以下、本発明が適用された可変倍率光学ユニット(以下では、ズームエクステンダとも記載する。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
[望遠鏡システムについて]
まず、望遠鏡システムについて、図1〜図3を用いて簡単に説明する。望遠鏡システム1は、図1及び図2に示すように、望遠鏡本体10と、接眼レンズユニット20と、望遠鏡本体10と接眼レンズユニット20との間で着脱可能に装着されて用いられる可変倍率光学ユニット30とを備える。
望遠鏡システム1は、単焦点光学系を有する望遠鏡本体10及び接眼レンズユニット20から構成されるが、可変倍率光学ユニット30がズーム光学系を有するためズーム機能を得ることができるものである。
なお、望遠鏡本体10及び接眼レンズユニット20は、汎用的なものであるため詳細な説明については割愛するが、望遠鏡システム1及び可変倍率光学ユニット30の技術的特徴を説明するうえで必要な部位について以下で簡単に説明する。
[望遠鏡本体について]
望遠鏡本体10は、図3に示すように、図示しない対物光学系11を有しており、例えば、対物レンズを用いた屈折式や、凹面反射鏡を用いた反射式カタディオプトリック式等の各種の光学系がその用途によって選択することができる。望遠鏡本体10は、図示しない三脚等の支持機構によって天体を追尾可能に支持されて用いられる。なお、図3に例示する望遠鏡本体10は、屈折式の対物レンズを備える構造の一例である。
望遠鏡本体10は、接眼レンズユニット20を装着するための接眼レンズユニット用の挿入孔12を有している。また、望遠鏡本体10は、挿入孔12に挿入される接眼レンズユニット20又は可変倍率光学ユニット30を装着して固定するための固定ネジ13を有している。望遠鏡本体10は、端部12aにおいて、接眼レンズユニット20の突当部21bや可変倍率光学ユニット30の突当部31aと当接して、接眼レンズユニット20や可変倍率光学ユニット30の位置決めを行う。
また、望遠鏡本体10は、フォーカス調整を行うフォーカスハンドル14を有しており、フォーカスハンドル14がユーザより回転操作されることで、対物光学系11に対して挿入部12を光軸に沿って伸縮させてフォーカス調整が可能となるように構成されている。
[接眼レンズユニットについて]
接眼レンズユニット20は、接眼レンズ光学系22を有しており、例えば、ケルナー式、オルソコピック式、プローゼル式(プレスル式)等のレンズ構成によって、望遠鏡本体10の対物光学系による像を拡大するように設計されている。なお、図1における接眼レンズユニット20は、発明の効果を説明しやすくするために、特徴点を模式的に表現したものであり、図3における接眼レンズユニット20は、汎用的なものを図示している。
接眼レンズユニット20は、望遠鏡本体10の挿入孔12や可変倍率光学ユニット30の挿入孔32に挿入される円筒形状の挿入部21と、少なくとも2つの光学レンズからなる接眼レンズ光学系22を有している。接眼レンズ光学系22は、光の入射方向から前レンズ22a、後レンズ22bで図示されているが、各レンズが光学収差を補正するために複数のレンズを張り合わせたレンズ組であってもよい。
接眼レンズユニット20は、前レンズ22aが挿入部21の内側に配置されることが一般的であるが、挿入部21の挿入方向の端部21aよりも後ろ側に配置されており、ユーザが接眼レンズユニット20を持つ際や、端部21aを下面として平面等に置いた場合に前レンズ22aに指や異物が接触することを保護するように構成されている。換言すると、接眼レンズユニット20は、前レンズ22aより端部21aが挿入方向に突出した構造を有しているともいえる。
[可変倍率光学ユニットについて]
可変倍率光学ユニット30は、望遠鏡本体10に設けられた接眼レンズユニット用の挿入孔12に挿入される挿入部31と、接眼レンズユニット20の挿入部21が挿入される挿入孔32と、望遠鏡本体10と接眼レンズユニット20の間の光路上に配置され、望遠鏡本体10と接眼レンズユニット20を光学的に接続するとともに光学倍率を可変とするズーム光学系33と、挿入部31と挿入孔32とを構成し、中空内部にズーム光学系33を保持する筐体34とを備えている。
挿入部31は、接眼レンズユニット20の挿入部21と略同等の円筒形状を有しており、望遠鏡本体10の挿入孔12に接眼レンズユニット20の挿入部21を挿入して装着する場合と同様に、望遠鏡本体10の挿入孔12に挿入される。
可変倍率光学ユニット30は、望遠鏡本体10の挿入孔12に挿入部31を挿入して、端部12aと突当部31aが当接することで位置決めがされ、固定ネジ13によって望遠鏡本体10に固定される。
また、可変倍率光学ユニット30は、挿入孔32に接眼レンズユニット20が挿入されて、端部32aと突当部21bが当接して、接眼レンズユニット20を位置決めし、後述する固定ネジ42によって接眼レンズユニット20を固定する。
以上のように構成された、望遠鏡システム1は、望遠鏡本体10及び接眼レンズユニット20が一般的な単焦点の光学系からなる物であっても、ズーム光学系33を有する可変倍率光学ユニット30を両者の間に着脱可能に介在させることによって、光学倍率を任意の範囲で設定することが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
なお、上述では、望遠鏡本体10の挿入孔12及び可変倍率光学ユニット30の挿入部31や、可変倍率光学ユニット30の挿入孔32と接眼レンズユニット20の挿入部21について、円筒形状として固定ネジ13や固定ネジ42で固定することを説明したが、固定方法については、ねじ込み方式やバヨネット方式等の各種の結合方法が含まれることは言うまでもない。
例えば、望遠鏡本体10の挿入孔12及び可変倍率光学ユニット30の挿入部31や、可変倍率光学ユニット30の挿入孔32及び接眼レンズユニット20の挿入部21は、互いにネジ溝を切り、挿入部31や挿入部21を挿入孔12や挿入孔32に螺合させながら挿入することで、ねじ込み方式とすることができる。
また、望遠鏡本体10の挿入孔12及び可変倍率光学ユニット30の挿入部31や、可変倍率光学ユニット30の挿入孔32及び接眼レンズユニット20の挿入部21は、挿入孔12や挿入孔32に内側に突出する部分を設け、挿入部31と挿入部21の外周に爪を設け、挿入部31や挿入部21の外周の爪が挿入孔12や挿入孔32の突出する部分を避けるように挿入され、その後回転させることで挿入孔12や挿入孔32に内側に突出する部分と挿入部31や挿入部21の外周の爪が噛み合うようにすることで、バヨネット方式とすることができる。
つまり、挿入孔12及び挿入孔32に挿入部31及び挿入部21が挿入される構造であれば、本発明に含まれるといえる。
[可変倍率光学ユニットの詳細]
次に、可変倍率光学ユニット30について、図4乃至図7を用いてさらに詳細に説明を行う。
可変倍率光学ユニット30は、図4に示すように、挿入部31と挿入孔32とを構成する筐体34が、ズーム光学系33を配置するために中空状に構成されており、中空内部にズーム光学系33を保持している。
ズーム光学系33は、光の入射側から、第1のレンズ33a,第2のレンズ33b,第3のレンズ33c,第4のレンズ33dとから構成されている。なお、ズーム光学系33は、他のレンズ構成をとることを妨げない。
第1のレンズ33a,第2のレンズ33b,第3のレンズ33c,第4のレンズ33dは、それぞれレンズホルダ35a,レンズホルダ35b,レンズホルダ35c,レンズホルダ35dによって保持されている。また、レンズホルダ35a,レンズホルダ35b,レンズホルダ35c,レンズホルダ35dは、筐体34によって直接的又は間接的に保持されている。
可変倍率光学ユニット30は、挿入孔32の内部において、ズーム光学系33の出射側の第4のレンズ33dもしくはレンズホルダ35dの少なくとも一部が突出部40を形成し、突出部40と筐体34との間に後述する空隙部41が設けられており、突出部と筐体34とは非接触とされている。
なお、筐体34は、複数の部材を連結することにより構成されているが、各レンズに対応して光軸方向に分割されていることが、組み立てを簡易とするうえで好ましい。筐体34は、レンズホルダ35a,レンズホルダ35b,レンズホルダ35c,レンズホルダ35dの少なくとも一つと一体に成形されてもよい。
ただし、実施の形態において説明を行う可変倍率光学ユニット30においては、第1のレンズ33aを保持するレンズホルダ35aと、第2のレンズ33bを保持するレンズホルダ35bは、以下で説明するが筐体34内部において光軸方向に移動可能とされているため、筐体34とは一体成形していない。
次に、各レンズとレンズホルダについて詳細に説明を行う。第1のレンズ33a及び第2のレンズ33bは、ズーム光学系33の焦点距離を可変とするため、筐体34の内部において光軸方向に移動可能にレンズホルダ35a,35bを介して筐体34に保持されている。
具体的には、第1のレンズ33aは、レンズホルダ35aの外周方向に突出した二つの凸部36aと、筐体34内部に設けられたらせん状の溝部37aが係合することによって、光軸に沿って移動可能に保持されている。
これにより、第1のレンズ33aは、筐体34の内部において、レンズホルダ35aの突出部36aがらせん状の溝部37aに係合した状態で溝に沿って摺動し、光軸を中心軸とした溝部37aの回転に伴い光軸に沿って移動する。第1のレンズ33aが光の入射方向かって移動した状態は図5に示す。また、第1のレンズ33aが光の出射方向に向かって移動した状態は図6に示す。
また、第2のレンズ33bは、レンズホルダ35bの外周方向に突出した二つの突出部36bと、筐体34内部に設けられたらせん状の溝部37bが係合することによって、光軸に沿って移動可能に保持されている。
これにより、第2のレンズ33bは、筐体34の内部において、レンズホルダ35bの突出部36bがらせん状の溝部37bに係合した状態で溝に沿って摺動し、光軸を中心軸とした溝部37bの回転に伴い光軸に沿って移動する。第2のレンズ33bが光の入射方向に向かって移動した状態は図6に示す。また、第2のレンズ33bが光の出射方向に向かって移動した状態は図5に示す。
次に、第3のレンズ33cは、筐体34の内部において光軸上で固定されており、レンズホルダ35cを介して筐体34に保持されている。
レンズホルダ35cは、第3のレンズ33cが装着される凹部を有し、光の出射方向に延在する中空円筒形状を有しており、光の入射側において大径とされ筐体34と機械的に接して固定されており、光の出射側において小径とされ筐体34とは接しないような構造とされている。
レンズホルダ35cは、光の入射側の大径部分において、第3のレンズ33cを保持するが、光の出射側の小径部分において、レンズが配置されていない。しかしながら、レンズホルダ35cの光の出射側の小径部分において、絞り機構38が設けられている。
絞り機構38は、ズーム倍率に応じて開口面積を調整可能とした光学絞りであり、筐体34の外側に延在する操作レバー39と接続され、操作レバー39の操作応じて絞り量を調整することができる。絞り機構38は、例えば、第1のレンズ33a及び第2のレンズ33bの移動によって光の集光状態が変化した際に不要な光を遮光し、出射側に適切な光量の光を導くために用いられる。
絞り機構38は、可変倍率光学ユニット30と接続される望遠鏡本体10や接眼レンズユニット20との組み合わせによって、レンズ系全体のF値が変化するため、観察者にとって適切な光量とすることができる。
次に、第4のレンズ33dは、筐体34の内部において光軸上で固定され、レンズホルダ35dを介して筐体34に保持されている。
レンズホルダ35dは、第4のレンズ群33dが装着される凹部を有し、光の入射側に延在する中空円筒形状を有しており、光の入射側においてレンズホルダ35cの出射側と略同径とされ、レンズホルダ35cと機械的に接して固定されている。
また、レンズホルダ35dは、筐体34とは接しないように 挿入孔32内部でレンズホルダ35cに片持ちされて保持されている。従って、レンズホルダ35dは、レンズホルダ35cを介して筐体34に保持されている。
次に、挿入孔32は、接眼レンズユニット20の挿入部21が挿入されるため、円筒形状の空洞を形成するが、上述したレンズホルダ35dが、空洞部分で光の出射側に突出した構造とされているため、レンズホルダ35dと筐体34との間には中空リング状の空隙部41を有している。
空隙部41は、接眼レンズユニット20の挿入部21を構成する円筒形状の先端部21aの厚さに応じて適宜広さを設定されており、第4のレンズ33dのレンズ系をできる限り大きくとるために、各種の接眼レンズユニットの先端部が挿入可能な範囲で、できる限り少なくすることが光学特性を保持するうえで好ましい。
ただし、隙間部41は、光学特性を優先しすぎると、接眼レンズユニット20の挿入部21の先端部21aがレンズホルダ35dと当接する可能性が高くなるため好ましくないことは言うまでもない。
なお、可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット20の挿入部21を挿入孔32の内部において固定する固定ネジ42を有しており、固定ネジ42を絞めることで接眼レンズユニット20を固定するようにしている。なお、接眼レンズユニット20の固定方法については各種の固定方法を用いることができるため、固定ネジ42は、あくまで一例として挙げたに過ぎない。上述で説明したように、ねじ込み式やバヨネット式を用いた固定方法を用いることができる。
[ズーム機構の動作]
まず、可変倍率光学ユニット30が標準倍率状態、すなわち最大光学倍率と最小光学倍率の中間である状態から説明を行う。
可変倍率光学ユニット30は、図4に示すように、第1のレンズ33a及び第2のレンズ33bが、光軸に沿った可動範囲内において中間位置に配置されている。ここで、可変倍率光学ユニット30は、光学倍率を高倍率側へ変化させる際に、例えば、筐体34の外周に設けられたグリップ部34aを回転させることで、グリップ部34aと連動して接続されるらせん状の溝部37a及び溝部37bが回転し、第1のレンズ33aは光の入射側に移動し、第2のレンズ33bは光の出射側に移動する。
ここで、第1のレンズ33a及び第2のレンズ33bはそれぞれ逆方向に移動するが、これは、第1のレンズ33a及び第2のレンズ33bの軌道を決めるらせん状の溝部37a及び溝部37bが逆方向にねじれたらせん軌道となっているためである。
さらに、可変倍率光学ユニット30は、グリップ部34aを回転させると、図5に示すように、溝部37aの端に至るまで第1のレンズ33aが光の入射方向の端部まで移動し、溝部37bの端に至るまで第2のレンズ33bが光の出射方向の端部まで移動し、光学倍率が最大となる。
一方、可変倍率光学ユニット30は、光学倍率を低倍率側へ変化させる際に、例えば、筐体34の外周に設けられたグリップ部34aを先ほどとは逆回転させることで、グリップ部34aと連動して接続されるらせん状の溝部37a及び溝部37bが先ほどとは逆回転し、第1のレンズ33aは光の出射側に移動し、第2のレンズ33bは光の入射側に移動する。
さらに、可変倍率光学ユニット30は、グリップ部34aを回転させると、図6に示すように、溝部37aの端に至るまで第1のレンズ33aが光の出射方向の端部まで移動し、溝部37bの端に至るまで第2のレンズ33bが光の入射方向の端部まで移動し、光学倍率が最小となる。
ここで、可変倍率光学ユニット30は、光学倍率を変化させた際に、ユーザの操作により絞り機構38において光量の調整をすることができるが、上述のズーム機構と連動して、自動的に絞りを動かすようにすると、操作に不慣れなユーザにとって利便性が向上する。そのような構成は、具体的に図示しないが、絞りの量を調整するための動作も回転動作であることから、グリップ部34aの回転動力を絞り機構38に伝達する部材を内蔵すれば実現可能であることは言うまでもない。
[可変倍率光学ユニットと接眼レンズユニットの接合部]
ここで、可変倍率光学ユニット30と接眼レンズユニット20の接合部について詳しく説明する。
可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット20の挿入部21の先端部21aが、挿入孔32の空隙部41に収納可能とされており、端部32aと突当部21bが当接する位置で、接眼レンズユニット20と接続することができる。
ここで、可変倍率光学ユニット30は、端部32aに当たる面Fにおいて結像するように、すなわち面Fにおいて焦点位置となるようにズーム光学系33が調整されており、光学倍率を変更しても焦点位置は変わらない。なお、ズーム光学系の焦点位置を固定する設計については既知の技術を用いることができるため、ズーム光学系33の詳細な光学パラメータは開示を省略する。
従って、接眼レンズユニット20は、可変倍率光学ユニット30の端部32aと当接する突当部21bが焦点位置となるように接眼レンズ光学系22が調整されることが好ましい。
しかしながら、各種市販の接眼レンズユニットは必ずしも、上述のような基準を満たすものだけではなく、図1に模式的に表した接眼レンズユニット20においては、上記条件を満たしていない。また、上述のような基準を満たすように設計された接眼レンズユニットであっても、製造誤差により焦点位置がずれる場合もあり、上述のような基準を完全に満たさない場合も生じうる。
そこで、可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット20と当接する端部32aを含む筐体34の一部を、ズーム光学系33の光軸に沿って移動可能とした接眼レンズユニット位置調整部60とした。
接眼レンズユニット位置調整部60は、ズーム光学系33の光軸に沿って移動可能とされていることから、端部32aの位置も光軸に沿って位置調整が可能となり、上述のような基準を満たさない接眼レンズユニットであっても適宜合焦させることができる。
なお、可変倍率光学ユニット30の端部32aが完全固定とされている場合、上述のような基準を満たさない接眼レンズユニットを用いると、後述するズーム動作において、ズーム全域(低倍率から高倍率の範囲)で合焦できないこととなりかねない。
この場合には、望遠鏡本体10のフォーカスハンドル14において焦点位置を調整することも可能ではあるが、ズーム全域において合焦するわけではなく、光学倍率を変更するたびにフォーカスハンドル14を操作して焦点位置を調整する必要が生じ、ユーザにとって甚だ不便である。
可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット位置調整部60を設けることで、望遠鏡本体10のフォーカスハンドル14を操作することなく接眼レンズユニットの焦点位置を調整することができ、ズーム全域において焦点距離の調整を不要とすることができる。
ここで、可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット20の挿入部21の端部21aが、挿入孔32の底部32bと当接しないように、空隙部41の深さが定められている。
また、可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット20の前レンズ22aが、第4のレンズ33dと当接しないように、突出部40の高さが定められている。
したがって、可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット20の挿入部21が挿入孔32に挿入されて接続される際に、接眼レンズユニット20の挿入部21の端部21aと挿入孔32の底部32bとがぶつからず、また、接眼レンズユニット20の前レンズ22aと第4のレンズ33dとがぶつからずに組みあげることができる。
このような構造とすることで、ズーム光学系33の全長を最大限に確保しつつも接眼レンズユニット20との接続距離を短くすることができ、望遠鏡システム1の全長を短くとることができるとともに、可変倍率光学ユニット30の全長も短くコンパクトにすることができる。
また、可変倍率光学ユニット30は、接眼レンズユニット20を極限まで近接して接続することができるが、互いの光学系がぶつかり部品を損傷することを防止することが可能となる。なお、図3で図示するような接眼レンズユニット20においては、端部21aが、必ずしも空隙部41に挿入されるわけではない。この場合、空隙部41が安全マージンとして機能する。
なお、上述では説明を省略したが、可変倍率光学ユニット30は、図示しないカメラアダプタ等と交換されるセパレート部70を有している。
セパレート部70は、筐体34の一部であって、突出部40の外周部分を分割可能な構成としたものである。
セパレート部70は、突出部40を中心とした中空円筒形状を有しており、ズーム光学系33の後端(光の出射方向の端部)を構成する突出部40を、隙間部41を介して保護する部分である。
セパレート部70は、接眼レンズユニット位置調整部60と接続されており、接眼レンズユニット位置調整部60とともに筐体34の後方部分(光の出射方向)を構成する。
具体的に、セパレート部70は、筐体34の本体部分と互いに設けたネジ溝によるねじ込み係合により接続するものであり、回転することで筐体34の本体部分とセパレートすることができる。
セパレート部70が後方部分において接眼レンズユニット位置調整部60と接続されているため、セパレート部70を筐体34の本体部分からセパレートした場合には、接眼レンズユニット位置調整部60も筐体34の本体部分からセパレートされることとなる。
可変倍率光学ユニット30は、セパレート部70及び接眼レンズユニット位置調整部60が、筐体34の本体部分とセパレートされると、ズーム光学系33の後端である突出部40外部に露出した状態となる。
ここで、上述で説明したように、可変倍率光学ユニット30は、端部32aに当たる面Fが焦点位置となるようにズーム光学系33が構成されているため、この面Fに図示しないカメラ装置の撮像面(例えば、フィルム面や撮像電子素子面)を固定することにより、写真撮像を容易に行うことが可能である。
例えば、図示しないカメラアダプタをセパレート部70及び接眼レンズユニット位置調整部60が取り外された筐体34の本体部分に装着し、カメラアダプタによりカメラ装置を固定することができる。
従って、可変倍率光学ユニット30は、セパレート部70が筐体34の本体部分とセパレート可能とすることで、天体写真等の撮像を簡単に行うことが可能になるとともに、ズーム光学系33により光学倍率を変更しても焦点位置が一定に保たれるため、焦点位置の調整を行う必要もない。
上述のように可変倍率光学ユニット30を用いることで、光学倍率を変更中であっても焦点位置の調整を行う必要がないため、例えば、光学倍率を変更しながらの連続撮像や、光学倍率を変更しながらの動画撮影等を容易に行うことができるようになる。
[変形例]
次に、上述で説明した可変倍率光学ユニット30の変形例について説明する。なお、主要な構成については、上述と同様であるため、同じ符号を付して説明を割愛し、相違点のみを説明する。
上述では、接眼レンズユニット20の構造をある程度予測した設計を行うことで、可変倍率光学ユニット30と接眼レンズユニット20の光学系がぶつかり部品を損傷することを防止する構成としたが、例えば、想定外の規格の接眼レンズユニットが装着された場合には、光学部品同士の接触が起こる可能性もある。
そこで、変形例にかかる可変倍率光学ユニット50は、図7に示すように、挿入孔32の底部32bに第1の衝撃緩和部材51を設け、レンズホルダ35dの光の出射側、すなわち接眼レンズユニット20と対向する側に第2の衝撃緩和部材52を設けた構成とした。
第1の衝撃緩和部材51及び第2の衝撃緩和部材52は、衝撃を吸収しあるいは衝撃を緩和する性質を有する部材を適宜用いることができるが、ラバー部材等が好適であるといえる。第1の衝撃緩和部材51及び第2の衝撃緩和部材52は、設置場所がズーム光学系33を避けるようにいずれもリング状となっているため、これと同様にリング状に成型することが好ましい。
ただし、第1の衝撃緩和部材51及び第2の衝撃緩和部材52は、リング状に限定するものではなく、少なくとも、一部において衝撃を吸収し、各部材の物理的な衝突を回避することができればよいことは言うまでもない。
また、第1の衝撃緩和部材51及び第2の衝撃緩和部材52は、いずれか一方があれば所望の効果を得ることができるが、両方が設置されている方が各部材の物理的な衝突を回避するうえで特に好ましい。
なお、上述した接眼レンズユニット位置調整部60を移動する場合等、接眼レンズユニット20の位置が可変となる場合、可変倍率光学ユニット30と接眼レンズユニット20の光学系がぶつかる危険性も高まるため、第1の衝撃緩和部材51及び第2の衝撃緩和部材52は特に有用である。
上述で説明したように、本発明を適用した可変倍率光学ユニットは、望遠鏡システムにおいて、簡単な構造でズーム機能を備えることが可能となり、ズーム機能を内蔵した複数種類の接眼レンズユニットを用意する必要はなく、観察者にとっての接眼レンズユニットの扱いを簡便にするとともに、コスト負担を低減させることが可能となる。
また、本発明を適用した可変倍率光学ユニットは、安価で手に入りやすい単焦点の接眼レンズユニットの焦点距離を適宜選択することで、光学倍率を任意に設定することができる。
さらに、本発明を適用した可変倍率光学ユニットは、望遠鏡システムにおいて、望遠鏡本体にズーム機能を付けるよりも、ズーム機能を小型軽量に達成することが可能となる。
これにより、本発明を適用した可変倍率光学ユニットを備える望遠鏡システムは、簡単で使いやすく、小型軽量の機構を用い、安価にズーム機能を達成することが可能となる。
また、市販の単焦点の望遠鏡システムを所有するユーザが、可変倍率光学ユニットを用いることで、簡単にズーム機能を追加することができるため、ユーザにとって経済的である。
以上、本発明について実施例及び変形例をもとに説明した。本発明は上述した実施例及び変形例の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。上記実施例及び変形例は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな付加が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。