JP2017095825A - 溶融電界紡糸装置及びこれを用いた繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融電界紡糸法によって微細な繊維を容易に製造し得る装置を提供すること。【解決手段】溶融電界紡糸装置10は、帯電電極20と吐出用ノズル30とを有し、帯電電極20と吐出用ノズル30との間に静電誘導を生じさせた状態下に、吐出用ノズル30の先端より吐出させた紡糸液から繊維を形成するようにしたものである。帯電によって紡糸液が帯電電極20に向かう方向に対して直交する方向に、加熱されたエアーが噴出するようにエアーの噴射部40が設置されている。エアーの噴射部40のうちの後方域43を囲むように、加熱部70が該後方域43に設置されている。【選択図】図1

Description

本発明は溶融電界紡糸装置に関する。また本発明は該溶融電界紡糸装置を用いた繊維の製造方法に関する。
電界紡糸法は、原料液を吐出するためのノズルと、帯電電極との間に静電誘導によって電界を生じさせた状態下に、該ノズルから該帯電電極に向けて該原料液を吐出することで、該原料液から極細の繊維を生じさせる方法である。電界紡糸法では、繊維の原料となる樹脂の溶液又は溶融液に高電圧を作用させて繊維を形成する。樹脂の溶液を原料液として用いる場合、溶媒を揮発させる必要があるので、製造効率を高くすることが容易でない。また、揮発した溶媒の回収を行う必要があるので製造コストが高くなることがある。これに対して、樹脂溶融液を用いた溶融電界紡糸法では溶媒を使用しないことから、上述した樹脂溶液を用いた場合に生じる不都合が生じない。そこで近年、溶融電界紡糸法に関する検討が盛んに行われている。
例えば特許文献1には、溶融樹脂原料の押出機20と、溶融樹脂原料を吐出する紡糸ノズル及び該紡糸ノズルの周囲に形成され溶融樹脂原料の吐出方向に沿った方向に向けて高温気流を流す高温気流流路を有する紡糸部40と、コレクタ電極60と、紡糸ノズルとコレクタ電極60との間に高電圧を印加する高電圧電源61と、高温気流流路に高温気流を供給する高温気流供給部50と、極細繊維回収装置80とを備える極細繊維製造装置1が記載されている。押出機20及び紡糸部40は、保温ジャケットによって覆われている。
特許文献2には、熱可塑性ポリマーを溶融する機構と、溶融ポリマーを吐出するノズルと、高速エアーを発生するエアーノズルと、ノズルの先端に電荷を発生させる電極と、荷電ナノ繊維からの静電誘導による電界干渉を遮断するための絶縁板とを有する溶融電界紡糸が記載されている。前記の高速エアーは、溶融ポリマーの吐出方向と直交する方向に噴射される。
特開2011−89240号公報 特開2014−111850号公報
以上の各特許文献に記載の技術では、溶融樹脂がエアーによって搬送されている間にエアーの温度が低下して樹脂が固化しやすく、繊維の細径化が十分なものとならない場合がある。溶融樹脂を搬送させるエアーの温度を高めて、該樹脂が冷却されにくくなるようにすることも考えられるが、その場合には高温のエアーによって樹脂に含まれている添加剤が劣化したり、溶融樹脂がビーズ状に固化したりすることがある。
したがって本発明の課題は、溶融電界紡糸装置の改良にあり、更に詳しくは溶融樹脂の変性等を抑制しつつ、溶融樹脂の早期の固化を防止し得る溶融電界紡糸装置を提供することにある。
本発明は、溶融樹脂に電荷を発生させる帯電電極と、該帯電電極に対向する位置に配置された該溶融樹脂の吐出用ノズルとを有し、該帯電電極と該吐出用ノズルとの間に静電誘導を生じさせた状態下に、該吐出用ノズルの先端より吐出させた紡糸液から繊維を形成するようにした溶融電界紡糸装置であって、
帯電によって前記紡糸液が前記帯電電極に向かう方向に対して直交する方向に、加熱されたエアーが噴出するようにエアーの噴射部が設置されており、
前記エアーの噴射部のうちの後方域を囲むように、加熱部が該後方域に設置されている溶融電界紡糸装置を提供するものである。
本発明によれば、溶融電界紡糸法によって微細な繊維を容易に製造することができる。
図1は、本発明の溶融電界紡糸装置の一実施形態を示す概略斜視図である。 図2は、図1に示す溶融電界紡糸装置の平面図である。 図3(a)は、図1に示す溶融電界紡糸装置における帯電電極を示す斜視図であり、図3(b)は図3(a)に示すY方向に沿った断面図である。 図4(a)及び(b)は、帯電電極の別の実施形態を示す断面図(図3(b)相当図)である。 図5は、図1に示す溶融電界紡糸装置における樹脂溶融液吐出装置を示す斜視図である。 図6は、図1に示す溶融電界紡糸装置における各部材の配置状態を示す側面図である。 図7は、図1に示す溶融電界紡糸装置における各部材の配置状態を示すVII−VII線断面図である。 図8は、図1に示す溶融電界紡糸装置における帯電電極の凹曲面と、吐出用ノズルの配置関係を示す側面図である。 図9は、図1におけるIX−IX線断面図である。 図10は、図1に示す溶融電界紡糸装置における加熱部を、その背面側から見た透視図である。 図11は、図1に示す溶融電界紡糸装置を用いた繊維の製造方法を示す概略図である。 図12(a)及び図12(b)はそれぞれ、加熱部付近での空気流の状態を示す模式図であり、図12(c)は空気流をその流れ方向に沿って見たときの状態を示す模式図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の溶融電界紡糸装置の概略斜視図が示されている。図2は、図1に示す溶融電界紡糸装置の平面図である。図1及び図2に示すとおり、溶融電界紡糸装置10は、帯電電極20、及びノズル先端部30を有する吐出用ノズルを備えている。溶融電界紡糸装置10は更に搬送用エアーの噴射部40を備えている。溶融電界紡糸装置10においては、帯電電極20とノズル先端部30との間に静電誘導によって電界を生じさせた状態下に、ノズル先端部30の先端より吐出させた紡糸液から繊維を形成するようにしている。
図3(a)は、図1及び図2における帯電電極20のみを抜き出して示している。帯電電極20は、略半円筒の内面を構成する凹曲面21を有している。略半円筒とは、(イ)横断面が真円である円筒の略半部、及び(ロ)真円と見なせる程度に真円度が高い楕円円筒の略半部の双方を包含する。(ロ)の真円と見なせる程度に真円度が高い楕円とは、例えば短軸長/長軸長が0.86以上、1未満である楕円のことである。また、略半部とは、(イ)図3(b)に示すとおり、円筒又は楕円円筒の中心軸Cを通る平面Pで該円筒又は該楕円円筒を二分したときの半部、又は(ロ)図4(a)及び(b)に示すとおり、円筒又は楕円円筒の中心軸Cを通り、中心軸Cと直交する直線L上であって、且つ中心軸Cに近接する位置Dを通る、中心軸Cと平行で直線Lと垂直に交わる平面Pで該円筒又は該楕円円筒を二分したときの半部の双方を包含する。位置Dが中心軸Cに近接する程度は、図4(a)及び(b)において平面P上に位置する電極上の点の中で最も直線Lに近い点をQとしたとき、(a)の場合では、QCDのなす角は、60°以上、特に70°以上であることが好ましい。これよりも小さいと帯電電極20から溶融樹脂押出しユニット部50の筐体51に放電することがある。またQCDのなす角は90°未満であることが好ましい。例えばQCDのなす角は、60°以上90°未満であることが好ましく、70°以上90°未満であることが更に好ましい。(b)の場合では、QCDのなす角は、60°以上、特に70°以上であることが好ましい。またQCDのなす角は90°未満であることが好ましい。これよりも小さいと帯電電極20に電圧を印加したときに生じる電場が一点に集中せず、ノズル先端部30から吐出される紡糸液である樹脂溶融液の帯電量を効率的に増加させないことがある。例えばQCDのなす角は、60°以上90°未満であることが好ましく、70°以上90°未満であることが更に好ましい。
凹曲面21は、そのいずれの位置においても曲面になっている。ここで言う曲面とは、(イ)平面部を全く有していない曲面のことであるか、又は(ロ)平面部を有する複数のセグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面21と見なせる形状となっていることのいずれかを言う。(ロ)の場合は、例えば縦及び横の長さが0.5〜300mm程度の矩形となっている、同一の又は異なる大きさの平面部を有するセグメントを繋ぎ合わせて凹曲面21を形成することが好ましい。
凹曲面21は、図3中、長手方向Xに沿って延びている。凹曲面21の長手方向Xに沿う両端部は開口している。長手方向Xに沿う凹曲面21の長さを21Lとしたとき、長さ21Lは、深さ21Dの 1倍以上であることが好ましい。また長さ21Lは、深さ21Dの4倍以下、特に3倍以下であることが好ましい。例えば長さ21Lは、深さ21Dの1倍以上4倍以下であることが好ましく、1倍以上3倍以下であることが更に好ましい。凹曲面21の寸法をこのように設定することで、吐出された樹脂溶融液を十分に帯電させることができる。なお深さ21Dは凹曲面21の半径に等しい。
凹曲面21の長さ21Lは、15mm以上であることが好ましい。また長さ21Lは300mm以下、特に120mm以下であることが好ましい。例えば凹曲面21の長さ21Lは、15mm以上300mm以下であることが好ましく、15mm以上120mm以下であることが更に好ましい。一方、凹曲面21の深さ21Dは、深さ21Dに対する長さ21Lの比が上述の範囲であることを条件として、15mm以上であることが好ましく、また75mm以下、特に 40mm以下であることが好ましい。例えば凹曲面21の深さ21Dは、15mm以上75mm以下であることが好ましく、15mm以上40mm以下であることが更に好ましい。
帯電電極20が凹曲面21を有することで、該帯電電極20に電圧を印加したときに生じる電場が一点に集中するようになる。一点に集中した電場は、ノズル先端部30から吐出される紡糸液である樹脂溶融液の帯電量を効率的に増加させる。したがって、従来の方法で製造されていた繊維と同じ太さの繊維を製造する場合、従来の方法よりも樹脂溶融液の吐出量を増加させることができる。この理由は、帯電量の増加に起因して、(i)吐出された樹脂溶融液の帯電電極20への引力が強くなり繊維が細化しやすくなること、及び(ii)吐出された樹脂溶融液から生じた繊維どうしの電気的反発が大きくなり繊維が細化しやすくなることによるものである。吐出量の増加は、繊維の生産量の増加につながる。
凹曲面21は、平面部22a,22bと連接している。平面部22a,22bは、凹曲面21の長手方向Xに対して直交するY方向に沿って、該凹曲面21を挟んで上下に位置している。2つの平面部22a,22bは同一平面上にある。しかし場合によっては、2つの平面部22a,22bが同一平面上に位置していなくてもよい。また2つの平面部22a,22bのうちのいずれか一方又は双方が平面でなくてもよい。
凹曲面21を含む帯電電極20は、導電性材料、例えば金属から構成されている。この導電性材料は略半円筒形状を持ち、略半円筒形状の内面の部分は帯電電極20の形状と相似の形状である。そして帯電電極20は、少なくともノズル先端部30との対向面が誘電体で被覆されていることが好ましい。誘電体で被覆することで、ノズル先端部30から吐出された樹脂溶融液の帯電量を増加させ得ることが本発明者らの検討結果判明した。この効果を一層顕著なものとする観点から、誘電体は、少なくとも凹面部21の全域を被覆していることが好ましい。特に、帯電電極20のうち、ノズル先端部30と対向する部位の全域が誘電体によって被覆されていることが好ましい。
帯電電極20においては、その外面が前記の誘電体で構成されており、該誘電体よりも外側には何らの材料も存在していないことが好ましい。すなわち、帯電電極20においては、その最外面に誘電体が露出しており、該誘電体が該最外面を構成していることが好ましい。
誘電体としては、絶縁材料であるマイカ、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム等のセラミック材料や、ベークライト(フェノール樹脂)、ナイロン(ポリアミド)、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂系材料が挙げられる。これらのうち、アルミナ、ベークライト、ナイロン、塩化ビニル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種以上の絶縁材料を用いることが好ましく、特にナイロンを用いることが好ましい。ナイロンとしては、6ナイロンや66ナイロンなどの各種のポリアミドを用いることができる。またナイロンとして市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えばMCナイロン(登録商標)が挙げられる。
誘電体には帯電防止剤を含有させることができる。帯電防止剤を含有させることによって、帯電した樹脂溶融液や繊維等が誘電体に付着したとき、該誘電体の帯電を低減することができる。帯電防止剤としては公知の市販品を使用することができ、例えばペレクトロン(三洋化成工業(株))、エレクトロストリッパー(花王(株))、エレクトロマスター(花王(株))、リケマール(理研ビタミン(株))、リケマスター(理研ビタミン(株))などを用いることができる。
誘電体は凹曲面21を均一な厚みで被覆していることが好ましい。誘電体の厚みは、0.8mm以上、特に8mm以上であることが好ましい。これよりも薄いと、樹脂溶融液の帯電量を高められない場合がある。誘電体の厚みの上限値は、20mm以下、特に15mm以下であることが好ましい。これよりも厚いと、繊維状になった樹脂溶融液が誘電体に付着しやすくなる。例えば誘電体の厚みは0.8mm以上20mm以下、特に8mm以上15mm以下とすることが好ましい。
なお、図3(a)に示す実施形態では、帯電電極20は、その凹曲面21の長手方向Xが水平方向と一致するように設置されているが、これに代えて凹曲面21の長手方向Xが鉛直方向と一致するように帯電電極20を設置してもよい。
図5には、上述した帯電電極20とともに用いられるノズル先端部30を備えた溶融樹脂押出しユニット部50が示されている。溶融樹脂押出しユニット部50は筐体51を有している。筐体51は内部にシリンダ(図示せず)を備えている。該シリンダ内にはスクリュー(図示せず)が挿入されている。シリンダとスクリューは、樹脂を溶融混練して押し出すための押出機の構造となっている。筐体51内にはヒーターが備えられており、該ヒーターによってシリンダの壁面が加熱されるようになっている。スクリューの一端は、筐体51に付設されているか、又は筐体51の外に別途に設置された駆動源(図示せず)に接続されており、該駆動源の回転によって軸周りに一方向に回転可能になっている。筐体51にはホッパー(図示せず)が付設されており、該ホッパー内には繊維の原料となる樹脂が充填されるようになっている。ホッパーはシリンダと連通している。ホッパー内に充填された原料樹脂のペレットは、スクリューの回転に連れて徐々にシリンダ内に供給される。シリンダ内に供給された原料樹脂のペレットは、シリンダの内壁とスクリューとの間で熱及び圧力を受けて次第に溶融しながら、スクリューの回転軸方向に向けて前進する。筐体51は、この熱及び圧力に耐え得る材料から構成されており、一般に金属製である。つまり導電性の材料から構成されている。
筐体51におけるスクリューの回転軸の先端には、筐体51の一部としてのノズルベース53が取り付けられている。ノズルベース53は筐体51のシリンダと連通している。シリンダ内で溶融混練された原料樹脂は、シリンダ内を前進し、ノズルベース53へ送られる。ノズルベース53の内部には、溶融した原料樹脂が流通する流路(図示せず)が形成されている。筐体51と同様にノズルベース53にも熱及び圧力が加わることから、ノズルベース53はこれらに耐え得る材料である金属製であることが好適である。ノズルベース53は例えばボルトによって筐体51に固定されている。
ノズルベース53にはノズル先端部30が取り付けられる。ノズル先端部30は、溶融した原料樹脂を装置外へ吐出するために用いられる。この目的のため、ノズル先端部30は、熱及び圧力に耐え得る材料から構成されており、一般に金属製である。つまり導電性の材料から構成されている。ノズル先端部30は、例えばボルトによってノズルベース53に固定されている。
溶融樹脂押出しユニット部50においては、筐体51とノズル先端部30とが電気的に絶縁した構造になっていることが好ましい。こうすることで、樹脂溶融液の帯電量を増加させる目的でノズル先端部30と帯電電極20との間に高電圧を印加しても放電が発生しづらく、安定的に溶融電界紡糸法を実施することができるという利点が生じる。筐体51とノズル先端部30とを電気的に絶縁するためには、例えば筐体51とノズル先端部30との間にノズル先端部30を固定することが可能で、熱及び圧力に耐え得る絶縁材料からなる部材32を介在させておけばよい。
図6及び図7には、本実施形態の溶融電界紡糸装置10における各部材の配置状態が示されている。これらの図に示すとおり、ノズル先端部30は帯電電極20と対向配置されている。具体的には、ノズル先端部30は、紡糸液である樹脂溶融液の吐出方向が、帯電電極20の凹曲面21に向かうように配置されている。図6及び図7では、樹脂溶融液の吐出方向と、凹曲面21の長手方向Xとが直交するようにノズル先端部30が配置されている。尤も、樹脂溶融液の吐出方向と、凹曲面21の長手方向Xとは直交していることを要せず、両者が所定の角度をもって交差するようにノズル先端部30が配置されていればよい。
図6及び図7に示すとおり、搬送用エアーの噴射部40は細長いノズル形状をしている。噴射部40は、帯電電極20を構成する略半円筒の中心軸に沿って、すなわち長手方向Xに沿って搬送用エアーが噴出するように配置されている。この場合、搬送用エアーの噴出方向は、略半円筒の中心軸と平行であることが望ましいが、完全に平行であることは要しない。例えば搬送用エアーの噴出方向が、略半円筒の中心軸に対して右方向又は左方向に45度以内で傾斜するように噴射部40を設置することは許容される。また噴射部40は、帯電によって紡糸液が帯電電極20に向かう方向に対して直交する方向に、加熱されたエアーが噴出するように設置されていることが望ましい。
図6に示すとおり、ノズル先端部30の延びる方向、すなわち図6中、Z方向に沿ってみたとき、噴射部40は、エアーの噴出口41が、ノズル先端部30の延長線上に位置するように配置されることが好ましい。また、噴射部40は、エアーの噴出口41の全部又は一部が、凹曲面21で画成される空間S内に位置するように配置されることが好ましい。このように噴射部40を配置することで、溶融電界紡糸法によって生じた繊維が凹曲面21に意図せず付着することを効果的に抑制することができる。
図7に示すとおり、噴射部40は、エアーの噴出口41が、帯電電極20の凹曲面21が存在する領域に位置することが好ましい。特に噴射部40は、同図に示すとおり、エアーの噴出口41が、ノズル先端部30の延長線に近接する位置に配置されることが、生成した繊維が帯電電極20に付着することを一層効果的に抑制する点から好ましい。ただし、噴射部40が、ノズル先端部30の延長線と交差するほどに帯電電極20の凹曲面21に延出することは望ましくない。この理由は、溶融電界紡糸法によって生じた繊維が噴射部40に付着する可能性が高いからである。
噴射部40は、搬送用エアーの噴出口41を含む先端部の噴出部位42が絶縁体で構成されていることが好ましい。絶縁体で構成されているとは、(イ)噴出部位42の全体が絶縁体で構成されていること、及び(ロ)導電性材料から構成される噴出部位42の表面に絶縁体が被覆されていて、該導電性材料が露出されていない状態であることの双方を包含する。(ロ)の場合、噴出部位42は、その外面及びエアーが通過する内面の双方が絶縁体で被覆されていることが好ましい。噴射部の噴出部位42を絶縁体で構成することで、帯電電極20とノズル先端部30との間に高電圧を印加したときに、噴射部40と帯電電極20又はノズル先端部30との間に意図せず放電が発生することを効果的に抑制することができる。絶縁体としては、帯電電極20の表面に配置された誘電体と同様のものを用いることができる。
図8には、帯電電極20の凹曲面21と、ノズル先端部30の配置関係が示されている。なお同図においては、噴射部40の図示は省略されている。ノズル先端部30はその先端が、帯電電極20の凹曲面21の焦点T又はその近傍の位置に位置するように配置されることが好ましい。このようにノズル先端部30を配置することで、一点に集中した電場の位置から樹脂溶融液が吐出されるので、該樹脂溶融液を効率的に帯電させることが可能になる。ノズル先端部30の先端31は、凹曲面21の焦点Tの位置に存在することが最も好ましい。ノズル先端部30の先端31が焦点近傍に位置するように配置される場合、樹脂溶融液の帯電を十分効率的に行うためには、ノズル先端部30の先端31は焦点から凹曲面までの距離の1/3程度、焦点Tから離れた近傍に位置することが好ましく、焦点から凹曲面までの距離の1/5程度、焦点Tから離れた近傍に位置することが更に好ましい。凹曲面21の焦点Tとは、凹曲面21を図7に示す状態で見たときに、該凹曲面21の任意の位置における法線が一箇所で交わる位置のことである。凹曲面21が、真円の半円筒の凹曲面でない場合の焦点Tは、該凹曲面21の任意の位置における複数の法線が一箇所で交わる位置のうち、交わる法線の数が最も多くなる当該位置と定義する。
ノズル先端部30から吐出される樹脂溶融液の帯電を一層効率的に行う観点からは、ノズル先端部30の先端31の開口径を30Dとしたとき、30Dと、帯電電極20の長手方向Xに沿う長さ21Lとの比、すなわち30D:21Lを1:50以上に設定することが好ましい。また、30D:21Lは、1:1000 以下、特に1:400以下であることが好ましい。例えば30D:21Lは、1:50以上1:1000以下であることが好ましく、1:50以上1:400以下であることが更に好ましい。ノズル先端部30の先端31の開口が円形でない場合には、先端開口の面積に基づく円相当直径の値を先端開口径の値とする。なお、先端開口径である30Dの値自体は、樹脂溶融液の帯電量に影響を及ぼさないことを本発明者は確認している。
図1及び図2に示すとおり、一方向に延びるエアーの噴射部40においては、その後方域43に、該後方域43を囲むように加熱部70が設置されている。加熱部70は、噴射部40の後方域43の周方向全域を囲んでいる。噴射部40の後方域とは、一方向に延びる形状の噴射部40のうち、帯電電極20と重なっている部位よりも後方に位置する任意の部位のことである。したがって、後方域43は、噴射部40の最後端部を含むことを要しない。加熱部70は、該加熱部70を貫通する空間71を有している。この空間71は、噴射部40の延びる方向と同方向に延びている。図9及び図10に示すとおり、空間71は、噴射部40の延びる方向と直交する方向での断面が円形になっている円筒形をしている。そして噴射部40は、その軸心が、円筒形をした空間71の中心線上に位置するように配置されている。更に図10に示すとおり、加熱部70を、空間71の延びる方向(すなわち図10における紙面と直交する方向)に沿って見たとき、帯電電極20は、その全体が加熱部70の空間71内に収まる大きさとなっている。
図9及び図10に示すとおり、加熱部70は、噴射部40の後方域43と加熱部70との間に空隙が生じるように、該後方域43に設置されている。詳細には、噴射部40は、加熱部70を貫通するように形成された空間71を画成する円筒状内壁72と直接に接しておらず、噴射部40は、内壁72から距離を隔てて配置されている。
加熱部70は、それに形成されている空間71内を加熱可能になっている。空間71内を加熱するための手段としては、例えば輻射熱による加熱などが挙げられるが、これに限られない。輻射熱の熱源としては、例えば赤外線ヒーター、セラミックファイバヒーター、ラバーヒーター、ハロゲンヒーター、石英ガラス管ヒーターなどが挙げられる。
次に、以上の構成を有する溶融電界紡糸装置を用いた繊維の製造方法について図11を参照しながら説明する。本製造方法においては、同図に示すとおり、ノズル先端部30にアースを施し、且つノズル先端部30に対向する位置に設置された帯電電極20に、高電圧発生装置23によって正の電圧を印加しておく。
溶融樹脂押出しユニット部50のホッパー54内に充填された原料樹脂のペレットは、筐体51内に設置されたスクリュー(図示せず)を回転させることでシリンダ(図示せず)内に供給される。シリンダ内に供給された原料樹脂のペレットは、シリンダの内壁とスクリューとの間で熱及び圧力を受けて次第に溶融しながら、スクリューの回転軸方向に向けて前進する。そして、ノズル先端部30の先端31から、溶融した樹脂Rが吐出される。吐出された原料樹脂Rは、ノズル先端部30と帯電電極20との間に印加された電圧によって、溶融状態のまま帯電電極20に向けて引き寄せられる。そのときに原料樹脂Rが引き延ばされて極細化する。原料樹脂Rの引き延ばしを効果的に行う観点から、吐出される原料樹脂Rの流動性指数を、ノズル先端部30の出口においてMFR(Melt Flow Rate)10g/min以上、特にMFR100g/min以上に設定することが好ましい。流動性指数(MFR)は、JISK7210−1999に従い、230℃、2.16kgの荷重下に、穴径2.095mm、長さ8mmのダイを用いて測定される。
ノズル先端部30の先端31と帯電電極20との間には、両者を結ぶ方向と交差する方向、好ましくは直交する方向に向けて空気流Aが噴出している。空気流Aは噴射部40から噴出している。ノズル先端部30から吐出された原料樹脂は、帯電電極20に到達する前に空気流Aに搬送され、その飛翔方向が変化する。空気流Aに搬送されることで、原料樹脂は一層引き延ばされて一層極細化する。この目的のために空気流Aとして、加熱された空気を用いることが好ましい。空気流Aを加熱する手段としては、例えば熱風発生器を用いることができる。噴出口近傍のエアー温度は、原料樹脂の種類にもよるが、100℃以上、特に200℃以上であることが好ましく、500℃以下、特に400℃以下であることが好ましい。例えば加熱された空気の温度は、100℃以上500℃以下であることが好ましく、200℃以上400℃以下であることが更に好ましい。同様の目的のために、空気流Aを噴出させるときの流量は50L/min以上、特に150L/min以上であることが好ましく、350L/min以下、特に250L/min以下であることが好ましい。例えば空気流Aの流量は、50L/min以上350L/min以下であることが好ましく、150L/min以上250L/min以下であることが更に好ましい。
空気流Aに搬送され更に引き延ばされて形成された繊維Fは、捕集シート60上に捕集される。捕集シート60は、例えば長尺帯状のものとすることができる。長尺帯状の捕集シート60は、原反ロール60aから繰り出されて搬送コンベア61に搬送される。搬送コンベア61には高電圧発生装置62が接続されており、該高電圧発生装置62によって搬送コンベア61に高電圧が印加される。搬送コンベア61に高電圧が印加されることで、捕集シート60は正の電荷に帯電される。それによって、繊維Fは搬送コンベア61に引き寄せられてその表面に堆積する。
以上の方法においては、周囲環境によっては、加熱された空気流Aの温度が低下してしまい、原料樹脂の引き延ばしが十分に行われないおそれがある。この不都合を防止するために、空気流Aを噴出させる噴射部40の後端域43に設置された加熱部70によって、該加熱部70に形成された空間71内を加熱することが有利である。詳細には以下のとおりである。すなわち、図12(a)に示すとおり、空気流Aが噴出している近傍の空間S1は、空気流Aの部分よりも圧力が低下する。その結果、空間S1よりも外方の空間S2は、空間S1よりも圧力が相対的に高くなるので、該空間S2に存在する空気は空気流Aに牽引され、図12(b)に示すとおり二次空気流A’となって、空気流Aとともに噴出する。二次空気流A’は、図12(b)に示すとおり、加熱部70の空間71内を通過して流れるから、加熱部70によって空間71内を加熱することで、二次空気流A’が加熱される。その結果、図12(c)に示すとおり、噴射部40から噴出した空気流Aは、加熱部70によって加熱された空気流A’に包囲された状態で流れる。つまり、周囲の低温の空気と空気流Aとの接触が、空気流A’によって妨げられる。それによって、空気流Aは、その温度低下が極力抑えられた状態で、原料樹脂を引き延ばすので、得られる繊維を容易に微細化することができる。
以上のとおり、本実施形態においては、噴射部40のうちの後方域43を囲むように、加熱部70を該後方域43に設置し、該加熱部70の空間を通過する空気を加熱して、空気流Aの周囲に、加熱された二次空気流A’を発生させている。そして、加熱された二次空気流A’によって、空気流Aの温度低下を防止している。したがって二次空気流A’は言わば断熱層として作用する。空気流Aの温度低下を一層効果的に防止する観点から、加熱部70の円筒状の空間71はその直径が30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることが更に好ましく、70mm以上であることが一層好ましい。また250mm以下あることが好ましく、200mm以下であることが更に好ましく、150mm以下であることが一層好ましい。例えば空間71の直径は、30mm以上250mm以下であるであることが好ましく、50mm以上200mm以下であることが更に好ましく、70mm以上150mm以下であることが一層好ましい。
同様の観点から、噴射部40の先端と、加熱部70の前面70aとの間の距離m(図7参照)は、二次空気流A’を効果的に発生させるために、1mm以上であることが好ましく、10mm以上であることが更に好ましく、50mm以上であることが一層好ましい。また200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることが更に好ましく、100mm以下であることが一層好ましい。例えば距離mは、1mm以上200mm以下であるであることが好ましく、10mm以上150mm以下であることが更に好ましく、50mm以上100mm以下であることが一層好ましい。
加熱部70による二次空気流A’の加熱温度は、空間71内で測定した温度が、30℃以上、特に70℃以上であることが好ましく、300℃以下、特に160℃以下であることが好ましい。例えば空間71内で測定した二次空気流A’の温度は、30℃以上300℃以下であることが好ましく、70℃以上160℃以下であることが更に好ましい。
加熱部70は、帯電電極20と電気的に絶縁した構造になっていることが好ましい。こうすることで、樹脂溶融液の帯電量を増加させる目的でノズル先端部30と帯電電極20との間に高電圧を印加しても、帯電電極20と加熱部70との間に放電が発生しづらく、安定的に溶融電界紡糸法を実施することができるという利点が生じる。
溶融電界紡糸装置10に供給される原料樹脂としては、熱可塑性のものが好適である。例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリスチレンなどのビニル系樹脂などが挙げられる。これらの原料樹脂を筐体51内で溶融混練する場合、該原料樹脂の帯電量を増加させる添加剤を、該原料樹脂中に練り込むことができる。そのような添加剤としては、例えば各種の界面活性剤、などが挙げられる。
前記の各種樹脂を原料として製造される繊維は、溶融電界紡糸法を実施する条件に応じて様々な太さのものとすることができる。特に、ナノファイバと呼ばれる極細繊維を製造することができる。ナノファイバとは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10nm以上3000nm以下、特に10nm以上1000nm以下のものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(ナノ繊維の塊、ナノ繊維の交差部分、ポリマー液滴)を除いた繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、帯電電極20における凹曲面21はその全域が電極として作用するものであったが、凹曲面21の一部のみが電極として作用するものであってもよい。
また、図11に示す繊維の製造方法においては、ノズル先端部30にアースを施し、帯電電極20に正の高電圧を印加したが、これに代えて、ノズル先端部30にアースを施し、帯電電極20に負の高電圧を印加してもよい。
また、前記実施形態においては、帯電電極20として、ノズル先端部30と対向する面が凹曲面であるものを用いたが、それ以外の面形状を有する帯電電極を用いてもよい。また、帯電電極20は誘電体で被覆することを要さない。
更に前記実施形態においては、噴射部40の後方域43と加熱部70との間に空隙が生じるように、加熱部70を後方域43に設置したが、これに代えて、後方域43と加熱部70との間に空隙が生じないように、加熱部70を後方域43に設置してもよい。
更に前記実施形態においては、噴射部40の後方域43に加えて、該後方域43よりも先端側に位置する前方域を、電気的に絶縁された断熱部材で覆ってもよい。この前方域を断熱部材で覆う場合には、後方域43と加熱部70との間の空隙と同程度の空隙が、前方域とこれを覆う断熱部材との間に生じるようにすることが好ましい。
また前記実施形態においては、図1に示す溶融電界紡糸装置10を一台用いて紡糸を行ったが、これに代えて、繊維の生産能力を一層向上させることを目的として、複数台の溶融電界紡糸装置を、噴射部からの搬送用エアーの噴出方向が同方向となるように配置して用いてもよい。
更に前記実施形態においては、加熱部70の空間71は円筒状の形状をしていたが、空間の形状はこれに限られず、角柱状の形状等であってもよい。尤も、空気流Aの周囲に二次空気流A’を首尾よく形成する観点からは、等方性の形状である円筒状の形状を採用することが好ましい。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の溶融電界紡糸装置を開示する。
<1>
溶融樹脂に電荷を発生させる帯電電極と、該帯電電極に対向する位置に配置された該溶融樹脂の吐出用ノズルとを有し、該帯電電極と該吐出用ノズルとの間に静電誘導を生じさせた状態下に、該吐出用ノズルの先端より吐出させた紡糸液から繊維を形成するようにした溶融電界紡糸装置であって、
帯電によって前記紡糸液が前記帯電電極に向かう方向に対して直交する方向に、加熱されたエアーが噴出するようにエアーの噴射部が設置されており、
前記エアーの噴射部のうちの後方域を囲むように、加熱部が該後方域に設置されている溶融電界紡糸装置。
<2>
前記エアーの噴射部の後方域と前記加熱部との間に空隙が生じるように、該加熱部が該後方域に設置されている前記<1>に記載の溶融電界紡糸装置。
<3>
前記加熱部が、該加熱部を貫通する円筒状の空間を有し、該空間内に前記エアーの噴射部の後方域が配置されている前記<1>又は<2>に記載の溶融電界紡糸装置。
<4>
前記加熱部の前記円筒状の空間はその直径が30mm以上250mm以下である前記<3>に記載の溶融電界紡糸装置。
<5>
前記加熱部が円筒状の空間を有し、該空間はその直径が30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることが更に好ましく、70mm以上であることが一層好ましく、また250mm以下あることが好ましく、200mm以下であることが更に好ましく、150mm以下であることが一層好ましく、例えば前記空間の直径は、30mm以上250mm以下であるであることが好ましく、50mm以上200mm以下であることが更に好ましく、70mm以上150mm以下であることが一層好ましい前記<1>ないし<4>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<6>
前記噴射部の先端と、前記加熱部の前面との間の距離は、1mm以上であることが好ましく、10mm以上であることが更に好ましく、50mm以上であることが一層好ましく、また200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることが更に好ましく、100mm以下であることが一層好ましく、例えば前記距離は、1mm以上200mm以下であるであることが好ましく、10mm以上150mm以下であることが更に好ましく、50mm以上100mm以下であることが一層好ましい前記<1>ないし<5>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<7>
前記加熱部が空間を有し、
前記加熱部による加熱温度は、前記空間内で測定した温度が、30℃以上、特に70℃以上であることが好ましく、300℃以下、特に160℃以下であることが好ましく、例えば前記空間内で測定した温度は、30℃以上300℃以下であることが好ましく、70℃以上160℃以下であることが更に好ましい前記<1>ないし<6>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<8>
前記加熱部は、輻射熱による加熱が可能になっている前記<1>ないし<7>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<9>
輻射熱の熱源として、赤外線ヒーター、セラミックファイバヒーター、ラバーヒーター、ハロゲンヒーター又は石英ガラス管ヒーターを用いる前記<8>に記載の溶融電界紡糸装置。
<10>
前記加熱部と前記帯電電極とが電気的に絶縁されている前記<1>ないし<9>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<11>
前記帯電電極は、前記吐出用ノズルとの対向面が誘電体で被覆されており、且つ該対向面が略半円筒状凹曲面となっている前記<1>ないし<10>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<12>
前記ノズルを備えた溶融樹脂押出しユニット部を更に有し、
前記溶融樹脂押出しユニット部は筐体を有し、
前記溶融樹脂押出しユニット部においては、前記筐体と前記ノズルの先端部とが電気的に絶縁した構造になっている前記<1>ないし<11>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<13>
前記帯電電極が、略半円筒の内面を構成する凹曲面を有しており、
前記噴射部は、エアーの噴出口が、前記ノズルの先端部の延長線上に位置するように配置されており、
前記噴射部は、エアーの噴出口の全部又は一部が、前記凹曲面で画成される空間内に位置するように配置されている前記<1>ないし<12>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<14>
前記噴射部は、エアーの噴出口を含む先端部の噴出部位が絶縁体で構成されている前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<15>
前記加熱部が円筒状の空間を有し、
前記噴射部は、その軸心が、円筒形をした前記空間の中心線上に位置するように配置されている前記<1>ないし<14>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<16>
前記加熱部が円筒状の空間を有し、
前記加熱部を、前記空間の延びる方向に沿って見たとき、前記帯電電極は、その全体が該加熱部の該空間内に収まる大きさとなっている前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置。
<17>
前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の溶融電界紡糸装置を用いた繊維の製造方法。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
図1及び図11に示す溶融電界紡糸装置を用いて溶融電界紡糸を行った。使用した樹脂は、顔料を5%含むポリプロピレンである。ポリプロピレンにはPolyMirae社製のMF650Yを用いた。帯電電極20として、凹曲面21の長手方向Xの長さ21Lが120mmで、半径が35mmであるものを用いた。帯電電極20はステンレス製の基体の表面にMCナイロンからなる誘電体を厚み10mmで被覆したものである。ノズル先端部30の開口径は0.3mmであった。ノズル先端部30の開口端は、凹曲面21の焦点Tに位置させた。ノズル先端部30の開口端と凹曲面21の最深部との間の距離は約35mmであった。噴出部40として、(株)ハイベック製の瞬間熱風ハイヒーターを用いた。噴射部40から噴出する加熱空気は、その噴出方向が、凹曲面21の半円筒の中心軸と平行になるようにした。噴射部40の噴出口41の位置は、ノズル先端部30の延長線上とした。この延長線と噴出口41との距離は20mmに設定した。加熱空気の温度は380℃に設定した。加熱空気の噴出流量は200L/minに設定した。ノズル先端部30をアースに落とし、帯電電極20に−20kVの電圧を印加した。この状態下に、280℃に溶融したポリプロピレンを5g/minの吐出速度で吐出させ溶融電界紡糸を行った。加熱部70として、円筒状の空間の長手方向Xの長さが120mmで、半径が200mmであるものを用いた。加熱部70は赤外線ヒーターを備え、セラミックチューブからなる絶縁体で帯電電極20と電気的に絶縁した構造になっていた。加熱部70は、円筒状の空間の中心軸が凹曲面21の半円筒の中心軸と平行になるように設置した。噴射部40の先端と、加熱部70の前面70aとの間の距離mは50mmであった。加熱部70の空間71内を流れる二次空気流の温度は70℃に設定した。ノズル先端部30と搬送コンベア61との距離は700mmに設定し、搬送コンベア61に−20kVを印加した。以上の条件で溶融電界紡糸を行って得られた繊維の繊維径を50本測定し、その平均値、最大値及び最小値を求めた。その結果を以下の表1に示す。
〔参考例1〕
実施例1において、加熱部70による二次空気流の加熱を行わなかった。これ以外は実施例1と同様に溶融電界紡糸を行った。そして、得られた繊維の繊維径の平均値、最大値及び最小値を求めた。その結果を以下の表1に示す。
Figure 2017095825
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例1で得られた繊維は、参考例1で得られた繊維よりも微細なものであり、且つ繊維径のばらつきが小さいことが判る。
10 溶融電界紡糸装置
20 帯電電極
21 凹曲面
22a,22b 平面部
23 高電圧発生装置
30 ノズル先端部
40 噴射部
41 噴出口
43 噴射部の後方域
50 溶融樹脂押出しユニット部
51 筐体
53 ノズルベース
60 捕集シート
61 搬送コンベア
62 高電圧発生装置
70 加熱部
71 空間

Claims (8)

  1. 溶融樹脂に電荷を発生させる帯電電極と、該帯電電極に対向する位置に配置された該溶融樹脂の吐出用ノズルとを有し、該帯電電極と該吐出用ノズルとの間に静電誘導を生じさせた状態下に、該吐出用ノズルの先端より吐出させた紡糸液から繊維を形成するようにした溶融電界紡糸装置であって、
    帯電によって前記紡糸液が前記帯電電極に向かう方向に対して直交する方向に、加熱されたエアーが噴出するようにエアーの噴射部が設置されており、
    前記エアーの噴射部のうちの後方域を囲むように、加熱部が該後方域に設置されている溶融電界紡糸装置。
  2. 前記エアーの噴射部の後方域と前記加熱部との間に空隙が生じるように、該加熱部が該後方域に設置されている請求項1に記載の溶融電界紡糸装置。
  3. 前記加熱部が、該加熱部を貫通する円筒状の空間を有し、該空間内に前記エアーの噴射部の後方域が配置されている請求項1又は2に記載の溶融電界紡糸装置。
  4. 前記加熱部の前記円筒状の空間はその直径が30mm以上250mm以下である請求項3に記載の溶融電界紡糸装置。
  5. 前記加熱部は、輻射熱による加熱が可能になっている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の溶融電界紡糸装置。
  6. 前記加熱部と前記帯電電極とが電気的に絶縁されている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の溶融電界紡糸装置。
  7. 前記帯電電極は、前記吐出用ノズルとの対向面が誘電体で被覆されており、且つ該対向面が略半円筒状凹曲面となっている請求項1ないし6のいずれか一項に記載の溶融電界紡糸装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の溶融電界紡糸装置を用いた繊維の製造方法。
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