JP2017106768A - 厚み測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被測定物に対して非接触としつつ、分解能を向上させることができる厚み測定装置を提供する。
【解決手段】互いに離間して対向する一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bを有する共振器10と、共振器10に入射する光を照射する光源と、共振器10から共振により出力される光の透過スペクトルを、所定波長範囲において測定する測定部と、透過スペクトルからピーク波長の実測値を検出し、ピーク波長の実測値に基づいて、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置された被測定物Sの厚みdを判定する演算部と、を備える。
【選択図】図3
【解決手段】互いに離間して対向する一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bを有する共振器10と、共振器10に入射する光を照射する光源と、共振器10から共振により出力される光の透過スペクトルを、所定波長範囲において測定する測定部と、透過スペクトルからピーク波長の実測値を検出し、ピーク波長の実測値に基づいて、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置された被測定物Sの厚みdを判定する演算部と、を備える。
【選択図】図3
Description
本発明は、厚み測定装置に関する。
従来、被測定物の厚みを測定する手法として、走査プローブ顕微鏡、表面段差計等の探針を用いる力学的手法と、共焦点顕微鏡、干渉計等の光を用いる光学的手法と、が知られている。特許文献1には、走査プローブ顕微鏡の一例として、プラズマ中に配置された被測定物の表面付近に形成されるイオンシースに沿って探針を走査することにより、被測定物の表面形状を検出可能な測定装置が記載されている。
ところで、力学的手法に基づく測定装置では、探針が、被測定物の表面に接触した状態で当該表面を走査する。このため、力学的手法に基づく測定装置では、例えば十分な強度を有していない被測定物の厚みを測定することができない。そのような被測定物に対して、光学的手法に基づく測定装置が用いられる場合がある。光学的手法に基づく測定装置では、被測定物に対して光を照射し、透過光又は反射光から被測定物の厚みを判定する。このため、光学的手法に基づく測定装置では、被測定物に対して非接触の状態で被測定物の厚みを測定することができるため、十分な強度を有していない非測定物の厚みであっても測定することができる。
しかしながら、光学的手法に基づく測定装置では、被測定物に対して照射する光の波長によって、被測定物の深度方向(厚み方向)の分解能が制限されてしまう。例えば共焦点顕微鏡においては、可視光の回折限界である数百nm程度の分解能を超えることは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、被測定物に対して非接触としつつ、分解能を向上させることができる厚み測定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の厚み測定装置は、互いに離間して対向する一対のミラーを有する共振器と、共振器に入射する光を照射する光源と、共振器から共振により出力される出力光の透過スペクトル又は反射スペクトルを、所定波長範囲において測定する測定部と、透過スペクトル又は反射スペクトルからピーク波長に対応する値の実測値を検出し、実測値に基づいて、一対のミラーの間に配置された被測定物の厚みを判定する演算部と、を備える。
このような厚み測定装置によれば、一対のミラーの間に被測定物が配置された共振器に対して光を照射し、共振器から共振により出力される出力光の透過スペクトル又は反射スペクトルが測定される。そして、透過スペクトル又は反射スペクトルから検出されるピーク波長に対応する値の実測値に基づいて、被測定物の厚みを判定する。このため、被測定物に対して非接触の状態で、被測定物の厚みを測定することができる。また、透過スペクトル又は反射スペクトルから検出されるピーク波長に対応する値の実測値に基づいて被測定物の厚みを判定するため、深度方向の分解能に理論的な限界が存在しない。よって、被測定物に対して非接触としつつ、分解能を向上させることができる。
また、ミラーは、基板上に屈折率の互いに異なる2種類の誘電体を交互に積層した誘電体多層膜ミラーであってもよい。この場合、ミラーの反射率を向上させて、透過スペクトル又は反射スペクトルのピークの幅を狭めることができる。よって、被測定物の厚みの測定精度を向上させることができる。
また、共振器は、一対のミラーを所定距離だけ互いに離間した状態に支持する支持部材を更に有してもよい。この場合、一対のミラーの間の離間距離を一定に保つことができるため、被測定物の厚みの測定精度を向上させることができる。
また、演算部は、一対のミラーの間に配置された被測定物の厚みに対応するピーク波長に対応する値の理論値を記憶しており、実測値と理論値とを比較して、被測定物の厚みを判定してもよい。この場合、透過スペクトル又は反射スペクトルの複数のピークの内から互いに隣り合う2つのピークを特定することなく、ピーク波長に対応する値の実測値と理論値とを比較するだけで、容易に被測定物の厚みを測定することができる。
また、理論値は、転送行列計算を用いて算出されてもよい。この場合、ピーク波長に対応する値の理論値を正確に算出することができるため、正確に被測定物の厚みを測定することができる。
また、演算部は、共振器における光の共振次数と、共振次数に対応する実測値と、一対のミラーの間の光学的距離と、の関係を表す第1式、及び、共振器における光の共振次数とは異なる他の共振次数と、他の共振次数に対応する実測値と、一対のミラーの間の光学的距離と、の関係を表す第2式の連立方程式を解いて、被測定物の厚みを判定してもよい。この場合、透過スペクトル又は反射スペクトルの複数のピークの内から互いに隣り合う2つのピークが特定されているときには、例えばピーク波長に対応する値の理論値を算出するための複雑な演算を行うことなく、容易に被測定物の厚みを測定することができる。
本発明によれば、被測定物に対して非接触としつつ、分解能を向上させることができる厚み測定装置を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る厚み測定装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
[厚み測定装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る厚み測定装置の概略構成を示す図、図2は、一対の誘電体多層膜ミラーを示す斜視図、図3は、共振器を示す断面図である。図1〜図3に示すように、厚み測定装置1は、被測定物Sの微小な厚みを測定する装置である。厚み測定装置1は、光Bの透過スペクトルに基づいて被測定物Sの厚みを判定する。図1に示すように、厚み測定装置1は、共振器10、光源20、測定部30、演算部40及び光学系50を備える。
図1は、本発明の実施形態に係る厚み測定装置の概略構成を示す図、図2は、一対の誘電体多層膜ミラーを示す斜視図、図3は、共振器を示す断面図である。図1〜図3に示すように、厚み測定装置1は、被測定物Sの微小な厚みを測定する装置である。厚み測定装置1は、光Bの透過スペクトルに基づいて被測定物Sの厚みを判定する。図1に示すように、厚み測定装置1は、共振器10、光源20、測定部30、演算部40及び光学系50を備える。
図2及び図3に示すように、共振器10は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11B及び支持部材12を有する。各誘電体多層膜ミラー11A,11Bは、互いに離間して対向している。各誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間の離間距離(すなわち、共振器長L)は、特に限定されないが、例えば100nm以上10000nm以下であってもよい。この場合、被測定物Sの厚みの測定を行い易い。共振器10は、光源20により照射された光Bを、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間において共振させる。これにより、共振器10は、光Bを、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に閉じ込めると共に、出力光である透過光及び反射光として出力する。共振器10における一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間には、被測定物Sが配置される。
被測定物Sとして、以下の説明ではアントラセン結晶を例示する。アントラセン結晶は、2次元的な単分子層が積層した状態となるように形成されている。ここでは、被測定物Sは、アントラセン結晶の単分子層の積層方向が、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの対向する方向に対して略一致するように配置されている。従って、被測定物Sに対して、アントラセン結晶の単分子層の積層方向の厚みが測定されることとなる。なお、被測定物Sとしては、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置することができ、且つ、光Bが透過することができるものであれば特に限定されない。
誘電体多層膜ミラー11Aは、石英基板13A及び誘電体層14Aを含む。同様に、誘電体多層膜ミラー11Bは、石英基板13B及び誘電体層14Bを含む。石英基板13A,13Bは、例えば厚み1mm程度とすることができる。なお、石英基板13A,13Bに代えて、光学ガラスBK7等を用いてもよい。
誘電体層14A,14Bは、それぞれ、石英基板13A,13B上に、屈折率nの互いに異なる2種類の誘電体薄膜を交互に積層して形成されている。ここでは、誘電体層14Aは、誘電体薄膜としてHfO2薄膜15A及びSiO2薄膜16Aが交互に積層して形成されている。同様に、誘電体層14Bは、誘電体薄膜としてHfO2薄膜15B及びSiO2薄膜16Bが交互に積層して形成されている。HfO2薄膜及びSiO2薄膜は、スパッタリングによって、それぞれ光学膜厚λc/4の厚みに形成されている。ここで、λcは誘電体多層膜ミラー中心波長を表す。誘電体多層膜ミラー中心波長は、他の波長範囲に比較して誘電体多層膜ミラー11A,11Bが高い反射率を有する特定の波長範囲の中心波長である。HfO2薄膜及びSiO2薄膜は、これら2つの薄膜の組み合わせを1周期として、5周期積層して形成されている。ただし、HfO2薄膜及びSiO2薄膜が積層される層数は5周期分に限定されない。なお、図中では、誘電体層14A,14Bについては、HfO2薄膜及びSiO2薄膜のうちの2周期分のみが簡略化して示されている。
支持部材12は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bを共振器長Lだけ互いに離間した状態に支持する。支持部材12は、誘電体多層膜ミラー11Aの石英基板13Aに固定されている。支持部材12は、誘電体多層膜ミラー11B側に向かって伸びる突起部12aを含む。突起部12aの先端は、誘電体多層膜ミラー11Bの表面に当接している。これにより、支持部材12は、誘電体多層膜ミラー11Aと誘電体多層膜ミラー11Bとの間の距離を所定距離(共振器長L)に保つ。なお、支持部材12の構成は上述したものに限定されない。
再び図1を参照して、光源20は、共振器10に入射する光Bを照射する。光源20は、白色光源であり、例えばキセノンランプである。なお、光源20は、キセノンランプに限定されない。
測定部30は、分光器であり、共振器10から共振により透過光として出力された光Bの透過スペクトルを、所定波長範囲において測定する。所定波長範囲は、ここでは一例として300nm以上800nm以下の波長範囲としている。
演算部40は、測定部30によって測定された透過スペクトルからピーク波長に対応する値の実測値を検出する。ここでは、演算部40は、ピーク波長の実測値を検出するとしているが、演算部40は、例えばピーク波長に対応する周波数の実測値等を検出してもよい。演算部40は、透過スペクトルのピーク波長の実測値に基づいて、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置された被測定物Sの厚みを判定する。演算部40における被測定物Sの厚みの判定方法について、詳しくは後述する。演算部40は、物理的には、CPU及びメモリを内蔵したパーソナルコンピュータ、マイクロプロセッサ等を含む演算装置等で実現される。
光学系50は、光源20から共振器10までの第1光学系50a、共振器10から測定部30までの第2光学系50b、及び、第2光学系50bから分岐する第3光学系50cを有する。
第1光学系50aは、第1レンズ51A及び偏光板52を、光Bの入射側(以下、単に「入射側」という)からこの順に含む。第1レンズ51Aは、光源20によって照射された光Bを平行ビーム(コリメート光)に調整する。偏光板52は、光Bを所定の偏光方向のみに偏光した状態とする。偏光板52の光Bの出射側(以下、単に「出射側」という)には、共振器10が設けられている。
第2光学系50bは、第2レンズ51B、第3レンズ51C、ピンホール板53、第4レンズ51D、ビームスプリッタ54、第5レンズ51E及び光ファイバ55を、入射側からこの順に含む。第2レンズ51B及び第3レンズ51Cは、被測定物Sの像を拡大して、ピンホール板53の位置に被測定物Sの像を結ばせる。なお、第2レンズ51Bとして無限補正系対物レンズを用い、第3レンズ51Cとしてその結像レンズを用いることが好ましい。ピンホール板53は、丸穴を有し、第2レンズ51B及び第3レンズ51Cによる拡大された被測定物Sの像から、任意の空間位置を選択して空間分解する。ここで、空間分解能は、ピンホール板53の丸穴の直径を第2レンズ51B及び第3レンズ51Cによる拡大率で除した値となる。例えば、ピンホール板53の丸穴の直径が50μm、拡大率が8倍である場合には、空間分解能は50/8=6.25μmとなる。第4レンズ51Dは、ピンホール板53を通過した光Bを平行ビームに調整する。ビームスプリッタ54は、光Bを第2光学系50bと第3光学系50cとに分岐させる。なお、ビームスプリッタ54に代えて、第2光学系50bと第3光学系50cとの何れかを選択可能な可動式のミラーを用いてもよい。第5レンズ51Eは、平行ビームに調整された光Bを集光し、光ファイバ55に入力する。光ファイバ55は、光Bを測定部30に伝送する。
第3光学系50cは、第6レンズ51F及びCCDカメラ56を、入射側からこの順に含む。第6レンズ51Fは、平行ビームに調整された光Bを集光し、CCDカメラ56に入力する。CCDカメラ56は、共振器10に配置された被測定物Sの状態を撮像し、例えばディスプレイ(不図示)に表示する。
続いて、厚み測定装置1における被測定物Sの厚みdの判定方法について説明する。
[第1判定方法]
まず、第1判定方法について説明する。図4は、共振器に被測定物が配置された場合における光の共振を模式的に示す図、図5は、共振器から共振により出力される光の透過スペクトルを示す図である。
まず、第1判定方法について説明する。図4は、共振器に被測定物が配置された場合における光の共振を模式的に示す図、図5は、共振器から共振により出力される光の透過スペクトルを示す図である。
図4に示すように、光Bは、共振器10において複数の共振次数mにて共振する。これにより、光Bは、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に閉じ込められる。図中には、共振次数m=4,5,6,7にて共振した状態の光Bが模式的に示されている。このとき、共振器長L、被測定物Sの厚みd、被測定物Sの屈折率n、共振次数m、波長λは、連立方程式である下記式(1)、(2)を満たす。なお、波長λ1、λ2は、異なる共振次数に対応する波長λを表す。
図5は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に被測定物Sが配置されていない状態(すなわち、上記式(1)(2)においてd=0とした状態)における透過スペクトル(破線)、及び、被測定物Sが配置されている状態における透過スペクトル(実線)を示す。図5では、各誘電体多層膜ミラー11A,11Bの反射率90%、共振器長L=1000nm、被測定物Sの厚みd=500nm、被測定物Sの屈折率n=1.5とされている。
ここで、演算部40は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に被測定物Sが配置されていない状態における透過スペクトルのピークの内から、例えば互いに隣り合う2つのピークP1,P2を特定する。そして、演算部40は、各ピークP1,P2の波長λ1,λ2を上記式(1)、(2)に代入すると共に、上記式(1)(2)においてd=0とすることにより、共振次数m及び共振器長Lを算出する。
ここで、上記式(1)は、共振器10における光Bの共振次数mと、共振次数mに対応するピーク波長の実測値と、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間の光学的距離と、の関係を表す式である。また、上記式(2)は、共振器10における光Bの共振次数mとは異なる他の共振次数m+1と、他の共振次数m+1に対応するピーク波長の実測値と、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間の光学的距離と、の関係を表す式である。演算部40は、上記式(1)、(2)の連立方程式を解いて、被測定物Sの厚みdを判定する。
具体的に、演算部40は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に被測定物Sが配置されている状態における透過スペクトルのピークの内から、例えば互いに隣り合う2つのピークP3,P4を特定する。そして、演算部40は、ピークP3の波長λ3を上記式(1)、(2)における波長λ1に代入し、ピークP4の波長λ4を上記式(1)、(2)における波長λ2に代入する。このとき、演算部40は、共振器長Lとして、上述した演算により得た値を用いる。これにより、演算部40は、共振次数m及び被測定物Sの厚みdを算出及び出力する。
上記第1判定方法によれば、厚み測定装置1を用いて被測定物Sの厚みdを算出することができる。しかしながら、透過スペクトルのピークの内から互いに隣り合う2つのピークを特定することができない場合には、第1判定方法では被測定物Sの厚みdを正確に算出することができない。一例として、以下に示すように共振器長Lが十分に小さくない場合には、互いに隣り合う2つのピークを特定することが困難となる。
図6は、共振器長と透過スペクトルとの関係を示す図である。図6は、横軸に光Bの波長、縦軸に光Bの透過率を示している。また、図6では、各誘電体多層膜ミラー11A,11Bの反射率90%、共振器長L=500nm、1000nm、2500nm、5000nmとされている。図6に示すように、共振器長Lが大きくなるに従って、透過スペクトルにおける各ピークの波長の差が小さくなる。このため、透過スペクトルにおいて、複数のピークが接近して存在することとなり、各ピークの内から互いに隣り合う2つのピークを特定することが困難となる。その結果、第1判定方法では被測定物Sの厚みdの測定精度が低下する。
[第2判定方法]
続いて、厚み測定装置1における被測定物Sの厚みdの判定方法の内、第2判定方法について説明する。
続いて、厚み測定装置1における被測定物Sの厚みdの判定方法の内、第2判定方法について説明する。
厚み測定装置1において、演算部40は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置された被測定物Sの厚みdに対応するピーク波長に対応する値の理論値を記憶している。ここでは、演算部40は、ピーク波長の理論値を記憶しているが、演算部40は、例えばピーク波長に対応する周波数の理論値等を記憶していてもよい。ピーク波長の理論値は、転送行列計算を用いて算出される。そして、演算部40は、ピーク波長の実測値と理論値とを比較して、被測定物Sの厚みdを判定する。
図7は、測定された透過スペクトルと、転送行列計算によって算出された透過スペクトルと、を比較して示す図である。図7の横軸は、光Bの波長の逆数に比例する光Bのエネルギーを示し、図7の縦軸は、光Bの透過率を示している。図7は、共振器長L=150nm、被測定物Sの厚みd=0(すなわち、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に被測定物Sが配置されていない状態)における透過スペクトルを示す。図7は、転送行列計算を用いることによって、光Bの透過スペクトルのピーク波長の理論値が、ピーク波長の実測値に対して精度良く算出されることを示している。従って、転送行列計算を用いて、被測定物Sの厚みdに対応するピーク波長の理論値を予め算出し、演算部40が記憶しておくことで、透過スペクトルのピーク波長の実測値が得られた場合に、対応する被測定物Sの厚みdを直ちに判定することができる。
ここで、転送行列計算について説明する。図8は、転送行列計算に用いられるパラメータを説明するための図である。図8に示すように、厚み測定装置1にて実行する転送行列計算では、共振器10の対向する方向をx軸方向として、誘電体多層膜ミラー11Aの石英基板13Aの外面のx座標を0とする。そして、石英基板13Aと1層目のHfO2薄膜15Aとの接面のx座標をx1、1層目のHfO2薄膜15Aと1層目のSiO2薄膜16Aとの接面のx座標をx2、以下同様に、各誘電体薄膜同士の接面のx座標をx3、x4とし、誘電体多層膜ミラー11Aの石英基板13Aとは反対側の端面のx座標をx5とする。誘電体多層膜ミラー11Bについても、石英基板13B、HfO2薄膜15B及びSiO2薄膜16Bのうちの2つの部材間の接面、及び、誘電体多層膜ミラー11Bの両端面のx座標を、誘電体多層膜ミラー11A側から順にx6〜x11とする。また、HfO2薄膜15A,15Bの屈折率をn1、SiO2薄膜16A,16Bの屈折率をn2、被測定物Sの屈折率をn3とする。また、入射光の電場強度をEi、波長をλiとし、透過光の電場強度をEt、波長をλtとし、反射光の電場強度をEr、波長をλrとする。このようなパラメータを用いて、転送行列計算では、x座標x1〜x11、共振器長L、被測定物Sの厚みd、屈折率n1,n2,n3及び入射光の波長λiが入力されると、Et/Eiとλtとの関係である透過スペクトルが算出される。なお、転送行列計算については、例えば、小檜山光信著、「光学薄膜の基礎理論」、株式会社オプトロニクス社、p.76−92、117−136等の文献において開示された方法を用いることが好適である。
このような第2判定方法に基づく被測定物Sの厚みを判定について、具体例を挙げて説明する。図9は、被測定物を拡大して示す平面図、図10は、ピーク波長の実測値と、転送行列計算によって算出されたピーク波長の理論値と、を比較して示す図である。図9に示すように、被測定物Sであるアントラセン結晶の積層方向に沿った厚みdを測定点(a)〜点(d)の4点にて測定した。
図10は、転送行列計算によって算出された透過スペクトル(破線)、及び、測定部30によって測定された透過スペクトル(実線)を示す。図10に示す透過スペクトルの実測値及び理論値を対象にして、演算部40は、透過スペクトルのピーク波長の実測値と理論値とを比較して、被測定物Sの厚みを判定する。なお、ここで被測定物Sとして例示しているアントラセン結晶は、2次元的な単分子層が積層した状態となるように形成されており、その1層の厚みは約0.923nmである。図10(a)において、98層〜100層の単分子層が積層した厚みに対応するピーク波長の実測値が測定されていることから、図9に示す測定点(a)では、被測定物Sは98層〜100層の単分子層が積層していることが判定される。また、図10(b)において、96層〜101層の単分子層が積層した厚みに対応するピーク波長の実測値が測定されていることから、図9に示す測定点(b)では、被測定物Sは96層〜101層の単分子層が積層していることが判定される。また、図10(c)において、94層、95層の単分子層が積層した厚みに対応するピーク波長の実測値が測定されていることから、図9に示す測定点(c)では、被測定物Sは94層、95層の単分子層が積層していることが判定される。また、図10(d)において、95層、96層の単分子層が積層した厚みに対応するピーク波長の実測値が測定されていることから、図9に示す測定点(d)では、被測定物Sは95層、96層の単分子層が積層していることが判定される。
以上説明したように、実施形態に係る厚み測定装置1によれば、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に被測定物Sが配置された共振器10に対して光Bを照射し、共振器10から共振により出力される光Bの透過スペクトルが測定される。そして、透過スペクトルのピーク波長の実測値に基づいて、被測定物Sの厚みdを判定する。このため、被測定物Sに対して非接触の状態で、被測定物Sの厚みdを測定することができる。また、透過スペクトルから検出されるピーク波長の実測値に基づいて被測定物Sの厚みdを判定するため、深度方向の分解能に理論的な限界が存在しない。よって、被測定物Sに対して非接触としつつ、分解能を向上させることができる。
また、厚み測定装置1のミラーは、石英基板13A,13B上に屈折率nの互いに異なる2種類の誘電体薄膜であるHfO2薄膜15A,15BとSiO2薄膜16A,16Bとを交互に積層した誘電体多層膜ミラー11A,11Bである。このため、ミラーの反射率を向上させて、透過スペクトルのピークの幅を狭めることができる。よって、被測定物Sの厚みdの測定精度を向上させることができる。
また、共振器10は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bを所定距離だけ互いに離間した状態に支持する支持部材12を更に有する。これにより、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間の離間距離を一定に保つことができるため、被測定物Sの厚みdの測定精度を向上させることができる。
また、演算部40は、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置された被測定物Sの厚みdに対応するピーク波長の理論値を記憶しており、ピーク波長の実測値と理論値とを比較して、被測定物Sの厚みdを判定する。このため、透過スペクトルの複数のピークの内から互いに隣り合う2つのピークを特定することなく、ピーク波長の実測値と理論値とを比較するだけで、容易に被測定物Sの厚みdを測定することができる。
また、ピーク波長の理論値は、転送行列計算を用いて算出される。このため、ピーク波長の理論値を正確に算出することができるため、正確に被測定物Sの厚みdを測定することができる。
また、演算部40は、共振器10における光Bの共振次数mと、共振次数mに対応するピーク波長の実測値と、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間の光学的距離と、の関係を表す上記式(1)、及び、共振器10における光Bの共振次数m+1と、共振次数m+1に対応するピーク波長の実測値と、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間の光学的距離と、の関係を表す上記式(2)の連立方程式を解いて、被測定物Sの厚みdを判定する。この場合、透過スペクトルの複数のピークの内から互いに隣り合う2つのピークが特定されているときには、例えばピーク波長の理論値を算出するための複雑な演算を行うことなく、容易に被測定物Sの厚みdを測定することができる。
なお、本発明に係る厚み測定装置1は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、測定部30は、共振器10から共振により透過光として出力される光Bの透過スペクトルを所定波長範囲において測定するとした。そして、演算部40は、当該透過スペクトルからピーク波長の実測値を検出し、ピーク波長の実測値に基づいて、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置された被測定物Sの厚みdを判定するとした。しかし、厚み測定装置1では、測定部30は、共振器10から共振により反射光として出力される光Bの反射スペクトルを所定波長範囲において測定するとしてもよい。その場合、演算部40は、当該反射スペクトルからピーク波長の実測値を検出し、ピーク波長の実測値に基づいて、一対の誘電体多層膜ミラー11A,11Bの間に配置された被測定物Sの厚みdを判定することができる。なお、反射スペクトルのピークとは、反射率の低い方向へのピーク(すなわち、谷状のディップ)である。
また、図10において、演算部40は、透過スペクトルのピーク波長の実測値と理論値とを比較して、被測定物Sの厚みdを判定するとした。しかし、測定部30によって測定された透過スペクトルにおいて誘電体多層膜ミラーの高反射帯域にピークが複数本現れない場合、もしくはピークが明瞭に現れない場合においては、演算部40は、測定部30によって測定された透過スペクトルと、転送行列計算によって理論的に算出された透過スペクトルと、の図形的に重なる面積に基づいて、被測定物Sの厚みdを判定してもよい。或いは、演算部40は、測定部30によって測定された透過スペクトルのピークの波長方向における平均値と、転送行列計算によって理論的に算出された透過スペクトルのピーク波長と、を比較して、被測定物Sの厚みdを判定してもよい。或いは、測定部30によって測定された透過スペクトルのピークの波形と、転送行列計算によって理論的に算出された透過スペクトルのピークの波形(理論曲線)と、を例えば最小二乗法等を用いてフィッティングすることにより、被測定物Sの厚みdを判定してもよい。或いは、演算部40は、測定部30によって測定された透過スペクトルと、転送行列計算によって理論的に算出された透過スペクトルと、を重畳して出力するだけでもよい。
また、図11に示すように、厚み測定装置1は、第1光学系50aの偏光板52の出射側に、光源20からの光Bを共振器10に伝送する光ファイバ57を含み、誘電体多層膜ミラー11Aは、被測定物Sと対向する光ファイバ57の端面57aに設けられていてもよい。この場合、被測定物Sに沿って光ファイバ57を走査することができるため、効率良く被測定物Sの厚みdを測定することができる。
また、図12に示すように、共振器10は、誘電体多層膜ミラー11A,11Bに代えて、金属ミラー17A,17Bを備えてもよい。この場合、誘電体多層膜ミラー11A,11Bに比較して、より広い波長範囲の光Bを閉じ込めることができる。よって、被測定物Sとして厚みdを測定可能な物質の種類を増加させることができる。
1…厚み測定装置、10…共振器、11A,11B…誘電体多層膜ミラー(ミラー)、12…支持部材、13A,13B…石英基板(基板)、15A,15B…HfO2薄膜(誘電体)、16A,16B…SiO2薄膜(誘電体)、17A,17B…金属ミラー(ミラー)、20…光源、30…測定部、40…演算部、B…光、S…被測定物。
Claims (6)
- 互いに離間して対向する一対のミラーを有する共振器と、
前記共振器に入射する光を照射する光源と、
前記共振器から共振により出力される出力光の透過スペクトル又は反射スペクトルを、所定波長範囲において測定する測定部と、
前記透過スペクトル又は前記反射スペクトルからピーク波長に対応する値の実測値を検出し、前記実測値に基づいて、前記一対のミラーの間に配置された被測定物の厚みを判定する演算部と、を備える厚み測定装置。 - 前記ミラーは、基板上に屈折率の互いに異なる2種類の誘電体を交互に積層した誘電体多層膜ミラーである、請求項1記載の厚み測定装置。
- 前記共振器は、前記一対のミラーを所定距離だけ互いに離間した状態に支持する支持部材を更に有する、請求項1又は2記載の厚み測定装置。
- 前記演算部は、
前記一対のミラーの間に配置された被測定物の厚みに対応する前記ピーク波長に対応する値の理論値を記憶しており、
前記実測値と前記理論値とを比較して、前記被測定物の厚みを判定する、請求項1〜3の何れか一項記載の厚み測定装置。 - 前記理論値は、転送行列計算を用いて算出される、請求項4記載の厚み測定装置。
- 前記演算部は、
前記共振器における前記光の共振次数と、前記共振次数に対応する前記実測値と、前記一対のミラーの間の光学的距離と、の関係を表す第1式、及び、前記共振器における前記光の前記共振次数とは異なる他の共振次数と、前記他の共振次数に対応する前記実測値と、前記一対のミラーの間の前記光学的距離と、の関係を表す第2式の連立方程式を解いて、前記被測定物の厚みを判定する、請求項1〜3の何れか一項記載の厚み測定装置。
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2015
- 2015-12-08 JP JP2015239239A patent/JP2017106768A/ja active Pending
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