JP2017095290A - 漏水抑制コンクリート硬化体 - Google Patents

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Abstract

【課題】コンクリート硬化体に微細なひび割れが生じた場合でも、漏水が抑制される漏水抑制コンクリート硬化体を提供する。【解決手段】セメント組成物およびコンクリート組成物から選ばれる少なくとも1種を含み、厚さが9cm以上のコンクリート硬化体(硬化体10)であり、前記コンクリート硬化体において、漏水を抑制する側10Aに、撥水領域14を備える漏水抑制コンクリート硬化体である。【選択図】図1

Description

本発明は、漏水抑制コンクリート硬化体に関する。
土木建築構造物、壁体等に使用されるセメント、コンクリートなどの水硬性組成物を用いて作製されるコンクリート硬化体は、通常、コンクリートを型枠に打設した後、所定時間静置することで製造される。また、モルタルやコンクリート製のプレキャスト部材などを製造するためには、コンクリート組成物を型枠内に充填し、所定時間静置した後、蒸気などにより昇温し、50℃〜70℃程度に保持したまま数時間放置し、脱型可能な強度となった後に脱型して成形体としてのコンクリート硬化体を得る。
コンクリート組成物は、硬化させて、そのまま建築構造物、塀等の構築に用いられる。また、プレキャスト部材の如く、パネル状のコンクリート硬化体を作製し、得られたコンクリート硬化体を建築構造物の壁体等に用いることができる。
例えば、建造物の壁体を構成するコンクリート硬化体としては、一般的には厚さ9cm以上の厚みを有する硬化体が使用される。壁体に目に見えるひび割れが生じると修復が行われる。しかし、コンクリート硬化体に、通常では気付かないレベルの微細なひび割れが生じた場合、微細なひび割れに外部から雨水などが浸入し、毛細管現象などにより深部まで水分が浸透して、室内に水漏れが生じたり、内面である室内側の壁体表面にシミが生じたりすることがある。
通常は、壁体の外側、即ち、外気に接する側は、タイルなどの表面材を貼付したり、外観を向上するために塗装したりすることが行われ、壁体の外側は保護されているが、その場合でも、経時により、タイルの目地が劣化したり、塗装膜が劣化し、微細なひび割れが生じることがある。さらに、コンクリート硬化体の外観を生かした所謂「打ち放し壁体」などの表面材を有しないコンクリート硬化体では、表面材を有するコンクリート硬化体よりもひび割れが生じやすい傾向がある。
通常、天井材、壁体などの漏水防止方法としては、コンクリート硬化体の外側に撥水剤を塗布する、コンクリート硬化体の外側を防水材料で被覆するなど、外側に保護層を設ける方法がとられる。また、表面が劣化したコンクリート建造物についても、撥水剤等を塗布して修復することが行われ、修復により、外観を向上させ、かつ、外部からの水分の浸み込みを抑制させる試みがなされている。
例えば、表面被覆材によりコンクリート表面を保護する際に、シラン、シロキサン系撥水剤をコンクリート表面被覆材の端縁部におけるコンクリート表面に特定の目付量で塗布し、被覆するコンクリート表面被覆材の剥がれ防止方法(例えば、特許文献1参照。)、水セメント比50以上のコンクリート表面をシリコーン系塗膜形成材料で被覆してシリコーン系含浸塗膜を形成するコンクリートの改質工法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
また、劣化し、ひび割れ等が生じたコンクリートの修復方法として、コンクリート表層部のポーラス化の程度に応じて、アルキルアルコキシシラン/ポリオルガノシロキサン配合比を調整した塗布液を、既設コンクリートに含浸させ、1mm〜30mmの厚さのシラン含浸撥水層を形成する既設コンクリートの表面保護工法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
上記各文献に記載の方法は、いずれも、壁体などのコンクリート硬化体の外側を撥水性或いは疎水性の材料を用いて保護する方法であり、保護層が緻密であれば、ある程度の水分浸入防止効果を有するものの、経時的な表面劣化、特に、表面の外観上の観察では気付き難い微細なひび割れによる水分の浸入を抑制するには至っていない。
特許第3809149号公報 特許第4338908号公報 特開2009−91167号公報
本発明者らの検討によれば、例えば、建造物の外壁など風雨に曝されるコンクリート硬化体の表面に構造上の安定性および耐久性の観点からは修復を要しないレベルの微細なひび割れが生じた場合においても、コンクリート硬化体の表面に付着した水分が強風などの風圧によってひび割れ中に押し込まれ、水分が内部に浸透することが判明した。
即ち、前記各公報に記載された外面の撥水処理によれば、通常の降雨などによる水分のコンクリート硬化体内部への浸入はある程度抑制できるが、台風などの強風を伴う降雨の場合、僅かではあるが微細なひび割れ内に風圧により水分が浸入することがある。浸入した水分がコンクリート硬化体外部に形成された撥水領域よりも深部に至った場合には、ポーラスな構造を有するコンクリート硬化体内部において、毛細管現象によって水分は深部へ誘導されるため、毛細管現象を生じ難い大サイズのひび割れに浸透した場合よりも、深部へ水分が浸透し易くなる。このような状態が繰り返されると、経時により硬化体内側まで少量の水分が徐々に浸透し、内側の表面に浸出して水漏れが生じるものと考えられる。
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、コンクリート硬化体に微細なひび割れが生じた場合でも、漏水が抑制される漏水抑制コンクリート硬化体を提供することにある。
本発明は、以下の実施形態を含む。
<1> セメント組成物およびコンクリート組成物から選ばれる少なくとも1種を含み、厚さが8cm以上のコンクリート硬化体であり、前記コンクリート硬化体において、漏水を抑制する側に、撥水領域を備える漏水抑制コンクリート硬化体。
コンクリート硬化体の漏水を抑制する側に撥水領域を備えることで、微細なひび割れの内部に風圧などにより浸入した水分は、撥水領域で撥かれて、毛細管現象による水分の撥水領域内部への浸透が妨げられるため、漏水を抑制する側、例えば、壁体の室内側への漏水が効果的に抑制される。
<2> 前記撥水領域を、前記コンクリート硬化体の漏水を抑制する側の表面から3mm〜20mmの範囲に備える<1>に記載の漏水抑制コンクリート硬化体。
撥水領域の範囲が、コンクリート硬化体の漏水を抑制する側の表面から厚さ方向に3mm〜20mmであることで、毛細管現象による水分の浸入を抑制しうる撥水領域が十分な厚みを有することになり、撥水効果がより向上し、暴風雨など、風圧のより厳しい条件においても、漏水の防止効果がより確実となる。
<3> 前記撥水領域における純水接触角は、90°を超え170°以下の範囲である<1>または<2>に記載の漏水抑制コンクリート硬化体。
撥水領域における純水接触角が90°を超えることで、十分な撥水性が発現され、毛細管現象による水分の浸透をより確実に抑制することができる。また、純水接触角が170°以下であることで、公知の方法にて、容易にコンクリート硬化体に撥水領域を形成することができる。
純水接触角は、硬化体の表面凹凸形状、表面を構成する物質を選択することで制御することができる。純水接触角が170°とは、現状、一般的に行われている技術で成し得る最大の角度と考えている。文献上は、硬化体表面の純水接触角を170°以上とした例はある(例えば、四分一ら、第47回コロイドおよび界面化学討論会、pp452、(1994年)参照)。また、打放しコンクリート硬化体表面において、純水接触角を約150°とした報告例がある(例えば、依田ほか、打放しコンクリートの美観向上に関する研究 その2、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp131−132、(2015年)参照)。これら文献の記載を考慮すれば、純水接触角の上限には特に制限はないものの、硬化体における撥水領域の純水接触角を170°を超える値とすることは実用上、困難である。
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
一般に、コンクリート硬化体の漏水抑制には、水の浸入側、例えば、建造物の壁体であれば、外気と接触する外壁面に撥水加工を施したり、撥水性の保護層で被覆したりするなどの対応が取られる。外壁の撥水処理は、表面に汚れが付着し難くなるなどの利点はあるものの、本発明者らの検討によれば、微細なひび割れが生じた状態における漏水防止効果が不十分であることが見出された。
即ち、例えば、外壁表面に撥水加工により撥水領域を設けた場合、通常の降雨または散水による水の付着に対しては、表面の撥水性に起因して壁体の内部、或いは、微細なひび割れ内部への水の浸入が抑制される。しかし、強風などの条件下では、壁体表面に付着した水分に強風による動圧が掛かり、微細なひび割れ内部へ水が押し込まれる。強風による動圧が強い場合には、水はひび割れの表面撥水領域よりも深い内部まで浸入する事態が生じることがある。水が外壁に設けられた撥水領域よりも深部まで到達した場合には、水に働く力は毛細管現象のみとなり、微細なひび割れ内を水がより深部へと導かれ、壁体内部への水の浸み出しが生じ、漏水が発生することが見出された。
本実施形態のコンクリート硬化体では、漏水を抑制する側、即ち、壁体の内部側に撥水領域を備える。このため、たとえ強風による動圧が掛かり、コンクリート硬化体の深部まで水が浸入したとしても、壁体の内部側における撥水領域にて水が撥かれ、毛細管現象による、より深部への水の浸入が生じないため、漏水を抑制することができる。水に掛かる強風による動圧は硬化体の深部に至るほど減衰される。本発明者らの検討によれば、微細なひび割れの場合、水の浸入する側の表面より4cm以上、好ましくは6cm以上の深部では、強風による動圧は減衰され、0に近い状態となる。このため、本実施形態の硬化体の如く、厚みが8cm以上、好ましくは9cm以上の硬化体においては、水は、漏水を抑制する側の表面に至るほど、風による動圧の影響を受け難くなる。
よって、たとえ、微細なひび割れの深部まで水が浸入したとしても、撥水領域の存在により毛細管現象が抑制されることで、効果的に、漏水を抑制する側、即ち、内面に至る漏水が抑制されるものと推定される。
なお、本発明は、上記推定機構には何ら制限されない。
本発明によれば、コンクリート硬化体に微細なひび割れを生じた場合でも、漏水が抑制される漏水抑制コンクリート硬化体が提供される。
本発明の一実施形態である、液状の撥水剤を用いて形成された撥水領域を有する漏水抑制コンクリート硬化体の概略断面図である。 本発明の別の実施形態である、撥水性モルタル組成物を用いて形成された撥水領域を有する漏水抑制コンクリート硬化体の概略断面図である。
本発明の一実施形態に係る漏水抑制コンクリート硬化体について詳細に説明する。
<漏水抑制コンクリート硬化体>
本実施形態の漏水抑制コンクリート硬化体(以下、単に硬化体と称することがある)は、セメント組成物およびコンクリート組成物から選ばれる少なくとも1種を含み、厚さが8cm以上のコンクリート硬化体であり、前記コンクリート硬化体において、漏水を抑制する側に、撥水領域を備える。
なお、本明細書におけるコンクリート硬化体は、セメントと骨材とを含有するセメント組成物およびコンクリート組成物から選ばれる少なくとも1種を含む硬化体であり、よって、粗骨材を含まないセメント組成物を含むセメント硬化体も、本明細書におけるコンクリート硬化体に包含される。
以下、本明細書において、セメント組成物およびコンクリート組成物から選ばれる少なくとも1種を、「水硬性組成物」と総称することがある。また、硬化体10の漏水を抑制する側の面を「内面10A」と称し、内面10Aに対向する、水が浸入する側の面を「外面10B」とそれぞれ称することがある。
図1は、本発明の一実施形態である、液状の撥水剤を用いて形成した撥水領域を備える漏水抑制コンクリート硬化体を模式的に示す概略断面図である。
図1に示す実施形態の硬化体10は、水硬性組成物を含み、厚さが8cm以上の硬化体である。本実施形態の硬化体10は、水硬性組成物を含む水硬性組成物成形体12に、液状の撥水剤により形成された撥水領域14を備える。
ここで厚さとは、水16が浸入する側の表面(外面10B)、例えば、建造物の壁体において外気に触れる側の表面から、漏水を抑制する側の表面(内面10A)、例えば、建造物の壁体において室内側の表面までの距離を指し、本実施形態における硬化体10の厚みは図1において「n」で示す範囲であり、撥水領域14の形成厚みは図1において「m」で示す範囲である。本実施形態では、硬化体10と水硬性組成物成形体12との厚みは同一である。
本発明の効果である漏水の抑制は、厚さが8cm以上の硬化体に対して極めて有効であり、9cm以上であればさらに有効である。硬化体の厚みの上限には特に制限はなく、8cm以上であれば、いずれの厚みの硬化体においても本発明の効果を奏しうる。
図1で示す硬化体10は、液状の撥水剤を用いて形成された撥水領域14を備える漏水抑制コンクリート硬化体10である。図1の概略断面図では、硬化体10にひび割れ15が生じた状態を示す。硬化体10は水硬性組成物を含む硬化体10であり、漏水を抑制する側に撥水領域14を備える。硬化体10のひび割れ15の一方、壁体における外気に触れる側から水16が浸入した場合、浸入した水16は、風圧などにより硬化体10に生じたひび割れ15のより深部へと浸透する。通常、水硬性組成物を含む硬化体10は、ミクロにみればポーラスな構造を示し、水16は、風圧などの外部からの圧力のみならず、微細なひび割れ15の場合には、毛細管現象に起因して、より深部へと浸入しやすい。本実施形態の硬化体10は漏水を抑制する側に撥水領域14を備えるため、水16の先端部が撥水領域14に到達した場合、撥水領域14表面の撥水性に起因して図1に示すように、ひび割れ15の撥水領域14における表面において水16が撥かれて毛細管現象が生じ難くなり、微細なひび割れ15における空隙内の毛管現象による水16の内部への浸み出しが抑制される。ひび割れ15が撥水領域14に達したとしても、水16は、撥水領域14内に浸入することはなく、このため、漏水が効果的に抑制される。
撥水領域14は、硬化体10の漏水を抑制する側に有すれば、厚さ、形成方法などに特に制限はない。
なお、撥水領域14がある程度の厚みを有することが、漏水防止効果をより高める観点から好ましい。
水硬性組成物を含む硬化体10は、水硬性組成物が含むセメント、骨材などの存在に起因して、ミクロにみれば硬化体10内部は空隙を有し、かつ、硬化体10表面には微細な凹凸を有する。また、硬化体10が、型枠に水硬性組成物を打設し、硬化させて形成される硬化体10である場合、水硬性組成物の型枠面近傍は、打設から硬化に至るまでの間に水分が偏在し易く、硬化時に水分が除去され、硬化された後に、硬化体10の深部に比較し、より空隙を多く含む領域を有することになる。
このため、硬化体10の漏水を抑制する側に、既述のような微細な凹凸を有する面が位置する場合には、撥水領域14は、表面の微細な凹凸における凹部の底面に至るまで設けられること、硬化体10表面の、内部に比べて空隙をより多く含む領域を含んで設けられることが効果の観点から好ましい。
硬化体10に含まれる骨材などの材料のサイズ、硬化体表面凹凸などを観察した結果、撥水領域14は、漏水を抑制する側の表面から3mm以上の厚みで形成されることが、漏水をより確実に抑制し得るという観点から好ましく、4mm以上の厚みで形成されることがより好ましい。
また、撥水領域14の形成領域の厚みの上限には、特に制限はないが、本実施形態の硬化体10が厚み8cm以上の硬化体であることを考慮すれば、表面から20mmまで撥水領域14を形成すれば十分に本発明の効果を奏することができる。20mmを超えて撥水領域14を形成する場合、形成工程が煩雑となるため、本発明の効果と撥水領域14形成の容易性のバランスの観点から20mm以下であることが好ましい。
コンクリート硬化体に含まれる材料のうち、最大の大きさを有する材料は粗骨材であり、通常、粗骨材のサイズは20mm以下である。骨材表面がコンクリート硬化体の表面に露出している場合、粗骨材の周囲全てを撥水化しておくことにより、コンクリート硬化体表層に連続した撥水層が形成され、漏水抑止効果が発現されること、および施工上の合理性、例えば、コスト、工数、労力等を考慮すると、撥水層は小さいほうが望ましいこと、を考慮すれば、撥水領域の最大厚みは表面から20mmであることが望ましい。
即ち、本実施形態の硬化体10では、撥水領域14を、漏水を抑制する側の表面から3mm〜20mmの範囲に備えることが好ましい。
硬化体10が備える撥水領域14の形成範囲は、硬化体10を厚み方向と平行に切断し、切断した断面を観察することで測定できる。硬化体10の断面に水を噴霧すると、水が浸透して濃いグレー色になった部分(濡れ色部分)と、水が浸透せずにコンクリート基材のままの色の部分との差異が目視で確認できる。水が浸透せずにコンクリート基材のままの色の部分が、撥水領域14であり、コンクリート基材のままの色の部分の表面からの深さを定規で測定することで、撥水領域14の形成範囲を測定することができる。
また、容易に切断面を観察できないコンクリート硬化体では、NDIS 3419「ドリル削孔粉を用いたコンクリート構造物の中性化試験方法」(2011年、日本非破壊検査協会規格)に準じた方法に従った方法で撥水領域14の形成深さを測定することができる。即ち、既述のコンクリート構造物の中性化試験方法に従い、コンクリート硬化体の撥水領域14を形成した表面からドリルで削孔し、削孔により得られる削孔粉を採取する。採取した削孔粉を、容器に貯めた水道水面に落として、削孔粉が1分間沈降しない場合を、撥水領域14中の削孔粉であると判断する。削孔を深くしていき、採取した削孔粉が沈降する時点を、撥水領域14の非形成領域に到達した時点とし、削孔粉が沈降する直前におけるドリルの削孔長さを測定して、撥水領域14の形成深さとして評価することができる。
建造物の外壁は、一定の周期で補修される。外壁のひび割れに対しては補修方法が確立されており、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れに対しては、建造物の耐久性が懸念されて、例えば、国土交通省大臣官房長官営繕部監修:建築改修工事監理指針、財団法人建築保全センター(2004年)、pp298−299等の基準に従って補修される。具体的な補修方法としては、例えば、ひび割れに充填材を充填する方法、外面に保護材を塗布する方法などの補修方法が挙げられる。
ただし、微細なひび割れ、例えば、外面10Bにおけるひび割れの幅が0.2mm以下では外観検査においてひびの発生が見逃される場合がある。しかし、外壁表面における幅が0.2mm以下といった微細なひび割れからも、既述のように漏水する場合がある。
本実施形態のコンクリート硬化体は、微細なひび割れ、より具体的には、外面10Bにおけるひび割れの幅が0.3mm以下のひび割れに有効であり、外観検査では容易に見出し難い、外面10Bにおけるひび割れの幅が0.2mm以下、さらに0.15mmのひび割れにおいて効果が著しい。
なお、植栽、目隠し壁等で外部面全面を覆われた状態に配置されたコンクリート硬化体10では、外面10B側に風圧が作用しないか、或いは、風圧が作用しても、極めて微弱な風圧が作用するのみである場合がある。このような状態にある、風圧の影響を受け難い条件下に配置されたコンクリート硬化体10の場合には、幅が0.3mmを超える、さらに大きなひび割れ幅が発生した場合でも、本実施形態の構成は有効であり、良好な漏水抑制効果を奏する。
建造物の外面10Bが外気側の露出する建造物の如き硬化体10の場合、漏水を引き起こす主要な圧力は、壁体の外面10Bに作用する風圧である。
立地が東京の場合、建物の構造安全性を評価するための風圧は基本風速34m/s、再現期間100年以上を考慮して設定されるが、既述のように、建造物に対しては定期的な外観検査およびひび割れの補修が行われることを考慮して、本発明者らは、再現期間10年程度を考慮して漏水防止の基準を設定した。
例えば、JIS A4706サッシ、JISA4702 鋼製およびアルミ合金製サッシにおいて、高層・強風地域用のグレードのサッシにおける最大圧力は500Paに設定されている。この値を考慮して、JIS A1517 建具の水密試験方法での風圧(P)を考慮すれば、風圧の設計値は下限値がPa×0.5、上限値が、Pa×1.5とされ、P≦1500Paとしたとき、上限値と下限値は、それぞれ2250Paと750Paとなる。
また、建築物荷重指針(建築学会:2004年)に基づいて算定できる再現期間毎の風圧の算出結果を参照すると、再現期間10年の風圧は、地上高50mの部位に対しては、2000Pa程度の風圧が作用するため、2000Paの差圧に耐える撥水領域14を硬化体10の内面10A側に導入できれば、防水効果があると考えられる。
これら風圧による水分のひび割れ内部への押し込み力を考慮して、撥水領域14における接触角を選択することで効果的な漏水防止が可能となると考えられる。
撥水領域14における撥水性の程度は、水の風圧に対する抵抗性と、水の毛細管現象の抑制とを考慮して選択することができる。なお、硬化体10深部においては、風圧の影響が低下することから、水の毛管現象が生じない範囲の接触角を達成しうる撥水性を有することが好ましい。具体的には、撥水領域における純水接触角が90°を超え、170°以下の範囲であることが好ましい。純水接触角が既述の好ましい範囲であれば、ひび割れ15に浸入した水の毛細管現象による深部への浸入が抑制され、良好な漏水抑制効果が得られる。純水接触角は100°〜170°の範囲であることがより好ましく、105°〜120°の範囲であることがさらに好ましい。
ひび割れのサイズとの関連では、ひび割れの幅が大きいほど、純水接触角は大きい方が好ましい。コンクリート硬化体に係る風圧との関連では、風圧が大きいほど、純水接触角は大きい方が好ましい。
本明細書における純水接触角は、JIS R 3257 基板ガラス表面のぬれ性試験方法(1999年)に記載される静滴法に従って測定することができる。すなわち、試験対象撥水領域表面に、1.5μl(マイクロリットル)の純水の水滴を滴下し、自動接触角計(DM−501、協和界面科学(株))を用いて接触角を測定することができる。
(撥水領域の形成)
硬化体10に撥水領域14を形成する方法には特に制限はない。例えば、液状の撥水剤を用いる場合、硬化体10の内面10Aに撥水剤を塗布する方法、撥水性の材料を含む撥水性モルタル組成物を用いて、硬化体10の内面10Aの表面に撥水性モルタル組成物層を形成する方法、フォーム状またはゾル状の撥水剤をスプレーで吹き付ける方法等の方法が挙げられる。なかでも、簡易な方法として撥水剤を塗布する塗布法が挙げられる。塗布法によれば、撥水領域14は、撥水剤を硬化体10の内面10Aの表面に塗布法により塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
塗布法における撥水剤の塗布は公知の方法により行うことができる。公知の塗布法としては、例えば、スプレー塗布、刷毛塗布、ローラー塗布、バー塗布、ディップ塗布(浸漬塗布)等が挙げられる。ディップ塗布(浸漬塗布)は、硬化体10の内面10A側を撥水剤に浸漬することで行うことができる。
塗布法を適用できる撥水剤としては、コンクリート硬化体に対して、シロキサン結合を介して結合し、硬化体に撥水性の官能基を導入できる化合物(例えば、コンクリート−Si−O−C2n−1、コンクリート−Si−O−C2n−1など)である、シリコーン系、シラン系、ふっ素系、またはそれらの混合物を撥水主剤とする撥水剤が好ましく挙げられる。
撥水剤の性状としては、液体状、ゲル状、ゾル状または泡状物質のいずれであってもよく、液体状の撥水剤は、撥水主剤の溶液でもよく、撥水性粒子を含む分散液でもよい。
液体状の撥水剤としては、ポリアルコキシシラン、シロキサン、フッ素系樹脂などの撥水主剤から選ばれる少なくとも1種を含む溶液または分散液、アエロジルなどの微粒子シリカ粒子、微粒子酸化スズなどの親水性無機粒子の分散液等が挙げられる。
また、公知の撥水材として、例えば、特許第3809149号公報に記載の撥水材等も、本実施形態における撥水領域14の形成に用いることができる。
ある浸透深さを伴って硬化体10に撥水領域14を形成できるという観点からは、撥水剤としては、吹付、塗布などの方法で一定時間、壁面に担持させることができる粘度を有する撥水剤、コンクリート硬化体に対する浸透性が高い撥水剤等を用いることが好ましい。撥水剤の粘度、あるいは浸透性は、撥水剤の調製に用いる溶媒、分散媒の種類および量の少なくともいずれかを調整することで制御することができる。
撥水剤としては市販品を使用してもよく、例えば、大同塗料(株)のアクアシール(登録商標)シリーズ(アクアシール200S、500S、50E:いずれも商品名)、シラン/シロキサン系ゲル状撥水剤であるアクアシール1400(大同塗料(株))、(株)ソフト99コーポレーションの撥水加工剤ガラコシリーズ、(株)イー・エム・ディのシリコーン系撥水剤であるMCファイン、(株)フロロテクノロジーのフロロサーフFS−1000シリーズ(フロロサーフGS−1060等)等が挙げられる。
市販品として例示された撥水剤、親水加工剤等は、壁体外面のセルフクリーニング性向上、ガラス部材に水滴を付き難くするためのカー用品など、本実施形態とは異なる用途の市販品がある。しかしながら、例示した市販品はいずれも、本実施形態の硬化体10の内面10Aに塗布する方法、市販品に硬化体10を浸漬するディップ塗布法などの方法により硬化体10に撥水領域14を形成することができる。
塗布法により撥水剤を硬化体10の内面10Aに適用する場合、複数回、塗布および乾燥を繰り返すことで、撥水領域14における撥水剤の含有量をより多くすることができる。撥水剤の含有量を増加させることで、硬化体10のより深部まで、また、コンクリート硬化体10が有する細孔部の内部に至るまで、撥水成分を十分に行き渡らせることができ、より信頼性の高い撥水領域14を形成することができる。
また、撥水領域14の形成に用いられる他の撥水剤としては、モルタルに、撥水加工を施した砂・砂利などの骨材、シリカ粒子、シリコーン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子などの撥水性の固体粒子を含有させた撥水性モルタル組成物が挙げられる。
骨材を撥水加工する方法としては、骨材を、シランカップリング剤のエタノール溶液に浸漬し、その後、乾燥する方法が挙げられる。
撥水性モルタル組成物を調製する際、加工された骨材、撥水性のシリコーン樹脂粒子等は表面が疎水性であるため、モルタル組成物の調製時に均一な混合物を得ることが困難となる。このため、撥水性モルタル組成物の調製時に用いる水として、予め水溶性増粘剤を添加して増粘した水を用いることが得られる撥水性モルタル組成物の均一性の観点から好ましい。骨材が撥水性の場合は、練り混ぜ完了から硬化完了までの間に、モルタル組成物内部に均一に水がとどまっていることができずに、骨材の撥水性によって、モルタル組成物の外に水が押し出されてしまう。その結果、モルタル組成物の強度や、別要素への付着性が低下することがある。水に増粘剤を加えて、増粘させて練り混ぜることで、骨材が撥水していても、少なくとも練り混ぜから硬化完了までの期間は、モルタル組成物内に均一に水を分散させておくことができる。練り混ぜ時に使用することができる水溶性増粘剤としては、例えば、AQUPEC HV−504E(住友精化(株)製)などが挙げられる。
調製された撥水性モルタル組成物は、水硬性組成物成形体12の内面10A側の表面に吹き付けたり、塗り付けたりした後に硬化させることで、厚みのある撥水性モルタル組成物層が形成され、形成された撥水性モルタル組成物層が硬化して撥水領域14となる。
図2は、撥水性モルタル組成物を用いて形成された撥水領域14を備えるコンクリート硬化体20を模式的に示す概略断面図である。
本実施形態の硬化体20では、水硬性組成物成形体12の漏水を抑制する側(硬化体20の内面10A)に、撥水性モルタル組成物を含む撥水領域14が形成される。
撥水性モルタル組成物を用いることで、水硬性組成物成形体表面に、任意の厚みの撥水領域14を容易に形成することができる。
撥水性モルタル組成物を用いて撥水領域14を形成する場合においても、撥水領域14を、本実施形態の硬化体20において、硬化体20の内面10Aの表面から3mm〜20mmの範囲で備えることが好ましく、従って、乾燥、硬化後の撥水性モルタル組成物層の厚みが上記範囲となる量で、撥水性モルタル組成物の噴霧量、塗布量を調整すればよい。
本実施形態における撥水領域14の形成厚みは図2において「l」で示す範囲である。硬化体20の厚みは、水硬性組成物成形体12の厚み「n」と撥水領域14の厚みを合計した(n+l)となる。
硬化体10、20の内面10A側に撥水領域14を備える本実施形態のコンクリート硬化体10、20に含まれる水硬性材料には特に制限はない。以下に、水硬性組成物の一例を挙げて説明する。
(水硬性組成物)
本実施形態のコンクリート硬化体(硬化体10、20)は、少なくとも1種の水硬性組成物を含む。
本実施形態のコンクリート硬化体(硬化体10、20)に用いうる水硬性組成物は、ポルトランドセメントなどの水硬性材料と、骨材と、水とを含み、必要に応じて、硬化促進材、化学混和剤などの水硬性組成物に含みうる公知の添加剤を含むことができる。
水硬性材料としては、コンクリート、セメント等が挙げられ、なかでも、ポルトランドセメントが好ましい。
(ポルトランドセメント)
硬化体が含みうるポルトランドセメントには特に制限はなく、水硬性組成物の使用目的に応じて、各種セメント類の中から、適宜選択することができる。ポルトランドセメントとしては、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、混合セメントすなわち、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどをポルトランドセメントの一部に置換したセメントなど挙げられる。
ポルトランドセメントの添加量は、硬化体の初期硬化性、初期強度、長期強度、使用目的等を考慮して適宜選択される。
通常は、硬化体に含まれる水硬性組成物中に、総量で270kg/m〜650kg/m含有することが好ましく、320kg/m〜530kg/m含有することがさらに好ましい。
(骨材)
水硬性組成物は、骨材を含有することが好ましい。本実施形態の水硬性組成物に用いうる骨材としては、特に制限はなく、コンクリート硬化体の目的に応じて、公知の細骨材、粗骨材を用いることができ、その配合量もまた、一般的なコンクリート組成物の範囲内で任意に選択することができる。セメントと骨材と水との混練りは公知のミキサにより行うことができる。
また、水硬性組成物は、無機硫酸塩、カルシウムサルフォアルミネートなどの硬化促進材、アルカリ金属炭酸塩などの反応調整剤、減水剤、消泡剤などを、適宜配合することができる。
水硬性組成物中の水とセメントの重量比は、形成されるコンクリート硬化体の用途に応じて適宜選択することができるが、最終的に得られるコンクリート成形体の圧縮強度として、18N/mm以上の強度を発現することが好ましく、硬化体10、20の強度をより向上させる観点からは、水と結合材の質量比は50%以下が好ましい。
硬化体10、20を形成するための水硬性組成物においては、水、セメント、混和材料、骨材、化学混和剤などの各種材料の重量比を適宜調整することで強度や物性を調整することもできる。
(コンクリート硬化体の製造方法)
本実施形態のコンクリート硬化体(硬化体10、20)は、既述の水硬性組成物を調整し、適切な型枠中に充填、打設して硬化させて水硬性組成物成形体12を形成し、得られた水硬性組成物成形体12の内面10A側に撥水領域14を形成することで製造することができる。
即ち、本実施形態のコンクリート硬化体の製造方法は、水硬性材料と水と、好ましくは骨材と、を含む水硬性組成物を混練する工程と、混練された水硬性組成物を型枠に注入する工程と、型枠に注入された水硬性材料を含む混合物を一般的な外部環境で養生するか、または蒸気養生して、水硬性組成物成形体を形成する工程と、形成された水硬性組成物成形体における漏水を抑制する側に撥水領域を形成する工程と、をこの順で有する。
なお、水硬性組成物成形体は、既述のように水硬性組成物を型枠内に充填し、硬化させて作製してもよく、既に成形された水硬性組成物成形体を用いてもよい。既に成形された水硬性組成物成形体の厚みが8cm以上であれば、当該水硬性組成物成形体に撥水領域を形成することで、本実施形態のコンクリート硬化体を得ることができる。
既に成形された水硬性組成物成形体としては、プレキャストコンクリート成形体、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート成形体(autoclaved lightweight aerated concrete:ALC)、セメントボード、押し出し成形セメント板(ECP,Extruded concrete panel)等が挙げられる。
また、既存の建造物の壁体、塀などの内面10A側に撥水領域を設けることで得ることができる、漏水を抑制する側に撥水領域を備えるコンクリート硬化体も、本明細書における本実施形態の硬化体に包含され、発明の効果を奏する。
本実施形態のコンクリート硬化体は、簡易な構成で、風圧が掛かる環境下でも、漏水を抑制する側、即ち、硬化体10、20の内面10Aへの漏水、水の浸み出しが効果的に抑制される。
このため、建造物の壁体、塀、建材パネル、プレキャストコンクリート硬化体など、漏水の抑制を必要とされる各種の用途に好適に使用される。
本実施形態のコンクリート硬化体10、20は、壁体、建築材料、塀などとしてそのまま用いることができる。
また、コンクリート硬化体(硬化体10、20)の外面10B側に撥水処理を施したり、撥水性塗料、外観向上のための塗料などを塗布して塗膜を形成したり、タイルなどの表面材を貼り付けたりすることができる。タイルを貼り付けた場合には、目地から浸入する水の漏水を抑制することができる。
硬化体10、20の内面10A側には、さらに化粧ボード、内装材などを備えることができる。本実施形態の硬化体10、20は内面10A側への漏水が効果的に抑制されるため、内装材などを貼付けて用いた場合、内装材における漏水に起因する染みおよびカビの発生が抑制される。よって、内装材等を用いた場合にも、内面10A側の表面における内装材等の良好な外観が長期間に亘りに維持されるという利点をも有する。
以下、本発明を、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
〔実施例1〕
(コンクリート組成物の配合)
以下の処方で水硬性組成物を調整した。まず、下記材料を下記表1に記載の配合量で、水を除いた各材料をミキサ中で30秒間攪拌し、その後水を加え、さらに、ミキサにより3分間練り混ぜで、水硬性組成物を得た。
(水硬性組成物の調整に使用した材料)
・早強ポルトランドセメント(密度:3.13g/cm
(住友大阪セメント製)
・硬化促進材(ラーファ:商品名、巴工業(株)製)
・粗骨材(八王子産硬砂岩砕石)
・細骨材(君津産山砂)
・減水剤(ポリカルボン酸系減水剤:スーパー300K−102、グレースケミカルズ製)
・水
(水結合材比=40.0%)

(水硬性組成物成形体の製造)
調製した水硬性組成物を、型枠である、幅100mm、長さ400mm、高さ10mmのモールドに充填した。
その後、蒸気養生を行った。加熱条件は、型枠に充填後、3時間で加熱を開始し、加熱条件としては、加熱到達温度65℃として4時間加熱し、加熱完了後に外気温(約25℃)で暴露養生し、水硬性組成物成形体を得た。
型枠充填後18時間で脱型して、得られた硬化体の圧縮強度をJIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)の方法により測定したところ、36N/mmであった。
(撥水領域の形成)
得られた硬化体の片面に、市販品である浸透性シラン/シロキサン系ゲル状建築用撥水剤(表2には、シラン/シロキサン系撥水剤と記載)を、刷毛で1回塗布し、乾燥して撥水領域を形成し、実施例1の漏水抑制コンクリート硬化体を得た。
実施例1等に用いたシラン/シロキサン系撥水剤は、アルコキシシラン系カップリング剤とポリアルコキシシロキサン系カップリング剤とを、エタノールとミネラルスピリット(軽油)とを主成分とし、トリメチルベンゼンを含有する溶媒に溶解させた溶液と、約20nm〜200nmの範囲の平均二次粒子径をもつシリカ微粒子凝集体を0.1質量%〜1.0質量%とを含有し、シリカ微粒子分散物により粘度を調整してなる撥水材である。
得られたコンクリート硬化体の断面に水を噴霧し、既述の方法に従い、外観の変化を観察したところ、撥水領域は撥水剤を塗布した面から5mmの範囲で有していることが確認できた。撥水領域を形成した側を、コンクリート硬化体の漏水を抑制する側(内面)とした。
得られたコンクリート硬化体を3点曲げ試験で曲げ破壊により割裂して、2つに割裂したコンクリートを再度突き付けて、割裂したコンクリートを固定するために鉄板を側面に貼り付けて固定して、割裂面をひび割れ内部面とみなすことによって、ひび割れを形成した。形成されたひび割れの幅を測定したところ、漏水を抑制する側(内面)の幅は0.25mmであり、対向面、即ち水分の浸透する側(外面)のひび割れの幅は0.30mmであった。
(コンクリート硬化体の評価)
1.純水接触角の測定
実施例1のコンクリート硬化体の断面にて露出した撥水領域における純水接触角を、JIS R 3257 基板ガラス表面のぬれ性試験方法(1999年)に記載される静滴法に従って測定した。即ち、実施例1のコンクリート硬化体の撥水領域表面に、1.5μlの純水の水滴を滴下し、自動接触角計(DM−501、協和界面科学(株))を用いて接触角を測定した。純水接触角は117°であった。
2.漏水抑制試験
撥水領域が形成されない側(外面10B側)から305mm離れた位置から、水圧約230kPaでコンクリート硬化体のひび割れが生じた箇所に向かって300秒間散水を行い、漏水を抑制する側、即ち内面10A側から透水の有無を目視評価した。散水時間が300秒間に至る前に透水が確認された場合には、散水を中止し、透水が確認されるまでの散水時間(秒)を記録した。
実施例1では、300秒間の観察において漏水は観察されなかった。
なお、AAMA(American Architectural Manufacturers Association)501.2試験法(2009年)では、実際の建物に取り付けた建具に対して水密性を確認するための現地水密性試験方法を規定している。所定のノズル(ノズル部での水圧205kPa〜240kPa)を、建具面から305mm±25mmの位置から、建具の各部材(例:無目材、枠材、方立など)のそれぞれ1.5m長さに対して散水を300秒間行い、水漏れが室内側に発生しなければ、漏水が抑制された建具であると規定している。本評価においても、強風を考慮した230kPaの水圧において、300秒間の散水にて浸み出しが認められなければ、十分な漏水抑制効果を有すると判定した。
〔実施例2〕
実施例1と同様にして実施例2のコンクリート硬化体を得た。実施例1と同様にしてひび割れを形成した。実施例1と同様にしてひび割れの幅を測定し、性能評価を行った。結果を下記表2に示す。
〔実施例3〜4〕
撥水剤の塗布回数を2回にした以外は、実施例1と同様にして実施例3〜4のコンクリート硬化体を得た。実施例1と同様にしてひび割れを形成した。実施例1と同様にしてひび割れの幅を測定し、性能評価を行った。結果を下記表2に示す。
〔比較例1〜比較例2〕
実施例1において非散水面(内面)側に撥水剤を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1〜2のコンクリート硬化体を得た。実施例1と同様にしてひび割れを形成した。実施例1と同様にしてひび割れの幅を測定し、性能評価を行った。結果を下記表2に示す。なお、撥水剤を塗布しないコンクリート硬化体の表面は水が浸み込み、接触角が測定しがたいため、比較例1〜2のコンクリート硬化体は水で十分にしめらせた後、純水接触角を測定した。結果を表2に示す。
〔比較例3〜4〕
撥水剤の塗布箇所を、内面側から外面側(散水側)に変えた以外は、実施例1と同様にして比較例3〜4のコンクリート硬化体を得た。比較例3〜4のコンクリート硬化体は、散水面に厚み5mmの撥水領域を備える。撥水領域における純水接触角を実施例1と同様にして測定したところ、117°であった。
比較例3〜4のコンクリート硬化体に実施例1と同様にしてひび割れを形成した。実施例1と同様にしてひび割れの幅を測定し、性能評価を行った。結果を下記表2に示す。
表2に明らかなように、実施例1〜実施例4のコンクリート硬化体は、水圧が掛かる場合においてもひび割れからの漏水が抑制されたことがわかる。
他方、撥水領域を有しない比較例1〜比較例2のコンクリート硬化体は、散水後、短時間で水の浸み出しが認められた。また、水の散布面(外面)側に撥水領域を備える比較例3〜比較例4のコンクリート硬化体は、水の浸み出しが撥水領域を有しない比較例1〜比較例2よりも早く認められた。
以上の結果より、撥水領域を水の浸入側に設けても、水圧が掛かる場合には、ひび割れへの水分の浸透抑制効果が得難いことがわかる。また、実施例のコンクリート硬化体においては、表面に付着した水に風圧が掛かる場合においても、漏水が効果的に抑制されることが期待できる。
10、20 コンクリート硬化体(硬化体)
12 水硬性組成物成形体
14 撥水領域
15 ひび割れ
16 水

Claims (3)

  1. セメント組成物およびコンクリート組成物から選ばれる少なくとも1種を含み、厚さが8cm以上のコンクリート硬化体であり、
    前記コンクリート硬化体において、漏水を抑制する側に、撥水領域を備える漏水抑制コンクリート硬化体。
  2. 前記撥水領域を、前記コンクリート硬化体の漏水を抑制する側の表面から3mm〜20mmの範囲に備える請求項1に記載の漏水抑制コンクリート硬化体。
  3. 前記撥水領域における純水接触角は、90°を超え170°以下の範囲である請求項1または請求項2に記載の漏水抑制コンクリート硬化体。
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