JP2017107932A - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
熱電変換技術は、熱電変換材料(熱電材料)の両端部に高温部と低温部を設けることにより、両端部間に電位差が生じる効果(ゼーベック効果)を利用して電気エネルギーを取り出す技術である。
しかしながら、これらの材料系は、毒性元素や希少元素(レアメタル)を含んでいるため、環境負荷が大きく、低コスト化が困難であるという課題がある。
本発明は、環境負荷が小さく、低コスト化が可能な熱電変換素子を実現することを目的とする。
1つの態様では、熱電変換素子の製造方法は、基板上に、化学量論比の正しいシリコンを含む層よりもシリコンリッチなシリコンリッチ層を形成する工程と、シリコンリッチ層にシリコンドット形成用の穴を形成する工程と、シリコンドット形成用の穴にシリコン結晶を成長させる工程と、熱処理を行なってシリコンドットを形成する工程とを含む。
本実施形態にかかる熱電変換素子は、図1に示すように、熱電変換材料(熱電材料)を含む熱電変換部1と、その両端部に設けられた電極2、3とを備え、図2に示すように、高温部4と低温部5との間に設けられ、ゼーベック効果を利用して電気エネルギーを取り出すようになっている。
特に、本実施形態では、熱電変換部1を構成する熱電変換材料に、フォノンの平均自由行程よりも小さく、かつ、キャリアの平均自由行程よりも大きいサイズのシリコンドット6を用いる。つまり、本実施形態の熱電変換素子は、フォノンの平均自由行程よりも小さく、かつ、キャリアの平均自由行程よりも大きいサイズのシリコンドット6を備える。このようなサイズのシリコンドット6を用いることで、ドット内部で、フォノンは効率よく散乱されるが、キャリアは散乱されないようにすることができる。つまり、このようなサイズのシリコンドット6は、キャリアを散乱させずに、フォノンを散乱させることができるシリコンドットである。なお、ここでは、上述のようなサイズのシリコンドット6を複数備えるものとなるが、各シリコンドット6のサイズは全てが均一でなくても良い。また、n型熱電変換部1Xに用いる場合には、シリコンドット6はn型にドーピングされ、p型熱電変換部1Yに用いる場合には、シリコンドット6はp型にドーピングされる。
ここでは、シリコンドット6は、ナノメートルスケールサイズである。このため、シリコンドット6をシリコンナノドット、シリコンナノドット結晶又はシリコンナノドット構造ともいう。
まず、熱電変換材料の性能指数Zは、次の式1で表される。
熱電変換性能の指標としては、Zに温度Tを掛けて無次元化したZTがよく用いられている。
そして、ZTの値が大きいほど、熱電変換材料としては高性能となる。
本実施形態では、電気伝導率σを下げることなく、熱伝導率κを下げることによって、ZTの値を向上させ、高性能な熱電変換素子を実現する。
つまり、熱伝導率κは、電子による熱伝導とフォノン(格子振動)による熱伝導の和として表される。
このため、フォノン散乱を増大させれば、熱伝導率κを下げることができ、ZTの値を大きくすることができる。
一方、キャリアが散乱されてしまうと、電気伝導率σが低下し、ZTの値が小さくなってしまい、結果的に、高性能な熱電変換素子を実現することができなくなる。
そこで、本実施形態では、上述のようなサイズのシリコンドット6を用いている。
具体的には、シリコンドット6のサイズは、散乱させたいフォノンの平均自由行程、及び、電子や正孔などの電気伝導を担うキャリアの平均自由行程によって決めれば良い。
なお、熱伝導率を約80%以上低下させるのに平均自由行程が約100nm以上のフォノンを散乱させれば良いということは、例えば、シリコンにおけるフォノンの平均自由行程に対する熱伝導率(累積熱伝導率)の関係(例えば塩見淳一郎,“ナノスケールにおける半導体のフォノン熱伝導”, 伝熱, Vol. 50, No. 211, (2011), pp. 21-28.参照)などを用いて導き出すことができる。つまり、シリコンにおけるフォノンの平均自由行程に対する熱伝導率の関係から、平均自由行程が約100nm以上のフォノンを選択的に散乱させることができれば、その寄与分として、熱伝導率を80%以上低下させることができることを導き出すことができる。
このように、熱電変換材料にシリコンを用い、熱伝導率を約80%以上低下させながら、電気伝導率を低下させずに、上述のZTの値を大きくして、高性能な熱電変換材料を実現するためには、シリコンドット6のサイズを、約40nmよりも大きく、かつ、約100nmよりも小さくすれば良い。例えば、シリコンドット6のサイズを約50nmとすれば良い。この場合、平均自由行程が約40nmのキャリアは、シリコンドット6のサイズ約50nmよりも小さいため、ドット内部での散乱が抑制され、電気伝導率の低下が抑えられる一方、平均自由行程が約50nm以上のフォノンはドット内部で散乱され、熱伝導率を80%以上低下させることができる。この結果、上述のZTの値を最大で約7倍程度大きくすることができ、高性能な熱電変換素子、ひいては、高性能な熱電変換素子を実現することができる。
また、ここでは、図1に示すように、隣接するシリコンドット6は結合した状態になっている。そして、結合した状態になっているシリコンドット6は結晶方位が揃っている。ここでは、シリコンナノドット6の結晶方位は揃っており、かつ、隣接するシリコンドット同士は結合して一体となった状態になっている。このように、シリコンドット同士が結合しており、この結合部分を通じてキャリアの伝導経路が確保されるため、電気伝導率の低下をより確実に抑制することが可能となり、また、熱電変換素子の性能ばらつきを抑制することも可能となる。また、シリコンドット6の結晶方位が揃っているため、結晶粒界でのキャリアの散乱が抑制され、電気伝導率の低下をより確実に抑制することが可能となる。
本実施形態では、まず、図3(A)に示すように、基板8X上に、化学量論比の正しいシリコンを含む層よりもシリコンリッチなシリコンリッチ層7Xを形成する。
本実施形態では、シリコン基板8X上に、シリコンリッチ層7Xとして、SiOX(x<2)層を形成する。つまり、シリコン基板8X上に、化学量論比の正しいSiO2よりもシリコンリッチなSiOX(x<2)層7Xを形成する。
次に、図3(B)に示すように、シリコンリッチ層7Xにシリコンドット形成用の穴9を形成する。
本実施形態では、シリコン結晶6Xをエピタキシャル成長させる。これにより、後述のシリコンドット6を形成する工程において、結晶方位が揃っているシリコンドット6が形成されることになる。
本実施形態では、シリコンリッチ埋込層7Yとして、SiOX(x<2)埋込層を形成する。つまり、シリコンリッチ埋込層7Yとして、化学量論比の正しいSiO2よりもシリコンリッチなSiOX(x<2)埋込層を形成する。その後、SiOX(x<2)埋込層7Y上にSiO2層7Zを形成する。なお、SiO2層7Zは形成しなくても良い。
本実施形態では、隣接するシリコンドット6が結合した状態になるようにシリコンドット6を形成する。
ここでは、熱処理を行なうことによって、シリコンドット形成用の穴9の中に成長させたシリコン結晶6Xが核となって、その周囲に、シリコンリッチなSiOX(x<2)層7X、7Yから析出したシリコンが成長して、シリコンドット6が形成される。なお、SiOX(x<2)層7X、7Yは安定なSiO2層7になっていく。
また、上述のように、SiOX(x<2)層7Xの膜厚t、及び、シリコンドット形成用の穴9の横方向及び奥行き方向のピッチtを設定しておくことで、シリコンドット6のサイズ(ここでは直径)dは、SiOX(x<2)層7Xの膜厚t、及び、シリコンドット形成用の穴9の横方向及び奥行き方向のピッチtで規定され、d≒tとなる。例えば、t=50nmとした場合、シリコンドット6のサイズ(直径)dは50nmとなる。このように、シリコンドット6のサイズ(大きさ)は、SiOX(x<2)層7Xの膜厚、及び、シリコンドット形成用の穴9の横方向及び奥行き方向のピッチによって規定されるため、制御性良く所望のサイズのシリコンドット6を形成することが可能である。
なお、熱処理は、これに限られるものではなく、例えば、上述のようにしてシリコン基板8X上に形成した構造物を、真空又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中において、フェムト秒レーザで照射することによって加熱しても良い。この場合、フェムト秒レーザの照射条件は、例えば、中心波長約800nm、パルス幅200fs、繰り返し周波数100kHz、出力1Wとすれば良い。
その後、本実施形態では、熱酸化処理を行なって、シリコンドット6の周囲を覆うSiO2層7、8を形成する。ここでは、シリコン基板8Xを、必要に応じて、その裏面側から研磨し、熱酸化して、SiO2層8とする。また、SiO2層にならなかったSiOX(x<2)層7X、7Yも、この熱酸化処理によって、SiO2層7となる。このようにして、シリコンドット6の周囲を覆うSiO2層7、8が形成される。
なお、上述の実施形態では、シリコン基板8X上にシリコンリッチ層7XとしてSiOX(x<2)層を形成し、シリコンリッチ埋込層7YとしてSiOX(x<2)埋込層を形成し、熱酸化処理を行なってシリコンドット6の周囲を覆うSiO2層7、8を形成しているが、これに限られるものではない。例えば、シリコン基板上にシリコンリッチ層としてSi3NX(x<4)層、即ち、化学量論比の正しいSiO2よりもシリコンリッチなSi3NX(x<4)層を形成し、シリコンリッチ埋込層としてSi3NX(x<4)埋込層、即ち、化学量論比の正しいSiO2よりもシリコンリッチなSi3NX(x<4)層を形成し、熱窒化処理を行なって、シリコンドットの周囲を覆うSi3N4層(絶縁層)を形成しても良い。このように、SiOX(x<2)層、SiOX(x<2)埋込層、SiO2層に代えて、Si3NX(x<4)層、Si3NX(x<4)埋込層、Si3N4層を用いても良い。なお、ここでは、シリコンドットの表面側と裏面側を、いずれもSiO2層又はSi3N4層とし、同一の絶縁層によって覆っているが、これに限られるものではなく、一方の側をSiO2層とし、他方の側をSi3N4層とするなど、シリコンドットの表面側を覆う絶縁層と裏面側を覆う絶縁層とが異なっていても良い。
以下、上述の実施形態に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
フォノンの平均自由行程よりも小さく、かつ、キャリアの平均自由行程よりも大きいサイズのシリコンドットを備えることを特徴とする熱電変換素子。
隣接する前記シリコンドットが結合した状態になっていることを特徴とする、付記1に記載の熱電変換素子。
(付記3)
結合した状態になっている前記シリコンドットは結晶方位が揃っていることを特徴とする、付記2に記載の熱電変換素子。
前記シリコンドットの周囲を覆う絶縁層を備えることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
(付記5)
前記絶縁層は、SiO2層又はSi3N4層であることを特徴とする、付記4に記載の熱電変換素子。
基板上に、化学量論比の正しいシリコンを含む層よりもシリコンリッチなシリコンリッチ層を形成する工程と、
前記シリコンリッチ層にシリコンドット形成用の穴を形成する工程と、
前記シリコンドット形成用の穴にシリコン結晶を成長させる工程と、
熱処理を行なってシリコンドットを形成する工程とを含むことを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
前記シリコンドットを形成する工程において、隣接する前記シリコンドットが結合した状態になるように前記シリコンドットを形成することを特徴とする、付記6に記載の熱電変換素子の製造方法。
(付記8)
前記シリコン結晶を成長させる工程は、前記シリコン結晶をエピタキシャル成長させる工程であることを特徴とする、付記7に記載の熱電変換素子の製造方法。
前記シリコン結晶を成長させる工程の後、前記シリコンドットを形成する工程の前に、前記シリコン結晶が形成された前記シリコンドット形成用の穴を埋め込み、化学量論比の正しいシリコンを含む層よりもシリコンリッチなシリコンリッチ埋込層を形成する工程を含むことを特徴とする、付記6〜8のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
前記シリコンリッチ層を形成する工程において、シリコン基板上にSiOX(x<2)層又はSi3NX(x<4)層を形成し、
前記シリコンリッチ埋込層を形成する工程において、SiOX(x<2)埋込層又はSi3NX(x<4)埋込層を形成し、
前記シリコンドットを形成する工程の後に、熱酸化処理又は熱窒化処理を行なって、前記シリコンドットの周囲を覆うSiO2層又はSi3N4層を形成することを特徴とする、付記9に記載の熱電変換素子の製造方法。
1X n型熱電変換部
1Y p型熱電変換部
2、3 電極
4 高温部
5 低温部
6 シリコンドット
6X シリコン結晶
7、8 絶縁層
7X シリコンリッチ層(SiOX(x<2)層)
7Y シリコンリッチ埋込層(SiOX(x<2)埋込層)
7Z SiO2層
8X 基板(シリコン基板)
9 シリコンドット形成用の穴
10 レジスト
Claims (8)
- フォノンの平均自由行程よりも小さく、かつ、キャリアの平均自由行程よりも大きいサイズのシリコンドットを備えることを特徴とする熱電変換素子。
- 隣接する前記シリコンドットが結合した状態になっていることを特徴とする、請求項1に記載の熱電変換素子。
- 結合した状態になっている前記シリコンドットは結晶方位が揃っていることを特徴とする、請求項2に記載の熱電変換素子。
- 前記シリコンドットの周囲を覆う絶縁層を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 基板上に、化学量論比の正しいシリコンを含む層よりもシリコンリッチなシリコンリッチ層を形成する工程と、
前記シリコンリッチ層にシリコンドット形成用の穴を形成する工程と、
前記シリコンドット形成用の穴にシリコン結晶を成長させる工程と、
熱処理を行なってシリコンドットを形成する工程とを含むことを特徴とする熱電変換素子の製造方法。 - 前記シリコンドットを形成する工程において、隣接する前記シリコンドットが結合した状態になるように前記シリコンドットを形成することを特徴とする、請求項5に記載の熱電変換素子の製造方法。
- 前記シリコン結晶を成長させる工程は、前記シリコン結晶をエピタキシャル成長させる工程であることを特徴とする、請求項6に記載の熱電変換素子の製造方法。
- 前記シリコン結晶を成長させる工程の後、前記シリコンドットを形成する工程の前に、前記シリコン結晶が形成された前記シリコンドット形成用の穴を埋め込み、化学量論比の正しいシリコンを含む層よりもシリコンリッチなシリコンリッチ埋込層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
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