JP2017106058A - 薄膜製造方法、成膜装置、及び薄膜形成材 - Google Patents
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硬質皮膜を形成するPVDでは、一般的に、成膜室内でプラズマを生成して成膜する。このため、成膜室でプラズマを制御することにより成膜を制御することが必要である。
成膜室中で、第18族元素のうち互いに異なる元素の第1希ガスと第2希ガスを少なくとも用いて、スパッタリングで処理対象部材に薄膜を形成するステップと、
前記薄膜の形成中に、前記成膜室で発生するプラズマ中の前記第1希ガスの元素と前記第2希ガスの元素の発光強度比を求めるステップと、
前記薄膜の形成中の前記発光強度比に応じて、第18族元素のうち、前記第1希ガス及び第2希ガスと異なる元素の第3希ガスを前記成膜室に供給することにより、あるいは前記第3希ガスの供給を調整することにより、前記プラズマの電子温度を調整して前記薄膜の膜質を調整するステップと、を備える。
前記第3希ガスは、ネオンガスである、ことが好ましい。
第18族元素のうち互いに異なる元素の第1希ガス、第2希ガス、及び第3希ガスを別々に貯留するガス源と、
前記第1希ガス及び前記第2希ガスを少なくとも用いて生成されるプラズマを用いてターゲット材からスパッタ粒子を生成するスパッタ源と、
前記スパッタ粒子が堆積するように、前記スパッタ源に対向した位置に処理対象部材が配置される成膜室を備える成膜容器と、
前記薄膜の形成中、前記プラズマ中の前記第1希ガスの元素と前記第2希ガスの元素の発光強度比を求めるために、前記第1希ガスの元素と前記第2希ガスの元素の発光を受光する受光器と、
前記薄膜の膜質を調整するために、前記薄膜の形成中に、前記薄膜の形成中の前記発光強度比に応じて、前記成膜室に前記第3希ガスを供給する、あるいは、供給する前記第3希ガスの量を調整する供給量調整器と、を備える。
前記成膜装置は、受光によって得られる前記第1希ガスの元素の発光強度と前記第2希ガスの元素の発光強度から前記プラズマ中の各位置における前記発光強度比を求める部分を備える処理装置を備え、
前記第3希ガスの前記成膜室への供給口は、前記成膜室の壁面に分散して複数設けられており、
前記処理装置は、前記電子温度の分布を調整するために、前記発光強度比が予め定めた範囲から外れた前記成膜室内の領域に前記第3希ガスを供給するように、前記第3希ガスの供給口の一部を選択すること、及び選択した供給口における前記第3希ガスの供給量を設定すること、を行う、ことが好ましい。
部材と、
前記部材の表面に設けられた薄膜と、を含み、
前記薄膜の前記部材の側に位置する下層と、前記下層に比べて前記薄膜の表面の側に位置する上層とは、含有成分は同じであるが、硬さが異なり、前記下層の硬さは、前記上層の硬さに比べて低い、ことを特徴とする薄膜形成材である。
図1は、本実施形態の薄膜製造方法を行う本実施形態の成膜装置の構成の一例を説明する図である。図1に示す成膜装置10は、DCマグネトロンスパッタリングを用いて処理対象部材の表面に薄膜を形成する装置である。本実施形態では、磁石を用いたマグネトロンスパッタリングを用いるが、磁石を用いないスパッタリングを用いることもできる。
ガス源12は、第18族元素のうち互いに異なる複数の元素のガスを貯留する部分である。ガス源12は、本実施形態では、アルゴンガス(第1希ガス)、ネオンガス(第3希ガス)、及びキセノンガス(第2希ガス)それぞれを別々に貯留するAr源12a、Ne源12b、及びXe源12cを含む。
Ar源12a、Ne源12b、及びXe源12cは、それぞれマスフローコントローラ22a、22b、及び22cを通して、成膜室18に接続されており、アルゴンガス、ネオンガス、及びキセノンガスの供給量が調整されて、Ar源12a、Ne源12b、及びXe源12cから成膜室18に各ガスが供給される。マスフローコントローラ22a、22b、及び22cは、成膜室18中のアルゴンガス、ネオンガス、及びキセノンガスの分圧を調整するために、各ガスの供給量を調整する。本実施形態において、アルゴンガス、ネオンガス、及びキセノンガスを用いるのは、スパッタリングのためにプラズマPを生成するとともに、このプラズマPを制御して、処理対象部材26の表面に形成される薄膜の性質(例えば、ビッカース硬さ)を調整するためである。この点については、後述する。
成膜室18中には、電極30と対向するように処理対象部材26を配置する載置台24が設けられている。したがって、成膜室18では、ターゲット材32から生成されたスパッタ粒子が処理対象部材26に堆積するように、マグネトロンスパッタ源14の電極30に対向した位置に処理対象部材26が配置される。電極30及びターゲット材32は、この順番で成膜室18の内側に向かうように重なって設けられている。電極30及びターゲット材32は、減圧雰囲気の成膜室18内に設けられる。ターゲット材32と処理対象部材26との間にプラズマPが生成される。電極30には、負のDC電圧が印加される。これにより、プラズマPが生成され、プラズマP中の電子が、磁石28の磁界によりターゲット材32近傍に閉じ込められる。プラズマP中のイオン化したアルゴン等の元素は、電極30に向かって加速し、ターゲット材32に衝突する。これにより、ターゲット材32の成分がスパッタ粒子として飛び出し、処理対象部材26の表面に膜成分として付着する。本実施形態では、処理対象部材26に、バイアス用電源36から載置台24を通してバイアス電圧(負の電圧)を印加する。これにより、処理対象部材26への薄膜の形成を促進することができる。ターゲット材32は、成膜する材料に合わせて適宜選択される。ダイヤモンドライクカーボン層を硬質皮膜として形成する場合、ターゲット材32として黒鉛が好適に用いられる。また、金属皮膜を形成する場合、ターゲット材32として銅やチタン等の金属材料が好適に用いられる。
載置台24は、図示しない回転駆動装置に連結されており、処理対象部材26の表面に薄膜が周上に形成されるように載置台24は回転する。すなわち、処理対象部材26の表面が全周にわたってプラズマPの生成領域に向くように、処理対象部材26は回転する。
本実施形態では、スパッタリング用DC電源34を用いてDC電圧を電極30に印加するが、スパッタリング用DC電源34は連続式でもパルス式でも用いることができる。パルス式の場合、DCパルス電圧のパルス幅は、数μ〜数1000μ秒である。パルス周波数やデューティー比は適宜設定される。また、スパッタリング用DC電源34の代わりに、高周波電圧電源を用いることもできる。
処理装置38は、求めた電子温度に応じて、ネオンガスの供給量を設定して、マスフローコントローラ22bでネオンガスの成膜室18内への供給する量を制御する。求めた電子温度に対してどの程度電子温度を調整するかについては、処理装置38で設定される。したがって、処理装置38は、電子温度の調整しようとする量と、ネオンガスの成膜室18への供給量との関係を、予め記憶しておき、この関係を用いて、求めた電子温度から目標とする電子温度になるように、ネオンガスの供給量を定めることができる。ネオンガスは、プラズマPの電子温度を変化させる機能を備えており、ネオンガスの供給量が増えるほど、成膜室18内のネオンガスの分圧は増えるので電子温度が上昇する。この電子温度の上昇により、処理対象部材26の表面に形成される薄膜の硬さを硬くすることができる。したがって、マスフローコントローラ22bは、薄膜の膜質を調整するために、薄膜の形成中に、薄膜の形成中の上記発光強度比に応じて、成膜室18にネオンガスを供給する供給量調整器、あるいは、供給するネオンガスの量を調整する供給量調整器である。
すなわち、本実施形態の薄膜製造方法では、成膜装置10は、アルゴンガス及びキセノンガスを少なくとも用いて生成されるプラズマPを用いてマグネトロンスパッタリングで処理対象部材26に薄膜を形成する。この薄膜の形成中に、処理装置38は、成膜室18で発生するプラズマP中のアルゴンとキセノンの所定波長の発光強度比を求める。処理装置38は、薄膜の形成中の発光強度比に応じて、ネオンガスを成膜室18に供給する供給量を設定する。あるいは処理装置38は、すでにネオンガスを供給している場合は、すでに供給しているネオンガスの供給量の調整を行う。この設定あるいは調整に基づいて、マスフローコントローラ22bは、ネオンガスの供給を調整することにより、プラズマPの電子温度を調整して薄膜の膜質を調整する。
また、処理対象部材26に形成する薄膜と処理対象部材26との間に、硬さに大きな違いがある場合、薄膜が、処理対象部材26の微小変形に追従できず、処理対象部材26から剥離する場合がある。薄膜の剥離を抑制するために、処理対象部材26と接触する薄膜の下層部分の側では、硬さの程度が比較的低い膜を形成し、薄膜の上層の側では、下層に比べて硬さの程度が比較的高い膜を形成することが好ましい。このような薄膜を形成する場合、処理装置38は、マスフローコントローラ22bを通して、薄膜の厚さが増えるに従がって、電子温度が上昇するように、成膜室18へ供給するネオンガスの量を調整する(増大させる)ことが好ましい。
このような薄膜製造方法においてダイヤモンドライクカーボンを薄膜として処理対象部材26に形成する場合、炭素を主成分として含むことが好ましい。特に、水素含有率が15原子%以下で、炭素を主成分として含むことが好ましい。主成分とは、薄膜中の炭素の含有率が50原子%以上であることをいう。
以下、プラズマPにおける発光と電子温度の関係を説明する。プラズマPにおける発光は、励起状態の原子が、安定状態あるいは準安定状態に遷移する際に発光する。上述の実施形態では、受光器20は、アルゴンとキセノンの発光のうち所定の波長の光を計測する。アルゴンでは、例えば4p’[1/2]0から4s[3/2]0 1へ遷移するときの波長750.4nmの光の発光強度を計測するように、あるいは5p’[1/2]0から4s’[1/2]0 1へ遷移するときの波長419.8nmの光の発光強度を計測するように、光学フィルタ42のフィルタ特性が設定される。キセノンでは、例えば6p[1/2]0から6s[3/2]0 1へ遷移するときの波長828.0nmの光の発光強度を計測するように、光学フィルタ48のフィルタ特性が設定される。
・基底状態から電子衝突により励起状態になり、励起状態から準安定状態に遷移する過程、
・ある準安定状態から電子衝突により励起状態になり、励起状態から別の準安定状態に遷移する過程、
・基底状態からから電子衝突により準安定状態に遷移する過程、を含む。
一方、準安定状態の消滅は、
・準安定状態から電子衝突により励起状態に遷移する過程、
・準安定状態から電子衝突による脱励起により基底状態に遷移する過程、
・準安定状態から雰囲気ガスとの衝突クエンチングにより基底状態もしくは他の励起状態に遷移する過程、
・準安定状態原子が壁への拡散によりそのエネルギを失う過程、
・準安定状態から電子衝突によるイオン化する過程、を含む。
ここで、アルゴン及びキセノンそれぞれにおけるパラメータkg,x、km,x、nm Amは、電子温度の関数である。このため、電子温度と発光強度比の関係は、発光強度比を計算することにより、図2に示すように表される。ここで、レート係数kg,xは、下記式(2)に従がって算出する。電子衝突励起断面積σe(E)は、文献等から既知である。図3は、アルゴンの4s’[1/2]0 0から4p[3/2]1へ励起する電子衝突励起断面積σe(E)を示す図である。電子エネルギ分布関数ve(E)はマクスウェル分布である。
したがって、処理装置38は、図2に示すような発光強度比と電子温度の関係を予め参照データとして記憶しておき、受光器20から送られてくる画像データから発光強度比を求め、この発光強度比を用いて電子温度T eを算出する。
したがって、本実施形態における成膜方法では、電子温度を調整することにより、薄膜の膜質を調整することができることがわかる。具体的には、電子温度T eを高くするほど、硬質な薄膜を形成できることがわかる。電子温度Teは、プラズマP中のアルゴンの発光強度とキセノンの発光強度の比から求めることができる。
本実施形態では、薄膜の形成中にプラズマPのアルゴンとキセノンの発光強度比に応じて、ネオンガスを成膜室に供給することにより、あるいはネオンガスの供給を調整することにより、プラズマPの電子温度T eを調整して薄膜の膜質を調整することができる。成膜中、成膜容器16の壁面に堆積する膜によってプラズマPの電位が変化し、この電位の変化によって薄膜の膜質が変化し易い。このため、本実施形態では、プラズマPの電位が低下しないように、ネオンガスを供給する、あるいはネオンガスの供給を調整する。これにより電子温度を所望の範囲に調整することができる。
このような薄膜は、上述の薄膜製造方法あるいは成膜装置10において、薄膜の厚さが増えるに従がって、ネオンガスの供給量を増やして電子温度を上昇させることにより上記薄膜を容易に形成することができる。
12 ガス源
12a Ar源
12b Ne源
12c Xe源
14 マグネトロンスパッタ源
16 成膜容器
18 成膜室
20 受光器
22 供給量調整器
24 載置台
26 処理対象部材
28 磁石
30 電極
32 ターゲット材
34 スパッタリング用DC電源
38 処理装置
40 ビームスプリッタ
42,48 フィルタ
44,50 結像レンズ
46,52 受光素子
60 排気装置
62 排気制御バルブ
64 ターボ分子ポンプ
66 ドライポンプ
Claims (12)
- 処理対象部材の表面に薄膜を形成する薄膜製造方法であって、
成膜室中で、第18族元素のうち互いに異なる元素の第1希ガスと第2希ガスを少なくとも用いて、スパッタリングで処理対象部材に薄膜を形成するステップと、
前記薄膜の形成中に、前記成膜室で発生するプラズマ中の前記第1希ガスの元素と前記第2希ガスの元素の発光強度比を求めるステップと、
前記薄膜の形成中の前記発光強度比に応じて、第18族元素のうち、前記第1希ガス及び第2希ガスと異なる元素の第3希ガスを前記成膜室に供給することにより、あるいは前記第3希ガスの供給を調整することにより、前記プラズマの電子温度を調整して前記薄膜の膜質を調整するステップと、を備えることを特徴とする薄膜製造方法。 - 前記成膜室内の前記第1希ガス、前記第2希ガス、及び前記第3希ガスの予め定めた分圧条件において、前記発光強度比が許容範囲からはずれているとき、前記成膜室の壁面を洗浄するタイミングであると判定するステップを、更に備える請求項1に記載の薄膜製造方法。
- 前記発光強度比は、前記プラズマ中の各位置で求められ、前記発光強度比が予め定めた範囲から外れた領域に対して選択的に、前記第3希ガスを供給することで、あるいは前記第3希ガスの供給を調整することで、前記電子温度の分布を調整する、請求項1または2に記載の薄膜製造方法。
- 前記電子温度が予め定めた範囲内にはいるように、前記成膜室へ供給する前記第3希ガスの量を調整する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜製造方法。
- 前記薄膜の厚さが増えるに従がって、前記電子温度が上昇するように、前記成膜室へ供給する前記第3希ガスの量を調整する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜製造方法。
- 前記第1希ガス及び前記第2希ガスは、アルゴンガス及びキセノンガスであり、
前記第3希ガスは、ネオンガスである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜製造方法。 - 前記薄膜は、水素含有率が15原子%以下であり、炭素を主成分として含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜製造方法。
- 処理対象部材の表面に薄膜を形成する成膜装置であって、
第18族元素のうち互いに異なる元素の第1希ガス、第2希ガス、及び第3希ガスを別々に貯留するガス源と、
前記第1希ガス及び前記第2希ガスを少なくとも用いて生成されるプラズマを用いてターゲット材からスパッタ粒子を生成するスパッタ源と、
前記スパッタ粒子が堆積するように、前記スパッタ源に対向した位置に処理対象部材が配置される成膜室を備える成膜容器と、
前記薄膜の形成中、前記プラズマ中の前記第1希ガスの元素と前記第2希ガスの元素の発光強度比を求めるために、前記第1希ガスの元素と前記第2希ガスの元素の発光を受光する受光器と、
前記薄膜の膜質を調整するために、前記薄膜の形成中に、前記薄膜の形成中の前記発光強度比に応じて、前記成膜室に前記第3希ガスを供給する、あるいは、供給する前記第3希ガスの量を調整する供給量調整器と、を備えることを特徴とする成膜装置。 - 前記成膜室内の前記第1希ガス、前記第2希ガス、及び前記第3希ガスの予め定めた分圧条件において、前記発光強度比が許容範囲からはずれているか否かを判定すること、及び前記発光強度比が前記許容範囲からはずれているとき、前記成膜室の壁面を洗浄するタイミングであると判定すること、を行う処理装置を、さらに備える請求項8に記載の成膜装置。
- 前記受光器は、前記プラズマの発光から前記第1希ガスの元素の発光と前記第2希ガスの元素の発光を分離する光学フィルタと、前記プラズマ中の各位置における、前記第1希ガスの元素の発光と前記第2の希ガスの元素の発光を別々に受光する受光素子と、を含み、
前記成膜装置は、受光によって得られる前記第1希ガスの元素の発光強度と前記第2希ガスの元素の発光強度から前記プラズマ中の各位置における前記発光強度比を求める部分を備える処理装置を備え、
前記第3希ガスの前記成膜室への供給口は、前記成膜室の壁面に分散して複数設けられており、
前記処理装置は、前記電子温度の分布を調整するために、前記発光強度比が予め定めた範囲から外れた領域に前記第3希ガスを供給するように、前記第3希ガスの供給口の一部を選択すること、及び選択した供給口における前記第3希ガスの供給量を設定すること、を行う、請求項8または9に記載の成膜装置。 - 部材と、
前記部材の表面に設けられた薄膜と、を含み、
前記薄膜の前記部材の側に位置する下層と、前記下層に比べて前記薄膜の表面の側に位置する上層とは、含有成分は同じであるが、硬さが異なり、前記下層の硬さは、前記上層の硬さに比べて低い、ことを特徴とする薄膜形成材。 - 前記薄膜は、水素含有率が15原子%以下であり,炭素を主成分として含む、請求項11に記載の薄膜形成材。
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