チャンバー式、グラビア式、フレキソ式のいずれかにより行われることが好ましい。
(適用例5)
上記適用例に係る印刷方法において、印刷工程と被覆工程とは、インラインで行われることが好ましい。
(適用例6)
上記適用例に係る印刷方法において、印刷工程と被覆工程とは、オフラインで行われることが好ましい。
上記適用例に係る印刷方法において、印刷工程は、相対湿度70%以上の環境下で行われることが好ましい。
(適用例8)
本適用例に係る印刷物は、上記適用例のいずれかに記載の印刷方法によって印刷されたことを特徴とする。
本発明の印刷方法の説明に先立ち、本発明の印刷方法に用いられる組成物について説明する。
本発明の印刷方法に用いられる水性インキ組成物は、顔料と、水溶性または水分散性樹脂と、水とを含む水性インキ組成物であれば特に限定されないが、以下のいずれかの水性インキ組成物を用いることが好ましい。
(1)顔料と、水溶性または水分散性樹脂と、水溶性有機溶媒と、水とを含む水性インキ組成物
(2)顔料と、水溶性または水分散性樹脂と、有機溶媒と、水とを含む水性インキ組成物
(3)顔料と、水溶性または水分散性樹脂と、水溶性有機溶媒と、有機溶媒と、水とを含む水性インキ組成物
顔料としては特に限定されず、種々の無機顔料及び有機顔料を用いることができる。
無機顔料としては硫酸バリウム、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉等が用いられる。
水溶性または水分散性の樹脂としては特に限定されないが、水溶性または水分散性のアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、α−オレフィンマレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂(アルキド樹脂も含む)、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられ、これらの樹脂からなる群から任意に選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下に挙げる樹脂についても、同様の手法で水溶化又は水分散化することができる。
水溶性有機溶媒としては、2価以上のポリオール化合物が好ましく用いられる。沸点が140℃以上であるものがより好ましく、20℃において水に任意の割合で溶解するものがさらに好ましい。このような水溶性有機溶媒は、良好な樹脂溶解性を有する。
水としては、水道水、イオン交換水、純水等を用いることができる。水性インキ組成物中に含まれる水の質量を(C)としたとき、水溶性有機溶媒の質量との関係〔(B)/(C)〕が、0.8以上2.5以下であることが好ましく、1.0以上2.5以下であることがより好ましい。水溶性有機溶媒と水との質量比〔(B)/(C)〕が0.8未満の場合、水性インキ組成物中の水分含有量が多く、また樹脂含有量が少なすぎるため、インキ粘度及びタックが低すぎて、版の非画線部からインキが剥がれにくくなり、安定な印刷物が得られない。〔(B)/(C)〕が2.5を超える場合、インキ中の水分含有量が少なすぎるため、印刷中にインキ中の水分含有量が蒸発等により減少した場合にインキ粘度及びタックが増大し、安定な印刷物が得られない。
有機溶媒としては、20℃において水の溶解度が5質量%以上80質量%以下であるものが好ましい。このような有機溶媒としては、下記式(1)〜(4)に示すような化合物が好ましく用いられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記式(1)〜(4)中、Xtは炭素数3〜18の飽和もしくは不飽和炭化水素基、フェニル基又はベンジル基であり、Ytは水素原子又はメチル基であり、Ztは水素原子又はメチル基であり、muは0〜15の整数であり、nvは0〜15の整数であり、mu+nvは1以上である。また、上記式(1)〜(4)中、t、u及びvは1以上4以下の任意の整数である。
本発明の印刷方法に用いられる水性インキ組成物は、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。カチオン系、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤を用いることができる。
本発明の印刷方法に用いられる紫外線硬化型ワニス組成物としては水性であっても非水性であってもよく、光重合性のモノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤とを含み、紫外線を照射することにより硬化するものであれば好適に用いることができる。さらに硬化性または非硬化性の樹脂を含んでいてもよい。オーバーコート層の光沢感や手触りを調整するために、樹脂ビーズなどを添加してもよい。
非水性の紫外線硬化型ワニス組成物の一例としては、光重合性のモノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤と、助剤とを含む。必要に応じて、光重合性のモノマーまたはオリゴマーと相溶性を有する樹脂を含んでいてもよい。
PO84F、Laromer PO94F、Laromer LR8997、Laromer LR8889、Laromer LR8869、Laromer LR8996、Laromer LR9019、サートマー社製のCN371、CN372、CN373、CN383、CN374、CN386、ダイセル・サイテック社製のEBECRYL80、EBECRYL81、EBECRYL83、EBECRYL3708、EBECRYL7100、コグニス社製のPHOTOMER4662、4770、4771、4967等が挙げられる。
さらに、その他の光重合性モノマーまたはオリゴマーとして4官能以上のものを用いる場合は、その含有量が10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。これにより、オーバーコート層に適切な柔軟性を付与することができ、割れの発生を抑制することができる。
水性紫外線硬化型ワニス組成物の一例としては、光重合性のモノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤や増感剤と、助剤と、水とを含むものが挙げられる。必要に応じて、光重合性のモノマーまたはオリゴマーと相溶性を有する樹脂を含んでいてもよい。光重合性モノマーは水溶性であっても非水溶性であってもよく、本明細書では光重合性モノマーが水溶性であり水に溶解しているもの、光重合性モノマーが水に溶解せず乳化しているもの、いずれも水性紫外線硬化型ワニス組成物という。
次に、本発明の印刷方法について説明する。本発明の印刷方法は、上記したような水性インキ組成物により水なし平版印刷方法で基材上に印刷層を設ける印刷工程と、紫外線硬化型ワニス組成物を印刷層上に塗布する被覆工程と、印刷層上に塗布した紫外線硬化型ワニス組成物を硬化させてオーバーコート層を形成する紫外線照射工程と、を少なくとも含む。
印刷工程では、基材上に上述したような水性インキ組成物を用いて印刷層を形成する。基材としては、オフセット印刷に用いられる各種原反が挙げられ、以下では基材として印刷用紙を例に挙げて説明する。
被覆工程では上述したような紫外線硬化型ワニス組成物を、印刷ユニットの下流側に付設されたコーターを用いて、印刷層上に塗布していく。このとき、1回の塗布で形成されるオーバーコート層の膜厚が0.5〜5μm程度になるよう調整することが好ましい。これにより、硬化性と耐摩擦性を両立させることができる。よりオーバーコート層の膜厚を厚くしたい場合は、印刷機にコーターユニットを複数設けるなどして被覆工程を複数回(例えば2回)繰り返してもよい。
紫外線硬化型ワニス組成物が塗布された印刷用紙は、紫外線照射ユニットに送られる。
紫外線照射工程では、紫外線照射ユニットが、印刷用紙を搬送しながら紫外線を照射して紫外線硬化型ワニス組成物を硬化し、オーバーコート層を形成する。紫外線照射ユニットとしては、低圧または高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオードなどが挙げられ、1灯、または2〜8灯が印刷用紙の搬送方向に沿って並べて設置されて用いられる。紫外線照射ユニットを通過した印刷用紙は排紙部に排紙される。以上の工程により印刷物が得られる。
さらに、水性の紫外線硬化型ワニス組成物を用いると紫外線硬化型ワニス組成物中のモノマー、開始剤の含有率を低く抑えることができ、印刷工程における臭気を軽減することができる。また、有機溶剤系洗浄剤の使用量も削減することができ、より環境負荷の少ない印刷方法となる。
以下、本発明の印刷方法の変形例について説明する。
上記実施形態では、平版印刷機とコーターとが一体となったインライン方式を例に挙げて説明したが、本発明の印刷方法はこれに限定されない。印刷機とは別にコーティング作業を行うオフラインコーターで被覆工程を行ってもよい。このとき、コーターの種類はロール式やチャンバー式、グラビア式、フレキソ式等いずれの方式であってもよい。コーターに換えて平版印刷機で紫外線硬化型ワニス組成物を塗布してもよい。
本発明の印刷方法は、被覆工程の後に、プレス板を加熱圧着してオーバーコート層の表面の平滑度を高める加熱圧着工程を有していてもよい。これにより、より高光沢な印刷物とすることができる。
本発明の印刷方法は、70%RH(相対湿度)以上に維持された状態で印刷工程を行うことが好ましく、80〜100%RHに維持された状態で行うことがより好ましい。これにより、印刷過程における印刷インキ組成物の物性の変動を抑制することができ、安定して高品質の印刷を行うことができる。また、上記のような条件で印刷工程を行うために、印刷機は、被覆部材と加湿部材とを備えていることが好ましい。被覆部材は印刷機を完全に密閉していなくてもよく、具体例としてビニールシートやプラスチックケース等が挙げられる。加湿部材は少なくとも水供給部、加湿器及び加湿センサーを備えることが好ましい。加湿部材が備える加湿器としては、水を加熱せずに加湿するものが好ましく用いられ、気化式加湿器や超音波加湿器等が例示される。なかでも超音波加湿器であることが好ましい。
本発明の印刷方法によって得られた印刷物は、耐摩擦性に優れた印刷物とすることができる。
1.1 水溶性樹脂の合成
還流冷却器、攪拌機、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール500部を仕込んで撹拌を開始し、80℃まで昇温した。ここに窒素気流下で、スチレン100部、メチルメタクリレート160部、ブチルアクリレート140部、アクリル酸100部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部を5時間かけて連続滴下した。80℃で2時間攪拌後、イソプロピルアルコールを減圧脱溶剤にて留去することにより固形アクリル樹脂を得た。この固形アクリル樹脂の酸価は156mgKOH/gであった。
1.1で調整した固形アクリル樹脂37部、ジメチルエタノールアミン11部、グリセリン26部、水26部の計100部を用いてワニスを調整した。
顔料(FASTOGEN BLUE FDB15、DIC株式会社製)を18部、1.2で調整したワニス68部、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル5部、グリセリン4.5部、水4.5部の計100部を用いて水性インキ組成物を調整した。
2.1 非水性紫外線硬化型ワニス組成物の調整
表1に示す組成で非水性紫外線硬化型ワニス組成物を調整した。
表2に示す組成で水性紫外線硬化型ワニス組成物を調整した。
表3に示す組成で油性ワニス組成物を調整した。
上記1、2で調整した水性インキ組成物、オーバーコート層形成用ワニス組成物を用い、以下のようにして実施例1、2、比較例1、2の印刷物を得た。
(実施例1)
印刷版を水なし版TAC(東レ(株)製)、印刷機をローランドR704(ローランド社製)、用紙をOKトップコート+(王子製紙(株)製)とし、調整した水性インキ組成物を用いて、印刷速度1万枚/時にて印刷を行った。引き続いて、水性紫外線硬化型ワニス組成物をバーコーター#6にて塗布し、メタルハライドランプ(120W、ラインスピード40m/min)で硬化してオーバーコート層を形成し、実施例1の印刷物を得た。
水性紫外線硬化型ワニス組成物に代えて非水性紫外線硬化型ワニス組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の印刷物を得た。
(比較例1)
オーバーコート層の形成を省略した以外は実施例1と同様にして比較例1の印刷物を得た。
(比較例2)
印刷版を水なし版TAC(東レ(株)製)、印刷機をローランドR704(ローランド社製)、用紙をOKトップコート+(王子製紙(株)製)とし、調整した水性インキ組成物を用いて、印刷速度1万枚/時にて印刷を行った。引き続いて、油性ワニス組成物をRIテスター(2分割ロール)を用いてワニスの盛りが0.1mlの条件にて塗布した後、乾燥してオーバーコート層を形成し、比較例2の印刷物を得た。
実施例1、2、比較例1、2の印刷物について、以下の方法で評価を行い、結果を表4にまとめた。
印刷物を触診にて判定した。オーバーコート層または印刷層に触れた際にベタつきがなく、指で表面を擦っても抵抗感がないレベルを5、指で表面を擦ると若干の抵抗感があるがベタつきはないレベルを4、指で表面を擦ると抵抗感があるがベタつきはなく実用上問題ないレベルを3、ベタつきがあり、指で擦ると跡が残るレベルを2、ベタつきがあり、指で擦ると塗膜が付着するレベルを1として、5段階で評価した。
印刷物の光沢値を、BYK Gardner社製micro−TRI−gloss光沢計(入射/反射=60°/60°)を用いて測定した。
得られた印刷物を完全に硬化(乾燥)させた後、学振型摩擦試験機を用い、あて紙を上質紙、荷重を500g、摩擦回数500回にて試験を行い、オーバーコート層または印刷層の状態を判定することで印刷物の耐摩擦性を評価した。オーバーコート層に全く傷がないレベルを5、オーバーコート層に若干の傷があるレベルを4、オーバーコート層に傷はあるが、印刷層に到達しない程度であるレベルを3、印刷層に到達する程度の傷があるが、実用上問題ないレベルを2、印刷層の大部分に傷があり、実用レベルにないものを1として、5段階で評価した。
得られた印刷物を完全に硬化(乾燥)させた後、下地に画線部がある部分にセロハンテープを貼り、剥がした際のオーバーコート層の剥離の程度を目視にて観察し、印刷層とオーバーコート層の密着性を評価した。剥離が全くないレベルを5、剥離がほぼないレベルを4、部分的な剥離はあるが実用上問題ないレベルを3、大部分が剥離し実用レベルにないものを2、完全に剥離するレベルを1として、5段階で評価した。
Claims (8)
- 基材上に水性インキ組成物を用いて水なし平版印刷方法で印刷層を形成する印刷工程と、
前記印刷層上に紫外線硬化型ワニス組成物を塗布する被覆工程と、
前記印刷層上に塗布した紫外線硬化型ワニス組成物を硬化させてオーバーコート層を形成する紫外線照射工程と、
を備えることを特徴とする平版印刷方法。 - 前記水性インキ組成物は、顔料と、水溶性または水分散性樹脂と、沸点が140℃以上の水溶性有機溶媒と、水とを含み、前記水性インキ組成物中における前記水溶性または水分散性樹脂の質量を(A)、前記水溶性有機溶媒の質量を(B)、前記水の質量を(C)としたときに、〔(A)/(B)〕が0.8〜2.2であり、〔(B)/(C)〕が0.8〜2.5であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷方法。
- 前記水性インキ組成物は、20℃において水の溶解度が5質量%以上80質量%以下である有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷方法。
- 前記被覆工程は、平版印刷ユニットを用いる方式、ロール式、チャンバー式、グラビア式、フレキソ式のいずれかにより行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の平版印刷方法。
- 前記印刷工程と前記被覆工程とは、インラインで行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の平版印刷方法。
- 前記印刷工程と前記被覆工程とは、オフラインで行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の平版印刷方法。
- 前記印刷工程は、相対湿度70%以上の環境下で行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の平版印刷方法。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の平版印刷方法を用いて印刷された印刷物。
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