JP2017108496A - 振動波モータ及びそれを有するレンズ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動波モータの圧電素子の分極により圧電素子が凹形状に変形し、弾性体との接着界面に空気が溜まり、振動効率が低下し、安定したモータ性能が得られない。【解決手段】分極領域103a、103bと非分極領域103dとを有し、印加される交流電圧によって振動を発生する圧電素子103と、接触部102c、及び圧電素子103と固着する固着面102aを有する弾性体102と、接触部102cと接触する接触面101aを有し、弾性体102に対して相対移動する摩擦部材101と、を有する振動波モータ100において、固着面102aで圧電素子103と弾性体102とは固着され一体化して振動子109を形成し、固着面102aに固着の際に巻き込まれる空気を排出する手段が設けられている。【選択図】 図8
Description
本発明は、押圧された振動子に楕円運動を発生させることにより摩擦部材を駆動する振動波モータと、その振動波モータを使用したレンズ装置に関する。
超音波モータでは、圧電素子が固着された弾性体の接触部が摩擦部材に加圧接触状態となっている。その加圧接触状態において、分極された圧電素子に2相の電圧を印加することにより、当該弾性体に2相の超音波振動を励起すると、弾性体の接触部に楕円運動が生じ、摩擦部材が弾性体に対して相対的に移動する。特許文献1には、振動子の摩擦接触部が押圧方向に振動する1次の曲げ振動モードと、駆動方向に振動する2次の曲げ振動モードとを合成して、摩擦接触部に楕円運動を発生させた超音波モータが開示されている。
しかし、特許文献1に開示された超音波モータでは、圧電素子板が分極による残留歪で分極方向に膨張し、分極領域及び非分極領域における膨張率の差によって反りかえるように変形し、圧電素子板に凹部が生じる。そして、圧電素子板と振動板とを接着等で固着する際に、空気が巻き込まれ、その空気が前述の凹部に溜まり、固着面積が減って振動効率が低下するという問題があった。また、その空気の影響を受けて安定したモータ性能が得られないという問題があった。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、圧電素子と弾性体との接着界面に溜まった空気を排出することにより、振動効率の低下を防止し、安定したモータ性能を有する振動波モータを提供することを目的とする。
本発明の振動波モータは、分極領域と非分極領域とを有し印加される交流電圧によって振動を発生する圧電素子と、接触部、及び圧電素子と固着する固着面を有する弾性体と、接触部と接触する接触面を有し弾性体に対して相対移動する摩擦部材と、を有する振動波モータにおいて、固着面で圧電素子と弾性体とは固着され一体化して振動子を形成し、固着面に固着の際に巻き込まれる空気を排出する手段が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、圧電素子と弾性体との接着界面に溜まった空気を排出することにより、振動効率の低下を防止し、安定したモータ性能を有する振動波モータを提供することができる。
以下、図1乃至図4を用いて本発明の実施形態の振動波モータ100について説明する。なお、本実施形態の振動波モータ100は、デジタルカメラ用のレンズ鏡筒などの駆動用アクチュエータとしてユニット化した直動駆動型モータを例に説明するが、使用用途はこれに限られるものではない。
図1は、本発明の実施形態である振動波モータ100の分解斜視図である。なお、全ての図において同一部材は同一記号で示される。本明細書中において、後述する振動子109に発生する楕円運動により、振動子109が移動する方向をX方向と定義する。また、後述するバネ部材107による加圧方向をZ方向と定義する。Z方向において、振動子109が後述する摩擦部材101から遠ざかる向きを+Z方向、振動子109が摩擦部材101に近づく方向を−Z方向と定義し、適宜+Z方向を上方向または上側、−Z方向を下方向または下側として説明に用いる。さらに、X方向とZ方向に垂直な方向をY方向と定義する。
固定台110は、振動波モータ100の全体を保持すると共に、振動波モータ100をユニット化している。固定台110には、振動子109が加圧接触する接触面101aを備えた摩擦部材101が2本の固定ビス111で固定されている。摩擦部材101の接触面101aには、弾性体102が押圧により加圧されて接触している。弾性体102の一方の面(下側の面)には、突起部102b(図3参照)が備えられており、他方の面(上側の面)には接着剤などにより圧電素子103が圧着されている。この突起部102bが摩擦部材101の接触面101aに接触している。そして、弾性体102に圧電素子103が圧着された状態で、圧電素子103に電圧を印加することにより超音波領域の周波数の振動(超音波振動)を発生させ、弾性体102に楕円運動を発生させることができる。本発明の振動波モータ100では、弾性体102と圧電素子103とで振動子109を構成している。
圧電素子103の上側の面には、遮断部材115が備えられている。遮断部材115は、圧電素子103の超音波振動を減衰させることなく、遮断部材115の上側に備えられた小基台104への超音波振動の伝播を防ぐ機能を有している。そして、小基台104は、遮断部材115を介してバネ部材107による加圧力を圧電素子103に伝える機能を有している。本実施形態では、圧電素子103は遮断部材115を介して小基台104に面接触している。なお、遮断部材115の材質としては、フェルト生地が適している。
小基台104の上側には加圧部材106が備えられている。加圧部材106は円盤形状を有する円盤部と当該円盤部からZ方向に延出する嵌合軸部106bとを有する。加圧部材106の上側には加圧受け部材108が備えられ、加圧受け部材108は、中央に嵌合孔部108aを有する円盤形状をしており、当該円盤形状を形成している外周側面にはネジ部108bが形成されている。そして、加圧部材106の嵌合軸部106bが嵌合孔部108aに嵌合し、摩擦部材101の接触面101aに対して概ね垂直な方向にのみ移動可能に保持される。
加圧部材106の円盤部と加圧受け部材108との間には、圧縮コイルバネで構成されたバネ部材107が配置されている。バネ部材107は、摩擦部材101の接触面101aの垂線方向に押圧力を発生する。その押圧力により振動子109と摩擦部材101とを加圧接触させる。加圧部材106は、バネ部材107が発生する押圧力を小基台104と遮断部材115とを介して振動子109に伝え、振動子109を摩擦部材101に加圧接触させる機能を有する。そして、この加圧部材106とバネ部材107とが本発明の加圧手段となる。
小基台104、加圧手段、振動子109周りの部品は、保持部材105によって保持されている。加圧受け部材108のネジ部108bが保持部材105のネジ孔部105bに螺合することにより、加圧受け部材108が固定される。なお、保持部材105の機能については、後述で詳細に説明する。
振動子109の下側には、支持部材114と押さえ板113とが備えられている。支持部材114は、薄板形状をしており、X方向よりもZ方向において弱い剛性の特性を有する。支持部材114は振動子109を支持し、押さえ板113により2本の固定ビス112で保持部材105に共締め固定される。この支持部材114は、保持部材105に対して、弾性体102のZ方向の振動を許容するものの、X方向のガタを生じさせないように弾性体102を固定する機能を有している。また、押さえ板113は、振動子109と所定量の隙間を設けて配置されているため、振動子109が−Z方向に所定量以上振動すると、振動子109は押さえ板113に当接して、それ以上変位できない構成になっている。即ち、この押さえ板113は、振動子109が−Z方向に所定量以上に変位することを規制する機能を有している。
転動ボール116は、保持部材105に形成された溝部105dと天板117に形成された溝部117b(図4(B)参照)との間に介在することで、保持部材105が天板117に対して相対移動可能となるように転動支持されている。天板117は、4本の固定ビス118で固定台110に固定されている。振動波モータ100には、上述の各部材が組込まれ、振動波モータ100がユニット化して構成される。
図2(A)は、本発明の振動波モータ100の平面図であり、図2(B)は、正面図である。固定台110には、二本の固定ビス111で摩擦部材101が固定されている。さらに天板117が四隅を4本の固定ビス118で固定台110に固定されている。天板117の中央には長方形開口117aが空いており、保持部材105の突出部105cが露出している。
弾性体102の突起部102bが摩擦部材101に当接した状態で、振動子109は摩擦部材101の上に載置されている。弾性体102は、薄板形状の支持部材114を介して保持部材105に固定されている。そのため、弾性体102は、支持部材114の変形により、保持部材105に対してZ方向には自由に振動することができるが、X方向にはガタなく位置を固定できる構成になっている。
図1を参照すると、振動子109と摩擦部材101との間にX方向の相対的な移動が発生した場合、固定台110、摩擦部材101、固定ビス111、天板117及び固定ビス118が固定部となる。一方、振動子109を含めた、遮断部材115、小基台104、固定ビス112、押さえ板113、支持部材114、加圧部材106、バネ部材107及び加圧受け部材108、そしてそれらを保持する保持部材105が可動部となる。つまり本発明の振動波モータ100は、駆動源である振動子109自身が可動する自走式のモータユニットとなっている。なお、実際のレンズ鏡筒などに組み込まれる際には、保持部材105をフォーカス機構やズーム機構に連結して駆動する。
次に、振動波モータ100の構成部材の詳細について説明する。図3は、図1及び図2における弾性体102と支持部材114の接合状態を説明するための拡大斜視図で、摩擦部材101側(下側)から見た図である。まず、弾性体102の構成について説明する。弾性体102には、2つの突起部102bが形成される。突起部102bの上端面には接触部102cが形成され、この接触部102cは、摩擦部材101の接触面101aと当接する部分である。一方、弾性体102の+Z方向側の面(即ち、2つの突起部102bが形成されている面と反対の側の面)には圧電素子103が接着剤などにより圧着されている(不図示)。なお、弾性体102と圧電素子103の圧着は、圧着されればよく、その方法は限定されない。
この圧電素子103は、単層で構成されている。そして、この単層で構成された圧電素子103に所望の交流電圧を印加して励振させ、圧電素子103が圧着された弾性体102に2つの振動モードを励起する。このとき2つの振動モードの振動位相を所望の位相差となるように設定することで、接触部102cには、図3の矢印で示すような楕円運動が発生する。この楕円運動を図1に示すような振動子109で発生させ、摩擦部材101の接触面101aに伝達することで、摩擦部材101に対して振動子109自身が直動駆動することが可能となる。
次に、支持部材114の構成について説明する。支持部材114のX方向における両側には、支持部材114が弾性体102と当接及び接合するため段差部114aが形成されている。そして、当該段差部114aにおいて溶接や接着などの手段により弾性体102と支持部材114とが接合される。なお、弾性体102と支持部材114とは接合できればよく、その接合方法は溶接や接着などに限定されない。また、支持部材114のY方向における両側には、支持部材114を保持部材105に共締め固定するための固定ビス112が貫通する孔部114bが形成されている。
弾性体102は、X方向よりもZ方向において弱い剛性の特性を有する薄板形状の支持部材114を介して保持部材105に固定される。これにより弾性体102は、加圧方向であるZ方向には保持部材105に対して自由に振動可能であるが、駆動方向であるX方向には保持部材105に対して位置ずれなく固定される。
次に、小基台104及び保持部材105の構成について説明する。図4(A)は、図2(A)の断面線4A−4Aにおける断面図であって、Y方向の軸に垂直な面で加圧部材106の中心を通るような面における断面図である。図4(B)は、図2(B)の断面線4B−4Bにおける断面図であって、X方向の軸に垂直な面で加圧部材106の中心を通るような面における断面図である。中心線201は、弾性体102の重心を通過し、摩擦部材101の接触面101aの法線を含む線である。
小基台104には、Z方向に延出する2つの軸部104cが形成されている。また、保持部材105には、孔部105aが2か所に設けられ、2つの孔部105aはZ方向に伸びた長孔形状になっている。小基台104の2つの軸部104cは、孔部105aに遊嵌しており、小基台104の傾斜が許容されている。
小基台104の上側中央には、当接部104bが設けられている。この当接部104bは、図4(A)の断面図において略円弧形状を有すると共に、Y方向に延在する形状、即ち略円筒の一部からなる形状をしている。そして、この当接部104bには、加圧部材106の下端面106aが接触している。この下端面106aの形状は、平面となっているため、下端面106aと当接部104bとの接触は、Y方向(図4(A)の紙面奥行方向、図4(B)においては左右方向)に長さを有する線接触となる。したがって、図4(A)における断面図を参照すると、小基台104はY方向に平行な軸を中心にして、ある程度傾くことが可能となっている。この構成は、仮に製造時の寸法誤差や組み立て誤差、また外乱により部材に傾きが生じた場合でも、摩擦部材101の接触面101aに弾性体102の接触部102cが倣うように小基台104が傾くことを許容している。小基台104が傾斜することにより良好な加圧接触状態が維持される。
保持部材105には、ネジ孔部105bが形成されており、加圧受け部材108の外径側面に設けられたネジ部108bが螺合する。部品のばらつき等が生じた場合でも、加圧受け部材108のねじ込み量を変えることにより、このばらつきに応じた加圧力の調整を行うことができる。加圧受け部材108の中央に形成された嵌合孔部108aに加圧部材106の嵌合軸部106bが嵌合保持されることで、加圧部材106がZ方向にのみ移動可能な構成となっている。
保持部材105には溝部105dが4つ形成され、天板117には各溝部105dに対応する溝部117bが4つ形成される。溝部105dと対応する溝部107bとの間に転動ボール116を挟持することにより、保持部材105は天板117に対して転動支持されている。そして、天板117は、固定台110に固定され、バネ部材107の付勢力で弾性体102の接触部102cを摩擦部材101の接触面101aに加圧接触させたときの反力を受ける役割を担っている。この構成により、Z方向の加圧接触の反力を受けながら、X方向に移動する際の摩擦抵抗を極力小さくすることができる。また、保持部材105の溝部105dと天板117の溝部117bとに転動ボール116が挟まれることで、Y方向に位置決めができるようになる。本発明の振動波モータ100では、4つの転動ボール116を備えてバネ部材107の付勢力を受けており、保持部材105を天板117に対して傾くことなく転動支持することが可能となっている。
圧電素子103と小基台104との間には、遮断部材115が挟み込まれている。遮断部材115には、振動を阻害することなく、振動の伝播を遮断する機能を有する材料が用いられている。そのため、圧電素子103の超音波振動が阻害されることなく、小基台104への振動の伝播を抑えることができる。遮断部材115に適した材質として、例えばフェルト生地などが挙げられる。
弾性体102の接触部102cを摩擦部材101の接触面101aに加圧接触させるための加圧力を伝えるにあたり、振動子109はZ方向に自由に変位することができる必要がある。また、保持部材105には、フォーカス機構やズーム機構が連結されるので保持部材105を精度よく駆動するにあたり、振動子109は保持部材105にガタなく保持されている必要がある。そこで、振動子109を薄板形状で形成された支持部材114を介して保持部材105に固定することにより、振動子109はZ方向の運動の自由度を確保すると共に、X方向にガタなく保持されることが達成される。
次に、圧電素子103について説明する。図5(A)は圧電素子103の平面図、図5(B)は圧電素子103の正面図、図5(C)は圧電素子103の底面図である。圧電素子103の+Z方向側の表面には、2つの電極膜103aと103bが形成されると共に、該電極膜103aと該電極膜103bの間にGND電極膜103c1が形成されている。
電極膜103aは、圧電素子103の+Z方向側の面において圧電素子103の長辺を等分する線に対し、−X方向側の略全域に渡って形成され、他方、電極膜103bも同様に、+X方向側の略全域に渡って形成されている。図5(A)において、電極膜103aと電極膜103bの間隔は、6A−6A線上及び6A’−6A’線上に比べて、6B−6B線上で狭くなっている。
GND電極膜103c1は、圧電素子103の−Y方向側の端部まで延在している(図5(A)参照)。そして、GND電極膜103c2が圧電素子103の壁面部(−Y方向の側面)の一部を+Z方向の端部から−Z方向の端部まで延在している(図5(B)参照)。さらにGND電極膜103c3が2つの電極膜103aと103bとが形成された面の反対側の面(−Z方向の面)の一部に設けられている(図5(C)参照)。この−Z方向の面には、略一面を覆うようにGND電極膜103cが形成されている。そして、−Z方向の面のGND電極膜103cと+Z方向の面のGND電極膜103c1とは、壁面のGND電極膜103c2とGND電極膜103c3とを介して導通されている。
次に、分極処理について説明する。電極膜103aとGND電極膜103cとの間、及び電極膜103bとGND電極膜103cとの間に電圧をかけることで分極処理が行なわれる。そして、電極膜103aと電極膜103bとに対応する領域が分極される。一方、電極膜103aと電極膜103bの間の領域は、非分極領域103dであり、分極されない。電極膜103aと電極膜103bとが特許請求の範囲に記載された2つの分極領域に相当する。
図6(A)乃至(C)は、上述の分極により歪が残留し、圧電素子103が反って凹むような変形が生じる様子を示している。図6(A)は、図5(A)の断面線6A−6A、及び断面線6A’−6A’において分極による歪が圧電素子103に影響する様子を示している。分極処理は、電極膜103aとGND電極膜103cとの間、及び電極膜103bとGND電極膜103cとの間に電圧をかけて行われる。分極処理後は、圧電素子103に歪が残留して電圧を印加した方向に圧電素子103が膨張する。
圧電素子103の+Z方向の面では、電極膜103aと電極膜103bとが所定の間隔だけ離れて形成されているのに対し、−Z方向の面では、GND電極膜103cが略全面に形成されている。電極膜103a及びGND電極膜103cによって挟まれている圧電素子103の領域には、分極処理によって厚み方向に均一な残留歪ST1が生じる。電極膜103b及びGND電極膜103cによって挟まれている圧電素子103の領域も同様に、厚み方向に均一な残留歪ST1が生じる。一方、電極膜103aと電極膜103bとの間の圧電素子103の領域は、GND電極膜103cの対向する面に電極膜103aや電極膜103bがないため、電極膜103aの端部や電極膜103bの端部との間で分極処理がなされる。そのため、厚み方向に対して傾いた方向に残留歪ST2が生じる。この厚み方向に対して傾いた残留歪ST2によって、圧電素子103には−Z方向の面の中央が凹むような反りが生じることになる。ここで、断面線6A−6A及び断面線6A’−6A’において、分極処理による圧電素子103の変形量を反り量d1とする。
図6(B)は、図5(A)の断面線6B−6Bにおいて分極による歪が圧電素子103に影響する様子を示している。図6(A)で説明したメカニズムと同様に、圧電素子103には、−Z方向の面の中央が凹むような反りが生じる。図6(A)の場合と比較して異なることは、断面線6B−6Bにおける電極膜103aと電極膜103bとの間隔が、断面線6A−6A及び断面線6A’−6A’における間隔より狭くなっていることである。そのため、厚み方向に対して傾いた方向の残留歪ST3は、圧電素子103の長辺の中央に近い領域で発生する。そのため、断面線6B−6Bにおける反り量d2は、断面線6A−6A及び断面線6A’−6A’における反り量d1よりも大きくなる。
図6(C)は、図5(C)の断面線6C−6Cにおいて分極による歪が圧電素子103に影響する様子を示している。図6(A)及び図6(B)で説明したように、断面線6B−6Bにおける反り量d2は、断面線6A−6A及び断面線6A’−6A’における反り量d1よりも大きくなる。そのため、断面線6C−6Cにおいても、圧電素子103は−Z方向の面の中央が凹むような反りが生じることになる。
図6(A)乃至(C)で説明したように、圧電素子103は、分極処理により−Z方向の表面の中央が凹むように変形する。そして、この変形した面に弾性体102が向き合わされ、圧電素子103には、弾性体102との固着面102aの中央部に空間部が形成される。この空間部が存在すると、圧電素子103と弾性体102とを接着剤等で固着する際に、固着面102aの中央部に空気を巻き込みやすくなる上、もし空気を巻き込んだ場合、巻き込んだ空気が固着する面の中央に溜まりやすくなる。本発明の実施形態では、圧電素子103と弾性体102との接着界面に巻き込まれた空気を排出する手段が備えられている。
(従来例)
次に、従来例について説明する。図15(A)乃至(C)には、従来例の弾性体132を用いた例が示されている。従来例の弾性体132と圧電素子103とを接着剤等で固着すると、圧電素子103の−Z方向の面の中央部が凹んでいるため、その凹部に空気溜まり(空隙133)が発生する。この空隙133の領域では、圧電素子103と弾性体132とが固着されていないため、固着面積が減少し圧電素子103の振動が弾性体132に伝わらず、振動効率が低下していた。なお、空隙133は、圧電素子103と弾性体132との間にあるので実際には見えないが、圧電素子103を通して見た場合の空隙133が破線で描かれている。
次に、従来例について説明する。図15(A)乃至(C)には、従来例の弾性体132を用いた例が示されている。従来例の弾性体132と圧電素子103とを接着剤等で固着すると、圧電素子103の−Z方向の面の中央部が凹んでいるため、その凹部に空気溜まり(空隙133)が発生する。この空隙133の領域では、圧電素子103と弾性体132とが固着されていないため、固着面積が減少し圧電素子103の振動が弾性体132に伝わらず、振動効率が低下していた。なお、空隙133は、圧電素子103と弾性体132との間にあるので実際には見えないが、圧電素子103を通して見た場合の空隙133が破線で描かれている。
(実施例1)
図7(A)は、本発明の実施例1の弾性体102の平面図(+Z方向の側から見た図)、図7(B)は、当該弾性体102の側面図(+X方向の側から見た図)、図7(C)は、当該弾性体102の正面図(−Y方向の側から見た図)である。
図7(A)は、本発明の実施例1の弾性体102の平面図(+Z方向の側から見た図)、図7(B)は、当該弾性体102の側面図(+X方向の側から見た図)、図7(C)は、当該弾性体102の正面図(−Y方向の側から見た図)である。
弾性体102は、圧電素子103と固着する固着面102aを有すると共に、圧電素子103との固着面102aの反対側の面(−Z方向の側)に突出した2つの突起部102bを有する。突起部102bの上端面には、摩擦部材101の接触面101aと当接する面の形態を有する接触部102cが設けられている。固着面102aには、弾性体102の短辺を等分する略中央部分においてX方向に延びるV字の溝の形態を有する溝部102dが設けられている。
溝部102dは、圧電素子103を弾性体102に固着する際に巻き込まれた空気、または固着面102aに溜まった空気を−X方向の端部もしくは+X方向の端部から外部に排出させる機能を有する。これにより、空気溜まりによって固着面積が減少し振動効率が低下してしまうことを防止することが可能となる。
図7(B)では溝部102dはV字溝の形状で描かれているが、空気を抜く機能を有する溝形状として、例えばU字溝、四角溝など他の溝形状を採用することができる。また空気を抜くために溝部102dを備えているが、空気を抜くことができれば他の手段でも構わない。
本発明の実施形態では、図5に示すような2つの分極領域を有する圧電素子103を用いて、分極処理によって発生する反りを説明した。しかし分極処理によって発生する反りは、2つの分極領域に限定されるものではない。分極領域と非分極領域103dとを有する圧電素子103であれば、その境界部において分極による膨張率の差が必ず生じる。そして、境界部近傍では反りが発生し、凹凸が生じてしまう。そのため、任意の複数の分極領域を有する圧電素子103についても、非分極領域103dまたは非分極領域103dの近傍に位置するような空気を排出する手段(溝または孔)を設けることで、空気溜まりを減少させ、固着面積の減少を防止することができる。そして、振動効率が低下してしまうことを防止することが可能となる。
図8(A)乃至(C)には、本発明の実施例1の弾性体102を備えた振動子109における、溜まった空気を排出するメカニズムが示されている。本発明の実施例1の弾性体102の固着面102aには、短辺を等分する略中央部分においてX方向に延びる溝部102dが形成されている。そのため、圧電素子103の固着の際に空気が巻き込まれて溜まったとしても、矢印で示すように溜まった空気が溝部102dを介して外部に排出される。そのため本発明の構成では、空隙133’は発生しにくく、もし発生したとしても極めて小さい空隙133’となる。このように本発明の弾性体102では、固着面102aに溝部102dを設けることで、圧電素子103と弾性体102とを接着剤等で固着する際に、固着面102aの中央に空気が滞留しないようにしている。そして、空気を溜まりにくくすることで、固着面積が減少して振動効率が低下してしまうことを防止している。
次に、振動子109が発生する2つの曲げ振動モードについて説明をする。図9(A)は、X方向の2次の曲げ振動モードの態様を示している。図9(B)は、Y方向の1次の曲げ振動モードの態様を示している。弾性体102と圧電素子103とは固着され一体化されており、振動子109を構成している。圧電素子103に高周波の交流電圧を印加することで、圧電素子103は伸縮するのに対して、弾性体102は伸縮しないため、圧電素子103と弾性体102の伸縮差により振動子109にX方向の2次の曲げ振動モードが励起される。
まず、図9(A)を参照して2次の曲げ振動モードについて説明する。2次の曲げ振動モードは、振動の節を節位置121a、節位置121b、節位置121cに有すると共に、振動の腹を腹位置122a、腹位置122bに有する。また弾性体102の節位置121a、節位置121b、節位置121cでは、2次の曲げ振動モードによるZ方向の振動は非常に小さい。前述の弾性体102の接触部102cは、節位置121aと節位置121cに設けられているため、2次の曲げ振動モードによってZ方向には振動しないが、X方向に振動する。このような位置に接触部102cを設けることで、X方向の2次の曲げ振動モードにより、接触部102cにX方向の振動を起こすように構成している。
次に、図9(B)を参照して、Y方向の1次の曲げ振動モードを説明する。1次の曲げ振動モードは、振動の節を節位置121d、節位置121eに有すると共に、振動の腹を腹位置122cに有する。節位置121d、節位置121eでは、1次の曲げ振動モードによるZ方向の振動は非常に小さい。一方、腹位置122cでは、1次の曲げ振動モードによるZ方向の振動は大きい。前述の接触部102cは、腹位置122cに設けられているため、1次の曲げ振動モードによってX方向には振動しないが、Z方向には振動する。このような位置に接触部102cを設けることで、Y方向の1次の曲げ振動モードにより、接触部102cにZ方向の振動を起こすように構成している。本発明の振動波モータ100の振動子109は、直交する二つの曲げ振動モードを組み合わせて弾性体102の接触部102cに楕円運動を発生させている。そして、本発明の振動波モータ100では、溝部102dが1次の曲げ振動モードの腹位置122cに形成されている。
次に、図10(A)、(B)を参照して、2つの曲げ振動モードにおける歪の大きさについて説明する。図10(A)は、2次の曲げ振動モードにおける各位置の歪を示している。図10(A)において、横軸xはX方向における位置であり、縦軸Strは歪である。X方向の位置が2次の曲げ振動モードの腹位置122aでは、歪は正の方向の最大値Str2となり、X方向の位置が2次の曲げ振動モードの腹位置122bでは、歪は負の方向の最大値−Str2となる。腹位置122aと腹位置122bの中間地点は、節位置121bであるため、歪はゼロとなる。
図10(B)は、1次の曲げ振動モードにおけるY方向の歪を示している。図10(B)において、横軸yはY方向における位置であり、縦軸Strは歪である。Y方向の位置が1次の曲げ振動モードの腹位置122cでは、歪は最大値Str1となる。図10(A)と図10(B)において、2次の曲げ振動モードの歪の最大値Str2と1次の曲げ振動モードの歪の最大値Str1とを比較すると、1次の曲げ振動モードは振動モード次数が小さいので曲がりやすく、結果として歪が大きくなる。つまり、2次の曲げ振動モードにおける歪の最大値Str2よりも1次の曲げ振動モードにおける歪の最大値Str1の方が大きい。そのため本発明の振動子109では、1次の曲げ振動モードの腹位置122cにおいて、最大値Str1の歪が発生する。そして、振動波モータ100から駆動力を得るために圧電素子103は、1次の曲げ振動モードの振動と2次の曲げ振動モードの振動とを合わせた合成振動を発生させている。
本発明の振動波モータ100では、図9(B)に示すように溝部102dは、1次の曲げ振動モードの腹位置122cに形成される。溝部102dの部分において、弾性体102の剛性は弱くなるので、弾性体102は屈曲しやすくなる。この剛性の低下により、弾性体102の接触部102cに発生する楕円運動の振幅が大きくなり、安定したモータ性能を実現することができる。なお、溝部102dは、1次の曲げ振動モードの腹位置122cの近傍に形成されていてもよい。
図11は、本発明の振動波モータ100が組み込まれたレンズ装置1及びレンズ装置1に取り付けられた撮像装置27の断面図である。まず、レンズ装置1の主要構成部材について説明する。レンズ装置1はレンズ外筒11を備え、レンズ外筒11の−X方向端部には、第1レンズL1及び当該第1レンズL1を保持する保持枠12が取り付けられると共に、+X方向端部には、第3レンズL3が取り付けられている。レンズ外筒11の内部には、フォーカスレンズL2、当該フォーカスレンズL2を保持する保持部材13、当該保持部材13を保持する保持軸14、保持部材13のX軸周りの回転を防止する回転止め軸15が備えられている。さらに、フォーカスレンズ位置検出手段16、演算処理部20及び振動波モータ100が備えられている。また、レンズ外筒11の外部表面には、被写体距離表示手段19が備えられている。
保持部材13は、X方向に移動可能に配置されており、保持部材13によって保持されるフォーカスレンズL2もまたX方向に移動可能となっている。保持部材13には、X方向に延びる丸穴13aとU字穴13bが形成されると共に、YZ平面に対してX軸回りに±45°傾いた2つの斜面からなる切り欠き部13cが形成されている。この切り欠き部13cは、後述する球面部105eと当接するようになっている。
保持軸14は、フォーカスレンズL2の保持部材13を保持している。保持軸14は、保持部材13に形成された丸穴13aと係合することで、保持部材13をX方向に移動可能に保持している。また保持軸14は、筒状のレンズ外筒11の壁部と保持枠12とに挟まれて固定保持されている。回転止め軸15は、保持部材13に形成されたU字穴13bに係合することにより、保持部材13のX軸周りの回転を防止している。
保持部材105は、振動波モータ100における可動部の部材であり、固定側の部材である固定台110に対してX方向に相対的に駆動される。振動波モータ100の駆動力は、保持部材105に備えられた球面部105eに伝えられる。この球面部105eは、保持部材13に備えられた切り欠き部13cと当接し、振動波モータ100のX方向の駆動力がこの当接を介して保持部材13に伝えられる。この駆動力により、フォーカスレンズL2がX方向に駆動される。固定台110は、レンズ外筒11に固定されている。
球面部105eは+Z方向に付勢されて切り欠き部13cに当接することにより、切り欠き部13cと球面部105eとは、X方向にガタなく当接することが可能となっている。このような構成とすることで、保持部材105と保持部材13とは、X方向に一体的に動くことができる。これによりフォーカスレンズL2を振動波モータ100でオーバーシュートなく高精度に駆動制御することができる。
レンズ外筒11の内部には、フォーカスレンズL2の位置を検出するためのフォーカスレンズ位置検出手段16が備えられており、保持部材13には、スケール17が貼り付けられている。スケール17には、低反射部と高反射部とが所定ピッチで交互に並んだパターンが形成されている。フォーカスレンズ位置検出手段16は、スケール17に赤外光16aを投光すると共に、スケール17で反射した反射光を受光する。受光した反射光の強度変化の回数をカウントすることで、フォーカスレンズ位置検出手段16とスケール17との相対位置関係を算出する。この算出結果から、保持部材13に保持されたフォーカスレンズL2の位置を検出することができる。
レンズ外筒11の内部には、演算処理部20が備えられ、演算処理部20はレンズ装置1における全ての演算、制御、記憶を担っている。演算処理部20の記憶領域には、レンズ情報が保存されており、レンズ情報は被写体距離算出時に用いられる。このレンズ情報には、フォーカスレンズ位置検出手段16の検出結果と被写体距離とが対応したテーブル情報も含まれる。演算処理部20は、記憶領域に保存されているこのレンズ情報と、フォーカスレンズ位置検出手段16の検出結果に基づいて、被写体距離を算出する被写体距離算出手段としての機能を果たしている。
演算処理部20は、フォーカスレンズ位置検出手段16の検出結果に基づいて、フォーカス駆動信号を生成すると共に、振動波モータ100を目標位置へ駆動させるように指示する。したがって、演算処理部20は、フォーカス駆動信号生成手段としての機能も果たしている。なお、レンズ外筒11の外部には、演算処理部20で算出された被写体距離を表示する被写体距離表示手段19が備えられている。
レンズ外筒11の+X方向端部には、撮像装置取付部18が設けられ、また撮像装置27の−X方向端部にはレンズ装置取付部21が設けられている。撮像装置取付部18がレンズ装置取付部21に係合することによって、レンズ装置1は、撮像装置27に取り付けられる。撮像装置取付部18とレンズ装置取付部21とは、X軸周りのバヨネット連結であり、レンズ装置1と撮像装置27とが脱着可能な構成となっている。
次に、撮像装置27の主要構成部材について説明する。撮像装置27は、カメラ外装22を有し、当該カメラ外装22の内部に撮像素子23、カメラ演算処理部24、記憶手段25が備えられている。そして、カメラ外装22の+X方向の外側面には、外部表示手段26が備えられている。カメラ外装22の−X方向端部には、フォーカスレンズL2を透過した撮影光束を取り込むための円形開口を有するレンズ装置取付部21が備えられている。
撮像素子23は、フォーカスレンズL2を透過した撮影光束の結像面近傍に配置されており、結像した被写体像を映像信号に変換する。カメラ演算処理部24は、撮像装置27における全ての演算、制御、記憶を担っている。記憶手段25は、カメラ演算処理部24からの指令信号に基づいて、撮像素子23で得られた映像信号を保存する手段としての機能を果たしている。外部表示手段26は、カメラ演算処理部24からの指令信号に基づいて、撮像素子23で得られた映像信号を表示する。
撮像装置27は、撮像素子23で得られた映像信号を外部表示手段26に表示する第1の撮影モードと、撮像素子23で得られた映像信号を記憶手段25に保存する第2の撮影モードの少なくとも2つのモードを有する。この撮影モードは、カメラ外装22に設けられた不図示の入力手段の入力結果に基づいて、カメラ演算処理部24が判断して切り換えられる。
撮像装置27にレンズ装置1が取り付けられている状態では、レンズ装置1の演算処理部20と撮像装置27のカメラ演算処理部24とは、通信線が接続されて通信可能となっている。これにより演算処理部20とカメラ演算処理部24とは、互いの状態を把握することが可能となる。そして、レンズ装置1の演算処理部20は、撮像装置27の撮影モードに応じて、被写体距離表示手段19に表示する被写体距離を更新する周期を切り替えることが可能となる。
以上、本発明の実施例1では、圧電素子103の非分極領域103dの位置に対応する弾性体102の固着面102aに溝部102dが設けられている。溝部102dは、弾性体102の固着面102aの中央近傍を通るように設けられている。また、溝部102dの位置は、1次の曲げ振動モードにおいて歪が最も大きくなる腹位置122cである。この溝部102dにより、圧電素子103の中央部に空気を溜まりにくくしている。これにより、圧電素子103の分極による歪で生じる中央凹部に溜まる空気による振動効率の低下の影響を受けにくくなり、安定したモータ性能を有する振動波モータ100及び振動波モータ100を備えたレンズ装置1を実現することができる。
(実施例2)
実施例1では、固着面102aに形成された溝部102dは、1次の曲げ振動モードにおいて歪が最も大きくなる腹位置122cに設けられている。実施例2では、空気を排出するための溝部202dを2次の曲げ振動モードにおいて歪が小さい節位置121bに設けており、溝部202dの配置が実施例1と異なっている。なお、実施例1と同一部材のものは、同一記号で図示される。また実施例1と同じところは説明を省略し、実施例1と異なるところだけ説明する。
実施例1では、固着面102aに形成された溝部102dは、1次の曲げ振動モードにおいて歪が最も大きくなる腹位置122cに設けられている。実施例2では、空気を排出するための溝部202dを2次の曲げ振動モードにおいて歪が小さい節位置121bに設けており、溝部202dの配置が実施例1と異なっている。なお、実施例1と同一部材のものは、同一記号で図示される。また実施例1と同じところは説明を省略し、実施例1と異なるところだけ説明する。
図12(A)は、本発明の実施例2の弾性体202の平面図(+Z方向の側から見た図)、図12(B)は、当該弾性体202の正面図(−Y方向の側から見た図)である。溝部202dは、固着面202aの長辺を等分する略中央においてY方向に延びるV字溝であり、固着面202aの−Y方向端部から+Y方向端部まで形成されている。この溝部202dを介して、固着面202aに溜まった空気を−Y方向端部もしくは+Y方向端部から外部に排出することができる。これにより、空気溜まりで固着面積が減少して振動効率が低下してしまうことを防止することが可能となる。
図13(A)は、X方向の2次の曲げ振動モードの節と腹の位置を示している。図13(B)はY方向の1次の曲げ振動モードの節と腹の位置を示している。通常、固着面202aに溝部202d等を設けると、固着面積が減少する。そして、固着されていない部分では、圧電素子103の伸縮が弾性体202に伝わらないため、振動効率が落ちてしまう。そこで本発明の実施例2では、弾性体202と圧電素子103との固着面積の減少による弊害を可能な限り少なくするために、図13(A)に示すように歪が最も少ない部位である2次の曲げ振動モードの節位置121bに溝部202dを設けている。この構成により、溝部202dを設けることによる振動効率の低下を抑制することができ、安定したモータ性能を実現することができる。なお、溝部202dは、2次の曲げ振動モードの節位置121bの近傍に形成されていてもよい。
以上、本発明の実施例2では、圧電素子103の非分極領域103dの位置に対応する弾性体202の固着面202aに溝部202dが設けられている。溝部202dは、弾性体202の固着面202aの中央近傍を通るように設けられている。また、溝部202dの位置は、2次の曲げ振動モードにおいて歪が最も少ない節位置121bである。この溝部202dにより、圧電素子103の中央部に空気を溜まりにくくしている。これにより、圧電素子103の分極による歪で生じる中央凹部に溜まる空気による振動効率の低下の影響を受けにくくなり、安定したモータ性能を有する振動波モータ100及び振動波モータ100を備えたレンズ装置1を実現することができる。
(実施例3)
実施例1及び実施例2では、溝部102d、溝部202dによって空気を排出させている。実施例3では、固着面302aに孔形状部を設けて空気を排出させており、この孔形状部が実施例1及び実施例2と異なっている。なお、実施例1及び実施例2と同一部材のものは、同一記号で図示される。また実施例1及び実施例2と同じところは説明を省略し、実施例1及び実施例2と異なるところだけ説明する。
実施例1及び実施例2では、溝部102d、溝部202dによって空気を排出させている。実施例3では、固着面302aに孔形状部を設けて空気を排出させており、この孔形状部が実施例1及び実施例2と異なっている。なお、実施例1及び実施例2と同一部材のものは、同一記号で図示される。また実施例1及び実施例2と同じところは説明を省略し、実施例1及び実施例2と異なるところだけ説明する。
図14は、本発明の実施例3の弾性体302を示している。孔部302dは、固着面302aに設けられており、固着面302aの短辺を等分する位置及び長辺を等分する位置、即ち固着面302aのほぼ中央に設けられ、Z方向に貫通している。この孔部302dを介して、固着面302aに溜まった空気を弾性体302の−Z方向の側へ排出することができる。これにより空気溜まりで固着面積が減少して駆動効率が低下してしまうことを防止することが可能となる。なお、孔部302dは、1次の曲げ振動モードの腹位置122cの近傍及び2次の曲げ振動モードの節位置121bの近傍に形成されていてもよい。
以上、本発明の実施例3では、圧電素子103の非分極領域103dの位置に対応する弾性体302の固着面302aに孔部302dが設けられている。孔部302dは、弾性体302の固着面302aの中央近傍に設けられている。この孔部302dにより、圧電素子103の中央部に空気を溜まりにくくしている。これにより、圧電素子103の分極による歪で生じる中央凹部に溜まる空気による振動効率の低下の影響を受けにくくなり、安定したモータ性能を有する振動波モータ100及び振動波モータ100を備えたレンズ装置1を実現することができる。以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
1 レンズ装置
100 振動波モータ
101 摩擦部材
101a 接触面
102 弾性体
102a、202a、302a 固着面
102c 接触部
102d 溝部
302d 孔部
103 圧電素子
103a、103b 電極膜(分極領域)
103d 非分極領域
109 振動子
121b 2次の曲げ振動モードの節位置
122c 1次の曲げ振動モードの腹位置
100 振動波モータ
101 摩擦部材
101a 接触面
102 弾性体
102a、202a、302a 固着面
102c 接触部
102d 溝部
302d 孔部
103 圧電素子
103a、103b 電極膜(分極領域)
103d 非分極領域
109 振動子
121b 2次の曲げ振動モードの節位置
122c 1次の曲げ振動モードの腹位置
Claims (8)
- 分極領域と非分極領域とを有し、印加される交流電圧によって振動を発生する圧電素子と、
接触部、及び前記圧電素子と固着する固着面を有する弾性体と、
前記接触部と接触する接触面を有し、前記弾性体に対して相対移動する摩擦部材と、
を有する振動波モータにおいて、
前記固着面で前記圧電素子と前記弾性体とは固着され一体化して振動子を形成し、
前記固着面に前記固着の際に巻き込まれる空気を排出する手段を設けることを特徴とする、振動波モータ。 - 前記手段は、前記固着面に設けられる溝部または孔部であることを特徴とする、請求項1に記載の振動波モータ。
- 前記溝部または前記孔部は、前記圧電素子の前記非分極領域の近傍に位置することを特徴とする、請求項2に記載の振動波モータ。
- 前記分極領域は、前記圧電素子で2つに分極された領域であり、前記非分極領域は2つの前記分極領域の間にあることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動波モータ。
- 前記振動は、1次の曲げ振動と2次の曲げ振動の合成振動であり、前記溝部または前記孔部は該1次の曲げ振動の腹位置の近傍に設けられることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の振動波モータ。
- 前記振動は、1次の曲げ振動と2次の曲げ振動の合成振動であり、前記溝部または前記孔部は該2次の曲げ振動の節位置の近傍に設けられることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の振動波モータ。
- 前記振動は超音波振動であり、前記振動波モータは、前記超音波振動する超音波モータであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の振動波モータ。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の振動波モータを有するレンズ装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2015239138A JP2017108496A (ja) | 2015-12-08 | 2015-12-08 | 振動波モータ及びそれを有するレンズ装置 |
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JP2015239138A JP2017108496A (ja) | 2015-12-08 | 2015-12-08 | 振動波モータ及びそれを有するレンズ装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2015
- 2015-12-08 JP JP2015239138A patent/JP2017108496A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110829888A (zh) * | 2018-08-09 | 2020-02-21 | 佳能株式会社 | 振荡致动器和具有振荡致动器的电子设备 |
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