JP2017106869A - 光学センサ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 装置内での通信性能を向上させることができる。【解決手段】 光学センサ装置100は、複数の発光部及び該複数の発光部の点灯を制御する点灯制御回路を有する光源モジュールLMを複数含む照射系と、光照射器から被検体に照射され該被検体内を伝播した光を受光する複数の受光部及び該複数の受光部の出力信号を処理する信号処理回路を有する検出モジュールDMを複数含む検出系と、点灯制御回路及び信号処理回路を制御する主制御部と、を備え、主制御部と点灯制御回路は、符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路で接続され、主制御部と信号処理回路は、上記通信経路と、該通信経路とは異なる符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路と、の少なくとも一方で接続される。【選択図】図1
Description
本発明は、光学センサ装置に関する。
近年、被検体に光を照射し、該被検体内を伝播した光を検出する装置の開発が盛んに行われている。
例えば、特許文献1には、複数の発光部を有する光照射器を少なくとも1つ含む照射系と、複数の受光部を有する光検出器を少なくとも1つ含む検出系と、光照射器及び光検出器を制御する制御部と、を備える装置が開示されている。
特許文献1に開示されている装置では、装置内での通信性能を向上させることに関して改良の余地があった。
本発明は、複数の発光部及び該複数の発光部の点灯を制御する点灯制御回路を有する光照射器を少なくとも1つ含む照射系と、前記光照射器から被検体に照射され該被検体内を伝播した光を受光する複数の受光部及び該複数の受光部の出力信号を処理する信号処理回路を有する光検出器を少なくとも1つ含む検出系と、前記点灯制御回路及び前記信号処理回路を制御する主制御部と、を備え、前記主制御部と前記点灯制御回路は、符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路で接続され、前記主制御部と前記信号処理回路は、前記通信経路と、該通信経路とは異なる符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路と、の少なくとも一方で接続されることを特徴とする光学センサ装置である。
本発明によれば、装置内での通信性能を向上させることができる。
以下に、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1には、一実施形態の実施例1に係る光学センサ装置100の概略構成が示されている。
光学センサ装置100は、一例として、拡散光トモグラフィー(DOT)に用いられる。DOTは、例えば生体などの被検体(散乱体)に光を照射し、被検体内を伝播した光を検出して、被検体内部の光学特性を推定する技術である。特に、脳内の血流を検出することで、うつ症状の鑑別診断補助やリハビリテーションの補助機器として利用が期待されている。DOTでは、分解能が向上すると、脳の機能を詳細に理解できることから、多くの研究機関で、分解能を向上させる研究が盛んに行われている。
光学センサ装置100は、図1に示される複数の発光部を有する光照射器としての光源モジュールLM(以下では略して「LM」とも称する)を複数含む照射系と複数の受光部を有する光検出器としての検出モジュールDM(以下では略して「DM」とも称する)を複数含む検出系とを有する光学センサ10と、図2のブロック図に示される中央処理装置、表示I/F部、操作I/F部、光学センサI/F部、記録部を含んで構成される主制御部と、表示部と、操作部と、計算部と、を備えている。
光源モジュールLMは、一例として、複数の発光部を有する面発光レーザアレイを複数含む。すなわち、各発光部は、面発光レーザ(VCSEL)素子である。
光学センサ装置100では、主制御部と全ての光源モジュールLMと全ての検出モジュールDMとが、符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの1つの通信経路で数珠繋ぎに接続されている。
すなわち、主制御部と各LMの間、及び、主制御部と各DMの間において、送信側は情報を符号化して上記通信経路を介して送信し、受信側は受信した符号化された情報を復号化することによって通信を確立する。
なお、主制御部、光源モジュールLM、検出モジュールDMが同時に送信を行わないよう、上記通信経路へ信号を送り出す権利を調停する調停回路(バス・アービター)を設けることが好ましい。また、バスの伝送効率は悪くなるが、調停回路を設けずにバスの使用権を主制御部、光源モジュールLM、検出モジュールDMへ順番に与える方式を採用しても良い。
バス型トポロジーの規格としては、例えばI2C、1-wire、USB、SPI等のシリアルバスが信号線の本数が少なく好適である。無論、パラレルバスを用いても良い。
実施例1において、主制御部が擬似生体に内在する吸光体の位置を測定する方法(被検体の光学特性を検出する方法)を、図27に示されるフローチャートを参照して説明する。測定に際し、被検体に対して、複数の光源モジュールLMと複数の検出モジュールDMが図3に示されるように配置、装着される。また、複数のLMと複数のDMと主制御部は、上記通信経路で接続される。
中央処理装置は、操作部を介しての計測開始の操作による操作情報が、操作I/F部を介して入力されると測定を開始する。
最初のステップS1では、中央処理装置は、記録部に保存されている発光部の点灯順リストから1行読み出す。
次のステップS2では、中央処理装置は、点灯順リストから読み出された点灯対象のLMに対して上記通信経路を介して点灯命令を送信する。この点灯命令には点灯順リストから読み出された点灯対象の面発光レーザアレイと、少なくとも1つの発光部を含むchが記述(指定)されている。そして、点灯命令を受信したLMは、該点灯命令に従って複数の発光部の中の1つを所定の発光光量(発光強度)となるように点灯する。これにより、点灯対象のLMから被検体に光が照射され該被検体内を伝播した光がDMで受光される。
次のステップS3では、中央処理装置は、光学センサ10内の全てのDMに対して、上記通信経路を介して、一度に又は順次、測定命令を送信する。この測定命令を受け取ったDMは、複数の受光部の出力信号をそれぞれ符号化し、必要な場合は平均化等の処理を行い、該DM内の記憶部に一時保存する。
次のステップS4では、中央処理装置は、記憶部に保存された前回測定データの送信を要求する命令を上記通信経路を介して1つ以上のDM内に対して送信する。命令を受信したDMからは、前回測定データが上記通信経路を介して順次主制御部に送信され、主制御部では光学センサI/F部を介して記録部に記録される。
次のステップS5では、中央処理装置は、DMでの測定が完了するまでの時間を待った後に、先に点灯命令を送信したLMに上記通信経路を介して消灯命令を送信し、消灯命令を受信したLMは、命令に従って点灯させていた発光部を消灯する。
次のステップS6では、中央処理装置は、現在点灯しているLMの面発光レーザのchが、点灯順リストが最終行か否かを判断する。ここでの判断が否定されるとステップS7に移行し、肯定されるとステップS8に移行する。
ステップS7では、中央処理装置は、点灯順リストを1行進める。ステップS7が実行されると、ステップS1に戻る。
すなわち、光学センサ10内の全てのLMの全ての面発光レーザアレイの全てのchを点灯させるまでS1〜S5が繰り返される。
ステップS8では、1回の測定が完了したことになるので、中央処理装置は、点灯順リストを先頭に戻す。
次のステップS9では、中央処理装置は、測定を完了させるか否かを判断する。例えば、所定の回数または時間の経過や操作部での測定中止動作等の測定を完了させる条件が成立しない場合は、ここでの判断が否定され、ステップS1に戻る。すなわち、S1〜S9が繰り返される。測定を完了させる条件が成立する場合は、ここでの判断が肯定され、測定を完了する(フロー終了)。
以下の説明では、光源モジュールLM及び検出モジュールDMを、区別しない場合は、プローブとも呼ぶ。また、本明細書では、適宜、擬似生体、生体、被検体の文言を用いるが、擬似生体、生体が被検体の具体例であることに変わりはない。
ところで、光学センサ10は、被検体中の吸光体を検出するセンサとして汎用的に利用できるが、最も利用価値が高い被検体は生体である。しかしながら、一般に、光学センサを用いて生体の血流(吸光体)の位置を検出することは必ずしも容易ではなく、被検体を生体とすると、光学センサ10による効果(検出精度)を確認し難い。
そこで、本実施形態では、汎用性をもたせるとともに、検出精度を確認し易い被検体として、水槽に入った白濁液である擬似生体(ファントムとも呼ぶ)を採用している。
本実施形態では、先ず透明なアクリル製の水槽に注入されたイントラピッド水溶液(イントラピッド10%濃度を10倍に希釈)に、黒いインクを約200ppm程度となるように滴下し、ほぼ生体と同一の吸収係数及び散乱係数とする。この白濁したイントラピッド水溶液に、血流に模した黒色の吸光体を沈める。吸光体は、例えば黒色で直径約5mmのポリアセタールの球体とする。この球体の位置を制御できるように自動ステージに接続された1mm径の細い金属棒に該球体を固定する。この水槽の側面、後述するプローブの位置を正確に決めて設置(装着)する。ここでは、上記アクリル製の水槽は、例えば140mm×A140mm×60mmの容積で壁の厚さ1mmの直方体形状の水槽である。
光学センサ10では、複数(例えば8つ)の光源モジュールLMを含む照射系と、複数(例えば8つ)の検出モジュールDMを含む検出系と、主制御部とが1つのバス型トポロジーの通信経路で接続されている(図1参照)。
図3に示されるように、8つの光源モジュールLM及び8つの検出モジュールDMは、一例として、擬似生体(不図示)に対して、互いに直交するX方向及びY方向のいずれに関しても光源モジュールLMと検出モジュールDMとが隣り合うようにX方向及びY方向に等ピッチaでマトリクス状(2次元格子状)に配置される。図3では、LMは四角印で示され、DMは丸印で示されている。格子のピッチ(格子点間隔)が30mmであり、光源モジュールLMと検出モジュールDMとの間隔が30mmとなる。
光源モジュールLMは、図4(A)及び図4(B)に示されるように、例えばレンズ、プリズム等の光学素子、複数(例えば2つ)の面発光レーザアレイチップ1、2、面発光レーザアレイチップ1、2の点灯を制御する点灯制御回路(電子回路)、これらが収容された筐体、被検体と接触する透明樹脂からなる窓部材などを含む。
面発光レーザアレイチップの各面発光レーザ(VCSEL)の発振波長は、一例として780nm又は900nmである。この波長は血液中の酸素濃度で吸収係数が大きく変わることから選定している。光源モジュールLMでは、図4(B)に示されるように、発振波長が900nmの面発光レーザアレイチップ1及び発振波長が780nmの面発光レーザアレイチップ2が並列に配置され、面発光レーザアレイチップ1の出射端近傍にレンズ1が配置され、面発光レーザアレイチップ2の出射端近傍にレンズ2が配置されている。
各面発光レーザアレイチップからの光は、対応するレンズで屈折され、窓部材の内部に形成された反射部材としてのプリズムで所望の角度に偏向され(所定方向に反射され)、筐体外に出射される。
各面発光レーザアレイチップは、例えば図5に示されるように、一辺が約1mmの正方形状であり、2次元配置された複数(例えば20個)の面発光レーザを含む。
詳述すると、各面発光レーザアレイチップは、4つの面発光レーザ素子をそれぞれが含む5つのグループ(ch)を有している。ここでは、5つのグループのうち4つのグループの中心は、正方形の4つの頂点に個別に位置し、残りの1つのグループの中心は、該正方形の中心に位置するようにセラミックパッケージ等に実装される。
面発光レーザアレイチップ1、2の点灯を制御する点灯制御回路(電子回路)は、図25に示されるように、複数(例えば5つ)のch(ch1〜ch5)を点灯させる駆動部、該駆動部を制御する従属制御部、記憶部、上記通信経路に接続され主制御部と通信を行うためのインターフェース部を含んで構成される。そして、駆動部は、D/AコンバータとV−I変換回路とセレクタを含んで構成される。各面発光レーザアレイチップでは、各chは4つの面発光レーザ素子で構成される。
点灯制御回路では、主制御部の中央処理装置から上記通信経路を介して送信される点灯命令をインターフェース部で受信すると、従属制御部が、受信された点灯命令で指定された面発光レーザアレイチップのchのみがV−I変換回路と接続されるようにセレクタを制御するとともに、点灯命令で指定された光量となるように記憶部に保存されているch毎の点灯条件を参照してD/Aコンバータの出力電圧を制御する。
V−I変換回路は、D/Aコンバータの出力電圧を電流に変換する。セレクタはV−I変換回路の出力電流を、受信された点灯命令で指定された面発光レーザアレイチップのchに出力するので、主制御部からの点灯命令で指定された面発光レーザアレイのchを所定の発光光量で点灯させることができる。
点灯制御回路の記憶部に保存されているch毎の点灯条件は、定期的に補正することが望ましい。この補正は、例えば主制御部に不図示の光パワーメータを接続し、該光パワーメータを光学センサ10の補正対象のchを含むLMの面発光レーザアレイチップに光学的に結合させた状態で行う。
操作部で発光光量補正の操作を行うと、その操作情報が操作I/F部を介して中央処理装置に入力され、中央処理装置が補正対象のLMの面発光レーザアレイチップのchを個別に点灯させる命令を点灯制御回路に送信する。
点灯制御回路の従属制御部は、インターフェース部を介した中央処理装置からの命令に基づいてD/Aコンバータ、V−I変換回路、セレクタを制御して、その命令で指定されたLMの面発光レーザアレイチップのchを点灯する。そして、中央処理装置は、光パワーメータの出力を読み出し、読み出した値と目標値の差分がなくなるように、記憶部に保存されている点灯条件を上書きする命令を従属制御部に送信する。従属制御部は、その命令に基づいて点灯条件を更新する。
以下に、光学センサ10の光源として面発光レーザアレイチップを採用した理由を説明する。面発光レーザアレイチップでは、複数のchを近接した位置に2次元に配列することができ、各chを独立に発光制御できる。そして、chの近傍に小型のレンズを設置することで出射光の進行方向を変えることができる。
また、DOTに用いられる光学センサでは、被検体への入射角をできるだけ精度良く制御することが求められる。一般的なLED(発光ダイオード)は放射角が広いため、精度の良い平行光にするには、レンズを非球面にする必要がある。また、一般的なLD(端面発光レーザ)は放射角が非対称であり、レンズで精度の良い平行光をつくるには、曲率が縦と横とで異なるレンズやシリンドリカルレンズを2枚組み合わせる必要があり、構成が複雑になり、実装も高精度なものが必要となる。
これに対し、面発光レーザはほぼ真円状のファーフィールドパターンを有しており、平行光を作るにも、球面レンズを1つ配置すれば良い。また、LDから出射されるコヒーレントな光を利用する場合、被検体(散乱体)の中では、散乱光同士が干渉するスペックルが発生する。このスペックルパターンは、計測にノイズとして悪影響を与える。
DOTのように脳内の血流を見る場合には、その散乱回数が非常に多いので、それほど影響はない。しかし、皮膚表面で反射される光が、光源に直接戻ってくる戻り光の影響がある。戻り光は、LD内部の発振状態を不安定にして、安定動作ができなくなる。光ディスクなどでも、コヒーレントな光を安定的に利用する際には、正反射光が戻り光にならないように波長板などを利用している。しかし、散乱体に対する反射光の戻り光除去は難しい。
面発光レーザアレイチップの場合には、微小エリアに複数の光を同時に照射することが可能であり、その戻り光干渉を低下することが可能である(例えば特開2012−127937号公報参照)。
本実施形態では、面発光レーザアレイチップからの光の光路上に凸面レンズ(単に「レンズ」とも称する)が配置されている(図6参照)。
この凸面レンズの直径は1mmであり、該凸面レンズの有効径εは600umである。凸面レンズの焦点距離fは、600umである。面発光レーザアレイチップは1mm角のチップであり、該面発光レーザアレイチップ内で最も離れた2つのchの中心間距離dmaxは600umである。このようにdmaxとεとを一致させることで、凸面レンズの直径を最小にすることができる。
ここで、凸面レンズと面発光レーザアレイチップは、凸面レンズの主点(光学的な中心)と面発光レーザアレイチップの発光面(出射面)との凸面レンズの光軸方向の距離Lが例えば300umになるように位置決めされている。すなわち、f≠Lとなっている。
この場合、面発光レーザアレイチップから出射され凸面レンズを透過した光がプリズムなどで正反射され、該凸面レンズで面発光レーザアレイチップに集光される現象(戻り光現象)を回避することができる。このように、戻り光が発生しないため、面発光レーザアレイチップの各chの発光光量を安定化することが可能となる。
但し、戻り光の影響を考慮しない場合(NIRSに高分解能を求めない場合)には、f=Lであっても構わない。
また、図7に示されるように、凸面レンズと面発光レーザアレイチップとの間は透明樹脂で満たされ、空気層が介在しないようにされている。透明樹脂としては、屈折率が凸面レンズと同等の樹脂(例えば熱硬化型のエポキシ系の樹脂)が用いられている。すなわち、凸面レンズと面発光レーザアレイチップとの間の各界面を境に屈折率が変化しない。透明樹脂は、凸面レンズの固定前に金型で成形しても良いし、凸面レンズを固定後、注入しても良い。
このように、凸面レンズと面発光レーザアレイチップとの間が透明樹脂で満たされることにより、面発光レーザアレイチップから出射された光が凸面レンズの面発光レーザアレイチップ側の表面で反射すること、すなわち戻り光の発生を防止できる。戻り光が発生しないため、各chの発光光量を安定化することが可能となる。各chの光量が安定すれば、測定系のS/N(シグナル/ノイズ)比が良好になり、高精度なNIRS測定及び高い分解能を実現できる。
凸面レンズは、図8に示されるように、面発光レーザアレイチップが実装されたパッケージにサブマウントを介して固定されている。面発光レーザアレイチップは、チップ上の電極(チップ電極)がパッケージ上のPKG電極にワイヤーによって電気的に接続される。ワイヤーは、高さ数10um程度となるため、サブマウントと干渉しないように設計される。凸面レンズの固定位置L(面発光レーザアレイチップの発光面と凸面レンズの主点との距離)は、このワイヤーの高さの制約を受ける。つまりは、ワイヤーを利用する場合には、サブマウントを回避する構造にしたり、ワイヤーの高さを100um以下にすることが必要となる。すなわち、−100um<f−L<0が成立することが好ましい。但し、図8では、図7に示される透明樹脂の図示が省略されている。
面発光レーザの出射面から出射される光は、ほぼ円形であり、その発散角は半値幅で5度程度である。一般的なLDのビームが楕円形であるので、回転方向の設置誤差を考慮する必要があるが、面発光レーザはそれを考慮する必要がないメリットがある。また、円形であるため、逆問題を解く際に利用する光学シミュレーションをするにも、対称性を利用した近似などがしやすいメリットがある。
面発光レーザから出射されたビームは近傍に配置された凸面レンズによって屈折される。その屈折角は面発光レーザとレンズ中心(レンズの光軸)との相対位置によって決定される。そこで、面発光レーザアレイチップの各グループの位置とレンズの位置を適切に設定することで、所望の屈折角を得ることができる。
本実施形態では、この屈折角が20度程度になるようにchと凸面レンズの光軸との相対位置が設定されている。面発光レーザアレイチップでは、各chは独立に発光制御できるので、発光させるchを選択することで、光源モジュールLMから出射される光の方向を変えることができる。
図9には、光学シミュレータで光学設計した光線図の一例が示されている。ここでは、3つのchを有する面発光レーザアレイチップの近傍に直径1mm、f=600umのレンズを配置している。3つのchのうち1つのchは、レンズの光軸上に配置され、他の2つのchは、レンズの光軸の一側及び他側に個別に配置されている。光軸上のch以外のchからの光はレンズで屈折され、伝播方向(進路)が曲げられる。すなわち、光軸上のch以外の2つのchからの2つの光は、レンズの光軸に対して約20度の角度で該光軸に対して互いに逆方向に出射されることになる。
ここでは、光源モジュールLMは、被検体への光の入射角が約55度になるように設計されている。具体的には、光源モジュールLMは、図4に示されるように、凸面レンズからその光軸に対して約20度傾斜した方向に出射された複数の光を複数のプリズムによって個別に偏向することで、該複数の光それぞれのレンズの光軸に対する角度を約20度から約55度に変換し、被検体の表面に入射するように設計されている。
なお、プリズムは、光を反射するものであれば良く、例えば金属膜が成膜されたガラス基板を用いてもよい。また、例えば、屈折率差によって起きる全反射現象を利用したプリズムを採用しても良い。その一例として、図10に本実施形態の光学シミュレーションの結果が示されている。VCSELから出射された光線は、凸面レンズで屈折した後、プリズムに入射する。
ここでは、プリズムの材料はBK7とされているが、一般的な光学材料でも良い。プリズムに入射した光は、プリズム側面(反射面)で全反射され、被検体に約55°の入射角で入射される。すなわち、凸面レンズを介した光は、被検体への光の入射角が55°程度になるようにプリズムで偏向される。この際に、プリズムと被検体との界面での光の散乱を防止するために、プリズムと被検体との間に透明のジェルが介在されている。ここでも、面発光レーザアレイチップからの複数の光は、凸面レンズで非平行の複数の光とされ、プリズムで反射され、被検体に入射される。結果として、非平行な複数の略平行光が被検体の同一位置に入射される(図10参照)。
プリズムと被検体との屈折率差によるスネルの法則によって、光線の被検体内における伝播角度が約55°から約60°に変わる。
凸面レンズ及びプリズムを含む光学系では、面発光レーザアレイチップの各chの位置が互いに異なることを利用して、被検体内での光の伝播角度を設定することができる。ここでは、各chの中心を凸面レンズの光軸から200um程度ずらすことで、該chから出射された光を被検体内での伝播角度を60°程度に設定できている。この際、複数のchから出射された複数の光は、凸面レンズの出射面の異なる複数位置から非平行な複数の略平行光として出射される。
図11には、比較例として、レンズを焦点距離f=600umに対し、固定位置をL=1.6mmとしたときの光学シミュレーションの結果が示されている。Lとfとの差が1mm以上になると、図11のようにビームが大きく広がってしまう。このようにビームが広がる場合、被検体の入射面を大きくする必要がある。しかし、実際にNIRSとして実用的な大きさとしてはφ2mm程度が限界である。この制約は、人間の毛根の間隔が2mm程度であり、これ以上大きい面積では、光学上、髪の毛が邪魔になってしまい高い分解能のNIRSを実現できない。つまりは、fとLとの差は1mm未満であることが望ましい。
図4(B)に示されるレンズ1、2は、設計した位置に正確に安定して配置されるように、面発光レーザアレイチップが実装されているセラミックパッケージに直接固定されている。
図9では、レンズの凸面が面発光レーザ側に向けられているが、その逆でも構わない。図9に示されるように、レンズの凸面が面発光レーザ側を向き、レンズの平面部分が被検体側を向くように配置することで、面発光レーザチップとレンズとの距離を長くとることができる。チップ実装のプロセス上では、実装する際に部品をピックアップするアームや部品同士が干渉するのを防ぐために、ある程度許容距離が長い方が好ましい。
レンズは光を屈折させる光学部品であれば良く、光ファイバの屈折率分布を利用したGRIN(Gradient Index)レンズのようなものを利用してもよい。GRINレンズを用いることで、球面レンズを利用するよりも、一般的に球面収差が小さく、低コストでf値の小さいものを選択できるメリットがある。
本実施形態では、レンズの中心よりもレンズの端部に光を入射させるため、球面収差が小さい方が望ましい。
以上の説明から分かるように、光源モジュールLMからは、互いに非平行な複数の光が出射される(図4(B)、図10参照)。
そして、光源モジュールLMからの互いに非平行な複数の光は、被検体の同一位置に入射する(図4(B)、図10参照)。
この「同一位置」は、例えば光源モジュールLMが約60mm間隔で配置されている場合に、その60mmに対して同一の位置を意味しており、互いに数mm程度離れた複数位置も同一位置と言って差し支えない。つまり、「同一位置」の「同一」は、厳密な意味での同一ではなく、「ほぼ同一」もしくは「概ね同一」と言い換えても良い。
後に逆問題を解くアルゴリズムを説明するが、その際に光源モジュールLMの位置を設定した光学シミュレーションを行う。この光学シミュレーションを行う際に、被検体への入射位置のずれを正確に設定することで、逆問題の推定には誤差を生じない。これは発振波長が異なる複数のchを有する面発光レーザアレイチップにおいても同様であり、発振波長が異なる複数のchからの複数の光の入射位置が数mmずれていても、該複数の光の入射位置は、同一位置と言って差し支えない。
ただし、例えば、プローブを10mm以上ずらして、高密度にプローブを配置するには、複数の光源モジュールを独立に配置する必要がある。この複数の光源モジュールを配置する作業は毛髪を一本一本かき分けて行う煩雑な装着作業であり、光源モジュールの増加本数分多く発生してしまう。
本実施形態では、後に詳述するように、1つの光源モジュールLMを配置するだけで、複数の光源モジュールを配置したときと同等の情報量を得ることができ、煩雑な作業を増やすことなく、高密度のプローブ配置で実現されている高分解能検出が可能となっている。
また、図12(A)に示される、生体に互いに平行な複数の光を入射させる比較例の光源モジュールでは、生体の表面付近に変質部分がある場合、検出誤差が生じてしまう。「変質部分」とは光学特性が特殊な部分を意味し、例えば毛根や着色した皮膚などがそれにあたる。このような変質部分があると、比較例では、光源1、光源2からの光が被検体の異なる位置に入射するため、例えば光源2からの光のみが変質部分を通過するようなケースが発生する。光源1と光源2の差分を計算する際には、この変質部分がノイズとなってしまう。
これに対し、本実施形態では、図12(B)に示されるように、光源1、光源2からの光は、皮膚表面の「同一位置」を通過するため、光源1、光源2の一方からの光が変質部分を通過するときは、他方からの光も該変質部分を通過する。また、光源1、光源2の一方からの光が変質部分を通過しないときは、他方からの光も該変質部分を通過しない。詳述すると、光源1、光源2からの光は、皮膚表面近傍では同一光路であり、深さ方向に異なる光路を通過する。すなわち、皮膚表面近傍での相違には鈍感であるが、脳組織近傍では相違に敏感な構成となっている。皮膚表面付近のノイズを小さくすることで、分解能が向上する。「同一位置」という意味合いは、上記記載のように、数mmのずれを許容するものである。
また、本実施形態では、筐体に設けられた窓部材に透明なジェルを滴下し、窓部材と被検体表面との間に透明なジェルを介在させ、空気が入らないようにする。
従来の光源モジュールでは、空気中に一旦放射された光が皮膚表面から体内に伝播していく。このとき、空気中の屈折率1.0と生体の屈折率1.37との間で、屈折率差が生じてしまう。屈折率差が生じることで、反射及び散乱が起きてしまう。また、生体外の空気に比べ、光が伝播する生体内の屈折率が小さいため、入射角に対して生体内の伝播角(生体内伝播角とも呼ぶ)は小さくなってしまう。界面での光の屈折はスネルの式を利用すると理解できる。このスネルの式は屈折率のみで記述できる。
図13は、屈折率、1.0(空気:入射側)と1.37(生体:伝播側)との界面での入射角と生体内伝播角度との関係(光の屈折)がグラフで示されている。図13から分かるように、生体への光の入射角は60度であっても、生体内での光の伝播角は40度と小さくなってしまう。このため、生体内での光の伝播角が仮に60度以上必要であっても、空気中からの光の入射では実現できないことがわかる。つまりは、一旦空気に放出された光で生体内における大きな伝播角を作ることは難しい。
そこで、本実施形態では、光源モジュールLMの窓部材の材料である透明樹脂の屈折率が、生体の屈折率1.37よりも大きい屈折率(例えば1.5以上)に設定されている(図14参照)。この場合、光源モジュールLMから入射角60度で直接的に生体に入射された光の生体での伝播角は70度を越える。
光源モジュールLMの設計を考える際には、この角度をできるだけ小さくした方が、光源モジュールLMを小型化できるなどのメリットがある。以上のように構成される光源モジュールLMでは、図4(B)に示されるように、面発光レーザからレンズの光軸に平行な方向に出射された光は、レンズで屈折され、レンズの光軸に対して約20°傾斜する方向に進行し、窓部材に入射する。この窓部材は屈折率1.5程度に設定されている。レンズを介した光は、窓部材に入射するときに屈折するが、入射角度が深いため、大きな屈折ではない。窓部材に入射した光は、プリズムの反射面で偏向され、レンズの光軸に対して約55°傾斜する方向に進行する。この55°の角度は、屈折率1.5の窓部材の中での角度であり、図14に示されるように、生体内(屈折率1.37)での伝播角は約60度となる。
光源モジュールLMから光が直接的に擬似生体内に伝播するためには、擬似生体と光源モジュールLMの界面に入る空気層を除去する必要がある。この空気層の除去のために、ここでは透明なジェルを利用した。ここで用いた透明なジェルはグリセリン水溶液であり、疑似生体との整合性が良いものを選択した。また、透明なジェルは揮発性を調整し、検査中、すなわち光源モジュールLMに蓋がされている間は蒸発することなく、検査終了後は適当なタイミングで揮発もしくは疑似生体にしみこむように調整した。透明なジェルの光学特性は、波長780nm付近では透明で、屈折率を疑似生体表面に近いものに調整する。ここでは1.37程度となるように調合した。この調合によって、擬似生体表面に凹凸があろうとも、その凹凸表面の屈折率差はなく、反射がまったくない状態にできる。これによって疑似生体表面での反射をほぼなくすことができた。また、疑似生体との界面が物理的に凹凸であっても、光学的には凹凸はないので、散乱が起きない。この結果、光源モジュールLMからの光の出射角度に応じた適切な伝播方向で正確に疑似生体内部に伝播させることができる。一般的に擬似生体内部の伝播は散乱を強く起こすが、皮膚表面での散乱も小さくない。これによって、光の異方性を大きく確保できる。異方性が大きく取れることによって、光源モジュールLMからの複数の光の擬似生体への入射角を大きく変えることができ、後述するように検出モジュールDMへの複数の光の入射角を大きく変えることができる。
検出モジュールDMは、図15に示されるように、筐体、光学素子、4つの受光部1〜4及び信号処理回路(電子回路)を含んで構成されている。
検出モジュールDMでは、図16に示されるように、光源から擬似生体に照射され該擬似生体を伝播した光を複数の光に分割して複数の受光部に導くこととしている。
従来技術(特開2011−179903号公報参照)では、蛍光を利用したDOTにおいて、被検体から多角度で出射される複数の光に対応させて受光部を配置している。しかし、この受光部の配置では、受光部に入射する光は、被検体からの全ての出射角度の光である。
これに対し、本実施形態の検出モジュールDMは、被検体の「同一位置」からの光を分割して、個別に検出している。先の光源モジュールLMでも説明したように、光学シミュレーションの際に設計できるので、「同一位置」の精度は、mmオーダーの位置の相違は問わない。
以下に、検出モジュールDMについて詳しく説明する。検出モジュールDMは図17に示されるように、黒い樹脂製とする、つや消し黒塗装をした上で遮光線加工を行う等、光の不要な反射を防ぐ対策が施された筐体、該筐体の先端に取り付けられた弾性体からなる接触部材、筐体に収容された透明な分割レンズ及び4つの受光部1〜4、各受光部の出力信号を処理する信号処理回路を含んで構成されている。筐体の先端及び接触部材には、アパーチャ(開口)が形成されている。なお、図17では、4つの受光部のうち2つの受光部1、2のみが示されている。
接触部材としては遮光性を高めるために、例えば黒いゴム製のものを利用している。この接触部材のアパーチャから分割レンズの中央部(φ1mm程度)が数100um程度筐体外に突出している。この部分が生体表面に接触するため、光学的にも空気が内在することなく、フレネルの屈折や、散乱などが抑制される。
また、検出モジュールDMでも、前述した透明ジェルを利用することで安定性がさらに向上するため、透明ジェルを利用する。分割レンズは透明樹脂からなり、屈折率は1.8程度である。分割レンズは、筐体に固定されている。
アパーチャは、筐体の先端及び接触部材を貫通する約1mm程度の円形の穴であり、被検体内を伝播して出てくる光の位置を限定する機能を有している。この位置から出てくる光は異なる複数の方向を向いており、アパーチャで入射位置を規定し、その後、入射光を分割レンズで複数の光に分割し、該複数の光を個別に検出することができる。
上述した被検体からの光が「同一位置」から受光部に入射されることは、このアパーチャによって実現されている。
アパーチャを通過してきた光は、その光が持つ伝播方向によって、分割レンズによって異なる方向に屈折されるため、受光部への入射位置が異なる。
分割レンズは、球面レンズで、直径は3mm程度、焦点距離fは3mm程度である。
本実施形態では、分割レンズでの光の分割数を4とし、2次元配列された4つの受光部(PD:フォトダイオード)を含むPDアレイ(フォトダイオードアレイ)を用いている。
ここでは、PDアレイは一辺の長さが約3mmの正方形状であり、各PDは一辺の長さが1.4mmの正方形状である。図17に示されるような角度θ2を定義し、PDアレイとアパーチャの距離は、約5mm程度にした。
レンズの片面は平面で、片面のみ球面を有している。平面の方を擬似生体に接触させている。アパーチャの位置は、レンズのフォーカス位置とはずれているので、平行光を作り出すことはできていないが、PDアレイに入射する光を限定する機能を有している。
この光学系について簡単な光学シミュレーションをしたところ、概ね−10°<θ2<50°の光は受光部2に入射し、概ね−50°<θ2<10°の光は、受光部1に入射することが判った。つまり、擬似生体内を伝播しアパーチャから出射された光は、出射角度によって、複数の光に分割され、該複数の光それぞれは、4つの受光部のいずれかに入射される。
本実施形態では、分割レンズには球面レンズを利用しているが、非球面レンズを利用して、角度をより広く検出することも可能である。この分割精度及び分割数は、後述する逆問題の推定精度と相関があるため、所望の推定精度から必要な光学系が決まる。本実施形態では、球面レンズ、分割数4が採用されている。
各PDの出力信号を処理する信号処理回路は、図26に示されるように、該PDの出力信号を符号化する符号化部、該符号化部を制御する従属制御部、記憶部、上記通信経路に接続され主制御部と通信を行うためのインターフェース部を含んで構成されている。そして、符号化部は、4つのPDに個別に接続される複数のI−V変換回路と、該複数のI−V変換回路に個別に接続される複数のA/Dコンバータを含んで構成される。
以上のように構成される信号処理回路では、従属制御部は、主制御部から上記通信経路を介して送信される測定命令をインターフェース部で受信すると、複数のA/DコンバータでのA/D変換動作を一斉に開始する。各A/Dコンバータは、入力されているI−V変換回路で電流から電圧に変換されたPDの出力を符号化し終えると従属制御部に通知する。従属制御部は、各A/Dコンバータからの符号化完了の通知があると、該A/Dコンバータの符号化された測定データを読み出し、記憶部に保存する。
そして、従属制御部は、S/N比を向上させるため等の必要に応じて他のデータと演算処理を行う。従属制御部は、主制御部からの測定データ読出し命令をインターフェース部で受信すると、記憶部に保存された測定データまたは測定データに対して演算を行った結果を、記憶部からインターフェース部、上記通信経路を介して主制御部に送信する。ここで、A/D変換動作の開始は全DMの全A/Dコンバータで同時であるので、A/D変換動作の完了も同時であるが、各A/Dコンバータの符号化された測定データを記憶部に一時保存することと、測定命令と測定データ読出し命令を分離することで、複数のDMからの測定データの読み出しが特定の時間に集中することを防ぎ、上記通信経路の負荷を分散することができる。
本実施形態の実施例1において、主制御部が擬似生体に内在する吸光体の位置を測定する方法(被検体の光学特性を検出する方法)は、先に説明した図27に示されるフローチャートのとおりである。
ただし、以下のデータ処理では、780nmと900nmの2波長をほぼ同様に扱い、単に同じ位置での計測を2回ずつ同様に行ったことになる。本来の血流の変化を検出するときには、この2波長での差を利用することで、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの個別に検出するが、本実施形態では、発振波長が異なる2つの面発光レーザアレイチップを用いて1回ずつ計測することで、チップのばらつきによるノイズを低減することができる。
主制御部の記録部に格納されたデータは、それぞれ吸光体あり、なしのデータを以下のr(s,i,n)(i=1,2,3・・・M、n=1,2,3・・・K))、r(0,i,n)(i=1,2,3・・・M、n=1,2,3・・・K)とする。iはそれぞれの検出モジュールDMに付された番号である。nはそれぞれのグループに付された番号である。次にそれぞれの差分Δr(i,n)を計算する。
上記吸光体の位置を測定する方法で得られた測定結果から吸光体の位置(擬似生体の光学特性)を算出する方法は、以下に説明する。
ここでは、逆問題推定アルゴリズムを利用する。逆問題を解く際には、まずは、計測、シミュレーションを行い、順問題にて、感度分布を作製する。そして、次の計測を行ったデータを取り込み、その値から逆問題推定を行う(図18のステップS21〜S25参照)。図19には、計算部のブロック図が示されている。先のモンテカルロシミュレーションに利用する各モジュール(プローブ)の位置や生体の屈折率、形状などの情報は記録部(B−1)に記録されている。この情報を元に先の順問題を行う。この計算には並列計算ができるGPU(マルチグラフィックスプロセッサ)を利用する。この利用により従来の計算速度に比べ飛躍的に早く計算ができる。計算によって得られた感度分布を再度記録部(B−1)に格納する。この計算結果と主制御部の記録部に格納されている計測結果を中央処理装置(B−3)に入力して、該中央処理装置(B−3)において逆問題推定を行う。推定結果は主制御部の中央処理装置、表示I/F部を介して表示部に表示される(図2参照)。
ところで、従来、順問題計算の際、生体などの散乱体の中では、光は、ほぼ等方的に散乱すると考えられてきた。このため、計算量が少ない拡散方程式を利用したシミュレーションが利用されてきた。しかし、近年の学会などでも、mm単位の微細なエリアでは、生体内での光伝播は、異方性を有していることが報告がされている。この異方性を反映したシミュレーションを行うためには、輸送方程式を利用するかモンテカルロシミュレーションを行う必要がある。
本実施形態では、光源からの出射光を偏向して被検体へ入射させているので、一般的に利用されている拡散方程式では、入射角の情報を反映することができない。輸送方程式を利用する方法が提案されているが、この計算には膨大な時間がかかることが知られている。
そこで、本実施形態では、モンテカルロシミュレーションが採用されている。モンテカルロシミュレーションは、フォトンが散乱媒質のなかで、散乱していく条件を、ランダム変数によって、確率的に表現し、そのマクロ的な振る舞いを観察する手法である。具体的には、フォトンが媒質を移動し、ある距離進むたびに、衝突し、その衝突によって方向性を変えていくようにモデル化する。このときのある距離の平均値が平均自由行程であり、散乱係数で定義され、方向の変化が異方性gによって定義されている。この衝突を繰り返し、定義されたエリア内をどのように伝播していくかを記録する。このようにモデル化されたフォトンを無数に計算することで散乱媒質の光の振る舞いをシミュレーションすることができる。モンテカルロシミュレーションによって、1つのフォトンがどのような経路で拡散していくかを記録する。本実施形態におけるモンテカルロシミュレーションでは、フォトン数は109個、ボクセルを1mm立方体として、120mm×120mm×60mmの3次元エリアの計算を行う。
ここでは、散乱媒質の散乱係数、吸収係数、異方性、屈折率をそれぞれ頭皮とほぼ同等の数値である7.8mm−1、0.019mm−1、0.89、1.37とする。この数値に合うように、前述したファントム(イントラリピッド水溶液)を調合し、光源モジュールLM、伝播角、検出モジュールDMの位置など全てファントムと同じ状況でシミュレーションし、感度分布を算出する。このとき、ボクセルの位置rに関して、通過したフォトン数をφ0(r)とする。特に、光源モジュールLMの位置をrsとしたとき、ボクセルの位置rでのフォトン通過数をφ0(rs、r)とする。次に、検出モジュールDMを配置していた位置に光源モジュールLMを配置して、再度、同数のフォトン数を計算する。検出モジュールDMをrdに設置していた場合には、ボクセルの位置rでのフォトン通過数をφ0(r、rd)とする。
光の経路は、可逆であるため、この積は、ボクセルの位置rを通過して、光源モジュールLMから出射して、検出モジュールDMに入ったフォトン数に比例する。この積を検出モジュールDMに入る全てのフォトン数φ0(rs、rd)で規格化したものが次の感度分布A(r)となる。
この感度分布A(r)は、位置rにおける検出量への影響度を示す。ボクセルの位置rに吸光体が発生したときに、その発生によって、どの程度検出値が変化するかを示す。
上述のようにして算出された感度分布の一例が、図20に示されている。ここでは、光源モジュールLM、検出モジュールDMをそれぞれ、(X,Y,Z)=(45、60、0)、(X,Y,Z)=(75、60、0)に配置した。ボクセルは1mmの立方体なので、これらの数値の単位mmと等価である。各位置でのボクセルの感度は底を10とした対数(常用対数)で示している。
次に、図20から、ボクセル(x、y、z)で、Y=60、Z=10のラインを、抜き出して感度を縦軸、横軸をx位置としてプロットした結果が図21に示されている。このとき、伝播角として、Y軸を法線とした平面上におけるX軸に対する角度を+60°とした場合と−60°とした場合の結果が図22に示されている。
図22に示されるように、+60度と−60度とでは、感度分布に相違が出ている。この相違が、分解能向上が可能となるかの指針となる。つまりは、この感度分布に相違が出ることは、2つの光源からの光の伝播経路が異なることを示している。もし同じ伝播経路であれば、伝播角を変えても、ほぼ同じ感度分布となるはずである。2つの光源からの光の伝播経路が違うことで、2つの光源からの光がそれぞれ異なる情報を収集していることになる。
これは、後述する逆問題推定に対して大きな価値を生み出している。先に述べたように光の伝播が単純な等方散乱ではなく、数mmオーダーでは若干の異方性を有していることを示している。この数mmオーダーでの相違が、数mmオーダーの分解能を有する逆問題推定を実現する要因となっていると考えられる。この感度分布は、ファントムで実施される全ての光源モジュールLM/検出モジュールDM対に対して、全ての伝播角/検出角の条件で実施する。
次に、この感度分布を利用して、逆問題推定を行う。
吸光体の存在によっておきる吸収係数の変化δμa(r)が十分小さいと仮定するとRetovの近似によって、以下の式が成り立つ。
νは媒質中の光の速さ、Sは単位時間当たりに光源モジュールLMから出る光の量、rsは光源モジュールLMの位置、rdは検出モジュールDMの位置、φ(rs、rd)は光源モジュールLMから出た光が検出モジュールDMに届く光量を表し、φ0は吸光体のない状態での光の強度を示している。この式が意味しているのは、吸光体のない状態での光の強度φ0が与えられれば、吸光体の存在によっておきる吸収係数の変化δμa(r)と観測値logφ(rs、rd)とを線形の関係に結びつけることができるということである。
吸光体の存在によっておきる吸収係数の変化δμa(r)が十分小さいと仮定するとRetovの近似によって、以下の式が成り立つ。
このことを簡単に記述すると、以下の式となる。
Y=A(r)X
ここで、Yは吸光体の存在有無による観測値の変化であり、Xはボクセルの位置rでの吸収係数変化をしめす。このA(r)は感度分布である。上記の式では、Xで表現している吸光体の位置や量の変化を与えることで、観測値Yがどのように変化するかがわかる。
Y=A(r)X
ここで、Yは吸光体の存在有無による観測値の変化であり、Xはボクセルの位置rでの吸収係数変化をしめす。このA(r)は感度分布である。上記の式では、Xで表現している吸光体の位置や量の変化を与えることで、観測値Yがどのように変化するかがわかる。
逆問題推定では、この逆を行い、つまりは観測値Yを利用して吸光体の位置Xを推定する。先の位置計測方法で説明したように、吸光体の有無による変化をΔr(i,n)として計測している。このΔr(i,n)が観測値Yとなり、これよりXを算出する。
一般的には、L2ノルム正則化という逆問題の推定手法を利用する。この手法では、以下に示すコスト関数Cを最小にするXを算出する。
ここでYは観測値、Aは感度分布、λは正則化係数である。逆問題推定ではこのような手法が一般的であるが、本実施形態では、深さ方向も検出できるベイズ推定による逆問題推定を行う。このベイズ推定による逆問題推定については、次の非特許文献:T.Shimokawa,T.Kosaka,O.Yamashita,N.Hiroe,T.Amita,Y.Inoue,and M.Sato,"Hierarchical Bayesian estimation improves depth accuracy and spatial resolution of diffuse optical tomography," Opt. Express *20*,20427-20446 に詳細に記載されている。
この結果、図23(B)に示されるような推定結果を導くことができる。図23(A)は吸光体の実際の位置を示している。図23(B)のグリッドは3mmであり、3mmの精度で実際の位置と一致することが判った。
比較例として、4方位あるうちの1方位のみを利用し、検出した結果が図23(C)に示されている。この比較例は、従来のNIRS(DOT)装置とほぼ同様の構成とである。比較例では、深さ方向の検出は不可能であり、かつ検出結果も非常に広がってしまう。本実施形態では、上記ベイズ推定により、吸光体の位置と深さを検出することが可能となる。
また、吸光体の位置を変えて(図24(A)参照)、推定を行った結果(推定結果)が図24(B)に示されている。この場合も吸光体の実際の位置を正確に推定できていることが判る。本実施形態の方法により、吸光体の位置を高い分解能で検出することが可能となる。これに対し、比較例では、図24(C)に示されるようにかなり広がった吸光体となっており、該吸光体の位置を正確に検出することができない。
深さを含めた吸光体の3次元位置をDOTで高精度に検出するためには、一般に高密度なプローブ配置が必要であるが、本実施形態では低密度なプローブ配置でそれが実現できた。
以上説明したとおり、本実施形態の実施例1では、主制御部と光学センサに含まれる全ての光照射器と全ての光検出器で、符号化した通信を行いながら測定を進め、通信を行う経路をバス型トポロジーの構造とし、主制御部と全ての光照射器と全ての光検出器を1つの通信経路に数珠繋ぎに接続することで、主制御部と光学センサとの間の電気配線の本数を、電源の他は通信経路1つのみとし、大幅に減らすことを可能としている。
なお、主制御部と光照射器と光検出器の間で行われる通信は光照射器と光検出器に対する制御命令と光検出器の受光部の測定データに限らない。同一通信系路で他データ、例えば、光照射器と光検出器に加速度センサや圧力センサ等のセンサを新たに設置し、主制御部からの命令によって、従属制御部や従属制御部が符号化したデータを送信してもよい。
通信経路の形式としては1ビットずつ順番にデータを転送するシリアルバスの方が、複数ビットをひとかたまりにして、同時に複数本の通信路で情報を伝送するパラレルバスよりも、配線の本数が少なくて済むので効果的である。
実施例1の測定方法の説明では、主制御部の中央処理装置が測定の進行を全て行っているが、主制御部と光学センサ10に含まれる全ての光照射器と全ての光検出器を接続する通信経路のバスで、光照射器側、光検出器側でも通信のマスタになれるようにすれば、主制御部の負荷を更に低減するために、例えば図27のステップS3の全てのDMに対する測定命令を、ステップS2で点灯命令を受信したLMが送信する等、LMの従属制御部、DMの従属制御部に測定の一部の進行を行わせても良い。
次に、光源モジュールLMからの発光光量の補正を、外部の光パワーメータを使って行うのではなく、図30(A)に示される実施例4の光学センサのように、光源モジュールLM内に、複数の発光部(ch1〜ch5)それぞれからの光の一部(モニタ光)を受光するモニタ光受光部としてのモニタPD(モニタ用のフォトダイオード)を設置し、点灯制御回路に、該モニタPDの出力電流を電圧に変換するI−V変換回路及びA/Dコンバータを含みモニタ光受光部の出力信号を符号化する符号化部とを設け、面発光レーザアレイチップを点灯させたときに、従属制御部が符号化部の出力で該面発光レーザアレイチップの発光光量をモニタし、その値が一定となるようにD/Aコンバータの出力電圧を制御するようにしても良い。なお、モニタ用受光部は、要は、光検出器であれば良く、例えばフォトトランジスタ等を用いても良い。
モニタ光受光部としてのモニタPDは、図30(B)に示されるように、各面発光レーザアレイチップからの出射光を光路の途中で、ビームスプリッタ、ハーフミラー、ダイクロイックミラー等の分岐光学素子で2方向に分岐して、分岐した一方の光が入射される位置に配置する、もしくは、透過型のモニタPDであれば光路の途中に挿入すればよい。
実施例1では、光源モジュールLMと検出モジュールDMは主制御部からの命令によって独立して動作可能なので、図1のバス型トポロジーの通信経路の途中に図示しないコネクタを適宜設けておけば、光源モジュールLMと検出モジュールDMをコネクタに接続し、主制御部の記録部に保存されている点灯順リストを変更することで、光源モジュールLMや検出モジュールDMを容易に増減可能である。
ただし、光学センサ装置100の測定有効範囲を広げるために光学センサ10のLMとDMの本数を増やす場合に、主制御部と全てのLMと全てのDMを1つの通信経路に数珠繋ぎに接続すると、1回の測定で得られるデータ量が増える一方で、バスの負荷が増えて信号の伝送速度が低下してしまう。
このような場合は、図28に示される実施例2の光学センサ装置200のように、主制御部と光学センサ10の全てのLMを、一のバス型トポロジーの通信経路で接続し、主制御部と光学センサ10の全てのDMを、別のバス型トポロジーの通信経路で接続しても良い。この場合、1つの通信経路に接続されるプローブの数が減るのでバスの負荷が減り、信号の伝送速度の低下を防ぐことができる。
また、図29に示される実施例3の光学センサ装置300のように、主制御部と光学センサ10の全てのLMと全てのDMを、一のバス型トポロジーの通信経路で接続することに加えて、主制御部と光学センサ10の全てのDMを、別のバス型トポロジーの通信経路で接続しても良い。そして、例えば測定の制御命令を主制御部と光学センサ10の全てのLMと全てのDMが接続される一のバス型トポロジーの通信経路で通信する一方で、測定データは主制御部と光学センサ10の全てのDMが接続される別のバス型トポロジーの通信経路バスで通信することで、バスの負荷を減らして、信号の伝送速度の低下を防ぐことができる。
なお、図28の実施例2や図29の実施例3の光学センサ装置においても、主制御部が擬似生体に内在する吸光体の位置を測定する方法(被検体の光学特性を検出する方法)は、図27に示されるフローチャートで説明される。
また、上記実施形態及び各変形例の光源モジュールLM、検出モジュールの従属制御部は、ハードウェアロジックで動作するものでも、主制御部のように記憶部に保存されたプログラムに基づいて中央処理装置で動作するものでも、どちらでもよい。さらに、記憶部、インターフェース部、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等の周辺の回路の一部または全てを適宜1チップ化(1チップに集積化)してもよい。
以上説明した本実施形態の光学センサ装置100は、複数の発光部及び該複数の発光部の点灯を制御する点灯制御回路を有する光照射器(光源モジュールLM)を複数含む照射系と、光照射器から被検体に照射され該被検体内を伝播した光を受光する複数の受光部及び該複数の受光部の出力信号を処理する信号処理回路を有する光検出器(検出モジュールDM)を複数含む検出系とを有する光学センサ10と、点灯制御回路及び信号処理回路を制御する主制御部と、を備え、主制御部と点灯制御回路は、符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路で接続され、主制御部と信号処理回路は、上記通信経路と、該通信経路とは異なる符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路と、の少なくとも一方で接続される。
この場合、通信時の主制御部の負荷を低減でき、かつ主制御部と光学センサ10とをアナログ信号線で接続しなくて良いため電気配線のノイズ対策が不要となる。
この結果、装置内での通信性能を向上できる。
また、電気配線の本数を少なくすることができるので、光照射器や光検出器の被検体への装着性を向上できる。
また、光照射器と光検出器を容易に増減できる。
また、主制御部と複数の点灯制御回路と複数の信号処理回路が、1つの上記通信経路で接続される場合、主制御部と光学センサ10との間の電気配線の本数をより少なくすることができ、光照射器と光検出器をより容易に増減できる。
また、主制御部と複数の点灯制御回路が一の上記通信経路で接続され、主制御部と複数の信号処理回路が別の上記通信経路で接続される場合、主制御部と光学センサ10との間の電気配線の本数を少なくでき、光照射器と光検出器を容易に増減できるとともに、測定時の通信経路の負荷を分散させることが可能になる。
また、主制御部と点灯制御回路と信号処理回路が一の上記通信経路で接続され、主制御部と信号処理回路が、更に、少なくとも1つの別の上記通信経路で接続される場合、主制御部と光学センサ10との間の電気配線の本数を少なくでき、光照射器と光検出器を容易に増減できるとともに、測定時の通信経路の負荷を分散することが可能になる。
また、点灯制御回路は、複数の発光部を点灯させる駆動部と、駆動部を制御する従属制御部と、上記通信経路を介して主制御部と通信を行うためのインターフェース部と、を含み、従属制御部は、インターフェース部を介して入力された主制御部からの命令に基づいて、点灯させる発光部の選択を行い、該発光部の点灯/消灯の制御を行うことが好ましい。
この場合、主制御部からの命令が上記通信経路を介してインターフェース部にほとんど劣化なく高速で入力されるため、主制御部は従属制御部を介して点灯させる発光部の選択及び点灯/消灯の制御を迅速かつ確実に行うことができる。
また、点灯制御回路は、発行部毎の点灯条件が保存される記憶部を更に含み、従属制御部は、点灯条件に基づいて、駆動部が該発光部に出力する電流を設定して該発光部の発光光量を略一定にすることが好ましい。
この場合、被検体に安定した光量の光を照射することができ、測定精度のばらつきを抑制できる。
また、点灯制御回路は、複数の発光部を点灯させる駆動部と、複数の発光部それぞれからの光の一部をモニタ光として受光するモニタ光受光部と、モニタ光受光部の出力信号を符号化する符号化部と、駆動部と前記符号化部を制御する従属制御部と、上記通信経路を介して主制御部と通信を行うためのインターフェース部とを含み、従属制御部は、インターフェース部を介して入力された主制御部からの命令に基づいて、点灯させる発光部の選択を行い、該発光部の点灯/消灯の制御を行うことが好ましい。
この場合、主制御部からの命令が上記通信経路を介してインターフェース部にほとんど劣化なく高速で入力されるため、主制御部は従属制御部を介して点灯させる発光部の選択及び点灯/消灯の制御を迅速かつ確実に行うことができる。また、モニタ光受光部の出力信号を符号化して従属制御部にほとんど劣化なく高速で送信できるため、従属制御部による駆動部の制御を迅速かつ正確に行うことができる。
また、点灯制御回路は、発行部毎の点灯条件が保存される記憶部を更に含み、従属制御部は、点灯条件に基づいて駆動部が該発光部に出力する電流を設定し、モニタ光受光部の出力が一定となるように、駆動部が該発光部に出力する電流を調整して該発光部の発光光量を略一定にすることが好ましい。
この場合、経時的に変化する発光部の発光光量を補正する作業を定期的に行う必要がない。
また、信号処理回路は、複数の受光部の出力信号を符号化する符号化部と、該符号化部を制御する従属制御部と、出力信号が符号化されたデータを一時保存するための記憶部と、上記通信経路を介して主制御部と通信を行うためのインターフェース部と、を含み、従属制御部は、インターフェース部を介して入力された主制御部からの命令に基づいて、複数の受光部の出力信号の符号化と該出力信号が符号化されたデータ(測定データ)の記憶部への一時保存を制御し、該符号化されたデータ間での演算が可能なことが好ましい。
この場合、測定の際と測定データ間の演算処理の際の主制御部の負荷を減らすことが可能になる。
また、光検出器の従属制御部は、インターフェース部を介して入力された主制御部からの命令に基づいて、記憶部に一時保存された符号化されたデータ(測定データ)又は該符号化されたデータ間での演算結果を、インターフェース部を介して主制御部に出力することが好ましい。
この場合、従属制御部が記憶部から測定データや測定データ間での演算結果(測定データ等と呼ぶ)を読み出すタイミングをずらすことができ、主制御部への測定データ等の送信が特定の時間に集中するのを防ぐことが可能になる。
また、主制御部が、上記データ又は演算結果に基づいて、被検体の光学特性を求める場合には、該光学特性を迅速に得ることができる。
また、主制御部は、上記データ又は演算結果に基づいて、被検体の光に対する感度分布を求め、該感度分布に基づいて逆問題を解くことで、被検体の光学特性を算出する場合には、該光学特性を迅速かつ精度良く得ることができる。
また、光照射器は、複数の発光部からの複数の光の光路上に配置され、該複数の光を非平行な複数の光とする光学系を含む場合には、複数の光を同一に入射させることができ、高分解能を得ることができる。
なお、上記実施形態におけるバス型トポロジーの通信経路による接続形態は、適宜変更可能である。
例えば、主制御部と複数の点灯制御回路と複数の信号処理回路を、複数のバス型トポロジーの通信経路で接続しても良い。この場合、一部の通信経路に問題が発生しても通信を継続することができ。また、複数の情報を並行して伝送することができる。
例えば、主制御部と複数の点灯制御回路を複数のバス型トポロジーの通信経路で接続し、かつ主制御部と複数の信号処理回路を少なくとも1つの別のバス型トポロジーの通信経路で接続しても良い。この場合、一部の通信経路に問題が発生しても通信を継続することができる。また、複数の情報を並行して伝送することができる。
より具体的には、図31に示される実施例5の光学センサ500のように、主制御部と複数の点灯制御回路と複数の信号処理回路を一のバス型トポロジーの通信経路で接続し、かつ主制御部と複数の点灯制御回路と複数の信号処理回路を別のバス型トポロジーの通信経路で接続しても良い。
例えば、主制御部と複数の点灯制御回路と複数の信号処理回路を少なくとも1つのバス型トポロジーの通信経路で接続し、主制御部と複数の信号処理回路を更に複数の別のバス型トポロジーの通信経路で接続しても良い。この場合、一部の通信経路に問題が発生しても通信を継続することができる。また、複数の情報を並行して伝送することができる。
上記実施形態において、照射系の光源モジュールLMの数、及び検出系の検出モジュールの数は、適宜変更可能である。要は、照射系は、光源モジュールLMを少なくとも1つ有していれば良い。検出系は、検出モジュールDMを少なくとも1つ有していれば良い。
また、上記実施形態において、光源モジュールLM(光照射器)の構成は、適宜変更可能である。例えば光照射器の面発光レーザアレイチップの数、chの数や配置は、適宜変更可能である。レンズの種類、形状、大きさ、個数等も適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、光照射器の発光部として、面発光レーザ(VCSEL)が用いられているが、例えば、端面発光レーザ(LD)、発光ダイオード(LED)、有機EL素子、半導体レーザ以外のレーザなどを用いても良い。
また、上記実施形態では、光照射器の反射部材としてプリズムが用いられているが、他のミラー等が設けられても良い。
また、上記面発光レーザアレイチップにおけるグループの数及び配置、各グループのchの数及び配置は、適宜変更可能である。
また、検出モジュールDM(光検出器)の構成は、適宜変更可能である。例えば、アパーチャや分割レンズは、必須ではない。検出モジュールDMにおける受光部の数や配置は、適宜変更可能である。受光部は、PDに限らず、要は、光検出器であれば良く、例えばフォトトランジスタ等を用いても良い。
以上の説明における各光学センサ装置の構成要素の数、形状、寸法、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
以下に、発明者が上記実施形態を発案するに至った思考プロセスを説明する。
従来、被検体(生体)に光を照射し、被検体内を伝播した光を検出する生体光計測装置が知られている(例えば特許3779134号公報)。この生体光計測装置では、被検体に装着される複数のプローブ(探針)のピッチを小さくし、高分解能を得ている。しかしながら、複数のプローブの密度(単位面積当たりのプローブの数)が増大し、被検体への装着性が著しく低下していた。
そこで、被検体に光を照射する光照射器を少なくとも1つ含む照射系と、該照射系から照射され前記被検体内を伝播した光を検出する検出系と、を備え、前記光照射器は、非平行の複数の光を前記被検体の同一位置に照射することを特徴とする光学センサにより、被検体への装着性を低下させず、かつ高分解能を得ることが実現された(特許文献1参照)。
しかし、特許文献1では、1つの光照射器内に複数の発光部を有し、1つの光検出器内にも複数の受光部を有する。このため、単位面積当たりの光照射器と光検出器の設置密度が減少しても、光照射器−制御部間の電気配線(アナログ信号線)の本数と光検出器−制御部間の電気配線(アナログ信号線)の本数がそれぞれ増加してしまう固有の問題がある(光照射器では、例えば発光部が2波長5chであれば10倍となり、光検出器では受光部が4chであれば4倍となる)。更に、増加する光照射器の発光部に供給される電流と光検出器の受光部の出力信号は、共に微少なアナログ信号であるので、信号毎に電磁シールド等の外来ノイズに対するノイズ対策が必要であるので、電気配線数の増大とノイズ対策により、光照射器と光検出器の設置密度減少による被検体への装着性の向上の効果が相殺され、場合によっては悪化するおそれがある。
加えて、光照射器内に複数の発光部を有し、1つの光検出器内にも複数の受光部を有することから1回の測定で得られるデータ量が“発光部の数×受光部の数”倍となるので(例えば、発光部が2波長5ch、受光部が4chであれば2×5×4=40倍)、測定の際の制御部の負荷が大きくなるという問題も発生する。
さらに制御部内に使用する光照射器と光検出器の分の電流制御部、スイッチ部、A/Dを用意する必要があるので、光照射器と光検出器を増減するのが難しいという問題もある。
光照射器と光検出器の増減に対しては、例えば特開2014−12057のように光源と光源駆動回路および受光センサと受光センサ回路をペアとし、これとは別の計測制御回路を組み合わせたものを1つ単位とすることで、自由度を増すものがあるが、他の問題に対しては解決にならない。
そこで、発明者は、以上の問題を解決するために、上記実施形態を発案した。
100、200、300…光学センサ装置、LM…光源モジュール(光照射器)、DM…検出モジュール(光検出器)。
Claims (13)
- 複数の発光部及び該複数の発光部の点灯を制御する点灯制御回路を有する光照射器を少なくとも1つ含む照射系と、
前記光照射器から被検体に照射され該被検体内を伝播した光を受光する複数の受光部及び該複数の受光部の出力信号を処理する信号処理回路を有する光検出器を少なくとも1つ含む検出系と、
前記点灯制御回路及び前記信号処理回路を制御する主制御部と、を備え、
前記主制御部と前記点灯制御回路は、符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路で接続され、
前記主制御部と前記信号処理回路は、前記通信経路と、該通信経路とは異なる符号化された情報を伝送するバス型トポロジーの通信経路と、の少なくとも一方で接続されることを特徴とする光学センサ装置。 - 前記主制御部と前記点灯制御回路と前記信号処理回路は、1つの前記通信経路で接続されることを特徴とする請求項1に記載の光学センサ装置。
- 前記主制御部と前記点灯制御回路は、一の前記通信経路で接続され、
前記主制御部と前記信号処理回路は、別の前記通信経路で接続されることを特徴とする請求項1に記載の光学センサ装置。 - 前記主制御部と前記点灯制御回路と前記信号処理回路は、一の前記通信経路で接続され、
前記主制御部と前記信号処理回路は、更に、少なくとも1つの別の前記通信経路で接続されることを特徴とする請求項1に記載の光学センサ装置。 - 前記点灯制御回路は、
前記複数の発光部を点灯させる駆動部と、
前記駆動部を制御する従属制御部と、
前記通信経路を介して前記主制御部と通信を行うためのインターフェース部と、を含み、
前記従属制御部は、前記インターフェース部を介して入力された前記主制御部からの命令に基づいて、点灯させる前記発光部の選択を行い、該発光部の点灯/消灯の制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学センサ装置。 - 前記点灯制御回路は、前記発行部毎の点灯条件が保存される記憶部を更に含み、
前記従属制御部は、前記点灯条件に基づいて前記駆動部が該発光部に出力する電流を設定して該発光部の発光光量を略一定にすることを特徴とする請求項5に記載の光学センサ装置。 - 前記点灯制御回路は、
複数の発光部を点灯させる駆動部と、
複数の発光部それぞれからの光の一部をモニタ光として受光するモニタ光受光部と、
前記モニタ光受光部の出力信号を符号化する符号化部と、
前記駆動部と前記符号化部を制御する従属制御部と、
前記通信経路を介して前記主制御部と通信を行うためのインターフェース部、とを含み、
前記従属制御部は、前記インターフェース部を介して入力された前記主制御部からの命令に基づいて、点灯させる前記発光部の選択を行い、該発光部の点灯/消灯の制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学センサ装置。 - 前記点灯制御回路は、前記発行部毎の点灯条件が保存される記憶部を更に含み、
前記従属制御部は、前記点灯条件に基づいて前記駆動部が該発光部に出力する電流を設定し、前記モニタ光受光部の出力が略一定となるように、前記駆動部が該発光部に出力する電流を調整して該発光部の発光光量を略一定にすることを特徴とする請求項7に記載の光学センサ装置。 - 前記信号処理回路は、
前記複数の受光部の出力信号を符号化する符号化部と、
前記符号化部を制御する従属制御部と、
前記出力信号が符号化されたデータを一時保存するための記憶部と、
前記通信経路を介して前記主制御部と通信を行うためのインターフェース部と、を含み、
前記従属制御部は、前記インターフェース部を介して入力された前記主制御部からの命令に基づいて、前記複数の受光部の出力信号の符号化と該出力信号が符号化されたデータの前記記憶部への一時保存を制御し、該符号化されたデータ間での演算が可能なことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学センサ装置。 - 前記従属制御部は、前記命令に基づいて、前記記憶部に一時保存された前記データ又は該データ間での演算結果を、前記インターフェース部を介して前記主制御部に出力することを特徴とする請求項9に記載の光学センサ装置。
- 前記主制御部は、前記データ又は前記演算結果に基づいて、前記被検体の光学特性を求めることを特徴とする請求項10に記載の光学センサ装置。
- 前記主制御部は、前記データ又は前記演算結果に基づいて、前記被検体の光に対する感度分布を求め、該感度分布に基づいて逆問題を解くことで、前記被検体の光学特性を算出することを特徴とする請求項11に記載の光学センサ装置。
- 前記光照射器は、前記複数の発光部からの複数の光の光路上に配置され、該複数の光を非平行な複数の光とする光学系を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学センサ装置。
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