JP2017106727A - マイクロ分光分析用試料台の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶液に溶解している溶質に対して、より正確なマイクロ分光分析を実現するための試料濃縮を行なうことを目的とする。
【解決手段】撥水性、撥油性を有する化合物を溶媒に溶解してなる液を、処理対象である光学材料の表面に、ディップ処理の手法に撥水、撥油性を有する物質を塗布し、その後、光学材料を加熱し、洗浄する。
【選択図】図1
【解決手段】撥水性、撥油性を有する化合物を溶媒に溶解してなる液を、処理対象である光学材料の表面に、ディップ処理の手法に撥水、撥油性を有する物質を塗布し、その後、光学材料を加熱し、洗浄する。
【選択図】図1
Description
本発明は、マイクロ分光分析用試料台の作製方法に関する。
例えば、顕微FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)などを用いたマイクロ分光分析法は、微小かつ微量の有機物の定性分析にとって有効な手法である。例えば、顕微FTIRで定性分析を行う際、測定する試料の厚さが最適な状態でなければ、正常なFTIRスペクトルを得ることができないので、正常なFTIRスペクトルを得るための試料調製は重要となる。例えば、希薄な溶液試料の顕微FTIRを行う場合、従来は、特許文献1、2に開示されているように、サンプル台の赤外線反射部材に付されたフッ素樹脂の薄膜上に、溶媒に試料を含ませた溶液の凝縮核となるピンホールを形成し、そのピンホールについて顕微FTIRで測定して、微量の希薄溶液の溶質に関する成分情報を得ていた。
しかしながら、当該手法では凝集核の厚さが厚く、得られるFTIRスペクトルは全体的に飽和状態となってしまい、成分を定性するために実施されるスペクトル解析に大きな支障を来たすことがあった。特許文献3に開示されている方法で凝集核の厚みを調節する場合、凝集核が治具に付着して分析できなくなってしまったり、特許文献4に開示されているような部材に付されたフッ素樹脂が塗布されている基板では、フッ素樹脂の薄膜が破壊しやすいことが欠点であった。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。つまり
(1)撥水性または撥油性を有する下記構造式(I)で表わされるパーフルオロアルキルポリエーテル基含有シラン化合物を溶媒に溶解してなる液に光学材料を浸漬させ、浸漬後に光学材料を加熱し、次いで光学材料を洗浄して、光学材料の表面が撥水性または撥油性に改質されていることを特徴とする光学材料を用いたマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(1)撥水性または撥油性を有する下記構造式(I)で表わされるパーフルオロアルキルポリエーテル基含有シラン化合物を溶媒に溶解してなる液に光学材料を浸漬させ、浸漬後に光学材料を加熱し、次いで光学材料を洗浄して、光学材料の表面が撥水性または撥油性に改質されていることを特徴とする光学材料を用いたマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
ここで、aは1〜30の整数、bは1〜10の整数、cは1〜20の整数、dは1〜10の整数、eは1〜20の整数、hは0〜10の整数、gは0〜20の整数、nは1〜320の整数であり、mおよびpの和は3である。
(2)前記光学材料が、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、およびダイヤモンドから選ばれる1種以上を含む(1)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(3)前記光学材料の改質されている側の表面に、線の幅が1〜1000μmである直線または曲線で閉じた、内側に溶液を溜めることのできる領域を有し、該領域の面積が0.001〜10mm2である(1)または(2)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(4)前記領域の該線が凸部高さを有し、その凸部高さが0.001〜1μmである(3)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(5)前記領域の該線が凹部深さを有し、その凹部深さが0.001〜1μmである(3)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(6)前記溶媒が、アルコール類、ケトン類、エーテル類、アルデヒド類、アミン類、脂肪酸類、エステル類およびニトリル類から選ばれる1種以上を含むものであり、かつ、該溶媒はフッ素変性されたものである(1)〜(5)のいずれかに記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、である。
(2)前記光学材料が、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、およびダイヤモンドから選ばれる1種以上を含む(1)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(3)前記光学材料の改質されている側の表面に、線の幅が1〜1000μmである直線または曲線で閉じた、内側に溶液を溜めることのできる領域を有し、該領域の面積が0.001〜10mm2である(1)または(2)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(4)前記領域の該線が凸部高さを有し、その凸部高さが0.001〜1μmである(3)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(5)前記領域の該線が凹部深さを有し、その凹部深さが0.001〜1μmである(3)に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、
(6)前記溶媒が、アルコール類、ケトン類、エーテル類、アルデヒド類、アミン類、脂肪酸類、エステル類およびニトリル類から選ばれる1種以上を含むものであり、かつ、該溶媒はフッ素変性されたものである(1)〜(5)のいずれかに記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法、である。
本発明により、たとえば、所望の撥水性、撥油性を有するパーフルオロアルキルエーテル基よりなる薄膜を光学材料の表面に形成することができたプレートで、マイクロ分光分析における濃縮操作を簡便かつより正確に行うことができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明における撥水性または撥油性を有する化合物としては、下記構造式(I)で表わされるパーフルオロアルキルポリエーテル基含有シラン化合物が好ましく例示される。
ここで、aは1〜30の整数、bは1〜10の整数、cは1〜20の整数、dは1〜10の整数、eは1〜20の整数、hは0〜10の整数、gは0〜20の整数、nは1〜320の整数である。mとpの和は3である。
本発明における溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、アルデヒド類、アミン類、脂肪酸類、エステル類およびニトリル類があげられ、かつ、フッ素変性されたものが好ましい。さらに、フッ素変性エーテル類、フッ素変性アルコール類が好ましく、エーテル類、アルコール類は炭素数2〜20のものが最も好ましい。
撥水性または撥油性を有する化合物を溶媒に溶解してなる液の溶液濃度は0.001〜10質量%、さらに0.01〜1質量%が好ましい。
本発明における表面改質の方法として、ディップ処理またはスピンコートが例示され、なかでもディップ処理で表面改質することが好ましい。本発明における光学材料としては、赤外線の吸収が少なく、かつ、溝、凹みを容易に加工できる材料が好ましく、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、およびダイヤモンドが例示される。なかでもシリコンが好ましい。処理対象である光学材料の表面を予め研磨して鏡面仕上げをしておき、前記光学材料を前記処理液中に浸漬した後、該光学材料を、加熱して乾燥する。
本発明において光学材料を加熱するとは、80℃から150℃で30分間から3時間に保つことをいう。さらには90℃から110℃で30分間から1時間に保つことが好ましい。
本発明において試料の厚みを抑制するための方法として、溝または凹みを設ける加工をすると、簡便、かつ正確に濃縮操作を行うことができる。表面を予め研磨して鏡面に仕上げ、さらに溶液試料を濃縮する側の表面に、線の幅が1〜1000μmである直線または曲線で閉じた、内側に溶液を溜めることのできる領域を有し、該領域の面積が0.001〜10mm2、さらには0.001〜0.1mm2であることが好ましい。さらに該線が凸部高さを有し、その凸部高さが0.001〜1μm、または、該線が凹部深さを有し、その凹部深さが0.001〜1μmであるのが最も好ましい。上記領域は、光学材料より硬質な材料で描くことができる。
以下、本発明を実施例で説明する。
まず、撥水性または撥油性を有する化合物として、パーフルオロアルキルポリエーテル基含有シラン化合物
のエチルノナフルオロブチルエーテル0.1質量%、つまり、DS−5210TH(株式会社ハーベスト製)を使用した。ここで、上記化学式における平均重合度(上記構造式(I)におけるn=32)は、19F NMRから計算した値である。
表面を予め研磨して鏡面仕上げしたシリコンの、溶液試料を濃縮する側の表面を、上記溶液に浸漬させ、浸漬後、シリコンを100℃で1時間加熱乾燥した。乾燥後、残留したDS−5210HをDS−TH(株式会社ハーベスト製)で洗浄除去した。
以上の処理により、シリコンの表面は撥水性、撥油性を有する性質に改質され、実際に5 mm□の領域で、分析深さ1〜数nmの飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)によるイオンイメージ像で、SiO3Hイオン、C3F5O2イオン、C3F7Oイオンなど撥水作用を有する分子構造が均一に存在していることが確認できた。表面改質された面にダイヤモンドペン(オグラ宝石精機工業製のDポイントペン)で線幅10μm、長辺280μm、短辺100μmの長方形(0.028mm2)の領域を作製した。この線の部分を表面粗さ計(Bruker製Dektak)で計測したところ、凹部200nm、凸部600nmであった。
図2における曲線は、大豆油1000ngのクロロホルム5μLの溶液を、上記のシリコン上に滴下し、クロロホルムを揮発させた後、上記長方形の領域で濃縮させた、大豆油を透過法で赤外分光分析したときのFTIRスペクトルである。また、図3における曲線は、大豆油1000ngを赤外線反射部材に付されたフッ素樹脂の薄膜上で濃縮させてなる試料を用いて、反射法による赤外分光分析を行なったときのFTIRスペクトルを示すものである。
図2から、700〜4000cm−1の全ての領域において、図3に比べ良好なスペクトルが得られた。図2は、試料量が多く採れる場合に行なう方法(下記の図4)で測定されたFTIRスペクトルとほとんど同じ良好な結果であった。
参考例
図4における曲線は、大豆油100μgをダイヤモンド板に付着させて赤外分光分析を行なったときのFTIRスペクトルであり、これは試料量が多く採れる場合に行なう方法である。
図4における曲線は、大豆油100μgをダイヤモンド板に付着させて赤外分光分析を行なったときのFTIRスペクトルであり、これは試料量が多く採れる場合に行なう方法である。
1:表面改質部
2:光学材料
3:試料
4:凹部
5:凸部
6:検出器
7:赤外線
2:光学材料
3:試料
4:凹部
5:凸部
6:検出器
7:赤外線
Claims (6)
- 前記光学材料が、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、およびダイヤモンドから選ばれる1種以上を含む請求項1記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法。
- 前記光学材料の改質されている側の表面に、線の幅が1〜1000μmである直線または曲線で閉じた、内側に溶液を溜めることのできる領域を有し、該領域の面積が0.001〜10mm2である請求項1または2に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法。
- 前記領域の該線が凸部高さを有し、その凸部高さが0.001〜1μmである請求項3に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法。
- 前記領域の該線が凹部深さを有し、その凹部深さが0.001〜1μmである請求項3に記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法。
- 前記溶媒が、アルコール類、ケトン類、エーテル類、アルデヒド類、アミン類、脂肪酸類、エステル類およびニトリル類から選ばれる1種以上を含むものであり、かつ、該溶媒はフッ素変性されたものである請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロ分光分析用試料台の作製方法。
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